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特許7177414発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラム
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  • 特許-発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/36 20200101AFI20221116BHJP
   G06F 115/12 20200101ALN20221116BHJP
【FI】
G06F30/36
G06F115:12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021553814
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042892
(87)【国際公開番号】W WO2021220538
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020079233
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】高尾 真輔
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】七ッ役 強
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-139567(JP,A)
【文献】特開平01-214977(JP,A)
【文献】特開2017-068646(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108509754(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06F 115/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における発振回路条件の設計を支援する発振回路設計支援システムを用いた発振回路設計支援方法であって、
前記発振回路設計支援システムが、
発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付工程と、
前記ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供工程と、
前記振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、前記発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付工程と、
少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供工程と、
実行する
発振回路設計支援方法。
【請求項2】
前記第1提供工程においては、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータに加え、振動子サンプルの提供を指示する、
請求項1に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項3】
前記ICチップ情報は、発振用ICチップの品番に関する情報である、
請求項1または2に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項4】
前記第2受付工程においては、前記周波数測定情報に加え、周波数の測定に用いられた前記振動子の振動子サンプルデータ、および、周波数の測定に用いられた前記発振回路条件サンプルデータの入力を受け付ける、
請求項1から3のいずれか1項に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項5】
前記第2提供工程においては、前記発振回路条件適合データを提供する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項6】
前記発振回路設計支援システムが前記発振回路条件の設計を支援する過去支援情報を取得する工程をさらに含み、
前記第1提供工程、および、前記第2提供工程の少なくとも1つが、前記過去支援情報に基づいて提供を行う、
請求項5に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項7】
前記発振回路条件サンプルデータは、前記振動子サンプルデータごとに発振回路条件を構成する一又は複数のパラメータが個別に対応付けられており、
前記第2提供工程においては、前記第2受付工程において前記周波数測定情報の測定に用いられた前記振動子の振動子サンプルデータに対応付けられた一又は複数のパラメータを含む発振回路条件に基づいて、前記発振回路条件適合データに関する情報を提供する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の発振回路設計支援方法。
【請求項8】
発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における発振回路条件の設計を支援する発振回路設計支援システムであって、
発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付部と、
前記ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供部と、
前記振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、前記発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付部と、
少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供部と、
を備える、
発振回路設計支援システム。
【請求項9】
コンピュータに、
発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付処理と、
前記ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供処理と、
前記振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、前記発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付処理と、
少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供処理と、
を実行させる、
