(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析装置の作動方法、及び眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2018185044
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-04-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、平成30年9月11日に第72回日本臨床眼科学会 プログラム・抄録集 第158頁に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】三橋 俊文
(72)【発明者】
【氏名】多々良 陽子
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216939(JP,A)
【文献】特開2009-078129(JP,A)
【文献】米国特許第07677727(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に投影されたパターン光の眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出部と、
前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析部と、
前記散乱状態解析部の解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価部と、
を備える画像解析装置。
【請求項2】
前記画像取得部が、前記パターン光として前記眼底に投影された眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光の前記撮像画像を取得し、
前記光源像検出部が、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、
前記散乱状態解析部が、前記光源像検出部が検出した前記リング像に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記散乱状態解析部が、
前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記リング像内の画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算部と、
前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記撮像画像内における前記リング像の内側及び外側の少なくとも一方に、前記リング像に沿うリング状領域を設定するリング状領域設定部と、
1つの前記リング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、前記リング状領域設定部により設定された全ての前記リング状領域の前記第2統計値を演算する第2統計値演算部と、
を備え、
前記白内障評価部が、前記第1統計値演算部及び前記第2統計値演算部の双方の演算結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する請求項2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記第1統計値演算部が、前記第1統計値として、前記リング像内の画素の画素値の合計値である第1合計値を演算し、
前記第2統計値演算部が、前記第2統計値として、前記リング状領域内の画素の画素値の合計値である第2合計値を演算する請求項3に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記光源像検出部が、
前記撮像画像内において前記リング像の仮中心を検出する仮中心検出部と、
前記リング像の前記仮中心を中心とする複数の径方向ごとに、前記径方向に沿った前記撮像画像の画像強度のプロファイルを検出するプロファイル検出部と、
前記プロファイル検出部の検出結果に基づき、前記径方向ごとに、前記径方向において前記画像強度が最大となる最大強度点を検出する最大強度点検出部と、
前記最大強度点検出部の検出結果に基づき、前記径方向ごとに、前記最大強度点を基準として前記径方向における前記リング像の内側及び外側の境界であるリング像境界点を設定するリング像境界点設定部と、
を備える請求項2から4のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記光源像検出部が検出した前記リング像を解析して前記被検眼の眼屈折力を演算する眼屈折力演算部を備える請求項2から5のいずれか1項に記載の画像解析装置。
【請求項7】
被検眼の眼底にパターン光を投影する投影光学系と、
前記眼底に投影された前記パターン光の眼底反射光を撮像して撮像画像を出力する測定光学系と、
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像解析装置と、
を備える眼科装置。
【請求項8】
被検眼の眼底にパターン光を投影して前記眼底にて反射されたパターン光の眼底反射光を撮像する測定光学系から画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した画像を解析する解析部と、を備える画像解析装置の作動方法において、
前記画像取得部が、前記測定光学系から前記眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得
工程と、
前記解析部が、前記画像取得部により取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出
工程と、
前記解析部が、前記光源像検出工程での前記光源像の検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析
工程と、
前記解析部が、前記散乱状態解析工程での前記散乱状態の解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価
工程と、
を実行する画像解析装置の作動方法。
【請求項9】
前記画像取得部が、前記画像取得工程では、前記パターン光
である眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光
を撮像した前記測定光学系から前記撮像画像を取得し、
前記解析部が、前記光源像検出工程では、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、
前記解析部が、前記散乱状態解析工程では、前記光源像検出工程での前記リング像
の検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する請求項8に記載の
画像解析装置の作動方法。
【請求項10】
前記解析部が、前記散乱状態解析工程では、
前記光源像検出工程での前記リング像の検出結果に基づき、前記リング像内に含まれる画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算
工程と、
