(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221116BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2019547044
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037491
(87)【国際公開番号】W WO2019070080
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017195300
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017206634
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017221361
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】野村 英司
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】菅原 和弘
(72)【発明者】
【氏名】橋村 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山田 範秀
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 俊之
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073229(JP,A)
【文献】特開昭58-145914(JP,A)
【文献】特開平03-126910(JP,A)
【文献】特開平04-289845(JP,A)
【文献】特開2013-073204(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125974(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/134876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0266477(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0758778(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0080048(US,A1)
【文献】特開平03-048232(JP,A)
【文献】特開2003-084365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,30/00
B60K 35/00
G08G 1/16
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画デバイスによって形成された映像光を投影する第1投影光学系と、
前記第1投影光学系による投影位置において光を拡散させる中間スクリーンと、
前記中間スクリーンに形成された中間像を拡大投影する第2投影光学系と、
前記中間スクリーンを基準軸の周りに回転させることにより前記中間スクリーンの機能領域を光軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記中間スクリーンは、回転により前記機能領域の前記光軸方向の位置が変化する立体形状部
を含む回転体に支持され、
前記回転体は、前記立体形状部の端に対応する位置で前記光軸方向に段差を有し、前記段差を繋ぐとともに前記中間スクリーンを回転させる前記基準軸を含む平面に対して傾斜した接続面を有する、表示装置。
【請求項2】
前記立体形状部は、前記機能領域の前記光軸方向の位置が回転に伴って連続的に変化する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記立体形状部は、連続的な螺旋面に沿って形成されている、請求項1及び2のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項4】
前記中間スクリーンは、一周期又は複数周期に対応する範囲に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記回転体は、前記光軸方向に関して等しい厚みを有する、請求項
1~4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
投影距離を少なくとも一部に関して段階的に変化させる段差部を有する、請求項
1~5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記立体形状部の前記光軸方向の位置は、前記立体形状部の回転位置に対して所定の一次関数で変化する、請求項
6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記立体形状部において、投影距離が最も近距離側となる領域を前記立体形状部の回転に対して前記中間スクリーンの前記光軸方向の位置に変化がない平面形状とした、請求項
6及び
7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記立体形状部は、前記中間スクリーンの回転の周方向に沿って前記機能領域をそれぞれカバーする複数の平坦領域に分割され、前記複数の平坦領域間に前記段差部を有する、請求項
6~8のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記立体形状部は、近距離に対応する側に前記段差部を有する、請求項
9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記立体形状部の回転位置に応じて前記第2投影光学系による投影距離を略線形的に変化させる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記立体形状部の回転位置に対する前記機能領域の前記光軸方向の位置が、所定の間隔で等差的に投影距離が変化する一次分数関数に従って変化する、請求項
11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記中間スクリーンは、前記段差部及び前記段差の少なくともいずれかにおいて、前記光軸方向から見て重畳して配置されている、請求項
1~13のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記立体形状部は、前記光軸方向に前記機能領域の位置が連続的、かつ周期的に往復運動するよう設定された面を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項15】
前記中間スクリーンを回転させる前記基準軸は、前記立体形状部の軸であり、前記光軸方向に対して傾斜して配置されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項16】
前記中間スクリーンは、前記光軸に略平行に延びる前記基準軸の周りに回転する、請求項
6~13のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項17】
前記中間スクリーンは、前記機能領域が前記光軸方向に対して略直交するように配置される、請求項
15及び
16のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項18】
前記中間スクリーンは、光透過性を有する中空の枠体の中に配置されている、請求項1~
17のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項19】
前記中空の枠体は、円筒形状を有する、請求項
18に記載の表示装置。
【請求項20】
検出領域内に存在するオブジェクトを検出するとともに、検出されたオブジェクトに対して虚像として関連情報像を付加的に投影する、請求項1~
19のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項21】
前記機能領域は、前記中間スクリーンの回転の周方向に沿って複数の部分領域に分割されている、請求項1~
20のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の投影位置を可変としたヘッドアップディスプレイ装置その他の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ(以下HUDとも称する)装置は、虚像を運転者からある一定の距離に生成するのが一般的であり、表示内容は、車速、カーナビ情報等に限られていた。そもそもHUD装置を車に搭載する目的は、運転者の視線移動を最小限に抑えることで、より安全な運転を支援するものであるが、安全運転支援という意味においては、上記のような表示内容だけでは不十分であり、例えば前方の車、歩行者、障害物等をカメラその他のセンサーで検知し、HUD装置を通して運転者に事前に危険を察知させて事故を未然に防ぐようなシステムの方がより好ましい。こういったシステムを実現するには、車、人、障害物等に対して枠状の危険信号を重畳させて表示させることが考えられる(特許文献1参照)が、運転者から虚像までの距離が一定だと運転者の眼の位置がずれた場合、実物と危険信号との位置関係がずれてしまい、ズレが過度となった場合、運転者が誤認してしまうという課題がある。
【0003】
なお、虚像の表示距離を変化させるHUD装置として、走査型の像形成手段と、拡散スクリーンと、投影手段と、拡散スクリーン位置を変える可動手段とを備え、拡散スクリーン位置を変化させることで虚像の奥行き方向の投影位置を変化させるものが公知となっている(特許文献2参照)。このHUD装置は、車の速度に伴って人間が注視する距離が変わることを鑑み、虚像の表示距離を近づけたり遠ざけたりして、運転者の視線移動を少なくするものであり、車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を調整しようとするものではない。
【0004】
ところで、車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を重ねる、又はその近傍に表示させて運転者に危険を伝えるといった目的でHUD装置を使用する場合、運転時の危険というものは視線の遠近に関係なく存在するものであるため、遠距離も近距離にも同時に危険信号を表示できることが好ましい。そのためには、拡散スクリーンを高速駆動し、それと同期させた映像を像形成手段によって生成することで、人間の目には同時に表示されているかのように見せることが考えられる。しかしながら、特許文献2のようなHUD装置では、拡散スクリーンの位置を可動にする機構の説明はあるが、同時表示のために拡散スクリーンを高速移動させるための工夫については説明がない。また、走査型の像形成手段では、高フレームレートでの表示切替えに対応することが難しいため、複数距離に虚像を同時に表示させる構成には向いていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-127160号公報
【文献】特開2009-150947号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、奥行き方向を含めて表示位置が異なる虚像を高速で変化させながら表示することができる表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した表示装置は、描画デバイスによって形成された映像光を投影する第1投影光学系と、第1投影光学系による投影位置において光を拡散させる中間スクリーンと、中間スクリーンに形成された中間像を拡大投影する第2投影光学系と、前記中間スクリーンを基準軸の周りに回転させることにより中間スクリーンの機能領域を光軸方向に移動させる駆動部と、を備え、前記中間スクリーンは、回転により機能領域の光軸方向の位置が変化する立体形状部を含む回転体に支持され、回転体は、立体形状部の端に対応する位置で記光軸方向に段差を有し、段差を繋ぐとともに中間スクリーンを回転させる基準軸を含む平面に対して傾斜した接続面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置を車体に搭載した状態を示す側方断面図であり、
図1Bは、ヘッドアップディスプレイ装置を説明する車内側からの正面図である。
【
図2】ヘッドアップディスプレイ装置を構成する投影光学系等の具体的な構成例を説明する拡大側方断面図である。
【
図3】
図3A及び3Bは、中間スクリーンを組み込んだ拡散部の構造を説明する一部破断平面図及び一部破断側面図であり、
図3Cは、拡散部中の回転体を説明する斜視図である。
【
図4】
図4A及び4Bは、回転体の基準軸の設定について説明する側面図であり、
図4Cは、中間スクリーンの回転に伴う機能領域の移動を説明する図である。
【
図5】中間像の位置の変化を具体的に例示する図である。
【
図6】中間像の位置と投影距離との関係を示すとともに、表示ゾーン及び距離ゾーンを説明する図である。
【
図7】ヘッドアップディスプレイ装置の全体構造を説明するブロック図である。
【
図10】
図7に示すヘッドアップディスプレイ装置の動作例を説明する図である。
【
図11】表示ゾーンでの表示の切替えの一例を説明する概念図である。
【
図12】第2実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図13】第3実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図14】第4実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図15】
図15A及び15Bは、第5実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図16】第6実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図17】第7実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置を構成する投影光学系等の具体的な構成例を説明する拡大側方断面図である。
【
図18】
図18A及び18Bは、中間スクリーンを組み込んだ拡散部の構造を説明する一部破断平面図及び一部破断側面図である。
【
図19】中間スクリーンの回転に伴う機能領域の移動を説明する図である。
【
図20】中間像の位置の変化を具体的に例示する図である。
【
図22】
図22Aは、拡散部に設けた段差部の具体的な形状を説明する拡大側面図であり、
図22Bは、段差部の拡大平面図である。
【
図24】表示ゾーンでの表示の切替えの一例を説明する概念図である。
【
