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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
F16H7/08 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018199055
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2019113178
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017246098
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 良考
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将成
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/109165(WO,A1)
【文献】特開2012-246987(JP,A)
【文献】特開2009-191863(JP,A)
【文献】特開2011-149466(JP,A)
【文献】特開2009-275756(JP,A)
【文献】特開2006-125430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方側に開口したプランジャ穴を有するプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有するハウジングと、前記プランジャおよび前記プランジャ収容穴の間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するメイン付勢手段と、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、
前記リリーフ機構は、前記プランジャ穴の前方側に挿入されるリリーフバルブユニットと、前記プランジャ穴の前記リリーフバルブユニットのリリーフ側空間と前記プランジャの外部を連通させる外部リリーフ孔とを備え、
前記リリーフバルブユニットが、シート部材と、前記シート部材の内部に収容されるバルブボールと、前記バルブボールを付勢するスプリングと、前記スプリングを保持するとともに前記バルブボールの移動範囲を規制するストッパ部材と、前記シート部材に嵌合してシート部材内部に前記ストッパ部材を保持するキャップ部材とを有し、
前記キャップ部材が、リリーフされたオイルを前記リリーフ側空間に排出するオイルリーク部を有し、
前記外部リリーフ孔が、前記プランジャの径方向の外周面側に開口していることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記オイルリーク部が、リリーフされたオイルを直接径方向に排出する側方開放部を有することを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記オイルリーク部は、前記側方開放部の中間部で周方向に横断する連結部を有することを特徴とする請求項2に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記オイルリーク部は、前方側に開放する天面開放部を有し、
前記天面開放部が、前記連結部より上方の前記側方開放部の周方向の幅よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記キャップ部材は、複数の前記オイルリーク部と、前記オイルリーク部の間の外周面に設けられた整流凸部とを有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のテンショナ。
【請求項6】
前記キャップ部材が、前記シート部材に対する嵌合を保持する係合突起部を有し、
前記シート部材が、前記係合突起部と係合し前記キャップ部材の嵌合を保持するための係合凹部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテンショナ。
【請求項7】
前記係合凹部は、前記プランジャの突出方向の複数の位置で前記キャップ部材を保持可能に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記キャップ部材が、前記プランジャ内部に収容された際に前記プランジャ穴の内壁と当接する外面突出部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のテンショナ。
【請求項9】
