(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20221116BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20221116BHJP
F02M 26/47 20160101ALI20221116BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20221116BHJP
【FI】
F02D45/00 370
F02D45/00 364D
F02D45/00 362
F02D45/00
F02D21/08 311Z
F02M26/47 C
F02M26/00 301
(21)【出願番号】P 2018128471
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 昇平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】戸田 仁司
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143964(JP,A)
【文献】特開2005-194960(JP,A)
【文献】特開2014-084817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 21/08
F02M 26/47
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気の一部を吸気通路に還流する排気還流路と、前記排気還流路を開閉する排気還流弁と、前記エンジンの運転状態に基づいて前記排気還流弁を制御する排気還流制御部と、を備えたエンジンの制御装置であって、
前記排気還流路による排気還流量相当値が前記エンジンの運転状態に基づいて設定される目標排気還流量相当値である目標排気還流状態での前記エンジンの体積効率係数を演算する目標排気還流時体積効率係数演算部と、
前記排気還流量相当値が0である非排気還流状態での前記エンジンの体積効率係数を演算する非排気還流時体積効率係数演算部と、
前記目標排気還流状態の排気還流量相当値を演算する目標排気還流時排気還流量演算部と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、現状の排気還流量相当値を演算する現排気還流量演算部と、
前記目標排気還流状態の排気還流量相当値と前記現状の排気還流量相当値との比に基づいて、前記目標排気還流状態での前記体積効率係数と前記非排気還流状態での前記体積効率係数とを補間して、現状の前記エンジンの体積効率係数を演算する体積効率係数演算部と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出器と、
前記エンジンの吸気圧を検出する吸気圧検出器と、を備え、
前記目標排気還流時体積効率係数演算部及び前記非排気還流時体積効率係数演算部は、前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記エンジンの体積効率係数を夫々演算し、
前記目標排気還流時排気還流量演算部は、前記目標排気還流時体積効率係数演算部で演算した前記目標排気還流状態での前記体積効率係数と前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記目標排気還流状態での排気還流量相当値を演算する
ことを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記体積効率係数演算部は、前記現状の排気還流量相当値をa、前記目標排気還流状態の排気還流量相当値をb、前記目標排気還流状態での体積効率係数をwEGR、前記非排気還流状態での体積効率係数をwoEGRとした場合、
Kve=(wEGR×(a/b)+(woEGR×(1-(a/b)))
によって、前記現状のエンジンの体積効率係数Kveを演算することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記排気還流弁の開度を検出する還流弁開度検出器を備え、
前記現排気還流量演算部は、前記排気還流弁の開度と前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記現状の排気還流量相当値を演算することを特徴とする請求項1
または2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記排気還流量相当値は、前記エンジンの吸気量に対する排気還流量の割合である排気還流率であることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気還流装置を備えたエンジンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃料噴射を適切に制御するために、筒内への吸気量を正確に演算する必要がある。筒内への吸気量については、例えば吸気スロットルバルブの上流部に設けられたフローセンサを用いて計測したり、スロットルバルブの下流側の吸気圧であるインマニ圧とエンジン回転速度から推定演算したりする方法が知られている。
