(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】永久磁石回転子および回転電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20221116BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2019110214
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】595181210
【氏名又は名称】株式会社ダイドー電子
(73)【特許権者】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藪見 崇生
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/045445(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/104956(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103078464(CN,A)
【文献】特開2008-187802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、
前記ロータコアの回転軸に直交する断面において、前記永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの径方向内側に向かって凸の弧形状を有し、
かつ、
前記磁極のそれぞれを構成する前記永久磁石が、前記弧形状に沿って複数の分割域に分割されており、
前記永久磁石の磁化方向は、前記弧形状に沿って少なくとも一部の部位において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、傾斜して
おり、かつ、
前記分割域のそれぞれにおける前記永久磁石の磁化方向が、該分割域の中で平行となっており、
前記弧形状に沿って両端に位置する前記分割域において、前記永久磁石は、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向に沿った厚みが一定になっているか、前記磁化方向が前記厚み方向に向いている位置において、他の部位よりも厚みが大きくなっている、永久磁石回転子。
【請求項2】
前記永久磁石の磁化方向は、少なくとも前記弧形状の端部において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、傾斜している、請求項1に記載の永久磁石回転子。
【請求項3】
前記永久磁石の磁化方向は、前記弧形状に沿った中央部において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向と平行となっている、請求項1または2に記載の永久磁石回転子。
【請求項4】
前記磁極全体として、前記永久磁石は、半円弧形状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項5】
前記分割域のそれぞれにおいて、前記永久磁石は、円弧形状を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項6】
前記弧形状に沿って両端に位置する前記分割域において、前記永久磁石は、前記弧形状の内弧の曲率半径が外弧の曲率半径よりも大きくなった形状を有することにより、前記磁化方向が前記厚み方向に向いている位置において、他の部位よりも厚みが大きくなっている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項7】
前記分割域の分割数は2であり、
前記弧形状の焦点を通り前記ロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、
2つの前記分割域における磁化方向は、前記ロータコアの径方向外側から内側に向かって前記磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、前記磁石中心軸に対して相互に対称になっている、
請求項1から請求項6
のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項8】
2つの前記分割域における磁化方向の傾斜角度は、前記磁石中心軸に対して、30°以上、60°以下である、請求項7に記載の永久磁石回転子。
【請求項9】
前記分割域の分割数は3であり、
前記弧形状の焦点を通り前記ロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、
前記磁石中心軸に対する前記永久磁石の磁化方向の傾斜角度は、前記弧形状に沿って中央の前記分割域において、前記弧形状に沿って両端の前記分割域よりも小さくなっている、
請求項1から請求項6
のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項10】
前記弧形状に沿って中央の前記分割域における磁化方向は、前記磁石中心軸に平行であり、
前記弧形状に沿って両端の前記分割域における磁化方向は、前記ロータコアの径方向外側から内側に向かって前記磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、前記磁石中心軸に対して相互に対称になっている、請求項9に記載の永久磁石回転子。
【請求項11】
両端の前記分割域における磁化方向の傾斜角度は、前記磁石中心軸に対して、20°以上である、請求項9または10に記載の永久磁石回転子。
【請求項12】
前記永久磁石は、金属磁石である、請求項1から11のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の永久磁石回転子を有する回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石回転子および回転電気機械に関し、さらに詳しくは、ロータコアに永久磁石が埋め込まれた永久磁石回転子、および、そのような永久磁石回転子を有する回転電気機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石埋め込み(IPM)モータ等、永久磁石回転子を用いた回転電気機械においては、高効率化や小型化を目指し、出力トルクの向上が図られている。この種の回転電気機械においては、永久磁石に、粒界改質技術を導入するなど、高い磁気特性を有する磁石材料を用いることで、出力トルクを向上させることができる。また、永久磁石自体の材料特性に加え、永久磁石回転子に埋設される永久磁石の形状や配置も、回転電気機械のトルク特性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
回転電気機械の出力トルクを向上させるための永久磁石の配置の1つとして、スポーク型配置が提案されている。スポーク型配置は、例えば特許文献1に開示されており、永久磁石回転子の回転軸に垂直な断面において、回転子の半径方向に平行な2辺を有する矩形の永久磁石が、回転子の周方向に、複数配置されている。回転子の半径方向に沿った永久磁石の長さを大きくすることで、永久磁石の表面積を大きくし、磁束量を増大させることができる。その結果として、出力トルクを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