図25】第8実施形態のヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図26】第9実施形態のヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図27】第10実施形態のヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図28】第11実施形態のヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図29】
図29A及び29Bは、第12実施形態の表示装置の中間スクリーンを組み込んだ拡散部の構造を説明する一部破断平面図及び一部破断側面図である。
【
図30】中間像の位置の変化を具体的に例示する図である。
【
図33】表示ゾーンでの表示の切替えの一例を説明する概念図である。
【
図34】第13実施形態のヘッドアップディスプレイ装置に組み込まれた画像表示装置を説明する図である。
【
図35】
図35Aは、回転体の変形例を説明する平面図であり、
図35Bは、回転体の変形例を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る第1実施形態の表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置について説明する。
【0010】
図1A及び1Bは、実施形態の表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置のうち画像表示装置100を説明する概念的な側方断面図及び正面図である。この画像表示装置100は、例えば自動車の車体2内に搭載されるものであり、投影ユニット10と表示スクリーン20とを備える。画像表示装置100は、投影ユニット10中の後述する描画デバイス11に表示されている画像情報を表示スクリーン20を介してドライバーVDに向けて虚像表示するものであり、表示装置とも呼ぶこともある。
【0011】
画像表示装置100のうち投影ユニット10は、車体2のダッシュボード4内であってディスプレイ50の背後に埋め込むように設置されており、運転関連情報等を含む画像に対応する映像光である表示光DLを表示スクリーン20に向けて射出する。表示スクリーン20は、コンバイナーとも呼ばれ、半透過性を有する凹面鏡又は平面鏡である。表示スクリーン20は、下端の支持によってダッシュボード4上に立設され、投影ユニット10からの表示光(映像光)DLを車体2の後方に向けて反射する。つまり、図示の場合、表示スクリーン20は、フロントウインドウ8とは別体で設置される独立型のものとなっている。表示スクリーン20で反射された表示光DLは、運転席6に座ったドライバーVDの瞳PU及びその周辺位置に対応するアイボックス(不図示)に導かれる。ドライバーVDは、表示スクリーン20で反射された表示光DL、つまり車体2の前方にある虚像としての投影像IMを観察することができる。一方、ドライバーVDは、表示スクリーン20を透過した外界光、つまり前方景色、自動車等の実像を観察することができる。結果的に、ドライバーVDは、表示スクリーン20の背後の外界像又はシースルー像に重ねて、表示スクリーン20での表示光DLの反射によって形成される運転関連情報等の関連情報を含む投影像(虚像)IMを観察することができる。
【0012】
ここで、表示スクリーン20をフロントウインドウ8と別体で構成しているが、フロントウインドウ8を表示スクリーンとして用い、フロントウインドウ8内に設定した表示範囲に投影を行って、ドライバーVDが投影像IMを観察できる構成としても構わない。この際、フロントウインドウ8のガラスの一部領域の反射率をコート等によって変更することで、反射領域を確保することができる。また、フロントウインドウ8での反射角度が例えば60度程度であれば、反射率が15%程度確保され、特にコートを設けなくても透過性を有する反射面として用いることができる。これら以外に、フロントウインドウ8のガラス中にサンドイッチする構成で表示スクリーンを設けることもできる。
【0013】
図2に示すように、投影ユニット10は、描画デバイス11を含む虚像型の拡大結像系である本体光学系13と、本体光学系13を動作させる表示制御部18と、本体光学系13等を収納するハウジング14とを備える。これらのうち本体光学系13と表示スクリーン20と組み合わせたものは、表示光学系30を構成する。
【0014】
本体光学系13は、描画デバイス11のほかに、描画デバイス11に形成された画像を拡大した中間像TIを形成する第1投影光学系である結像光学系15と、中間像TIを虚像に変換する第2投影光学系である虚像形成光学系17と、投影用の両光学系15,17間に配置される拡散部16とを備える。
【0015】
描画デバイス11は、2次元的な表示面11aを有する表示素子である。描画デバイス(表示素子)11の表示面11aに形成された像は、結像光学系(第1投影光学系)15で拡大されて拡散部16に設けた螺旋面状の中間スクリーン19に投影される。この際、2次元表示が可能な描画デバイス11を用いることで、中間スクリーン19に対する投影像の切替え、つまり表示スクリーン20越しに虚像として表示される投影像IMの切替えを比較的高速とできる。描画デバイス11は、DMDやLCOS等の反射型の素子であっても、液晶等の透過型の素子であってもよい。特に、描画デバイス11としてDMDやLCOSを用いると、明るさを維持しつつ画像を高速で切替えること(高速の間欠表示を含む)が容易になり、虚像距離又は投影距離を変化させる表示に有利である。なお、描画デバイス11は、表示距離又は投影距離を変化させる場合には、それぞれの投影距離に対して30fps以上、さらに望ましくは60fps以上のフレームレートで動作する。これにより、異なる投影距離に複数の投影像(虚像)IMをドライバーVDに対して同時に表示されているように見せることが可能になる。特に、90fps以上で表示の切替えを行う場合、DMDやLCOSが描画デバイス11の候補となる。
【0016】
拡散部16は、結像光学系(第1投影光学系)15による投影位置又は結像位置(つまり中間像の結像予定位置又はその近傍)に配置され、回転体16aと中空枠体16bとを有し、回転駆動部(駆動部)64に駆動されて例えば一定速度で基準軸SXの周りに回転する。
【0017】
図3Aは、拡散部16を説明する正面図であり、
図3Bは、拡散部16を説明する側方断面図であり、
図3Cは、拡散部16中の回転体16aを説明する斜視図である。拡散部16は、全体として円板に近い輪郭を有する螺旋状の回転体16aと、回転体16aを収納する円筒状の中空枠体16bとを有する。
【0018】
回転体16aは、中央部16cと外周光学部16pとを有する。回転体16aの外周光学部16pに形成された一方の表面16fは、平滑面又は光学面に形成されており、表面16f上には、全域に亘って中間スクリーン19が形成されている。回転体16aの表面16fは、立体形状部116として機能する。中間スクリーン19は、配光角を所望の角度に制御した拡散板である。中間スクリーン19は、配光角を所望の角度に制御した拡散板である。中間スクリーン19は、回転体16aに貼り付けられるシートとできるが、回転体16aの表面に形成された微細な凹凸パターンであってもよい。さらに、中間スクリーン19は、回転体16aの内部に埋め込むように形成されたものであってもよい。中間スクリーン19は、入射した表示光DLを拡散させることによって中間像TIを形成する(
図2参照)。回転体16aの外周光学部16pに形成された他方の表面16sは、平滑面又は光学面に形成されている。回転体16aは、光透過性を有する螺旋状の部材であり、一対の表面16f,16sは、基準軸SXを螺旋軸とする螺旋面となっている。結果的に、一方の表面16f上に形成された中間スクリーン19も連続的な螺旋面に沿って形成されたものとなっている。中間スクリーン19は、螺旋の一周期に対応する範囲に形成されている。換言すれば、立体形状部116は、その一回転又は一周期において一の螺旋パターンを有し、中間スクリーン19は、螺旋パターンに対応する範囲に形成されている。つまり、中間スクリーン19は、螺旋の1ピッチ分の範囲に形成されている。この結果、拡散部16の周に沿った一箇所に周期間段差(段差)16jが形成され、この周期間段差16jは、螺旋端(立体形状部116の端)に対応する位置で光軸AX方向又は基準軸SX方向に30mm以下の距離差又はピッチを与えるものとなっている。周期間段差16jにより、後述する中間スクリーン19の機能領域FAの光軸AX方向の位置を一部において非連続的ながら周期的に変化させることができる。周期間段差16jを30mm以内で設定すれば、立体形状部116で発生する回転体16aの形状非対称性を低減することができ、中間スクリーン19の平坦性の確保や回転体16aの回転の安定性を容易に確保できる。周期間段差16jは、螺旋端間の段差を繋ぐとともに、拡散部16を回転させる基準軸SXを含む平面に対して傾斜した接続面16kを有する。これにより、回転体16aの回転に伴う音の発生を抑制し、回転体16aの回転を安定化させることができる。上記のように、回転体16aの一対の表面16f,16sが基準軸SXを螺旋軸とする螺旋面であることから、回転体16aは、基準軸SX又は光軸AX方向に関して略等しい厚みtを有する。これにより、回転体16aを通過する光路長が一定に保たれるので、結像位置の調整が容易となる。
【0019】
回転体16aにおいて、周方向に沿った一箇所は、本体光学系13の光軸AXが通る機能領域FAとなっており、機能領域FAにおける中間スクリーン19の部分によって中間像TIが形成される。この機能領域FAは、回転体16aの回転に伴って回転体16a上において一定速度で移動する。つまり、回転体16aを回転させつつその一部である機能領域FAに表示光(映像光)DLを入射させることで、機能領域FA又は中間像TIの位置が光軸AXに沿って移動する(描画デバイス11の表示が動作していなければ、必ずしも表示としての中間像は形成されないが、中間像が形成されるであろう位置も中間像の位置と呼ぶ)。中間スクリーン19の連続的に変化する立体形状部116が連続的な螺旋面に沿って形成されていることにより、中間スクリーン19の回転に伴って中間スクリーン19の機能領域FAが螺旋面上で移動する。中間スクリーン19が一周期に対応する範囲に形成されており、中間スクリーン19の一回転で中間スクリーン19の機能領域FAが光軸AX方向の可動範囲の一端位置から他端位置まで移動するが、その際の移動は一回転で一周期となる。図示の例では、中間スクリーン19が螺旋の一周期に対応する範囲に形成されているので、回転体16aの1回転で中間スクリーン19の機能領域FA又は中間像TIは、光軸AX方向に段差に相当する距離だけ移動することになる。なお、結像光学系(第1投影光学系)15は、中間スクリーン19の位置によってピントぼけが生じないように、機能領域FAの移動範囲以上の所定の焦点深度を有している。又は、第1投影光学系である結像光学系15にフォーカシングする機能を持たせることで、ぼけのない像を得ることも可能である。
【0020】
中空枠体16bは、円柱状の外形輪郭を有し、側面部16eと一対の端面部16g,16hとで構成される。側面部16eと一対の端面部16g,16hとは、光透過性を有する同一の材料で形成されている。ただし、側面部16eは、光透過性を有していなくてもよい。一方の端面部16gの主面63a,63bは、互いに平行な平滑面又は光学面となっており、他方の端面部16hの主面64a,64bも、互いに平行な平滑面又は光学面となっている。ここで、主面63a,63b又は主面64a,64bは必ずしも平行な平面でなくてもよく、少なくとも機能領域FAに相当する範囲を自由曲面形状や非球面形状とすれば、例えば性能確保が難しい高倍率の光学系においても、光学系に要求される歪みや像面性等の像性能を確保することが可能となるので、必要に応じて望ましい面形状を選択すればよい。中空枠体16b中の回転体16aは、一対の中心軸部65を介して中空枠体16bに固定されており、中空枠体16bと回転体16aとは基準軸SXの周りに一体的に回転する。このように、中間スクリーン19を設けた回転体16aを中空枠体16b中に配置することで、回転体16aに塵等が付着することを抑制でき、回転体16aの回転に伴う音の発生を抑制することができ、回転体16aの高速での回転を安定化させることが容易になる。なお、回転体16aは、その外周部分において中空枠体16bに固定してもよい。この場合、回転体16aの厚みtを薄くすることが容易になる。
【0021】
図4A及び4Bを参照して、回転体16a(又は立体形状部116)の基準軸SXの設定について説明する。回転体16aの基準軸SXは、立体形状部116の軸であり、光軸AX方向に対してわずかに傾斜して配置されている。つまり、基準軸SXは、本体光学系13の光軸AXに対して非平行な状態でわずかに傾いて配置されている。ここで、回転体16a上の中間スクリーン19は、その局所的な機能領域FAが本体光学系13の光軸AX方向に対して略直交するように配置される。結果的に、中間像TIの光軸AXに対する傾きが所望の状態に設定され、かつ中間像TIの光軸AXに対する傾きを低減することができる。つまり、
図4Aに示すように、回転体16aを光軸AXから機能領域FAのある横方向に離れた視点で観察した場合、基準軸SXは、光軸AXに対して所定角度αだけ傾斜した状態となっており、
図4Bに示すように、回転体16aを基準として
図4Aの場合と直交する方向に離れた視点で観察した場合、基準軸SXは、光軸AXに対して所定間隔dだけ離れた状態となっている。このような構成とすることで、本実施形態にあるような螺旋構造の立体形状部116において、回転体の回転軸である基準軸SXと光軸AXの方向を一致させた場合に生じる、例えば画面左右方向での虚像投影距離の傾きを補正することが可能となる。なお、
図4Aにおいて一点鎖線で示す第1位置PO1は、機能領域FA又は中間像TIが最も光路上流側に位置した場合を示し、同様に一点鎖線で示す第2位置PO2は、機能領域FA又は中間像TIが最も光路下流側に位置した場合を示している。これらの位置PO1,PO2間の距離Dは、機能領域FA又は中間像TIの光軸AX方向の変位量に相当するものである。
【0022】
なお、本実施形態では光軸AXに対して基準軸SXが傾いた状態としているが、立体形状部116の螺旋形状の傾きが場所によって異なる場合や、螺旋形状と平板の組合せを用いる場合、傾き方向が変わる立体形状の場合等のように、立体形状部116の傾きが一定、又は略一定でない形状となっていると、この傾きが逆に作用して、さらに中間スクリーンが傾く箇所が、中間スクリーンの一部領域で起こってしまう可能性がある。このような場合には、敢えて傾きを設けずに光軸AXと基準軸SXとを一致させた構成とすることもある。
【0023】
図2に戻って、回転駆動部64によって拡散部16を一定速度で基準軸SXの周りに回転させることで、回転体16aの中間スクリーン19(又は立体形状部116)が光軸AXと交差する位置(つまり機能領域FA)も光軸AX方向に移動する。つまり、
