(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】リフトアップ装置及び塔状構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20221116BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
E04G21/16
E04H12/00 A
(21)【出願番号】P 2018135947
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000153605
【氏名又は名称】株式会社巴技研
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】江副 誉典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】江沢 迪和
(72)【発明者】
【氏名】五十畑 登
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ目 祥
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-022969(JP,A)
【文献】特開2007-192070(JP,A)
【文献】特開2002-242483(JP,A)
【文献】特開2017-207027(JP,A)
【文献】特開昭50-079918(JP,A)
【文献】特開2002-349080(JP,A)
【文献】実開昭48-036555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16
E04H 12/00
F03D 13/20
F03D 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記塔状構造物の第1及び第2の要素部材を持ち上げるリフトアップ装置であって、
前記垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、
前記昇降機構を備え、前記第1昇降部とは独立して昇降可能であって、前記第2の要素部材を持ち上げる第2昇降部とを備え
、
前記第2昇降部は、前記第1昇降部と固定部材により固定可能な構成を有し、
前記昇降機構は、前記第2昇降部に前記第1昇降部を固定した状態で上昇可能であることを特徴とするリフトアップ装置。
【請求項2】
前記第1昇降部の上部には、前記第2昇降部の係合部が嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項
1に記載のリフトアップ装置。
【請求項3】
塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記塔状構造物の第1及び第2の要素部材を持ち上げるリフトアップ装置であって、
前記垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、
前記昇降機構を備え、前記第1昇降部とは独立して昇降可能であって、前記第2の要素部材を持ち上げる第2昇降部とを備え、
前記第1昇降部は、
1対の第1ユニット部材と、
前記第1ユニット部材を連結する取り外し可能な連結部と、
前記第2昇降部と連結する連結フレームとを備えていることを特徴とす
るリフトアップ装置。
【請求項4】
前記第2昇降部は、前記垂直部材に対して、前記第1昇降部とは反対側に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のリフトアップ装置。
【請求項5】
第1及び第2の要素部材を備えた塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、前記垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記第1昇降部とは独立して昇降可能な第2昇降部とを備えたリフトアップ装置を用いて、塔状構造物を構築する方法であって、