また、特許文献1には、エンジンの定常運転時において、インマニ圧と体積効率相当値とを用いて筒内への吸気量を算出するとともにスロットル開度と吸気量との関係を学習し、過渡運転時においては、この学習結果を用いて筒内への吸気量を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジンの多くには、NOx排出量を低減させるためにEGR装置(外部EGR装置)が搭載されている。EGR装置は、エンジンの排気の一部を吸気側に還流させて、筒内での燃焼温度を低下させることで、NOxの排出量を低減させる。したがって、EGR装置により排気を還流させると、燃焼に寄与する空気量である筒内への新気量が減少し、燃料噴射制御するために必要な筒内への吸気量(新気量)を正確に演算することが困難となってしまう。
【0005】
特に、EGR装置は一般的にエンジンの運転状態に基づいてオンオフ制御されるので、過渡運転時のように排気の還流のオンオフが切り替わる際には、排気還流量が変化して、筒内への吸気量を正確に演算することが困難となってしまう。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、EGR装置を備えたエンジンにおいて、精度よく筒内への吸気量を演算することが可能となるエンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のエンジンの制御装置は、エンジンの排気の一部を吸気通路に還流する排気還流路と、前記エンジンの運転状態に基づいて前記排気還流弁を制御する排気還流制御部と、を備えたエンジンの制御装置であって、前記排気還流路による排気還流量相当値が前記エンジンの運転状態に基づいて設定される目標排気還流量相当値である目標排気還流状態での前記エンジンの体積効率係数を演算する目標排気還流時体積効率係数演算部と、前記排気還流量相当値が0である非排気還流状態での前記エンジンの体積効率係数を演算する非排気還流時体積効率係数演算部と、前記目標排気還流状態の排気還流量相当値を演算する目標排気還流時排気還流量演算部と、前記エンジンの運転状態に基づいて、現状の排気還流量相当値を演算する現排気還流量演算部と、前記目標排気還流状態の排気還流量相当値と前記現状の排気還流量相当値との比に基づいて、前記目標排気還流状態での前記体積効率係数と前記非排気還流状態での前記体積効率係数とを補間して、現状の前記エンジンの体積効率係数を演算する体積効率係数演算部と、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出器と、前記エンジンの吸気圧を検出する吸気圧検出器と、を備え、前記目標排気還流時体積効率係数演算部及び前記非排気還流時体積効率係数演算部は、前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記エンジンの体積効率係数を夫々演算し、前記目標排気還流時排気還流量演算部は、前記目標排気還流時体積効率係数演算部で演算した前記目標排気還流状態での前記体積効率係数と前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記目標排気還流状態での排気還流量相当値を演算することを特徴とする。
【0007】
これにより、目標排気還流状態の排気還流量相当値と現状の排気還流量相当値との比に基づいて、目標排気還流状態の体積効率係数と非排気還流状態での体積効率係数との間に、現状の体積効率係数が演算される。したがって、目標排気還流状態でない排気還流状態であっても、体積効率係数を精度よく演算することができる。
更に、エンジンの回転速度と吸気圧を用いて、目標排気還流時体積効率係数演算部は目標排気還流状態でのエンジンの体積効率係数を、非排気還流時体積効率係数演算部は非排気還流状態でのエンジンの体積効率係数を、夫々容易に演算することが可能となる。
また、目標排気還流時体積効率係数演算部で演算した目標排気還流状態での体積効率係数を利用して、目標排気還流状態での排気還流量相当値を容易に演算することができる。
また、好ましくは、前記体積効率係数演算部は、前記現状の排気還流量相当値をa、前記目標排気還流状態の排気還流量相当値をb、前記目標排気還流状態での体積効率係数をwEGR、前記非排気還流状態での体積効率係数をwoEGRとした場合、Kve=(wEGR×(a/b)+(woEGR×(1-(a/b)))によって、前記現状のエンジンの体積効率係数Kveを演算するとよい。
【0008】
これにより、目標排気還流状態でない排気還流状態でのエンジンの体積効率係数を、目標排気還流状態の排気還流量相当値と現状の排気還流量相当値との比に基づいて、容易にかつ精度よく演算することが可能となる。
【0010】
また、好ましくは、前記排気還流弁の開度を検出する還流弁開度検出器を備え、前記現排気還流量演算部は、前記排気還流弁の開度と前記エンジンの回転速度と吸気圧とに基づいて、前記現状の排気還流量相当値を演算するとよい。