永久磁石回転子を有する回転電気機械において、性能限界を決める要因の1つに、永久磁石の不可逆的な減磁がある。例えば、固定子のコイルが発する磁界が、永久磁石の磁化方向と反対向きに、永久磁石に印加されると、逆磁界として作用し、永久磁石の不可逆減磁を引き起こす要因となる。不可逆減磁を低減する方法の1つに、永久磁石として、重希土類を多く含有するものなど、高保磁力の材料を用いることが挙げられる。
【0006】
スポーク型磁石配置をとる永久磁石回転子においては、コイルの磁界による不可逆減磁が、径方向外側(外周側)の位置で起こりやすい。そこで、特許文献1では、減磁耐力を高めるために、断面矩形の永久磁石の4つの角部のうち、固定子側、つまり回転子の径方向外側の角部が、内側よりも高い保磁力を有するようにする形態が、開示されている。そのように、1つの永久磁石の中で、局所的に保磁力の高い領域を形成する方法としては、DyやTb等の重希土類を用いた粒界拡散処理が挙げられている。
【0007】
重希土類を多く含有する高保磁力の永久磁石は、高価なものであり、不可逆減磁の抑制のために多用すると、永久磁石回転子において、材料コストが高くなってしまう。特許文献1に記載されるように、永久磁石の中に、局所的に重希土類の濃度の高い領域を設けることで、重希土類の使用量を削減することができるが、その場合にも、重希土類を使用する必要があるうえ、粒界拡散により、特殊な保磁力の分布を有する永久磁石を準備することにも、労力とコストを要する。磁石材料の高保磁力化に頼らずに、永久磁石の形状や配置を改良することで、不可逆減磁を抑制できるようにすること、さらには不可逆減磁の抑制と高出力を両立できることが、望まれる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、永久磁石の不可逆減磁を抑制しながら、高い出力トルクを得ることができる永久磁石回転子、および、そのような永久磁石回転子を有する回転電気機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる永久磁石回転子は、ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、前記ロータコアの回転軸に直交する断面において、前記永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの径方向内側に向かって凸の弧形状を有し、前記永久磁石の磁化方向は、前記弧形状に沿って少なくとも一部の部位において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、傾斜している。
【0010】
ここで、前記永久磁石の磁化方向は、少なくとも前記弧形状の端部において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、傾斜しているとよい。また、前記永久磁石の磁化方向は、前記弧形状に沿った中央部において、前記弧形状の焦点を中心とする放射方向と平行となっているとよい。前記永久磁石は、半円弧形状であるとよい。
【0011】
前記弧形状の焦点を通り前記ロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、前記永久磁石の磁化方向は、前記磁石中心軸に沿って、前記弧形状の焦点よりも前記ロータコアの径方向外側の点を中心とする、放射方向となっているとよい。
【0012】
また、前記磁極のそれぞれを構成する前記永久磁石は、前記弧形状に沿って複数の分割域に分割されており、各分割域における前記永久磁石の磁化方向は、該分割域の中で平行となっているとよい。
【0013】
この場合に、前記分割域の分割数は2であり、前記弧形状の焦点を通り前記ロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、2つの前記分割域における磁化方向は、前記ロータコアの径方向外側から内側に向かって前記磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、前記磁石中心軸に対して相互に対称になっているとよい。さらにこの場合、2つの前記分割域における磁化方向の傾斜角度は、前記磁石中心軸に対して、30°以上、60°以下であるとよい。
【0014】
あるいは、前記分割域の分割数は3であり、前記弧形状の焦点を通り前記ロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、前記磁石中心軸に対する前記永久磁石の磁化方向の傾斜角度は、前記弧形状に沿って中央の前記分割域において、前記弧形状に沿って両端の前記分割域よりも小さくなっているとよい。この場合に、前記弧形状に沿って中央の前記分割域における磁化方向は、前記磁石中心軸に平行であり、前記弧形状に沿って両端の前記分割域における磁化方向は、前記ロータコアの径方向外側から内側に向かって前記磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、前記磁石中心軸に対して相互に対称になっているとよい。また、両端の前記分割域における磁化方向の傾斜角度は、前記磁石中心軸に対して、20°以上であるとよい。
【0015】
前記永久磁石は、金属磁石であるとよい。
【0016】
本発明にかかる回転電気機械は、上記の永久磁石回転子を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
上記発明にかかる永久磁石回転子においては、ロータコアの回転軸に直交する断面において、ロータコアに埋設された永久磁石が、ロータコアの径方向内側(内周側)に向かって凸の弧形状をとっている。永久磁石が弧形状をとることで、永久磁石の表面積を大きくし、磁石磁束を増大させることができるため、大きな出力トルクを得ることが可能となる。また、永久磁石回転子においては、不可逆減磁の原因となる、外部に設けられる固定子のコイルからの逆磁界が、永久磁石の弧形状の厚み方向に印加されやすいが、永久磁石の磁化方向が、弧形状の焦点を中心とする放射方向、つまり弧形状の厚み方向に対して傾斜していることにより、不可逆減磁に対する耐性を高めることができる。このように、弧形状の永久磁石を用い、その永久磁石における磁化方向を、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して傾斜させておくことにより、不可逆減磁を抑制しながら、出力トルクを向上させることができる。
【0018】
永久磁石の配置と磁化方向の規定により、減磁耐力を向上させることで、減磁耐力の向上を目的として、重希土類を多く含有する高価な高保磁力の永久磁石を使用する必要がなくなる。また、永久磁石の厚さを小さくすることもでき、必要磁石量を低減することができる。さらに、出力トルクを高められることで、永久磁石回転子の小型化も可能となる。
【0019】