前記第2昇降部に前記第1昇降部を固定した状態で、前記第1及び第2昇降部にそれぞれ取り付けた前記第1及び前記第2の要素部材を持ち上げることを特徴とする塔状構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置等の塔状構造物の要素部材を持ち上げるリフトアップ装置及び塔状構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電機の設置においては、強風時の施工性や施工に用いるクレーンの設置場所確保が課題にある。そこで、風力発電機の発電機タワーの周囲にガイドタワーを配置し、このガイドタワーに取り付けた昇降ステージを用いて、風力発電機を設置する技術が検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献に記載のリフトアップ装置においては、発電機タワーの周囲に配置したガイドタワーに昇降ステージを取り付ける。そして、この昇降ステージを用いて、ナセルを発電機タワーの最上部に持ち上げて設置する。更に、この昇降ステージを用いて、立木上空で組立てた回転体を持ち上げながら立て起こす。これにより、回転体の立て起こしに必要であった大型クレーンを不要にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社大林組 株式会社巴技研、「大型風車をリフトアップにより組み立てる装置「ウインドリフトTM」を開発」、[online]、[平成30年4月25日検索]、インターネット〈URL:http://www.obayashi.co.jp/press/news20170518_01〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した非特許文献に記載の方法では、昇降ステージを用いて、ナセル、回転体等の複数の要素部材をリフトアップする。ここで、特定の作業(例えば回転体の組立て作業)で昇降ステージを占有する場合には、この昇降ステージを用いた他の部材のリフトアップ作業を行なうことができない。このため、作業順番を考慮して、昇降ステージを順番に使用する必要があるため、塔状構造物の構築に時間が掛かるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するリフトアップ装置は、塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記塔状構造物の第1及び第2の要素部材を持ち上げるリフトアップ装置であって、前記垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、前記昇降機構を備え、前記第1昇降部とは独立して昇降可能であって、前記第2の要素部材を持ち上げる第2昇降部とを備えている。
【0006】
また、上記課題を解決する塔状構造物の構築方法は、第1及び第2の要素部材を備えた塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、前記垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記第1昇降部とは独立して昇降可能な第2昇降部とを備えたリフトアップ装置を用いて、塔状構造物を構築する方法であって、前記第1昇降部において前記第1の要素部材の組立てを行ないながら、前記第2昇降部において、前記第2の要素部材を持ち上げる。
【0007】
また、上記課題を解決する塔状構造物の構築方法は、第1及び第2の要素部材を備えた塔状構造物の近傍に配置される垂直部材に取り付けられ、前記第1の要素部材を持ち上げる第1昇降部と、前記垂直部材に沿って昇降する昇降機構を用いて、前記第1昇降部とは独立して昇降可能な第2昇降部とを備えたリフトアップ装置を用いて、塔状構造物を構築する方法であって、前記第2昇降部に前記第1昇降部を固定した状態で、前記第1及び第2昇降部にそれぞれ取り付けた前記第1及び前記第2の要素部材を持ち上げる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塔状構造物を効率的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における塔状構造物及びリフトアップ装置の説明図であって、(a)は塔状構造物の斜視図、(b)はリフトアップ装置の斜視図。
【
図2】第1実施形態における第1昇降部の構成を説明する斜視図。
【
図3】第1実施形態における第2昇降部の構造を説明する斜視図。
【
図4】第1実施形態における第1昇降部と第2昇降部との関係の説明図であって、(a)は分離した状態、(b)は一体的に固定した状態を示す。
【
図5】第1実施形態における塔状構造物の設置方法の説明図であって、(a)は第2昇降部を取り付けた状態、(b)は発電機タワーの中間部を持ち上げた状態、(c)は第2昇降部を取り付けた状態を示す。
【
図6】第1実施形態における塔状構造物の設置方法の説明図であって、(a)は回転体の組立てを開始した状態、(b)はナセルを配置した状態を示す。
【
図7】第1実施形態における塔状構造物の設置方法の説明図であって、(a)は回転体の組立てが終了した状態、(b)は(a)における要部の斜視図、(c)は回転体の立て起こし途中の要部の斜視図、(d)は回転体を持ち上げた状態を示す。
