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特許7177422人体昇降装置および人体昇降装置の動力を生成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】人体昇降装置および人体昇降装置の動力を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/10 20060101AFI20221116BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61G7/10
A47C7/02 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020533368
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 FI2018050612
(87)【国際公開番号】W WO2019043294
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】20175774
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520072534
【氏名又は名称】カイラムド オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】カイラスオ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ニエミ、サルメ
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05263207(US,A)
【文献】特開平06-090982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/10
A47C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(10、110、210)と、前記フレーム(10、110、210)に対して移動可能に配置されており、前記フレーム(10、110、210)に対する位置を変更可能な人体支持体と、前記フレーム(10、110、210)に対する第1の場所から前記フレーム(10、110、210)に対する第2の場所へ移動経路に沿って前記人体支持体を移動するための移動手段と、を備え、前記第2の場所は前記第1の場所から離れており、前記移動手段は、前記人体支持体の位置を前記フレーム(10、110、210)に対して変えるときに前記移動経路の方向へ前記人体支持体を動かすように構成されている、人体昇降装置において、前記人体昇降装置が、前記フレーム(10、110、210)に移動可能なように支持された補助フレーム(18、118、218)と、前記補助フレーム(18、118、218)に回動可能に支持されたロッカーシャフト(20、120、220)と、を含み、前記ロッカーシャフト(20、120、220)には、前記人体支持体が取り付けられており、
前記人体昇降装置が使用位置にあるとき、前記ロッカーシャフト(20、120、220)が実質的に水平な位置にあることを特徴とする、人体昇降装置。
【請求項2】
前記人体支持体が、座部(14、114、214)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人体昇降装置。
【請求項3】
前記人体支持体が、肘掛け(16、116、216)を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の人体昇降装置。
【請求項4】
前記人体支持体の前記移動経路が、実質的に直線であり、前記ロッカーシャフト(20、120、220)が、前記移動経路の方向に対して実質的に垂直であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項5】
前記人体支持体が幅方向を有し、前記人体昇降装置が使用位置にあるとき、前記ロッカーシャフト(20、120、220)が、前記人体支持体の実質的に中央で前記人体支持体の下にあることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項6】
前記人体昇降装置が、前記ロッカーシャフト(20、120、220)の回転を制限するリミッターをさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項7】