ここで、永久磁石の磁化方向が、少なくとも弧形状の端部において、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、傾斜している場合には、弧形状の端部は、弧形状の永久磁石の中で、最もロータコアの径方向外側に位置し、特に大きな逆磁界が印加されやすいため、不可逆減磁が起こりやすいが、その端部において、磁化方向が、弧形状の焦点を中心とする放射方向、つまり永久磁石の厚み方向に対して傾斜していることにより、不可逆減磁を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、永久磁石の磁化方向が、弧形状に沿った中央部において、弧形状の焦点を中心とする放射方向と平行となっている場合には、永久磁石の弧形状に沿った中央部においては、外部に設けられるコイルによって印加される磁界が弱くなるため、不可逆減磁が起こりにくい一方、弧形状の焦点を中心とする放射方向に磁化方向を向けておくことで、永久磁石からロータコアの径方向外側へと出る磁束量を、大きくすることができる。よって、不可逆減磁に対する耐性を高く保ちながら、出力トルクを高めやすくなる。
【0021】
永久磁石が半円弧形状である場合には、比較的単純な形状の永久磁石を用いて、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上を両立することができる。
【0022】
弧形状の焦点を通りロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、永久磁石の磁化方向が、磁石中心軸に沿って、弧形状の焦点よりもロータコアの径方向外側の点を中心とする、放射方向となっている場合には、永久磁石の磁化方向が、弧形状の中央部を除いて、弧形状の焦点を中心とする放射方向から外れることになる。特に、不可逆減磁が起こりやすい弧形状の端部に近い位置ほど、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対する磁化方向の傾斜角度が大きくなる。よって、永久磁石の不可逆減磁を抑制する効果に優れる。一方で、不可逆減磁が起こりにくい弧形状の中央部近傍では、磁化方向が、弧形状の焦点を中心とする放射方向に近いものとなり、永久磁石からロータコアの径方向外側へと出る磁束量が大きくなるため、出力トルクの向上に高い効果を発揮する。
【0023】
また、磁極のそれぞれを構成する永久磁石が、弧形状に沿って複数の分割域に分割されており、各分割域における永久磁石の磁化方向が、該分割域の中で平行となっている場合には、永久磁石の製造を簡便に行いながら、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、磁化方向が傾斜している状態を形成し、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上の両立を図ることができる。
【0024】
この場合に、分割域の分割数が2であり、弧形状の焦点を通りロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、2つの分割域における磁化方向が、ロータコアの径方向外側から内側に向かって磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、磁石中心軸に対して相互に対称になっている形態によれば、簡素な分割構成および磁化方向の設定により、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して、磁化方向が傾斜している状態を形成し、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上の両立を図ることができる。
【0025】
さらにこの場合、2つの分割域における磁化方向の傾斜角度が、磁石中心軸に対して、30°以上、60°以下である形態によれば、特に出力トルクを高めやすい。不可逆減磁も、小さく抑えることができる。
【0026】
あるいは、分割域の分割数が3であり、弧形状の焦点を通りロータコアの径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸として、磁石中心軸に対する永久磁石の磁化方向の傾斜角度が、弧形状に沿って中央の分割域において、弧形状に沿って両端の分割域よりも小さくなっている場合には、不可逆減磁の起こりやすい弧形状の端部側の分割域では、弧形状の焦点を中心とする放射方向に対して磁化方向を傾斜させる一方で、不可逆減磁が起こりにくい弧形状の中央部に位置する分割域では、弧形状の焦点を中心とする放射方向に磁化方向を近づけることができる。その結果、不可逆減磁抑制と、出力トルク向上の両方を、効果的に達成することができる。
【0027】
この場合に、弧形状に沿って中央の分割域における磁化方向が、磁石中心軸に平行であり、弧形状に沿って両端の分割域における磁化方向が、ロータコアの径方向外側から内側に向かって磁石中心軸から離れる方向に傾斜しており、磁石中心軸に対して相互に対称になっている形態によれば、不可逆減磁抑制および出力トルク向上の効果を、特に高めやすい。
【0028】
また、両端の分割域における磁化方向の傾斜角度が、磁石中心軸に対して、20°以上である場合には、不可逆減磁の抑制の効果を、一層高めやすい。
【0029】
永久磁石が、金属磁石である場合には、ボンド磁石等、金属磁石材料以外の材料を含有する磁石よりも、高い磁気特性を有するので、出力トルクの向上等、永久磁石回転子の出力特性を、効果的に高めることができる。弧形状への成形は、金属磁石の方が、ボンド磁石よりも行いにくいが、金属磁石材料粉末の型焼結等により、容易に達成することができる。弧形状への着磁は、磁性成分比率が高い金属磁石がボンド磁石と比較して、容易となる。
【0030】
上記発明にかかる回転電気機械は、上記の永久磁石回転子を有するため、不可逆減磁を回避しながら、大きな出力トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる永久磁石回転子および回転電気機械の構成を示す横断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態にかかる無分割型の永久磁石を備えた永久磁石回転子の一部を抜き出した断面図である。
図1の拡大図に相当する。
【
図3】本発明の第二の実施形態にかかる2分割型の永久磁石を備えた永久磁石回転子の一部を抜き出した断面図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態にかかる3分割型の永久磁石を備えた永久磁石回転子の一部を抜き出した断面図である。
【
図5】磁石内減磁率の分布を示す図であり、(a)はラジアル配向の場合、(b)は無分割型で配向角度α=40°の場合である。各図とも、保磁力Hcjを3通りに変化させている。
【
図6】磁石内減磁率の分布を示す図であり、(a)は2分割型で配向角度α=45°の場合、(b)は3分割型で配向角度α=45°の場合である。各図とも、保磁力Hcjを3通りに変化させている。
【
図7】2分割型の場合について、磁石保磁力とEMF減少率の関係を、5通りの配向角度αについて示す図である。
【
図8】(a)必要保磁力、および(b)300%定格電流通電時の出力トルクについて、配向角度αによる変化を、各形態について示す図である。(b)では、スポーク配置の場合の値を1として、規格化した値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態にかかる永久磁石回転子および回転電気機械について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、永久磁石の分割数および磁化方向の異なる3つの実施形態を例示するが、まず、各実施形態に共通する構成について説明する。
【0033】