【0011】
これにより、現状の排気還流量相当値を容易に演算することが可能となる。
また、好ましくは、前記排気還流量相当値は、前記エンジンの吸気量に対する前記排気還流量の割合である排気還流率であるとよい。
これにより、エンジンの体積効率係数を排気還流率に基づいて演算することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエンジンの制御装置によれば、目標排気還流状態でない排気還流状態であっても、体積効率係数を精度よく演算することができるので、排気還流弁の開閉切替直後のような過渡運転状態においても体積効率係数を精度よく演算し、筒内への新気の吸入量を精度よく演算することができる。これにより、新気の吸入量に基づいて燃料噴射量を精度よく制御することが可能となり、エンジンの燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態におけるエンジンの制御装置の概略構成図である。
【
図2】エンジンの負荷とEGR率との関係を示すマップの一例である。
【
図3】エンジンの負荷と体積効率係数との関係を示すマップの一例である。
【
図4】本実施形態のエンジンコントロールユニットにおける体積効率係数演算部の構成を示すブロック図である
【
図5】エンジンの負荷に対するEGR率、インマニ圧、体積効率係数の関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の制御装置1が適用されたエンジン2の概略構成図である。
エンジン2は、走行駆動源として車両に搭載されており、例えば多気筒のガソリンエンジンであって、
図1では簡略して1つの気筒のみ記載している。エンジン2は、各気筒に設けられた燃料噴射弁3から、任意の噴射時期及び噴射量で各気筒の吸気ポート内に燃料を噴射し、点火プラグ4によって燃焼室5内の混合気を点火して燃焼可能な構成となっている。
【0015】
エンジン2の吸気通路6には、新気の流量を調整するための電子制御スロットルバルブ7が設けられている。
また、エンジン2には、EGR装置10が備えられている。EGR装置10は、エンジン2の吸気通路6と排気通路8とを連通するEGR通路11(排気還流路)と、EGR通路11を開閉するEGRバルブ12(排気還流弁)とにより構成されている。EGR装置10は、排気通路8からEGR通路11を介して排気の一部を吸気通路6に還流させる。このように排気の一部(EGRガス)を吸気通路6に流入させることで、筒内の燃焼温度を低下させ、エンジン2からのNOxの排出量を低減させる。
【0016】
更に、エンジン2には、エンジン2の回転速度を検出する回転速度センサ15(エンジン回転速度検出器)が設けられている。吸気通路6のエンジン2側の端部である吸気マニホールド17には、吸気圧(インマニ圧)を検出するインマニ圧センサ18(吸気圧検出器)を備えている。また、EGRバルブ12には、EGRバルブの開度を検出するEGR開度センサ19(還流弁開度検出器)が設けられている。
【0017】
エンジンコントロールユニット20(排気還流制御部)は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、タイマ及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成され、回転速度センサ15、インマニ圧センサ18、EGR開度センサ19等の各種センサの検出情報を入力し、当該各種情報に基づいて体積効率係数を演算する。なお、体積効率係数は、吸気通路6から筒内への新気の入りやすさの指標となるものであり、吸気管内と同じ密度の空気が行程容積を満たす場合の空気量に対する、シリンダーが吸入した空気量の割合である。
【0018】
エンジンコントロールユニット20は、更に、体積効率係数を用いて新気の筒内への吸気量を演算し、当該吸気量に基づいて各気筒の燃料噴射量を演算して、燃料噴射弁3からの燃料噴射を制御する。また、エンジンコントロールユニット20は、点火プラグ4による点火、電子制御スロットルバルブ7の開度、EGRバルブ12の開度を制御して、エンジン2の運転制御を行う。
【0019】
図2は、エンジン2の負荷とEGR率との関係を示すマップの一例である。
図3は、エンジン2の負荷と体積効率係数との関係を示すマップの一例である。
エンジンコントロールユニット20は、エンジン2の負荷に基づいて目標EGR率(目標排気還流量相当値)を設定して、EGRバルブ12の開度を制御する。EGR率(排気還流率)は、新気の流量に対するEGRガスの流量の割合である。エンジン2の負荷は、例えば回転速度センサ15により検出したエンジン回転速度とインマニ圧センサ18により検出したインマニ圧とに基づいて演算すればよい。
【0020】
例えば
図2に示すように、目標EGR率は、エンジン2の負荷に基づいて変化し、低負荷時及び高負荷時に減少し、中負荷時において増加するように設定される。これは、低負荷時においてはエンジン2の燃焼安定性を確保するためであり、高負荷時においてはインマニ圧が上昇することから排気が還流し難くなるためである。
