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  • 特許-新規ジストニア治療用薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】新規ジストニア治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4468 20060101AFI20221116BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 31/135 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/137 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/138 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/15 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/343 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/415 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/445 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/451 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/495 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/517 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 31/519 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20221116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20221116BHJP
   G01N 33/15 20060101ALN20221116BHJP
   G01N 33/50 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
A61K31/4468
A61P21/02
A61P25/04
A61P25/14
A61P43/00 114
A61K31/135
A61K31/137
A61K31/138
A61K31/15
A61K31/343
A61K31/415
A61K31/4406
A61K31/445
A61K31/451
A61K31/4525
A61K31/495
A61K31/496
A61K31/517
A61K31/519
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020529253
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018013159
(87)【国際公開番号】W WO2019107767
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160506
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518366555
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウン
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-516284(JP,A)
【文献】特表2015-522075(JP,A)
【文献】KIM J.et al.,Serotonin mediates stress induced dystonia through 5HT2A receptor in tottering mice,Neuroscience Abstract 2017,2017年11月12日,134.06/W30
【文献】Cell,2016年,Vol.164,pp.617-631
【文献】BMC Psychiatry,2015年,Vol.15,Article 253
【文献】Frontiers in Behavioral Neuroscience,2015年,Vol.9,Article 152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピマバンセリンを有効成分として含む、ストレス誘導筋緊張異常症(dystonia)治療用またはストレス誘導筋緊張によって発生する疼痛緩和用の経口投与用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年11月28日付の大韓民国特許出願第2017-0160506号に対する優先権を主張する。前記特許出願の明細書は、全体として本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規な薬学的組成物に係り、より詳細には、新規ジストニア治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ジストニア(dystonia)は、「筋異常緊張症」または「筋緊張異常症」とも呼ばれる症状であって、本人の意志と無関係に持続的に非正常な姿勢を取るか、またはひねる筋肉運動を誘発する不随意的な異常運動現象を特徴とする神経学的疾患である。このような症状は、不随意的に筋肉が収縮することにより、結局、筋肉のねじれや反復的な動きのような非正常な運動と異常な姿勢とを招く。ジストニアは、遺伝的原因で発生し、特定の原因疾患の二次的徴候として表われる。しかし、ジストニアの病因と関連して、ビククリン(bicuculline)のようなGABA拮抗剤(agonist)を動物に注入する場合、ジストニアと類似した症状が表われ、したがって、神経伝達物質であるGABA関連神経ネットワーク上に問題が発生する場合、発病すると推定しているのみ(Inase et al.,J.Neurophysiol.75:1087-1104,1996)、正確な発病機転は、明確に知られていない実情である。
【0004】
また、現在臨床的にボトックスを局所的に投与して、3ヶ月程度持続効果を示す治療法が使用中である。しかし、ボトックスの場合、治療法が複雑であり、コストが高い。
【0005】
一方、ジストニアに対する治療方法としては、筋緊張異常症状が表われる筋肉部位に局所的な電気刺激を加える電気刺激治療装置が提示されている(US20160296756A1)。
【0006】
しかし、前記先行技術は、ストレス要因による筋緊張に対しては効果があまり大きくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、より効率的にジストニア、特に、ストレスによる筋緊張異常症状の治療及び筋緊張によって発生する疼痛の緩和のための新規な薬学的組成物を提供することを目的とする。しかし、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤を有効成分として含む筋緊張異常症治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物が提供される。
【0009】
本発明の他の一観点によれば、被検化合物または天然物をセロトニン受容体5-HT2Aを阻害するか否かを観察する段階;及び前記5-HT2Aを阻害すると確認された被検化合物または天然物を選別する段階;を含む筋緊張異常症の治療または筋緊張によって発生する疼痛緩和候補物質のスクリーニング方法が提供される。
【0010】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張症状を有する個体に投与する段階を含む筋緊張異常症の治療方法が提供される。