前記キャップ部材の外面突出部が、前記リリーフバルブユニットを前記プランジャ穴内に挿入した際に前記リリーフバルブユニットを軽圧入状態で保持する形状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記キャップ部材が、前記ストッパ部材と嵌合する保持凹部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のテンショナ。
【請求項11】
前記キャップ部材が、前記ストッパ部材と1つの部材で一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のテンショナ。
【請求項12】
前記キャップ部材が、樹脂材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するチェーンやベルト等に適正張力を付与するテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーン等の張力を適正に保持するためにテンショナを用いることが慣用されており、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンをテンショナレバーによって摺動案内を行なうチェーンガイド機構において、チェーン等の張力を適正に保持するために、テンショナによってテンショナレバーを付勢するものが公知である。
【0003】
このようなチェーンガイド機構に用いられる公知のテンショナとして、図18に示すように、後方側に開口したプランジャ穴522を有するプランジャ520と、プランジャ520を収容する前方側に開口したプランジャ収容穴531を有するハウジング530と、圧油室511内のオイル圧が高まった時に圧油室511のオイルをプランジャ520外にリリーフするリリーフ機構550と、プランジャ520およびプランジャ収容穴531の間に形成される圧油室511に伸縮自在に収納されてプランジャ520を前方側に向けて付勢するメインスプリング560とを備えたテンショナ510が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のテンショナ510では、プランジャ520の底部に、圧油室511に連通する圧力通路524と、圧力通路524とプランジャ520の外部とを連通する流出口523と、圧力通路524の前方側に形成されたばね収容室525とが形成され、また、リリーフ機構550が、圧力通路524に摺動自在に嵌挿される弁体551と、ばね収容室525内に配置されて弁体551を圧油室511側に向けて付勢するリリーフスプリング552とから構成されている。
そして、このテンショナ510では、圧油室511内のオイル圧が高まった際に、リリーフスプリング552の付勢力に抗して弁体551が前方側に向けて移動し、圧力通路524が流出口523と連通して、流出口523からオイルがリリーフされる。
このようなテンショナ510では、プランジャ520の構造が複雑となり、加工精度が要求され、組み立ても複雑となるという問題があった。
【0005】
そこで、リリーフバルブをユニット化してプランジャ内に挿入するようにし、プランジャにはリリーフされたオイルを外部に排出する外部リリーフ孔を設けることで、プランジャの構造を簡素化し、組み立てを容易としたものが公知である(例えば特許文献2等参照。)。
この特許文献2に記載のテンショナ610では、図19(特許文献2のFIG.1の一部)に示すように、プランジャ620(16)の前方側にリリーフバルブユニット651(48)が挿入されており、リリーフバルブユニット651(48)のキャップ部材656に設けられたオイルリーク部671と、プランジャ620(16)の前方側に開口した外部リリーフ孔623(16b)が直接接続されて、リリーフされたオイルがプランジャ620(16)前方から外部に排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-12569号公報
【文献】国際特許公開2016/109165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2に記載のテンショナ610では、プランジャ620(16)の前方側に開口した外部リリーフ孔623(16b)が中心軸上に設けられており、それと直接接続するオイルリーク部671も中心軸上に設けられている。
また、バルブボール653(48)の移動範囲を規制するストッパ部材655も中心軸上に設けられているため、バルブボール653(48)がシート部材652から離れてリリーフしたオイルを外部リリーフ孔623(16b)から排出するためには、ストッパ部材655の側方から中心に向かうオイル経路を確保する必要がある。
このため、ストッパ部材655のキャップ部材656側は、側面から中央に向けてオイルが通過できる複雑な形状となるとともに、流路抵抗が大きくなり、リリーフ時の圧力開放の妨げとなる虞があった。
