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特許7177392トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20221116BHJP
   C08G 65/329 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C08G65/30
C08G65/329
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057912
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2019172993
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2018063421
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】尾木 公一
(72)【発明者】
【氏名】粒崎 拓真
(72)【発明者】
【氏名】義村 耕平
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014371(JP,A)
【文献】特開2015-180698(JP,A)
【文献】特表2012-528857(JP,A)
【文献】特開2018-062655(JP,A)
【文献】Polym.Chem.,2016,Vol7,p2389-2394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるトリチル基含有単分散ポリエチレングリコールおよび下記式(2)で表されるジトリチル体不純物を含む混合物から、前記ジトリチル体不純物を分離して除去することによって、前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールを得る精製方法であって、
下記工程(A)、工程(B)および工程(C)をこの順で行うことを特徴とする、トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの精製方法。

【化26】
(式(1)において、nはエチレンオキシド単位の繰り返し単位数であって、3以上、48以下である)

【化27】
(式(2)において、mは、エチレンオキシド単位の繰り返し単位数であって、3以上、92以下である)

工程(A): 下記有機溶剤II中で、式(1)で表される前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの水酸基を二塩基酸無水物と反応させることによって、エステル構造およびカルボキシル基を有するエステル化合物を含む反応溶液を得るエステル化反応工程

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記反応溶液と、下記有機溶剤I、有機溶剤IIおよび有機溶剤IIIからなる混合有機溶剤と、pH3~7の水溶液とを用いて分液抽出精製を行うことによって水層と有機層とを分離し、式(2)で表される前記ジトリチル体不純物を前記有機層に分配し、前記エステル化合物を前記水層に分配する抽出工程

工程(C): 前記水層に塩基を添加することによって前記エステル化合物の加水分解を行い、前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールを得る工程

有機溶剤I: 炭素数3以下のアルコール溶剤
有機溶剤II: 合計炭素数8以下の芳香族炭化水素溶剤
有機溶剤III: 合計炭素数10以下の飽和脂肪族炭化水素溶剤
【請求項2】
前記工程(A)において、前記二塩基酸無水物が、コハク酸無水物およびグルタル酸無水物からなる群より選ばれたことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(B)において、前記有機溶剤Iが、メタノール、エタノールおよびプロパノールから選択される一種以上の溶剤であり、前記有機溶剤IIが、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であり、前記有機溶剤IIIが、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(B)における前記混合有機溶剤の混合比率は、前記有機溶剤Iの質量比率が15~55質量%であり、前記有機溶剤IIの質量比率が15~75質量%であり、前記有機溶剤IIIの質量比率が50質量%以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(B)の前記抽出工程中の温度が0℃以上、60℃以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(B)の前記抽出工程を繰り返すことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(C)における前記塩基が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選ばれた一種以上の塩基であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用途に用いられる単分散ポリエチレングリコール(PEG)を効率良く高純度に製造する為の精製方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、単分散PEG合成特有の、PEG鎖長延長反応により生成するジトリチル体不純物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤に修飾することにより、血中滞留性を向上させるPEGはドラッグデリバリーシステム(DDS)・医薬分野で広く用いられてきた。このようなPEGは、近年では、薬剤に修飾した際の性能や安全性の観点からより高純度であることが求められている。
【0003】
一方で、PEGはエチレンオキシドの開環重合により合成された、多数の分子量を持つ不均一な混合物である。これに対し、低分子量のエチレングリコールなどの原料から逐次合成を行う単分散PEGは単一の分子量を持つ単一化合物であり、高純度を特徴とする新たなDDS素材である。これら単分散PEGは逐次合成を行うことから、開環重合により合成するこれまでのPEGに対して鎖長の延長に掛かる手間が煩雑であり、エチレングリコール鎖長数48以下の低分子量体が汎用される。
【0004】
近年、リンカーを介して薬剤と抗体とを結合させ、抗原提示細胞に薬物を能動的に運搬することが可能な抗体結合医薬(Antibody-Drug Conjugate:ADC)が実用化されて高い注目を集めている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
このADCのリンカー材料として利用が進められているものの1つが、ヘテロ型単分散PEGである。ヘテロ型単分散PEGは、両末端に互いに異なる官能基を有する単分散PEGであることから、その各末端に抗体と薬剤を結合させることができる。しかし、ヘテロ型単分散PEGの中に、両末端に同じ官能基を有する単分散PEGが存在すると、抗体が2つ結合した不純物または薬剤が2つ結合した不純物が生成する。これら不純物が存在することで、目的物であるADCの収率が低下することから、本分野において、高純度なヘテロ型単分散PEGが必要とされる。
【0006】
また、ADCを製造する際は、通常、薬物の結合個数を質量分析計やHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて確認する為、リンカー材料の中にエチレングリコール鎖長の異なる単分散PEGが不純物として存在すると、その確認が困難になるという製造上の問題が生じる。また、エチレングリコール鎖長の異なる不純物の存在により、前記ADC製造時に添加する抗体や薬剤の当量が不明確となるために高価な抗体や薬剤を過剰に使用する必要が生じるという問題や、医薬品申請の際に複数の分子量の化合物が生じ、化合物の同定や各種試験の実施が必要になるという問題がある。したがって、前記ヘテロ型単分散PEGとしては、エチレングリコール鎖長が同じ単分散PEGを1種のみ、高純度で含有することが重要といえる。
【0007】
このように、ADCのリンカー材料として用いるヘテロ型単分散PEGとしては、主成分として、両末端に互いに異なる官能基を有するヘテロ型単分散PEGであって、エチレングリコール鎖長が均一である単分散PEGを、特に高純度で含有することが望まれていた。
【0008】
一般的に、単分散PEGの鎖長延長工程は、嵩高い疎水基であるトリチル基などの水酸基の保護基を有したエチレングリコール誘導体を原料として用いることが公知である。また、その単分散PEGの鎖長の延長にかかる各工程では、鎖長数や官能基の異なる不純物が生成する。しかし低分子量の単分散PEGは高分子量のPEGと異なり官能基の影響を大きく受け、またその多くが液体であることから、ポリマー特有の簡便な晶析精製が行えないことが多い。よってこれら不純物が目的物に多く残存することになる。また鎖長延長工程においては目的物と不純物の間に明確な極性差が無く、工業利用可能な精製法では分離することが難しい。
【0009】
単分散PEGの製法に関する報告は複数あるが、特許文献1では以下のような製法で単分散PEGの鎖長延長を行っている。
【化1】