【0011】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張症状を有する個体に投与する段階を含む筋緊張によって発生する疼痛緩和方法が提供される。
【0012】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張が懸念される個体に投与する段階を含む過度な筋異常緊張症の予防方法が提供される。
【0013】
本発明の他の一観点によれば、筋緊張異常症(dystonia)治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物の製造において、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤の用途が提供される。
【発明の効果】
【0014】
前記のようになされた本発明の一実施例によれば、遺伝的な素因の以外に、極度のストレスによって発生する筋異常緊張症、すなわち、ジストニアを効果的に治療及び予防することができる。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例によって、ジストニアモデル動物での筋異常緊張症状を多様な分析方法で観察した結果を示す図である。(A)本発明の一実施例による動物実験の概要(上段)及び筋異常緊張姿勢での後足の過信展の実物写真(下段)、(B)開放状ボックスに置かれた不安定マウス(tottering mice)のストレス環境露出時間による筋異常緊張指数(dystonia score)の変化を記録したグラフ、(C)定常状態及び筋異常緊張状態で伸筋(gastrocnemius)及び前脛骨筋(tibialias anterior muscle)での測定した筋電図、(D)筋異常緊張と休息状態での伸筋及び前脛骨筋の平均RMS(筋収縮または筋緊張程度を反映)比較、(E)対照群(Vehicle)及び3種類のセロトニン受容体拮抗剤(MDL100907)、Way100135及びオンダンセトロン(Ondansetron)をジストニアモデル動物に投与した後、拮抗筋2ヶ所での共活性化率を記録したグラフ、(F)多様なセロトニン受容体拮抗剤の投与後の筋異常緊張の発生回数(左側)及び筋異常緊張指数(右側)を測定した結果を示すグラフ、(G)多様なセロトニン受容体拮抗剤投与後の相互相関関係の分析結果を示すグラフ。
図2】作用剤と結合を妨害して活性化を妨害するが、活性化/不活性化平衡には影響を及ぼさない「拮抗剤(antagonist)」と標的分子を不活性化構造で安定化させる薬物である「逆作用剤(inverse agonist)」のそれぞれの種類を示すベン図である。
図3】多様なセロトニン2A受容体拮抗剤の投与によるジストニアモデル動物での筋緊張異常症状を測定した結果を示す図である。(A)MDLの濃度別のジストニアモデル動物に投与時に、筋異常緊張の発生回数及び指数を測定した結果を示すグラフ、(B)対照群及び3種類のセロトニン2A受容体拮抗剤(1mg MDL100907)、ピマバンセリン(Pimavanserin)及びグレマンセリン(Glemanserin)を投与した後、筋異常緊張の発生回数及び指数を測定したことを示すグラフ、及び(C)前記Bで2mg MDL100907にしたグループの濃度のみ変えたグラフ。
図4】本発明の一実施例によって、GCaMP6局所的形質導入不安定マウスの小脳でのリアルタイム蛍光分析を行った結果を示す図である。(A)本発明で使用したリアルタイム蛍光分析システムの概要(左側)、実験動物から摘出された小脳薄片で蛍光発現の有無を観察した蛍光顕微鏡撮影写真(右側)、(B)実験動物の行動状態による蛍光変化率を示すグラフ、(C)対照群グループでの筋異常緊張開始区間の整列された蛍光変化のヒートマップ、(D、E)居所(home)にある時、及び開放状ボックスに移した後の対照群及びMDL100907投与群の蛍光変化率を記録したグラフ、(F)ストレス環境露出時間による対照群、薬物投与群及び居所に存在時の蛍光変化率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語の定義:
本明細書で使われる用語「ジストニア」、「筋異常緊張」または「筋緊張異常症」は、本人の意志と無関係に持続的に非正常な姿勢を取るか、またはひねる筋肉運動を誘発する不随意的な異常運動現象を特徴とする神経学的疾患であって、家族性またはストレス性ジストニアが存在すると知られている。特に、ストレス性ジストニアは、特別に遺伝的素因がない場合にも、公演や発表などを前にして激しいストレスによって誘発される場合がある。
【0017】
本明細書で使われる用語「脳性麻痺(cerebral palsy)」は、脳が損傷して運動機能が麻痺した状態を意味し、出生時の脳損傷、新生児の重症黄疸、髄膜炎などが原因として知られている。最も重要な症状は、神経筋肉系の調節が正しくなされないものであって、脳性麻痺患者の約70~80%は筋肉が強直であって、動きを難しくする痙攣性脳性麻痺を有すると知られており、非正常な筋緊張が問題になっている。
【0018】
本明細書で使われる用語「筋緊張性異栄養症(myotonic dystrophy)」は、スタイナート病(Steinert’s disease)とも呼ばれ、筋肉が徐々に弱化する疾病である。症状が体の多くの所で起これば、多様な形態で表われるが、代表的な症状としては、筋肉硬直になるが、一般的に、筋肉弛緩は、筋肉収縮があった後に来るが、この疾患にかかった患者の場合、筋肉弛緩が遅く進めながら全般的な筋肉に硬直がある。
【0019】
本明細書で使われる用語「球脊髄性筋萎縮症(spinobulbar muscular atrophy)」は、ケネディ病(Kennedy’s disease)とも呼ばれ、X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子の突然変異によって発生する伴性遺伝病であって、この遺伝子の反復増幅が起これば、アンドロゲン受容体の役割に支障が生じて、結果的に運動神経細胞が退行する。30歳以前には、筋神経症状が表われないながら、10~20年後には、筋強直などの筋肉障害が本格的に始まって、車椅子が必要になり、話したり、飲み込んだりすることにも障害が生じる。
【0020】
本明細書で使われる用語「セロトニン受容体(serotonin receptor)」は、神経伝達物質であるセロトニン(5-HT)と結合して細胞内で生理活性を起こす受容体を意味する。哺乳類では、末梢神経系や脳内縫線核(raphe nuclei)、黒質(substance nigra)、淡蒼球(globus pallidus)、基底核(basal ganglia)、脈絡叢(choroid plexus)などに高密度で存在し、ほとんどGタンパク質やcAMPなどの2次信号物質を介してK+またはCa2+チャネルを調節すると知られている。セロトニン受容体は、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT、5-HT、5-HT5A、5-HT5B、5-HT、5-HTの14種のサブタイプが存在すると知られており、これらのサブタイプ別に機能及び拮抗剤、作用剤などが少しずつ異なると知られている。
【0021】
本明細書で使われる用語「拮抗剤」は、作用剤(agonist)のように標的分子を活性化させるよりは、当該標的分子に結合して、その機能を遮断することにより、生物学的反応を遮断するか、減衰させる役割を行うリガンドまたは薬物を意味する。
【0022】
本明細書で使われる用語「選択的拮抗剤(selective antagonist)」は、多様なサブタイプが存在する標的分子において、特定のサブタイプのみの機能を選択的に遮断するリガンドまたは薬物を意味する。
【0023】
本明細書で使われる用語「二重拮抗剤(dual antagonist)」は、多様なサブタイプが存在する標的分子において、構造的に密接に関連している2つ以上のサブタイプの標的分子に対してのみ、その機能を阻害する拮抗剤を意味する。本発明で使用する5-HT2A及び5-HT2Cは、構造的に非常に密接な受容体であって、このような2種のサブタイプを区分することができないが、他のサブタイプは区分して、これらの2つのサブタイプのセロトニン受容体のみ選択的に抑制する拮抗剤が存在するが、これらは、たとえ選択的拮抗剤よりは副作用が多いとしても、無差別的な非選択的拮抗剤よりは、その副作用が少ないという長所がある。