また、外部リリーフ孔623(16b)は、プランジャ620(16)の前方側に開口しているため、プランジャ620(16)によって押圧されるガイドレバー等の押圧面が直接外部リリーフ孔623(16b)に当接することとなり、そのことも流路抵抗を大きくし、リリーフ時の圧力開放の妨げとなる虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、構造が簡単で、組み立ても容易であり、かつ、流路抵抗も少なくリーク時の圧力開放を円滑にして圧油室内のオイル圧を良好に安定させることが可能なテンショナを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、後方側に開口したプランジャ穴を有するプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有するハウジングと、前記プランジャおよび前記プランジャ収容穴の間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するメイン付勢手段と、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、前記リリーフ機構は、前記プランジャ穴の前方側に挿入されるリリーフバルブユニットと、前記プランジャ穴の前記リリーフバルブユニットのリリーフ側空間と前記プランジャの外部を連通させる外部リリーフ孔とを備え、前記リリーフバルブユニットが、シート部材と、前記シート部材の内部に収容されるバルブボールと、前記バルブボールを付勢するスプリングと、前記スプリングを保持するとともに前記バルブボールの移動範囲を規制するストッパ部材と、前記シート部材に嵌合してシート部材内部に前記ストッパ部材を保持するキャップ部材とを有し、前記外部リリーフ孔が、前記プランジャの径方向の外周面側に開口していることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、圧油室内のオイル圧が上昇した時に、オイル圧によってバルブ部材を圧油室側から離間する方向に移動させ、バルブ部材と区画部との間を通して、圧油室からリリーフ空間に向けてオイルをリリーフできるばかりでなく、以下に記載の効果を奏する。
すなわち、本請求項1に係る発明では、キャップ部材が、リリーフされたオイルをリリーフ側空間に排出するオイルリーク部を有し、プランジャの外部リリーフ孔が、プランジャの径方向の外周面側に開口していることにより、オイルリーク部はプランジャの外部リリーフ孔に繋がる空間と連通していればよく中心軸上に設ける必要がない。
このことで、リリーフしたオイルを中心に向かわせるためのオイル経路を確保する必要がなく、ストッパ部材の構造を単純化でき、構造が簡単で、組み立ても容易となり、かつ、流路抵抗も少なくリーク時の圧力開放を円滑に行なうことができる。
また、プランジャの外部リリーフ孔がプランジャの径方向の外周面側に開口していることで、外部リリーフ孔の前方にガイドレバー等の遮蔽物がなく、オイルを排出する経路の流路抵抗を少なくすることが可能となる。
【0011】
本請求項2に係る構成によれば、オイルリーク部が、リリーフされたオイルを直接径方向に排出する側方開放部を有することにより、プランジャの外部リリーフ孔に繋がる空間を前方側に設ける必要がなく、さらに流路抵抗も少なくリーク時の圧力開放を円滑に行なうことができる。
また、プランジャの先端板厚を薄くでき、プランジャが軽量化されるとともに、スプリングスペースを長くしたり、全長を短縮することができる。
本請求項3に係る構成によれば、オイルリーク部は、側方開放部の中間部で周方向に横断する連結部を有することにより、オイルを側方にリークするオイルリーク部の上方と、キャップ部材をシート部材に嵌合させる際の撓みスリットとして作用するオイルリーク部の下方とを機能分離できる。
このことで、オイルリーク部の周方向の幅を広くしても、嵌合させた際の保持力を強化することが可能となり、強い衝撃を受けた際にもキャップ部材が離脱することを抑制できる。
本請求項4に係る構成によれば、天面開放部が、連結部より上方の側方開放部の周方向の幅よりも幅広に形成されていることにより、天面開放部を外周側に寄せて配置することが可能となり、天面側に向かうリリーフされたオイルの流路面積を確保して円滑なオイルリークを可能とするとともに、ストッパ部材に対する受圧面積も確保する最適な孔形状とすることが可能となる。
本請求項5に係る構成によれば、オイルリーク部の間の外周面に設けられた整流凸部を有することにより、リリーフされたオイルの外周方向の流れを抑制し、乱流を防いで円滑なオイルリークを可能とするとともに、リリーフバルブユニットをプランジャ内部に挿入時のガイド性が向上し、組み立てが容易となる。
本請求項6に係る構成によれば、キャップ部材が、前記シート部材に対する嵌合を保持する係合突起部を有し、シート部材が、係合突起部と係合しキャップ部材の嵌合を保持するための係合凹部を有することにより、テンショナの組み立て時に、リリーフバルブユニットを組み立てた後にプランジャ穴の内部に挿入することができ組み立てが容易となる。