図4Cに示すように、回転体16aの回転に伴って、中間スクリーン19上の機能領域FAは、例えば等角度でずれた位置に設定された隣接する機能領域FA’に順次シフトし、光軸AX方向に移動する。このような機能領域FAの光軸AX方向への移動により、中間像TIの位置も光軸AX方向に移動させることができる。詳細は後述するが、例えば中間像TIの位置を虚像形成光学系17側に移動させることにより、投影像IMまでの投影距離又は虚像距離を減少させることができる。また、中間像TIの位置を描画デバイス(表示素子)11側に移動させることにより、投影像IMまでの投影距離又は虚像距離を増加させることができる。
【0024】
虚像形成光学系(第2投影光学系)17は、結像光学系(第1投影光学系)15によって形成された中間像TIを表示スクリーン20と協働して拡大し、ドライバーVDの前方に虚像としての投影像IMを形成する。虚像形成光学系17は、少なくとも1枚のミラーで構成されるが、図示の例では2枚のミラー17a,17bを含む。虚像形成光学系(第2投影光学系)17は、回転体16aの機能領域FAにおける中間スクリーン19の湾曲(つまり中間像TIの像面湾曲)を補正するような光学特性を有するものとできる。
【0025】
図2等に示す画像表示装置100において、表示制御部18の制御下で回転駆動部64を動作させることで、拡散部16が基準軸SXの周りに回転して中間像TIの位置が光軸AX方向に繰り返し周期的に移動し、虚像形成光学系17によって表示スクリーン20の背後に形成される虚像としての投影像IMと観察者であるドライバーVDとの距離を大きく、又は小さくすることができる。このように、投影される投影像IMの位置を前後に変化させるとともに、表示制御部18の制御下で描画デバイス(表示素子)11による表示内容をその位置に応じたものとすることで、投影像IMまでの投影距離又は虚像距離を変化させつつ投影像IMの表示内容を変化させることになり、一連の投影像としての投影像IMを3次元的なものとすることができる。なお、機能領域FAが光軸AX方向に移動しても、機能領域FAにおける中間スクリーン19の湾曲状態は維持されるので、投影像IMの位置に関わらず虚像形成光学系(第2投影光学系)17による補正の効果は維持される。
【0026】
拡散部16若しくは回転体16aの回転速度又は機能領域FAの移動速度は、虚像としての投影像IMが複数個所又は複数投影距離に同時に表示されているかのように見せることができる速度であることが望ましい。ここで、各表示ゾーンの投影像IMを30fps以上、望ましくは60fps以上で切替えれば、表示される複数の画像が連続的な画像として認識される。例えば、拡散部16の動作に伴って投影像IMが近距離から遠距離までに5段階で順次投影されるものとして、描画デバイス11に200fpsで表示を行わせると、各距離(例えば近距離)の投影像IMは、40fpsで表示の切替えが行われることになり、各距離の投影像IMが並列的に行われかつ切替えが略連続的なものとして認識される。
【0027】
図5は、拡散部16の回転に伴う中間像TIの位置の変化を具体的に例示する図である。拡散部16の機能領域FAは、光軸AX方向に沿って鋸歯状の経時パターンPAで繰り返し周期的に移動しており、中間像TIの位置も、描画デバイス(表示素子)11が連続表示を行っている場合、図示のように光軸AX方向に沿って鋸歯状の経時パターンPAで繰り返し周期的に移動する。つまり、中間像TIの位置は、周期間段差16jに対応する箇所で不連続的ながら、拡散部16の回転に伴って連続的かつ周期的に変化する。この結果、図示を省略するが、投影像(虚像)IMの位置も、スケールは異なるが、中間像TIの位置と同様に光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動し、投影距離を連続的に変化させることができる。ここで、描画デバイス11は、連続表示を行うものでなく、表示内容を切替えつつ間欠的な表示を行うものであるから、中間像TIの表示位置も鋸歯状の経時パターン上における離散的な位置となる。ここで、
図5に示す例では中間像TIの位置を鋸歯状に時間に対して一定の傾きで変化させているが、表示させる距離の仕様に対して拡散部の回転も加味して、表示タイミングをコントロールできるように位置を変化させるのが望ましく、表示距離の仕様によっては一定の傾きとならない変化としても構わない。
【0028】
ここで、ある距離ゾーンの画像について表示を行う場合、
図5に示すように表示している時間内で中間像TIの位置が変化することで、表示している距離が変化する。この際、そのように距離が変化する表示ゾーンについて観察者(ドライバーVD)に見える表示距離は、その表示時間内で変化する距離の略平均位置となる。このことも加味して、経時パターンPAにおいて、最も近距離側の表示位置Pnと最も遠距離側の表示位置Pfとは、マージンを確保して、経時パターンPAの両端から離れた位置に設定される。また、経時パターンPAの途切れ目PDは、拡散部16の回転体16aに設けた周期間段差16jに対応する。
【0029】
図6は、中間像TIの位置と投影距離との関係又は中間像TIの位置と表示ゾーンとの関係を説明する図である。一点鎖線で示す特性C1に従って、中間像TIを光軸AX方向に等しい速度で移動させた場合、各距離ゾーンの切替時間の刻みδを一定値とすれば投影距離の刻み幅は、近距離では短く、遠距離では長くなる。中間像TIの移動の刻み幅Δは、表示する距離ゾーンの切替時間に相当するものとなっている。
【0030】
図5に示す中間像TIの位置両端間を移動する時間を1周期と考えた場合、奥行きを持つ表示の単位を表示ゾーンとして、その1周期の時間が各表示ゾーンの表示時間と、表示ゾーン数nの積よりも短い時間であれば、表示ゾーンは複数の距離ゾーンに亘るものとなり、少なくとも隣り合う表示ゾーンで、投影距離範囲に重なりが生じる(
図6の表示ゾーンDZ1~DZn参照)。このように投影距離範囲に関して重ねた表示を行うことで、同一の投影像(虚像)IMを奥行き方向に広がりを持たせて表示することができ、重なりを生じない表示に比較して各表示ゾーンの表示時間を長くすることが可能となり、投影像(虚像)IMの輝度が向上する。
【0031】
図6に示すように、特性C1に沿ってn個の表示ゾーンを設定することができる。ここで、説明の便宜上、最も近距離の表示ゾーンを第1表示ゾーンDZ1と呼び、最も遠距離の表示ゾーンを第n表示ゾーンDZn(nは自然数)と呼ぶ。複数の表示ゾーンDZ1~DZnは、近距離から遠距離になるに従って表示する距離幅が広がっている。複数の表示ゾーンDZ1~DZnのうち隣り合う表示ゾーンは、投影距離が部分的に重複しており、各表示ゾーンは、本来投影距離を異ならせるべきものを含む。すなわち、第k表示ゾーンDZk(kはnより小さい自然数)と第k+1表示ゾーンDZk+1とは、投影距離が部分的に重複し、例えば第2表示ゾーンDZ2と第3表示ゾーンDZ3とは、投影距離が部分的に重複している。第k表示ゾーンDZkは、そこに表示すべき表示対象の投影距離の本来の表示像に対して、その前、後、又は前後の双方で設定される表示ゾーンで表示する像も合せて表示した複合的な投影像となっている。表示ゾーンは、投影すべき距離が漸次変化するサブゾーンを含む。図示の例では、第k表示ゾーンDZkを表示している間の全体又はある一定時間内では4区間分の距離ゾーン又はサブゾーンLZk-2~LZk+1に相当するそれぞれの像が重なった状態の表示がされている。この場合、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnで表示される像の表示時間は、表示時間の刻みδのピッチで隣り合う表示ゾーンDZ1~DZn間でズレがあるため、その分表示されている間の近側と遠側との両端の距離が変動してその平均距離も変動する。人の目又は脳は、その表示ゾーンDZ1~DZnの平均距離で表示像を捉えるので、視覚的に同時に表示を行っている場合でも、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnの表示距離を異なる位置として表示している状態にできる。
【0032】
なお、第k表示ゾーンDZkを重なり合う距離ゾーンが切替わるタイミングで分割して基準サブゾーンLZkを含む投影距離が異なる一連のサブゾーンLZk-2~LZk+1として考えた場合、描画デバイス(表示素子)11に適宜表示動作を行わせることにより同一の投影像(虚像)IMをそれぞれのサブゾーンで表示させる。つまり、距離が段階的に変化する一連の複数のサブゾーンLZk-2~LZk+1の組合せによって表示ゾーンDZkが構成される。見方を変えれば、着目する1つの基準サブゾーンLZkに対応する距離ゾーンに投影したい局所的な像は、例えば4つの表示ゾーンに重複して繰り返し表示されるため、各距離ゾーンに投影される局所的な像は、輝度を一様に向上させたものとなる。この際、投影距離の変化を考慮して、隣り合う表示ゾーンに共通する距離ゾーン(サブゾーンLZk-2~LZk+1に対応)に投影される共通の局所的な投影像(虚像)IMを位置及び角度サイズが一致するように重ねて表示させる。これにより、投影距離が変化する投影像(虚像)IMをズレや滲みがない状態で表示することができる。また、この時の表示距離が、基準サブゾーンLZkに相当する距離となる。なお、
図6では、表示の便宜上、各表示ゾーンDZ1~DZnが横方向に延びるように示されているが、縦軸を中間像TIの位置とした場合、各表示ゾーンDZ1~DZnは、特性C1に沿って延びるものとなる。
【0033】
第1表示ゾーンDZ1~第n表示ゾーンDZnでの表示時間は、全て等しくなっている。各表示ゾーンDZ1~DZnでの表示時間を等しくすることで、各表示ゾーンDZ1~DZnの表示輝度を一致させることができ、観察者であるドライバーVDが意図せず特定距離の像に偏って着目する傾向が生じることを防止できる。
【0034】
近距離端の投影に付加している第1~3前補間ゾーンCZ1~CZ3は、第1距離ゾーンLZ1での表示距離を所望の距離とする観点で付加しているが、必須のものではない。同様に、遠距離端の投影に付加している第1~3後補間ゾーンCZ4~CZ6は、第n距離ゾーンLZnでの表示距離を所望の距離とする観点で付加しているが、必須のものではない。
【0035】
画面内の特定の奥行き方向で異なる対象を表示する場合、距離の異なる表示対象が、奥行き方向以外の2次元平面内に置いて重なる、又は略重なるような近い位置にあり、それらに対する表示間の干渉が発生してしまうことが考えられ、これを回避する必要がある。例えば表示ゾーンDZkの表示対象に対して別の表示距離DZk’に存在する表示対象が2次元平面内で近傍に位置していてそれぞれの対象に対する表示に干渉が生ずる場合には、干渉領域ではそれらを合成するような表示を行うことが考えられる。具体的には、一対の表示対象が重なる共通領域又は交わり領域では、一対の表示対象が半透過重畳表示されるような画像とし、一対の表示対象が重ならない差分領域又は独立領域では、各部分で標準的な表示を行えば足る。又は、色や大きさ(線の場合は太さも含む)、明るさ、明滅といった手法で違いを出した表示とする方法も考えられ、ドライバーVDに伝わるように工夫すればよい。
【0036】
図7は、ヘッドアップディスプレイ装置200の全体構造を説明する概念的ブロック図であり、ヘッドアップディスプレイ装置200は、その一部として画像表示装置100を含む。画像表示装置100は、
図2に示す構造を有するものであり、ここでは説明を省略する。
【0037】
ヘッドアップディスプレイ装置200は、画像表示装置100のほかに、環境監視部72と、主制御部90とを備える。
【0038】
環境監視部72は、検出領域内に存在するオブジェクトを検出するオブジェクト検出部であり、前方に近接して存在する移動体や人、具体的には自動車、自転車、歩行者等をオブジェクトとして識別し、オブジェクトの3次元的な位置情報を抽出する3次元計測器を有する。環境監視部(オブジェクト検出部)72は、3次元計測器として、外部用カメラ72aと、外部用画像処理部72bと、判断部72cとを備える。外部用カメラ72aは、可視又は赤外域において外界像の撮影を可能にする。外部用カメラ72aは、車体2内外の適所に設置されており、ドライバーVD又はフロントウインドウ8の前方の検出領域VF(後述する
図8参照)を外部画像として撮影する。外部用画像処理部72bは、外部用カメラ72aで撮影した外部画像に対して明るさ補正等の各種画像処理を行って判断部72cでの処理を容易にする。判断部72cは、外部用画像処理部72bを経た外部画像からオブジェクト画像の抽出又は切り出しを行うことによって自動車、自転車、歩行者等のオブジェクト(具体的には、後述する
図8中のオブジェクトOB1,OB2,OB3参照)の存否を検出するとともに、外部画像に付随する奥行情報から車体2前方におけるオブジェクトの空間的な位置を算出し3次元的な位置情報として記憶部72mに保管する。判断部72cの記憶部72mには、外部画像からオブジェクト画像の抽出を可能にするソフトウエアが保管されており、外部画像からオブジェクト画像を抽出する動作時には、記憶部72mから必要となるソフトウエアやデータが読み出される。判断部72cにより、例えば得られた画像内の各オブジェクト要素の形状、大きさ、色等から、オブジェクト要素に対応する要素が何かを検出することができる。その際の判断基準は、予め登録されている情報とのパターンマッチングを行ってマッチングの度合からオブジェクトが何かを検出する方法等がある。また、処理速度を高める観点で、画像から車線を検知し、その車線内にあるターゲット又はオブジェクト要素について、上記の形状、大きさ、色等からオブジェクトの検出を行うこともできる。
【0039】
外部用カメラ72aは、図示を省略しているが、例えば複眼型の3次元カメラである。つまり、外部用カメラ72aは、結像用のレンズと、CMOSその他の撮像素子とを一組とするカメラ素子をマトリックス状に配列したものであり、撮像素子用の駆動回路をそれぞれ有する。外部用カメラ72aを構成する複数のカメラ素子は、例えば相対的な視差を検出できるようになっており、カメラ素子から得た画像の状態(フォーカス状態、オブジェクトの位置等)を解析することで、検出領域に対応する画像内の各領域又はオブジェクトまでの目標距離を判定できる。
【0040】
なお、上記のような複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2次元カメラと赤外距離センサーとを組み合わせたものを用いても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2つの2次元カメラを分離配置したステレオカメラによって、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。その他、単一の2次元カメラにおいて、焦点距離を高速で変化させながら撮像を行うことによっても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。
【0041】