発振回路設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顧客の要求に応じたデバイスの仕様の設計を支援するシステムが知られている。例えば、特許文献1に記載のシステムでは、顧客が要求する仕様において一部の項目に関するデバイスの仕様が示されていない場合でも、個別データベース等に基づいて顧客が要求する仕様を満足するデバイスの暫定の仕様を顧客へ提示する。また、顧客は、変更内容の入力によりデバイスの暫定の仕様を修正する。これにより、顧客とのやり取りの回数を抑えつつデバイスの仕様が確定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-77748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回路基板の製造過程では、まず、顧客の要求に応じて回路基板に実装するIC(半導体素子)の選定が行われ、その後に発振回路の設計が行われる。発振回路を設計する際には、例えば、回路基板ごと生じる発振回路の浮遊容量(静電容量)を考慮して、発振回路のコンデンサの容量値、抵抗の抵抗値、振動子の負荷容量、ESR規格値、および、ICの負性抵抗値等をパラメータとして含む発振回路条件を設定する。
【0005】
ここで、回路基板ごとに生じる発振回路の浮遊容量を考慮して回路基板の発振回路条件を設定する場合には、例えば、回路基板を外部の事業者に提出して発振回路の適正化を依頼し、その結果を基に適正化された発振回路条件を設定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、回路基板を外部の事業者に提出する場合には、例えば、回路基板に関する情報が漏洩する虞がある等、顧客にとって不都合な点もあり、より一層の改善が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回路基板に関する情報が外部に漏洩することを抑制しつつ、発振回路の適正化を行うことができる発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る発振回路設計支援方法は、発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における発振回路条件の設計を支援する発振回路設計支援方法であって、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付工程と、前記ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供工程と、前記振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、前記発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付工程と、少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路基板に関する情報が外部に漏洩することを抑制しつつ、発振回路の適正化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る発振回路設計支援システムの処理の概要を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係る発振回路設計支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】発振用ICチップに関するサンプル情報の一例を示す図である。
図4】発振用ICチップに関する発振回路条件の一例を示す図である。
図5】周波数測定値に関する周波数測定情報の一例を示す図である。
図6】顧客に提供される発振回路条件が決定される際の処理の流れを説明するための図である。
図7】発振回路の設計支援処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の一実施形態に係る発振回路設計支援方法、発振回路設計支援システム、および、発振回路設計支援プログラムについて説明する。本実施形態の発振回路設計支援システムは、発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における適正な発振回路条件の設計を支援するシステムである。このシステムでは、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を顧客から受け付ける。次に、受け付けたICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する。次に、振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定情報を含む入力情報の入力を顧客から受け付ける。そして、少なくとも周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を顧客に提供する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る発振回路設計支援システムの処理の概要を説明するための図である。同図に示すように、発振回路設計支援システムは、まず、顧客から振動子のIC品番に関する情報を受け付ける。この場合、顧客から受け付ける振動子のIC品番の個数は一つであってもよいし、複数であってもよい。次に、発振回路設計支援システムは、顧客から受け付けた一又は複数のIC品番のそれぞれに対応する振動子サンプルを、振動子サンプルの周波数特性に関するデータ、および、振動子サンプルに対応する発振回路条件と併せて顧客に提供する。発振回路条件とは、発振回路の周波数特性を規定する回路条件であり、例えば、発振回路のコンデンサの容量値、抵抗の抵抗値、振動子の負荷容量、ESR規格、および、振動子のIC内部抵抗値などのパラメータにより規定されている。顧客は、発振回路設計支援システムから提供された発振回路条件に対応する回路構成となるように回路基板を自ら設計した上で、発振回路設計支援システムから提供された振動子を回路基板に搭載し、回路基板に搭載された発振回路の周波数を測定する。発振回路設計支援システムは、顧客により測定された発振回路の周波数を、測定に用いた振動子サンプルのサンプル番号、および、測定に用いた発振回路条件と併せて顧客から取得する。そして、発振回路設計支援システムは、回路基板ごとの浮遊容量の差を考慮した発振回路マッチングを顧客に提供する。発振回路マッチングとは、発振回路のコンデンサの容量値、抵抗の抵抗値、振動子の負荷容量、ESR規格、および、振動子のIC内部抵抗値などのパラメータを調整することで、適正化された発振回路条件を発振回路条件適合データとして顧客に提供することである。
【0013】
