(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04L 9/12 20060101AFI20221116BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20221116BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H04L9/12
H04B10/70
G02F3/00
(21)【出願番号】P 2021538487
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019129490
(87)【国際公開番号】W WO2020135786
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】201811634554.1
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521287175
【氏名又は名称】広東尤科泊得科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG INCUBATOR TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room A105, First Floor, Elevator A, No. 11, Banlv Road, Science Town, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong, 510660, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】郭 邦紅
(72)【発明者】
【氏名】何 翼龍
【審査官】中里 裕正
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137739(JP,A)
【文献】特開2017-130932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0359624(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105406962(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105391547(CN,A)
【文献】CHEN, D. et al.,Measurement-device-independent quantum key distribution with pairs of vector vortex beams,PHYSICAL REVIEW A,2016年,Vol.93 Iss.3,pp.032320-1-5
【文献】CHOI, Y. et al.,Plug-and-play measurement-device-independent quantum key distribution,PHYSICAL REVIEW A,2016年,Vol.93 Iss.3,pp.032319-1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/12
H04B 10/70
G02F 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムであって、ユーザー側Aliceと、ユーザー側Bobと、測定ユニットと、を含み;
前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、量子通信路を介して第1、第2望遠鏡システムと、第1の50:50ビームスプリッタと、第1偏光ビームスプリッタと、パルスレーザと、第1~第4の反射鏡と、第1、第2のM/Z干渉計と、第1~第4の単一光子検出器と、を備えた前記測定ユニットと接続し、前記測定ユニットの前記パルスレーザが基本モードのガウスビームを放射した時、まず前記第1偏光ビームスプリッタのフィルタリングを経て偏光モードが垂直偏光である基本モードのガウス光を前記第1の50:50ビームスプリッタに反射して2つに分割され、次に前記第1反射鏡及び第2反射鏡によって反射され、最後に前記第1望遠鏡システム及び第2望遠鏡システムによってコリメートされ、量子通信路を介して各々前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに送信し;
前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、それぞれ前記測定ユニットからの強いパルスレーザ光に対して通信路環境のリアルタイム監視、位相歪み補償及び軌道角運動量のエンコードを実現した後テストユニットに送信し;
前記測定ユニットの前記第1望遠鏡システム及び第2望遠鏡システムが各々前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobからの信号パルスを受信する時、この信号パルスはまず前記第1反射鏡及び第2反射鏡によって反射され、そして第3の50:50ビームスプリッタで干渉し、干渉後のパルスが各々前記第3反射鏡及び第4反射鏡によって反射されて、前記第1M/Z干渉計及び第2M/Z干渉計に各々入り、前記第1M/Z干渉計及び第2M/Z干渉計によって分離された後、前記第1~第4の単一光子検出器に入り、応答を生じて測定結果を出力し;前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobが測定の応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する、
ことを特徴とする、リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項2】
前記ユーザー側Aliceは、第3望遠鏡システムと、第1狭帯域フィルタと、第1ビームスプリッタと、第1電荷結合素子と、第1遅延器と、第2偏光ビームスプリッタと、第1変形可能なミラーと、第2変形可能なミラーと、第1半波長板と、第1空間光変調器と、第1強度変調器と、を備え;
前記ユーザー側Bobは、第4望遠鏡システムと、第2狭帯域フィルタと、第2ビームスプリッタと、第2電荷結合素子と、第2遅延器と、第3偏光ビームスプリッタと、第3変形可能なミラーと、第4変形可能なミラーと、第2半波長板と、第2空間光変調器と、第2強度変調器と、を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項3】