【
図8】第2実施形態における塔状構造物の設置方法の説明図であって、(a)は第1昇降部を第2昇降部に固定した状態、(b)は回転体の組立て途中の状態、(c)はナセルを第2昇降部に取り付けた状態、(d)は回転体とナセルとを持ち上げた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図7を用いて、リフトアップ装置及び塔状構造物の構築方法を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態では、塔状構造物としての風力発電機の構築方法について説明する。
【0011】
図1(a)に示すように、本実施形態で構築する対象の風力発電機10は、基礎の上に設置された発電機タワー11と、この発電機タワー11の上に取り付けられたナセル12と、このナセル12に取り付けられた回転体13とを備える。回転体13は、ハブ13hと3枚のブレード13bとを備える。また、発電機タワー11は、複数の長さの筒体で構成されている。ここでは、発電機タワー11は、最下部11a、中間部11b及び最上部11cから構成される。
【0012】
図1(b)に示すように、風力発電機10を構築するために用いるリフトアップ装置は、ガイドタワー20と、このガイドタワー20に取り付けられる昇降ステージ30とを備える。ガイドタワー20は、発電機タワー11の近傍で、発電機タワー11を囲むように設けられており、垂直部材として機能する。ガイドタワー20は、発電機タワー11の周囲に立設された支柱21,22,23,24を備える。各支柱21~24は、四角柱形状を成すトラス構造により構成される。各支柱21~24は、隣接する支柱21~24と複数のトラス梁25等によって連結される。
【0013】
更に、ガイドタワー20の各支柱21~24と、発電機タワー11との間には、複数の支持機構26を設ける。各支持機構26は、上下方向に離間して取り付ける。複数の支持機構26を介して、ガイドタワー20は発電機タワー11に支持される。
【0014】
本実施形態の昇降ステージ30は、第1昇降部31及び第2昇降部40を備える。第1昇降部31と第2昇降部40は、ガイドタワー20に対して反対側に配置される。具体的には、第1昇降部31は、支柱21,22に取り付けられており、第2昇降部40は、支柱23,24に取り付けられる。
【0015】
<第1昇降部の構成>
図2に示すように、第1昇降部31は、同じ形状をした1対(2つ)の第1ユニット部材32と、これら第1ユニット部材32を連結し取り外し可能な連結部35とを備える。
【0016】
第1ユニット部材32は、垂直方向に延在する垂直フレーム32aを備える。この垂直フレーム32aの下端部及び上端部には、連結フレーム32b及び水平フレーム32cの一端部が延在して固定される。連結フレーム32bと水平フレーム32cは、垂直フレーム32aに対して反対の水平方向に延在する。連結フレーム32bは、その端部が、第2昇降部40の後述する垂直部41aの下端部に固定可能な長さを有する。更に、第1ユニット部材32は、斜材32sを有する。この斜材32sは、水平フレーム32cの中央下面と、垂直フレーム32aの下端部とを連結する。
【0017】
水平フレーム32cの上面には、ステージフレーム32dが固定される。このステージフレーム32dの垂直フレーム32a側の端部は、水平フレーム32cの垂直フレーム32a側の端部よりも、垂直フレーム32aより離れた位置に設けられている。これにより、水平フレーム32cの上面部とステージフレーム32dの側端部とで、嵌合部としての段部31fが形成される。
【0018】
第1ユニット部材32の垂直フレーム32a、水平フレーム32c及びステージフレーム32dは、トラス構造により構成される。更に、ステージフレーム32dの上面には、板部材の走行部33を備える。この走行部33には、着脱可能な取付フレーム50の台車51が載置される。走行部33に沿って台車51を走行させることにより、取付フレーム50は水平方向(横方向)に移動する。取付フレーム50の詳細は、後述する。
【0019】
第1昇降部31の連結部35は、第1ユニット部材32のステージフレーム32d同士を連結する。更に、第1ユニット部材32には、連結部35と、垂直フレーム32a側のステージフレーム32dとに渡る補強部36が設けられている。連結部35及び補強部36は、トラス構造により構成される。補強部36は連結部35が取り外されるときには同時に取り外される。また、連結部35の中央には、円形のテーブル39が、着脱可能に設置される。このテーブル39は、回転体13を組み立てる組立台として用いられる。
【0020】
<第2昇降部の構成>