また、エンジン2の体積効率係数は、負荷に応じて変化する。例えば
図3に示すように、体積効率係数は、エンジン2の負荷が増加するに伴って増加する。また、体積効率係数は、EGR非導入時とEGR導入時とで異なる値となり、目標EGR率のEGR導入時である目標EGR導入時(目標排気還流状態)では、吸気中に排気の割合が増加するため、EGR非導入時(非排気還流状態)よりも小さい値となる。
【0021】
次に、
図4及び
図5を用いて、EGR導入時における体積効率係数の演算方法について説明する。本実施形態のエンジンコントロールユニット20は、EGR非導入時及び目標EGR導入時だけでなく、目標EGR率でないEGR導入状態での体積効率係数について演算する。
図4は、エンジンコントロールユニット20における体積効率係数演算ユニット21のブロック図である。
図5は、エンジン2の負荷に対するEGR率、インマニ圧、体積効率係数の関係を示すマップであり、実線が目標EGR率導入時、破線がEGR非導入時を示す。なお、
図5中のEGR率のマップは
図2に該当し、体積効率係数のマップは
図3に該当する。
【0022】
図4に示すように、エンジンコントロールユニット20には、エンジン2の現状の運転状態(現運転点)における体積効率係数Kveを演算する体積効率係数演算ユニット21として、EGR非導入時体積効率係数演算部22(非排気還流時体積効率係数演算部)、目標EGR導入時体積効率係数演算部23(目標排気還流時体積効率係数演算部)、筒内空気量演算部24(目標排気還流時排気還流量演算部)、体積効率係数補正用EGR率演算部25(目標排気還流時排気還流量演算部)、筒内EGR率演算部26(現排気還流量演算部)、体積効率係数演算部27を備えている。
【0023】
EGR非導入時体積効率係数演算部22は、インマニ圧センサ18からから入力したインマニ圧Pbと、回転速度センサ15から入力したエンジン回転速度Neとに基づいて、あらかじめ試験等によって確認し記憶しているマップを用いて、EGR非導入時の体積効率係数woEGRを演算する。
なお、負荷とインマニ圧との関係は、例えばエンジン回転速度Neが一定の場合に、
図5中の破線cに示すように、EGR非導入時においては負荷が増加するに伴ってインマニ圧も増加する比例関係となる。そして、エンジン回転速度Ne毎に設けられたマップを用いて、インマニ圧Pbに対応する負荷dに基づいて、EGR非導入時の体積効率係数woEGRが求められる。
【0024】
目標EGR導入時体積効率係数演算部23は、インマニ圧センサ18からから入力したインマニ圧Pbと、回転速度センサ15から入力したエンジン回転速度Neとに基づいて、あらかじめ試験等によって確認し記憶しているマップを用いて目標EGR導入時の体積効率係数wEGRを演算する。
なお、目標EGR導入時においては、負荷とインマニ圧との関係は、例えばエンジン回転速度Neを一定とした場合に、
図5の実線eに示すように、負荷が増加するに伴ってインマニ圧も増加するものの、EGR非導入時よりもインマニ圧が増加する。そして、エンジン回転速度Ne毎に設けられたマップを用いて、インマニ圧センサ18からから入力したインマニ圧Pbに対応する負荷fに基づいてEGR非導入時の体積効率係数wEGRが求められる。エンジン回転速度Neが一定である場合、目標EGR導入時における負荷fは、EGR非導入時における負荷dよりも小さくなるので、目標EGR導入時の体積効率係数wEGRは、EGR非導入時の体積効率係数woEGRよりも小さい値となる。
【0025】
筒内空気量演算部24は、目標EGR導入時体積効率係数演算部23により演算した目標EGR率導入時の体積効率係数wEGRとインマニ圧センサ18から入力したインマニ圧Pbに基づいて、目標EGR率導入時における負荷(充填効率Ec)を演算する。負荷(充填効率Ec)は、例えば下記(1)式によって演算すればよい。
負荷(充填効率Ec)=wEGR×(Pb/大気圧)×100(%)・・・(1)
体積効率係数補正用EGR率演算部25は、筒内空気量演算部24で演算された負荷(充填効率Ec)とエンジン回転速度Neとに基づいて、目標EGR導入時におけるEGR率である体積効率係数補正用EGR率b(目標排気還流状態の排気還流量相当値)を演算する。
【0026】
筒内EGR率演算部26は、回転速度センサ15から入力したエンジン回転速度Neとインマニ圧センサ18からから入力したインマニ圧Pb、更にEGR開度センサ19から入力したEGRバルブ12の開度θegrに基づいて、例えばあらかじめ記憶しているマップを用いて現運転点でのEGR率a(現状の排気還流量相当値)を演算する。
体積効率係数演算部27は、EGR非導入時体積効率係数演算部22において演算したEGR非導入時における体積効率係数woEGRと、目標EGR導入時体積効率係数演算部23において演算した目標EGR導入時における体積効率係数wEGRと、体積効率係数補正用EGR率演算部25において演算した目標EGR導入時におけるEGR率bと、筒内EGR率演算部26において演算した現運転点でのEGR率aとに基づいて、現運転点での体積効率係数kveを演算する。