また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、LIDAR技術を用いても、検出領域内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報を得ることができる。LIDAR技術により、パルス状のレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離や拡がりを計測して視野内のオブジェクトまでの距離情報やオブジェクトの拡がりに関する情報を取得することができる。さらに、例えばLIDAR技術のようなレーダーセンシング技術と画像情報からオブジェクトの距離等を検出する技術とを組み合わせるような複合的な手法、つまり複数のセンサーをフュージョンさせる手法によって、オブジェクトの検出精度を高めることができる。
【0042】
オブジェクトを検出する外部用カメラ72aの動作速度は、入力の高速化の観点で、描画デバイス(表示素子)11の動作速度以上である必要があり、表示ゾーンDZ1~DZnの表示切替速度又は表示ゾーンDZ1~DZnの1周期表示期間が例えば30fps以上の場合、これより早くすることが望ましい。外部用カメラ72aは、例えば120fpsより高速、例えば480fpsや1000fpsといった高速動作によってオブジェクトの高速検出を可能にするものが望ましい。また、複数センサーをフュージョンさせる場合、その全てのセンサーが高速である必要は必ずしもなく、少なくとも複数センサーのうち1つのセンサーは高速である必要があるが、それ以外は高速でなくても構わない。この場合、高速のセンサーで検出するデータを基本としながら、高速でないセンサーのデータで補完するという使い方で、センシング精度を上げるといった方法を用いてもよい。
【0043】
表示制御部18は、主制御部90の制御下で表示光学系30を動作させて、表示スクリーン20の背後に虚像距離又は投影距離が変化する3次元的な投影像IMを表示させる。
【0044】
主制御部90は、画像表示装置100、環境監視部72等の動作を調和させる役割を有する。主制御部90は、例えば表示制御部18を介して回転駆動部64を動作させることによって、表示光学系30による投影像IMである虚像の投影距離を周期的に変化させる。つまり、主制御部90等は、投影像IMである虚像の奥行き方向に関する投影位置を周期的に変化させる。また、主制御部90は、環境監視部72によって検出したオブジェクトの空間的な位置に対応するように、表示光学系30によって投影されるフレーム枠HW(
図8参照)の空間的な配置を調整する。すなわち、主制御部90は、環境監視部72から受信した表示形状や表示距離を含む表示情報から、表示光学系30に表示させる投影像IMを生成する。投影像IMの表示内容は、回転駆動部64の動作に同期したもの、つまり中間像TIの移動に同期させたものとなっている。投影像IMは、例えば表示スクリーン20の背後に存在する自動車、自転車、歩行者その他のオブジェクトに対してその奥行き位置方向に関して周辺に位置するフレーム枠HW(
図8参照)のような標識とすることができる。このフレーム枠HWは、説明の便宜上奥行きのない状態で示されているが、実際は表示ゾーンDZ1~DZnの奥行き幅に対応して一定の奥行き幅を有するものとなっている。以上のように、主制御部90は、表示制御部18と協働して像付加部として機能し、検出されたオブジェクトまでの目標距離が投影距離と略一致するタイミングで、検出されたオブジェクトに対して表示光学系30によって虚像として関連情報像を付加する。
【0045】
図8は、具体的な表示状態を説明する斜視図である。観察者であるドライバーVDの前方は観察視野に相当する検出領域VFとなっている。検出領域VF内、つまり道路及びその周辺に、歩行者等である人のオブジェクトOB1,OB3や、自動車等である移動体のオブジェクトOB2が存在すると考える。この場合、主制御部90は、画像表示装置100によって3次元的な投影像(虚像)IMを投影させ、各オブジェクトOB1,OB2,OB3に対して関連情報像としてのフレーム枠HW1,HW2,HW3を付加する。この際、ドライバーVDから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離が異なるので、フレーム枠HW1,HW2,HW3を表示させる投影像IM1,IM2,IM3までの投影距離は、ドライバーVDから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離に相当するものとなっている。
【0046】
なお、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、
図6に示す表示ゾーンDZ1~DZnの一部に対応する表示ゾーンDZa~DZcに形成されており、各表示ゾーンDZa~DZcに対応する奥行き幅を有する。各投影距離の中心、つまり投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、離散的であり、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離に対して常に正確に一致させるということはできない。ただし、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離と、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離との差が大きくなければ、ドライバーVDの視点が動いても視差が生じにくく、オブジェクトOB1,OB2,OB3とフレーム枠HW1,HW2,HW3との配置関係を略維持することができる。
【0047】
図9Aは、
図5に対応し、
図9Bは、
図8中の投影像IM3又はフレーム枠HW3に対応し、
図9Cは、
図8中の投影像IM2又はフレーム枠HW2に対応し、
図9Dは、
図8中の投影像IM1又はフレーム枠HW1に対応している。
図9A~9Dより明らかなように、投影像IM1は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FA又は中間像TIが表示位置P1を中心とする所定距離範囲にあるとき、具体的には、この所定距離範囲に応じて
図6に示す特性C1に基づいて決定される所定の表示ゾーンの表示タイミングであるときに、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。同様に、投影像IM2は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P2を中心とする距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応し、投影像IM3は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P3を中心とする所定の距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。中間像TIの移動を基準とする1周期でみた場合、まず表示位置P1に対応する投影像IM1又はフレーム枠HW1が表示され、次いで表示位置P2に対応する投影像IM2又はフレーム枠HW2が表示された後、表示位置P3に対応する投影像IM3又はフレーム枠HW3が表示される。以上の1周期が視覚的に短ければ、投影像IM1,IM2,IM3の切替えが非常に速くなり、観察者であるドライバーVDは、フレーム枠HW1,HW2,HW3を奥行きがある画像として同時に観察していると認識する。本実施形態において、例えばこれら表示位置P1~P3のうちの少なくともどれか2つの表示位置が、隣り合う表示ゾーンや近い表示ゾーンとして指定される場合、例えば
図9B及び9Cの投影像、
図9C及び9D の投影像、又は
図9B、9C、及び9Dの全ての投影像が表示時間内の重なり時間範囲において同時に重ねて表示される時間帯が存在する。
【0048】
図10は、主制御部90の動作を説明する概念図である。まず、主制御部90は、環境監視部72を利用してオブジェクトOB1,OB2,OB3を検出した場合、オブジェクトOB1,OB2,OB3に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを生成し、不図示の記憶部に保管する(ステップS11)。その後、主制御部90は、ステップS11で得た表示データを、対応する表示ゾーンDZ1~DZnに振り分けるようなデータの変換を行う(ステップS12)。具体的には、オブジェクトOB1,OB2,OB3の位置に応じて、対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3を表示ゾーンDZ1~DZnのいずれか1つ(
図8の例では表示ゾーンDZa~DZc)に割り当てる。次に、主制御部90は、フレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを割り当てた表示ゾーンDZ1~DZnに適合するように加工し、不図示の記憶部に保管する(ステップS13)。この適合化は、距離ゾーン又はサブゾーンLZk-2~LZk+1ごとに枠画像の輪郭や配置を補正するといった画像処理を含む。その後、主制御部90は、ステップS13で適合化させた表示データを既存データと合成する(ステップS14)。表示ゾーンDZ1~DZnによる表示は、時間差があるものの同時並行して行われ、短時間であるが残像を残すような表示が行われるので、新たなオブジェクトOB1,OB2,OB3が出現した場合、既存のオブジェクトと新たなオブジェクトとを併存させるように表示内容を組み直す必要があることを考慮したものである。最後に、主制御部90は、ステップS14で得た表示データを、回転駆動部64の動作に同期して表示制御部18に出力し、描画デバイス(表示素子)11に回転体16aの機能領域FAに応じた表示動作を行わせる(ステップS15)。
【0049】
図11は、描画デバイス(表示素子)11の動作を説明する図である。この場合、縦方向に並ぶ第1表示領域~第n表示領域は、
図6等に示す第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応している。回転体16a(又は立体形状部116)の1回転に対応する1サイクルで、第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応して、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aにおいて、第1表示領域~第n表示領域での表示が繰り返される。各表示領域において、信号F1~F4は、同一の表示像が4つのサブゾーンで繰り返されることを意味し、信号F1~F4のそれぞれにカラー表示用のR,G、及びBの信号成分が含まれている。
【0050】
以上で説明した第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置200又は画像表示装置100によれば、回転駆動部64が中間スクリーン19を基準軸SXの周りに回転させることで、中間スクリーン19の機能領域FAの光軸AX方向の位置が連続的に変化する。このような、単純な回転運動による中間スクリーン位置の光軸AX方向の変化を利用することで、簡素な構成で信頼性を確保しつつ奥行き方向を含めて高速で虚像(投影像IM)の表示位置(例えば表示位置P1~P3)を変化させながら表示することが可能となる。
【0051】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る表示装置について説明する。なお、本表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0052】
図12に示すように、第2実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、中間スクリーン19の機能領域FAは、離散的な複数の位置に設定されている。つまり、螺旋状の回転体16a又は立体形状部116において、2つ以上の分離した中間スクリーン19を設けている。この場合、部分的に重複する表示ゾーンDZ1~DZnで虚像を表示するのではなく、離散的な距離ゾーンで虚像を表示することになる。
図6を参照して具体的に説明すると、例えば十分離れたサブゾーンLZ1,LZ5,LZ9,…で表示を行い、それらの間のサブゾーンでは表示を行わないという表示制御を行うことになる。なお、中間スクリーン19の分割数は、4つに限らず、2つ以上の様々な分割数とできる。
【0053】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第3実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0054】
図13に示すように、第3実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、中間スクリーン19は、複数の位置に設定されている。つまり、螺旋状の回転体16a又は立体形状部116において、2つ以上の分離した中間スクリーン19を設けている。その中の少なくとも1つの中間スクリーン19において、螺旋等の連続的な表示が可能なエリアを有しているものである。この場合、少なくとも離散的に存在するそれぞれのスクリーン間では重なりのない表示ゾーンで虚像を表示することになる。ここで、同一中間スクリーン19内では表示ゾーン間で表示時間に部分的重なりを生じさせることができる。
図6を参照して具体的な一例を説明すると、例えば表示ゾーンDZ1,DZ5,DZ9,…で表示を行い、それらの間の表示ゾーンでは表示を行わないという表示制御を行う例が考えられる。なお、中間スクリーン19の分割数は、4つに限らず、2つ以上の様々な分割数とできる。
【0055】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第4実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0056】
図14に示すように、第4実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、中間スクリーン19は、複数の部分19a,19bからなる。ここで、例えば近距離側に相当する部分19aは、螺旋面でなく、平面となっており、近距離側を除いた部分19bは、螺旋面となっている。この場合、近距離側の部分19aでは、表示時間に部分的重なりを生じさせる表示ゾーンを利用した表示や、表示時間に部分的重なりがない離散的な距離ゾーンを利用した表示を行うことができる。一方、非近距離側の部分19bでは、表示時間に部分的重なりを生じさせる表示ゾーンを利用した表示を行うことができる。
【0057】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第5実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0058】
図15Aに示すように、第5実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置200の場合、中間スクリーン19は、逆の傾斜面を組み合わせたものとなっており、中間スクリーン19が光軸AXと交差する位置の経時パターンPAは、サイン波に類似するものとなっている。つまり、第5実施形態の場合、立体形状部116に段差を設けていない。立体形状部116又は回転体16aの機能領域FAは、光軸AX方向に沿って連続的、かつ周期的に往復運動するよう設定されている。この場合、経時パターンPAの前段部PAaでは、中間スクリーン19の機能領域FAの位置が徐々に増加し、経時パターンPAの後段部PAbでは、中間スクリーン19の機能領域FAの位置が徐々に減少する。このため、機能領域FA又は中間像TIは、光軸AXに対して直交せず、傾斜した状態となる場合が生じる。
