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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
F17C5/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019568576
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2018036702
(87)【国際公開番号】W WO2019150650
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2018013254
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-069361(JP,A)
【文献】特開2009-156371(JP,A)
【文献】特開2001-343022(JP,A)
【文献】特開平04-078319(JP,A)
【文献】特開2004-052996(JP,A)
【文献】特開2004-293777(JP,A)
【文献】特開2010-133497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃料を貯える貯蔵タンクと、該貯蔵タンクから燃料充填系統を介して車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する充填ノズルを備えた充填装置において、
前記充填ノズルは、ロッド状部材と本体部を備えており、
前記ロッド状部材の内部を水素が流れ、
前記本体部は、前記ロッド状部材を覆うと共に、前記ロッド状部材との間にシール部材が配置され、
前記ロッド状部材の先端側には、2つの保持具に挟まれたシール部材保持部材が設けられ、
前記シール部材保持部材は、前記ロッド状部材の外周面を保護しながら該外周面上を摺動し、
前記2つの保持具の各々は、内周面が前記ロッド状部材の外周面から離隔した状態で前記本体部に螺合することを特徴とする充填装置。
【請求項2】
シール部材保持部材との摺動からロッド状部材の外周面を保護する機構を、シール部材保持部材の半径方向内側面にロッド状部材の材料よりも硬度が低い素材をコーティングして構成する請求項1の充填装置。
【請求項4】
充填ノズルと車両用充填口との連結状態を維持するクラッチ機構を備えている請求項1~3の何れか1項の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料として用いられる水素ガス等の気体を充填するための充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水素を燃料として走行する車両では、図6で示す様に、水素貯蔵タンク50、燃料充填系統(ディスペンサー60、充填ホース45等)を備える水素充填所で、充填ノズル30と車両側充填口であるレセプタクル40とを接続して水素ガスを充填している。当該充填は、車両Aに搭載された水素タンク41の最高使用圧力に応じて制御しながら行われる。なお図6において、符号51は水素貯蔵タンク50からディスペンサー60に水素を供給する配管系を示す。この様な水素充填装置としては、例えば本出願人が提案している水素充填装置(例えば、特許文献1参照)が存在し、係る水素充填装置は有効な技術である。
【0003】
従来の水素充填装置では、水素充填装置のノズルとレセプタクル(車両側の受口)を結合した際に、ノズル側の接続ピンがレセプタクルにより押圧されて開弁し、水素がレセプタクル側に流れる様に構成されている。そして、接続ピンの外周面から水素ガスが漏出することを防止するため、積層型のシール材(カップシール)を設けている。ここで、ノズル側の接続ピンが半径方向に動いてしまうこと(いわゆる「ガタつき」)を抑制し、ノズルとレセプタクルとを適正に結合せしめるため、従来の水素充填装置では、ノズル側の本体部に半径方向内方に突出した案内部材を設け、当該案内部材の内周面を前記接続ピンが摺動することにより、前記接続ピンが半径方向に動くことを抑制している。
【0004】