本請求項7に係る構成によれば、係合凹部は、プランジャの突出方向の複数の位置でキャップ部材を保持可能に設けられていることにより、テンショナの組み立て時に、バルブ用の強いスプリングを大きく圧縮することなくキャップ部材を浅く嵌合させ、リリーフバルブユニットを一体化した後に、プランジャ穴の内部に挿入して深く嵌合させることが可能となり、さらに組み立てが容易となる。
また、突出側のキャップ部材を浅く嵌合させる係合凹部の深さを、深く嵌合させる係合凹部の深さよりも深くすることで、プランジャ穴の内部に挿入する際には、係合凹部が深いため、キャップ部材の外径が小さい状態となって奥まで円滑に挿入でき、深く嵌合させる係合凹部に嵌合させた際には、係合凹部が浅いため、キャップ部材の外径をプランジャ穴の内部でプランジャに対し軽圧入状態を維持できる外径とすることが可能となる。
【0012】
本請求項8に係る構成によれば、キャップ部材が、プランジャ内部に収容された際にプランジャ穴の内壁と当接する外面突出部を有することにより、シート部材の係合凹部とキャップ部材の係合突起部との係合構造が浅い場合でも、プランジャ内部で外れることが防止されるため、組み立て時のシート部材の係合凹部とキャップ部材の係合突起部との係合作業が容易となる。
また、リリーフバルブユニットを外面突出部の軽圧入状態でプランジャ内部に固定するように構成し、外面突出部を周方向に断続的に設けることで、始動時の圧油室のエア抜け性が向上する。
本請求項9に係る構成によれば、キャップ部材の外面突出部が、リリーフバルブユニットをプランジャ穴内に挿入した際にリリーフバルブユニットを軽圧入状態で保持する形状に形成されていることにより、リリーフバルブユニットがプランジャ穴内に挿入された状態で外れずに維持されるため、他の部材の組み付け作業時に落下することが防止され、テンショナ全体の組み立てが容易となる。
本請求項10に係る構成によれば、キャップ部材が、ストッパ部材と嵌合する保持凹部を有することにより、リリーフしたオイルのストッパ部材の側方の経路を確実に確保することができ、流路抵抗も少なくリーク時の圧力開放を円滑に行なうことができる。
また、キャップ部材とストッパ部材とを嵌合させた状態で組み付け作業を行なうことで、リリーフバルブユニットの組み立てが容易となる。
【0013】
本請求項11に係る構成によれば、キャップ部材が、ストッパ部材と1つの部材で一体に形成されていることにより、部品点数が少なくなるとともに、リリーフバルブユニットの組み立てがさらに容易となる。
本請求項12に係る構成によれば、キャップ部材が、樹脂材料からなることにより、形状の自由度が向上するとともに、軽量化され、リリーフバルブユニットの組み立てがさらに容易となるとともに、最適なオイル経路に設計することができ、さらに流路抵抗も少なくリーク時の圧力開放を円滑に行なうことができる。
また、プランジャ穴に圧入した際にプランジャに与える力が弱くなるため、プランジャの変形が防止され、プランジャを薄くすることができ軽量化を図ることができるとともに、形状精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るテンショナの断面図。
図2】本発明の第1実施形態に係るテンショナのプランジャの断面図。
図3】本発明の第1実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの断面図。
図4】本発明の第1実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの斜視図。
図5】本発明の第2実施形態に係るテンショナのプランジャの断面図。
図6】本発明の第2実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの断面図。
図7】本発明の第2実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの斜視図。
図8】本発明の第1実施形態に係るテンショナの第1変形例に係るリリーフバルブユニットの斜視図。
図9】本発明の第1実施形態に係るテンショナの第2変形例に係るリリーフバルブユニットの断面図。
図10】本発明の第1実施形態に係るテンショナの第3変形例に係るリリーフバルブユニットの断面図。
図11】本発明の第1実施形態に係るテンショナの第4変形例に係るリリーフバルブユニットの断面図。
図12】本発明の第1実施形態に係るテンショナの第4変形例に係るリリーフバルブユニットの軽嵌合時の断面図。
図13】本発明の第3実施形態に係るテンショナのプランジャの断面図。
図14】本発明の第3実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの断面図。