前記人体昇降装置が、前記人体支持体を前記補助フレーム(18、118、218)に対して動かないように係止する係止部材をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項8】
前記移動手段が、第1の端部で前記フレーム(10、110、210)に、第2の端部で前記補助フレーム(18、118、218)に取り付けられる油圧シリンダ(22、122)と、前記油圧シリンダ(22、122)に作動液を注入する油圧ポンプ(24、124)と、前記人体支持体と前記油圧ポンプとの間にあって前記人体支持体の位置を変えることにより前記油圧ポンプ(24、124)を使用するためのレバー機構と、を含むことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項9】
前記移動手段が、第1の端部でフレーム(10、110、210)に取り付けられる歯車ラック(26)と、少なくとも一つのエレベータアーム(28)と、を含み、前記少なくとも一つのエレベータアーム(28)は、前記補助フレーム(218)に取り付けられる第1の端部と、前記歯車ラック(26)につく把持点(30)を有する第2の端部と、を有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の人体昇降装置。
【請求項10】
人体昇降装置は、フレーム(10、110、210)と、前記フレーム(10、110、210)に対して移動可能な人体支持体と、前記フレーム(10、110、210)に対する第1の場所から前記フレーム(10、110、210)に対する第2の場所へ移動経路に沿って前記人体支持体を移動するための移動手段と、を備え、前記第2の場所は前記第1の場所から離れており、前記移動手段の動力は、前記フレーム(10、110、210)に対する前記人体支持体の位置を変えることで生成される、人体昇降装置の動力を生成する方法において、前記人体昇降装置が、前記フレーム(10、110、210)に対し移動可能な補助フレーム(18、118、218)と、前記補助フレーム(18、118、218)に回動可能に支持されたロッカーシャフト(20、120、220)とを含み、前記ロッカーシャフト(20、120、220)には、前記人体支持体が取り付けられ、前記人体支持体を傾斜させることで前記人体昇降装置の動力を生成することを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記移動手段が、第1の端部で前記フレーム(10、110、210)に、第2端で前記補助フレーム(18、118、218)に取り付けられる油圧シリンダ(22、122)と、作動液を前記油圧シリンダ(22、122)に注入するための油圧ポンプ(24、124)と、を備え、前記油圧ポンプ(24、124)は、前記フレーム(10、110、210)に対して前記人体支持体の位置を変えることによって使われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記人体支持体に支えられた人の重心を前記人体支持体に対して移動させることにより、前記人体支持体の位置を変えることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームと、フレームに対して移動することが可能であり、フレームに対する位置を変更可能な人体支持体と、フレームに対して人体支持体を第1の場所から第2の場所へ移動経路に沿って移動する移動手段と、を有した人体昇降装置に関し、第2の場所は第1の場所から離れていて、フレームに対して人体支持体の位置を変えるときに、移動経路の方向に人体支持体を移動するように、移動手段が構成されている。本発明は、さらにこの人体昇降装置の動力を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体が弱い人には、できるだけ長く家に居たがる人が多い。多くの高齢者で、下肢の筋力の低下および/または手足の関節損傷によって、自宅での暮らしに困難を生じている。特に厳しい状況は、身体が弱い人が転倒して自分で床から立ち上がれない場合である。身体が弱い人では、たとえ転倒によって特段の負傷がなくても、床から立ち上がることは、難しくてできない可能性がある。一人暮らしの人では、抱えあげてもらうのに助けを求めざるを得ないことが多い。最悪のシナリオの場合、床から助けを求めることができない可能性があり、それによって、起き上がられずに転倒した人にさらなる深刻な結果を引き起こす可能性がある。転倒した身体が弱い人が立ち上がるのを手助けするためには、補助する人にも大きな力が必要となり、難しい姿勢での立ち上げ措置は、転倒した人と転倒した人を手助けする人の双方に事故を引き起こす可能性がある。