【0010】
上記のように、この鎖長延長の工程では、目的物の12量体の単分散PEGである化合物8に、ジトリチル体不純物3、6、9が含まれる。これら不純物は目的物と類似の物性を有しているため、除去が難しく、スケールアップに不向きなカラムクロマトグラフィーなどの精製方法に限定される。また、特許文献1にはこれらジトリチル体不純物を化合物8から除去するための精製方法に関する記載はない。
【0011】
特許文献1では化合物8の水酸基を嵩高い疎水基であるトシル基に変換した後、脱トリチル反応を行いジオール体となった不純物3,6,9を分液抽出により除去している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Toxins、2011年、3、p.848-883
【文献】J.Med.Chem.、2011年、54、p.3606-3623
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2017-14371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記から、工業的に実施可能な既存の精製方法では、ジトリチル体不純物を除去する為には、トシル基などの嵩高い疎水基に一度変換することが必要となる。しかし、本来の官能基変換工程でこの嵩高い疎水基を要さない化合物を得ることを目的とした場合、ジトリチル体不純物除去の為の一連の工程を追加することで、合成工程を煩雑化させ、合成効率を低下させることが課題である。
【0015】
一方、化合物8の水酸基をメチル基などの疎水性の低い疎水基に変換した後に、特許文献1の上記脱トリチル反応およびジオール体となった不純物3,6,9の除去を試みたところ、ジオール体不純物と目的物を分液抽出にて分離することは出来なかった。このように、特許文献1の方法では、付加する官能基によってジトリチル体不純物の除去ができないことが明らかとなった。
【0016】
また、ジトリチル体不純物を含有する単分散PEGを用いて反応を行う場合、原料単分散PEGの純度を正確に算出するための適切な方法がないため、反応に使用する適正な試薬添加量を決定することができない。また、不純物の量がばらつくと、常に同等の反応が行えず、過剰の試薬による副反応の発生や試薬不足による反応未達等の危険性がある。また、得られる生成物の純度も不明確となる。加えて、単分散PEGの精製操作として汎用される分液抽出による精製操作にも悪影響を与える。鎖長違いのジトリチル体不純物がそれぞれ互いに異なる親疎水性を示し、分層性を低下させることから抽出効率の低下を招く場合がある。
【0017】
以上から、単分散PEG中に含まれる鎖長延長工程由来の特定の分子量を持つジトリチル体不純物を効率よく除去する方法が望まれている。
【0018】
本発明は、前記単分散PEGの鎖長延長工程にて副生する特定の鎖長違いのジトリチル体不純物の精製に関するものである。すなわち、本発明の課題は、工業利用可能な手法で、医薬用途に適した高純度な単分散PEGを効率的に得られる精製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、単分散PEGの鎖長延長工程後に得られる混合物について、片末端トリチル基含有単分散PEGの水酸基をエステル化によりカルボン酸を導入して親水性を引き上げた後、特定組成の抽出操作を繰り返し、ジトリチル体不純物を有機層へ抽出・除去できることを見出した。さらに続けて、水層の片末端トリチル基含有単分散PEG誘導体のエステル基を加水分解させることで、速やかに高純度な片末端トリチル基含有単分散PEGが得られることを見出した。
【0020】
この発明の特徴は、片末端トリチル基含有単分散PEGに効率よくカルボン酸を導入できること、抽出精製時に、特定のpH、特定の炭化水素系溶剤と芳香族系溶剤の混合比率、抽出温度を制御することで、ジトリチル体不純物を有機層へ除去できること、そして続く加水分解工程を含む3工程を、連続して一連のプロセスで実施可能である点であり、工業利用可能で効率的な精製方法である。
【0021】
すなわち本発明は、以下のものである。
(1) 下記式(1)で表されるトリチル基含有単分散ポリエチレングリコールおよび下記式(2)で表されるジトリチル体不純物を含む混合物から、前記ジトリチル体不純物を分離して除去することによって、前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールを得る精製方法であって、
下記工程(A)、工程(B)および工程(C)をこの順で行うことを特徴とする、トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの精製方法。

【化2】
(式(1)において、nはエチレンオキシド単位の繰り返し単位数であって、3以上、48以下である)

【化3】
(式(2)において、mは、エチレンオキシド単位の繰り返し単位数であって、3以上、92以下である)

工程(A): 下記有機溶剤II中で、式(1)で表される前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールの水酸基を二塩基酸無水物と反応させることによって、エステル構造およびカルボキシル基を有するエステル化合物を含む反応溶液を得るエステル化反応工程

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記反応溶液と、下記有機溶剤I、有機溶剤IIおよび有機溶剤IIIからなる混合有機溶剤と、pH3~7の水溶液とを用いて分液抽出精製を行うことによって水層と有機層とを分離し、式(2)で表される前記ジトリチル体不純物を前記有機層に分配し、前記エステル化合物を前記水層に分配する抽出工程