図3に示すように、第2昇降部40は、同じ形状をした1対(2つ)の第2ユニット部材41と、これら第2ユニット部材41を連結する連結部42とを備える。1対の第2ユニット部材41は、第1昇降部31の1対の第1ユニット部材32と同じ間隔で離間している。
【0021】
第2ユニット部材41は、垂直部41aと水平部41bとからなる略T字形状のフレームと、斜材40sとを備える。この垂直部41aは、第1昇降部31の垂直フレーム32aとほぼ同じ長さを有する。斜材40sは、垂直部41aの下端部と、水平部41bの端部のそれぞれとを連結する。第2ユニット部材41の垂直部41a及び水平部41bと連結部42とは、四角柱形状を成すトラス構造により構成される。
【0022】
各第2ユニット部材41の垂直部41aは、第2昇降部40を昇降させるための昇降機構45を備える。この昇降機構45は、シリンダ46及びピストン47を備えたジャッキを備える。ピストン47は、シリンダ46の下方から伸縮可能に延在して配置される。更に、シリンダ46の上端部及びピストン47の下端部には、ピン45aを備える。このピン45aは、支柱23,24側に突出可能である。ここでは、一方のピン45aを突出させて、支柱23,24のトラス梁の孔に係合させた状態で、他方のピン45aを引っ込めて、昇降機構45のジャッキのピストン47を伸縮させることを繰り返す。これにより、尺取り虫的な間欠動作により、ガイドタワー20に沿って、第2昇降部40は昇降する。この昇降機構45は、第2昇降部40に第1昇降部31が固定された状態では、第2昇降部40とともに第1昇降部31を持ち上げることが可能である。
【0023】
図4(a)に示すように、第2昇降部40の水平部41bの端部40eは、支柱22(21)より第1昇降部31側に突出する。そして、
図4(b)に示すように、この端部40eは、係合部として機能し、第1昇降部31の上部に設けられた段部31fに嵌合する。そして、端部40eの下弦材は、第1昇降部31の水平フレーム32cのトラス構造の上弦材に整合するように配置される。更に、端部40eの側面部は、第1昇降部31のステージフレーム32dの端面と整合する。
【0024】
また、
図3に示す第2ユニット部材41の水平部41bの上面に、板部材で構成される走行部43を設ける。この走行部43上には、取付フレーム50の台車51が載置されており、取付フレーム50が水平方向(走行部43の延在方向)に移動可能となる。第1昇降部31が第2昇降部40に一体固定された場合、走行部43の走行面(上面)と、第1昇降部31の走行部33の走行面(上面)とは面一になる。
【0025】
<取付フレーム50の構成>
図3に示す取付フレーム50は、複数の車輪が取り付けられた台車51、1対の門型フレーム53,54と、1対の小梁55、治具取付梁56、取付部材53a,54a及びチェーンブロック58,59を備える。台車51は、各走行部(33,43)の板部材上にそれぞれ配置され、走行部(33,43)の延在方向に走行する。
【0026】
1対の台車51を跨ぐように、門型フレーム53,54が、台車51の上面に、離間して固定されている。各門型フレーム53,54は、1対の柱部と、これら柱部の上端部を連結する大梁とを備える。各門型フレーム53,54の柱部のそれぞれは、各台車51の端部に立設される。更に、門型フレーム53の大梁は、中央で分割できるように結合されている。
【0027】
更に、これら門型フレーム53,54の大梁の上面には、これらを連結する1対の小梁55が着脱可能に取り付けられる。1対の小梁55の間には、治具取付梁56が取り付けられる。治具取付梁56の下部には、吊り下げ部としての吊り治具(図示せず)が、治具取付梁56の延在方向に沿って移動可能に取り付けられる。
【0028】
各門型フレーム53,54を構成する柱は、その上面に取付部材53a,54aを備える。各取付部材53a,54aは、取付柱と、この取付柱の上端部に設けられ取付柱を中心として回転可能な横梁とを備える。各横梁の下部には、横梁の延在方向に沿って摺動可能なチェーンブロック58,59を備える。
【0029】
<風力発電機の設置方法>
次に、
図5~
図7を用いて、上述した構成のリフトアップ装置を用いて風力発電機を設置する方法について説明する。
【0030】
(発電機タワー11の設置)
まず、
図5を用いて、発電機タワー11の設置方法について説明する。
図5(a)に示すように、地面に設置した基礎部に、発電機タワー11の最下部11aを立設する。そして、発電機タワー11の最下部11aを囲むように、ガイドタワー20の各支柱21~24の最上部21a,22a,23a,24a及び中間部21b,22b,23b,24bをそれぞれ接続して配置する。
【0031】