しかし、前記案内部材の半径方向内周面と前記接続ピンが摺動するため、弁の開閉を繰り返すことにより、前記接続ピンの摺動箇所に傷や変形(凹み等)が生じてしまう。そして、当該傷や変形を生じた箇所が前記積層型のシールの半径方向内側の領域に位置すると、当該傷や変形を介して水素がノズル外に漏出してしまう、という問題が存在する。また、前記案内部材を設けることにより、その分だけノズルの接続ピン軸方向寸法を長くしなければならず、充填ノズルのコンパクト化を阻害するという問題も存在する。上述した水素充填装置(特許文献1参照)においては、係る問題点の解消については何等開示されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本特開2014-109350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ノズルの接続ピンが半径方向に動くことを抑制し、当該接続ピンの外周面に傷や変形(凹み等)が生じることを防止できると共に、充填ノズルをコンパクトにすることが出来る充填装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充填装置(100)は、水素燃料を貯える貯蔵タンクと、該貯蔵タンクから燃料充填系統を介して車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する充填ノズル(10)を備えた充填装置(100)において、前記充填ノズル(10)は、ロッド状部材(2:接続ピン)と本体部(1)を備えており、前記ロッド状部材(2)の内部を水素が流れ、前記本体部(1)は、前記ロッド状部材(2)を覆うと共に、前記ロッド状部材(2)との間にシール部材(3:積層型のシール材)が配置され、前記ロッド状部材(2)の先端側には、2つの保持具(17、18)に挟まれたシール部材保持部材(4-1)が設けられ、前記シール部材保持部材(4-1)は、前記ロッド状部材(2)の外周面を保護しながら該外周面上を摺動し、前記2つの保持具(17、18)の各々は、内周面が前記ロッド状部材(2)の外周面から離隔した状態で前記本体部(1)に螺合することを特徴としている。
【0008】
ここで、シール部材保持部材(4)との摺動からロッド状部材(2)の外周面を保護する前記機構を、シール部材保持部材(4:押え)の半径方向内側面にロッド状部材(2)の材料(例えばステンレス)よりも硬度が低い素材(例えば、樹脂、Al、Cu等)をコーティングして構成することが出来る。或いは、ロッド状部材(2)の表面にシール部材保持部材(4:押え)の材料(例えばステンレス)よりも硬度が高い素材(例えば、ガラス、炭素系材料等)をコーティングして、前記機構を構成することが出来る。
【0010】
本発明において、ロッド状部材(2:接続ピン)の前記燃料充填系統側端部に弁体(2A)が設けられ、弁体(2A)を閉鎖側に付勢する弾性材(5)が設けられているのが好ましい。
【0011】
本発明の実施に際しては、充填ノズル(10)と車両用充填口(20)との連結状態を維持するクラッチ機構(12)を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明によれば、本体部(1)におけるロッド状部材(2)が貫通している個所の周辺に加えて、シール部材保持部材(4:押え)の内周面により、ロッド状部材(2)が半径方向に動くこと(いわゆる「ガタつき」)を防止することが出来る。そして、シール部材保持部材(4)との摺動からロッド状部材(2)の外周面を保護する機構により、充填ノズル(10)内の弁の開閉を繰り返しても、ロッド状部材(2)がシール部材保持部材(4)と摺動する箇所に傷や変形(凹み等)が生じることがなく、ロッド状部材(2)がシール部材保持部材(4)と摺動する箇所が前記積層型のシール(3)の半径方向内側の領域に位置しても、ロッド状部材(2)の表面には傷や変形は存在しないので、ガス(例えば水素)がノズル(10)外に漏出してしまうことは無い。
【0013】
それに加えて、本発明はシール部材保持部材(4)がロッド状部材(2)の半径方向に動くこと(いわゆる「ガタつき」)を防止する機能を有しているため、ノズル(10)側の本体部(1)に半径方向内方に突出した案内部材を別途設ける必要が無く、当該案内部材と前記積層型のシールの間に弁開閉のための移動代を設ける必要も無くなる。その結果、本発明によれば、充填ノズル(10)のロッド状部材(2)軸線方向寸法を小さくして、全体をコンパクトにすることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の参考例における充填ノズルと車両側充填口を分離した状態で示す断面図である。