前記第1電荷結合素子及び前記第2電荷結合素子は、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記第1、第2の変形可能なミラー及び第3、第4の変形可能なミラーがそれぞれ前記第1電荷結合素子及び前記第2電荷結合素子によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償することを特徴とする、請求項2に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項4】
ロジカルチャージが奇数及び偶数である軌道角運動量状態を表し、前記第1、第2の強度変調器が異なる平均光子数の強度のおとり状態及び信号状態の光子を正確に生成する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項5】
前記ユーザー側Aliceの前記第3望遠鏡システムは、前記測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に前記第1狭帯域フィルタによって通信波帯以外の光を除去してから前記第1ビームスプリッタを介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が前記第1電荷結合素子に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、前記第1遅延器、前記第2偏光ビームスプリッタ、前記第1変形可能なミラー、前記第1半波長板、前記第1空間光変調器、前記第1強度変調器及び前記第2変形可能なミラーに順次接続され;下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず前記第1遅延器に入り、一定の時間遅延の後前記第2偏光ビームスプリッタに入り、前記第2偏光ビームスプリッタがパルスレーザ光を前記第1変形可能なミラーに反射し、前記第1変形可能なミラーが上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が前記第1半波長板に反射され、前記第1半波長板は偏光状態を90度回転させた後前記第1空間光変調器に入り、前記第1空間光変調器がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、前記第1強度変調器を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、前記第2変形可能なミラーによって位相補正され、前記第2偏光ビームスプリッタから透過し、前記第1遅延器、前記第1ビームスプリッタ及び前記第1狭帯域フィルタを通過して前記第3望遠鏡システムに到達し、最後に前記第3望遠鏡システムは信号状態及びおとり状態をコリメートして前記測定ユニットに送信することを特徴とする、請求項2に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項6】
前記ユーザー側Bobの前記第4望遠鏡システムは、前記測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に前記第2狭帯域フィルタによって通信波帯以外の光を除去してから前記第2ビームスプリッタを介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が前記第2電荷結合素子に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、前記第2遅延器、前記第3偏光ビームスプリッタ、前記第3変形可能なミラー、前記第2半波長板、前記第2空間光変調器及び前記第2強度変調器に順次接続され;下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず前記第2遅延器に入り、一定の時間遅延の後前記第3偏光ビームスプリッタに入り、前記第3偏光ビームスプリッタがパルスレーザ光を前記第3変形可能なミラーに反射し、前記第3変形可能なミラーが上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が前記第2半波長板に反射され、前記第2半波長板は偏光状態を90度回転させた後前記第2空間光変調器に入り、前記第2空間光変調器がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、前記第2強度変調器を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、前記第4変形可能なミラーによって位相補正され、前記第3偏光ビームスプリッタから透過し、前記第2遅延器、前記第2ビームスプリッタ及び前記第2狭帯域フィルタを通過して前記第4望遠鏡システムに到達し、最後に前記第4望遠鏡システムは信号状態及びおとり状態をコリメートして前記測定ユニットに送信することを特徴とする、請求項2に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムに応用されるリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送方法であって、以下のステップ:
S1、測定ユニットは、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに強いレーザパルスを放射し、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobがこのパルスを利用してクロック同期及び盗聴防止の監視を実行し、同時に入射ガウスパルスのスポット的分散度に基づいて大気乱流強度を推定し、大気乱流強度が閾値より低く、監視で盗聴がない場合、次のステップに進む通信路環境監視ステップ;
S3、前記測定ユニットは、測定操作を実行し、検出に成功したビットをアナウンスし、同時に測定結果をアナウンスし、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは上記のデータを留保し、その他のコードビットのデータを破棄するBell測定ステップ;
S4、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、公開通信路を介して基底照合し、同じ基底の下で準備されたビットを選択し、ビット反転をネゴシエートし、通信双方ビットの一致性を確保し、これらの操作を完了した後、留保したデータがオリジンキーとされる基底照合ステップ;