工程(C): 前記水層に塩基を添加することによって前記エステル化合物の加水分解を行い、前記トリチル基含有単分散ポリエチレングリコールを得る工程

有機溶剤I: 炭素数3以下のアルコール溶剤
有機溶剤II: 合計炭素数8以下の芳香族炭化水素溶剤
有機溶剤III: 合計炭素数10以下の飽和脂肪族炭化水素溶剤
【0022】
(2) 前記工程(A)において、前記二塩基酸無水物が、コハク酸無水物およびグルタル酸無水物からなる群より選ばれたことを特徴とする、(1)の方法。
【0023】
(3) 前記工程(B)において、前記有機溶剤Iが、メタノール、エタノールおよびプロパノールから選択される一種以上の溶剤であり、前記有機溶剤IIが、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であり、前記有機溶剤IIIが、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であることを特徴とする、(1)または(2)の方法。
【0024】
(4) 前記工程(B)における前記混合有機溶剤の混合比率は、前記有機溶剤Iの質量比率が15~55質量%であり、前記有機溶剤IIの質量比率が15~75質量%であり、前記有機溶剤IIIの質量比率が50質量%以下であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかの方法。
【0025】
(5) 前記工程(B)の前記抽出工程中の温度が0℃以上、60℃以下であることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかの方法。
【0026】
(6) 前記工程(B)の前記抽出工程を繰り返すことを特徴とする、(1)~(5)のいずれかの方法。
【0027】
(7) 前記工程(C)における前記塩基が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選ばれた一種以上の塩基であることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、医薬用途に適した高純度な単分散PEGが得られる新規な精製法である。この精製方法では、従来の技術では効率的な分離が困難な鎖長延長工程で生成する片末端トリチル基含有単分散PEG(式(1))と鎖長の異なる特定分子量のジトリチル体不純物(式2)とを、末端水酸基の誘導および抽出精製により効率的に分離できる。また、誘導された官能基部分も精製後水溶液のまま速やかに脱離させ誘導前の元の構造に戻すことが可能である。すなわち、工業的に容易に実施可能である連続した工程で、ジトリチル体不純物を大きく低減した高純度な片末端トリチル基含有単分散PEGを収率良く得ることが可能である。
【0029】
また、本発明により、片末端トリチル基含有単分散PEGを精製し、単離できることから、これまではジトリチル体不純物を含んだ状態で実施していた次工程の官能基変換工程において、再現良く、高純度、高収率で単分散PEG誘導体を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1における化合物2のNMR測定結果を示す。
図2】実施例1における化合物2’のNMR測定結果を示す。
図3】実施例3における化合物5のNMR測定結果を示す。
図4】実施例3における化合物5’のNMR測定結果を示す。
図5】実施例5における化合物8のNMR測定結果を示す。
図6】実施例5における化合物8’のNMR測定結果を示す。
図7】実施例6における化合物5の精製後のNMR測定結果を示す。
図8】実施例6における化合物5の精製前後のTLC図を示し、左が精製前、右が精製後を示す。
図9】実施例7における化合物10の分液洗浄前(工程A終了後)のNMR測定結果を示す。
図10】実施例7における化合物10の分液洗浄後(工程B終了後)のNMR測定結果を示す。
図11】実施例7における化合物8の精製後(工程C終了後)のNMR測定結果を示す。
図12】実施例7における化合物8精製前後のTLC図を示し左が精製前、右が精製後を示す。
図13】実施例11における化合物14のNMR測定結果を示す。
図14】実施例11における化合物14’のNMR測定結果を示す。
図15】実施例13における化合物17のNMR測定結果を示す。
図16】実施例13における化合物17’のNMR測定結果を示す。
図17】実施例15における化合物20のNMR測定結果を示す。
図18】実施例15における化合物20’のNMR測定結果を示す。
図19】実施例16における化合物20の精製後のNMR測定結果を示す。
図20】実施例16における化合物20の精製前後のTLC図を示し、左が精製前、右が精製後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明におけるPEG化合物とは、エチレングリコール鎖の繰り返し構造を持つ化合物の総称である。また、PEGとは、エチレンオキシドの開環重合により得られる、複数の分子量を持つ多数のPEG化合物の混合物を示す。これとは異なり、単分散PEGとは、目的とするPEG化合物が、エチレングリコールを原料とした逐次合成により得られた単一分子量を持つPEG化合物であり、言い換えると、エチレングリコール鎖長数(エチレンオキシド単位の繰り返し単位数)が単一であるPEG化合物である。
【0032】
単分散PEGの鎖長延長工程は、トリチル基を水酸基の保護基として用いる一般的な鎖長延長反応を行うものである。鎖長延長の際に、目的とするトリチル基を1つ有し、もう片末端が水酸基である片末端トリチル基含有単分散PEGと両末端がトリチル基であり、特定鎖長数をもつ単分散PEGであるジトリチル体不純物との混合物が得られる。本発明は、この混合物の中から、式(2)のジトリチル体を分離し、式(1)の片末端トリチル基含有単分散PEGを得る。
【0033】
以下に本発明を実施するに当たり、好適な条件に関して記載する。しかしながら、これらの態様は、本発明の説明を目的とし、クレームにより定義された本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
本発明の片末端トリチル基含有単分散PEGのエチレングリコール鎖長数nは3以上、48以下であり、好ましくは4以上、24以下であり、より好ましくは4以上、20以下であり、特に好ましくは8以上、12以下である。対応するジトリチル体の不純物鎖長数mは3以上、92以下であり、好ましくは4以上、44以下であり、より好ましくは4以上、36以下であり、特に好ましくは4以上、20以下である。
【0035】
本発明の片末端トリチル基含有単分散PEGは分岐構造を持たない、直鎖型の単分散PEGである。
【0036】
本発明の分液抽出時に使用する各有機溶剤は、親水性が強い溶剤から弱い溶剤へと向かって順番に、以下の有機溶剤I~IIIの各群に分類する。
有機溶剤I
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールを例とする合計炭素数3以下の水溶性かつ親水性アルコール溶剤で有り、好ましくはメタノール、エタノールおよびプロパノールであり、より好ましくはメタノールである。
有機溶剤II
ベンゼン、トルエン、キシレンを例とする合計炭素数8以下の芳香族炭化水素溶剤であり、好ましくはトルエンおよびキシレンであり、より好ましくはトルエンである。
有機溶剤III
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンを例とする合計炭素数10以下の飽和脂肪族炭化水素溶剤であり、好ましくはペンタンおよびヘキサンおよびヘプタンであり、より好ましくはヘキサンである。
【0037】
(工程(A))
二塩基酸無水物を用いて、鎖長延長工程で得られた単分散PEG混合物中の片末端トリチル基含有単分散PEGの水酸基を二塩基酸エステルとするエステル化反応工程である。得られたエステル化合物は、エステル構造およびカルボキシル基を有する。
【0038】
前記エステル化反応は二塩基酸無水物と塩基触媒を用いて実施する。
用いる二塩基酸無水物は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、メチルコハク酸無水物、メチルグルタル酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、酒石酸無水物を例とする二塩基酸無水物であり、片末端トリチル基含有単分散PEGの親水性を向上させるため、開環時のメチレン鎖炭素数3以下であり分岐鎖を持たないコハク酸無水物およびグルタル酸無水物が好ましく、より好ましくはコハク酸無水物である。二塩基酸無水物は溶剤および原料に含まれる水により開環し、二塩基酸となる為、小過剰添加するのが良い。通常モル比で1.0~3.0倍であり、より好ましくは1.0~2.0倍である。過剰量が多い場合、後の抽出工程で水溶液の酸性度が上がり、トリチル基の脱離の危険性がある。
【0039】
塩基触媒は片末端トリチル基含有単分散PEGに対してモル比で0.01~1.0倍量添加するのが良く、好ましくは0.5~1.0倍量である。塩基触媒は二塩基酸無水物が水により開環して生成する二塩基酸の中和に消費される為、添加量が少ない場合には反応が遅くなる傾向にある。また塩基触媒が不足し、溶液中の二塩基酸が増加した場合トリチル基の脱離の危険性がある。
【0040】
前記エステル化反応は溶剤中で実施することが出来、有機溶剤IIから選択される溶剤を用いる。前記溶剤の使用量は片末端トリチル基含有単分散PEGに対して1.0~2.0質量倍が好ましい。
【0041】
前記エステル化反応は、通常は0℃~120℃の間で実施し、好ましくは30℃~110℃、より好ましくは50℃~80℃である。温度が低いと反応速度が遅くなる傾向に有り、高いとトリチル基が脱離する傾向にある。反応時間は前記反応条件により異なるが通常1~48時間程度が好ましい。
【0042】
反応後は、溶液中に残存する二塩基酸無水物由来の二塩基酸および塩基触媒を除去しても良い。その場合は有機溶剤IIを用いて反応液を希釈後、食塩濃度を調整した食塩水により抽出を行い、水層に二塩基酸および塩基触媒を除去する。
【0043】
前記水溶液の食塩濃度は単分散PEGの水層への分配が無ければ特に限定されないが、通常は添加水溶液に対して5~25質量%、好ましくは15~25質量%の濃度である。また抽出温度は各溶液の分層性の改善を行う為、通常は10℃~80℃、好ましくは30℃~60℃の範囲で行う。抽出温度は低いと単分散PEGエステル化合物の水層への分配が向上し、乳化する傾向に有り、高いとトリチル基の脱離が起こる傾向がある。
【0044】
工程(A)では、このようなエステル化反応によりカルボン酸末端を含有する片末端トリチル基含有単分散PEGの二塩基酸エステルが得られる。二塩基酸無水物としてコハク酸無水物もしくはグルタル酸無水物を用いた場合には、式(3)に示す構造の単分散PEGエステル化合物(カルボン酸誘導体)とジトリチル体不純物の混合物が得られる。このエステル化合物は、エステル構造およびカルボキシル基を有する。
【0045】
【化4】