【0003】
床から起き上がりやすくするために、移動式の昇降座部が開発されており、座部には、垂直フレームと、垂直フレームに対して移動可能な座板が備えられる。座板は、電動モーターによって上下する。昇降座部は、座板が床面にごく近くなるように、床に据え付けられる。身体の弱い転倒した人が、自身で座るか、または助けてもらって座板に座るかした後、座板が電動モーターで持ち上がる。座板が上の位置まで持ち上がれば、立っている状態になれる。
【0004】
電動モーターとバッテリーを備えた昇降座部の製造コストが高いため、経済的な理由から、電動式昇降座部を入手することは不可能な場合が多い。電動モーターを電源線で電力網に接続するか、昇降座部に充電可能なバッテリーを装備する必要がある。電源線によって昇降座部の移動性が制限され、床に置かれた電源線によって転倒や怪我を引き起こす可能性がある。バッテリー駆動の昇降座部では、バッテリーが空になると昇降座部が一時的に使用できなくなるため、バッテリーの定期的な充電に留意する必要がある。モーターは、例えば、持ち上げられる人の手足の障害位置や、把手部や、平坦部や、落下するリスクを、全く認識しないため、モーターを使った座板持ち上げは、昇降台で事故を起こしやすくする。さらに、座部を使用している高齢者の多くは反応が鈍く、万一の事故リスクに遅れずに反応する可能性が低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に関連する問題を低減することができる人体昇降装置および人体昇降装置の動力を生成する方法を提供することである。本発明の目的は、独立請求項に提示されていることを特徴とする人体昇降装置および方法により達成される。本発明のいくつかの有利な実施形態は、従属請求項に提示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フレームと、フレームに対して移動することが可能な人体支持体と、フレームに対して第1の場所から第2の場所へ移動経路に沿って移動する移動手段と、を有した人体昇降装置に関する。第2の場所は第1の場所から離れている。フレームに対する人体支持体の位置は変えることができ、移動手段は、フレームに対して人体支持体の位置を変えるときに、移動経路の方向に人体支持体を動かすように構成されている。人体支持体は、移動可能にフレームに支持された補助フレームと、補助フレームに回動可能に支持されたロッカーシャフトと、を含み、ロッカーシャフトに人体支持体が取り付けられる。フレームに対する人体支持体の位置は、人体支持体を傾けることにより変えられ、人体支持体は、ロッカーシャフトに平行な軸の周りで回動する。
【0007】
本発明に係る人体昇降装置の有利な一実施形態では、上記人体支持体は座部を含んでいる。人体昇降装置の使用者が座部に着座した後、座部が移動経路に沿って動く。座部に座っている人は、重心を座部の第1の側から第2の側へ移動することにより、座部を傾けることができる。替わりに、または、さらに加えて、人体支持体は肘掛けを含むことができる。
【0008】
本発明に係る人体昇降装置の第2の有利な実施形態では、人体支持体の移動経路は実質的に直線であり、ロッカーシャフトが移動経路の方向に対して実質的に垂直である。好適には、人体昇降装置が使用位置にあるときに、ロッカーシャフトは実質的に水平位置にある。
【0009】
本発明に係る人体昇降装置のさらに他の有利な実施形態では、人体昇降装置が幅方向を有し、人体昇降装置が使用位置にあるときには、ロッカーシャフトが、実質的に人体支持体の中央で人体支持体の下の位置にある。
【0010】
本発明に係る人体昇降装置のさらに他の有利な実施形態は、ロッカーシャフトの回転を制限するためのリミッターをさらに含んでいる。リミッターは、人体支持体が傾きすぎて、人体支持体上に乗るのが難しかったり、または乗り心地が悪くなるのを防ぐ。座部などの人体支持体の傾きは、水平方向から例えば5度、8度、または10度に制限することができる。人体昇降装置は、人体支持体を動かないように補助フレームに係止するための係止手段をさらに含んでいるのが、有利である。人体支持体を動かない位置に支持しておけば、人体昇降装置は椅子として使える。
【0011】
本発明に係る人体昇降装置のさらに他の有利な実施形態では、上記移動手段は、第1の端部でフレームに、第2の端部で補助フレームに取り付けられる油圧シリンダと、油圧シリンダに作動液を注入するための油圧ポンプと、人体支持体と油圧ポンプとの間にあって人体支持体の位置を変えることで油圧ポンプを使用するためのレバー機構と、を含んでいる。