[回転電気機械の構成]
本発明の一実施形態にかかる回転電気機械1の概略を、
図1に示す。回転電気機械1は、本発明の一実施形態にかかる永久磁石回転子10を有している。本明細書においては、回転電気機械1がモータである場合を中心に説明するが、発電機である場合にも、同様の構成を適用することができる。
【0034】
回転電気機械1は、永久磁石埋め込み(IPM)モータとして構成されている。モータ1は、中空筒状のステータ(固定子)30と、ステータ30の中空部内に、同軸状に、軸回転可能に支持されたロータ(永久磁石回転子)10と、を有している。
【0035】
ステータ30は、ステータコア31と、コイル32とを有している。ステータコア31は、複数層の電磁鋼板を積層してなるものであり、円環形状のバックヨーク部31aと、バックヨーク部31aから円環形状の内側に向かって突出した複数のティース31bを、一体に備えている。そして、各ティース31bの外周に、コイル32が巻き回されている。
【0036】
ロータ10は、略円柱状の外形を有するロータコア11と、ロータコア11に埋設された複数の永久磁石Mと、を有している。ロータコア11の中心には、中空部が形成され、シャフト40が挿通されている。ロータ10をステータ30の中空部に同軸状に収容した状態で、ステータコア31のティース31bとロータコア11の外周面の間には、エアギャップ50が確保される。ロータ10の構成の詳細について、次に説明する。
【0037】
[永久磁石回転子の構成の概略]
上記のように、ロータ(永久磁石回転子)10は、ロータコア11と、永久磁石Mとを有している。ロータ10の構成を、
図1,2に示す。
図2は、ロータ10の磁極1つ分を、両側の磁極の一部とともに示したものであり、永久磁石Mの極性を磁極ごとに交互に変えながら、複数(ここでは10個)の磁極を回転対称に連続的に配置したものが、
図1のようなロータ10の全体構造となる。なお、以下では、「周方向」「外周」「径方向」「外側」「内側」等、回転体における方向を示す語は、特記しないかぎり、ロータコア11についての方向を指すものとする。また、垂直、平行等、角度を示す概念は、この種のロータにおいて一般的に許容される程度の誤差、例えば±5°程度の範囲まで含むものとする。
【0038】
ロータコア11は、複数の電磁鋼板を積層して構成されており、略円柱形状の外周面を有している。ロータコア11には、軸方向に貫通または陥没した空隙として、スロット13が形成されている。スロット13には、それぞれ、永久磁石Mが埋設されている。なお、後に説明する第二の実施形態および第三の実施形態においては、1つのスロット13に埋設される永久磁石Mが、複数に分割され、分割域(m1およびm2,m1’~m3’)となっているが、同一のスロット13の中に、相互に隣接して埋設され、1つの磁極を構成する分割域は、1つの永久磁石Mとみなすものとして説明する。
【0039】
各磁極を構成する永久磁石Mは、ロータコア11の径方向内側(回転中心側;内周側)に向かって凸の弧形状を有している。永久磁石Mは、ロータ10の回転軸に直交する横断面において、ロータコア11の径方向内側に向かって凸な弧形状、つまりロータコア11の径方向外側(外周側)から径方向内側に向かう凸部を1つのみ有するなだらかな曲線形状を有していれば、具体的な形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、各永久磁石Mは、円弧形状、特に半円弧形状を有している。永久磁石Mは、ロータコア11の径方向外側から内側に向かって、1層のみ配置されている。
【0040】
永久磁石Mの成分組成は、特に限定されるものではないが、永久磁石Mは、金属磁石よりなっていることが好ましい。つまり、表面近傍を除き、意図的に添加された金属酸化物や有機化合物を含まず、金属磁石材料のみよりなっている。金属磁石としては、金属磁石材料の粉末を、配向させ、焼結してなる焼結磁石を例示することができる。焼結磁石としては、成形型に粉末状の金属磁石材料を充填した状態で、成形型全体に磁界を印加して、原料粒子を配向させ、雰囲気制御した焼結室で成形型ごと焼結する、プレスレス法(PLP法)によって得られたものを用いることが好ましい。
【0041】
[永久磁石における磁化方向]
本発明の実施形態にかかるロータ10においては、各磁極を構成する弧形状の永久磁石Mの磁化方向dが、弧形状に沿って少なくとも一部の部位において、弧形状の焦点fを中心とする放射方向に対して、傾斜している。つまり、永久磁石Mの磁化方向dが、弧形状に沿って少なくとも一部の部位において、弧形状の焦点fを中心とする放射方向と、異なる方向を向いている。ここで、弧形状の焦点fとは、
図2に示すように、永久磁石Mの外形を規定する図形としての弧形状、特に永久磁石Mの外側表面M1の弧形状の焦点であり、永久磁石Mが円弧形状を有する場合には、円弧の中心に当たる。そして、弧形状の焦点fを中心とする放射方向(ラジアル方向)は、弧形状の厚み方向、つまり、永久磁石Mの各位置において、外側表面M1に直交する方向に対応する。以降、単に「ラジアル方向」と称する場合は、弧形状の焦点fを中心とする放射方向を指すものとする。
【0042】
本発明の実施形態にかかるロータ10においては、永久磁石Mの磁化方向dが、弧形状に沿って少なくとも一部の部位において、ラジアル方向に対して傾斜していれば、永久磁石Mの具体的な形状や配置、また具体的な磁化方向dは、特に限定されるものではない。しかし、以下に、好適な例として、1つの磁極を構成する永久磁石Mが一体に連続しており、1つの焦点Fmを中心とした放射方向に磁化されている形態、また、1つの磁極を構成する永久磁石Mが、弧形状に沿って複数の分割域に分割されており、それぞれの分割域における永久磁石Mの磁化方向dが、分割域内において平行となっている形態について説明する。
【0043】
(1)第一の形態:永久磁石が一体に連続している場合
まず、第一の実施形態として、
図2に示すように、1つの磁極を構成する永久磁石Mが、分割されず、一体に連続している形態について説明する。本形態においては、永久磁石Mの磁化方向dが、弧形状に沿った各部において、1つの焦点(磁化焦点Fmと称する)を中心とした放射方向となっている。ここで、磁化焦点Fmは、永久磁石Mの形状を規定する図形としての弧形状の焦点fとは異なる位置に存在している。よって、永久磁石Mの磁化方向dは、弧形状の焦点fを中心とするラジアル方向と、少なくとも一部の部位において、異なったものとなっている。
【0044】
より具体的には、弧形状の焦点fを通り、ロータコア11の径方向に沿って延びる軸を磁石中心軸Cとして、磁化焦点Fmは、磁石中心軸Cに沿って、弧形状の焦点fよりも、ロータコア11の径方向外側の位置に、存在している。そのため、磁石中心軸C上の位置である弧形状の中央部を除いて、永久磁石Mの各部における磁化は、弧形状の焦点fを中心とするラジアル方向に対して、傾斜を有している。傾斜の方向は、ロータコア11の径方向外側から内側に向かって磁石中心軸Cから離れる方向となっている。永久磁石Mの各部における磁化方向dは、磁石中心軸Cを挟んで両側で対称となっている。
【0045】