【0024】
本明細書で使われる用語「逆作用剤」は、標的分子を不活性化構造で安定化させる薬物を意味する。一般的に、受容体のような標的分子は、活性化構造と不活性化構造とが均衡状態で存在するが、作用剤によって活性化構造で平衡が傾くようになる。拮抗剤は、作用剤と結合を妨害して活性化を妨害するが、活性化/不活性化平衡には影響を及ぼさない。逆作用剤は、平衡状態を不活性化構造に傾けるように作用するために、受容体の恒久的活性を抑制することができる。
【0025】
本明細書で使われる用語「拮抗抗体(antagonistic antibody)」は、特定の標的タンパク質と結合して、当該標的タンパク質の生理学的活性を抑制する抗体を意味する。
【0026】
本明細書で使われる用語「抗体の機能性断片」は、抗体をタンパク質切断酵素で切断して生成される抗体の抗原結合部位が保存された抗体の断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をリンカーで連結して製造した一本鎖基盤の抗体類似体であるscFv、diabody、tribody、さらに包括的には、一本鎖基盤の抗体類似体(sdAb、VH、nanobody、monobody、可変性リンパ球受容体(VLR)、Affilin、Affimer、Affitin、Avimer、DARPin、Fynomer、Affibody)などを含む。
【0027】
本明細書で使われる用語「Fab」は、抗原結合抗体断片(fragment antigen-binding)であって、抗体分子をタンパク質分解酵素であるパパインで切断して生成される断片でVH-CH1及びVL-CLの2つのペプチドの二量体に、パパインによって生成された他の断片は、Fc(fragment crystalisable)と称する。
【0028】
本明細書で使われる用語「F(ab’)」は、抗体をタンパク質分解酵素であるペプシンで切断して生成される断片のうち、抗原結合部位を含む断片で前記Fab2つが二硫化結合で連結された四量体の形態を示す。ペプシンによって生成された他の断片は、pFc’と称する。
【0029】
本明細書で使われる用語「Fab」は、前記Fabと類似した構造を有する抗体断片であって、前記F(ab’)を還元させて生成され、Fabに比べて、重鎖部分の長さが少し長い。
【0030】
本明細書で使われる用語「scFv」は、一本鎖可変領域断片(single chain fragment variable)であって、抗体のFabのうち、可変領域(V及びV)をリンカーを用いて一本鎖で製造した組換え抗体断片を意味する。
【0031】
本明細書で使われる用語「sdAb(single domain antibody)」は、ナノボディ(nanobody)とも称され、抗体の単一可変領域断片で構成された抗体断片である。主に重鎖から由来したsdAbが使われるが、軽鎖から由来した単一可変領域断片も、抗原に対して特異的結合になると報告されている。
【0032】
本明細書で使われる用語「VH」は、ラクダ類から見つけられた重鎖の二量体のみで構成されたIgGの重鎖の可変領域断片であって、抗原に対する特異的結合を行う抗体断片のうち、最小サイズ(~15kD)を有しており、Ablynix社によってNanobodyという商標名で開発されている。
【0033】
本明細書で使われる「Fv(fragment variable)」は、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域(V及びV)のみで構成された二量体性抗体断片であって、サイズが前記sdAbとFabとの中間程度(約~25kD)であって、抗体を特別な条件でタンパク質加水分解させて生成するか、V及びVコードする遺伝子を1つの発現ベクターに挿入して発現させることで製造する。
【0034】
本明細書で使われる「ダイアボディ(diabody)」は、scFvのV及びVの間のリンカーの長さを短くして(5 a.a.)、2つのscFvが互いに二量体を形成するように製造された二価性(divalent)の二重特異性(bispesific)を有する組換え抗体断片であって、通常のscFvよりも抗原特異性がさらに高いと知られている。
【0035】
本明細書で使われる用語「カルシウムセンサータンパク質」は、細胞内でカルシウムイオン濃度の変化を蛍光変化で測定が可能になるように遺伝子操作された蛍光タンパク質であって、蛍光カルシウムイオン指示タンパク質(fluorescent Ca2+ indicator protein、FCIP)とも呼ばれる。主にGFPのような蛍光タンパク質にカルモジュリンのようなカルシウムイオン結合タンパク質がリンカーによって連結された融合タンパク質であって、主に構造変化によってカルシウムイオン結合時に、はじめて蛍光が発散されるか、カルシウムイオン結合時に、構造変化による2つの蛍光タンパク質間の蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer、FRET)現象を用いて細胞内カルシウムイオンの濃度を生体内条件で、そして、リアルタイムで測定するのに使われる。
【0036】
発明の詳細な説明:
本発明の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤を有効成分として含む筋緊張異常症治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物が提供される。
【0037】
本明細書で使われる用語「治療」は、病理学的原因の除去、症状の改善ないし緩和を含む概念である。
【0038】
前記組成物において、前記筋緊張は、ジストニア、脳性麻痺、筋緊張性異栄養症または球脊髄性筋萎縮症によって発生したものである。筋緊張症状(myotonia)は、筋緊張異常症だけではなく、多様な神経疾患、特に、脳性麻痺(Asagai et al.,Laser Therapy,14(4):171-178,2005)、筋緊張性異栄養症(Wenninger et al.,Front Neurol.9:303,2018)、球脊髄性筋萎縮症(Araki et al.,Neuromuscul.Disord.25(11):913-915,2015)などの疾患の代表的な症状であって、筋肉が非正常に硬直になる症状である。前記筋緊張は、過度なストレス、選択的セロトニン再吸収抑制剤の投与またはセロトニン回路の非正常な活性化によるセロトニンの非正常な増加によって起因するものである。特に、前記筋緊張は、抗うつ剤である選択的セロトニン再吸収抑制剤(selective serotonin reuptake inhibitor、SSRI)の投与による副作用で起こるものであるが、うつ病患者に対する代表的な処方薬であるSSRIは、神経伝達物質であるセロトニンがシナプス前細胞(presynaptic cells)に再吸収されることを抑制することにより、細胞外レベルのセロトニンの濃度を増加させることにより、うつ病を治療する薬物である。しかし、一部患者の場合、SSRI投与時に、副作用でシナプスでのセロトニンの過度な増加による筋緊張を経験する問題点を有し、このような理由によって筋緊張を経験するうつ病患者は、SSRIの投薬を中断する場合が頻繁である(Mossavi et al.,Glob.J.Health Sci.6(6):295-299,2014)。したがって、本発明の薬学的組成物は、SSRIを処方されたうつ病患者の筋緊張異常症状を予防または緩和する目的として使用可能である。この際、前記選択的セロトニン再吸収抑制剤は、シタロプラム(citalopram)、ダポキセチン(dapoxetine)、エスシタロプラム(escitalopram)、フルボキサミン(fluvoxamine)、パロキセチン(paroxetine)、フルオキセチン(fluoexetin)、セルトラリン(sertraline)、ジメリジン(zimelidine)、またはボルチオキセチン(vortioxetine)である。