【0059】
図15Bは、第5実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置200による表示制御を説明する図である。この場合、中間スクリーン19の機能領域FAを基準軸SXのまわりの周方向に沿って複数の部分領域A1~A4に分割して、個別の表示を行わせる。すなわち、描画デバイス(表示素子)11の表示領域を部分領域A1~A4と同様に分割して、描画デバイス11の分割表示領域ごとに異なる投影距離の表示を行わせる。具体的には、例えば部分領域A1~A4において、表示ゾーンDZ1~DZnを構成する異なるサブゾーンLZk-2~LZk+1又は距離ゾーンに対応する個別の表示が行われることになり、回転周期の中ではタイミングがずれて同じサブゾーン又は距離ゾーンの像が各部分領域A1~A4で表示されることになる。このタイミングのズレに対し、高速で回転に同期した像表示を行えば、見かけ上機能領域FA又は中間像TIの傾きが緩和され、傾きの少ない投影像(虚像)IMを形成することができる。なお、機能領域FAを部分領域に分割する分割数は、図示の4つに限らず、2つ以上の任意の数とでき、分割方向も基準軸SXのまわりの周方向に限らず、基準軸SXの半径方向とすることもできる。
【0060】
第5実施形態のヘッドアップディスプレイ装置200又は画像表示装置100によれば、立体形状部116に段差を設けないことで、回転体16aの回転中に、段差が表示光学系30の表示領域を通過する期間であって、表示への影響を無くすために設けられる表示を行わない時間を無くすことが可能となり、回転体16aの全角度での連続的な表示による輝度確保が可能となる。
【0061】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第6実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0062】
図16に示すように、第6実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、回転体16aが複数の部分116aからなり、図示の例では、2つの部分116aからなる。各部分116aには螺旋面の立体形状部116が形成され、その表面に中間スクリーン19が設けられている。つまり、中間スクリーン19は、複数周期に対応する範囲に形成されている。換言すれば、立体形状部116は、その一回転又は一周期において複数の螺旋パターンを有し、中間スクリーン19は、これらの螺旋パターンに対応する範囲に形成されている。この場合、回転体16aの1回転によって、第1実施形態の2周期分の表示が可能になる。
【0063】
〔第7実施形態〕
以下、第7実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第7実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0064】
図17に示すように、本実施形態において、投影ユニット10は、描画デバイス11を含む虚像型の拡大結像系である本体光学系13と、本体光学系13を動作させる表示制御部18と、本体光学系13等を収納するハウジング14とを備える。これらのうち本体光学系13と表示スクリーン20と組み合わせたものは、表示光学系30を構成する。
【0065】
拡散部16は、結像光学系(第1投影光学系)15による投影位置又は結像位置(つまり中間像の結像予定位置又はその近傍)に配置され、回転体16aと中空枠体16bとを有し、回転駆動部64に駆動されて例えば一定速度で基準軸SXの周りに回転する。回転体16aの基準軸SXは、本体光学系13の光軸AXに対して略平行な状態で配置されている。
【0066】
図18Aは、拡散部16を説明する正面図であり、
図18Bは、拡散部16を説明する側方断面図である。拡散部16は、全体として円板に近い輪郭を有する螺旋階段状の回転体16aと、回転体16aを収納する円筒状の中空枠体16bとを有する。
【0067】
回転体16aは、中央部16cと外周光学部16pとを有する。回転体16aの外周光学部16pは、基準軸SXのまわりに配置される例えば4つの部分領域16pa~16pdからなる。これらの部分領域16pa~16pdの表面領域16fa~16fdに設けられた中間スクリーン19は、配光角を所望の角度に制御した拡散板である。各部分領域16pa~16pdの表面領域16fa~16fdは、それぞれが機能領域FAをカバーする平坦領域であり、中間スクリーン19の立体形状部116として機能する。これらの表面領域16fa~16fdは、回転体16aの一方の表面16fを分割したものとみることができ、中間スクリーン19は、表面16fの全体に形成されているとともに、各表面領域16fa~16fdに形成されている。中間スクリーン19は、回転体16aに貼り付けられるシートとできるが、回転体16aの表面に形成された微細な凹凸パターンであってもよい。さらに、中間スクリーン19は、回転体16aの内部に埋め込むように形成されたものであってもよい。中間スクリーン19は、入射した表示光DLを拡散させることによって中間像TIを形成する(
図17参照)。
【0068】
回転体16aは、光透過性を有するとともに、回転位置によって基準軸SX又は光軸AX方向の位置が離散的かつ連続的に変化する環状の部材である。回転体16aにおいて、部分領域16pa~16pd間の境界には複数の段差部16iが形成されている。段差部16iは、立体形状部116の近距離に対応する側に設けられている。これにより、中間スクリーン19の移動に対する距離感度が低い分、近距離側で投影距離の十分大きな変化を確保することができる。これらの段差部16iは、中間スクリーン19の一部と見ることができる。段差部16iは、非連続的な部分であり、投影距離を段階的に変化させる。中間スクリーン19の端部として機能する周期間段差16jは、投影距離をリセットするためのものである。周期間段差16jは、光軸AX方向又は基準軸SX方向に投影距離の近距離端と遠距離端の仕様で決まる中間スクリーンの移動量により設定されるもので、例えば30mm以下の距離差を与えるものとなっており、段差部16iは、周期間段差16jよりも小さな距離差を与えるものとなっている。段差部16i又は周期間段差16jは、拡散部16を回転させる基準軸SXを含む平面に対して平行な接続面16kを有するが、基準軸SXを含む平面に対して傾斜した接続面を有するものであってもよい。回転体16aは、各部分領域16pa~16pdにおいて基準軸SX又は光軸AX方向に関して略等しい厚みtを有する。ここで、部分領域16pa~16pdの表面領域16fa~16fdをまとめた一方の表面16fは、平滑面又は光学面に形成され、表面16fに対向する他方の表面16sも、平滑面又は光学面に形成されている。つまり、一方の表面16fと他方の表面16sとの光軸AX方向の間隔が回転体16aの厚みtとなっている。
【0069】
部分領域16pa~16pd間の境界である段差部16iは、周期間段差16jの位置を基準として、反時計方向に72°、144°、及び288°の角度位置に配置されている。つまり、外周光学部16pを周方向に5等分した第1の方位に第1の部分領域16paが形成され、第2の方位に第2の部分領域16pbが形成され、第3及び第4の方位に第3の部分領域16pcが形成され、第5の方位に第4の部分領域16pdが形成されている。ここで、第3の部分領域16pcは、投影距離が比較的標準的であり、投影距離の変化が比較的緩やかであり、表示の連続性を優先して、2つの部分領域を融合したような広がりを有するものとなっている。部分領域16pa~16pdに対応する各表面領域(平坦領域)16fa~16fdは、周方向に沿って連続的であるだけでなく、部分的な螺旋面となっている。つまり、部分領域16pa~16pdの各表面領域16fa~16fdにおいて、周方向に沿った各点の光軸AX方向の位置は、各点の角度位置又は方位に応じて一次関数で変化する。各表面領域16fa~16fdは、互いに傾斜角が異なるが周方向に一様な傾きの傾斜面となっている。
【0070】
回転体16aにおいて、周方向に沿った一箇所は、本体光学系13の光軸AXが通る機能領域FAとなっており、機能領域FAにおける中間スクリーン19の部分によって中間像TIが形成される。この機能領域FAは、回転体16aの回転に伴って回転体16a上において一定速度で移動する。つまり、回転体16aを回転させつつその一部である機能領域FAに表示光(映像光)DLを入射させることで、機能領域FA又は中間像TIの位置が光軸AXに沿って移動する(描画デバイス11の表示が動作していなければ、必ずしも表示としての中間像は形成されないが、中間像が形成されるであろう位置も中間像の位置と呼ぶ)。図示の例では、中間スクリーン19が外周光学部16pを構成する4つの部分領域16pa~16pdの表面領域16fa~16fdとして形成されているので、回転体16aの1回転で中間スクリーン19の機能領域FA又は中間像TIは、周期間段差16jに相当する距離だけ光軸AX方向に移動することになる。なお、結像光学系(第1投影光学系)15は、中間スクリーン19の位置によってピントぼけが生じないように、機能領域FAの移動範囲以上の所定の焦点深度を有している。又は、第1投影光学系である結像光学系15にフォーカシングする機能を持たせることで、ぼけのない像を得ることも可能である。
【0071】
図17に戻って、回転駆動部64によって拡散部16を一定速度で基準軸SXの周りに回転させることで、回転体16aの中間スクリーン19(又は立体形状部116)が光軸AXと交差する位置(つまり機能領域FA)も光軸AX方向に移動する。つまり、
図19に示すように、回転体16aの回転に伴って、中間スクリーン19上の機能領域FAは、例えば等角度でずれた位置に設定された隣接する機能領域FA’に順次シフトし、光軸AX方向に移動する。このような機能領域FAの光軸AX方向への移動により、中間像TIの位置も光軸AX方向に移動させることができる。詳細は後述するが、例えば中間像TIの位置を虚像形成光学系17側に移動させることにより、投影像IMまでの投影距離又は虚像距離を減少させることができる。また、中間像TIの位置を描画デバイス(表示素子)11側に移動させることにより、投影像IMまでの投影距離又は虚像距離を増加させることができる。
【0072】
図20は、拡散部16の回転に伴う中間像TIの位置の変化を具体的に例示する図である。拡散部16の機能領域FAは、飽和する階段状の経時パターンPAで光軸AX方向に繰り返し周期的に移動しており、中間像TIの位置も、描画デバイス(表示素子)11が連続表示を行っている場合、図示のように飽和する階段状の経時パターンPAで光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動する。つまり、中間像TIの位置は、表面領域16fa~16fdの傾斜に応じて連続的に増加するとともに、段差部16iに対応する箇所で不連続的ながら全体として次第に増加し、周期間段差16jに対応する途切れ目PDで元に戻るように減少する。つまり、中間像TIの位置は、拡散部16の回転に伴って連続的に変化する期間の間に不連続に階段的に変化するタイミングを有する複合的パターンで変化し、かつ全体として周期的に変化する。この結果、図示を省略するが、投影像(虚像)IMの位置も、スケールは異なるが、中間像TIの位置と同様に光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動し、投影距離を連続的かつ階段的に変化させることができる。ここで、描画デバイス11は、連続表示を行うものでなく、表示内容を切替えつつ間欠的な表示を行うものであるから、中間像TIの表示位置も飽和する階段状の経時パターン上における離散的な位置となる。
【0073】
ここで、ある距離ゾーンの画像について表示を行う場合、
図20に示すように表示している時間内で中間像TIの位置が変化することで、表示している距離が変化する。この際にそのように距離が変化する表示ゾーンについて観察者(ドライバーVD)に見える表示距離は、その表示時間内で変化する距離の略平均位置となる。
【0074】
図21Aは、中間像TIの位置と投影距離との関係を説明する図である。実線の特性C2は、
図20に示す経時パターンPAに対応するものであり、回転体16aを構成する部分領域16pa~16pdの表面領域16fa~16fdに相当する平坦部C2a~C2dを有する。これらの平坦部C2a~C2dの中央を繋いだ曲線C3は、経時的に飽和する一次分数関数の変化パターンを有するものとなっている。つまり、複数の表面領域16fa~16fd又は複数の立体形状部116の光軸AX方向の位置は、表面領域16fa~16fd又は立体形状部116の回転位置に対して投影距離が略線形的に変化する一次分数関数に従って変化する。これにより、立体形状部116間では、中間スクリーン19の移動に対する距離感度を一定にして投影距離を変化させることになり、遠距離及び近距離で均等な表示をすることができる。また、立体形状部116の設計や加工が容易となる。実線の特性C2に従って、中間像TIを速度が段階的に変化しつつ次第に飽和するパターンで光軸AX方向に移動させた場合、各距離ゾーンの切替時間の刻みδを一定値とすれば、投影距離は、一点鎖線の特性C1で示すように、近距離でも遠距離でも変化率が比較的近いものとなる。ここで、特性C1は、経時パターンPAの平坦部C2a~C2dに対応する漸増部C1a~C1dを有し、これらの漸増部C1a~C1dの間に投影距離が急激に変化するギャップ部Cgを有している。このギャップ部Cgの近傍では、虚像の投影が困難になるので、このような投影距離を意図的な位置ずらし等によって避ける表示が望ましい。なお、中間像TIの移動の刻みは、回転体16aの回転単位角Δに対応し、この回転単位角Δは、表示する距離ゾーンの切替時間に相当するものとなっている。
【0075】
漸増部C1a~C1dを利用した表示に際して、奥行きを持つ表示の単位を表示ゾーンとして、表示ゾーンが複数の距離ゾーンに亘るものとすれば、少なくとも隣り合う表示ゾーンで、投影距離範囲に重なりが生じる(
図21Bの表示ゾーンDZk-1~DZk+1参照)。このように投影距離範囲に関して重ねた表示を行うことで、同一の投影像(虚像)を奥行方向に広がりを持たせて表示することができ、重なりを生じない表示に比較して各表示ゾーンの表示時間を長くすることが可能となり、投影像(虚像)IMの輝度が向上する。
【0076】