S5、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、X基底下で得られたオリジンキーを利用して最終的な安全鍵を生成し、Y基底下で得られたオリジンキーをテストビットとして、符号誤り率を検査し、符号誤り率が閾値よりも高い場合、盗聴があることを示し、今回の通信セッションを破棄し、破棄しない場合、残りのデータを留保して次のステップに進む符号誤り率推定ステップ;
S6、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、古典的な公開通信路を利用してフィルタリング後のデータについて誤り訂正及び秘匿性増幅を実行し、データ調整を経た後、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobが同じ安全鍵を持つ鍵ネゴシエーションステップ;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ビットエンコードをする時、前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、トポロジカルチャージが奇数及び偶数である軌道角運動量状態又は重ね合わせ状態をランダムに選択してエンコードし、任意の奇数次又は偶数次の軌道角運動量状態で一組の相互不偏基底を構成してエンコードすることを特徴とする、請求項
7に記載のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子情報及び光通信の技術分野に関し、特に、リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1984年に初の量子鍵配送プロトコルが発表されて以来、量子鍵配送(Quantum Key Distribution、QKD)は、量子情報科学内の非常に実現可能な技術の一つであると見なされてきた。QKDは、リモート2ユーザー(Aliceとbob)間が量子物理学の基礎法則に基づいて理論的には無条件に安全な鍵を生成することを許していた。ただし、実際の環境において理想的なモデルと実際の機器との間にギャップがあった。例えば理想的なQKDプロトコルは、安全性を保証するため、理想的な単一光子源及び検出器が必要とされている。従来技術から見ると、理想的な単一光子源及び検出器を実現することは、困難である。これらのデバイスの欠陥によりQKDシステムは、例えば光子数分割攻撃、タイムシフト攻撃及びブラインド攻撃等の様々な攻撃を受けてしまうことである。
【0003】
これらの困難を克服するため、測定装置無依存量子鍵配送の概念(Device independent Quantum Key Distribution、DI-QKD)が提案された。DI-QKDの安全性は、装置の特性により決まるのではなく、これは装置が理想的でなくても、量子ハッカーはこの欠陥を利用して任意の情報を盗むことができないことを意味する。このため、DI-QKDは、常に理論的な無条件安全を保証できる。しがしながら、DI-QKDの実現は、非常に難しい挑戦であり、完全なBell状態測定及び非常に高効率な単一光子検出技術が必要であり、従来技術でも実現が難しい。ただし最近提案された測定装置無依存量子鍵配送プロトコル(Measurment Device Independent Quantum Key Distribution、MDI-QKD)は、DI-QKDと実用化との距離を縮め、一部のQKD装置無依存量子通信を実現し、検出に関連する全てのセキュリティ脆弱性を排除した。同時に、このプロトコルは、おとり状態スキームを導入し、位相ランダム化を利用して光子状態を光子数の混合状態に変換させることで、光子数分割攻撃をより良好に防止できる。人々は、例えば偏光エンコードスキーム、位相エンコードスキーム及びtime-binエンコードスキーム等の様々なMDI-QKDの実現スキームを研究開発してきた。
【0004】
MDI-QKDプロトコルは、量子鍵システムの測定側の全ての脆弱性問題を一括して解決するが、光源部分、変調部分及びサイド通信路部分等にはセキュリティに影響を与える脆弱性がやはり存在する。例えば在来のMDI-QKD(特許文献1)は、おとり状態と結合して微弱コヒーレント光源を導入し、光源に対するMDI-QKDシステムの要件が下がるが、ユーザー双方が独自の独立した光源を使用するため、出射された各光のスペクトルが不一致である。この差異を利用して、量子ハッカーは、光子源を識別して、ユーザーの鍵情報を盗み取ることができる。スペクトルが不一致という問題について、人々は、プラグアンドプレイMDI-QKD(非特許文献1)を提案したが、変調スキームには測定基底の基準系の整合が不完全であるという問題が存在することで、符号誤り率が増加した。これについて、軌道角運動量状態(OAM)エンコードに基づくMDI-QKDスキーム(非特許文献2)が最近提案され、基準系の整合が不完全という問題を解決し、符号誤り率が減少したが、スペクトルの不一致の問題が存在し、かつチャンネル環境に対しても適切な監視方法及び信号補償方法がないため、弱信号の量子鍵配送システムの性能が極めて容易に外部環境の影響を受けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第106712940号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Liu,C.Q.at al.(2016).Polarization-Encoding-Based Measurement-Device-Independent Quantum Key Distribution with a Single Untrusted Source. Chinese Physics Letters, 33(10).