前記光源像検出工程での前記リング像の検出結果に基づき、前記撮像画像内における前記リング像の内側及び外側の少なくとも一方に、前記リング像に沿うリング状領域を設定するリング状領域設定
工程と、
1つの前記リング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、前記リング状領域設定
工程で設定
した全ての前記リング状領域の前記第2統計値を演算する第2統計値演算
工程と、
を
実行し、
前記解析部が、前記白内障評価工程では、前記第1統計値演算
工程及び前記第2統計値演算
工程の双方の演算結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する請求項9に記載の
画像解析装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼底に投影された測定用パターンの眼底反射光の撮像画像を解析する画像解析装置及び画像解析方法と、この画像解析装置を備える眼科装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は、レンズの役目を担う水晶体が混濁することにより徐々に視力が低下していく眼疾患である。このような白内障の有無及び程度(度合い)は、被検眼の網膜にて反射された反射光の波面収差及び散乱を測定する眼科装置により検査可能である。例えば、特許文献1に記載の眼科装置は、上述の反射光を受光する受光光学系の光路中に絞りを設け、波面収差を測定する場合には絞りの径(内径)を小さくし、散乱を測定する場合には絞りの径(内径)を大きくすることで、波面収差及び散乱の双方を精度良く測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、眼科において被検眼の白内障の検査を行う場合には、上記特許文献1に記載されているような白内障の検査専用の眼科装置を用いる必要がある。このため、眼科装置の導入費用が掛かると共に眼科装置の設置スペースの確保という問題が生じる。従って、既存の眼科装置を利用した被検眼の白内障の検査の実現が強く要望されている。なお、被検眼の白内障の検査を行う場合には、反射光の微小な散乱を検出可能にする、又は混濁の強い白内障でも検査可能にすることも要望されている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、既存の眼科装置を利用した被検眼の白内障の検査を可能にする画像解析装置及び画像解析方法と、この画像解析装置を備える眼科装置と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するための画像解析装置は、被検眼の眼底に投影されたパターン光の眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出部と、前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析部と、を備える。
【0007】
この画像解析装置によれば、眼屈折力の測定パターンの眼底反射光を用いて水晶体の散乱状態を解析するので、被検眼の白内障の有無及び程度を評価することができる。また、この散乱状態の解析結果に基づき、被検眼の角膜による眼底反射光の散乱、及び被検眼の眼底(網膜)による眼底反射光の散乱あるいは網膜内拡散を評価、眼内の多重散乱・反射、すなわち迷光の評価を行うことができる。なお、パターン光としてスポット光以外の光を眼底に投影した場合には、パターン光の全体の光量を増加させることができるので、眼底反射光の微小な散乱を検出することができ、混濁の強い白内障眼を検査することもできる。
【0008】
本発明の他の態様に係る画像解析装置において、前記散乱状態解析部の解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価部を備える。
【0009】
前記画像取得部が、前記パターン光として前記眼底に投影された眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光の前記撮像画像を取得し、前記光源像検出部が、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、前記散乱状態解析部が、前記光源像検出部が検出した前記リング像に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する。これにより、既存の眼科装置を利用した白内障の検査が可能となる。
【0010】
本発明の他の態様に係る画像解析装置において、散乱状態解析部が、リング像検出部の検出結果に基づき、リング像内の画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算部と、リング像検出部の検出結果に基づき、撮像画像内におけるリング像の内側及び外側の少なくとも一方に、リング像に沿うリング状領域を設定するリング状領域設定部と、1つのリング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、リング状領域設定部により設定された全てのリング状領域の第2統計値を演算する第2統計値演算部と、を備え、白内障評価部が、第1統計値演算部及び第2統計値演算部の双方の演算結果に基づき、被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する。これにより、眼底反射光の散乱状態を解析することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る画像解析装置において、第1統計値演算部が、第1統計値として、リング像内の画素の画素値の合計値である第1合計値を演算し、第2統計値演算部が、第2統計値として、リング状領域内の画素の画素値の合計値である第2合計値を演算する。これにより、眼底反射光の散乱状態を解析することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る画像解析装置において、リング像検出部が、撮像画像内においてリング像の仮中心を検出する仮中心検出部と、リング像の仮中心を中心とする複数の径方向ごとに、径方向に沿った撮像画像の画像強度のプロファイルを検出するプロファイル検出部と、プロファイル検出部の検出結果に基づき、径方向ごとに、径方向において画像強度が最大となる最大強度点を検出する最大強度点検出部と、最大強度点検出部の検出結果に基づき、径方向ごとに、最大強度点を基準として径方向におけるリング像の内側及び外側の境界であるリング像境界点を設定するリング像境界点設定部と、を備える。これにより、撮像画像からリング像を検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る画像解析装置において、リング像検出部が検出したリング像を解析して被検眼の眼屈折力を演算する眼屈折力演算部を備える。
【0014】
本発明の目的を達成するための眼科装置は、被検眼の眼底にパターン光を投影する投影光学系と、前記眼底に投影された前記パターン光の眼底反射光を撮像して撮像画像を出力する測定光学系と、上述の画像解析装置と、を備える。
【0015】