図21Bに示すように、特性C1を構成する各漸増部C1a~C1dに沿って複数の表示ゾーンDZ1~DZn(nは、自然数)を設定することができる。複数の表示ゾーンDZ1~DZnのうち隣り合う表示ゾーンは、投影距離が部分的に重複している。すなわち、第k表示ゾーンDZk(kはnより小さい自然数)と第k+1表示ゾーンDZk+1とは、投影距離が部分的に重複し、第k―1表示ゾーンDZk―1と第k表示ゾーンDZkとは、投影距離が部分的に重複している。第k表示ゾーンDZkは、そこに表示すべき表示対象の投影距離の本来の表示像に対して、その前、後、又は前後の双方で設定される表示ゾーンで表示する像も合せて表示した複合的な投影像に対応するものとなっている。この場合、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnで表示される像の表示時間は、表示時間の刻みδのピッチで隣り合う表示ゾーンDZ1~DZn間でズレがあるため、その分表示されている間の近側と遠側の両端の距離が変動してその平均距離も変動する。人の目又は脳は、その表示ゾーンDZ1~DZnの平均距離で表示像を捉えるので、視覚的に同時に表示を行っている場合でも、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnの表示距離を異なる位置として表示している状態にできる。なお、
図21Bでは、表示の便宜上、各表示ゾーンDZ1~DZnが縦方向に延びるように示されているが、横軸を中間像TIの位置とした場合、各表示ゾーンDZ1~DZnは、漸増部C1a~C1dに沿って延びるものとなる。
【0077】
第1表示ゾーンDZ1~第n表示ゾーンDZnでの表示時間は、全て等しくなっている。各表示ゾーンDZ1~DZnでの表示時間を等しくすることで、各表示ゾーンDZ1~DZnの表示輝度を一致させることができ、観察者であるドライバーVDが意図せず特定距離の像に偏って着目する傾向が生じることを防止できる。
【0078】
画面内の特定の奥行き方向で異なる対象を表示する場合、距離の異なる表示対象が、奥行き方向以外の2次元平面内に置いて重なる、又は略重なるような近い位置にあり、それらに対する表示間の干渉が発生してしまうことが考えられ、これを回避する必要がある。例えば表示ゾーンDZkの表示対象に対して別の表示距離DZk’に存在する表示対象が2次元平面内で近傍に位置していてそれぞれの対象に対する表示に干渉が生ずる場合には、干渉領域ではそれらを合成するような表示を行うことが考えられる。具体的には、一対の表示対象が重なる共通領域又は交わり領域では、一対の表示対象が半透過重畳表示されるような画像とし、一対の表示対象が重ならない差分領域又は独立領域では、各部分で標準的な表示を行えば足る。又は、色や大きさ(線の場合は太さも含む)、明るさ、明滅といった手法で違いを出した表示とする方法も考えられ、ドライバーVDに伝わるように工夫すればよい。
【0079】
図22A及び22Bに例示するように、拡散部16の回転体16aに設けた段差部16iの光源側又は入射側の面Saは、Y方向又は光軸AXに対して平行ではなく、傾斜してオーバーハングした状態とできる。つまり、光軸AX方向に沿って光源側、すなわち+Y側から見た場合、一対の表面領域16fa,16fbは、オーバーラップした状態になっており、オーバーラップ角σは、拡散部16のサイズや機能領域FAの広がりにもよるが、数度~10度程度となっている。結果的に、両表面領域16fa,16fbに設けられている中間スクリーン19のオーバーラップ角σも、数度~10度程度となっている。この場合、入射側又は
図22Aの上側の中間スクリーン19の動作開始が、射出側又は
図22Aの下側の中間スクリーン19の動作開始よりも早くなる。なお、
図22Aに示すように、表面領域16fa,16fb又は中間スクリーン19のオーバーラップ角σを一定とするのではなく、段差部16iの面Saの傾斜角ηを略一定にすることもできる。この場合、+Y側から見た中間スクリーン19のオーバーラップ幅又は量を一様にできる。なお、以上では一対の表面領域16fa,16fbがオーバーラップするとしたが、その他の一対の表面領域16fb,16fcや一対の表面領域16fc,16fdも同様にオーバーラップする。
【0080】
表面領域16fa,16fb等を上記のようにオーバーラップさせることで、中間スクリーン19が段差部16iにおいて光軸AX方向から見て重畳して配置されていることになり、段差部16iに入射した映像光によって発生する迷光を抑制できる。つまり、段差部16iに入射し通過した光(回転方向に対して段差の手前の中間スクリーン19と段差の後ろの中間スクリーン19との間の隙間を通過する表示に関係ない光)が迷光としてドライバーVDの前方に虚像を形成しゴースト像が観察されることを抑制できる。
【0081】
以上では、段差部16iがオーバーハングしているとしているが、周期間段差16jも、段差部16iと同様にオーバーハングした状態となっている。
【0082】
中間スクリーン19を設けていない反光源側で射出側の面Sbについては、表面領域16fa,16fbがオーバーラップして見える光源側又は入射側の面Saと重なるように配置することが望ましい。
【0083】
また、
図22Aでは、スラブ状の板材で中間スクリーン19又は立体形状部116を構成しており、段差部16iにおいて隣り合う領域間で板材が繋がった構成となっているものを示しているが、中間スクリーン19を薄板又はシートで構成することもでき、この場合、段差部16iで中間スクリーン19を構成する部材が繋がっていない状態も考えられる。こういった場合、
図22Aに示されている連結のための面Saが存在せず、空洞となっている場合も考えられる。
【0084】
また、例えば段差量が大きくなる場合には、オーバーラップ量又はオーバーラップ量幅を大きく取らないと迷光が発生してしまう場合も考えられる。その際オーバーラップ量を大きくし過ぎると、
図22Aで下側となる中間スクリーン19の面のうち不使用となる領域が大きくなって輝度が低下するといった問題も考えられる。こういった場合には、段差部16iの領域切替の角度位置を、オーバーラップ量を考慮して調整して輝度確保する方法や、逆にオーバーラップ量を極端に減らす、又は無くしてしまい、
図22Aの面Saにあたる部分を黒塗りにしたり、空洞の場合は蓋となるような不透明な部材を設けたりするといった方法で、迷光除去を行うことも可能である。これらの手法は段差量が大きい或いは小さいに関わらず利用可能な手段である。
【0085】
なお、本実施形態において、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離(第1実施形態の
図8参照)は、
図21Bに示すいずれかの漸増部C1a~C1dの一部に対応する表示ゾーンDZa~DZcに形成されており、各表示ゾーンDZa~DZcに対応する奥行き幅を有する。各投影距離の中心、つまり投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、離散的であり、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離に対して常に正確に一致させることが困難となる場合もある。ただし、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離と、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離との差が大きくなければ、ドライバーVDの視点が動いても視差が生じにくく、オブジェクトOB1,OB2,OB3とフレーム枠HW1,HW2,HW3との配置関係を略維持することができる。
【0086】
図23Aは、
図20に対応し、
図23Bは、
図8中の投影像IM3又はフレーム枠HW3に対応し、
図23Cは、
図8中の投影像IM2又はフレーム枠HW2に対応し、
図23Dは、
図8中の投影像IM1又はフレーム枠HW1に対応している。
図23A~23Dより明らかなように、投影像IM1は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FA又は中間像TIが表示位置P1を中心とする所定距離範囲にあるとき、具体的には、この所定距離範囲に応じて
図21Bに示す特性C1に基づいて決定される所定の表示ゾーンの表示タイミングであるときに、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。同様に、投影像IM2は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P2を中心とする距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応し、投影像IM3は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P3を中心とする所定の距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。中間像TIの移動を基準とする1周期でみた場合、まず表示位置P1に対応する投影像IM1又はフレーム枠HW1が表示され、次いで表示位置P2に対応する投影像IM2又はフレーム枠HW2が表示された後、表示位置P3に対応する投影像IM3又はフレーム枠HW3が表示される。以上の1周期が視覚的に短ければ、投影像IM1,IM2,IM3の切替えが非常に速くなり、観察者であるドライバーVDは、フレーム枠HW1,HW2,HW3を奥行きがある画像として同時に観察していると認識する。本実施形態において、例えばこれら表示位置P1~P3のうちの少なくともどれか2つの表示位置が、隣り合う表示ゾーンや近い表示ゾーンとして指定される場合、例えば
図23B及び23Cの投影像、
図23C及び23Dの投影像、又は
図23B、23C、及び23Dの全ての投影像が表示時間内の重なり時間範囲において同時に重ねて表示される時間帯が存在する。
【0087】
以下、第1実施形態の
図10を参照しつつ、主制御部90の動作を説明する。まず、主制御部90は、環境監視部72を利用してオブジェクトOB1,OB2,OB3を検出した場合、オブジェクトOB1,OB2,OB3に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを生成し、不図示の記憶部に保管する(ステップS11)。その後、主制御部90は、ステップS11で得た表示データを、いずれかの漸増部C1a~C1dにおいて対応する表示ゾーンDZ1~DZnに振り分けるようなデータの変換を行う(ステップS12)。具体的には、オブジェクトOB1,OB2,OB3の位置に応じて、対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3を対応する漸増部C1a~C1dにおける特定の表示ゾーンDZ1~DZn(
図8の例では表示ゾーンDZa~DZc)に割り当てる。次に、主制御部90は、フレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを割り当てた表示ゾーンDZ1~DZnに適合するように加工し、不図示の記憶部に保管する(ステップS13)。この適合化は、表示ゾーンを構成する距離ゾーンごとに枠画像の輪郭や配置を補正するといった画像処理を含む。その後、主制御部90は、ステップS13で適合化させた表示データを既存データと合成する(ステップS14)。表示ゾーンDZ1~DZnによる表示は、時間差があるものの同時並行して行われ、短時間であるが残像を残すような表示が行われるので、新たなオブジェクトOB1,OB2,OB3が出現した場合、既存のオブジェクトと新たなオブジェクトとを併存させるように表示内容を組み直す必要があることを考慮したものである。最後に、主制御部90は、ステップS14で得た表示データを、回転駆動部64の動作に同期して表示制御部18に出力し、描画デバイス(表示素子)11に回転体16aの機能領域FAに応じた表示動作を行わせる(ステップS15)。
【0088】
図24は、描画デバイス(表示素子)11の動作を説明する図である。この場合、縦方向に並ぶ第1表示領域~第n表示領域は、
図21B等に示す第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応している。回転体16aの各部分領域16pa~16pd(又は立体形状部116)単位で、第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応して、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aにおいて、第1表示領域~第n表示領域での表示が繰り返される。各表示領域において、信号F1~F5は、同一の表示像が5つのサブゾーンで繰り返されることを意味し、信号F1~F5のそれぞれにカラー表示用のR,G、及びBの信号成分が含まれている。
【0089】
以上では、回転体16aの外周光学部16pを周方向に5等分して4つの部分領域16pa~16pdを割り当てているが、外周光学部16pを周方向に5等分以上又は3等分以下に分割して所望数の部分領域を割り当てることができる。さらに、外周光学部16pを周方向に等分に分割するのではなく、周方向に適宜の比率で分割して所望数の部分領域を割り当てることもできる。
【0090】
以上で説明した第7実施形態のヘッドアップディスプレイ装置200又は画像表示装置100によれば、中間スクリーン19が、機能領域FAの光軸AX方向の位置が回転に伴って連続的に変化する立体形状部116を有するとともに、投影距離を少なくとも一部に関して段階的に変化させる段差部16iを有するので、投影距離を徐々に変化させつつ表示を行うことで表示に奥行きを持たせる連続表示が容易になるとともに、投影距離の変化の刻みが過度に細かくなることを防止できる。なお、上記のような連続的表示を行うことにより、中間スクリーン19を完全なステップ状として非連続的表示を行う場合に比較して輝度の改善を図ることができる。
【0091】
特に設定する虚像距離の近距離側と遠距離側との距離差が大きい場合には、段差がない構造とすると、例えば一定のスロープを設けた構造では近距離側で中間スクリーン19が移動しても投影距離が殆ど変化しないのに対し、遠距離側では中間スクリーン19の移動に対して投影距離の変動が大きくなる。つまり、中間スクリーン19の移動に対する投影距離変化の感度差が近距離側と遠距離側とで大きく異なる。これによって、例えば中間スクリーン19の回転角に応じて中間スクリーン19の位置が一定のピッチで変化するように分割した距離ゾーンの設定を行うと、近距離側では各距離ゾーンにおいて殆ど投影距離が変らず、遠距離側では逆に一気に投影距離が変化してしまい、距離分割の設定が偏ってしまう問題がでてくる。又は、同様に近距離側と遠距離側との距離差が大きい場合において、各距離ゾーンの分割を一定距離で等差的に設定しようとすると、近距離側では中間スクリーン19の移動量が大きくなるのに対して、遠距離側では中間スクリーン19の移動が殆どない状態となり、近側から遠側での中間スクリーン19の移動の変化率に差が出て、特に近距離側で表示画面の左右又は上下の距離差による画像の違和感が出易くなり問題となる。投影距離の少なくとも一部に関して段差を設けた状態とすれば、これらの近距離側と遠距離側との差を低減した形でそれぞれの距離において投影距離変化させる構造とすることができ、望ましい構成であると言える。
【0092】
〔第8実施形態〕