次に、ガイドタワー20の支柱21~24に、第2昇降部40を取り付ける。ここでは、昇降機構45を、支柱23,24の中間部23b,24bに対向するように取り付ける。この場合、第2昇降部40の連結部42は、中間部23b,24bより外側(最下部11aと反対側)に位置する。更に、第2昇降部40の走行部43に、取付フレーム50を取り付ける。
【0032】
次に、
図5(b)に示すように、取付フレーム50の治具取付梁56の吊り治具に、中間部11bを吊るし、昇降ステージ30の昇降機構45を動作させて、第2昇降部40を上昇させる。
【0033】
そして、ガイドタワー20の最上部まで上昇させた後、中間部11bを、取付フレーム50のチェーンブロック58,59に付け替える。次に、取付フレーム50を水平移動させて、中間部11bを、最下部11aの真上に移動させる。そして、最下部11aの上に中間部11bを接続する。その後、取付フレーム50を水平移動させて、第2昇降部40を降下させる。
【0034】
次に、第2昇降部40の昇降機構45を作動させて、中間部21b~24bを上昇させる。そして、最下部21c,22c,23c,24cを台車80に載せて移動させて、これら中間部21b,22b,23b,24bの下に挿入し、中間部21b~24bの下側に最下部21c~24cを接合する。そして、下部にトラス梁25を配置し、発電機タワー11をガイドタワー20に支持する支持機構26を配置する。
上述した工程を繰り返して、発電機タワー11及びガイドタワー20を必要な高さまで構築する。
【0035】
(第1昇降部31の取付)
次に、
図5(c)に示すように、支柱21,22に、第1昇降部31を取り付ける。この場合、垂直フレーム32aを、それぞれ支柱21,22に沿って配置する。更に、1対の第1ユニット部材32の間に連結部35及び補強部36を配置し、第1ユニット部材32同士を連結部35で連結する。
【0036】
(回転体13の組立て開始)
そして、
図6(a)に示すように、第1昇降部31の連結部35の上に、テーブル39を設置する。次に、テーブル39上に、回転体13のハブ13hを設置し、ブレード13bを取り付ける。また、ナセル12を、第2昇降部40の取付フレーム50の吊り治具に吊るす。
【0037】
(ナセル12の設置)
図6(b)に示すように、ナセル12を、発電機タワー11の最上部11cまで持ち上げて取り付けた後で、第2昇降部40を降下させる。この間、第1昇降部31では、回転体13の組立て作業を行なう。
【0038】
(回転体13の設置)
組立てが終了した回転体13を設置する場合、第2昇降部40に第1昇降部31を固定する。具体的には、
図4(b)に示すように、第2昇降部40を第1昇降部31まで降下させる。そして、第2昇降部40の端部40eを、第1昇降部31の段部31fに嵌合させる。この場合、端部40eの下弦材と、第1昇降部31のトラス構造の上弦材とを位置合わせして、ボルト(固定部材)を用いて固定する。更に、端部40eの側面部と、ステージフレーム32dの端面に位置する部材とを整合させて、ピン(固定部材)を用いて固定する。これにより、走行部33と走行部43とが面一に連結される。更に、連結フレーム32bの側端部を、垂直部41aの下端部に取り付ける。以上により、第1昇降部31と第2昇降部40とが一体化される。
【0039】
その後、
図7(a)に示すように、第1昇降部31に取付フレーム50を取り付ける。そして、
図7(b)に示すように、テーブル39に載置した回転体13を、取付フレーム50の吊り治具に取り付ける。この吊り治具は、ハブ13hの外周部(重心の真上からずれした位置)に設けられている。具体的には、回転体13を立て起こした場合、ナセル12への取付時の傾きとなる位置で、回転体13を吊るす。
【0040】
その後、門型フレーム54から外部に突出したブレード13b(回転体13を立て起こした場合に下方になるブレード13b)の先端部を、ワイヤW1を介して、クレーン(図示せず)で支持する。
【0041】
次に、第1昇降部31の第1ユニット部材32から、テーブル39、連結部35及び補強部36を取り外す。この場合、
図4(b)に示すように、第1ユニット部材32同士は、連結フレーム32b及び第2昇降部40を介して連結される。
【0042】
また、吊り下げられた回転体13は、吊り位置と重心との関係で鉛直状態に立て起きようとするが、ワイヤW1を介してクレーンに牽引されるため、水平状態を維持する。
そして、第2昇降部40の昇降機構45を駆動させて、昇降ステージ30を上昇させる。この場合、
図7(c)に示すように、ブレード13bはワイヤW1により牽引されながら、回転体13の吊り位置が上昇する。そして、介錯されたブレード13bの先端が回転体13の下方となるように徐々に回転して、回転体13が立て起こされる。