【0039】
前記薬学的組成物において、前記5-HT2A阻害剤は、5-HT2A拮抗剤または5-HT2A逆作用剤であり、前記5-HT2A拮抗剤は、前記5-HT2Aに特異的に結合する拮抗抗体または前記拮抗抗体の機能性断片、クロザピン(clozapine)、オランザピン(olanazapin)、クエチアピン(qutiapine)、リスペリドン(risperidone)、ジプラシドン(Ziprasidone)、アリピプラゾール(aripiprazole)、アセナピン(asenapine)、アミトリプチリン(amitriptyline)、クロミプラミン(clomipramine)、アミトリプチリン、クロミプラミン(clomipramine)、シプロヘプタジン(cyproheptadine)、エプリバンセリン(eplivanserin)、エトペリドン(etoperidone)、ハロペリドール(haloperidol)、ヒドロキシジン(hydroxyzine)、イロペリドン(iloperidone)、ケタンセリン(ketanserin)、メチセルジド(methysergide)、ミアンセリン(mianserin)、ミルタザピン(mirtazapine)、ネファゾドン(nefazodone)、ピマバンセリン、ピゾチフェン(pizotifen)、リタンセリン(ritanserin)、トラゾドン(trazodone)、またはヨヒンビン(yohimbine)であり、前記5-HT2A拮抗剤は、他の類型のセロトニン受容体には作用を行わない5-HT2A選択的拮抗剤であるか、5-HT2A/2C二重拮抗剤である。前記5-HT2A選択的拮抗剤は、エプリバンセリン、2-アルキル-4-アリール-テトラヒドロ-ピリミド-アゼピン(2-alkyl-4-aryl-tetrahydro-pyrimido-azepine)、AMDA(9-アミノメチル-9,10-ジヒドロアントラセン)、ヒドロキシジン、ピゾチフェン、5-メトキシ-N-(4-ブロモベンジル)トリプタミン(5-MeO-NBpBrT)、グレマンセリン、ニアプラジン(niaprazine)、ピマバンセリン、ボリナンセリン(volinanserin)、またはLY-367265であり、前記5-HT2A/2C二重拮抗剤は、リタンセリン、ケタンセリン、シプロヘプタジン、AC-90179、トラゾドンまたはエトペリドンである。
【0040】
一方、前記5-HT2A逆作用剤は、AC-90179、ピマバンセリン、ネロタンセリン(nelotanserin)、ボリナンセリンまたはエプリバンセリンである。
【0041】
前記機能性断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、tribody、sdAb、VH、nanobody、monobody、可変性リンパ球受容体(VLR)、Affilin、Affimer、Affitin、Avimer、DARPin、Fynomer、またはAffibodyである。
【0042】
前記本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含みうる。薬学的に許容可能な担体を含む前記組成物は、経口または非経口のさまざまな剤型であり得るが、非経口のための剤型であることが望ましい。製剤化する場合には、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固型製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固型製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤の以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使われる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィンの以外に、いろいろ賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれうる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トウイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われる。
【0043】
前記薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択される何れか1つの剤型を有しうる。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口投与されうるが、非経口投与される場合、静脈内注射、鼻腔内吸入、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮吸収など多様な経路を通じて投与することが可能である。
【0045】
前記本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与される。
【0046】
本明細書で使われる用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定されうる。本発明の薬学的組成物は、0.1mg/kg~1g/kgの容量で投与され、さらに望ましくは、1~500mg/kgの投与量で投与される。一方、前記投与量は、患者の年齢、性別及び状態によって適切に調節される。
【0047】
本発明の他の一観点によれば、被検化合物または天然物をセロトニン受容体5-HT2Aを阻害するか否かを観察する段階;及び前記5-HT2Aを阻害すると確認された被検化合物または天然物を選別する段階;を含む筋緊張異常症の治療または筋緊張によって発生する疼痛緩和候補物質のスクリーニング方法が提供される。
【0048】
前記スクリーニング方法は、5-HT2Aを阻害することを確認された被検化合物または天然物が、5-HT2Aを除いたセロトニン受容体の機能を阻害するか否かを確認する段階;及び前記5-HT2Aを除いたセロトニン受容体の機能を阻害しない被検化合物または天然物を選別する段階;を追加することができる。
【0049】
前記セロトニン受容体5-HT2Aの機能を阻害するか否かは、試験管内(in vitro)、生体内(in vivo)または仮想環境内(in silico)での多様な分析方法を通じて行われる。前記試験管内の方法としては、前記セロトニン受容体5-HT2A、そのリガンド(例えば、セロトニン)及び被検化合物または天然物を反応させ、前記セロトニン5-HT2A及びそのリガンドの結合を阻害した被検化合物または天然物を選別する工程が使われる。前記5-HT2A及びそのリガンドの結合の有無に対する分析は、多様な標的タンパク質及びそのリガンド間の相互作用分析方法を通じて行われるが、このような方法には、放射線同位元素標識細胞利用小化合物-親和性クロマトグラフィー、薬物親和反応標的安定性分析(drug affinity responsive target stability、DARTS)、酸化率利用タンパク質安定性分析(stability of proteins from rate of oxidation、SPROX)、差動静的光散乱(differential static light scattering、DSLS)分析、差動スキャニング蛍光測定(differential scanning fluorometry、DSF)、及びリガンドの差動放射毛細管挙動分析(differential radial capillary action of ligand assay、DraCALA)などが使われるが、このような分析方法は、McFedriesなどによって詳しく紹介されている(McFedries et al.,Chem.Biol.,20:667-673,2013)。前記文献は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0050】