図2】参考例における充填ノズルと車両側充填口を連結した状態で示す断面図である。
図3図1図2のシール部材保持部材と、当該シール部材保持部材を充填ノズルの本体部に締め込む工具を示す斜視図である。
図4図2における部分F4の拡大図である。
図5】実施形態の変形例を示す部分拡大断面図である。
図6】従来技術に係る水素充填装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の参考例及び実施形態について説明する。図1において、充填ノズル10は、図示しない水素燃料貯蔵タンクから燃料充填系統(ディスペンサー60、充填ホース45等、図6参照)を介して、車載用水素充填タンク41に水素を充填する。充填ノズル10は管継手本体1(以下、「本体部」と言う)を有しており、本体部1の水素供給源側(図1で右側)端部の中央部(図1では上下方向中央部)には、水素導入口1Bが設けられている。そして、本体部1のレセプタクル20側(車両用充填口側、図1で左側)端部には開口1Cが設けられている。開口1Cは、レセプタクル20を挿入するための開口である。そして図2で示す様に充填ノズル10とレセプタクル20を結合する際(例えば水素充填時)には、レセプタクル20は図1で示すレセプタクル挿入空間1Dに位置している。
【0016】
図1において、本体部1の上下方向中央部には、水素導入口1Bからレセプタクル挿入空間1Dに延在する本体内流路1Aが形成されており、本体内流路1Aにはロッド状部材2(接続ピン)が収容されている。ロッド状部材2の水素供給源側(図1で右側:水素供給源は図1では図示せず)の端部には弁体2Aが設けられており、弁体2Aは本体内流路1Aの弁体収容部1Eに収容されている。弁体収容部1E内において、弁体2Aの水素供給源側(図1の右側)には弾性材であるスプリング5が配置されている。弁体2Aと、弁体収容部1Eの端部(図1では左端部)の段部により構成された弁座1Mと、スプリング5は、弁機構を構成している。
【0017】
ロッド状部材2は本体内流路1A内を、図1では左右方向に摺動自在であり、図1で示すレセプタクル20と連結されていない状態では、弁体2Aはスプリング5の弾性反撥力によりレセプタクル20側(図1では左側)に付勢されて、弁体収容部1Eの端部(図1では左端部)の段部により構成された弁座1Mに座着し、弁機構(弁体2A等)は閉鎖している。ロッド状部材2は中空形状であり、中空部分がロッド内流路2Bを構成している。そして、ロッド状部材2は、大径部2C、細径部2D、弁体2A、径寸法変化部2Fを有しており、径寸法変化部2Fには開口2Eが形成されており、大径部2Cと細径部2Dは径寸法変化部2Fにより接続されている。水素ガス充填時(図2参照)には、ディスペンサー(図1図2では図示せず:図6参照)から弁体2A等で構成される弁機構を経由して本体内流路1A内に水素ガスが流入する。本体内流路1A内に流入した水素ガスは、ロッド状部材2の開口2Eを介してロッド内流路2Bを流過する。
【0018】
ロッド状部材2の大径部2Cには段部2Gが形成され、充填ノズル10とレセプタクル20が連結された際に、段部2Gは本体部1の段部1Fと係合する。ロッド状部材2の細径部2Dにはナット部材2Hが固定され、ナット部材2Hが本体部1の凸部1G(或いは、ロッド内流路2Bに連続する小径の流路2Nの端部)と係合することにより、水素充填時にロッド状部材2がレセプタクル側(図1で左側)に抜け出てしまうことを防止している。本体部1において、ロッド状部材2の大径部2Cの摺動する部分、ナット部材2Hの外周面と対向する部分、後述するシール部材保持部材4(押え)の内周面は、ロッド状部材2の対応する部分と協働して、ロッド状部材2が半径方向に動くこと(いわゆる「ガタつき」が生じること)を抑制している。
【0019】
図1において、本体部1には、ロッド状部材2の大径部2Cの半径方向外周部と対向する領域に、シール部材3(積層型のシール材:いわゆる「カップシール」)が配置されている。カップシール3は、本体部1のレセプタクル20側(図1で左側)端面1H近傍に配置され、カップシール3の内径寸法は、ロッド状部材2の大径部2C(段部2Gよりレセプタクル側(図1で左側))の外径寸法に略等しく設定され、大径部2Cがカップシール3内を摺動可能に設定されている。
【0020】