本発明の目的を達成するための画像解析方法は、被検眼の眼底に投影されたパターン光の眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップで取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出ステップと、前記光源像検出ステップの検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析ステップと、を有する。
【0016】
本発明の他の態様に係る画像解析方法において、前記散乱状態解析ステップの解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価ステップを有する。
【0017】
本発明の他の態様に係る画像解析方法において、前記画像取得ステップが、前記パターン光として前記眼底に投影された眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光の前記撮像画像を取得し、前記光源像検出ステップが、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、前記散乱状態解析ステップが、前記光源像検出ステップで検出した前記リング像に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する。
【0018】
本発明の他の態様に係る画像解析方法において、散乱状態解析ステップが、リング像検出ステップの検出結果に基づき、リング像内に含まれる画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算ステップと、リング像検出ステップの検出結果に基づき、撮像画像内におけるリング像の内側及び外側の少なくとも一方に、リング像に沿うリング状領域を設定するリング状領域設定ステップと、1つのリング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、リング状領域設定ステップで設定された全てのリング状領域の第2統計値を演算する第2統計値演算ステップと、を有し、白内障評価ステップが、第1統計値演算ステップ及び第2統計値演算ステップの双方の演算結果に基づき、被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、既存の眼科装置を利用した被検眼の白内障の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】光学系及び制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】仮中心検出部による仮中心の検出を説明するための説明図である。
【
図5】プロファイル検出部によるリング像の径方向ごとのプロファイル検出処理を説明するための説明図である。
【
図6】プロファイル検出部により検出された1つのプロファイルの一例を示した説明図である。
【
図7】リング像検出部により検出されたリング像を説明するための説明図である。
【
図8】第1統計値演算部による合計値I
0の演算方法(第2統計値演算部による合計値I
1,I
2の演算方法)の一例を説明するための説明図である。
【
図9】リング状領域設定部によるリング状領域の設定を説明するための説明図である。
【
図10】眼科装置による被検眼の白内障の評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】眼科装置による被検眼の白内障の評価処理の変形例を説明するための説明図である。
【
図12】眼科装置による被検眼の白内障の評価処理の変形例を説明するための説明図である。
【
図13】測定用パターン投影光学系及び測定光学系の変形例を示した概略図である。
【
図14】被検眼の眼底に対してリング状以外の他の形状のパターン光を投影した場合の撮像画像の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[眼科装置]
図1は、本発明の眼科装置10の概略図である。
図1に示すように、眼科装置10は、被検眼Eの眼特性として少なくとも眼屈折力を測定するオートレフラクトメータ及びオートレフケラトメータ等である。この眼科装置10は、被検眼Eの眼屈折力の他に、被検眼Eの白内障の検査(測定)機能を有する。眼科装置10は、ベース12と、顔受け部13と、架台14と、測定ヘッド15と、を備える。
【0022】
なお、図中のX軸方向は被検者を基準とした左右方向(被検眼Eの眼幅方向)であり、Y軸方向は上下方向であり、Z軸方向は被検者(被検眼E)に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)である。
【0023】
顔受け部13は、測定ヘッド15のZ軸方向の前方向側の位置において、ベース12と一体に設けられている。この顔受け部13は、Y軸方向に位置調整可能な顎受け13a及び額当て13bを有しており、眼科装置10による測定時(検査時)に被検者の顔を支持する。
【0024】
架台14は、ベース12上に設けられており、ベース12に対してXZ軸の各方向(前後左右方向)に移動可能である。この架台14上には、測定ヘッド15及び操作レバー16が設けられている。
【0025】
操作レバー16は、架台14上で且つ測定ヘッド15のZ軸方向の後方向側(オペレータ側)の位置に設けられており、測定ヘッド15をXYZ軸の各方向に移動させる際に操作される操作部材である。例えば、操作レバー16がZ軸方向(前後方向)又はX軸方向(左右方向)に傾倒操作されると、不図示の電動駆動機構により測定ヘッド15がZ軸方向又はX軸方向に移動される。また、操作レバー16がその長手軸周りに回転操作されると、その回転操作方向に応じて不図示の昇降機構により測定ヘッド15がY軸方向(上下方向)に移動される。なお、操作レバー16の頂部には、眼科装置10による被検眼Eの測定を開始させるための測定ボタンが設けられている。
【0026】
測定ヘッド15は、被検眼Eの眼屈折力の測定機能を有している。この眼屈折力の測定機能は、詳しくは後述するが被検眼Eの白内障の検査にも利用される。測定ヘッド15のZ軸方向後方側の面にはモニタ17が設けられている。また、測定ヘッド15内には、眼屈折力の測定に対応した光学系18(撮像素子、各種光源、及び各種駆動部を含む)と、制御装置20と、が設けられている。
【0027】
モニタ17は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置である。このモニタ17は、測定ヘッド15のアライメント等に利用される被検眼Eの前眼部の観察像、測定ヘッド15により得られた被検眼Eの眼屈折力の測定結果、後述の被検眼Eの白内障の検査結果、及び測定に係る操作(設定)を行うための入力画面等を表示する。
【0028】
図2は、光学系18及び制御装置20の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、光学系18は、固視標投影光学系22と、観察光学系24と、アライメント光学系26と、測定用パターン投影光学系28と、測定光学系30と、を備える。なお、各光学系の詳細構成については公知技術であるので、ここでは具体的な説明を省略する。
【0029】