または、前記試験管内の方法は、セロトニン受容体5-HT2Aが発現される細胞に前記被検化合物または天然物を処理した後、5-HT2Aの下位段階に存在する信号分子の濃度または活性を分析する段階;及び前記5-HT2Aの下位段階に存在する信号分子の活性を抑制した被検化合物または天然物を選別する段階;を含みうる。
【0051】
前記信号分子としては、イノシトールトリスリン酸(IP)、ジアシルグリセロール(DAG)、アラキドン酸(arachidonic acid、AA)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)、Ca2+またはPKCである。
【0052】
前記スクリーニング方法において、前記生体内の方法は、P/Q型カルシウムチャネルに突然変異が誘発された不安定動物(tottering animal)をストレス条件に放置するストレス誘発段階;ストレスが誘発された不安定動物に被検化合物または天然物を投与する段階;及び前記ストレスが誘発された不安定動物の筋異常緊張指数を有意に減少させた被検化合物または天然物を選別する段階;を含みうる。
【0053】
本明細書で使われる用語「ストレス」とは、個体が適応しにくい環境に露出された時、感じる心理的・身体的緊張状態を意味する。したがって、前記「ストレス条件」とは、個体が慣れない環境に露出された状態を意味する。このようなストレス条件は、人が新たな人と接触するか、新たな場所で発表するか、新たな業務を担当するか、新たな地域に移住するか、または、上級学校への進学するなど新たな環境を迎える場合を意味し、このようなストレス条件で筋緊張異常症を起こす場合、社会生活を行うに当たって、大きな差し支えを与える。
【0054】
選択的に、前記生体内の方法は、P/Q型カルシウムチャネルに突然変異が誘発された不安定動物の小脳にカルシウムチャネル、前記筋異常緊張指数の測定以外に、前記ストレスが誘発された不安定動物の小脳にカルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子を局所的に形質導入する段階;前記カルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子が小脳に局所的に形質導入された不安定動物をストレス条件に放置するストレス誘発段階;前記ストレスが誘発された不安定動物に被検化合物または天然物を投与する段階;前記ストレスが誘発された不安定動物の小脳でのカルシウムと結合したカルシウムセンサータンパク質の量を測定する段階;及びカルシウムと結合したカルシウムセンサータンパク質の量を有意に下げた被検化合物または天然物を選別する段階;を含みうる。
【0055】
前記スクリーニング方法において、前記カルシウムセンサータンパク質は、yellow cameleon(YC)、Inverse-Pericam(Nagai et al.,Proc.NatI.Acad.Sci.USA.2001 98(6):3197-3202,2001)、Camgroo(Baird et al.,Proc.NatI.Acad.Sci.USA.,96(20):11241-11246,1999;Griesbeck et al.,J.Biol.Chem.276(31):29188-29194,2001)、TN-L15(Heim and Griesbeck,J.Biol.Chem.,2004 279(14):14280-14286,2004)、SynapCam(Guerrero et al.,Nat.Neurosci.,8(9):1188-1196,2005)またはGCaMPである。前記YCは、YC2.1、YC3.1、YC2.12、YC3.12、またはYC3.60であり、前記Camgrooは、Camgroo-1、またはCamgroo-2であり、前記GCaMPは、GCaMP1、GCamP2、GCaMP3、GCaMP4、GCaMP5またはGCaMP6である。そのうち、前記GCaMPは、Junichi Nakaiによって初めて開発されたカルシウムセンサーであって、cpEGFP、カルモジュリン及びミオシン軽鎖リン酸化酵素から由来したM13で構成される融合タンパク質で細胞内カルシウムイオンの濃度に比例して蛍光を示す特性を有しており、細胞内カルシウムイオンの濃度の測定に使用可能であり、特に、生きている細胞または動物で特定の組織または細胞でのカルシウムイオン濃度をリアルタイムで測定するのに有用に使われる(Nakai et al.,Nat.Biotehonol.,19:137-141,2001)。
【0056】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張症状を有する個体に投与する段階を含む筋緊張異常症の治療方法が提供される。
【0057】
前記方法において、前記セロトニン受容体5-HT2A阻害剤は、前述した通りである。
【0058】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張症状を有する個体に投与する段階を含む筋緊張によって発生する疼痛緩和方法が提供される。
【0059】
前記方法において、前記セロトニン受容体5-HT2A阻害剤は、前述した通りである。
【0060】
本発明の他の一観点によれば、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤をストレスによる筋異常緊張が懸念される個体に投与する段階を含む過度な筋異常緊張症の予防方法が提供される。
【0061】
前記方法において、前記セロトニン受容体5-HT2A阻害剤は、前述した通りである。
【0062】
本発明の他の一観点によれば、筋緊張異常症治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物の製造において、セロトニン受容体5-HT2A阻害剤の用途が提供される。
【0063】
前記用途において、前記セロトニン受容体5-HT2A阻害剤は、前述した通りである。また、前記筋緊張異常症の発生原因も、前述した通りである。
【0064】
本発明者らは、持続的なストレス誘発時に、筋緊張が激しくなりながら、ジストニア症状が悪化するカルシウムチャネルP/Q型の突然変異を誘発させて製造された不安定マウス(tottering mouse)を実験動物として使用して、前記実験動物をストレス状況に置き、筋異常緊張指数及び筋電図(EMG)を測定した結果、前記実験動物は、経時的にジストニア症状がさらに悪化することを確認し、5-HT1A、5-HT2A及び5-HTに選択的な拮抗剤を投与した結果、5-HT2A選択的拮抗剤のみがジストニア症状を緩和させることを確認した(図1参照)。また、5-HT2A選択的拮抗剤の結合力による筋異常緊張の緩和程度の比較を通じて薬物間の効果をスクリーニングした(図2及び表1参照)。特に、拮抗剤と逆作用剤として同時使用可能なピマバンセリン及びMDL100907の場合、拮抗剤のみで作用するグレマンセリンに比べて、筋異常緊張緩和が大きく表われた(図3参照)。
【0065】
【表1】
【0066】
また、5-HT2Aが細胞内のカルシウム放出に関連しているという点に着眼して、本発明者らは、ストレス誘発ジストニアモデル動物の小脳でのカルシウムイオン濃度をGCaMP6方法を用いて測定したが、その結果、ストレスを誘発することにより、ジストニア症状を直接に示す動物でカルシウムイオン濃度が顕著に増加したが、5-HT2A選択的拮抗剤を投与したグループでは、小脳でのカルシウムイオン濃度の上昇が抑制されることを確認することができた(図4参照)。
【0067】
前述した実験の結果を通じて確認できるように、本発明の一実施例による薬学的組成物は、5-HT2A受容体の選択的抑制を通じてジストニアを経験する患者のうち、特に、ストレス状況によって誘発されるジストニア患者に対して効果的に使われる。そして、発病予防と関連して、効果的なオプションで患者がストレス状況前に薬物を投与するものである。それは、症状を予防して患者の生活の質を向上させうる。また、ジストニア患者だけではなく、多くの人の前で発表するか、公演、または運動競技に出場する運動選手で筋緊張の効果を下げて筋肉による緊張で来る過ちを抑制することができる。通常の場合、緊張する状況で若干の筋緊張が心的負担感に転移され、これが、再び大きな筋緊張に発展するが、それを効果的に治療するか、予防可能であると考えられる。通常の発表時に、声の震えや筋緊張が誘発される時、有用であると考えされる。適量の濃度でジストニア患者だけではなく、普通の人の場合にも、筋緊張前後に摂取することにより、過度な筋緊張による筋異常症状の予防と治療とが可能であると考えられる。