図15】本発明の第3実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットの斜視図。
図16】本発明の第3実施形態に係るテンショナのリリーフバルブユニットのキャップ部材の斜視図。
図17】本発明の第3実施形態に係るテンショナの変形例に係るプランジャの断面図。
図18】従来のテンショナを示す断面図。
図19】従来の他のテンショナを示す断面図。
図20】テンショナを組み込んだタイミングシステムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1実施形態に係るテンショナについて、図面に基づいて説明する。
まず、テンショナ110は、自動車エンジンのタイミングシステム等に用いられるチェーン伝動装置に組み込まれるものであり、図20に示すように、エンジンブロック(図示しない)に取り付けられ、複数のスプロケットS1~S3に掛け回された伝動チェーンCHの弛み側にテンショナレバーGを介して適正な張力を付与し、走行時に生じる振動を抑止するものである。
テンショナ110は、図1に示すように、後方側に開口したプランジャ穴122を有するプランジャ120と、プランジャ120を収容する前方側に開口したプランジャ収容穴131を有するハウジング130と、ハウジング130の底部側に配置されるチェックバルブ140と、圧油室111内のオイル圧が高まった時に圧油室111内のオイルをプランジャ120外にリリーフするリリーフ機構150と、プランジャ120およびプランジャ収容穴131の間に形成される圧油室111に伸縮自在に収納されてプランジャ120を前方側に向けて付勢するメインスプリング(メイン付勢手段)160とを備えている。
【0016】
チェックバルブ140は、オイル供給孔133を通じて外部から圧油室111へのオイルの流入を許容するとともに、オイル供給孔133からのオイルの流出を防止するもので、プランジャ収容穴131の底部に密着して配置されたボールシート141と、ボールシート141に密着可能に着座する球状のチェックボール142と、チェックボール142の前方に配置されチェックボール142の移動を規制するリテーナ143とから構成されている。
なお、チェックボール142をボールシート141側に向けて付勢するボールスプリングをチェックボール142とリテーナ143との間に配置してもよい。
【0017】
第1実施形態に係るテンショナ110のプランジャ120は、図2に示すように、リリーフ機構として、プランジャ穴122の前方側に挿入されるリリーフバルブユニット151と、リリーフバルブユニット151のリリーフ側空間126とプランジャ120の外部を連通させる外部リリーフ孔123とを備えている。
外部リリーフ孔123は、プランジャ120の径方向の外周面側に開口している。
リリーフバルブユニット151は、図2図3に示すように、シート部材152と、シート部材152の内部に収容されるバルブボール153と、バルブボール153を付勢するスプリング154と、スプリング154を保持するとともにバルブボール153の移動範囲を規制するストッパ部材155と、シート部材152に嵌合してシート部材152内部にストッパ部材155を保持するキャップ部材156とを有している。
【0018】
キャップ部材156は、図2乃至図4に示すように、リリーフされたオイルをリリーフ側空間126に排出するオイルリーク部171を有しており、さらに、本実施形態では、オイルリーク部171が、リリーフされたオイルを直接径方向に排出する側方開放部172を有している。
また、キャップ部材156は、シート部材152に対する嵌合を保持する係合突起部173を有し、シート部材152は、係合突起部173と係合してキャップ部材156の嵌合を保持するための係合凹部174を有している。
キャップ部材156は、プランジャ120内部に収容された際にプランジャ穴122の内壁と当接する外面突出部175を有している。
外面突出部175は、リリーフバルブユニット151をプランジャ穴122内に挿入した際に、リリーフバルブユニット151を軽圧入状態で保持する形状に形成されている。
なお、本実施形態では、シート部材152の最大径部分に、オリフィス効果で圧油室111内のオイル圧を開放可能なリーク溝177が設けられている。
【0019】
本実施形態のテンショナ110の組み立て時には、シート部材152にバルブボール153、スプリング154およびストッパ部材155をセットし、キャップ部材156をシート部材152に嵌合して、シート部材152は、キャップ部材156の係合突起部173をシート部材152の係合凹部174と係合することで、リリーフバルブユニット151を一体化してハンドリングすることが可能となる。
リリーフバルブユニット151をプランジャ120内部に収容する際には、キャップ部材156の外面突出部175が、プランジャ穴122の内壁と当接し、リリーフバルブユニット151を軽圧入状態で保持する形状の外面突出部175を有していることで、軽い力でプランジャ120内部に収容でき、抜け落ちることがない。