固視標投影光学系22は、被検眼Eを固視又は雲霧させるために、被検眼Eの眼底に固視標の視標光を投影する。観察光学系24は、被検眼Eの前眼部の観察するためのものであり、前眼部を撮像素子等で撮影して得られた観察像の画像データを制御装置20に出力する。これにより、制御装置20によってモニタ17に前眼部の観察像が表示される。
【0030】
アライメント光学系26は、被検眼Eに対する測定ヘッド15のアライメント状態を検出するために設けられている。このアライメント光学系26は、各種のアライメント指標光(輝点像等)を被検眼Eに向けて投影する。これにより、被検眼Eの角膜にて反射されたアライメント指標光の戻り光が既述の観察光学系24により撮像される。そして、この観察光学系24により得られた戻り光の撮像画像データ(図示は省略)に基づき、検者による手動アライメント、又は制御装置20による自動アライメントが実行される。
【0031】
測定用パターン投影光学系28は、本発明の投影光学系に相当するものであり、被検眼Eの眼底にリング状の測定用パターン(本発明のパターン光に相当)を投影する。これにより、被検眼Eの眼底に投影されたリング状の測定用パターンの眼底反射光(戻り光ともいう)が、測定光学系30で受光される。この眼底反射光は、被検眼Eの眼屈折力によりその形状が歪められる。被検眼Eが白内障眼である場合にはその程度に応じて、測定用パターンの投影時、及び眼底反射光の検出時に、水晶体での散乱の影響を受けた像が観察される。
【0032】
測定光学系30は、被検眼Eの眼底にて反射された測定用パターンの眼底反射光を撮像素子で撮像(受光)して、この眼底反射光の撮像画像32の画像データを得る。撮像画像32には、眼底反射光に基づくリング像34(本発明の光源像に相当)が含まれている。そして、測定光学系30は、撮像画像32の画像データを制御装置20へ出力する。なお、光源像とは測定用パターン投影光学系28(光源)により形成される像である。
【0033】
制御装置20は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路である。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processing unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置20の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0034】
制御装置20には、操作レバー16と、モニタ17と、既述の光学系18の各部と、記憶部40と、が接続されている。この制御装置20は、上述の演算回路によって実現、或いは演算回路がソフトウェア等を実行することにより実現される統括制御回路36と画像解析回路38とを含む。記憶部40には、制御装置20の動作用のプログラム42、被検眼Eの眼屈折力等の測定データ、及び被検眼Eの白内障の検査結果などが記憶される。なお、記憶部40は、眼科装置10の外部(例えばインターネット上のサーバ)に設けられていてもよい。
【0035】
統括制御回路36は、記憶部40に予め記憶されたプログラム42を実行することにより、光学系18を含む眼科装置10の各部の動作(例えば、前眼部の観察像の取得と表示、自動アライメント、及び撮像画像32の取得等)を統括制御する。
【0036】
画像解析回路38は、本発明の画像解析装置に相当するものであり、記憶部40内のプログラム42を実行することにより、測定パターンの眼底反射光の撮像画像32の画像解析を行って被検眼Eの眼屈折力を演算する。また、画像解析回路38は、上述の撮像画像32を解析して、この眼底反射光の散乱状態を示す指標を求めることで、被検眼Eの白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する。
【0037】
具体的に画像解析回路38は、眼底反射光の散乱状態を示す指標として、リング像34の画素値の合計値と、リング像34の内側のリング状領域64の画素値の合計値と、リング像34の外側のリング状領域66の画素値の合計値と、を演算する(
図9参照)。そして、画像解析回路38は、各画素値のそれぞれの合計値に基づき、被検眼Eの白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する。
【0038】
[画像解析回路の構成]
図3は、画像解析回路38の機能ブロック図である。
図3に示すように、画像解析回路38は、既述のプログラム42を実行することにより、画像取得部46、リング像検出部48、第1統計値演算部50、リング状領域設定部52、第2統計値演算部54、白内障評価部56、及び眼屈折力演算部58として機能する。なお、本実施形態において「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0039】
画像取得部46は、測定光学系30に有線接続又は無線接続された画像入力インターフェースである。この画像取得部46は、測定光学系30から撮像画像32の画像データを取得し、この画像データをリング像検出部48へ出力する。
【0040】
リング像検出部48は、本発明の光源像検出部に相当するものであり、撮像画像32の画像データを解析して、この撮像画像32内に含まれるリング像34を検出する。このリング像検出部48は、仮中心検出部48aと、プロファイル検出部48bと、最大強度点検出部48cと、リング像境界点設定部48dとして機能する。
【0041】
図4は、仮中心検出部48aによる仮中心CVの検出を説明するための説明図である。
【0042】
図4に示すように、仮中心検出部48aは、撮像画像32内のリング像34の仮中心CV(概略中心ともいう)を検出する。
図4の符号4Aに示すように、仮中心検出部48aは、例えばリング像34(撮像画像32)に対してエッジ検出処理を行ってリング像34の概略形状を検出する。次いで、
図4の符号4Bに示すように、仮中心検出部48aは、エッジ検出処理により得られたリング像34の概略形状に基づき、このリング像34の重心位置を仮中心CVとして検出する。
【0043】
なお、仮中心CVの検出方法は上記方法に限定されるものではなく、公知の円又は楕円の中心検出法を用いて仮中心CVを検出してもよい。また、検者が操作レバー16又はタッチパネル式のモニタ17等を操作して指定した撮像画像32内の箇所を仮中心CVとして検出してもよい。
【0044】
図5は、プロファイル検出部48bによるリング像34の径方向rごとのプロファイル検出処理を説明するための説明図である。
図6は、プロファイル検出部48bにより検出された1つのプロファイル60の一例を示した説明図である。
図5に示すように、プロファイル検出部48bは、仮中心CVを中心とするリング像34の複数の径方向r(半径方向)ごとに、径方向rに沿った撮像画像32の画像強度[撮像画像32の画素の画素値(輝度値)]のプロファイル60を検出する。
【0045】
図5の符号5Aに示すように、プロファイル検出部48bは、例えば図中のX軸右方向に対応する径方向rを第1番目の径方向rとして、この第1番目の径方向rのプロファイル60を検出する。次いで、プロファイル検出部48bは、仮中心CVを中心として、第1番目の径方向rから例えば5°(5°以外でも可)間隔ごとにプロファイル60の検出を繰り返し実行する。これにより、