(nはエチレンオキシド単位の繰り返し単位数であって、3以上、48以下の整数である。xは、使用した二塩基酸無水物によって変わる整数であり、2もしくは3である。)
【0046】
前記工程(A)でのトリチル基の脱離は、エステル化反応時にジトリチル体不純物の末端に対して発生した場合は、エチレングリコール鎖長違いの単分散PEGエステル化合物が副生することになり、本発明により分離不可能な新規不純物となる為に注意を要する。
【0047】
(工程(B))
前記工程(A)で得られた混合物溶液に対して、有機溶剤I、II、IIIからなる混合有機溶剤および水溶液を添加し、攪拌や振とうなどにより混合し、一定時間これを静置することにより、水層に前記単分散PEGエステル化合物を、有機層にジトリチル体不純物を分離させ、抽出精製を行う工程である。
【0048】
単分散PEGエステル化合物は疎水性であるトリチル基および親水性であるカルボン酸を含有し、両親媒性化合物特有の溶解性を示す。この為、エチレングリコール鎖長数にもよるが、単分散PEGエステル化合物は親水性有機溶剤以外の水・有機溶剤に対しては均一溶液となり難い。他方、分離する対象であるジトリチル体不純物は疎水性官能基のみを持つが、エチレングリコール鎖由来の親水性を示すため、親水性溶剤にも可溶である。それぞれの溶解性は以下のようになる。

単分散PEGエステル化合物の溶解性.
有機溶剤I>有機溶剤II≒水>>>有機溶剤III
ジトリチル体不純物の溶解性.
有機溶剤I>有機溶剤II>有機溶剤III>水
【0049】
前記単分散PEGエステル化合物を水層へ抽出する為にはカルボン酸をイオン化させ、水溶性を向上させる必要がある。しかし、イオン化した場合でも前述の通り水層へ均一に溶解し難く乳化状態となっており、乳化の抑制には、有機溶剤Iの添加、もしくは加温、もしくは有機溶剤Iの添加および加温を要する。
【0050】
一方、単分散PEGエステル化合物の二塩基酸エステル部分は塩基性条件下で容易に加水分解を受ける。これにより原料の片末端トリチル基含有単分散PEGへと分解し、続く抽出操作により有機層へと分配し損失する。
以上から、単分散PEGエステル化合物の分液抽出精製に用いる水溶液のpHは、pH3~7、好ましくはpH5~7の弱酸性-中性条件である。単分散PEGエステル化合物が溶解した水層は、pH3~7、好ましくはpH5~7の弱酸性-中性条件である。
【0051】
単分散PEGエステル化合物をイオン化させる為には、pHを調整した水溶液を水層として添加する。pHを調整する為に使用する塩は、カルボン酸をイオン化可能であれば特に限定されないが、通常はリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、フタル酸塩、酒石酸塩または乳酸塩等の有機塩および無機塩が含まれる。また、これらの複数の有機塩や無機塩を組み合わせて用いても良い。
【0052】
上記塩の濃度は、単分散PEGエステル化合物の分液抽出精製に用いる水溶液のpHが3~7であれば特に限定はされないが、塩濃度が高すぎると有機溶剤との抽出洗浄時に水層に単分散PEGエステル化合物を保持できず、また後述の有機溶剤Iとの混合時に塩が析出するため、水に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0053】
上記イオン化した単分散PEGエステル化合物の溶解性は、有機溶剤I>水溶液>有機溶剤II>>>有機溶剤IIIとなる。一方、ジトリチル体不純物の溶解性は、有機溶剤I>有機溶剤II>有機溶剤III>水溶液である。これにより各化合物の水層・有機層に対する分配の差が明確になり、分液抽出による精製が可能となる。
【0054】
ジトリチル体不純物の分離には、前記水層から有機溶剤IIを用いてジトリチル体不純物の抽出を行う必要がある。しかし、有機溶剤IIには単分散PEGエステル化合物も可溶であり、有機溶剤IIのみを有機層として用いた場合は単分散PEGエステル化合物の損失が生じる。そこで、単分散PEGエステル化合物が不溶の有機溶剤IIIを添加し、単分散PEGエステル化合物の損失を低減することでジトリチル体不純物の選択性を向上させ、効率的にジトリチル体不純物を有機層に抽出・分離することが可能となる。
【0055】
好ましい各有機溶剤の混合比率は、精製する単分散PEGのエチレングリコール鎖長数に依存する。単分散PEGエステル化合物はエチレングリコール鎖長が短いほど疎水性であるトリチル基の影響を強く受け、水層に保持することが難しくなる。よって、鎖長が短いほど、有機層Iおよび有機層IIIの混合比率を引き上げる必要がある。
【0056】
一方、ジトリチル体不純物はエチレングリコール鎖長が長いほど親水性であるエチレングリコール鎖の影響を強く受け、疎水性が低下し、水層との親和性が上昇する。よって、鎖長が長いほど有機溶媒IIの混合比率を引き上げ、ジトリチル体不純物の有機層側への抽出効率を引き上げる必要がある。
【0057】
抽出時の水溶液の量は原料の単分散PEG化合物に対して通常は0.5~10質量倍であり、好ましくは1~5質量倍である。水層の乳化を抑制するために有機溶剤Iを添加する場合に要する溶剤量は、通常は水溶液の0.3~4質量倍であり、より好ましくは水層の0.8~2.4質量倍である。有機溶剤IIおよびIII、もしくは有機溶剤IIからなる溶液の合計質量は、水溶液もしくは水溶液と有機溶剤Iからなる溶液の合計質量に対して通常は0.3~2倍であり、より好ましくは0.7~1.2倍である。
【0058】
混合有機溶剤の混合比率は、有機溶剤I:55%以下、有機溶剤II:15~75%、有機溶剤III:50%以下(全て質量%)が好ましく、より好ましい混合比率は有機溶剤I:15~55%、有機溶剤II:15~75%、有機溶剤III:50%以下(全て質量%)である。
【0059】
鎖長ごとの好ましい混合比率は、エチレングリコール鎖長3~7では、有機溶剤I:25~55%、有機溶剤II:15~45%、有機溶剤III:20~50%(全て質量%)であり、より好ましくは有機溶剤I:35~45%、有機溶剤II:25~35%、有機溶剤III:30~40%(全て質量%)である。
【0060】
エチレングリコール鎖長8~24では、有機溶剤I:20%~50%、有機溶剤II:30%~70%、有機溶剤III:0%~45%(全て質量%)が好ましく、より好ましくは有機溶剤I:25~45%、有機溶剤II:40~60%、有機溶剤III:5~25%であり、更に好ましくは有機溶剤I:27.5~32.5%、有機溶剤II:47.5~52.5%、有機溶剤III:17.5~22.5%(全て質量%)である。
【0061】
エチレングリコール鎖長25~48では、有機溶剤I:0~45%、有機溶剤II:45~75%、有機溶剤III:0~35%(全て質量%)が好ましく、より好ましくは有機溶剤I:25~35%、有機溶剤II:55~65%、有機溶剤III:15~25%(全て質量%)である。
【0062】
前記抽出精製時の温度は、低いと水層の乳化が解除できず、高すぎると有機溶剤が揮発することから、通常は0-60℃であり、好ましくは30-60℃であり、より好ましくは45-55℃である。
【0063】
(工程(C))
抽出後の水層に塩基を添加し、二塩基酸エステルの加水分解反応を行い、単分散PEGエステル化合物を片末端トリチル基含有単分散PEGに戻した上で有機層に抽出して回収する工程である。
【0064】
単分散PEGエステル化合物を含んだ水溶液に塩基を添加し、加水分解を行う。水溶液に塩基化合物を添加し、水層のpHを9以上に維持し、塩基性下の加水分解反応を行い、エステルを分解させることが好ましい。
【0065】
加水分解反応で使用する塩基はpH9以上に調整可能な塩基であれば制限はないが、好ましくは求核性を持つ強塩基である。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0066】
加水分解反応後の水溶液に有機溶剤を添加し、目的物を有機層に抽出して片末端トリチル基含有単分散PEGを回収する。濃縮・結晶化・乾燥のいずれかを含む工程によって片末端トリチル含有単分散PEGを得る。
【0067】
片末端トリチル基含有単分散PEG回収時に使用する有機溶剤はトルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンから選択される有機溶剤であり、好ましくはトルエン、クロロホルム、ジクロロメタンであり、より好ましくはトルエンである。
【実施例
【0068】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
本発明の原料に用いられる片末端トリチル基含有単分散PEGは、特許文献1を参考にして実施例1-5および10-15において合成した。得られた8量体、12量体および24量体の片末端トリチル基含有単分散PEGには複数のジトリチル体不純物が含まれ、含有量の正確な定量は困難であるが、片末端トリチル基含有単分散PEGの水酸基を、トリクロロアセチルイソシアネートを用いてラベル化し、得られた化合物の1H-NMR測定結果から、各段階で含まれるジトリチル体不純物の含量を概算した。実施例6-9および16では、上記実施例にて得られた8量体、12量体および24量体の片末端トリチル基含有単分散PEGの精製を行い、ジトリチル体不純物の除去を確認した。
【0070】
なお各実施例の反応においては、片末端トリチル基含有単分散PEGの正確なモル数が不明である為、全量が片末端トリチル基含有単分散PEGであると仮定し、試薬当量を算出した。
【0071】
本発明で得られる単分散PEGの測定については、1H-NMR分析では日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600を使用した。測定にはφ5mmチューブを用い、重水素化溶媒としてCDCl3を使用し、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
【0072】
TLC分析では、メルクミリポア社製TLCガラスプレート
シリカゲル60 F254を使用し、特に記載なき場合は展開溶媒としてクロロホルム:メタノール=85:15(体積比率)もしくはクロロホルム:メタノール=9:1(体積比率)を用いた。標品に用いた化合物とのヨウ素呈色におけるスポットの比較を行い、評価した。実施例6-9および16における工程(A)のエステル化反応および工程Bの分液抽出によるジトリチル体不純物の除去の確認には片末端トリチル基含有単分散PEGを標品として用いた。また、工程(C)のエステルの加水分解反応の確認には、単分散PEGエステル化合物を用いた。
【0073】
(実施例1 化合物2の合成)