永久磁石Mにおいて、ラジアル方向に対する磁化方向dの傾斜は、弧形状に沿って連続的に変化している。つまり、磁石中心軸Cを離れ、弧形状の端に近づくほど、ラジアル方向に対する傾斜が大きくなっており、弧形状の両端において、その傾斜が最も大きくなっている。ここで、弧形状の端における磁化方向dが、ラジアル方向(永久磁石Mが半円弧形状の場合は磁石中心軸Cに直交する方向)に対して有する角度を、傾斜角度αと定義する(0<α<90°)。磁化焦点Fmが、磁石中心軸Cに沿って、ロータコア11の外側へと、弧形状の焦点fから大きく離れているほど、傾斜角度αが大きくなり、永久磁石Mの弧形状の各部において、ラジアル方向に対する傾斜が大きくなる。弧形状の中央においては、端における傾斜角度αによらず、常に、磁化方向dが磁石中心軸Cの方向を向いており、ラジアル方向に平行となっている。つまりラジアル方向に一致している。なお、仮にα=0°とすれば、磁化焦点Fmが永久磁石Mの弧形状の焦点fと一致し、永久磁石Mの磁化方向dは、全域において、弧形状の焦点fを中心としたラジアル方向となる。
【0046】
本実施形態にかかるロータ10においては、永久磁石Mが弧形状を有していることにより、永久磁石Mからロータコア11の径方向外側に向かって出る磁束量を、大きくすることができる。永久磁石Mの磁束量は、永久磁石Mが大きな表面積を有するほど、大きくなるが、永久磁石Mが、ロータコア11の径方向内側に向かって凸となった弧形状を有することにより、スポーク型等、直線的な形状を有する場合に比べて、表面積、つまり外側表面M1の面積を大きく取ることができるからである。永久磁石Mの磁束量を増大させることで、ロータ10をモータ1に組み込んだ際の出力トルクを向上させることができる。特に、モータ1が小型である場合には、永久磁石Mを弧形状とすることで、ロータコア11の中の限られた空間の中で、大きな表面積を確保し、出力トルクを向上させやすくなる。
【0047】
さらに、本ロータ10においては、磁化方向dが、ラジアル方向に対して傾斜していることにより、不可逆減磁を抑制することができる。ロータ10において、ステータ30のコイル32から発せられる磁界のうち、永久磁石Mの磁化方向dと反平行になったベクトル成分は、永久磁石Mにおいて、不可逆減磁を引き起こす要因となる。永久磁石Mにおいて不可逆減磁が起こると、ロータ10において、設計どおりの出力特性が得られなくなる。弧形状の永久磁石Mにおいては、逆磁界が、厚み方向に沿って印加されやすい。よって、永久磁石Mの磁化方向dがラジアル方向を向いている場合に、不可逆減磁が最も起こりやすくなり、磁化方向dがラジアル方向に対して大きく傾斜しているほど、不可逆減磁が起こりにくいことになる。本実施形態にかかるロータ10においては、永久磁石Mの少なくとも一部の領域で、磁化方向dがラジアル方向に対して傾斜しているため、全域で磁化方向dがラジアル方向に向いている場合と比較して、不可逆減磁を起こしにくい。
【0048】
このように、永久磁石Mをロータコア11の径方向内側に向かって凸な弧形状とするとともに、その弧形状の永久磁石Mの磁化方向dを、ラジアル方向に対して傾斜させることで、不可逆減磁を抑制しながら、出力トルクの向上を図ることができる。不可逆減磁の抑制は、永久磁石Mとして、重希土類を多く含むもの等、保磁力の大きい磁石材料を用いることでも、達成することができるが、重希土類を多く含む磁石材料は、高価である場合が多い。本実施形態のように、永久磁石Mの形状と磁化方向dの効果によって、不可逆減磁を抑制できるようにすることで、不可逆減磁を避けるために必要な、永久磁石Mの保磁力(必要保磁力)を小さくすることができる。よって、永久磁石Mに重希土類を用いないようにすること、あるいはその含有量を少なく抑えることが、可能となる。すると、永久磁石Mに要するコストを抑制することができる。また、使用する永久磁石Mの厚みを小さくすることも可能となる。
【0049】
ロータ10の永久磁石Mにおいて、不可逆減磁は、特に、ロータコア11の径方向に沿って外側の位置において、起こりやすい。ステータ30のコイル32に近いために、強い逆磁界が印加されやすいからである。弧形状の永久磁石Mにおいては、弧形状の端部が、ロータコア11の径方向に対して、最も外側に位置することになる。つまり、永久磁石Mの中で、弧形状の端部が、最も不可逆減磁が起こりやすい位置となっている。そこで、永久磁石Mにおいて、少なくとも弧形状の端部において、磁化方向dが、ラジアル方向に対して傾斜していれば、不可逆減磁を効果的に抑制することができる。本実施形態においては、永久磁石Mの各部の磁化方向dが、磁化焦点Fmを中心とする放射方向となっており、弧形状の端部において、ラジアル方向に対する磁化方向dの傾斜が特に大きいため、不可逆減磁を抑制する効果に優れる。
【0050】
一方、永久磁石Mの弧形状の中央部は、ロータコア11の径方向に沿って、内側に位置するため、ステータ30のコイル32から離れており、強い逆磁界は印加されにくい。よって、永久磁石Mの弧形状の中央部においては、不可逆減磁を抑制する観点から、磁化方向dをラジアル方向に対して傾けておくことの必要性は小さい。逆に、出力トルクを高める観点から、弧形状の中央部においては、磁化方向dが、ラジアル方向に近くなっている方が好ましく、さらには、本実施形態のように、ラジアル方向に平行となっていることが好ましい。永久磁石Mから出る磁束が通過する外側表面M1に対して、磁化方向dが垂直に近い方向を向いているほど、永久磁石Mの等価断面積が大きくなり、永久磁石Mからロータコア11の径方向外側へ向かって出る磁束量が、大きくなるからである。上記のように、永久磁石Mの外形を弧形状として、表面積を大きくすることで、出力トルクを向上させられるが、その弧形状の中央部の磁化方向dをラジアル方向に向けておくことによって、さらに効果的に出力トルクを向上させることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、永久磁石Mの磁化方向dが、弧形状の焦点fから外れた磁化焦点Fmを中心とする放射方向となっているため、弧形状の端部においては、ラジアル方向からの磁化方向dの傾斜が大きい一方、弧形状の中央部においては、磁化方向dがラジアル方向に平行となっている。よって、端部において起こりやすい不可逆減磁を効果的に抑制することができるとともに、中央部の磁束によって出力トルクを高める効果にも優れる。
【0052】
後の実施例にも示すように、傾斜角αが、0°<α<90°である全域において、永久磁石がスポーク配置をとる場合よりも、減磁耐力が高くなるが、傾斜角度αを大きくするほど、つまり磁化方向dをラジアル方向から大きく傾斜させるほど、減磁耐力が向上する。一方、出力トルクは、傾斜角度αが小さいほど、大きくなる。具体的な傾斜角度αは、必要な減磁耐力と出力トルクを考慮して決定すればよいが、おおむね、20°から40°程度の領域において、出力トルクを大きく低下させることなく、減磁を効果的に抑制することができる。
【0053】
弧形状の永久磁石Mは、ボンド磁石とすれば、簡便に形成することができる。しかし、ボンド磁石は、磁気特性が低くなりやすく、上記のように、永久磁石Mは、金属磁石より構成することが好ましい。弧形状の金属磁石は、PLP法等、焼結によって、製造することができる。本第一の実施形態においては、弧形状の各部における磁化方向dが、磁化焦点Fmを中心とした放射方向に向いており、次に説明する第二の実施形態および第三の実施形態においては、各分割域の中で、磁化が平行になっているが、磁石材料の粉末を、外部磁界によって、放射方向または平行方向に配向させた状態で焼結を行うことで、それらのような磁化方向dを有する弧形状の永久磁石Mを形成することができる。
【0054】
(2)第二の形態:永久磁石が二分割されている場合