図5の符号5Bに示すように、仮中心CVを中心とする複数の径方向rごとのプロファイル60が検出される。なお、図中では、図面の煩雑化を防止するため、径方向rの数を実際よりも少ない数で表している。
【0046】
図6に示すように、プロファイル60は、径方向r上の位置である径方向位置と、撮像画像32の画素の画素値[I(r)]との関係を示すものであり、プロファイル検出部48bにより径方向rごとに検出される。
【0047】
図5及び
図6に示すように、最大強度点検出部48cは、プロファイル検出部48bにより検出された径方向rごとのプロファイル60に基づき、径方向rごとに、径方向rにおいて画素値が最大値となる径方向位置である最大強度点r
maxを検出する。これら径方向rごとの最大強度点r
maxは、それぞれリング像34上に位置すると推定される。
【0048】
リング像境界点設定部48dは、最大強度点検出部48cによる径方向rごとの最大強度点rmaxの検出結果に基づき、径方向rごとに、最大強度点rmaxを基準(中心)としてリング像境界点r1,r2を設定する。リング像境界点r1は、径方向r上でリング像34の内側(仮中心CV側)の境界位置を示す点である。また、リング像境界点r2は、径方向r上でリング像34の外側(内側とは反対側)の境界位置を示す点である。例えば、リング像境界点設定部48dは、最大強度点rmaxを中心として挟み角が1分(約1分を含む)となる配置[r2=-r1=1(分)]でリング像境界点r1,r2を設定する。この1分という量は、幾何光学像として収差を含む太さであり、また光源(測定用パターン投影光学系28からの測定パターン光)がさらにリングとしての太さを持つ場合に大きく設定する場合もある。
【0049】
図7は、リング像検出部48により検出されたリング像34を説明するための説明図である。
図7に示すように、リング像境界点設定部48dにより径方向rごとに設定されたリング像境界点r
1,r
2に基づき、撮像画像32内のリング像34の位置範囲及び形状(図中、点線で表示)が定まる。これにより、リング像検出部48によるリング像34の検出が完了する。
【0050】
既述の
図3に示した第1統計値演算部50、リング状領域設定部52、及び第2統計値演算部54は、本発明の散乱状態解析部を構成するものであり、既述の測定パターンの眼底反射光の散乱状態を示す視標となる値(後述の合計値I
0,I
1,I
2)を解析する。
【0051】
第1統計値演算部50は、リング像検出部48によるリング像34の検出結果に基づき、リング像34内の画素の画素値の合計値である合計値I0(本発明の第1統計値及び第1合計値に相当)を演算する。
【0052】
図8は、第1統計値演算部50による合計値I
0の演算方法(後述の第2統計値演算部54による合計値I
1,I
2の演算方法)の一例を説明するための説明図である。
図8及び既述の
図7に示すように、第1統計値演算部50は、径方向rごとに、径方向r上のリング像34の画素の画素値の合計値(リング像境界点r
1,r
2間の画素の画素値の合計値)である径方向合計値i
0を演算する。そして、第1統計値演算部50は、径方向rごとの径方向合計値i
0を合計して合計値I
0を演算し、この合計値I
0の演算結果を白内障評価部56へ出力する。
【0053】
なお、第1統計値演算部50は、径方向rごとの径方向合計値i0を演算する代わりに、リング像34内の全ての画素の画素値を合計して合計値I0を演算してもよい。
【0054】
図9の符号9Aは、リング状領域設定部52によるリング状領域64,66の設定を説明するための説明図である。なお、
図9の符号9Bは、符号9Aで示す撮像画像32内のリング像34及びリング状領域64,66のみを示した図である。
【0055】
図9及び既述の
図6に示すように、リング状領域設定部52は、リング像検出部48によるリング像34の検出結果に基づき、撮像画像32内のリング像34の内側にリング像34に沿うリング状領域64を設定し、且つリング像34の外側にリング像34に沿うリング状領域66を設定する。換言すると、リング状領域設定部52は、撮像画像32内からリング状領域64,66の検出を行う、すなわち撮像画像32内からリング像34とは別の散乱光領域(水晶体での散乱の影響を受けた領域)であるリング状領域64,66を検出する散乱光領域検出部(散乱光検出部)として機能する。
【0056】
具体的に、リング状領域設定部52は、既述の径方向rごとの最大強度点rmaxの検出結果に基づき、径方向rごとに、最大強度点rmaxを基準(中心)として、リング状領域境界点ti1及びリング状領域境界点to1を設定する。リング状領域境界点ti1は、径方向rにおけるリング状領域64の外側の境界である。また、リング状領域境界点to1は、径方向rにおけるリング状領域66の内側の境界である。例えば、リング状領域設定部52は、最大強度点rmaxを中心として挟み角が5分(約5分を含む)よりも大きくなる配置[to1=-ti1>5(分)]でリング状領域境界点ti1,to1を設定する。
【0057】
また、リング状領域設定部52は、径方向rごとに、最大強度点rmaxを基準(中心)として、リング状領域境界点ti2及びリング状領域境界点to2を設定する。リング状領域境界点ti2は、径方向rにおけるリング状領域64の内側の境界である。また、リング状領域境界点to2は、径方向rにおけるリング状領域66の外側の境界である。例えば、リング状領域設定部52は、最大強度点rmaxを中心として挟み角が10分(約10分を含む)よりも大きくなる配置[to2=-ti2>10(分)]でリング状領域境界点ti2,to2を設定する。
【0058】
リング状領域設定部52により径方向rごとに設定されたリング状領域境界点ti1,ti2に基づき、撮像画像32内でのリング状領域64の位置範囲及び形状が定まる。また、リング状領域設定部52により径方向rごとに設定されたリング状領域境界点to1,to2に基づき、撮像画像32内でのリング状領域66の位置範囲及び形状が定まる。以上で、リング状領域設定部52によるリング状領域64,66の設定が完了する。
【0059】
既述の
図8及び
図9に示すように、第2統計値演算部54は、リング状領域設定部52により設定されたリング状領域64,66に基づき、リング状領域64内の画素の画素値の合計値である合計値I
1と、リング状領域66内の画素の画素値の合計値である合計値I
2とを演算する。各合計値I
1、I
2は本発明の第2統計値及び第2合計値に相当する。
【0060】
具体的に第2統計値演算部54は、径方向rごとに径方向合計値i1及び径方向合計値i2を演算する。径方向合計値i1は、径方向rにおけるリング状領域64内の画素の画素値の合計値(リング状領域境界点ti2,ti1間の画素の画素値の合計値)である。また、径方向合計値i2は、径方向rにおけるリング状領域66内の画素の画素値の合計値(リング状領域境界点ro1,ro2間の画素の画素値の合計値)である。
【0061】
次いで、第2統計値演算部54は、径方向rごとの径方向合計値i1を合計して合計値I1を演算すると共に、径方向rごとの径方向合計値i2を合計して合計値I2を演算する。これにより、第2統計値演算部54によって、リング状領域設定部52により設定された全てのリング状領域64,66の合計値I1,I2が演算される。そして、第2統計値演算部54は、合計値I1,I2の演算結果を白内障評価部56へ出力する。
【0062】