【化5】

【0074】
四ツ口フラスコにテトラエチレングリコール1(2,000ml、11.5mol)を入れ、トルエン(500ml×2回)を用いて共沸脱水を2回行った。ナスフラスコ内を窒素パージし、ピリジン(180ml、2.2mol)及びトリチルクロリド(TrtCl、400g、1.4mol)を加え、室温で3時間撹拌した。3時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC、ヘキサン: 酢酸エチル=1:1(体積比))を用いてTrtClの消失を確認し、イオン交換水 2,000mlを加えた。得られた混合液にトルエン 1,000mlを加えた後に分液し、有機層をイオン交換水/飽和食塩水の混合溶液 1,000ml(イオン交換水: 飽和食塩水=4:1(体積比))で1回、1M 塩酸水溶液 500mLで1回、飽和食塩水 500mlで4回洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過し、ろ液にトルエン(500ml×3回)を加えて共沸脱水を3回行い、淡黄色透明液体の化合物2を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図1)により、得られた反応生成物中には上記化合物3も含まれていることを確認した。

化合物2
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.4 (1H, t, -C-(OCH2CH2)4-OH),
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3由来を含む),
3.45-3.85 (14H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )3-OH, 化合物3由来を含む),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3由来を含む)
収量:633g

【化6】

【0075】
得られた化合物2を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物2’の1H-NMR測定結果(図2)から、化合物3は約7mol%含まれていることを確認した。

δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3含有量算出式:
(((2-[δ4.38])/4H)/([δ4.38]/2H))×100 (mol%)

化合物2’
1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3由来を含む),
3.45-3.85 (12H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )2-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3由来を含む)
4.38 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3由来を含む)
【0076】
(実施例2 化合物4の合成)

【化7】

【0077】
ナスフラスコに上記化合物2を含有する反応生成物(化合物2: 628g、0.14mol未満)及びテトラヒドロフラン(THF)2,000mlを入れ、0℃に冷却した。水酸化ナトリウム水溶液(200g、5.0mol/600ml)を加え、0℃で20分間撹拌した。反応混合液にトシルクロリド(TsCl)/THF溶液(300g、1.6mol/600ml)を30分かけて滴下し、0℃で4時間撹拌した。4時間後、TLC(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比))を用いて化合物2の消失を確認した後、未反応のTsClを消失させるため、室温で15時間撹拌した。15時間後、TLCでTsClの消失を確認し、イオン交換水 300mlとジエチルエーテル 500mlを加えた。混合液を飽和重曹水 500mlで1回、飽和食塩水 500mlで3回洗浄した。有機層に活性炭 5.0gと硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物4を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3も含まれていることを確認した。
収量:818g
【0078】
(実施例3 鎖長8の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物5)の合成)

【化8】

【0079】
二口ナスフラスコに水素化ナトリウム(81g)を入れ、窒素置換した。脱水ヘキサン(500ml×2回)で2回洗浄し、THF 1,800mlを加えて0℃に冷却した。ここにトルエン 500mlで3回共沸脱水したテトラエチレングリコール1(2,000ml、11.5mol)を滴下ロートに入れ、30分かけて滴下した。滴下終了後、トルエン 500mlで3回共沸脱水した上記実施例2で得られた化合物4を含有する反応生成物(化合物4: 813g、1.4mol未満)にTHF 1,000mlを混合し、同じ滴下ロートに入れ、15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を40℃に昇温し、19時間撹拌した。19時間後、TLC(酢酸エチル)を用いて化合物4が消失したことを確認し、室温へと放冷した。反応混合液にイオン交換水 2,000ml及び飽和食塩水 2,000mlを加え、分液した。水層にジエチルエーテル 500mlを加えて抽出した。分液した有機層を混合し、イオン交換水/飽和食塩水の混合溶液 500ml(イオン交換水:飽和食塩水=1:1(体積比))で1回、飽和食塩水 500mlで5回洗浄した。有機層に活性炭 5.0gと硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物5を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図3)により、得られた反応生成物中には上記化合物3および6も含まれていることを確認した。

化合物5
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.58 (1H, t, -C-(OCH2CH2)8-OH),
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6由来を含む),
3.45-3.85 (30H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )7-OH, 化合物3,6由来を含む)
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6由来を含む)

収量:788g

【化9】

【0080】
得られた化合物5を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物5’の1H-NMR測定結果(図4)から、化合物3および6は約12mol%(化合物3:7mol%, 化合物6:5mol%, 概算)含まれていることを確認した。

δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3,6含有量算出式:
(((2-[δ4.42])/4H)/([δ4.42]/2H))×100 (mol%)
化合物3の含有量は実施例1の数値を適用