なお、キャップ部材156を樹脂で形成することで、圧入力によるプランジャ穴122の内壁に対する押圧力をさらに小さくでき、プランジャ120を薄くすることができ軽量化を図ることができる。
【0020】
本実施形態のテンショナ110の使用時で、圧油室111の圧力が所定上に高くなった際には、バルブボール153がスプリング154の押圧力に抗してシート部材152から離れて、リリーフバルブユニット151内のストッパ部材155の外周空間、キャップ部材156のオイルリーク部171、プランジャ穴122内のリリーフ側空間126、プランジャ120の外部リリーフ孔123を介して、圧力が解放される。
この時、オイルリーク部171が、リリーフされたオイルを直接径方向に排出する側方開放部172を有していることで、外周面側に開口された外部リリーフ孔123までの流路抵抗が小さくなり、圧力開放を円滑に行なうことができる。
また、プランジャ穴122の底部のキャップ部材156が当接する部分に空間を設ける必要がなく、プランジャ120の先端板厚を薄くでき、プランジャ120が軽量化されるとともに、スプリングスペースを長くしたり、全長を短縮することができる。
さらに、プランジャ穴122の底部とキャップ部材156の当接面を広く取ることができるため、キャップ部材156を薄くしたり樹脂製としても、メインスプリング(メイン付勢手段)160による強い押圧力でも使用することが可能となる。
また、リリーフバルブユニット151は、周方向に断続的に設けられた外面突出部175の軽圧入状態でプランジャ内部に固定され、プランジャ穴122内面とシート部材152との間にはクリアランスがあり、さらに、リーク溝177が設けられていることから、オイル供給の開始後、圧油室111に残留していたエアを外部リリーフ孔123を介して素早く排出することができる。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態に係るテンショナについて、図面に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同様の部分は省略する。
第2実施形態に係るテンショナのプランジャ120bは、図5に示すように、リリーフ機構150として、プランジャ穴122の前方側に挿入されるリリーフバルブユニット151bと、プランジャ穴122の底部に凹状に設けられたリリーフ側空間126bと、リリーフ側空間126bとプランジャ120bの外部を連通させる外部リリーフ孔123bとを備えている。
外部リリーフ孔123bは、プランジャ120の径方向の外周面側に開口している。
リリーフバルブユニット151bは、図5図6に示すように、シート部材152と、シート部材152の内部に収容されるバルブボール153と、バルブボール153を付勢するスプリング154と、スプリング154を保持するとともにバルブボール153の移動範囲を規制するストッパ部材155と、シート部材152に嵌合してシート部材152内部にストッパ部材155を保持するキャップ部材156bとを有している。
【0022】
キャップ部材156bは、図5乃至図7に示すように、リリーフされたオイルをリリーフ側空間126bに排出するオイルリーク部171bを有している。
本実施形態では、オイルリーク部171bは、キャップ部材156bのプランジャ穴122の底部との当接面側に設けられた3つの孔部である。
なお、本実施形態では、シート部材152の最大径部分に、オリフィス効果で圧油室111内のオイル圧を開放可能なリーク溝177が設けられている。
【0023】
本実施形態のテンショナ110の組み立て時には、シート部材152にバルブボール153、スプリング154およびストッパ部材155をセットし、キャップ部材156bをシート部材152に嵌合して、リリーフバルブユニット151を一体化してハンドリングすることが可能となる。
なお、シート部材152を樹脂で形成することで、リリーフバルブユニット151をプランジャ120b内部に収容する際の圧入力によるプランジャ穴122の内壁に対する押圧力を小さくでき、プランジャ120bを薄くすることができ軽量化を図ることができる。
【0024】
本実施形態のテンショナの使用時で、圧油室111の圧力が所定上に高くなった際には、バルブボール153がスプリング154の押圧力に抗してシート部材152から離れて、リリーフバルブユニット151内のストッパ部材155の外周空間、キャップ部材156bのオイルリーク部171b、プランジャ穴122内のリリーフ側空間126b、プランジャ120の外部リリーフ孔123bを介して、圧力が解放される。
この時、リリーフ側空間126bが所定の広さを有しているため、ストッパ部材155の外周空間からオイルリーク部171bを介してリリーフ側空間126bに達するまでの流路抵抗が小さくなり、圧力開放を円滑に行なうことができる。
【0025】