なお、第2統計値演算部54は、径方向rごとの径方向合計値i1,i2を演算する代わりに、リング状領域64内の全ての画素の画素値を合計して合計値I1を演算し、且つリング状領域66内の全ての画素の画素値を合計して合計値I2を演算してもよい。
【0063】
図3に戻って、白内障評価部56は、第1統計値演算部50及び第2統計値演算部54の双方の演算結果である合計値I
0,I
1,I
2に基づき、被検眼Eの白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価(以下、単に白内障の評価という)する。具体的に白内障評価部56は、合計値I
0,I
1,I
2に基づき判別分析及び評価値演算を行うことで、白内障の評価を行う。
【0064】
ここで、合計値I0,I1,I2は、被検眼Eの眼底に投影された測定パターンの眼底反射光の散乱状態を示す指標(散乱状態の解析結果)となる。そして、眼底反射光の散乱度合が強いほど白内障の影響があることが知られている(上述の特許文献1参照)。このため、合計値I0,I1,I2で構成される三次元空間において、例えば、公知の判別分析により正常眼と白内障眼とを判別する境界面(閾値)を得ることで、白内障の有無及び程度を予想することができる。従って、白内障評価部56は、判別分析法を用いることで、合計値I0,I1,I2に基づき白内障の評価を行うことができる。
【0065】
また、白内障評価部56は、合計値I0,I1,I2に基づき、例えば下記の[数1]式で表される関数を用いて被検眼Eの白内障の有無及び程度を示す評価値hを演算することにより、白内障の評価を行うことができる。
【0066】
【0067】
上記[数1]式における[ki、αi、xi](i=1~2)は、合計値I1,I2のそれぞれの領域のバイアス成分の除去、重み、及び非線形性を決める乗数である。なお、In(n=0~2)及びhは対数化されていてもよい。また、合計値I0,I1,I2を撮像画像32から求める場合に、合計値I0,I1,I2をそれぞれの領域の画素数等で割ることにより、平均値としての評価量、すなわち選択された領域の大きさによらず統一された評価量を得ることも考えられる。
【0068】
白内障評価部56は、判別分析及び評価値演算を行って得られた白内障の評価結果を、記憶部40に記憶させると共にモニタ17に表示させる。
【0069】
眼屈折力演算部58は、リング像検出部48によるリング像34の検出結果に基づき、リング像34に近似する近似楕円の形状(長径、短径、及び軸角度)を解析することで、被検眼Eの眼屈折力を演算する。なお、眼屈折力の具体的な演算方法については公知技術であるため(例えば特許2937373号公報参照)、ここでは具体的な説明は省略する。
【0070】
[本実施形態の眼科装置の作用]
図10は、上記構成の眼科装置10による本発明の画像解析方法を用いた被検眼Eの白内障の評価処理の流れを示すフローチャートである。なお、被検眼Eに対する測定ヘッド15のアライメント及び被検眼Eの固視又は雲霧については公知技術であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
図10に示すように、測定用パターン投影光学系28による被検眼Eの眼底に対する測定用パターンの投影と、測定光学系30による測定用パターンの眼底反射光の撮像とが実行されると、測定光学系30から画像解析回路38の画像取得部46に対して撮像画像32の画像データが出力される(ステップS1)。これにより、画像取得部46が撮像画像32の画像データを取得して、この画像データをリング像検出部48へ出力する(ステップS2、本発明の画像取得ステップに相当)。
【0072】
リング像検出部48が撮像画像32を取得すると、既述の
図4に示したように、仮中心検出部48aによる仮中心CVの検出(ステップS3)が実行される。次いで、既述の
図5及び
図6に示したように、プロファイル検出部48bによるリング像34の径方向rごとのプロファイル60の検出(ステップS4)と、最大強度点検出部48cによる径方向rごとの最大強度点r
maxの検出(ステップS5)と、リング像境界点設定部48dによる径方向rごとのリング像境界点r
1,r
2の設定(ステップS6)と、が実行される。その結果、既述の
図7に示したように、リング像検出部48によって撮像画像32内からリング像34が検出される。なお、ステップS3からステップS6までが本発明のリング像検出ステップ(光源像検出ステップ)に相当する。
【0073】
リング像34の検出が完了すると、第1統計値演算部50がリング像34内の画素の画素値の合計値I0を既述の方法で演算して、その演算結果を白内障評価部56へ出力する(ステップS7、本発明の第1統計値演算ステップに相当)。
【0074】
また、リング状領域設定部52が、既述の
図6及び
図9に示したように、撮像画像32内のリング像34の内側にリング状領域64を設定し、且つリング像34の外側にリング状領域66を設定する(ステップS8、本発明のリング状領域設定ステップに相当)。なお、ステップS8は、撮像画像32内からリング状領域64,66の検出を行う、すなわち撮像画像32内からリング像34とは別の散乱光領域であるリング状領域64,66を検出する散乱光領域検出ステップ(散乱光検出ステップ)ともいえる。
【0075】
次いで、第2統計値演算部54が、既述の方法でリング状領域64内の画素の画素値の合計値I1とリング状領域66内の画素の画素値の合計値I2とを演算して、各合計値I1、I2の演算結果を白内障評価部56へ出力する(ステップS9、本発明の第2統計値演算ステップに相当)。なお、ステップS7からステップS9までが本発明の散乱状態解析ステップに相当する。
【0076】
そして、白内障評価部56が、第1統計値演算部50から入力された合計値I0と、第2統計値演算部54から入力された合計値I1及び合計値I2とに基づき、判別分析と上記[数1]式を用いた評価値hの演算とを行うことで、被検眼Eの白内障を評価する(ステップS10、本発明の白内障評価ステップに相当)。そして、白内障の評価結果は記憶部40に記憶されると共にモニタ17に表示される(ステップS11)。この白内障の評価結果に基づき、被検眼Eの白内障の有無及び程度(視力予想値)を判別することができる。
【0077】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、眼屈折力の測定パターンの眼底反射光の撮像画像32を画像解析して眼点反射光の散乱状態を解析する、すなわち合計値I0,I1,I2を演算することにより、被検眼Eの白内障の評価を行うことができる。その結果、レフラクトメータ及びオートレフケラトメータ等の眼科に常設されている既存の眼科装置10を利用して、被検眼Eの白内障の検査を行うことができる。また、本実施形態では、リング状の測定パターンを眼底に投影することで、スポット光を眼底に投影する場合と比較して測定パターンの光量を増加させることができるため、眼底反射光の微小な散乱を検出することができる。さらに、本実施形態では、眼底反射光の散乱状態の解析結果に基づき、被検眼Eの角膜による眼底反射光の散乱、及び被検眼Eの眼底(網膜)による眼底反射光の散乱を評価、すなわち迷光の評価を行うことができる。
【0078】
[本実施形態の変形例]
図11及び