【文献】Wang L, Zhao S M, Gong L Y, et al. Free-space measurement-device-independent quantum-key-distribution protocol using decoy states with orbital angular momentum[J]. Chinese Physics B, 2015, 24(12):120307.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の不足を克服して、リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムを提供することである。このシステムの測定ユニットは、パルスレーザ、偏光ビームスプリッタ及ビームスプリッタを利用して強い光パルスをユーザー側に伝送する。ユーザー側は、電荷結合素子(CCD)及ビームスプリッタを利用して監視と同期を実行し、変形可能なミラーを介して位相歪みを補償し、強度変調器及び空間光変調器を利用して光子数が1未満で、軌道角運動量を有するおとり状態及び信号状態の光子をランダムに生成して、中央の測定ユニットに送信する。測定ユニットは、ユーザーから送信された光子状態を測定し、測定結果をアナウンスし、ユーザーが測定の応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する。
【0008】
発明の別の目的は、スペクトルモードマッチングを自然に実現でき、同時にリアルタイムの通信路監視、パルス強度及び大気乱流強度の測定及びクロック同期等を便利に実現できるリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムであって、ユーザー側Aliceと、ユーザー側Bobと、測定ユニットと、を含み;
前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、量子通信路を介して第1、第2望遠鏡システムと、第1の50:50ビームスプリッタと、第1偏光ビームスプリッタと、パルスレーザと、第1~第4の反射鏡と、第1、第2のM/Z干渉計と、第1~第4の単一光子検出器と、を備えた測定ユニットと接続し、前記測定ユニットのパルスレーザが基本モードのガウスビームを放射した時、まず第1偏光ビームスプリッタのフィルタリングを経て偏光モードが垂直偏光である基本モードのガウス光を第1の50:50ビームスプリッタに反射して2つに分割され、次に第1反射鏡及び第2反射鏡によって反射され、最後に前記第1望遠鏡システム及び第2望遠鏡システムによってコリメートされ、量子通信路を介して各々ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに送信し;
ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、それぞれ測定ユニットからの強いパルスレーザ光に対して通信路環境のリアルタイム監視、位相歪み補償及び軌道角運動量のエンコードを実現した後テストユニットに送信し;
前記測定ユニットの第1望遠鏡システム及び第2望遠鏡システムが各々ユーザー側Alice及びユーザー側Bobからの信号パルスを受信する時、この信号パルスはまず前記第1反射鏡及び第2反射鏡によって反射され、そして第3の50:50ビームスプリッタで干渉し、干渉後のパルスが各々第3反射鏡及び第4反射鏡によって反射されて、第1M/Z干渉計及び第2M/Z干渉計に各々入り、第1M/Z干渉計及び第2M/Z干渉計によって分離された後、第1~第4の単一光子検出器に入り、応答を生じて測定結果を出力し;ユーザー側Alice及びユーザー側Bobが測定の応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する。
【0010】
好ましくは、前記ユーザー側Aliceは、第3望遠鏡システムと、第1狭帯域フィルタと、第1ビームスプリッタと、第1電荷結合素子(CCD)と、第1遅延器と、第2偏光ビームスプリッタと、第1変形可能なミラーと、第2変形可能なミラーと、第1半波長板と、第1空間光変調器と、第1強度変調器と、を備え;
前記ユーザー側Bobは、第4望遠鏡システムと、第2狭帯域フィルタと、第2ビームスプリッタと、第2電荷結合素子(CCD)と、第2遅延器と、第3偏光ビームスプリッタと、第3変形可能なミラーと、第4変形可能なミラーと、第2半波長板と、第2空間光変調器と、第2強度変調器と、を備える。
【0011】
【0012】
好ましくは、前記第3望遠鏡システム及び第4望遠鏡システムは、いずれもレーザパルスのサイズ及びレーザビームの遠視野発散角を制御するための2つの共焦点凸レンズを備え、前記第1狭帯域フィルタ及び第2狭帯域フィルタは通信波帯以外の光を除去するために用いられ、前記第1ビームスプリッタ及び第2ビームスプリッタは入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路強弱という2つの経路に分割させ;前記第1電荷結合素子(CCD)及び第2電荷結合素子(CCD)は、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記第2偏光ビームスプリッタ及び第3偏光ビームスプリッタは水平偏光を透過し、垂直偏光を反射し、前記第1変形可能なミラー、第2変形可能なミラー、第3変形可能なミラー及び第4変形可能なミラーは波面補正器とも呼ばれ、位相歪みの参照情報に基づいて光波の波面伝送の光路又は伝送媒質の屈折率を変更して入射波の波面の位相構造を変更させることで、光波の波面の位相を補償する目的を達成し;前記第1半波長板、第2半波長板の主断面は、入射光の偏光面に対し45度に配置されると、入射光の偏光方向を90度回転することができ、前記第1空間光変調器、第2空間光変調器は純粋な位相反射型液晶空間光変調器であり、ビームの軌道角運動量を変調するための液晶分子の電気複屈折効果に基づくアクティブデジタル光学デバイスであり、前記第1強度変調器、第2強度変調器は異なる平均光子数の強度のおとり状態及び信号状態の光子を正確に生成できる。
【0013】