【0043】
その後、
図7(d)に示すように、昇降ステージ30を発電機タワー11の最上部まで持ち上げる。この場合、回転体13は、ナセル12への取付時の傾きとなる。そして、持ち上げた回転体13を、チェーンブロック58,59に付け替えた後、取付フレーム50を水平移動させて、回転体13をナセル12に取り付ける。
そして、昇降ステージ30を降下させて、昇降ステージ30をガイドタワー20から取り外す。そして、ガイドタワー20を解体する。
【0044】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態では、リフトアップ装置は、ガイドタワー20に設けられた第1昇降部31と第2昇降部40とを備える。これにより、第1昇降部31において、回転体13の組立てを行なっている間に、第2昇降部40を用いて、ナセル12を持ち上げて設置することができる。従って、風力発電機10を効率的に構築することができる。
【0045】
(1-2)本実施形態では、第2昇降部40に、第1昇降部31を固定して持ち上げる。これにより、第1昇降部31及び第2昇降部40の昇降機構を共用できる。
(1-3)本実施形態では、第1昇降部31の上面に形成された段部31fに、第2昇降部40の端部40eを嵌合して、第1昇降部31を第2昇降部40に固定する。これにより、第2昇降部40と第1昇降部31とを強固に固定することができる。また、第2昇降部40が上側にあるので、第1昇降部31を下方に残した状態で、第2昇降部40を昇降させることができる。
【0046】
(1-4)本実施形態では、第1ユニット部材32同士は、連結フレーム32bを介して第2昇降部40に連結される。これにより、回転体13を立て起こすために連結部35を取り外しても、第1ユニット部材32同士を固定できる。
【0047】
(1-5)本実施形態では、第2昇降部40は、ガイドタワー20に対して、第1昇降部31とは反対側に配置される。これにより、ガイドタワー20を中心として第1昇降部31と第2昇降部40とを連結することができる。
【0048】
(1-6)本実施形態では、第2昇降部40の水平部41bの端部40eは、第1昇降部31の水平フレーム32cとボルトを用いて固定し、第1昇降部31のステージフレーム32dとピンを用いて固定する。これにより、第1昇降部31と第2昇降部40とを、簡単かつ垂直力に対して強固に固定することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図5及び
図8を用いて、リフトアップ装置及び塔状構造物の構築方法を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態では、上記第1実施形態と同じリフトアップ装置を用いて、同じ風力発電機10を構築するが、上記第1実施形態とは構築方法が異なる。本実施形態では、第2昇降部40のみを用いて、発電機タワー11の中間部11b及び最上部11cを持ち上げる。また、第2昇降部40と第1昇降部31とは一体固定した状態で、ナセル12及び回転体13を持ち上げる。
【0050】
具体的には、本実施形態の構築方法では、
図5(a)~
図5(c)に示すように、発電機タワー11の完成及び第1昇降部31の設置までは、上記第1実施形態と同様に行なう。
【0051】
そして、
図8(a)に示すように、ガイドタワー20の支柱21,22に取り付けられた第1昇降部31は、降下された第2昇降部40と一体化させる。ここでは、第2昇降部40の端部40eを、第1昇降部31の段部31fに嵌合させるとともに、第1昇降部31の連結フレーム32bの端部を、第2昇降部40の垂直部41aの下端部に取り付ける。
【0052】
そして、
図8(b)に示すように、第1昇降部31の連結部35上にテーブル39を設置し、このテーブル39を用いて回転体13の組立て作業を行なう。
その後、
図8(c)に示すように、回転体13の組立てが完了した場合、ナセル12を、第2昇降部40の取付フレーム50の吊り治具に吊るす。
【0053】
一方、第1昇降部31に取付フレーム50を取り付ける。また、テーブル39に載置した回転体13を取付フレーム50の吊り治具に取り付ける。そして、門型フレーム54から外部に突出したブレード13bの先端部を、ワイヤW1を介してクレーンで支持した後、テーブル39、第1昇降部31の連結部35及び補強部36を取り外す。
【0054】
次に、昇降機構45を駆動させて、昇降ステージ30を上昇させる。この場合、ブレード13bの先端が回転体13の下方となるようにワイヤW1を介してブレード13bを介錯して、回転体13が徐々に立て起こされる。
【0055】