図12は、上記実施形態の眼科装置10による被検眼Eの白内障の評価処理の変形例を説明するための説明図である。なお、眼科装置10の各部の構成は、上記実施形態と同一である。
【0079】
上記実施形態では、リング状領域設定部52がリング像34の内側にリング状領域64を設定し且つリング像34の外側にリング状領域66を設定しているが、
図11及び
図12に示すように、リング状領域64及びリング状領域66のいずれか一方のみを設定してもよい。この場合、既述の第2統計値演算部54は合計値I
1,I
2のいずれか一方のみを演算し、白内障評価部56は合計値I
1,I
2のいずれか一方と合計値I
0とに基づいて、被検眼Eの白内障の評価を行う。
【0080】
この場合、合計値I1,I2のいずれか一方と合計値I0とで構成される二次元空間において、公知の判別分析により正常眼と白内障眼とを判別する境界面(閾値)を得ることで、白内障の有無及び程度を予想することができる。従って、白内障評価部56は、判別分析法を用いることで、合計値I1,I2のいずれか一方と合計値I0とに基づき白内障の評価を行うことができる。
【0081】
また、白内障評価部56は、上記[数1]式において「α1」又は「α2」をゼロにすることで、合計値I1,I2のいずれか一方と合計値I0とに基づき評価値hを演算することができる。
【0082】
[その他]
上記各実施形態では、測定用パターン投影光学系28から被検眼Eの眼底に対してリング状の測定パターンを投影し、測定光学系30にて測定パターンの眼底反射光を撮像しているが、測定用パターン投影光学系28から眼底に対して点状の測定パターンを投影し、測定光学系30にて測定パターンの眼底反射光を撮像してもよい。すなわち、測定光学系30にてリング像34を含む撮像画像32を撮像可能であれば、測定パターンの形状は特に限定されるものではない。
【0083】
図13は、測定用パターン投影光学系28及び測定光学系30の変形例を示した概略図である。なお、
図13では、測定用パターン投影光学系28及び測定光学系30の要部のみを示している。
図13に示すように、測定用パターン投影光学系28は、不図示の照明光源から出射されたリング状の測定用パターンPの光束を、ハーフミラー100を通して被検眼Eの眼底に投影する。測定光学系30は、ハーフミラー100を介して測定用パターン投影光学系28(観察光学系24)から分岐した光路を形成している。この測定光学系30は、被検眼Eの眼底に投影された測定用パターンPの眼底反射光を撮像素子102により撮像してリング像34を含む撮像画像32を出力する。
【0084】
この際に、被検眼Eの眼底に血管が存在していると、その部位は眼底反射光の反射率が低くなる傾向がある。このため、ノイズ除去を目的として、測定用パターン投影光学系28に公知のロータリプリズム104(特開平10-014876号公報参照)を配置すると共に、このロータリプリズム104を回転させることにより、眼底反射光を均一化させてもよい。
【0085】
上記実施形態では、第1統計値演算部50がリング像34内の画素の画素値の統計値として合計値I0を演算し、第2統計値演算部54がリング状領域64,66内の画素の画素値の統計値として合計値I1,I2を演算しているが、本発明の画素値の統計値は合計値に限定されるものではない。例えば各画素値の合計値を演算する代わりに、本発明の第1統計値及び第2統計値として、各画素値の平均値或いは中央値等の各種の統計値を演算してもよい。
【0086】
上記実施形態では、撮像画像32から眼底反射光の散乱状態を示す指標として合計値I0,I1,I2を解析しているが、眼底反射光の散乱状態を解析する方法は特に限定されるものではなく、例えばディープラーニング法を用いて撮像画像32から眼底反射光の散乱状態を解析してもよい。
【0087】
上記実施形態では、白内障評価部56が判別分析及び評価値hの演算を行うことで白内障の評価を行っているが、他の評価方法を用いて白内障の評価を行ってもよい。なお、上記実施形態では、画像解析回路38に白内障評価部56を設けているが、白内障評価部56については別の装置に設けられていてもよい。すなわち、白内障の影響を示す眼底反射光の散乱状態の解析までを画像解析回路38で行うようにしてもよい。
【0088】
上記実施形態では、測定用パターン投影光学系28により被検眼Eの眼底にリング状の測定用パターン(パターン光)を投影し、測定光学系30によりリング状の測定パターンの眼底反射光を撮像し、リング像検出部48より撮像画像32内からリング像34を検出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
図14は、被検眼Eの眼底(網膜)に対してリング状以外の他の形状のパターン光を投影した場合の撮像画像32の一例を説明するための説明図である。
図14に示すように、測定用パターン投影光学系28は、被検眼Eの眼底に対して、符号XIVAに示すように円形のパターン光を投影したり、符号XIVBに示すように同心円状のパターン光を投影したり、符号XIVCに示すように平行な一対の線状のパターン光を投影したりしてもよい。この場合、測定光学系30にて撮像される撮像画像32には、網膜上に投影されたパターン光に相当する光源像領域200と、白内障等の影響により広がりを持って形成される像領域であって且つ眼底反射光の散乱状態の検出に用いられる像領域である測定領域202(検出領域)とを含む。なお、被検眼Eが正常眼である場合には、測定領域202は検出されない。
【0090】
眼底に対して
図14に示した各種形状のパターン光を投影する場合、画像解析回路38は、上記実施形態の撮像画像32から光源像領域200を検出する光源像検出部(不図示)として機能し、且つ撮像画像32から測定領域202を検出して両領域200、202の検出結果に基づき眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析部(図示は省略)として機能する。
【0091】
例えば、この散乱状態解析部は、眼底反射光の散乱状態を示す指標となる値として、光源像領域200及び測定領域202の画素値の合計値等の各種統計値をそれぞれ演算する。そして、既述の白内障評価部56は、既述の判別分析法用いることで、前述の合計値の演算結果に基づき被検眼Eの白内障を評価することができる。また、白内障評価部56は、被検眼Eの白内障の有無及び程度を示す評価値hを演算する数式(関数)等を用いて評価値演算を行うことで、被検眼Eの白内障を評価することができる。
【0092】
このように白内障等の影響により広がりを持つような各種のパターン光(
図14に示したものに限定されない)を被検眼Eの眼底に投影した場合であっても、上記実施形態と同様に被検眼Eの白内障を評価することができる。
【0093】
上記各実施形態では、本発明の画像解析装置に相当する画像解析回路38が眼科装置10内に組み込まれているが、画像解析回路38が眼科装置10とは別体の演算装置(パーソナルコンピュータ及び携帯端末等)に組み込まれていてもよい。すなわち、演算装置のプロセッサ等を本発明の画像解析回路38として機能させてもよい。
【0094】
[付記]
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0095】
(付記項1)
付記項1の画像解析装置は、被検眼の眼底に投影されたパターン光の眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出部と、