【0068】
それだけではなく、治療薬物の発見は、筋緊張異常症だけではなく、ストレスによって悪化するチック障害及びパーキンソン病のような運動関連疾患にも効果的に使用すると考えられる。
【0069】
また、本発明で使用した実験動物モデルは、筋肉での筋電図の分析を通じて筋緊張の緩和の有無を観察することにより、治療剤候補物質の薬効の確認に使用することができ、さらに、脳のニューロンにカルシウム特異的に蛍光を示すカルシウムセンサータンパク質を活用して、生きている動物が行動を行う間に、特定の脳部位のカルシウムイオン濃度の変化で候補薬物の効果を定量的に確認することにより、ジストニア治療剤候補物質のスクリーニングに有用に使用することができる。
【0070】
また、現在までは、筋異常緊張に対する高信頼性の関連バイオマーカー(companion biomarker)が不足であって、患者群内の多様な疾病機転を区別する方法が適切ではない。これは、治療剤の効果を落とすか、誤った診断に寄与する可能性がある。本発明において、筋異常緊張患者群の選別のための関連バイオマーカーとして脳イメージング技術(MRI、PET)を通じて室頂核部位の5-HT2A受容体の活性を確認する方法を提示する。これは、薬物を用いてセロトニンの量を調節し、5-HT2A受容体特異的放射性リガンド(radioligand)である[11C]NMSPを用いて受容体の活性をPETイメージで確認する方法である(Nordstrom A.L.et al.,Int.J.Neuropsychopharmacol.11(2):163-171,2008;Kornum B.R.et al.,J.Cereb.Blood Flow Metab.,29(1):186-196,2009)。セロトニンの量を調節するために、エスシタロプラムやシタロプラムや5-HT2A受容体の作用剤であるDOIを使用する。それを通じて患者群内で特定の活動を始めれば、症状が表われる「動作特異性ジストニア(Task specific dystonia)」と呼ばれる患者を特異的に選別することができ、治療剤の効果的な投薬条件と方法とを提示することができる。
【実施例
【0071】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施例は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0072】
実施例1:実験動物の準備
7~8週齢のCACNA1Atot/totマウス(Fletcher,Cell,87(4):607-617,1996,The Jackson Laboratory,Stock No:000544)を韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology、KAIST)の実験動物運営委員会規定(プロトコル番号KA2014-05)によってマウスを飼育及び扱った。マウスは、水と飼料とに自在に接近可能な状態に保持され、明暗周期は、12時間であった。行動試験は、ウイルス発現製作をした日から4週後に実行した。前記CACNA1Atot/totマウスは、P/Q型カルシウムチャネルであるCav2.1の反復地域II S5-S6に存在するプロリン(proline)がロイシン(leucine)残基で置換されてニューロンでのP/Q型チャネル活性が減少した形質転換マウスである。従来の研究によれば、P/Q型チャネル活性の減少からL型カルシウムチャネルであるCav1.2の発現が増加すると報告されており(Fletcher,Cell,87(4):607-617,1996)、前記不安定マウスを新たな環境に置く場合、10分程度経過後、筋異常緊張の現象が表われると報告されている(Alvina,K.,& Khodakhah,K.,Neurosci.,30(21):7258-7268,2010)。
【0073】
実施例2:局所的形質導入不安定マウスの製作
ジストニア症状の程度とニューロン内のカルシウム濃度との相関関係を分析するために、光遺伝学(optogenetic)モデル動物を製造した。具体的に、偏光保持単一モード光繊維を通じた測光システムのために、AAV2/9-CAG-FLEX-GCaMP6m(Izadmehr et al.,cell,164:617-631,2016)及びAAV2/9-CMV-Cre(Gompf et al.,Front.Behav.Neurosci.9:152,2015)ウイルスベクターを定位的(stereotaxic)手術を通じて、前記CACNA1Atot/totマウスの右側室頂核(fastigial nucleus)にそれぞれ0.25μlずつ一方的に微小注入した。前記ウイルス注入は、実験4週前に行われた。引き続き、ステンレススチール製の耐熱導管内に挿入された光繊維を注射部位真上に移植した。蛍光測定は、TCSPC基盤の光測定システム(Becker & Hickel,Germany)を使用した。
【0074】
実験例1:多様なセロトニン拮抗剤の投与によるジストニア症状の変化確認
5-HT1A選択的拮抗剤であるWay100135、5-HT2A選択的拮抗剤であるMDL100907(ボリナンセリン)及び5-TH選択的拮抗剤であるオンダンセトロンは、いずれもSigma Aldrich社から購入し、生理食塩水に溶解させて、12時間明/暗周期の調節された環境に置かれた前記実施例2から製造された雄性不安定マウスに静脈注射した。以前に報告されたように、前記Way100135(10mg/kg、Loscher et al.,Eur.J.Pharmacol.,255(1-3):235-238,1994)、MDL100907(1mg/kg、Barr et al.,Neuropsychopharmacol.,29(2):221-228,2004)またはオンダンセトロン(1mg/kg、Minville et al.,Br.J.Anaesth.,106(1):112-118,2010)を前記不安定マウスにそれぞれ投与し、対照群の記録のために、前記不安定マウスに同一体積の生理食塩水を静脈注射した。行動テストは、薬物治療30分後に行い、居所で30分間順化させた実験動物を開放状ボックス(open field box)に移動させて、30分間放置してストレス環境に露出させた後、筋異常緊張症状を測定した。前記筋緊張異常症状及びその重症度は、5点尺度の筋異常緊張指数として算定したが、0=正常行動、1=非正常な運動行動、筋緊張異常姿勢ない、2=軽微な運動障害、妨害された時の筋緊張異常-類似姿勢、3=中等度障害、頻繁な自発的筋緊張異常姿勢、4=重症障害、持続的な筋緊張異常姿勢と決めて採点した。
【0075】
その結果、図1の(B)において、ストレス状況にジストニアモデルを置いた時、経時的にジストニア症状を測定するために、ラットを開放状ボックスに露出させた結果、不安定マウスは、経時的に症状がさらに悪化することを観察した。特に、実験開始30分経過時の場合、10分経過時に比べて、ストレス環境に露出された時間に比例してジストニアモデルの症状が増加することを観察することができた。
【0076】
また、図1の(F)で示すように、前記3種のセロトニン受容体拮抗剤を投与した場合、5-HT2A選択的拮抗剤であるMDL100907(ボリナンセリン)は、筋肉麻痺回数(attack event number)及び筋異常症状指数の測定結果、いずれも筋異常緊張症状を顕著に緩和させることを確認した。しかし、5-HT1A選択的拮抗剤であるWay100135及び5-HT選択的拮抗剤であるオンダンセトロンの場合、筋異常緊張症状を全く減少させることができなかった。これは、ジストニア症状が5-HT2Aに非常に限って表われる現象であることを示すものである。