上記第一の実施形態においては、各磁極を構成する永久磁石Mが一体に連続しており、全域において、磁化方向dが、磁化焦点Fmを中心とした放射方向となっていた。これに対し、以下に説明する第二の実施形態および第三の実施形態においては、各磁極を構成する永久磁石Mが、弧形状に沿って複数の領域に分割されており、各領域における磁化方向dが、領域内で平行となっている。以下、上記第一の実施形態と異なる点を中心に説明し、共通する点については、説明を省略する。
【0055】
図3に、第二の実施形態にかかるロータ10の構成を示す。ここでは、永久磁石Mの分割数が2であり、1つの磁極を構成する弧形状の永久磁石Mが、2つに分割されている。つまり、分割域m1,m2を構成する2つの独立した磁石片が、共通のスロット13に、相互に隣接して埋設されている。
【0056】
2つの分割域m1,m2のそれぞれにおいては、磁化方向dが、分割域内の全域で、平行となっている。つまり、分割域m1,m2の弧形状に沿った各位置で、それぞれ、磁化方向dが同じになっている。各分割域m1,m2の磁化方向dは、磁石中心軸Cに対して傾斜している。傾斜方向は、ロータコア11の径方向外側から内側に向かって、磁石中心軸Cから離れる方向となっている。両分割域m1,m2の大きさの比率は、特に限定されるものではないが、図示した形態では、永久磁石Mが、弧形状の中央で分割されており、両分割域m1,m2を構成する弧形状の中心角が、等しくなっている。また、2つの分割域m1,m2における磁化方向dが、磁石中心軸Cを挟んで相互に対称となっている。ここで、弧形状の端部におけるラジアル方向(永久磁石Mが半円弧形状の場合は磁石中心軸Cに直交する方向)に対して、各分割域m1,m2の磁化方向dが有する角度を、傾斜角度αと定義する(0<α<90°)。
【0057】
本実施形態においては、2つの分割域m1,m2よりなる永久磁石Mにおいて、磁化方向dが永久磁石Mの厚み方向に向いている位置、つまり弧形状の焦点fを中心として永久磁石Mの端部から傾斜角度αだけ中心側に入った位置を除いて、全域で、磁化方向dが、ラジアル方向に対して傾斜を有している。この磁化方向dの傾斜により、永久磁石Mの不可逆減磁を抑制することができる。本実施形態の各分割域m1,m2のように、磁石片の中の全域が平行な方向に磁化した永久磁石Mは、比較的簡便に製造することができる。
【0058】
この第二の実施形態においても、後の実施例にも示すように、傾斜角αが、0°<α<90°である全域において、スポーク配置の場合よりも、減磁耐力が高くなるが、磁化方向dの傾斜角度αを大きくするほど、減磁耐力向上の効果が大きくなる。一方、出力トルクは、α=45°を頂点として、傾斜角度αに対して山型の挙動を示す。つまり、出力トルクは、α=45°において最大となり、それよりも傾斜角度αが大きい領域および小さい領域で減少する。おおむね、α=45°±15°の領域において(30°≦α≦60°)、高出力トルクが得られる。α=45°において出力トルクが大きくなる挙動は、以下のように説明することができる。つまり、永久磁石Mの各領域において、外側表面M1から出る磁束量が大きいほど、出力トルクが大きくなるが、各領域で外側表面M1から出る磁束量は、永久磁石Mの等価断面積に比例する。永久磁石Mの各領域における等価断面積は、その領域における外側表面M1の表面積を、磁化方向dに射影したものとなる。永久磁石Mの全域における等価断面積は、各領域における値を積分したものとなるが、その積分値が最も大きくなるのは、α=45°の時である。
【0059】
(3)第三の形態:永久磁石が三分割されている場合
図4に、第三の実施形態にかかるロータ10の構成を示す。ここでは、永久磁石Mの分割数が3であり、1つの磁極を構成する弧形状の永久磁石Mが、3つに分割されている。つまり、分割域m1’,m2’,m3’を構成する3つの独立した磁石片が、共通のスロット13に、相互に隣接して埋設されている。永久磁石Mの弧形状に沿って、両端の位置に、端部分割域m1’,m2’が配置され、中央の位置に、中央分割域m3’が、配置されている。各分割域m1’,m2’,m3’の大きさの比率は、特に限定されるものではないが、図示した形態では、各分割域m1’,m2’,m3’を構成する弧形状の中心角が、2つの端部分割域m1’,m2’を合わせて、中央分割域m3’と等しくなっている。2つの端部分割域m1’,m2’の中心角は相互に等しく、永久磁石M全体として、磁石中心軸Cに対して対称に、分割域m1’,m2’,m3’が配置されている。永久磁石Mが半円弧形状の場合は、弧形状の中心角が、2つの端部分割域m1’,m2’で45°、中央分割域m3’で90°となっている。
【0060】
3つの分割域m1’,m2’,m3’のそれぞれにおいては、磁化方向dが、分割域内の全域で、平行となっている。ここで、中央分割域m3’における磁化方向dが、2つの端部分割域m1’,m2’における磁化方向dよりも、磁石中心軸Cに対する傾斜が小さくなっている。好ましくは、図示したように、中央分割域m3’の磁化方向dは、磁石中心軸Cに対して、平行となっている。一方、2つの端部分割域m1’,m2’の磁化方向dは、磁石中心軸Cに対して傾斜している。傾斜方向は、ロータコア11の径方向外側から内側に向かって、磁石中心軸Cから離れる方向となっている。また、2つの端部分割域m1’,m2’における磁化方向dは、磁石中心軸Cを挟んで、相互に対称となっている。ここで、弧形状の端部におけるラジアル方向(永久磁石Mが半円弧形状の場合は磁石中心軸Cに直交する方向)に対して、端部分割域m1’,m2’の磁化方向dが有する角度を、傾斜角度αと定義する(0<α<90°)。
【0061】
2つの端部分割域m1’,m2’においては、磁化方向dが永久磁石Mの厚み方向に向いている位置を除いて、全域で、磁化方向dが、ラジアル方向に対して傾斜を有している。この磁化方向dの傾斜により、永久磁石Mの不可逆減磁を抑制することができる。一方、中央分割域m3’においては、磁化方向dが磁石中心軸Cに平行になっており、少なくとも、磁石中心軸C上に存在する弧形状の中央の位置において、磁化方向dがラジアル方向に平行となっている。磁石中心軸C上を外れた位置でも、磁化方向dは、ラジアル方向に近いものとなっている。上記第一の形態について説明したように、永久磁石Mの弧形状の中央部近傍では、不可逆減磁が起こりにくいのに対し、磁化のラジアル方向の成分が、磁束量の増大に効果を有する。よって、本実施形態においても、中央分割域m3’において、磁化方向dが、ラジアル方向に一致または近接していることで、磁束量を大きくし、出力トルクの向上に効果的に寄与させることができる。
【0062】
本第三の実施形態においては、後の実施例にも示すように、磁化方向dの傾斜角度αが大きくなるほど、減磁耐力が高くなる。特に、おおむねαが20°以上の領域で、スポーク配置の場合よりも、減磁耐力が高くなる。一方、出力トルクは、α=20°付近で最大で、それよりも傾斜角度αが小さい領域および大きい領域で減少する、山型の挙動を示す。おおむね、20°≦α≦40°の領域において、高出力トルクが得られる。
【0063】