前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記撮像画像から前記光源像とは異なる領域であって且つ前記被検眼内で散乱された前記眼底反射光の散乱光に対応する領域である散乱光領域を検出する散乱光領域検出部と、
前記光源像検出部及び前記散乱光領域検出部の双方の検出結果に基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析部と、を備える。
【0096】
(付記項2)
付記項2の画像解析装置は、前記散乱状態解析部の解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価部を備える付記項1の画像解析装置である。
【0097】
(付記項3)
付記項3の画像解析装置は、前記画像取得部が、前記パターン光として前記眼底に投影された眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光の前記撮像画像を取得し、
前記光源像検出部が、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、
前記散乱光領域検出部が、前記散乱光領域として、前記撮像画像内における前記リング像の内側及び外側の少なくとも一方側から、前記リング像に沿うリング状領域を検出し、
前記散乱状態解析部が、前記光源像検出部が検出した前記リング像と、前記散乱光領域検出部が検出した前記リング状領域とに基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する付記項2に記載の画像解析装置である。
【0098】
(付記項4)
付記項4の画像解析装置は、前記散乱状態解析部が、
前記光源像検出部の検出結果に基づき、前記リング像内の画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算部と、
1つの前記リング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、前記散乱光領域検出部により検出された全ての前記リング状領域の前記第2統計値を演算する第2統計値演算部と、
を備え、
前記白内障評価部が、前記第1統計値演算部及び前記第2統計値演算部の双方の演算結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する付記項3に記載の画像解析装置である。
【0099】
(付記項5)
付記項5の画像解析装置は、前記第1統計値演算部が、前記第1統計値として、前記リング像内の画素の画素値の合計値である第1合計値を演算し、
前記第2統計値演算部が、前記第2統計値として、前記リング状領域内の画素の画素値の合計値である第2合計値を演算する付記項4に記載の画像解析装置である。
【0100】
(付記項6)
付記項6の画像解析装置は、前記光源像検出部が、
前記撮像画像内において前記リング像の仮中心を検出する仮中心検出部と、
前記リング像の前記仮中心を中心とする複数の径方向ごとに、前記径方向に沿った前記撮像画像の画像強度のプロファイルを検出するプロファイル検出部と、
前記プロファイル検出部の検出結果に基づき、前記径方向ごとに、前記径方向において前記画像強度が最大となる最大強度点を検出する最大強度点検出部と、
前記最大強度点検出部の検出結果に基づき、前記径方向ごとに、前記最大強度点を基準として前記径方向における前記リング像の内側及び外側の境界であるリング像境界点を設定するリング像境界点設定部と、
を備える付記項3から5のいずれか1項に記載の画像解析装置である。
【0101】
(付記項7)
付記項7の画像解析装置は、前記光源像検出部が検出した前記リング像を解析して前記被検眼の眼屈折力を演算する眼屈折力演算部を備える付記項3から6のいずれか1項に記載の画像解析装置である。
【0102】
(付記項8)
付記項8の眼科装置は、被検眼の眼底にパターン光を投影する投影光学系と、
前記眼底に投影された前記パターン光の眼底反射光を撮像して撮像画像を出力する測定光学系と、
付記項1から7のいずれか1項に記載の画像解析装置と、
を備える。
【0103】
(付記項9)
付記項9の画像解析方法は、被検眼の眼底に投影されたパターン光の眼底反射光の撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得された前記撮像画像内から前記眼底反射光に基づく光源像を検出する光源像検出ステップと、
前記光源像検出ステップでの検出結果に基づき、前記撮像画像から前記光源像とは異なる領域であって且つ前記被検眼内で散乱された前記眼底反射光の散乱光に対応する領域である散乱光領域を検出する散乱光領域検出ステップと、
前記光源像検出ステップ及び前記散乱光領域検出ステップの双方の検出結果に基づき、
前記眼底反射光の散乱状態を解析する散乱状態解析ステップと、
を有する。
【0104】
(付記項10)
付記項10の画像解析方法は、前記散乱状態解析ステップの解析結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する白内障評価ステップを有する付記項9に記載の画像解析方法である。
【0105】
(付記項11)
付記項11の画像解析方法は、前記画像取得ステップが、前記パターン光として前記眼底に投影された眼屈折力の測定用パターンの前記眼底反射光の前記撮像画像を取得し、
前記光源像検出ステップが、前記撮像画像内から前記光源像としてリング像を検出し、
前記散乱光領域検出ステップが、前記散乱光領域として、前記撮像画像内における前記リング像の内側及び外側の少なくとも一方側から、前記リング像に沿うリング状領域を検出し、
前記散乱状態解析ステップが、前記光源像検出ステップで検出した前記リング像と、前記散乱光領域検出ステップで検出した前記リング状領域とに基づき、前記眼底反射光の散乱状態を解析する付記項10に記載の画像解析方法である。
【0106】
(付記項12)
付記項12の画像解析方法は、前記散乱状態解析ステップが、
前記光源像検出ステップの検出結果に基づき、前記リング像内に含まれる画素の画素値の統計値である第1統計値を演算する第1統計値演算ステップと、
1つの前記リング状領域内に含まれる画素の画素値の統計値を第2統計値とした場合に、前記散乱光領域検出ステップで検出された全ての前記リング状領域の前記第2統計値を演算する第2統計値演算ステップと、
を有し、
前記白内障評価ステップが、前記第1統計値演算ステップ及び前記第2統計値演算ステップの双方の演算結果に基づき、前記被検眼の白内障の有無及び程度の少なくとも一方を評価する付記項11に記載の画像解析方法。
【符号の説明】
【0107】
10…眼科装置,
28…測定用パターン投影光学系,
30…測定光学系,
32…撮像画像,
34…リング像,
36…統括制御回路,
38…画像解析回路,
46…画像取得部,
48…リング像検出部,
48a…仮中心検出部,
48b…プロファイル検出部,
48c…最大強度点検出部,
48d…リング像境界点設定部,
50…第1統計値演算部,
52…リング状領域設定部,
54…第2統計値演算部,
56…白内障評価部,
60…プロファイル,
64,66…リング状領域