図2は、発振回路設計支援システムの概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、発振回路設計支援システム100は、例えば、入力装置10と、表示装置20とに接続される。これらの装置は、通信線や無線通信網等によって互いに接続される。なお、図2に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0014】
入力装置10は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)などの情報端末であり、顧客による入力操作に基づいて、サンプルとして用いる発振用ICチップに関するICチップ情報を発振回路設計支援システム100に入力する。
【0015】
表示装置20は、例えば、液晶ディスプレイであり、発振回路設計支援システム100により生成された、適正化された発振回路条件を示す画像を発振回路条件適合データとして顧客に表示する。
【0016】
発振回路設計支援システム100は、例えば、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め発振回路設計支援システム100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで発振回路設計支援システム100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0017】
制御部110は、例えば、第1受付部112と、第1提供部114と、第2受付部116と、第2提供部118とを備える。
【0018】
第1受付部112は、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を入力装置10から受け付ける。ICチップ情報は、例えば、ICの品番に関する情報である。第1受付部112は、入力装置10からICチップ情報の入力を受け付けた場合、サンプル情報DB122を参照して、顧客により指定された発振用ICチップに関するサンプル情報を決定する。また、第1受付部112は、取得したサンプル情報に基づき、顧客により指定された発振用ICチップに対応する発振回路条件を決定する。
【0019】
図3は、発振用ICチップに関する振動子サンプルデータの一例を示す図である。同図に示す例では、振動子サンプルデータは、例えば、サンプル番号、発振周波数、発振周波数の公称周波数との周波数ズレΔFを含む。サンプル番号は、振動子サンプルの識別情報である。発振周波数は、標準の負荷容量を持った発振回路で水晶振動子を駆動したときの発振周波数である。発振周波数の周波数ズレΔFは、例えば常温25℃における公称周波数との差である。
【0020】
図4は、振動子サンプルに対応する発振回路条件サンプルデータの一例を示す図である。同図に示す例では、発振回路条件サンプルデータは、例えば、振動子サンプルのIC名、および、振動子サンプルの品番に対し、振動子サンプルの等価回路における負荷容量CL1,CL2、帰還抵抗Rf、制限抵抗Rd、電源電圧範囲、温度範囲が関連付けられている。
【0021】
第1提供部114は、第1受付部112により発振用ICチップのICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを顧客に提供する。この場合、第1提供部114は、振動子サンプルの顧客への提供を併せて指示する。顧客は、第1提供部114により振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータが提供された場合、自らが回路基板の回路構成を、発振回路条件サンプルデータを満たす状態にした上で、振動子サンプルを回路基板に搭載し、発振回路の周波数測定値を測定する。発振回路の周波数測定値は、振動子サンプルから出力される周波数、及び、顧客基板のアンテナから出力される無線周波数などを含む。
【0022】
図5は、周波数測定値に関する周波数測定情報を含む入力情報の一例を示す図である。同図に示す例では、入力情報は、例えば、振動子サンプルのサンプル番号、振動子サンプルの参照周波数、発振回路条件サンプルデータが示す振動子サンプルの等価回路における負荷容量CL1,CL2、周波数測定値を含む。参照周波数は、参照基板の回路構成を、発振回路条件サンプルデータを満たす状態にした上で、振動子サンプルを参照基板に搭載した場合の発振回路の周波数である。周波数測定値は、上述のように、顧客が自らの回路基板の回路構成を、発振回路条件サンプルデータを満たす状態にした上で、振動子サンプルを回路基板に搭載した場合の発振回路の周波数である。そして、顧客により入力された入力情報に基づいて、顧客基板の発振周波数の周波数ズレΔFが算出される。
【0023】
第2受付部116は、顧客により発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報を含む入力情報の入力を受け付ける。
【0024】
第2提供部118は、第2受付部116により入力情報の入力を受け付けた場合、発振回路マッチングDB124を参照して、発振回路条件適合データに関する情報を決定する。発振回路条件適合データに関する情報は、発振回路の特性を適正化するような発振回路条件を含む情報である。第2提供部118は、例えば、発振回路の特性を最も適正化する一つの発振回路条件を、発振回路条件適合データとして顧客に提供する。第2提供部118は、発振回路の特性を適正化する複数の発振回路条件の候補を発振回路条件適合データに関する情報として顧客に提供し、複数の発振回路条件の中から最も適した発振回路条件を顧客に選択させてもよい。
【0025】
図6は、発振回路マッチングDB124に登録されている発振回路条件の一例を示す図である。同図に示す例では、発振回路マッチングDB124には、3つの発振回路条件(「発振回路条件1」、「発振回路条件2」、「発振回路条件3」)が登録されている。これらの発振回路条件は、顧客から入力された発振回路条件、または、当該発振回路条件に類似した発振回路条件に相当する。発振回路マッチングDB124には、参照基板の回路構成を、これら発振回路条件の各々を満たす状態にした上で、サンプル番号に対応する振動子サンプルを参照基板に搭載した場合の発振回路の発振周波数の周波数ズレΔFの予測値を示している。この例では、第2提供部118は、これら発振回路条件の各々に対応する発振周波数の周波数ズレΔFを比較し、周波数ズレΔFが最も小さい発振回路条件(「発振回路条件1」)を、発振回路条件適合データとして顧客に提供する。
【0026】
なお、同図に示す例では、発振回路マッチングDB124に登録されている発振回路条件のパラメータが共通である例を示しているが、発振回路条件ごとに発振回路のパラメータが個別に設定されてもよい。この場合、第2提供部118は、顧客から入力されたサンプル番号の振動子サンプルに対応付けられた一又は複数のパラメータを含む発振回路条件に基づいて、発振回路条件適合データを顧客に提供する。
【0027】