カップシール3の端面1H側(図1では左側)に隣接して、シール部材保持部材4が設けられている。シール部材保持部材4は本体部1の内周に固定されており、符号4Aはシール部材保持部材4に形成された雄ネジを示す。なお、シール部材保持部材4を本体部1の内周に固定する手段として、ネジ以外の公知の手段を採用することが可能である。シール部材保持部材4は、ロッド状部材2が半径方向に動くこと(いわゆる「ガタつき」が生じること)を抑制すると共に、カップシール3がロッド状部材2の先端側(図1では左側:レセプタクル20側)に移動しない様に、カップシール3を保持する機能を有している。
【0021】
図2において、ノズル10とレセプタクル20を連結した状態では、ロッド状部材2の先端側(レセプタクル側:図1図2では左側)の係合部2I(図1)は、レセプタクル20の先端側(ノズル側:図1図2では右側)の係合部20C(図1)に当接し、ロッド状部材2は図1で示す状態から、図1図2の右方向(レセプタクル20から隔離する方向)へ移動する。符号21はOリングを示す。Oリング21は、本体部1(ノズル10)とレセプタクル20が連結した際に、ロッド内流路2Bからレセプタクル内流路20Bに流れる水素ガスが所定の流路から漏出することを防止するシール部材である。ロッド状部材2は図1で示す状態から図1図2の右方向へ移動した際に、ロッド状部材2は、ロッド状部材2の大径部2Cの段部2G(図1)が本体部1の段部1F(図1)に当接する位置まで移動する。
【0022】
ロッド状部材2が図1で示す状態から図1図2の右方向へ移動するに伴い、ロッド状部材2先端の弁体2Aはスプリング5の弾性反撥力に抗して弁座1Mから離隔し、弁機構を開弁する。そして開弁した弁機構を介して、図1図2では図示しない水素供給源から供給された高圧の水素ガスが、水素導入口1Bから本体内流路1Aに流入する。本体内流路1Aに流入した水素ガスは、ロッド状部材2の開口2E、ロッド内流路2Bを経由し、レセプタクル内流路20Bを流過して、図2では図示しない車載用水素充填タンク41(図6)内に供給される。
【0023】
図2において、水素ガスが本体内流路1A、ロッド内流路2Bを流過する際に、ロッド状部材2の開口2Eからロッド内流路2Bを流れずに、ロッド状部材2の大径部2Cの外周面と本体内流路1Aの内周面との間の隙間δを流れて(漏出して)、本体部1外には漏出する恐れがある。この様な水素ガスの漏出を防止するため、カップシール3を配置して、隙間δを流れる水素ガスをシールする。ここで、ロッド部材2が本体部1内を繰り返し摺動することにより、ロッド状部材2の摺動する箇所R(図2)が摩耗して、傷や変形(凹み等)が生じてしまう。その様な摩耗が生じて、ロッド状部材2の当該傷や変形箇所がカップシール3の半径方向内側の領域(内周部)に位置してしまうと、カップシール3のシール機能が発揮されず、水素ガスがカップシール3とロッド状部材2の領域における傷や変形箇所を通過して、本体部1(ノズル10)外に漏出してしまう。
【0024】
ロッド状部材2の摩耗による上述の事態に対処するため、図示の参考例では、ロッド状部材2とシール部材保持部材4との摺動から、ロッド状部材2の外周面を保護する機構を有している。すなわち、シール部材保持部材4の半径方向内側面にロッド状部材2の材料(例えばステンレス)よりも硬度が低い素材(例えば、樹脂、Al、Cu等)をコーティングして、前記ロッド状部材2の外周面を保護する機構を構成している。或いは、ロッド状部材2の少なくとも箇所Rの表面に、シール部材保持部材4の材料(例えばステンレス)よりも硬度が高い素材(例えば、ガラス、炭素系材料等)をコーティングして、前記機構を構成しても良い。さらに、ロッド部材2全体をシール部材保持部材4の材料よりも硬度が高い素材で構成しても良い。その様な構成を有している図示の参考例では、ロッド状部材2の摺動を繰り返しても、ロッド状部材2(の外周面)の箇所Rが摩耗することが防止され、傷や変形(凹み等)が生じることがなく、充填ノズル10とレセプタクル20との連結状態において、ロッド状部材2がシール部材保持部材4と摺動する箇所Rがカップシール3の半径方向内側の領域に位置しても、(ロッド状部材2の表面には傷や変形は存在しないので、)水素ガスがカップシール3とロッド状部材2の間から本体部1(ノズル10)外に漏出してしまうことは無い。
【0025】