【0077】
実験例2:筋電図の測定
EMG記録のために、電極(A-Mシステム,USA)を手術で伸筋及び前脛骨筋にそれぞれ挿入した。前記電極は、テプロンがコーティングされた互いに付着されたステンレス鋼線の多重鎖を用いて作られた。右側下肢と首の後ろの毛を切った後、背中側首部位の皮膚に小さな切開部位を形成した。4セットの記録電極は、首切開部位から筋肉まで皮膚の下に連結された。筋電図(EMG)電線は、皮膚の下に配線されて、頭蓋骨に固定されたコネクタに連結された。前記電線の露出された末端の低いインピーダンスは、相対的に長い距離を通過した電気信号の捕捉を許容する(Pearson et al.,J.Neurosci.Methods,148(1):36-42,2005)。電極からEMG信号を10kHzでサンプリングし、MiniDigi 1A(Axon Instrument,USA)でデジタル化した。原信号(raw trace)は、Clampfit 9.2(Axon Instrument,USA)を使用して分析した。相互相関(cross correlation)を計算するために、NeuroExplorer(Ver.4,Nex Technologies,USA)の基準を利用した。前記相互相関は、0msで高い筋異常症状指数を示す時、ジストニア症状が激しいことを示す。前記相互相関は、2ヶ所の筋肉(TA及びGS)で一定時間の筋電図が重なる程度を示すものであって、2ヶ所の筋肉での同時に筋異常緊張症状が出るかを判断する尺度である。これは、筋肉部位間の筋収縮タイミングに対する尺度であって、分析方法は、互いにタイミングが類似しているほど時間(ms)のX軸0ms部分で高い値を示すようになる。すなわち、相互間の信号が0ms(同じ時間に収縮する時)である時、出るY軸値である相互相関値(Cross Corr.)が大きなほど2つの筋肉が同時に収縮する筋異常緊張症状がさらに激しいことを表わす。Y軸の単位であるAUは、対照群を1に置いて見た時の相対的な相互相関値であって、任意的単位(arbitrary unit)である。
【0078】
図1の(C)で示すように、本発明で使用したジストニアモデル動物の場合、前脛骨筋(TA)及び伸筋(GS)での筋電図を測定した結果、正常対照群と比較して、ジストニアモデル動物をストレス環境に露出させてジストニアを誘導する場合、ジストニア特有の筋電図の態様を示した。
【0079】
引き続き、本発明者らは、ストレス環境に露出させたジストニアモデル動物に前記3種のセロトニン受容体拮抗剤を投与した結果、図1の(G)で示すように、前記相関関係は、MDL100907投与時に消えたが、5-HT1A選択的拮抗剤であるWay100135及び5-HT選択的拮抗剤であるオンダンセトロンの場合、対照群と比較して差がなかった。これは、本発明の一実施例による5-HT2A阻害剤が、筋異常緊張症状、特に、ストレスによって誘発される筋異常緊張症状の緩和に非常に効率的であるということを示すものである。
【0080】
引き続き、本発明者らは、前記不安定マウスに5-HT2A選択的拮抗剤であるMDL100907(ボリナンセリン)の濃度別の効果を観察した。その結果、図3の(A)で確認されるように、1mg/kgよりは2mg/kg(Padich,Robert A et al.,Psychopharmacology.,124(1-2):107-116,1996)で症状が少し緩和されることを確認した。また、多様なセロトニン5-HT2A受容体拮抗剤及び逆作用剤を投与時に、筋異常緊張の緩和度を測定した。その結果、図3の(B)及び図3の(C)で示すように、対照群の場合と比較時に、5-HT2A選択的拮抗剤及び逆作用剤であるMDL100907投与群とピマバンセリン(1.5mg/kg、Goldman,J.D.,Parkinsons Dis.,675630,2011)の場合、ジストニア麻痺が見られなかった。5-HT2A拮抗剤であるグレマンセリン(2mg/kg、Harvey et al.,Behav.Neurosci.,126(4):530,2012)は、対照群とMDL100907/ピマバンセリン群との中間程度の緩和を見せた。
【0081】
実験例3:生体内カルシウムイオン濃度の変化測定
本発明者らは、前記結果から、5-HT2Aが小脳でカルシウム信号伝達に密接な関連性があるという点に着眼して、不安定マウスモデルの小脳でのカルシウムイオン濃度を測定することにより、筋異常緊張症状を確認し、治療薬物の治療効果を検証できるか否かを調査した。小脳でのカルシウム信号伝達の変化は、GCaMP6というカルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子をジストニアモデルの小脳に局所的に形質導入させた後、カルシウムイオンと結合したGCaMP6タンパク質の蛍光の強度を測定することで可能である。既存の薬物の場合には、全般的な緩和程度を通じて治療効果を類推し、一方、本発明で使用した方法は、薬物による効果をさらに効率的に、そして、リアルタイムで実験動物を通じて定量化することができる。本発明者らは、前記実施例2から製造された局所的形質導入不安定マウスでジストニア症状と神経組織内でのカルシウムイオン濃度との相関関係を分析するために、リアルタイム蛍光分析を行った。具体的に、偏光保持単一モード光繊維を通じて脳組織を刺激するために、20MHzの周波数を有する488nmの波長のパルスレーザを照射した(図4の(A)左側)。前記パルスレーザ照射後、509nmの波長の放射形光をTCSPC基盤の光測定システム(Becker & Hickl,Germany)を使用して測定した。該測定された蛍光に基づいて蛍光変化率(ΔF/F)を計算した。前記ΔF/Fは、100×(F-Fmean)/Fmeanによって計算され、ここでは、Fmeanは、全体獲得切片での蛍光強度の平均値を意味する(Cui et al.,Nature,494(7436):238-242,2013;Matthews et al.,Bone,84:69-77,2016)。GCaMP6m蛍光は、マウスがケージ内の開放状ボックスにある時、30分間記録された。
【0082】
その結果、図4の(D)で示すように、前記実験動物が居所にある時は、蛍光変化が観察されていないが、開放状ボックスに移してストレス環境に露出させた時は、蛍光の信号が確実に増加することを確認することができた。しかし、図4の(E)で示すように、このような蛍光信号の増加は、5-HT2A選択的拮抗剤であるMDL100907を投与したグループでは居所であるレベルに減少した。
【0083】
それだけではなく、図4の(C)で示されるように、蛍光の信号の変化は、筋異常緊張による筋肉麻痺(attack)と同調化されると確認された。このような内容は、小脳でカルシウムイオン濃度の測定を通じて筋異常緊張症状を緩和させる薬物候補物質の薬効を検証することができるということを示唆するものである。
【0084】
また、図4の(F)に示されたように、ストレス環境に露出された時間が増加するほどカルシウムイオンの濃度の対照群で有意に増加し、5-HT2A選択的拮抗剤であるMDL100907投与群では、ストレス環境に長期間露出されても、カルシウムイオン濃度の増加が観察されていない。
【0085】
一方、図4の(B)で示すように、運動活動と小脳でのニューロン活性化とを確認するために、我々は、行動状態によってカルシウムイオンの濃度を測定した結果、カルシウムイオンの濃度は、動きがない時や歩いた時に比べて筋異常緊張を見せる時、特に増加することを確認した。
【0086】
このような結果を通じて小脳でストレスとカルシウム活性との関係を予測することができる。また、このような発見は、5-TH2Aの拮抗剤を通じてジストニアモデルでストレスによるカルシウムイオンの増加を防ぐことができることを定量的に観察することができた。
【0087】
実験例4:共焦点映像撮影を通じた蛍光分析