【0027】
現運転点での体積効率係数Kveは、以下の式(2)によって演算される。
Kve=wEGR×(a/b)+(woEGR×(1-(a/b))・・・(2)
以上のように、本実施形態のエンジン2は、EGR装置10を備えており、負荷に基づいて目標EGR率となるようにEGRバルブ12を制御する。そして、エンジン2の吸気量を演算するために使用する体積効率係数として、EGR非導入時の体積効率係数woEGRと目標EGR率導入時の体積効率係数wEGRを夫々演算する。しかし、EGRバルブ12を非導入(閉弁)と導入(開弁)との間で切り替えた直後では、体積効率係数はEGR非導入時の値woEGRと目標EGR率導入時の値wEGRとの間を移行するため、このような移行中においては、体積効率係数は目標EGR率導入時の値wEGRやEGR非導入時の値woEGRとは異なる値となる。
【0028】
これに対し、本実施形態では、EGR非導入時における体積効率係数woEGRと、目標EGR導入時における体積効率係数wEGRとを補間して、EGR導入時における体積効率係数Kveを演算する。
詳しくは、エンジン2の現状の運転点を表すインマニ圧Pb及びエンジン回転速度Neより、EGR非導入時の体積効率係数woEGRと、目標EGR率導入時の体積効率係数wEGRとを夫々演算して、EGR導入時と非導入時とで選択して現運転点での体積効率係数Kveとして使用するのではなく、目標EGR導入時のEGR率bと現運転点でのEGR率aとの比に対応して、EGR非導入時の体積効率係数woEGRと目標EGR導入時の体積効率係数wEGRとの間の値に現状の体積効率係数Kveを設定する。
【0029】
このようにEGR導入時における体積効率係数Kveを、エンジン2の運転状態に基づいてEGR非導入時の体積効率係数woEGRと目標EGR導入時の体積効率係数wEGRとの間の値に設定するので、EGR導入時において目標EGR率となっていない状況でも、体積効率係数Kveを精度よく演算することができる。
これにより、エンジン2の過渡運転状態のようにEGRバルブ12の開度が変化している状況においても、体積効率係数Kveを用いて筒内への新気の吸入量を精度よく演算することができ、当該新気の吸入量に基づいて燃料供給量を精度よく制御することが可能となり、燃費の向上を図ることができる。
【0030】
また、体積効率係数演算部27は、Kve=(wEGR×(a/b)+(woEGR×(1-(a/b)))によって現状のエンジンの体積効率係数Kveを演算するので、現状のエンジンの体積効率係数Kveを容易にかつ精度よく求めることができる。
このように、EGR非導入時の体積効率係数woEGRと目標EGR導入時の体積効率係数wEGRとの間に体積効率係数Kveを設定する際に、目標EGR導入時のEGR率bと現運転点でのEGR率aとの比(a/b)を用いることで、EGR非導入時の体積効率係数woEGRと目標EGR導入時の体積効率係数wEGRとの間で適切な重みづけをした加重平均を取り、現状のエンジンの体積効率係数Kveを正確に演算することができる。
【0031】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定するものではない。例えば上記実施形態では、
EGR非導入時体積効率係数演算部22や目標EGR導入時体積効率係数演算部23においてエンジン2の回転速度Neとインマニ圧Pbを用いて体積効率係数woEGRあるいはwEGRを演算しているが、エンジン2の負荷あるいは負荷に相当する指標を代わりに用いて演算してもよい。
【0032】
また、体積効率係数補正用EGR率演算部25や筒内EGR率演算部26においてEGR率を演算しているが、EGR率の代わりにEGR量(排気還流量)あるいはEGR量に相当する指標を演算し、これらの比を体積効率係数演算部27において体積効率係数Kveの演算に使用してもよい。
また、本実施形態は、吸気ポートに燃料を噴射するガソリンエンジンに本発明を適用しているが、筒内に燃料を噴射するエンジンや、圧縮着火するディーゼルエンジン等のようなEGR装置を備えた各種エンジンに本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
2 エンジン
11 EGR通路(排気還流路)
13 EGRバルブ(排気還流弁)
15 回転速度センサ(エンジン回転速度検出器)
18 インマニ圧センサ(吸気圧検出器)
19 EGR開度センサ(還流弁開度検出器)
20 エンジンコントロールユニット(排気還流制御部)
22 EGR非導入時体積効率係数演算部(非排気還流時体積効率係数演算部)
23 目標EGR導入時体積効率係数演算部(目標排気還流時体積効率係数演算部)
24 筒内空気量演算部(目標排気還流時排気還流量演算部)
25 体積効率係数補正用EGR率演算部(目標排気還流時排気還流量演算部)
26 筒内EGR率演算部(現排気還流量演算部)
27 体積効率係数演算部