化合物5’
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6由来を含む),
3.45-3.85 (28H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )6-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3,6由来を含む),
4.42 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-O-CH2-, 化合物3,6由来を含む)
【0081】
(実施例4 化合物7の合成)

【化10】

【0082】
ナスフラスコに実施例3で合成した化合物5を含有する反応生成物(化合物5: 598g、0.83mol未満)及びトルエン(2,450ml)を入れ、ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(139ml、1.00mol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(71ml、0.92mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、TLC測定により化合物5の消失を確認し、1M HClaq. 700mlを加え、分液した。有機層を1M HCl aq. 700mlで1回、飽和重曹水 700mlで2回、飽和食塩水 700mlで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物7を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3および6も含まれていることを確認した。

収量:561g
【0083】
(実施例5 鎖長12の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物8)の合成)

【化11】

【0084】
二口ナスフラスコに水素化ナトリウム(46g)を入れ、窒素置換した。脱水ヘキサン(350ml×2回)で2回洗浄し、MeCN 1,400mlを加えて0℃に冷却した。トルエン 2,450mlで3回共沸脱水したテトラエチレングリコール1(1,120ml、6.5mol)にMeCN 350mlを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、トルエン 350mlで3回共沸脱水した上記実施例4で得られた化合物7を含有する反応生成物(化合物7:561g、0.81mol未満)にMeCN 350mlを混合し、同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を80℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後、1H-NMR (CDCl3)により化合物7が消失したことを確認し、室温へと放冷した。反応混合液を減圧濃縮し、残渣にトルエン 1400mlを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 700mlで2回、飽和食塩水 700mlで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物8を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図5)により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6および9も含まれていることを確認した。

化合物8
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.57 (1H, b, -C-(OCH2CH2)12-OH,
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-), 化合物3,6,9由来を含む),
3.45-3.85 (46H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2 CH 2)11-OH, 化合物3,6,9由来を含む),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9由来を含む),

収量:598g

【化12】

【0085】
得られた化合物8を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物8’の1H-NMR測定結果(図6)から、化合物3,6および9は約15mol%(化合物3:7mol%, 化合物6:5mol%, 化合物9:3mol%, 概算)含まれていることを確認した。

δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3,6,9含有量算出式:
(((2-[δ4.42])/4H)/([δ4.42]/2H))×100 (mol%)
化合物3,6の含有量は実施例1,3の数値を適用

化合物8’
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6,9由来を含む),
3.45-3.85 (44H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )11-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3,6,9由来を含む),
4.42 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9由来を含む)
【0086】
(実施例6 鎖長8の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物5)の精製)

【化13】

【0087】
(工程(A))
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに化合物5を主成分とする混合物(38g, 62mmol、実施例3から化合物3,6 合計約12mol%, 約17質量%含有)、酢酸ナトリウム(3g, 37mmol)、トルエン(38g)を添加した。フラスコ内を窒素パージし、無水コハク酸(7g, 68mmol)を添加した。70℃で1時間攪拌した。1時間後にTLC測定により、化合物5の消失を確認し、40℃以下に冷却した。トルエン(61g)を添加後、23.4wt%食塩水(228g)を加え、55℃で計3回分液洗浄した。
【0088】
(工程(B))
有機層にヘキサン(38g)、メタノール(61g)、pH5.5 クエン酸リン酸(0.2M)バッファー(60.8g)を仕込み、分層させた。白濁した水層のpHが6-7であることを確認し、45~50℃で15分攪拌後、静置した。上下層が透明であることを確認し、有機層を廃棄した。トルエン(99g)、ヘキサン(38g)を水層に添加し、45-50℃で15分攪拌後、静置した。上下層に分層後、有機層を廃棄した。更に2回、トルエン(99g)、ヘキサン(38g)を添加して分液洗浄を実施後、TLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9)由来のスポットが消失したことを確認した。

分液洗浄時溶剤質量比
有機溶剤I:有機溶剤II:有機溶剤III=30.8%:50.0%:19.2%
【0089】
(工程(C))
洗浄後水層(pH6.3)に400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液(11g)を添加し、25℃で2時間攪拌した。2時間後の水層(pH12.8)のTLC測定から、化合物11が消失していることを確認した。
水層にトルエン(331g)を添加し、30℃で15分攪拌した。静置し、分層を確認後、TLC測定から化合物5が水層に残存していないことを確認し、水層を廃棄した。有機層に20wt%食塩水(228g)を添加し、30℃で分液洗浄した。回収した有機層を硫酸ナトリウム(38g)で脱水し、トルエンを用いてろ過後濃縮して、化合物5(21g)を得た。NMR測定結果(図7)の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物5のTLC結果比較(図8)からジトリチル体が含まれていないことを確認した。

ジトリチル体不純物3,6 N.D.(TLC測定、図8参照)、 収量21g、収率67%

化合物5(精製後)
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.52 (1H, s, -C-(OCH2CH2)8-OH,)
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-O-CH 2 -),
3.45-3.85 (30H, m, -O-CH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )7-OH),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-O-CH2-)
【0090】
(実施例7 鎖長12の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物8)の精製)

【化14】

【0091】
(工程(A))
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに化合物8を主成分とする混合物(145g, 化合物8 184mmol、実施例5からジトリチル体不純物3,6,9合計約15mol%, 約18質量%含有)、酢酸ナトリウム(9g, 110mmol)、トルエン(145g)を添加した。フラスコ内を窒素パージし、無水コハク酸(20g, 202mmol)を添加し、70℃で1時間攪拌した。1時間後にTLC測定により、化合物8の消失を確認し、40℃以下に冷却した。トルエン(232g)を添加後、23.4wt%食塩水(870g)を加え、55℃で計3回分液洗浄した。
【0092】
(工程(B))
有機層にヘキサン(145g)、メタノール(232g)、pH5.5 クエン酸リン酸(0.2M)バッファー(232g)を仕込み、分層させた。白濁した水層のpHが5-6であることを確認し、45~50℃で15分攪拌後、静置した。上下層が透明であることを確認し、有機層を廃棄した。トルエン(378g)、ヘキサン(145g)を水層に添加し、45-50℃で15分攪拌後、静置した。上下層に分層後、有機層を廃棄した。更に2回、トルエン(378g)、ヘキサン(145g)を添加して分液洗浄を実施後、TLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9)由来のスポットが消失したこと、分液洗浄後のNMR測定結果が理論値と一致した(洗浄前:図9、 洗浄後:図10)ことを確認した。

化合物10(洗浄後)
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.62 (4H, m, -OCO-CH 2 CH 2 -COOH),
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 -),
3.45-3.85 (44H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2 CH 2)10-OCH 2 CH2-O-CO-),
4.25 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-CH2CH2-),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2-)

分液洗浄時溶剤質量比
有機溶剤I:有機溶剤II:有機溶剤III=30.7%:50.1%:19.2%
【0093】
(工程(C))
洗浄後水層(pH6.0)に400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液(32g)を添加し、25℃で2時間攪拌した。2時間後の水層(pH13)のTLC測定から、化合物10が消失していることを確認した。
水層にトルエン(1260g)を添加し、30℃で15分攪拌した。静置し、分層を確認後、TLC測定から化合物8が水層に残存していないことを確認し、水層を廃棄した。有機層に20wt%食塩水(870g)を添加し、30℃で分液洗浄した。回収した有機層を硫酸ナトリウム(145g)で脱水し、トルエンを用いてろ過後濃縮して、化合物8(98g)を得た。NMR測定結果(図11)の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物8のTLC結果比較(図12)からジトリチル体が含まれていないことを確認した。
【0094】
ジトリチル体不純物3,6,9 N.D.(TLC測定、図12参照)、 収量98g、収率82%