好ましくは、前記ユーザー側Aliceの第3望遠鏡システムは、測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に第1狭帯域フィルタによって通信波帯以外の光を除去してから第1ビームスプリッタを介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が第1電荷結合素子に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、第1遅延器、第2偏光ビームスプリッタ、第1変形可能なミラー、第1半波長板、第1空間光変調器、第1強度変調器及び第2変形可能なミラーに順次接続され;下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず第1遅延器に入り、一定の時間遅延の後第2偏光ビームスプリッタに入り、第2偏光ビームスプリッタがパルスレーザ光を第1変形可能なミラーに反射し、第1変形可能なミラーが上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が第1半波長板に反射され、第1半波長板は偏光状態を90度回転させた後第1空間光変調器に入り、第1空間光変調器がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、第1強度変調器を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、第2変形可能なミラーによって位相補正され、第2偏光ビームスプリッタから透過し、第1遅延器、第1ビームスプリッタ及び第1狭帯域フィルタを通過して第3望遠鏡システムに到達し、最後に第3望遠鏡システムは信号状態及びおとり状態をコリメートして測定ユニットに送信する。
【0014】
好ましくは、前記ユーザー側Bobの第4望遠鏡システムは、測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に第2狭帯域フィルタによって通信波帯以外の光を除去してから第2ビームスプリッタを介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が第2電荷結合素子に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、第2遅延器、第3偏光ビームスプリッタ、第3変形可能なミラー、第2半波長板、第2空間光変調器及び第2強度変調器に順次接続され;下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず第2遅延器に入り、一定の時間遅延の後第3偏光ビームスプリッタに入り、第3偏光ビームスプリッタがパルスレーザ光を第3変形可能なミラーに反射し、第3変形可能なミラーが上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が第2半波長板に反射され、第2半波長板は偏光状態を90度回転させた後第2空間光変調器に入り、第2空間光変調器がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、第2強度変調器を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、第4変形可能なミラーによって位相補正され、第3偏光ビームスプリッタから透過し、第2遅延器、第2ビームスプリッタ及び第2狭帯域フィルタを通過して第4望遠鏡システムに到達し、最後に第4望遠鏡システムは信号状態及びおとり状態をコリメートして測定ユニットに送信する。
【0015】
好ましくは、前記第1電荷結合素子(CCD)及び第2電荷結合素子(CCD)は、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記第1、第2の変形可能なミラー及び第3、第4の変形可能なミラーがそれぞれ前記第1電荷結合素子(CCD)及び第2電荷結合素子(CCD)によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償する。好ましくは、第1、第3の変形可能なミラーは、上分岐経路によって提供された位相歪み情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のレーザ光が位相歪みのない状態に戻り;第2、第4の変形可能なミラーは、上分岐経路によって提供された位相歪み情報に基づいて波面位相を補正して、入射光に位相歪みに共役な位相共役光を生成させ、このビームが元の光路を通って測定ユニットに戻った時、大気乱流等の環境に起因する位相歪みが相殺され、ビームが位相歪みのない状態に戻る。
【0016】
好ましくは、第1M/Z干渉計は、第2の50:50ビームスプリッタと、第3の50:50ビームスプリッタと、第5反射鏡と、第6反射鏡と、第1ダブプリズムと、第2ダブプリズムと、を備え、前記第2M/Z干渉計は第4の50:50ビームスプリッタと、第5の50:50ビームスプリッタと、第7反射鏡と、第8反射鏡と、第3ダブプリズムと、第4ダブプリズムと、を備える。
【0017】
好ましくは、前記量子通信路は、自由空間通信路又は光ファイバ通信路である。
【0018】
前記測定ユニットは、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobからの信号パルスを受信し、信号パルスに対し干渉測定を実行する時、前記測定ユニットの第1の50:50ビームスプリッタが光子状態の経路情報を消去し、光子状態を区別できないようにする。HOM効果により、同じ光子状態が第1の50:50ビームスプリッタの同じ出力ポートから出力され、異なる光子状態が互いに独立して出力される。
【0019】
具体的に、測定ユニットの第1の50:50ビームスプリッタが干渉した後、前記信号パルスは第1の50:50ビームスプリッタの上下ポートから出力され、前記反射鏡によって反射され、第1M/Z干渉計及び第2M/Z干渉計に入る。
【0020】
第1干渉計を例にすると、入力光子に対する第1M/Z干渉計の作用は、次のように示される。
【0021】
M/Z干渉計の入力ポートに入射する光子状態が次式のようになっていると設定する。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
第3の50:50ビームスプリッタを通過した後光子状態は、次式のようになる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
最後にユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、測定ユニットの応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する。
【0033】
前記のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムに応用され、以下のステップを含むリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送方法であって、