上記で説明した各実施形態においては、永久磁石Mの形状を、単純な円弧形状としており、各部で厚みが一定になっている。しかし、各部の厚みに分布を形成してもよい。例えば、第二の実施形態の2つの分割域m1,m2および第三の実施形態の2つの端部分割域m1’,m2’においては、磁化方向dが厚み方向に向いている位置において、不可逆減磁が起こりやすいので、そのような位置の厚みを、他の部位よりも大きくし、減磁抑制効果を高めることが考えられる。そのように、弧形状の中途部が厚くなった形状として、弧形状の内弧(外側表面M1)の曲率半径を外弧の曲率半径よりも大きくした、ブーメラン形状を挙げることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ここでは、シミュレーションを用いて、上記で説明した3つの実施形態のそれぞれについて、減磁耐力とトルク特性を評価した。
【0065】
[解析方法]
ロータのモデルとして、以下の3種を作成した。
・無分割型:
図1,2に示した上記第一の実施形態のロータとした。永久磁石が分割されておらず、全域において、磁化方向が、磁化焦点Fmを中心とする放射方向となっている。
・2分割型:
図3に示した上記第二の実施形態のロータとした。永久磁石が2つに分割されており、それぞれの分割域内において、磁化方向が平行となっている。
・3分割型:
図4に示した上記第三の実施形態のロータとした。永久磁石が3つに分割されており、それぞれの分割域内において、磁化方向が平行となっている。
【0066】
いずれのモデルにおいても、磁化方向の傾斜角度αを変化させながら、シミュレーションを行った。上記で説明したとおり、各実施形態において、傾斜角度αは、0°<α<90°の範囲にあるが、シミュレーションは、α≦0°の領域についても行った。無分割型のロータについては、α<0°の領域においては、磁化焦点Fmが円弧形状の焦点fよりも内側に存在し、磁化方向が、ロータコアの径方向外側から内側に向かって磁石中心軸に近づく方向に傾斜する。2分割型および3分割型ロータにおいても、α<0°の領域においては、分割域m1,m2,m1’,m2’における磁化方向が、ロータコアの径方向外側から内側に向かって磁石中心軸に近づく方向に傾斜する。
【0067】
上記3種のモデルと比較するために、ラジアル配向型およびスポーク型のロータのモデルも作成した。ラジアル配向型は、上記無分割型ロータにおいて、α=0°とした形態に相当する。スポーク型モデルにおいては、断面長方形の永久磁石を、ロータの径方向に沿って放射状に配置した。特許文献1のような不均一な保磁力の分布は設けていない。上記3種のモデルと、ラジアル配向型モデルおよびスポーク型モデルで、減磁耐力およびトルク特性を比較できるように、永久磁石の表面積を揃えておいた。
【0068】
上記各モデルのロータに対して、永久磁石の保磁力を変化させながら、磁石内減磁率とトルク特性を解析した。シミュレーションは、有限要素法(FEM)を用いた電磁界解析によって行った。磁石内減磁率の解析においては、ステータのコイルに450%定格電流(定格電流の4.5倍の電流)を通電した際の誘起電圧の減少率を、減磁率として評価した。さらに、後に説明するEMF減少率を2.0%以下とするために必要な永久磁石の保磁力を、必要保磁力とした。出力トルクの解析においては、300%定格電流(定格電流の3倍の電流)を通電した際に、出力されるトルクの大きさを評価した。
【0069】
シミュレーションに用いたパラメータを、下の表1にまとめる。
【0070】
【0071】
[解析結果]
(1)減磁率の空間分布
図5(a),(b)および
図6(a),(b)に、それぞれ、ラジアル配向、無分割型(α=40°)、2分割型(α=45°)、3分割型(α=45°)の場合について、磁石内減磁率の空間分布を示す。永久磁石の保磁力は、それぞれ、850kA/m,750kA/m,650kA/mの3とおりとしている。
【0072】
まず、
図5(a)のラジアル配向における空間分布を見ると、図の上部に位置する、永久磁石の円弧形状の端部(領域a)において、減磁率が大きくなっている。これは、円弧形状の端部の位置は、ロータコアの最も外周側に位置し、ステータに近いため、コイルからの磁界による逆磁界が大きく作用することによるものである。最も保磁力の大きい850kA/mの場合でも、端部において、100%に近い減磁率が観測されており、保磁力850kA/mの永久磁石を用いても、不可逆減磁を十分に防ぐことができない。さらに、永久磁石の保磁力が低くなるほど、減磁率が大きくなっており、最も小さい650kA/mの場合には、永久磁石のほぼ全域が減磁を起こしている。
【0073】
次に、
図5(b)の無分割型で磁化方向をラジアル方向からずらした場合の結果を見ると、保磁力が850kA/mおよび750kA/mの場合には、永久磁石の全域において、減磁がほぼ起こっていない。つまり、ラジアル配向の場合と比べて、減磁耐力が上がっており、ラジアル配向の場合よりも、保磁力の低い永久磁石を用いても、減磁を十分に抑制できることが分かる。保磁力が最も低い650kA/mの場合には、図の上部に位置する円弧形状の端部(領域a)で、減磁率が上がっているが、その大きさは、
図5(a)のラジアル配向の場合よりは、顕著に小さくなっている。また、保磁力650kA/mの場合には、円弧形状の中央部近傍(領域b)で、減磁が起こるようになっている。円弧形状の中央部近傍(領域b)では、磁化方向が、ロータコアの径方向またはそれに近い方向となっており、ラジアル方向と一致または近接している。そのために、減磁が防ぎきれなくなっているものと解釈される。
【0074】
さらに、
図6(a)の2分割型の結果を見ると、保磁力が850kA/mおよび750kA/mの場合には、2つの分割域の間の接合部を除いて、永久磁石の全域において、減磁がほぼ起こっていない。つまり、無分割型の場合と同様、ラジアル配向の場合よりも、減磁耐力が上がっていることが分かる。保磁力が最も低い650kA/mの場合には、永久磁石の減磁が起こるようになっている。しかし、図の上部に位置する永久磁石全体としての端部(領域a)の減磁率は、
図5(a)のラジアル配向の場合よりも、小さくなっている。
【0075】
保磁力650kA/mの場合には、永久磁石全体としての円弧形状の端部(領域a)に加え、各分割域の中途部(領域c)でも、減磁が起こっている。各分割域の中途部の減磁が起こっている領域(領域c)は、永久磁石全体としての円弧形状の両端から、円弧形状の焦点(f)に対して、45°内側に入った領域を中心に分布している。つまり、磁化方向αに対応する角度領域において、減磁が起こっている。この領域(領域c)においては、磁化方向が、永久磁石の厚み方向、つまりラジアル方向に一致または近接しており、ステータのコイルからの逆磁界が大きくなるためであると解釈される。傾斜角αを45°以外とした場合についても、永久磁石全体としての両端から、円弧形状の焦点(f)に対して、傾斜角度αに等しい角度だけ内側に入った領域(領域c)を中心に、減磁が起こりやすい傾向が確認された。
【0076】
最後に、
図6(b)の3分割型の結果を見ると、保磁力が850kA/mおよび750kA/mの場合には、3つの分割域の間の接合部を除いて、永久磁石の全域において、減磁がほぼ起こっていない。つまり、無分割型および2分割型の場合と同様、ラジアル配向の場合よりも、減磁耐力が上がっていることが分かる。保磁力が最も低い650kA/mの場合には、永久磁石の減磁が起こるようになっている。しかし、図の上部に位置する円弧形状の端部の減磁率は、
図5(a)のラジアル配向の場合よりも、小さくなっている。
【0077】