水素充填時に、カップシール3が高圧の水素ガスにより付勢されてレセプタクル20側に移動するのを防止するため、シール部材保持部材4はネジ等の公知の手法により本体部1の内周に強固に固定される。図3(A)にシール部材保持部材4の一例を示す。図3(A)において、シール部材保持部材4の外周面に雄ネジ4Aが形成されており、雄ネジ4Aは本体部1の内周の雌ネジ(図示せず)に螺合する。また図3(A)において、シール部材保持部材4の左側の端面(シール部材保持部材4を本体部1に取り付けた際に、カップシール3から離隔している側の端面)には、スリット4Bが形成されている。シール部材保持部材4を本体部1の内周に固定する際には、図3(B)で示す様な専用工具Tを用い、工具Tの係合部TAをシール部材保持部材4のスリット4Bに係合させて、回転することにより、シール部材保持部材4の雄ネジ4Aを本体部1内周の図示しない雌ネジに充分に締め込み、シール部材保持部材4を本体部1に強固に固定する。
【0026】
図示の参考例では、充填ノズル10とレセプタクル20との連結状態を維持するクラッチ機構12を備えている。図1において、本体内流路1Aの半径方向外方であって、レセプタクル20側(図1で左側)には、中空シリンダー形状のクラッチ13が設けられている。クラッチ13の水素供給源側(図1で右側)の端部に形成された係止部13Aが、本体部1に形成されたクラッチ嵌合溝1Jに嵌合して、固定されている。一方、クラッチ13のレセプタクル側端部(図1で左側)には突起13Bが設けられ、充填ノズル10とレセプタクル20の連結時(水素供給時)には、図2で示す様に、突起13Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aに嵌入する。
【0027】
クラッチ13の半径方向外方にはレバー14が設けられている。レバー14にはレバー用把持部14Aが一体的に形成され、図示しない作業者がレバー用把持部14Aを把持してレバー14を矢印H方向に移動して、クラッチ13の突起13Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れてしまうことを防止する位置と、クラッチ13の突起13Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れることを許容する位置とを移動することが出来る。図1図2において、本体部1には、レバー14が矢印H方向に移動することを許容するレバー用開口部1Kと、レバー移動通路1Lが形成されている。
【0028】
図2で示す状態では、レバー14のレセプタクル側端部(図2では左端部)をクラッチ13の突起13Bの半径方向外方位置に保持して、クラッチ13がレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにしている。クラッチ機構12は、レバー14のレセプタクル側(図2では左側)の端部に設けられ且つ半径方向内側に突出した突起14B(レバーの突起)と、レバーの突起14Bよりもレセプタクル20から離隔した側(図2では右側)に配置したリング状の弾性部材15(例えばOリング)を有している。リング状弾性部材15は、レバー14のレセプタクル側端部近傍に形成された弾性体用溝14Cに嵌合している。
【0029】
水素充填時には、図2で示す様に充填ノズル10とレセプタクル20とが連結した状態となり、水素ガスが本体部内流路1Aに流入し、ロッド内流路2B、レセプタクル内流路20Bを流過する。その際、水素ガスは非常に高圧(例えば70MPa)であり、その圧力により本体部1をレセプタクル20から引き剥がそうとする引張力F1(図2)が作用する。引張力F1(図2)が作用する結果、クラッチ13の突起13Bにおけるレセプタクル20から離隔する側(図2で右側)の傾斜面13BAと、レセプタクル嵌合溝20Aにおけるレセプタクル20から離隔する側(図2で右側)の傾斜面20AAとの作用により、引張力F1の分力として半径方向外方に向かう力ROがクラッチ13に作用し、クラッチ13は半径方向外方に移動する。
【0030】