【0012】
本発明に係る人体昇降装置のさらに他の有利な実施形態では、上記移動手段が、第1の端部でフレームに取り付けられたラック歯車と、第1の端部で補助フレームに取り付けられ第2の端部でラック歯車につく把持点を持った少なくとも一つのエレベータアームと、を含んでいる。
【0013】
本発明に係る方法では、人体昇降装置の動力が生成され、この人体昇降装置は、フレームと、フレームに対して移動可能な人体支持体と、人体支持体をフレームに対する第1の場所からフレームに対する第2の場所へ移動経路に沿って動かすための移動手段と、を有し、第2の場所は第1の場所から離れている。本方法では、移動手段の動力を、フレームに対して人体支持体の位置を変化させることによって生成する。人体昇降装置は、フレームに対して移動可能な補助フレームと、補助フレームに回動可能に支持されたロッカーシャフトと、を含んでいて、ロッカーシャフトに人体支持体が取り付けられており、人体昇降装置の動力は、人体支持体を左右に傾けることで生成される。人体支持体を傾けることで、ロッカーシャフトを左右回動させ、それを移動手段の動力に変換する。
【0014】
本発明に係る方法の他の有利な実施形態では、上記移動手段は、第1の端部でフレームに、第2の端部で補助フレームに取り付けられる油圧シリンダと、油圧シリンダに作動液を注入するための油圧ポンプと、を含んでいる。この方法では、フレームに対して人体支持体の位置を変えることによって、油圧ポンプを使う。好適には、人体支持体に支えられた人の重心を人体支持体に対して移動させることによって、人体支持体の位置を変えられる。
【0015】
本発明に係る人体昇降装置の利点は、その製造コストおよび使用コストが安いことである。
【0016】
本発明のさらなる利点は、その使用が電気を使用できるかに依存しないことである。
【0017】
本発明のさらなる利点は、使用するのに安全なことである。
【0018】
本発明のさらに別の利点は、衰弱した人々が自宅での自立管理能力を改善して、補助者の必要性も減ることである。
【0019】
本発明のさらに別の利点は、その使用者が自分の身体機能を維持するのに役立つことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書では、添付図面を参照する。
図1a】一例として、本発明に係る人体昇降装置を側面から見た図を示す。
図1b図1aに示されている人体昇降装置を後方から見た図を示す。
図1c図1aおよび図1bに示されている人体昇降装置を側面から見た図を示す。
図2a図1cに示されている人体昇降装置の一部を後方から見た図を示す。
図2b図1cに示されている人体昇降装置の一部を後方から見た図を示す。
図2c図1cに示されている人体昇降装置の一部を後方から見た図を示す。
図3a】本発明に係る人体昇降装置の有利な実施形態を側面から見た図を示す。
図3b図3aに示されている人体昇降装置の実施形態の一部を後方から見た図を示す。
図3c図3aに示されている人体昇降装置の実施形態の一部を後方から見た図を示す。
図3d図3aに示されている人体昇降装置の実施形態の一部を後方から見た図を示す。
図4a】本発明に係る人体昇降装置の第2の有利な実施形態の一部を後方から見た図を示す。
図4b】本発明に係る人体昇降装置の第2の有利な実施形態の一部を後方から見た図を示す。
図4c】本発明に係る人体昇降装置の第2の有利な実施形態の一部を後方から見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1aおよび図1cは、一例として、本発明に係る人体昇降装置を側面から見た図を示し、図1bは、同じ人体昇降装置を後方から見た図を示す。図1aおよび図1bでは、人体昇降装置の座部14は下方位置にあり、図1cでは座部は上方位置にある。以下では、全ての図を同時に説明する。
【0022】
人体昇降装置は、ベース100の表面に設置される脚部8と、脚部に支持された2本の平行な端部支柱である第1の端部支柱6aおよび第2の端部支柱6bと、を含むフレーム10を有する。端部支柱は、それぞれの端を平行な端梁4で互いに連結される。脚部と、端部支柱と、端梁とは金属部品であり、溶接またはボルトで固定される。脚部は、成形された梁状の部品を含み、該部品はベースの方向でベースの上に固定される。端部支柱は脚部に実質的に直角に取り付けられているため、実質的に水平なベースの上にあるフレーム10の端部支柱6aおよび端部支柱6bは実質的に垂直な位置となる。フレームは支えなしで立つように設計されている。つまり、床などの実質的に水平なベース100に設置された場合、フレームは他の支持部品や他の構造部品に取り付けられずに垂直な位置のままである。脚部は車輪を有することが可能で、車輪に乗せて人体昇降装置をベース上で動かすことができる(車輪は図示せず)。