化合物8(精製後)
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.57 (1H, s, -OCH2CH2-(OCH2CH2)11-OH)
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-)
3.45-3.85 (46H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2)11-OH),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-)
【0095】
(実施例8 鎖長12の片末端トリチル基含有単分散PEGの精製、グルタル酸無水物使用)

【化15】

【0096】
(工程(A))
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに化合物8を主成分とする混合物(30g, 38mmol、実施例5からジトリチル体不純物3,6,9合計約15mol%, 約18質量%含有)、酢酸ナトリウム(1.9g, 23mmol)、トルエン(30g)、を添加した。フラスコ内を窒素パージし、無水グルタル酸(4.8g, 42mmol)を添加した。70℃で1時間攪拌した。1時間後にTLC測定により、化合物8の消失を確認し、40℃以下に冷却した。トルエン(48g)を添加後、23.4wt%食塩水(180g)を加え、55℃で計3回分液洗浄した。
【0097】
(工程(B))
有機層にヘキサン(30g)、メタノール(48g)、pH5.5 クエン酸リン酸(0.2M)バッファー(48g)を仕込み、分層させた。白濁した水層のpHが5-6であることを確認し、45~50℃で15分攪拌後、静置した。上下層が透明であることを確認し、有機層を廃棄した。トルエン(78g)、ヘキサン(30g)を水層に添加し、45-50℃で15分攪拌後、静置した。上下層に分層後、有機層を廃棄した。更に3回、分液洗浄を実施後、TLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9)由来のスポットが消失したことを確認した。

分液洗浄時溶剤質量比
有機溶剤I:有機溶剤II:有機溶剤III=30.8%:50.0%:19.2%
【0098】
(工程(C))
洗浄後水層(pH6.12)に400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液(6.6g)を添加し、25℃で4時間攪拌した。4時間後の水層(pH13.5)のTLC測定から、化合物12が消失していることを確認した。
水層にトルエン(261g)を添加し、30℃で15分攪拌した。静置し、分層を確認後、TLC測定から化合物8が水層に残存していないことを確認し、水層を廃棄した。有機層に20wt%食塩水(870g)を添加し、30℃で分液洗浄した。回収した有機層を硫酸ナトリウム(30g)で脱水し、トルエンを用いてろ過後濃縮して、化合物8(15g)を得た。NMR測定結果の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物8のTLC結果比較からジトリチル体が含まれていないことを確認した。

ジトリチル体不純物N.D.、 収量15g、収率62%
【0099】
(実施例9 実施例7の有機溶剤III比率が高い例)
実施例7の工程(A)と同じ操作を実施し、工程(B)における溶剤の比率がメタノール(231g)、pH5.5 クエン酸リン酸(0.2M)バッファー(222g)、トルエン(378g)、ヘキサン(290g)となるように溶剤を添加した。この溶剤比率で分液洗浄を実施し、その後トルエン(378g)、ヘキサン(290g)を添加して分液洗浄操作を9回繰り返した。TLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9)由来のスポットが消失したことを確認した。

分液洗浄時溶剤質量比
有機溶剤I:有機溶剤II:有機溶剤III=25.7%:42.0%:32.3%
【0100】
工程(C)は実施例7と同じ操作を行い、化合物8(76g)を得た。NMR測定結果の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物8のTLC結果比較からジトリチル体が含まれていないことを確認した。

ジトリチル体不純物N.D.、 収量76g、収率64%
【0101】
(実施例10 化合物13の合成)
【化16】
【0102】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに実施例3に記載の方法で合成した化合物8を含有する反応生成物(化合物8: 90g、0.11mol未満)及びトルエン(451ml)を入れ、フラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(29ml、0.21mol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(14ml、0.18mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、TLC測定により化合物8の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液 450mlを加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液 450mlで1回、飽和重曹水 450mlで2回、飽和食塩水 450mlで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物13を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6および9も含まれていることを確認した。

収量:96g
【0103】
(実施例11 鎖長16の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物14)の合成)
【化17】
【0104】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付け四ツ口フラスコに水素化ナトリウム(6.3g)を入れ、窒素置換後、MeCN 192mlを加えて0℃に冷却した。トルエン 53mlで共沸脱水したテトラエチレングリコール1(108g、0.56mol)にMeCN 96mlを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、上記実施例10で得られた化合物13を含有する反応生成物(化合物13:96g、0.11mol未満)にMeCN 96mlを混合し、同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後、1H-NMR (CDCl3)により化合物13が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液 170ml、ヘキサン 146mlを加え、分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン 481mlを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 260mlで1回、飽和食塩水 480mlで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物14を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図13)により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6,9および15も含まれていることを確認した。

化合物14
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.78 (1H, b, -C-(OCH2CH2)16-OH,
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-), 化合物3,6,9,15由来を含む),
3.45-3.85 (62H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2 CH 2)11-OH, 化合物3,6,9,15由来を含む),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15由来を含む)

収量:103 g

【化18】
【0105】
得られた化合物14を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物14’の1H-NMR測定結果(図14)から、化合物3,6,9および15は約19mol%(化合物3:7mol%, 化合物6:5mol%, 化合物9:3mol%, 化合物15:4mol%,概算)含まれていることを確認した。
δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3,6,9,15含有量算出式:
(((2-[δ4.43])/4H)/([δ4.43]/2H))×100 (mol%)
化合物3,6,9の含有量は実施例1,3,5の数値を適用

化合物14’
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6,9,15由来を含む),
3.45-3.85 (60H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )14-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3,6,9,15由来を含む),
4.43 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15由来を含む)
【0106】
(実施例12 化合物16の合成)
【化19】
【0107】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに実施例11で合成した化合物14を含有する反応生成物(化合物14:100g、0.10mol未満)及びトルエン(500ml)を入れ、フラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(20ml、0.14mol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(9.6ml、0.12mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、TLC測定により化合物14の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液 500mlを加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液500mlで1回、飽和重曹水 500mlで2回、飽和食塩水 500mlで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物16を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6,9および15も含まれていることを確認した。

収量:106g
【0108】
(実施例13 鎖長20の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物17)の合成)
【化20】
【0109】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付け四ツ口フラスコに水素化ナトリウム(5.7g)を入れ、窒素置換後、MeCN 208mlを加えて0℃に冷却した。トルエン 48mlで共沸脱水したテトラエチレングリコール1(97g、0.50mol)にMeCN 105mlを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、上記実施例12で得られた化合物16を含有する反応生成物(化合物16:109g、0.10mol未満)にMeCN 105mlを混合し、同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後、1H-NMR (CDCl3)により化合物16が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液190ml、ヘキサン159mlを加え、分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン 524mlを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 285mlで1回、飽和食塩水 520mlで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物17を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図15)により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6,9,15および18も含まれていることを確認した。