図2におけるF4部分を拡大した図4において、半径方向外方に向かう力ROによりクラッチ13が半径方向外方に移動すると、弾性体15が半径方向に潰れた状態となる。その結果、領域FTで、クラッチ13の突起13Bの端面13BBと、レバー14の突起14Bの端面14BAが当接し、図4で示す状態からレバー14をレセプタクル20に対して図2図4で左右方向について右側に移動することが出来ないので、レバー14をレセプタクル20から離隔する方向(図2図4では右方向)に移動することは出来ない。そのため、レバー14はクラッチ13の突起13Bの半径方向外方に位置し続け、クラッチ13の突起13Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れてしまうことは無く、本体部1とレセプタクル20の連結が解除されてしまうことが防止される。弾性体15の弾性係数、クラッチ側への突出量、レバー14の突起14Bにおけるクラッチ側への突出量、突起13Bの傾斜面13BAの傾斜角度(図2図4)、レセプタクル嵌合溝20Aの傾斜面20AA(図2図4)の傾斜角度等、を適宜設計することにより、上述の作用効果を奏する。なお、図1図2において、符号16は、充填ノズル10とレセプタクル20が連結した際に、クラッチ機構12のレセプタクル20側先端の半径方向外方にレバー14を位置させるレバー位置移動機構を示している。
【0031】
図2図4において、水素ガスの充填が完了し、所定の脱圧作業が完了すると、水素ガスの高圧に起因する引張力F1(図2)が消失する。それに伴い、クラッチ13に作用する半径方向外方に向かう力ROも消失し、クラッチ13は半径方向内方の位置(水素ガス充填前の位置)に復帰する。そのため、レバー14の先端近傍に設けられたリング状弾性部材15は、図4で示す潰れた状態から断面円形の状態に復帰して、端面13BBと端面14BAは当接せず、レバー14は図4で示す状態とは異なり、レセプタクル20から離隔する方向(図2図4では右方向)に移動可能となる。そして、レバー14をレセプタクル20から離隔する方向(図2図4では右方向)に移動すれば、レバー14はクラッチ13の突起13Bの半径方向外方には位置していないので、クラッチ13の突起13Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れることが可能となり、本体部1(充填ノズル10)とレセプタクル20の連結を解除することが出来る。
【0032】
図1図4に示す参考例に係る充填装置100によれば、シール部材保持部材4の内周面により、ロッド状部材2が半径方向に動くことが抑制され、ロッド状部材2の「ガタつき」を抑制することが出来る。また、シール部材保持部材4との摺動からロッド状部材2の外周面を保護する構造として、例えば、シール部材保持部材4の内側面にロッド状部材2の材料よりも硬度が低い素材をコーティングする構造、或いは、ロッド状部材2の表面にシール部材保持部材4の材料よりも硬度が高い素材をコーティングする構造、さらには、ロッド部材2自体をシール部材保持部材4の材料よりも硬度が高い素材とする構造を有している。そのため、充填ノズル10内の弁機構(弁体2A等)の開閉を繰り返しても、ロッド状部材2の外周面に(特に、図2で示す様に充填ノズル10とレセプタクル20との連結状態で、カップシール3の半径方向内方に位置する箇所Rに)傷や変形(凹み等)が生じることがない。その結果、充填ノズル10とレセプタクル20とが連結して(図2)、ロッド状部材2がカップシール3の半径方向内方に位置しても、ロッド状部材2の表面には傷や変形は存在しないので、水素ガスが本体部1(ノズル10)外に漏出してしまうことは無い。
【0033】
また、シール部材保持部材4を本体部1の内周にネジで固定する際は、専用工具Tをシール部材保持部材4のスリット4Bに係合させて締め込むので、シール部材保持部材4が本体部1に強固に固定される。そのため、シール部材保持部材4が本体部1から外れてしまうことがなく、シール部材保持部材4により、カップシール3が高圧の水素ガスにより付勢されてレセプタクル20側に移動するのを防止出来る。
【0034】
図示の参考例では、シール部材保持部材4がロッド状部材2の半径方向に動くこと(いわゆる「ガタつき」)を防止する機能を有しているため、本体部1のレセプタクル20側に、半径方向内方に突出した案内部材を別途設ける必要が無く、当該案内部材(別途設けた案内部材)とカップシール3の間に弁開閉のための移動代を設ける必要も無い。そして、当該移動代を設ける必要がない分だけ、充填ノズル10のロッド状部材2軸線方向寸法を小さくして、全体をコンパクトに構成することが出来る。
【0035】