次に、第1実施形態に係るテンショナ110のリリーフバルブユニット151の変形例について説明する。
第1変形例に係るリリーフバルブユニット151cは、図8に示すように、キャップ部材156cは、オイルリーク部171cのリリーフされたオイルを直接径方向に排出する側方開放部172cの先端側が閉じた形状をしている。
このことで、シート部材152とキャップ部材156cとの嵌合が強くなり、スプリング154の押圧力が大きい場合でも、一体化されたリリーフバルブユニット151cが組み立て時や搬送時の振動や衝撃で分解することを抑制できる。
【0026】
第2変形例に係るリリーフバルブユニット151dは、図9に示すように、キャップ部材156dのストッパ部材155と当接する面に、ストッパ部材155と嵌合する保持凹部を形成するフランジ178dを設けたものである。
このことにより、リリーフバルブユニット151dの組み立てがより容易となる。
なお、フランジ178dを設けずに、キャップ部材156dのストッパ部材155と当接する面に、直接ストッパ部材155と嵌合する保持凹部を設けてもよい。
第3変形例に係るリリーフバルブユニット151eは、図10に示すように、キャップ部材156eがストッパ部材と一体に形成されているものである。
キャップ部材156eを樹脂で形成すると容易に製造できるとともに、部品点数が減り、リリーフバルブユニット151eの組み立てがより容易となる。
【0027】
第4変形例に係るリリーフバルブユニット151fは、図11に示すように、シート部材152fは、キャップ部材156の係合突起部173と係合してキャップ部材156の嵌合を保持するための係合凹部174とを有し、さらに、図12に示すように、シート部材152fは、プランジャの突出方向の手前の位置で係合突起部173と係合する第2係合凹部176fが設けられている。
テンショナ110の組み立て時には、スプリング154の押圧が大きいことから、まずは、図12に示すように、係合突起部173と第2係合凹部176fとを係合させた状態でリリーフバルブユニット151fを仮に一体化しておき、プランジャ120のプランジャ穴122内に挿入した後に、さらに押し込んで係合突起部173と係合凹部174を係合させて、本来のリリーフバルブユニット151fを完成させることで組み立てがより容易となる。
また、リリーフバルブユニット151fが、プランジャ穴122内に軽圧入状態で保持する形状の外面突出部175を有している場合、第2係合凹部176fを係合凹部174より深い凹部とすることで、リリーフバルブユニット151fをプランジャ穴122の内部に挿入する際には、キャップ部材156の外径が小さい状態となって奥まで円滑に挿入することができ、さらに押し込んで係合突起部173と係合凹部174を係合させた際には、キャップ部材156の外径をプランジャ穴122の内部で軽圧入状態を維持できる外径とすることが可能となる。
【0028】
第3実施形態に係るテンショナ110gのプランジャ120gは、図13に示すように、リリーフ機構として、プランジャ穴122gの前方側に挿入されるリリーフバルブユニット151gと、リリーフバルブユニット151gのリリーフ側空間126gとプランジャ120gの外部を連通させる外部リリーフ孔123gとを備えている。
外部リリーフ孔123gは、プランジャ120gの径方向の外周面側に開口している。
リリーフバルブユニット151gは、図13乃至図15に示すように、シート部材152gと、シート部材152gの内部に収容されるバルブボール153gと、バルブボール153gを付勢するスプリング154gと、スプリング154gを保持するとともにバルブボール153gの移動範囲を規制するストッパ部材155gと、シート部材152gに嵌合してシート部材152g内部にストッパ部材155gを保持するキャップ部材156gとを有している。
【0029】
キャップ部材156gは、図13乃至図16に示すように、リリーフされたオイルをリリーフ側空間126gに排出するオイルリーク部171gを有しており、さらに、本実施形態では、オイルリーク部171gが、リリーフされたオイルを天面方向に排出する天面開放部180g、リリーフされたオイルを径方向に排出する側方開放部(172gu、172gd)を有している。
側方開放部(172gu、172gd)はその中間部で周方向に横断する連結部179gを有し、天面側の側方開放部172guと、開放端側の側方開放部172gdに区分されている。
【0030】
天面側の側方開放部172guは、主にリリーフされたオイルを径方向に排出する機能を有し、開放端側の側方開放部172gdは主にキャップ部材156gをシート部材152gに嵌合させる際の撓みスリットとして作用する。
また、キャップ部材156gは、シート部材152gに対する嵌合を保持する係合突起部173gを有し、シート部材152gは、係合突起部173gと係合してキャップ部材156gの嵌合を保持するための係合凹部174gを有している。