そして、
図8(d)に示すように、昇降ステージ30の上昇により、最上部11cまで回転体13及びナセル12を持ち上げる。そして、ナセル12を、取付フレーム50のチェーンブロック58,59に付け替えた後、取付フレーム50を水平移動させて、ナセル12を最上部11cに取り付ける。このナセル12の取り付けが完了した場合には、取付フレーム50を、第2昇降部40の元の位置に水平移動させる。
【0056】
次に、
図7(d)に示すように、回転体13を、チェーンブロック58,59に付け替えた後、取付フレーム50を水平移動させて、回転体13をナセル12に取り付ける。
その後、昇降ステージ30を降下させて、取付フレーム50を取り外し、昇降ステージ30をガイドタワー20から取り外し、ガイドタワー20を解体する。
【0057】
本実施形態によれば、上記(1-2)~(1-6)と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態のリフトアップ装置は、ガイドタワー20に設けられた第1昇降部31と、昇降機構45を備え、第1昇降部31と別に持ち上げ可能な第2昇降部40とを備える。これにより、第2昇降部40を用いて、発電機タワー11の最上部11cの設置を行なうことができるとともに、回転体13と、ナセル12とを同時に持ち上げて設置することができる。
【0058】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記各実施形態では、第1昇降部31に昇降機構を設けず、第2昇降部40の昇降機構45を用いて昇降させたが、第1昇降部31の昇降方法は、第2昇降部40の昇降機構45を用いる場合に限られない。第1昇降部31自体に昇降機構を設けてもよい。
【0059】
・上記各実施形態では、第1昇降部31及び第2昇降部40をそれぞれ1つずつ備えた。第1昇降部31及び第2昇降部40の数は、1つずつに限定されない。例えば、昇降機構を備えない第1昇降部31を複数、設けてもよい。この場合、複数の第1昇降部31を、昇降機構45を備えた第2昇降部40に、選択的に又は順番に連結する構成としてもよい。
【0060】
・上記各実施形態では、第2昇降部40を、ガイドタワー20に対して第1昇降部31の反対面に配置した。第2昇降部40と第1昇降部31との配置はこれに限られない。例えば、第2昇降部40を、ガイドタワー20に対して、第1昇降部31の側面に配置してもよい。
【0061】
・上記各実施形態では、風力発電機10のナセル12や回転体13を発電機タワー11の上まで持ち上げて設置した。構築する塔状構造物の構成によっては、塔状構造物の要素部材を途中まで持ち上げて、塔状構造物の途中に要素部材を設置してもよい。
【0062】
・上記各実施形態では、ガイドタワー20の支柱21~24を、発電機タワー11の周囲に配置した。支柱21~24の本数は4本に限定されるものではなく、3本であってもよい。また、取付フレーム50の構成は、上述した構成以外であってもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、第2昇降部40は、シリンダ46及びピストン47を備えたジャッキを備えた昇降機構45を用いて昇降させた。昇降ステージ30を昇降させる構成は、これに限らず、ワイヤ等を用いた公知の昇降機構等であってもよい。
【0064】
・上記各実施形態では、塔状構造物として風力発電機10を用いて説明した。塔状構造物は、風力発電機に限られない。例えば、電波塔等、要素部材を持ち上げて設置する構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
W1…ワイヤ、10…風力発電機、11…発電機タワー、11a…最下部、11b…中間部、11c…最上部、12…ナセル、13…回転体、13b…ブレード、13h…ハブ、20…ガイドタワー、21,22,23,24…支柱、21a,22a,23a,24a…最上部、21b,22b,23b,24b…中間部、21c,22c,23c,24c…最下部、25…トラス梁、26…支持機構、30…昇降ステージ、31…第1昇降部、31f…段部、32…第1ユニット部材、32a…垂直フレーム、32b…連結フレーム、32c…水平フレーム、32d…ステージフレーム、32s,40s…斜材、33,43…走行部、35,42…連結部、36…補強部、39…テーブル、40…第2昇降部、40e…端部、41…第2ユニット部材、41a…垂直部、41b…水平部、45…昇降機構。45a…ピン、46…シリンダ。47…ピストン、50…取付フレーム、51,80…台車、53,54…門型フレーム、53a,54a…取付部材、55…小梁、56…治具取付梁、58,59…チェーンブロック。