以下、第8実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第8実施形態の表示装置は第1又は第7実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0093】
図25は、第8実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置又は画像表示装置による表示制御を説明する図である。この場合、中間スクリーン19の機能領域FAを基準軸SXのまわりの周方向に沿って複数の部分領域A1~A4に分割して、個別の表示を行わせる。すなわち、描画デバイス(表示素子)11の表示領域を部分領域A1~A4と同様に分割して、描画デバイス11の分割表示領域ごとに異なる投影距離の表示を行わせる。具体的には、例えば部分領域A1~A4において、表示ゾーンDZ1~DZnを構成する異なるサブゾーン又は距離ゾーンに対応する個別の表示が行われることになり、回転周期の中ではタイミングがずれて同じサブゾーン又は距離ゾーンの像が各部分領域A1~A4で表示されることになる。このタイミングのズレに対し、高速で回転に同期した像表示を行えば、見かけ上機能領域FA又は中間像TIの傾きが緩和され、傾きの少ない投影像(虚像)IMを形成することができる。また、段差部16iを挟むような表示も可能になり、投影距離の欠落部分を減少させることが容易になる。このように段差部16iを挟むような表示を行う場合、
図22A等に示すような回転体16aの段差部16iにおけるオーバーハング形状、つまり中間スクリーン19のオーバーラップによって迷光を除去することがより望ましくなる。なお、機能領域FAを部分領域に分割する分割数は、図示の4つに限らず、2つ以上の任意の数とでき、分割方向も基準軸SXのまわりの周方向に限らず、基準軸SXの半径方向とすることもできる。
【0094】
〔第9実施形態〕
以下、第9実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第9実施形態の表示装置は第1又は第7実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0095】
図26は、
図21Aに対応するものであり、第9実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の、中間像TIの位置と投影距離との関係を示している。この場合、実線の特性C2は、回転体16aを構成する2つの部分領域に相当する平坦部C2a,C2bを有し、平坦部C2a,C2b間には、ギャップ部Cgが設けられている。一方の平坦部C2aは、回転体16a又は立体形状部116の回転に対して中間スクリーン19の光軸AX方向の位置に変化がない平面形状となっている。これにより、中間スクリーン19の回転位置を変化させながら投影距離を一定に保つことができる。他方の平坦部C2bは、回転体16a又は立体形状部116の回転に対して中間スクリーン19の光軸AX方向の位置が一次分数関数に従って変化する。つまり、平坦部C2aを利用した投影では、中間像TIの位置が一定に保たれて投影像IMが奥行き方向に固定されたものとなり(一点鎖線で示す特性C1のうち漸増部C1a参照)、平坦部C2bを利用した投影では、回転体16a又は立体形状部116の回転位置に対して投影距離が略線形的又は一次関数的に変化する(一点鎖線で示す特性C1のうち漸増部C1b参照)。近距離側の平坦部C2aは、近距離で距離感度が鈍くなって投影距離が細分化されるのを回避することで安定した投影像IMの形成を容易にしている。一方、遠距離側の平坦部C2bは、投影距離の線形的変化を可能にして投影像IMの距離の割り付けを簡易に正確でバランスが良いものとしている。
【0096】
〔第10実施形態〕
以下、第10実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第10実施形態の表示装置は第1又は第7実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0097】
図27は、
図21Aに対応するものであり、第10実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の、中間像TIの位置と投影距離との関係を示している。この場合、実線の特性C2は、回転体16aを構成する3つの部分領域に相当する平坦部C2a,C2b,C2cを有し、平坦部C2a,C2b,C2c間には、ギャップ部Cgが設けられている。第1の平坦部C2aは、最も近距離領域への投影を受け持っており、回転体16a又は立体形状部116の回転に対して中間スクリーン19の光軸AX方向の位置に変化がない平面形状となっている。第2の平坦部C2bは、次の近距離領域への投影を受け持っており、回転体16a又は立体形状部116の回転に対して中間スクリーン19の光軸AX方向の位置に変化がない平面形状となっている。第3の平坦部C2cは、回転体16a又は立体形状部116の回転に対して中間スクリーン19の光軸AX方向の位置が一次分数関数に従って変化する。結果的に、平坦部C2a,C2bを利用した投影では、中間像TIの位置が一定に保たれて投影像IMが奥行き方向に固定されたものとなり(一点鎖線で示す特性C1のうち漸増部C1a,C1b参照)、平坦部C2cを利用した投影では、回転体16a又は立体形状部116の回転位置に対して投影距離が略線形的又は一次関数的に変化する(一点鎖線で示す特性C1のうち漸増部C1c参照)。
【0098】
〔第11実施形態〕
以下、第11実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第11実施形態の表示装置は第1又は第7実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0099】
図28に示すように、第11実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、中間スクリーン19は、逆の傾斜面を組み合わせたものとなっており、中間スクリーン19が光軸AXと交差する位置の経時パターンPAは、サイン波に類似するものとなっているが、前段部(増加飽和部)PAa及び後段部(飽和減少部)PAbのほかに、下端側において段差PAg及び平坦部PAfを有する。この場合、立体形状部116又は回転体16aにおける中間像TI又は機能領域FAの位置は、前段部(増加飽和部)PAa及び後段部(飽和減少部)PAbに対応する領域で、光軸AX方向に沿って連続的に運動し、平坦部PAfに対応する領域で、光軸AX方向に移動しないで一定に保たれ、段差PAgで飛びが生じるように変化して、全体として周期的に往復運動する。
【0100】
〔第12実施形態〕
以下、第12実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第12実施形態の表示装置は第1実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0101】
本実施形態の拡散部16は、結像光学系(第1投影光学系)15による投影位置又は結像位置(つまり中間像の結像予定位置又はその近傍)に配置され、回転体16aと中空枠体16bとを有し、回転駆動部64に駆動されて例えば一定速度で基準軸SXの周りに回転する。本実施形態において、回転体16aの基準軸SXは、本体光学系13の光軸AXに対して略平行な状態で配置されている。
【0102】
図29Aは、拡散部16を説明する正面図であり、
図29Bは、拡散部16を説明する側方断面図である。拡散部16は、全体として円板に近い輪郭を有する螺旋状の回転体16aと、回転体16aを収納する円筒状の中空枠体16bとを有する。
【0103】
回転体16aは、中央部16cと外周光学部16pとを有する。回転体16aの外周光学部16pに形成された一方の表面16fは、平滑面又は光学面に形成されており、表面16f上には、全域に亘って中間スクリーン19が形成されている。回転体16aの表面16fは、立体形状部116として機能する。中間スクリーン19は、配光角を所望の角度に制御した拡散板である。中間スクリーン19は、回転体16aに貼り付けられるシートとできるが、回転体16aの表面に形成された微細な凹凸パターンであってもよい。さらに、中間スクリーン19は、回転体16aの内部に埋め込むように形成されたものであってもよい。中間スクリーン19は、入射した表示光DLを拡散させることによって中間像TIを形成する(第1実施形態の
図2参照)。回転体16aの外周光学部16pに形成された他方の表面16sは、平滑面又は光学面に形成されている。回転体16aは、光透過性を有し回転位置によって基準軸SX又は光軸AX方向の位置が連続的に変化する環状の部材であり、一対の表面16f,16sは、基準軸SXを中心軸としつつも基準軸SX方向に連続的に緩やかに変位する環状面となっている。結果的に、一方の表面16f上に形成された中間スクリーン19も連続的に起伏する環状面に沿って形成されたものとなっている。回転体16aには、その周に沿った一箇所に非連続的な部分である周期間段差16jが形成されている。この周期間段差16jは、立体形状部116の端に対応する位置に設けられた段差であり、光軸AX方向又は基準軸SX方向に30mm以下の距離差又はピッチを与えるものとなっている。周期間段差16jは、拡散部16を回転させる基準軸SXを含む平面に対して傾斜した接続面16kを有する。上記のように、回転体16aは、基準軸SX又は光軸AX方向に関して略等しい厚みtを有する。
【0104】
図30は、拡散部16の回転に伴う中間像TIの位置の変化を具体的に例示する図である。拡散部16の機能領域FAは、片側円弧状の経時パターンPAで光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動しており、中間像TIの位置も、描画デバイス(表示素子)11が連続表示を行っている場合、図示のように片側円弧状の経時パターンPAで光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動する。つまり、中間像TIの位置は、周期間段差16jに対応する箇所で不連続的ながら、拡散部16の回転に伴って連続的かつ周期的に変化する。この結果、図示を省略するが、投影像(虚像)IMの位置も、スケールは異なるが、中間像TIの位置と同様に光軸AX方向に沿って繰り返し周期的に移動し、投影距離を連続的に変化させることができる。ここで、描画デバイス11は、連続表示を行うものでなく、表示内容を切替えつつ間欠的な表示を行うものであるから、中間像TIの表示位置も片側円弧状の経時パターン上における離散的な位置となる。ここで、
図30に示す例では一次分数関数の変化パターンが採用されており、中間像TIの位置を時間に対して傾きが徐々に減少するように変化させており、回転体16aの中間スクリーン19(又は立体形状部116)の回転位置に対する機能領域FAの光軸AX方向の位置は、後に詳述するように所定の間隔で等差的に投影距離を変化させるものとなっている。
【0105】
ここで、ある距離ゾーンの画像について表示を行う場合、
図30に示すように表示している時間内で中間像TIの位置が変化することで、表示している距離が変化する。この際にそのように距離が変化する表示ゾーンについて観察者(ドライバーVD)に見える表示距離は、その表示時間内で変化する距離の略平均位置となる。このことも加味して、経時パターンPAにおいて、最も近距離側の表示位置Pnと最も遠距離側の表示位置Pfとは、マージンを確保して、経時パターンPAの両端から離れた位置に設定される。また、経時パターンPAの途切れ目PDは、拡散部16の回転体16aに設けた周期間段差16jに対応する。
【0106】
図31Aは、中間像TIの位置と投影距離との関係を説明する図である。実線の特性C2に従って、中間像TIを光軸AX方向に速度が飽和するパターンで移動させた場合、各距離ゾーンの切替時間の刻みδを一定値とすれば、投影距離の刻み幅は、一点鎖線の特性C1で示すように、近距離でも遠距離でも同様とすることができる。なお、中間像TIの移動の刻み幅は、回転体16aの回転角度単位に対応し、この回転単位角Δは、表示する距離ゾーンの切替時間に相当するものとなっている(
図31B参照)。
【0107】
図30に示す中間像TIの位置両端間を移動する時間を1周期と考えた場合、奥行きを持つ表示の単位を表示ゾーンとして、その1周期の時間が各表示ゾーンの表示時間と、表示ゾーン数nの積よりも短い時間であれば、表示ゾーンは複数の距離ゾーンに亘るものとなり、少なくとも隣り合う表示ゾーンで、投影距離範囲に重なりが生じる(
図31Bの表示ゾーンDZ1~DZn参照)。このように投影距離範囲に関して重ねた表示を行うことで、同一の投影像(虚像)を奥行方向に広がりを持たせて表示することができ、重なりを生じない表示に比較して各表示ゾーンの表示時間を長くすることが可能となり、投影像(虚像)IMの輝度が向上する。
【0108】
図31Bに示すように、特性C1に沿ってn個の表示ゾーンを設定することができる。ここで、説明の便宜上、最も近距離の表示ゾーンを第1表示ゾーンDZ1と呼び、最も遠距離の表示ゾーンを第n表示ゾーンDZn(nは自然数)と呼ぶ。複数の表示ゾーンDZ1~DZnは、近距離から遠距離まで表示する距離幅が一様になっている。複数の表示ゾーンDZ1~DZnのうち隣り合う表示ゾーンは、投影距離が部分的に重複している。すなわち、第k表示ゾーンDZk(kはnより小さい自然数)と第k+1表示ゾーンDZk+1とは、投影距離が部分的に重複し、例えば第2表示ゾーンDZ2と第3表示ゾーンDZ3とは、投影距離が部分的に重複している。第k表示ゾーンDZkは、そこに表示すべき表示対象の投影距離の本来の表示像に対して、その前、後、又は前後の双方で設定される表示ゾーンで表示する像も合せて表示した複合的な投影像に対応するものとなっている。図示の例では、第k表示ゾーンDZkを表示している間の全体又はある一定時間内では5区間分の距離ゾーンに相当するそれぞれの像が重なった状態の表示がされている。この場合、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnで表示される像の表示時間は、表示時間の刻みδのピッチで隣り合う表示ゾーンDZ1~DZn間でズレがあるため、その分表示されている間の近側と遠側との両端の距離が変動してその平均距離も変動する。人の目又は脳は、その表示ゾーンDZ1~DZnの平均距離で表示像を捉えるので、視覚的に同時に表示を行っている場合でも、それぞれの表示ゾーンDZ1~DZnの表示距離を異なる位置として表示している状態にできる。なお、
図31Bでは、表示の便宜上、各表示ゾーンDZ1~DZnが縦方向に延びるように示されているが、横軸を中間像TIの位置とした場合、各表示ゾーンDZ1~DZnは、特性C1に沿って延びるものとなる。
【0109】
第1表示ゾーンDZ1~第n表示ゾーンDZnでの表示時間は、全て等しくなっている。各表示ゾーンDZ1~DZnでの表示時間を等しくすることで、各表示ゾーンDZ1~DZnの表示輝度を一致させることができ、観察者であるドライバーVDが意図せず特定距離の像に偏って着目する傾向が生じることを防止できる。