また、第2提供部118は、発振回路条件適合データを顧客に提供した後に、提供した発振回路条件適合データを顧客が採択するか否かについての意思表示を入力装置10の操作を通じて受け付ける。そして、第2提供部118は、発振回路条件適合データの採択の有無に関する過去支援情報を顧客ごとに区別して顧客情報DB126に格納する。そして、第2提供部118は、上述した発振回路マッチングDB124に格納されている発振回路条件のパラメータに加え、顧客情報DB126に格納されている顧客ごとの過去支援情報を考慮して、顧客に提供する発振回路条件適合データを決定してもよい。
【0028】
図7は、発振回路の設計支援処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートの処理は、例えば、第1受付部112が顧客から発振用ICチップのICチップ情報の入力を受け付けたことをトリガーとして実行される。
【0029】
図7に示すように、まず、第1提供部114は、第1受付部112を通じて受け付けた発振用ICチップのICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを顧客へ提供する(ステップS10)。次に、第2受付部116は、顧客が回路基板の回路構成を、発振回路条件サンプルデータを満たす状態にし、振動子サンプルを回路基板に搭載した場合に測定された発振回路の発振周波数を、測定に使用した振動子サンプルのサンプル番号及び発振回路条件とともに取得する(ステップS12)。次に、第2提供部118は、先のステップS12において取得された周波数測定情報に基づき、発振回路マッチングDB124を参照して、発振回路条件適合データを決定する(ステップS14)。そして、第2提供部118は、先のステップS14において決定した発振回路条件適合データを顧客に提供する(ステップS16)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0030】
本実施形態に係る発振回路設計支援システム100は、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付け、ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを顧客に提供し、振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報を含む入力情報の入力を受け付け、少なくとも周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を顧客に提供する。そのため、顧客が自らの回路基板を外部の事業者に提出することなく、回路基板ごとの浮遊容量の差を考慮して、回路基板の発振回路条件が適正化される。これにより、回路基板に関する情報が外部に漏洩することを抑制しつつ、発振回路の適正化を行うことができる。
【0031】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0032】
本発明の一態様によれば、発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における発振回路条件の設計を支援する発振回路設計支援方法であって、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付工程と、ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供工程と、振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付工程と、少なくとも周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供工程とを含む、発振回路設計支援方法が提供される。
【0033】
一態様として、前記第1提供工程においては、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータに加え、振動子サンプルの提供を指示する。
【0034】
一態様として、ICチップ情報は、発振用ICチップの品番に関する情報である。
【0035】
一態様として、第2受付工程においては、周波数測定情報に加え、周波数の測定に用いられた振動子の振動子サンプルデータ、および、周波数測定情報の測定に用いられた発振回路条件サンプルデータの入力を受け付ける。
【0036】
一態様として、第2提供工程においては、発振回路条件適合データを提供する。
【0037】
一態様として、発振回路条件の設計を支援する過去支援情報を取得する工程をさらに含み、第1提供工程、および、第2提供工程の少なくとも1つが、過去支援情報に基づいて提供を行う。
【0038】
本発明の一態様によれば、発振用ICチップ及び振動子が実装された回路基板における発振回路条件の設計を支援する発振回路設計支援システムであって、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付部と、前記ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供部と、前記振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、前記発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付部と、少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供部とを備える、発振回路設計支援システムが提供される。
【0039】
本発明の一態様によれば、コンピュータに、発振用ICチップに関するICチップ情報の入力を受け付ける第1受付処理と、ICチップ情報に基づいて決定された、振動子サンプルデータ及び発振回路条件サンプルデータを提供する第1提供処理と、振動子サンプルデータに対応する振動子が回路基板に実装された場合に、発振回路条件サンプルデータに基づいて測定された周波数測定値に関する周波数測定情報の入力を受け付ける第2受付処理と、少なくとも前記周波数測定情報に基づいて決定された発振回路条件適合データに関する情報を提供する第2提供処理とを実行させる、発振回路設計支援プログラムが提供される。
【0040】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、回路基板に関する情報が外部に漏洩することを抑制しつつ、発振回路の適正化を行うことができる。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
10 入力装置
20 表示装置
100 発振回路設計支援システム
110 制御部
112 第1受付部
114 第1提供部
116 第2受付部
118 第2提供部
120 記憶部
122 サンプル情報DB
124 発振回路マッチングDB
126 顧客情報DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7