化合物17
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.64 (1H, b, -C-(OCH2CH2)20-OH,
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-), 化合物3,6,9,15,18由来を含む),
3.45-3.85 (78H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2 CH 2)19-OH, 化合物3,6,9,15,18由来を含む),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15,18由来を含む)

収量:109g

【化21】
【0110】
得られた化合物17を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物17’の1H-NMR測定結果(図16)から、化合物3,6,9,15および18は約23mol%(化合物3:7mol%, 化合物6:5mol%, 化合物9:3mol%, 化合物15:4mol%, 化合物18:4mol%,概算)含まれていることを確認した。

δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3,6,9,15,18含有量算出式:
(((2-[δ4.43])/4H)/([δ4.43]/2H))×100 (mol%)
化合物3,6,9,15の含有量は実施例1,3,5,11の数値を適用

化合物17’
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6,9,15,18由来を含む),
3.45-3.85 (76H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )18-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3,6,9,15,18由来を含む),
4.43 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15,18由来を含む)
【0111】
(実施例14 化合物19の合成)
【化22】
【0112】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに実施例13で合成した化合物17を含有する反応生成物(化合物17: 107g、0.094mol未満)及びトルエン(535ml)を入れ、フラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(18ml、0.13mol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(8.7ml、0.11mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、TLC測定により化合物17の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液 535mlを加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液 535mlで1回、飽和重曹水 535mlで2回、飽和食塩水 535mlで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物19を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6,9,15および18も含まれていることを確認した。

収量:112g
【0113】
(実施例15 鎖長24の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物20)の合成)
【化23】
【0114】
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付け四ツ口フラスコに水素化ナトリウム(5.2g)を入れ、窒素置換後、MeCN 221mlを加えて0℃に冷却した。トルエン 44mlで共沸脱水したテトラエチレングリコール1(88g、0.46mol)にMeCN 111mlを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、上記実施例14で得られた化合物19を含有する反応生成物(化合物19:113g、0.092mol未満)にMeCN 111mlを混合し、同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後、1H-NMR (CDCl3)により化合物19が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液200ml、ヘキサン168mlを加え、分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン 556mlを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 300mlで1回、飽和食塩水 555mlで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物20を含有する反応生成物を得た。また、TLC測定およびNMR測定結果(図17)により、得られた反応生成物中には上記化合物3,6,9,15,18および21も含まれていることを確認した。

化合物20
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.66 (1H, b, -C-(OCH2CH2)24-OH,
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-), 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む),
3.45-3.85 (94H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2 CH 2)23-OH, 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む)

収量:115g

【化24】
【0115】
得られた化合物20を含有する反応生成物にトリクロロアセチルイソシアネートを用い、水酸基をラベル化した化合物20’の1H-NMR測定結果(図18)から、化合物3,6,9,15,18および21は約27mol%(化合物3:7mol%, 化合物6:5mol%, 化合物9:3mol%, 化合物15:4mol%, 化合物18:4mol%, 化合物21:4mol%,概算)含まれていることを確認した。

δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3,6,9,15,18,21含有量算出式:
(((2-[δ4.43])/4H)/([δ4.43]/2H))×100 (mol%)
化合物3,6,9,15,18の含有量は実施例1,3,5,11,13の数値を適用

化合物20’
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-, 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む),
3.45-3.85 (92H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2 )22-OCH 2 CH2-OCO-, 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む),
4.43 (2H, t, -OCH2CH 2 -OCO-NH-COCCl3),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-, 化合物3,6,9,15,18,21由来を含む)
【0116】
(実施例16 鎖長24の片末端トリチル基含有単分散PEG(化合物20)の精製)
【化25】
【0117】
(工程(A))
冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた四ツ口フラスコに化合物20を主成分とする混合物(97g, 74mmol、実施例15からジトリチル体不純物3,6,9,15,18,21 合計約27mol%, 約30質量%含有)、酢酸ナトリウム(6.0g, 74mmol)、トルエン(97g)を添加した。フラスコ内を窒素パージし、無水コハク酸(11g, 110mmol)を添加した。70℃で4時間攪拌した。4時間後にTLC測定により、化合物20の消失を確認し、40℃以下に冷却した。トルエン(155g)を添加後、23.4wt%食塩水(582g)を加え、55℃で1回分液洗浄した。
【0118】
(工程(B))
有機層にヘキサン(33g)、メタノール(226g)、リン酸水素二ナトリウム(39g)、水(185g)を仕込み、分層させた。白濁した水層のpHが5-7であることを確認し、45~50℃で15分攪拌後、静置した。上下層が透明であることを確認し、有機層を廃棄した。トルエン(252g)を水層に添加し、45-50℃で15分攪拌後、静置した。上下層に分層後、有機層を廃棄した。更に2回、分液洗浄を実施後、TLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9,15,18,21)由来のスポットが消失したことを確認した。

分液洗浄時溶剤質量比
有機溶剤I:有機溶剤II:有機溶剤III=44.2%:49.3%:6.5%
【0119】
(工程(C))
洗浄後水層(pH6.68)に400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液(19g)を添加し、35℃で4時間攪拌した。4時間後の水層(pH11.3)のTLC測定から、化合物22が消失していることを確認した。
水層にジクロロメタン(643g)を添加し、30℃で15分攪拌した。静置し、分層を確認後、TLC測定から化合物20が水層に残存していないことを確認し、水層を廃棄した。有機層に20wt%食塩水(582g)を添加し、30℃で分液洗浄した。回収した有機層を硫酸ナトリウム(97g)で脱水し、ジクロロメタンを用いてろ過後濃縮して、化合物20(68g)を得た。NMR測定結果(図19)の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物20のTLC結果比較(図20)からジトリチル体が含まれていないことを確認した。

ジトリチル体不純物N.D.(TLC測定、図20参照)、 収量68g、 収率:70%

化合物20(精製後)
1H-NMR (CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.69 (1H, s, -OCH2CH2-(OCH2CH2)23-OH)
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2 CH2-)
3.45-3.85 (94H, m, -OCH2CH 2 -(OCH 2 CH 2)23-OH),
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5 )3C-OCH2CH2-)
【0120】
上記実施例6-9および16から、鎖長延長工程直後の片末端トリチル基含有単分散PEGからジトリチル体不純物を除去できることが説明された。
また実施例9では、ジトリチル体不純物の除去可能ではあるが、ジトリチル体不純物の除去に要する分液洗浄回数が増加し、実施例7にくらべると収率が低下することが説明された。
【0121】
(比較例1 水溶液のpHが高すぎる例)
実施例7の工程(A)と同じ操作を実施し、工程(B)における溶剤の比率が重曹(4wt%, pH8)水(232g)、メタノール(232g)、トルエン(378g)、ヘキサン(145g)となるように分液抽出を実施した。水溶液のpHは8であり、本発明の範囲外となっている。
分液抽出4回実施後にTLC測定からジトリチル体不純物(3,6,9)由来のスポットが消失したことを確認したが、分液抽出中に化合物10が加水分解し、化合物8となり、有機層に抽出され損失した。
工程(C)は実施例1と同様の操作を行い、化合物8(53g)を得た。NMR測定結果の積分値が理論値と一致し、精製前後の化合物8のTLC結果比較からジトリチル体が含まれていないことを確認した。

ジトリチル体不純物N.D.、 収量53g、 収率45%
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20