前記実施例2で製造し、ストレス環境に露出させた不安定マウスを麻酔させた後、最初にはPBSに溶解されたヘパリンナトリウム塩で再灌流した後、PBSに溶解された4%ホルムアルデヒドで再灌流した。脳を摘出した後、摘出された脳を4%ホルムアルデヒド溶液で一晩中固定した。固定後、脳を振動式薄片機(vibrating microtome、Leica,Germany)上で40μmの厚さで薄片化した。脳に対する映像は、LSM780共焦点顕微鏡(Zeiss,Germany)を用いて収得し、ZEN2009光編集ソフトウェア(Zeiss,Germany)で分析した。
【0088】
その結果、図4の(A)の右上隅で確認されるように、室頂核でEGFPによる緑色蛍光が確認された。これは、本発明の一実施例によって小脳に局所導入されたGCaMP6遺伝子が正常に発現されたことを示すものである。
【0089】
本発明は、前述した実施例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【0090】
[産業上利用可能性]
本発明は、遺伝的または環境的要因によって発生するジストニア症状はもとより、うつ病治療剤の副作用を発生するジストニア症状を効果的に緩和させる医薬の製造に使われる。
本発明は以下の態様を含む。
<1> セロトニン受容体5-HT 2A 阻害剤を有効成分として含む筋緊張異常症治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物。
<2> 前記筋緊張は、ジストニア、脳性麻痺、筋緊張性異栄養症または球脊髄性筋萎縮症によって発生する、<1>に記載の組成物。
<3> 前記5-HT 2A 阻害剤は、5-HT 2A 拮抗剤または5-HT 2A 逆作用剤である、<1>に記載の組成物。
<4> 前記5-HT 2A 拮抗剤は、前記5-HT 2A に特異的に結合する拮抗抗体または前記拮抗抗体の機能性断片、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、アリピプラゾール、アセナピン、アミトリプチリン、クロミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、シプロヘプタジン、エプリバンセリン、エトペリドン、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イロペリドン、ケタンセリン、メチセルジド、ミアンセリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ピマバンセリン、ピゾチフェン、リタンセリン、トラゾドン、またはヨヒンビンである、<3>に記載の組成物。
<5> 前記5-HT 2A 拮抗剤は、他の類型のセロトニン受容体には作用を行わない5-HT 2A 選択的拮抗剤または5-HT 2A/2C 二重拮抗剤である、<3>に記載の組成物。
<6> 前記5-HT 2A 選択的拮抗剤は、エプリバンセリン、2-アルキル-4-アリール-テトラヒドロ-ピリミド-アゼピン、AMDA(9-アミノメチル-9,10-ジヒドロアントラセン)、ヒドロキシジン、ピゾチフェン、5-メトキシ-N-(4-ブロモベンジル)トリプタミン(5-MeO-NBpBrT)、グレマンセリン、ニアプラジン、ピマバンセリン、ボリナンセリン、またはLY-367265である、<5>に記載の組成物。
<7> 5-HT 2A/2C 二重拮抗剤は、リタンセリン、ケタンセリン、シプロヘプタジン、AC-90179、トラゾドンまたはエトペリドンである、<5>に記載の組成物。
<8> 前記機能性断片は、Fab、Fab’、F(ab’) 、scFv、diabody、tribody、sdAb、V H、nanobody、monobody、可変性リンパ球受容体(VLR)、Affilin、Affimer、Affitin、Avimer、DARPin、Fynomer、またはAffibodyである、<4>に記載の組成物。
<9> 前記5-HT 2A 逆作用剤は、AC-90179、ピマバンセリン、ネロタンセリン、ボリナンセリンまたはエプリバンセリンである、<3>に記載の組成物。
<10> 前記筋緊張は、過度なストレス、選択的セロトニン再吸収抑制剤の投与またはセロトニン回路の非正常な活性化によるセロトニンの非正常な増加によって起因する、<1>に記載の組成物。
<11> 前記選択的セロトニン再吸収抑制剤は、シタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、ジメリジン、またはボルチオキセチンである、<10>に記載の組成物。
<12> 被検化合物または天然物をセロトニン受容体5-HT 2A の機能を阻害するか否かを観察する段階と、
前記5-HT 2A を阻害すると確認された被検化合物または天然物を選別する段階と、
を含む筋緊張による疾患治療または筋緊張によって発生する疼痛緩和候補物質のスクリーニング方法。
<13> 5-HT 2A を阻害することを確認された被検化合物または天然物が、5-HT 2A を除いたセロトニン受容体の機能を阻害するか否かを確認する段階と、
前記5-HT 2A を除いたセロトニン受容体の機能を阻害しない被検化合物または天然物を選別する段階と、
をさらに含む、<12>に記載の方法。
<14> セロトニン受容体5-HT 2A の機能を阻害するか否かは、試験管内、生体内または仮想環境内での多様な分析方法を通じて行われる、<12>に記載の方法。
<15> 前記試験管内の方法は、前記セロトニン受容体5-HT 2A 、そのリガンド(例えば、セロトニン)及び被検化合物または天然物を反応させ、前記セロトニン5-HT 2A 及びそのリガンドの結合を阻害した被検化合物または天然物を選別する工程を通じて行われる、<14>に記載の方法。
<16> 前記試験管内の方法は、セロトニン受容体5-HT 2A が発現される細胞に前記被検化合物または天然物を処理した後、5-HT 2A の下位段階に存在する信号分子の濃度または活性を分析する段階と、
前記5-HT 2A の下位段階に存在する信号分子の活性を抑制した被検化合物または天然物を選別する段階と、
を含む、<4>に記載の方法。
<17> 前記信号分子は、イノシトールトリスリン酸(IP )、ジアシルグリセロール(DAG)、アラキドン酸(AA)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)、Ca 2+ またはPKCである、<14>に記載のジストニア治療候補物質のスクリーニング方法。
<18> 前記生体内の方法は、P/Q型カルシウムチャネルに突然変異が誘発された不安定動物をストレス条件に放置するストレス誘発段階と、
ストレスが誘発された不安定動物に被検化合物または天然物を投与する段階と、
前記ストレスが誘発された不安定動物の筋異常緊張指数を有意に減少させた被検化合物または天然物を選別する段階と、
を含む、<14>に記載の方法。
<19> 前記生体内の方法は、前記ストレスが誘発された不安定動物の小脳にカルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子を局所的に形質導入する段階と、
前記カルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子が小脳に局所的に形質導入された不安定動物をストレス条件に放置するストレス誘発段階と、
前記ストレスが誘発された不安定動物に被検化合物または天然物を投与する段階と、
前記ストレスが誘発された不安定動物の小脳でのカルシウムと結合したカルシウムセンサータンパク質の量を測定する段階と、
カルシウムと結合したカルシウムセンサータンパク質の量を有意に下げた被検化合物または天然物を選別する段階と、
を含む、<14>に記載の方法。
<20> 前記カルシウムセンサータンパク質は、yellow camelon(YC)、Inverse-Pericam、Camgroo、TN-L15、SynapCamまたはGCaMPである、<19>に記載の方法。
<21> 前記GCaMPは、GCaMP1、GCamP2、GCaMP3、GCaMP4、GCaMP5またはGCaMP6である、<20>に記載の方法。
<22> 筋緊張異常症治療用または筋緊張によって発生する疼痛緩和用薬学的組成物の製造において、セロトニン受容体5-HT 2A 阻害剤の用途。
図1
図2
図3
図4