S1、測定ユニットは、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに強いレーザパルスを放射し、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobがこのパルスを利用してクロック同期及び盗聴防止の監視を実行し、同時に入射ガウスパルスのスポット的分散度に基づいて大気乱流強度を推定し、大気乱流強度が閾値より低く、監視で盗聴がない場合、次のステップに進む通信路環境監視ステップ;
S3、測定ユニットは、測定操作を実行し、検出に成功したビットをアナウンスし、同時に測定結果をアナウンスし、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは上記のデータを留保し、その他のコードビットのデータを破棄するBell測定ステップ;
S4、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、公開通信路を介して基底照合し、同じ基底の下で準備されたビットを選択し、ビット反転をネゴシエートし、通信双方ビットの一致性を確保し、これらの操作を完了した後、留保したデータがオリジンキーとされる基底照合ステップ;
S5、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、X基底下で得られたオリジンキーを利用して最終的な安全鍵を生成し、Y基底下で得られたオリジンキーをテストビットとして、符号誤り率を検査し、符号誤り率が閾値よりも高い場合、盗聴があることを示し、今回の通信セッションを破棄し、破棄しない場合、残りのデータを留保して次のステップに進む符号誤り率推定ステップ;
S6、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、古典的な公開通信路を利用してフィルタリング後のデータについて誤り訂正及び秘匿性増幅を実行し、データ調整を経た後、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobが同じ安全鍵を持つ鍵ネゴシエーションステップ;
を含む方法。
【0034】
好ましくは、前記ビットエンコードをする時、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、トポロジカルチャージが奇数及び偶数である軌道角運動量状態又は重ね合わせ状態をランダムに選択してエンコードし、任意の奇数次又は偶数次の軌道角運動量状態で一組の相互不偏基底を構成してエンコードする。
【発明の効果】
【0035】
従来技術と比較して、本発明の有利な効果としては、
1、本発明のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムのユーザー側は、2つの変形可能なミラー及びCCDを使用して補償光学システムとして組み立て、大気乱流による位相歪みをリアルタイムトラッキング・監視し、大気乱流の程度を推定し、かつ歪んだ位相をリアルタイム補償でき、測定装置無依存量子鍵配送システムの干渉防止能力を向上する。
【0036】
2、本発明のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムでは、ユーザー双方のパルス信号が同じレーザからのものであり、それらのスペクトルモードが当然同じであり、干渉測定時極めて高い忠実度を有し、この光源を利用すると、リアルタイムの通信路監視を簡単に実現し、トロイの木馬の攻撃を防ぎ、クロック同期を容易にする。
【0037】
3、本発明のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システム及び方法は、軌道角運動量(OAM)を有する光子を情報キャリアとして利用し、基底の基準系に整列しない場合において、測定装置無依存量子鍵配送を実行し、鍵レートを高めることができ、かつ軌道角運動量状態は無限次元の特性を持つため、本発明に極めて強い拡張能力を持たせ、軌道角運動量の多重化/分離装置と簡単に組み合わせて通信路容量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の測定ユニットの構造ブロック図である。
【
図2】本発明のユーザー側Aliceの構造ブロック図である。
【
図3】本発明のユーザー側Bobの構造ブロック図である。
【
図5】本発明のシステム動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、図面を参照しつつ本発明の具体的実施形態をさらに説明する。
【0040】
図1乃至
図3に示すように、リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムは、ユーザー側Aliceと、ユーザー側Bobと、測定ユニットと、を備える。
【0041】
前記ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、量子通信路を介して測定ユニットと接続し、ここで、前記量子通信路が自由空間通信路又は光ファイバ通信路であり、本技術的手段は自由空間通信路を例として説明する。
【0042】
前記測定ユニットは、パルスレーザを利用して強いガウスパルスを生成し、偏光ビームスプリッタ及ビームスプリッタを介してガウスパルスをユーザー側に伝送し、ユーザー側が電荷結合素子(CCD)及ビームスプリッタを利用して監視と同期を実行すると共に、変形可能なミラーを用いて歪んだ位相に対して位相歪み補償を実行し、強度変調器及び空間光変調器を利用して光子数が1未満で、軌道角運動量を有するおとり状態及び信号状態の光子をランダムに生成して、中央の測定ユニットに送信する。測定ユニットは、時分割多重の単一光子検出器を利用してユーザーから送信された光子状態を測定し、測定結果をアナウンスし、ユーザーが測定の応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する。
【0043】