【0023】
補助フレーム18は、移動可能なようにフレーム10に支持されており、第1の側部支持体19aと第2の側部支持体19bを含む2つの側部支持体を有する。この側部支持体は、成形された梁状の部品であり、実質的に端部支柱方向の垂直部分と、実質的に脚部8方向の水平部分と、これら垂直部分と水平部分を連結する角部分と、を有する。この角部分は、垂直部分と水平部分に対して実質的に45度の角度をなす。側部支持体における水平部分の自由端と垂直部分の自由端は、接合梁17で互いに連結される。補助フレームは、端部支柱の間に配置され、側部支持体の水平部分が端部支柱の第1の側に、側部支持体の垂直部分が第2の側に置かれる。2つの支持ローラー32は、側部支持体19aと側部支持体19bのそれぞれの軸受に取り付けられる。第1の支持ローラーは、端部支柱6aおよび端部支柱6bの第1の側で、水平部分と角部分との間の接合部の近くにあり、第2の支持ローラー32は、端部支柱の第2の側で、垂直部分の側面にある。補助フレームは、この支持ローラーを介して端部支柱に支えられるため、同じ側部支持体上の支持ローラーは、端部支柱の互いに反対側の側面に沿って転がる。したがって、フレームの端部支柱が直線移動経路となり、これに沿って補助フレームは支持ローラーの制御に従い往復移動できる。
【0024】
軸受ハウジング34は、側部支持体19aと側部支持体19bの水平部分の端部を連結する接合梁17に取り付けられ、軸受ハウジングをロッカーシャフト20が貫通する。ロッカーシャフトは、端部支柱6aと端部支柱6bによって規定される平面に対して実質的に垂直な位置にあるため、水平なベースに設置された人体昇降装置では、ロッカーシャフトは実質的に水平となる。座部14は、ロッカーシャフトの第1の端部に取り付けられ、この座部は、脚部方向の着座面と、脚部の平面からある角度で向きを変える背もたれと、を含む。2つの肘掛け16は、背もたれに取り付けられており、それら肘掛けは着座面の互いに反対の端につく。本明細書では、人体支持体を座部と肘掛けの包括用語として用いる。ロッカーシャフトは、軸受ハウジング内で自軸の周りに回転することができ、それにより、座部およびそれに取り付けられた肘掛けは、ロッカーシャフトの回転方向で斜めに傾く。
【0025】
端部支柱の第2の側には、油圧シリンダ22があって、シリンダパイプ25とシリンダパイプの内側から押し出されるピストンロッド27を含んでいる。シリンダパイプは、その第1の端部で脚部8に取り付けられ、ピストンロッドの自由端部は、補助フレーム18の垂直部分の端部を連結する接合梁17に取り付けられており、これによって、油圧シリンダは端部支柱と実質的に平行な位置になる。側部支持体の水平部分を連結する接合梁の上部には油圧ポンプ24があり、そこから油圧パイプが油圧シリンダ22のシリンダパイプ25につながっている。油圧ポンプは、ロッカーシャフト20の第2の端部にレバー機構で連結されているため、ロッカーシャフトの左右回動により、油圧ポンプは油圧シリンダ22に作動液を注入する。
【0026】
図1aおよび図1bでは、人体昇降装置の座部14は、ベース100の表面にごく近く、その移動経路の第1の端位置にある。座部を一方から他方に横に傾けることで、ロッカーシャフト20が左右に回動し、それにより、油圧ポンプ24が油圧シリンダ22に作動液を注入し、それによって長さが伸びる。長さが伸びる油圧シリンダによって補助フレーム18および、それに支持された座部14は、端部支柱6aと端部支柱6bによって規定される移動経路に沿って、図1cに示す位置に持ち上げられる。補助フレームと座部は、座部で横方向の揺動が行われている限りはずっと上昇する。座部に関しては、係止部材があって、これにより、必要に応じ、補助フレームに対して固定位置に座部を係止することができる(係止部材は図示せず)。油圧ポンプまたは油圧シリンダに関しては、圧力解放部材があり、これを用いて、作動液を、シリンダパイプから流し出して油圧ポンプにつながる作動液容器に入るように放出することができ、それにより補助フレーム18およびそこに取り付けられた座部は、自重でもって、ゆっくりと図1aに示す下方位置に下降する。
【0027】