【0110】
画面内の特定の奥行き方向で異なる対象を表示する場合、距離の異なる表示対象が、奥行き方向以外の2次元平面内に置いて重なる、又は略重なるような近い位置にあり、それらに対する表示間の干渉が発生してしまうことが考えられ、これを回避する必要がある。例えば表示ゾーンDZkの表示対象に対して別の表示距離DZk’に存在する表示対象が2次元平面内で近傍に位置していてそれぞれの対象に対する表示に干渉が生ずる場合には、干渉領域ではそれらを合成するような表示を行うことが考えられる。具体的には、一対の表示対象が重なる共通領域又は交わり領域では、一対の表示対象が半透過重畳表示されるような画像とし、一対の表示対象が重ならない差分領域又は独立領域では、各部分で標準的な表示を行えば足る。又は、色や大きさ(線の場合は太さも含む)、明るさ、明滅といった手法で違いを出した表示とする方法も考えられ、ドライバーVDに伝わるように工夫すればよい。
【0111】
なお、本実施形態において、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離(第1実施形態の
図8参照)は、
図31Bに示す表示ゾーンDZ1~DZnの一部に対応する表示ゾーンDZa~DZcに形成されており、各表示ゾーンDZa~DZcに対応する奥行き幅を有する。各投影距離の中心、つまり投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、離散的であり、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離に対して常に正確に一致させることが困難となる場合もある。ただし、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離と、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離との差が大きくなければ、ドライバーVDの視点が動いても視差が生じにくく、オブジェクトOB1,OB2,OB3とフレーム枠HW1,HW2,HW3との配置関係を略維持することができる。
【0112】
図32Aは、
図30に対応し、
図32Bは、
図8中の投影像IM3又はフレーム枠HW3に対応し、
図32Cは、
図8中の投影像IM2又はフレーム枠HW2に対応し、
図32Dは、
図8中の投影像IM1又はフレーム枠HW1に対応している。
図32A~32Dより明らかなように、投影像IM1は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FA又は中間像TIが表示位置P1を中心とする所定距離範囲にあるとき、具体的には、この所定距離範囲に応じて
図31Bに示す特性C1に基づいて決定される所定の表示ゾーンの表示タイミングであるときに、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。同様に、投影像IM2は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P2を中心とする距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応し、投影像IM3は、回転体16a(又は立体形状部116)の機能領域FAが表示位置P3を中心とする所定の距離範囲にあるときに描画デバイス11の表示面11aに形成される一連の表示像に対応する。中間像TIの移動を基準とする1周期でみた場合、まず表示位置P1に対応する投影像IM1又はフレーム枠HW1が表示され、次いで表示位置P2に対応する投影像IM2又はフレーム枠HW2が表示された後、表示位置P3に対応する投影像IM3又はフレーム枠HW3が表示される。以上の1周期が視覚的に短ければ、投影像IM1,IM2,IM3の切替えが非常に速くなり、観察者であるドライバーVDは、フレーム枠HW1,HW2,HW3を奥行きがある画像として同時に観察していると認識する。本実施形態において、例えばこれら表示位置P1~P3のうちの少なくともどれか2つの表示位置が、隣り合う表示ゾーンや近い表示ゾーンとして指定される場合、例えば
図32B及び32Cの投影像、
図32C及び32Dの投影像、又は
図32B、32C、及び32Dの全ての投影像が表示時間内の重なり時間範囲において同時に重ねて表示される時間帯が存在する。
【0113】
以下、第1実施形態の
図10を参照しつつ、主制御部90の動作を説明する。まず、主制御部90は、環境監視部72を利用してオブジェクトOB1,OB2,OB3を検出した場合、オブジェクトOB1,OB2,OB3に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを生成し、不図示の記憶部に保管する(ステップS11)。その後、主制御部90は、ステップS11で得た表示データを、対応する表示ゾーンDZ1~DZnに振り分けるようなデータの変換を行う(ステップS12)。具体的には、オブジェクトOB1,OB2,OB3の位置に応じて、対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3を表示ゾーンDZ1~DZnのいずれか1つ(
図8の例では表示ゾーンDZa~DZc)に割り当てる。次に、主制御部90は、フレーム枠HW1,HW2,HW3に対応する表示データを割り当てた表示ゾーンDZ1~DZnに適合するように加工し、不図示の記憶部に保管する(ステップS13)。この適合化は、表示ゾーンを構成する距離ゾーンごとに枠画像の輪郭や配置を補正するといった画像処理を含む。その後、主制御部90は、ステップS13で適合化させた表示データを既存データと合成する(ステップS14)。表示ゾーンDZ1~DZnによる表示は、時間差があるものの同時並行して行われ、短時間であるが残像を残すような表示が行われるので、新たなオブジェクトOB1,OB2,OB3が出現した場合、既存のオブジェクトと新たなオブジェクトとを併存させるように表示内容を組み直す必要があることを考慮したものである。最後に、主制御部90は、ステップS14で得た表示データを、回転駆動部64の動作に同期して表示制御部18に出力し、描画デバイス(表示素子)11に回転体16aの機能領域FAに応じた表示動作を行わせる(ステップS15)。
【0114】
図33は、描画デバイス(表示素子)11の動作を説明する図である。この場合、縦方向に並ぶ第1表示領域~第n表示領域は、
図31B等に示す第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応している。回転体16a(又は立体形状部116)の1回転に対応する1サイクルで、第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnに対応して、描画デバイス(表示素子)11の表示面11aにおいて、第1表示領域~第n表示領域での表示が繰り返される。各表示領域において、信号F1~F5は、同一の表示像が5つのサブゾーンで繰り返されることを意味し、信号F1~F5のそれぞれにカラー表示用のR,G、及びBの信号成分が含まれている。
【0115】
以上で説明した第12実施形態のヘッドアップディスプレイ装置200又は画像表示装置100によれば、立体形状部116の回転位置に応じて虚像形成光学系(第2投影光学系)17による投影距離を略線形的に変化させるので、中間スクリーン19(又は立体形状部116)の移動に対する距離感度を一定にして投影距離を変化させることになり、遠距離及び近距離で均等な表示が可能になる。
【0116】
なお、第12実施形態において、第5実施形態の表示装置の拡散部16の構成としてもよい。
【0117】
〔第13実施形態〕
以下、第13実施形態に係る表示装置について説明する。なお、第13実施形態の表示装置は第1又は第12実施形態の表示装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
【0118】
図34に示すように、第13実施形態の表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置の場合、回転体16aが複数の部分116aからなり、図示の例では、2つの部分116aからなる。各部分116aには等差的に投影距離を変化させる連続面である立体形状部116が形成され、その表面に中間スクリーン19が設けられている。この場合、回転体16aの1回転によって、第12実施形態の2周期分の表示が可能になる。
【0119】
〔その他〕
以上では、具体的な実施形態としての表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置200について説明したが、本発明に係る表示装置は、上記のものには限られない。例えば、第1実施形態において、画像表示装置100の配置を上下反転させて、フロントウインドウ8の上部又はサンバイザー位置に表示スクリーン20を配置することもでき、この場合、投影ユニット10の斜め下方前方に表示スクリーン20が配置される。また、表示スクリーン20は、自動車の従来のミラーに対応する位置に配置してもよい。
【0120】
以上の第1実施形態等では、中間スクリーン19又は機能領域FAを本体光学系13の光軸AX方向に対して略直交するように配置するとしたが、機能領域FAを光軸AXに対して強制的に傾けることもできる。この場合、虚像形成光学系17との組み合わせによって傾きが無いか又は所定の傾きの投影像IMを投影することができる。
【0121】
以上の第1実施形態で説明した第1~第n表示ゾーンDZ1~DZnについては、投影距離の全範囲に亘って連続的である必要はなく、表示ゾーンを構成する異なるサブゾーン又は距離ゾーンLZ1~LZnの境界に対応する部分で分離した不連続なものであってもよい。
【0122】
拡散部16において、中空枠体16bは必須でなく、回転体16aのみとすることができる。この場合も、周期間段差16jに傾斜した接続面16kを形成しているので、回転体16aの回転に伴う音の発生を抑制することができ、回転体16aの回転を安定化させることができる。
【0123】
回転体16aに設定する機能領域FAは、
図3A等に示すものに限らず、様々な配置、形状等とすることができる。つまり、機能領域FAは、回転体16a上の分離した位置に設定する必要がなく、回転体16a上の連続した所望の位置に設定することができる。
【0124】
投影像IMの投影距離の分割数も、3つに限らず、用途に応じて4つ以上の様々な設定とすることができる。
【0125】
上記実施形態において、表示スクリーン20の輪郭は、矩形に限らず、様々な形状とすることができる。
【0126】
図2等に示す結像光学系15や虚像形成光学系17は、単なる例示であり、これら結像光学系15及び虚像形成光学系17の光学的構成については適宜変更することができる。
【0127】
以上では、環境監視部72によって車体2の前方に存在するオブジェクトOBを検出し、画像表示装置100にオブジェクトOBの配置に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3といった関連情報像を表示しているが、オブジェクトOBの有無に関わらず、通信ネットワークを利用して付随的な運転関連情報を取得し、このような運転関連情報を画像表示装置100に表示させることができる。例えば死角に存在する車、障害物等を警告するような表示も可能である。
【0128】
本発明の表示装置は、車その他の移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に限らず、3次元表示を行うヘッドマウント装置、ウェアラブルディスプレイ装置等に適用することができる。
【0129】
第7実施形態の表示装置において、回転体16aの外周光学部16pに設けた表面領域16fa~16fdの傾斜状態は、
図21Aに示す平坦部C2a~C2dによって例示される傾斜状態に限らず、適宜傾斜度に設定することができる。さらに、外周光学部16pの表面領域16fa~16fdは、傾斜がなく光軸AXと直交する平坦面を有するものとすることもできる。
【0130】
図35A及び35Bに例示するように、拡散部16の回転体16aに設けた周期間段差16jの光源側又は入射側の面Saは、Y方向又は光軸AXに対して傾斜してオーバーハングした状態とできる。つまり、光軸AX方向に沿って光源側、すなわち+Y側から見た場合、表面16fの両端は、オーバーラップした状態になっており、オーバーラップ角σは、拡散部16のサイズや機能領域FAの広がりにもよるが、数度~10度程度となっている。結果的に、表面16fの両端に設けられている中間スクリーン19のオーバーラップ角σも、数度~10度程度となっている。この場合、入射側又は
図35Aの上側の中間スクリーン19端の動作開始が、射出側又は
図35Aの下側の中間スクリーン19端の動作開始よりも早くなる。なお、
図35Aに示すように、表面16f又は中間スクリーン19のオーバーラップ角σを一定とするのではなく、周期間段差16jの面Saの傾斜角ηを略一定にすることもできる。この場合、+Y側から見た中間スクリーン19のオーバーラップ幅又は量を一様にできる。
【0131】
表面16fの両端を上記のようにオーバーラップさせることで、中間スクリーン19が周期間段差16jにおいて光軸AX方向から見て重畳して配置されていることになり、周期間段差16jに入射した映像光によって発生する迷光を抑制できる。つまり、周期間段差16jに入射し通過した光が迷光としてドライバーVDの前方に虚像を形成しゴースト像が観察されることを抑制できる。
【0132】
中間スクリーン19を設けていない反光源側で射出側の面Sbについては、表面16fがオーバーラップして見える光源側又は入射側の面又は周期間段差16jと重なるように配置することが望ましい。
【0133】
また、
図35Aでは、スラブ状の板材で中間スクリーン19又は立体形状部116の支持体を構成しており、周期間段差16jにおいて隣り合う領域間で板材が繋がった構成となっているものを示しているが、中間スクリーン19の支持体を薄板又はシートで構成することもでき、この場合、周期間段差16jで中間スクリーン19を構成する部材が繋がっていない状態も考えられる。こういった場合、
図35Aに示されている連結のための面Saが存在せず、空洞となっている場合も考えられる。
【0134】
また、例えば段差量が大きくなる場合には、オーバーラップ量又はオーバーラップ量幅を大きく取らないと迷光が発生してしまう場合も考えられる。その際オーバーラップ量を大きくし過ぎると、
図35Aで下側となる中間スクリーン19の面のうち不使用となる領域が大きくなって輝度が低下するといった問題も考えられる。こういった場合には、周期間段差16jの領域切替の角度位置を、オーバーラップ量を考慮して調整して輝度確保する方法や、逆にオーバーラップ量を極端に減らす、又は無くしてしまい、
図35Aの面Saにあたる部分を黒塗りにしたり、空洞の場合は蓋となるような不透明な部材を設けたりするといった方法で、迷光除去を行うことも可能である。これらの手法は段差量が大きい或いは小さいに関わらず利用可能な手段である。