図1に示すように、前記測定ユニットは、第1望遠鏡システム301と、第2望遠鏡システム302と、第1の50:50ビームスプリッタ305と、第2の50:50ビームスプリッタ320と、第3の50:50ビームスプリッタ325と、第4の50:50ビームスプリッタ330と、第5の50:50ビームスプリッタ335と、第1偏光ビームスプリッタ306と、パルスレーザ307と、第1反射鏡303と、第2反射鏡304と、第3反射鏡308と、第4反射鏡309と、第1M/Z干渉計と、第2M/Z干渉計と、第1単一光子検出器326と、第2単一光子検出器327と、第3単一光子検出器336と、第4単一光子検出器337と、備える。前記第1望遠鏡システム301、第2望遠鏡システム302は、主にビームコリメーションに用いられ、第1偏光ビームスプリッタ306は水平偏光を透過し、垂直偏光を反射し、パルスレーザ307はポンプ光源としてポンプが基本モードのガウス光を生成するために用いられる。前記第1M/Z干渉計340は、第2の50:50ビームスプリッタ320と、第3の50:50ビームスプリッタ325と、第5反射鏡321と、第6反射鏡323と、第1ダブプリズム324と、第2ダブプリズム322と、を備え、前記第2M/Z干渉計341は第4の50:50ビームスプリッタ330と、第5の50:50ビームスプリッタ335と、第7反射鏡331と、第8反射鏡333と、第3ダブプリズム332と、第4ダブプリズム334と、を備え、
【0044】
図2に示すように、前記ユーザー側Aliceは、第3望遠鏡システム101と、第1狭帯域フィルタ102と、第1ビームスプリッタ103と、第1電荷結合素子(CCD)104と、第1遅延器105と、第2偏光ビームスプリッタ106と、第1変形可能なミラー107と、第2変形可能なミラー111と、第1半波長板108と、第1空間光変調器109と、第1強度変調器110と、を備える。
【0045】
図3に示すように、前記ユーザー側Bobは、第4望遠鏡システム201と、第2狭帯域フィルタ202と、第2ビームスプリッタ203と、第2電荷結合素子(CCD)204と、第2遅延器205と、第3偏光ビームスプリッタ206と、第3変形可能なミラー207と、第4変形可能なミラー211と、第2半波長板208と、第2空間光変調器209と、第2強度変調器210と、を備える。
【0046】
前記第3望遠鏡システム101及び第4望遠鏡システム201は、いずれもレーザパルスのサイズ及びレーザビームの遠視野発散角を制御するための2つの共焦点凸レンズを備え、前記第1狭帯域フィルタ102及び第2狭帯域フィルタ202は通信波帯以外の光を除去するために用いられ、前記第1ビームスプリッタ103及び第2ビームスプリッタ203は入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路強弱という2つの経路に分割させ;前記第1電荷結合素子(CCD)104及び第2電荷結合素子(CCD)204は、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記第2偏光ビームスプリッタ106及び第3偏光ビームスプリッタ206は水平偏光を透過し、垂直偏光を反射し、前記第1変形可能なミラー107、第2変形可能なミラー111、第3変形可能なミラー207及び第4変形可能なミラー211は波面補正器とも呼ばれ、位相歪みの参照情報に基づいて光波の波面伝送の光路又は伝送媒質の屈折率を変更して入射波の波面の位相構造を変更させることで、光波の波面の位相を補償する目的を達成し;前記第1半波長板108、第2半波長板208の主断面は、入射光の偏光面に対し45度に配置されると、入射光の偏光方向を90度回転することができ、前記第1空間光変調器109、第2空間光変調器209は純粋な位相反射型液晶空間光変調器であり、ビームの軌道角運動量を変調するための液晶分子の電気複屈折効果に基づくアクティブデジタル光学デバイスであり、前記第1強度変調器110、第2強度変調器210は異なる平均光子数の強度のおとり状態及び信号状態の光子を正確に生成できる。
【0047】
図4に示すように、量子通信の時、前記測定ユニットのパルスレーザ307が基本モードのガウスビームを放射し、まず第1偏光ビームスプリッタ306のフィルタリングを経て偏光モードが垂直偏光である基本モードのガウス光を第1の50:50ビームスプリッタ305に反射して2つに分割され、次に前記第1望遠鏡システム301、第2望遠鏡システム302によってコリメートされて、遠視野発散角を制御し、そして量子通信路を介して各々ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに送信する。
【0048】
図2に示すように、前記ユーザー側Aliceの第3望遠鏡システム101は、測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に第1狭帯域フィルタ102、第2狭帯域フィルタ202によって通信波帯以外の光を除去してから第1ビームスプリッタ103を介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が第1電荷結合素子(CCD)104に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、第1遅延器105、第2偏光ビームスプリッタ106、第1変形可能なミラー107、第1半波長板108、第1空間光変調器109、第1強度変調器110及び第2変形可能なミラー111に順次接続される。下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず第1遅延器105に入り、一定の時間遅延の後第2偏光ビームスプリッタ106に入り、第2偏光ビームスプリッタ106がパルスレーザ光を第1変形可能なミラー107に反射し、第1変形可能なミラー107が上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が第1半波長板108に反射され、第1半波長板108は偏光状態を90度回転させた後第1空間光変調器109に入り、第1空間光変調器109がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、第1強度変調器111を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、第2変形可能なミラー111によって位相補正され、第2偏光ビームスプリッタ106から透過し、第1遅延器105、第1ビームスプリッタ103及び第1狭帯域フィルタ102を通過して第3望遠鏡システム101に到達し、第3望遠鏡システム101は信号状態及びおとり状態をコリメートして測定ユニットに送信する。
【0049】