図2a、図2b及び図2cは、例として、図1cの切断線A-Aに沿って切断された本発明に係る人体昇降装置を示す。図2aは、補助フレームの側部支持体19aと側部支持体19bの水平部分の端部と、それらを連結する接合梁17および中間梁38と、を示す。接合梁の上面には軸受ハウジング34があり、ロッカーシャフト20はここを貫通する。ロッカーシャフトの第1の端部は座部14の背もたれに取り付けられ、ロッカーシャフトの第2の端部は水平ロッド36の中央部に回動不能に取り付けられている。垂直支柱40が中間梁に取り付けられており、その支柱の端には水平な上部ロッド42がある。上部ロッドは、ピボットピンで回転できるように支柱の端に取り付けられている。上部ロッドの第1の端部は、剛性ロッド44で水平ロッドの第1の端部に連結される。上部ロッドの第2の端部は、油圧ポンプ24のピストンロッドの自由端部に接続されている。
【0028】
水平ロッドは、側部支持体の水平部分の上面レベルより少し上の位置にある。つまり、側部支持体の端部と水平部分の間に数センチの隙間が残される。この隙間で、座部14を横向きに傾けることが可能になり、それにより、座部に取り付けられたロッカーシャフト20が、その長手軸の周りで回動する。同時に、ロッカーシャフトに取り付けられた水平ロッド36は座部が傾いた方向に傾斜する。座部は、水平ロッドの自由端部が側部支持体19aと側部支持体19bの水平部分の表面に当たるまで傾けることができる。このように、水平ロッドと側部支持体は一緒になってリミッターを形成して、座部の横方向の傾斜の上限を設定する。水平部分の上面には、衝撃吸収部46があって、座部が揺動する最後で金属部品同士がぶつからないようにしている。衝撃吸収部の代わりに、例えばコイルスプリングを衝撃吸収部材として用いることもできる。水平ロッドの端部には調整ネジがあって、水平ロッドを傾けると、その調整ネジの突出端が第1の衝撃吸収部に当たる。調整ネジを回すことにより、水平のロッドと座部の横方向の傾きに対し、適切な制限値を設定できる。
【0029】
図2aでは、座部は水平位置にある。座部14の右側の半分または右の肘掛けに、座部の左側の半分または肘掛けよりも大きな力がかかると、座部は図2bに示す位置に傾く。同様に、より大きな力が、座部の左半分または左の肘掛けにかかると、座部は図2cに示す位置に傾く。したがって、座部上の人の重心を回動軸の異なる側に交互に移動することにより、座部を横方向の左右に傾けることができる。身体が弱くても上半身を制御できる人は多いので、重心の移動は手助けなしでうまくできる。着座面の互いに反対の端にある肘掛けに交互に力をかけることで、座部を傾けることもできる。肘掛けにかける力は、持ち上げられる人自身で、または持ち上げ作業を手助けする他の人によって、引き出せる。
【0030】
図1a~図1cおよび図2a~図2cに示されている人体昇降装置では、ロッカーシャフトは、フレームの端部支柱の方向に対して実質的に垂直である。このように、人体昇降装置が通常の使用位置にあるときは、ロッカーシャフトは実質的に水平であって、水平軸の周りに座部を傾けることにより座部が持ち上げられる。ロッカーシャフトを端部支柱と実質的に平行な位置に配置し、座部が直接または間接的にロッカーシャフトに取り付けられるように、本発明を実装することも可能である。したがって、人体昇降装置が通常の使用位置にあるときに、ロッカーシャフトは実質的に垂直になる。油圧ポンプと、油圧ポンプおよび座部を連結するレバー機構は、この実施形態では水平位置に配置され、水平位置で座部を左右に回動させることで、ポンプが使用される。
【0031】
図3aは、一例として、側面から見た本発明に係る人体昇降装置の有利な実施形態を示す。図3b、図3c及び図3dは、図3aに示される実施形態の一部を、切断線B-Bで示される後方から見たものを示す。図に示す実施形態は、上述の本発明と同じ種類の、フレーム110と、補助フレーム118と、座部114と、肘掛け116と、油圧シリンダ122と、作動液容器を備えた油圧ポンプ124と、を有する。図に示す実施形態は、座部114が補助フレーム118に動かないように取り付けられる、つまり、座部を横に傾けることができないという点で、上述の本発明とは異なる。座部の側面に設置された肘掛け116は、水平ロッド136の端部に取り付けられる。この実施形態では、座部に座った人が肘掛けに体重を交互にかけるか、外の人が加える力によって、肘掛けを一方の側から他方の側に交互に傾ける。肘掛けに力をかけると、水平ロッドがロッカーシャフト120を中心に傾き、それによって、油圧ポンプ124により油圧シリンダ122に作動液が注入され、座部が上昇する。肘掛けが左右に揺動している間は、座部は常に補助フレーム118に対して動かないままである。
【0032】