キャップ部材156gは、連結部179gを有することで、撓みスリットとして作用する開放端側の側方開放部172gdを変形させるには大きな力が必要となるため、シート部材152gに嵌合させた際の保持力を強化することが可能となり、強い衝撃を受けた際にもキャップ部材156gが離脱することを抑制できる。
【0031】
本実施形態では、キャップ部材156gには、周方向に3箇所のオイルリーク部171gが設けられており、オイルリーク部171gの間の整流凸部181gが設けられている。
このことで、リリーフされたオイルのキャップ部材156gの外周方向の流れを抑制し、乱流を防いで円滑なオイルリークを可能とするとともに、リリーフバルブユニット151gをプランジャ120g内部に挿入する際の時のガイド性が向上し、組み立てが容易となる。
なお、本実施形態では、シート部材152gの最大径部分に、オリフィス効果で圧油室内のオイル圧を開放可能なリーク溝177gが設けられている。
また、オイルリーク部171gの天面開放部180gが、連結部179gより上方の天面側の側方開放部172guの周方向の幅よりも幅広に形成されている。
このことで、天面開放部180gを外周側に寄せて配置することが可能となり、天面側に向かうリリーフされたオイルの流路面積を確保して円滑なオイルリークを可能とするとともに、スプリング154gにより押圧されるストッパ部材155gに対する受圧面積も確保する最適な孔形状とすることが可能となる。
さらに、本実施形態のリリーフバルブユニット151gは、天面開放部180gの形状により、天面側へのオイルリーク量を十分に確保することが可能なことから、例えば、図17に示す変形例のように、外部リリーフ孔123hが天面側に設けられたプランジャ120hに用いられてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上述した実施形態では、テンショナ110が自動車エンジン用のタイミングシステムに組み込まれるものとして説明したが、テンショナ110の具体的用途はこれに限定されない。
また、上述した実施形態では、テンショナ110がテンショナレバーGを介して伝動チェーンCHに張力を付与するものとして説明したが、プランジャ120の先端で直接的に伝動チェーンCHの摺動案内を行い、伝動チェーンCHに張力を付与するようにしてもよい。
【0033】
さらに、伝動チェーンCHによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、長尺物に張力を付与することが求められる用途であれば、種々の産業分野において利用可能である。
また、上述した実施形態では、プランジャ120を収容するハウジング130が、エンジンブロック等に取り付けられる所謂テンショナボディであるものとして説明したが、ハウジング130の具体的態様は、上記に限定されず、テンショナボディに形成されたボディ穴内に挿入される円筒状の所謂スリーブであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
110 510、610 ・・・ テンショナ
111 511 ・・・ 圧油室
120、520、620 ・・・ プランジャ
122、522、622 ・・・ プランジャ穴
123、 623 ・・・ 外部リリーフ孔
523 ・・・ 流出口
524 ・・・ 圧力通路
525 ・・・ ばね収容室
126 ・・・ リリーフ側空間
130、530、630 ・・・ ハウジング
131、531、631 ・・・ プランジャ収容穴
133 ・・・ オイル供給孔
140 ・・・ チェックバルブ
141 ・・・ ボールシート
142 ・・・ チェックボール
143 ・・・ リテーナ
150、550 ・・・ リリーフ機構
151、 651 ・・・ リリーフバルブユニット
152、 652 ・・・ シート部材
153、 653 ・・・ バルブボール
154、 ・・・ スプリング(バルブ用付勢手段)
155、 655 ・・・ ストッパ部材
156、 656 ・・・ キャップ部材
551 ・・・ 弁体
552 ・・・ リリーフスプリング
160、560、660 ・・・ スプリング(メイン付勢手段)
171、 671 ・・・ オイルリーク部
172、 ・・・ 側方開放部
173、 ・・・ 係合突起部
174、 ・・・ 係合凹部
175、 ・・・ 外面突出部
176、 ・・・ 第2係合凹部
177 ・・・ リーク溝
178 ・・・ フランジ
179 ・・・ 連結部
180 ・・・ 天面開放部
181 ・・・ 整流凸部
S1~S3 ・・・ スプロケット
CH ・・・ 伝動チェーン
G ・・・ テンショナレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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