図3に示すように、前記ユーザー側Bobの第4望遠鏡システム201は、測定ユニットからのパルスレーザ光を受け取り、次に第2狭帯域フィルタ202によって通信波帯以外の光を除去してから第2ビームスプリッタ203を介して入射されたパルスレーザ光をそれぞれ強い上分岐経路及び弱い下分岐経路という強弱の2つの経路に分割させ、前記上分岐経路が第2電荷結合素子(CCD)204に接続され、レーザパルスの強度及び大気乱流による波面位相歪みをリアルタイム監視し、クロック同期及び下分岐経路の位相歪み補償に参照情報を提供するために用いられ、前記下分岐経路がパルスを変調して位相情報をロードするために用いられ、第2遅延器205、第3偏光ビームスプリッタ206、第3変形可能なミラー207、第2半波長板208、第2空間光変調器209、第2強度変調器210及び第4変形可能なミラー211に順次接続される。下分岐経路に分離されたパルスレーザ光は、まず第2遅延器205に入り、一定の時間遅延の後第3偏光ビームスプリッタ206に入り、第3偏光ビームスプリッタ206がパルスレーザ光を第3変形可能なミラー207に反射し、第3変形可能なミラー207が上分岐経路によって提供された参照情報に基づいて波面位相歪みを補償し、補償後のパルスレーザ光が第2半波長板208に反射され、第2半波長板208は偏光状態を90度回転させた後第1空間光変調器209に入り、第1空間光変調器209がパルスに対し軌道角運動量のエンコードを実行し;エンコードされたパルスは、第2強度変調器210を介して異なる平均光子数の強度の軌道角運動量の信号状態及びおとり状態に変調され、第4変形可能なミラー211によって位相補正され、第3偏光ビームスプリッタ206から透過し、第2遅延器205、第2ビームスプリッタ203及び第2狭帯域フィルタ202を通過して第4望遠鏡システム201に到達し、第4望遠鏡システム201は信号状態及びおとり状態をコリメートして測定ユニットに送信する。
【0050】
【0051】
前記測定ユニットの第1望遠鏡システム301、第2望遠鏡システム302が各々ユーザー側Alice及びユーザー側Bobからの信号パルスを受信し、この信号パルスはまず前記第1反射鏡303、第2反射鏡304によって反射された後、第1の50:50ビームスプリッタ305で干渉する。第1の50:50ビームスプリッタ305が光子状態の経路情報を消去し、光子状態を区別できないようにする。HOM効果により、同じ光子状態が第1の50:50ビームスプリッタ305の同じ出力ポートから出力され、異なる光子状態が互いに独立して出力される。
【0052】
前記信号パルスは、第1の50:50ビームスプリッタ305の上下ポートから出力され、前記第3反射鏡308、第4反射鏡309によって反射され、第1M/Z干渉計340及び第2M/Z干渉計341に入る。第1干渉計340を例にすると、入力光子に対する第1M/Z干渉計340の作用は、次のように示される。
【0053】
M/Z干渉計の入力ポートに入射する光子状態が次式のようになっていると設定する。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
第3の50:50ビームスプリッタ325を通過した後光子状態は、次式のようになる。
【0059】
【0060】
【0061】
前記M/Z干渉計出力の状態は、最終的に単一光子検出器によって検出され、出力結果を応答する。具体的な測定ユニットの応答状況は、下表に示される。
【0062】
【0063】
【0064】
最後にユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、測定ユニットの応答状況に応じて、基底照合及び鍵ネゴシエーションなどのプロセスを経た後、同じ鍵をローカルに生成する。
【0065】
図5に示すように、リアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送方法は、前記のリアルタイムトラッキング・補償のOAM測定装置無依存量子鍵配送システムに応用され、以下のステップS1~S6を含む:
通信路環境監視ステップS1:測定ユニットは、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobに強いレーザパルスを放射し、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobがこのパルスを利用してクロック同期及び盗聴防止の監視を実行し、同時に入射ガウスパルスのスポット的分散度に基づいて大気乱流強度を推定し、大気乱流強度が閾値より低く、監視で盗聴がない場合、次のステップに進み;
Bell測定ステップS3:測定ユニットは、測定操作を実行し、検出に成功したビットをアナウンスし、同時に測定結果をアナウンスし、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは上記のデータを留保し、その他のコードビットのデータを破棄し;
基底照合ステップS4:ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、公開通信路を介して基底照合し、同じ基底の下で準備されたビットを選択し、ビット反転をネゴシエートし、通信双方ビットの一致性を確保し、これらの操作を完了した後、留保したデータがオリジンキーとされ;
符号誤り率推定ステップS5:ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、X基底下で得られたオリジンキーを利用して最終的な安全鍵を生成し、Y基底下で得られたオリジンキーをテストビットとして、符号誤り率を検査し、符号誤り率が閾値よりも高い場合、盗聴があることを示し、今回の通信セッションを破棄し、破棄しない場合、残りのデータを留保して次のステップに進み;
鍵ネゴシエーションステップS6:ユーザー側Alice及びユーザー側Bobは、古典的な公開通信路を利用してフィルタリング後のデータについて誤り訂正及び秘匿性増幅を実行し、データ調整を経た後、ユーザー側Alice及びユーザー側Bobが同じ安全鍵を持つ。
【0066】
以上の述べるものは、本出願の具体的実施形態のみであって、本出願の保護範囲に限定されることなく、本出願で開示されている技術範囲内の変更又は置換をなし得ることは本出願の保護範囲内に含めるものである。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とする。上記の明細書の開示及び教示に基づいて当業者は、また上記実施形態を変更及び修正することができる。このため本発明は、上記で開示及び描写された具体的実施形態に限定されず、本発明に対するいくつかの修正及び変更も本発明の特許請求の範囲内に網羅されるべきである。なお本明細書では、いくつかの特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜上のものであり、本発明を如何とも限定することを意図しない。