図4a、図4b及び図4cは、一例として、後方から見た本発明に係る人体昇降装置の第2の有利な実施形態の一部を示す。図に示す実施形態は、上述のフレーム210と、移動可能なようにフレームに支持された補助フレーム218と、ロッカーシャフト220により補助フレームに回動できるように取り付けられた座部214と、を有し、座部は肘掛け216を有する。ロッカーシャフトの第1の端部は座部214の背もたれに取り付けられ、ロッカーシャフトの第2の端部は水平ロッド236の中間部分に回転できないように取り付けられている。図には、フレームの上部のみを示す。
【0033】
図に示す人体昇降装置は、上記の座部用油圧作動式移動手段の代わりに機械式移動手段を備えている。ラック歯車26は、向かい合う長辺側に鋸歯を有し、フレーム210の端部支柱206aの上端部と端部支柱206bの上端部を連結する端梁204に取り付けられている。2つのエレベータアーム28が水平ロッド236に取り付けられており、エレベータアームの第1の端部に把持点30がある。エレベータアームは、把持点がラック歯車の歯に収まるように、ラック歯車の鋸歯状の側面に配置される。エレベータアームは、その第2の端部をピボットピンで水平ロッドに取り付けられ、スプリング31で、互いに接続されており、スプリングの張力によって、把持点がラック歯車から外れるのを防ぐ。
【0034】
図4aでは、座部は水平位置にある。座部の左側の半分または左の肘掛けに、座部の右側の半分または肘掛けよりも大きな力がかかると、座部は図4bに示す位置に傾く。同様に、より大きな力が、座部の右半分または右の肘掛けにかかると、座部は図4cに示す位置に傾く。座部が傾くたびに、座部の上昇端側のエレベータアーム28の把持点30が、ラック歯車に沿って次の歯に上がる、つまり、補助フレーム218とそれに取り付けられた座部が持ち上がる。図に示された機械的移動手段は、解除部材をさらに含んでいて、その助けにより、両方のエレベータアームの把持点をラック歯車の表面から離すことができ、それによって、補助フレームとそれに取り付けられた座部が自重でもって下降する。機構は、当然、ブレーキ部材をさらに含み、それによって、下降する座部の動きが減速されてベースへの自由落下が防がれる(解除部材およびブレーキ部材は図示せず)。
【0035】
図4a、図4b及び図4cに示される実施形態では、座部と肘掛けの両方が、ロッカーシャフトの周りで回動できるように、補助フレーム上に支持される。この実施形態は、図3a~図3dに示される方法で実施することも可能で、それにより、座部は動かないように補助フレームに取り付けられ、肘掛け216が、ロッカーシャフト220を中心に回動する水平軸236上に支持される。
【0036】
上記の人体昇降装置は、特に、下肢が弱い人および/または高齢者のための補助具を意味している。この人体昇降装置を利用すれば、床に倒れた身体が弱い人も自力で床から立ち上がることができる。以下のようにして座部と肘掛けを備えた人体昇降装置を使い、床から立ち上がる。床に倒れた人は、人体昇降装置の近くまで床に沿って移動し、補助フレームとそれに取り付けられた座部を、床面近くのその最下端の位置まで下げる。その後、体を横にして座部に座る。座部に起き上がった後、上半身の重心を、座部の中心線の両サイドに、および/または中心線の両サイドの肘掛けに、交互に動かすことによって、座部および/または肘掛けを傾斜させ始める。座部および/または肘掛けを傾けると、移動機構が座部とその上の人をフレームの端部支柱の方向に持ち上げる。起き上がる人の他に別の人がいる場合、この人は、必要に応じて、肘掛けを傾けて起き上がるのを手助けすることができる。座部が十分な高さまで上昇すると、座部および/または肘掛けを傾けるのを止める。人体昇降装置の上に座ったままでいるか、座部から離れて両足で支えられて立った姿勢になるともできる。
【0037】
本発明に係る人体昇降装置のフレームと補助フレームは、鋼、アルミニウム、または複合材料など、目的に適した任意の材料から製造することができる。材料選定を利用して、人体昇降装置の製造コストと重量に影響を与えることができ、重量は、人体昇降装置の移動のしやすさに直接影響する。移動を容易にするために、フレームに車輪を取り付けると有利であるが、この車輪は、立ち上がる際に人体昇降装置を使うときには、ロックして回らないようにできる。人体昇降装置は、カーテンを使って、外見を従来の家具の一つのように見せることも可能である。このような人体昇降装置は、起き上がりの補助が必要でない場合、通常の椅子として使用できる。
【0038】
本発明に係る人体昇降装置および方法のいくつかの有利な実施形態を上述した。本発明は、上述の解決策に限定されるものではなく、本発明の考えは、特許請求の範囲内で様々な方法で適用することができる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c