これに加えて、図示の参考例では、充填ノズル10とレセプタクル20(車両側充填口)を連結することにより、ロッド状部材2の弁体2Aが弁座1Mから離隔し、弁機構を開弁し、水素導入口1Bからレセプタクル20側(車両用充填口側)への流路が開き、水素ガスが充填可能となるので、安全である。そして図示の参考例によれば、充填ノズル10とレセプタクル20(車両用充填口)との連結状態を維持するクラッチ機構12を備えており、充填ノズル10とレセプタクル20を連結して水素を充填すると、水素充填圧力が作用している間は、充填ノズル10をレセプタクル20から取り外すことは出来ない。係るクラッチ機構12は機械式機構であり、水素ガス等の流体を使用して作動させるものではないため、当該作動のための流体回路や作動流体のシール構造(Oリング等)を設ける必要がない。そのため、作動ガス(水素ガス等)が漏洩する恐れも無く、確実である。
【0036】
次に図5を参照して、本発明の実施形態について説明する。図5に示す実施形態では、シール部材保持部材4-1全体をロッド状部材2の材料(例えばステンレス)よりも硬度が低い素材(例えば、樹脂)で構成している。シール部材保持部材4-1の先端側(レセプタクル20側、図5で左側)には第1の保持具17が配置される。第1の保持具17は、本体部1の内周にネジで螺合している。図5において、符号17Aは第1の保持具17に形成された雄ネジを示している。第1の保持具17の内周面は、ロッド状部材2(の外周面)と離隔しており、符号εは第1の保持具17の内周面とロッド状部材2の外周面における隙間(の寸法)を示している。そのため、第1の保持具17は、軸方向に移動するロッド状部材2とは接触しない。シール部材保持部材4-1のカップシール3側(水素供給源側、図5で右側)には第2の保持具18が配置されている。第2の保持具18も、第1の保持具17と同様、本体部1の内周に螺合しており、図5における符号18Aは第2の保持具18に形成された雄ネジを示している。そして、第2の保持具18の内周面も、ロッド状部材2と離隔しており、第2の保持具18の内周面とロッド状部材2の外周面における隙間(の寸法)も、符号εで示されている。そのため、第2の保持具18も、軸方向に移動するロッド状部材2とは接触しない。
【0037】
シール部材保持部材4-1は、図1図4の参考例と同様に、内径寸法はロッド状部材2の大径部2Cの外径に概略等しく、ロッド状部材2を先端側(レセプタクル20側)で支持して、いわゆる「ガタつき」を防止する機能を有している。シール部材保持部材4-1はロッド状部材2の材料(例えばステンレス)よりも硬度が低い素材(例えば、樹脂)で構成されているので、図1図4の参考例と同様に、ロッド状部材2(の外周面)がシール部材保持部材4-1と摺動する箇所に傷や変形(凹み等)を生じることは無く、水素充填時にロッド状部材2の表面とカップシール3の内面の間から水素ガスが本体部1(ノズル10)外に漏出してしまうことも無い。
【0038】
そして、シール部材保持部材4-1を挟み込んで第1の保持具17、第2の保持具18が配置されているので、水素充填時において、ロッド状部材2の軸線方向(図5の左右方向)に押圧されることが防止される。そのため、シール部材保持部材4-1が半径方向内方に膨張してロッド状部材2の軸方向移動を妨げてしまうことも防止される。また、第2の保持具18を本体部1の内周に螺合し、シール部材保持部材4-1を挿入し、シール部材保持部材4-1を挟み込む様に、第1の保持具17を本体部1に螺合することにより、容易に組み立てることが出来るという作用効果も発揮する。図5の実施形態におけるその他の構成、作用効果は、図1図4の参考例と同様である。
【0039】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。例えば、図示の実施形態では水素充填装置として説明しているが、本発明をCNG充填装置として適用することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・本体部
2・・・ロッド状部材(接続ピン)
2A・・・弁体
3・・・カップリング(シール部材)
4、4-1・・・シール部材保持部材(押え)
5・・・スプリング(弾性材)
10・・・充填ノズル
12・・・クラッチ機構
17・・・第1の保持具
18・・・第2の保持具
20・・・レセプタクル
100・・・充填装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6