保磁力650kA/mの場合には、永久磁石全体としての円弧形状の端部(領域a)に加え、その円弧形状の両端部から、円弧形状の焦点(f)に対して、45°内側に入った位置を中心とする領域(領域c)でも、減磁が起こっている。この領域(領域c)は、永久磁石全体としての円弧形状の両端から、円弧形状の焦点(f)に対して、傾斜角度αに等しい角度だけ内側に入った領域に対応しているが、図示した傾斜角度α=45°の形態においては、その領域(領域c)が、端部分割域と中央分割域の境界と一致している。保磁力650kA/mの場合には、さらに、中央分割域の中央部(領域d)でも、減磁率の上昇が起こっている。これら、永久磁石全体としての円弧形状の両端から傾斜角度αに等しい角度だけ内側に入った領域(領域c)、および中央分割域の中央部(領域d)においては、ともに、磁化方向が、永久磁石の厚み方向、つまりラジアル方向に一致または近接しており、ステータのコイルからの逆磁界が大きくなるため、減磁率が大きくなると解釈される。α=45°以外の場合についても、永久磁石全体としての円弧形状の端部から、円弧形状の焦点(f)に対して、傾斜角度αに等しい角度だけ内側に入った領域(領域c)、および中央分割域の中央部(領域d)において、減磁率が大きくなる傾向が見られた。ただし、α>45°の場合には、端部分割域の中心角(45°)が傾斜角度αを上回るため、永久磁石全体としての円弧形状の端部から、傾斜角度αに等しい角度だけ内側に入った位置が、端部分割域ではなく、中央分割域の中に存在することになり、磁化方向が厚み方向に一致しないので、その位置で減磁が起こりやすくなる挙動は見られない。つまり、領域cに相当する減磁率の高い領域は、形成されない。
【0078】
図7に、2分割型の場合について、5通りの傾斜角度αに対して、各磁石保磁力で得られたEMF減少率を示す。EMF減少率とは、減磁試験前後における、誘起電圧(EMF)の基本波振幅の減少割合を表したものである。
図7によると、全ての傾斜角度αにおいて、永久磁石の保磁力が上がるほど、EMF減少率が小さくなっている。つまり、減磁が起こりにくくなっている。また、おおむね、傾斜角度αが大きくなるほど、EMF減少率が小さくなっており、減磁耐力が向上している。掲載は省略するが、無分割型および3分割型の場合にも、これらの傾向が得られている。
【0079】
図7中に破線で示すように、EMF減少率が2.0%の目標値よりも小さくなる(グラフの下側となる)磁石保磁力を、減磁の抑制に要求される必要保磁力Hcとして、傾斜角度αごとに求めたものを、
図8(a)に示している。無分割型および3分割型についても、同様に必要保磁力を求め、同図中に表示している。
図8(a)には、スポーク型の磁石配置をとる場合について、同様に求めた必要保磁力のレベル(860kA/m)も、表示している。必要保磁力が低いほど、減磁耐力が高く、保磁力の小さい永久磁石を用いても、減磁の影響を十分に小さく抑えられることになる。
【0080】
図8(a)によると、無分割型、2分割型、3分割型のいずれにおいても、傾斜角度αが大きくなるほど、必要保磁力が低くなっている。つまり、減磁耐力が上がっている。無分割型および2分割型については、α>0°の全域で、3分割型については、おおむねα≧20°の領域で、必要保磁力が、スポーク型の場合よりも小さくなっており、減磁耐力がスポーク型の場合を上回っている。なお、ラジアル配向型に相当する、無分割型でα=0°とした場合には、必要保磁力は、スポーク型の場合とほぼ同じとなっている。
【0081】
さらに、
図8(b)に、各形態について、300%定格電流通電時の出力トルクT
300を示す。図では、スポーク型の磁石配置をとる場合に見積もられる出力トルクを1として、規格化した値を示している。
【0082】
図8(b)によると、無分割型、2分割型、3分割型のいずれの場合にも、傾斜角度αのほぼ全域で、スポーク型の場合を上回る出力トルクが得られている。しかし、傾斜角度αに対する出力トルクの挙動は、3つの形態で異なっている。
【0083】
無分割型の場合には、α=0°で最も出力トルクが大きく、スポーク型に対して32.6%向上している。αが0°を離れて大きくなるにつれ、出力トルクは、小さくなっている。おおむね、20°≦α≦40°の領域において、α=0°の時の最大値から出力トルクが大きくは低下していない。一方で、
図8(a)を見ると、20°≦α≦40°の領域においては、α=0°の場合よりも、必要保磁力が大きく低減されている。よって、無分割型の場合には、特に、20°≦α≦40°とすることで、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上を両立しやすいと言える。
【0084】
2分割型の場合には、
図8(b)で、α=45°において、最も出力トルクが大きくなっている。その値は、スポーク型に対して25.4%高いものとなっている。傾斜角度αが45°よりも大きい領域および小さい領域では、ほぼ対称に、出力トルクが低下している。おおむね、α=45°±15°の領域で、傾斜角度αに対する出力トルクの変化が小さく、安定して大きな出力トルクが得られている。また、
図8(a)を見ると、α=45°±15°の領域では、必要保磁力が十分に低減されている。この領域においては、領域内での必要保磁力の変化量も小さくなっている。これらの結果より、2分割型の場合には、特に、30°≦α≦65°とすることで、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上を両立しやすいと言える。
【0085】
3分割型の場合には、
図8(b)で、α=20°において、最も出力トルクが大きくなっている。その値は、スポーク型に対して27.8%高いものとなっている。傾斜角度αが20°よりも大きい領域および小さい領域では、ほぼ対称に、出力トルクが低下している。おおむね、α=20°±20°の領域で、傾斜角度αに対する出力トルクの変化が小さく、安定して大きな出力トルクが得られている。一方、
図8(a)を見ると、α≧20°の領域で、必要保磁力がスポーク型の場合よりも小さくなっている。これらの結果より、3分割型の場合には、特に、20°≦α≦40°とすることで、不可逆減磁の抑制と出力トルクの向上を両立しやすいと言える。
【0086】
3つの形態を比較した場合に、最も大きな出力トルクが得られるという意味では、無分割型が優れていると言える。出力トルクの大きさという点で、次に優れているのは、3分割型である。しかし、
図8(b)に示されるように、いずれの形態においても、傾斜角度αを大きくするほど、減磁耐力が高くなっており、出力トルクの極大点が、減磁耐力が十分に高くなった傾斜角度αが大きい領域に存在している方が、出力トルクの向上を減磁耐力の向上と両立する観点から、有利である。その観点からは、2分割型において、30°≦α≦65°、特にα=45°とする形態が優れていると言える。
【0087】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、永久磁石の弧形状に沿って、4つ以上の分割域に分割することも可能であり、その場合には、円弧形状に沿って端に位置する分割域ほど、ラジアル方向に対する傾斜角度、また磁石中心軸に対する傾斜角度を大きくして、磁化方向を設定すればよい。
【符号の説明】
【0088】
1 モータ(回転電気機械)
10 ロータ(永久磁石回転子)
11 ロータコア
13 スロット
30 ステータ(固定子)
50 エアギャップ
C 磁石中心軸
f 弧形状の焦点
Fm 磁化焦点
M 永久磁石
M1 永久磁石の外側表面
m1,m2 2分割の場合の分割域
m1’,m2’ 3分割の場合の端部分割域
m3’ 3分割の場合の中央分割域