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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】衣服カバー体着脱構造及び衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20221116BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/00 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020007393
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113374
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593013627
【氏名又は名称】福徳産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】細田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】大槻 正弥
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-12908(JP,A)
【文献】特開2019-183333(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221474(JP,U)
【文献】特開2017-133121(JP,A)
【文献】実開昭58-38708(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002-13/005、27/20、27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを取り付けるための孔が後身頃に形成された衣服本体の外側から、前記孔を覆う位置に前記孔と間を空けて対面するカバー体を着脱する衣服カバー体着脱構造であって、
前記孔の周囲のうち、前記衣服本体の着丈方向における下方を除いた着脱位置において、前記後身頃と前記カバー体との間に、第一着脱手段を有し、この第一着脱手段の上方に、前記カバー体に重なるフラップ片を有し、
前記フラップ片と前記カバー体との間に、第二着脱手段を有する、
ことを特徴とする衣服カバー体着脱構造。
【請求項2】
前記フラップ片が、前記第一着脱手段の外周に設けられた、
ことを特徴とする請求項1に記載された衣服カバー体着脱構造。
【請求項3】
前記フラップ片に設けられた第二着脱手段と、前記第一着脱手段とが係止する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された衣服カバー体着脱構造。
【請求項4】
前記カバー体が、
前記孔に対して上方の前記着脱位置に取り付けられると共に、前記後身頃に対して斜め下方に傾斜した斜面部と、
前記斜面部の縁から下方に向けて伸びると共に、前記孔に対して側方の前記着脱位置に取り付けられ、下端に通風口を形成する筒部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された衣服カバー体着脱構造。
【請求項5】
前記斜面部の縁及び筒部の縁に、補強部材を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載された衣服カバー体着脱構造。
【請求項6】
前記衣服本体と前記カバー体とが、難燃性素材で構成された、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された衣服カバー体着脱構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載された衣服カバー体着脱構造を有する、
ことを特徴とする衣服。
【請求項8】
前記ファンと、このファンの駆動原であるバッテリーと、を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載された衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを取り付けるための孔を有する衣服本体と、ファンを覆うためのカバー体との着脱構造、及び、この衣服カバー体着脱構造を有する衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、後身頃にファンが取り付けられ、このファンを介して内側に送風する衣服がある。一般的に、ファンは、後身頃において露出しているため、例えば、雨天の場合、雨の浸水によってファンが故障する可能性があるし、溶接作業等の現場では、火の粉やスパッタが飛散することによってファンが故障する可能性がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された雨衣の空調システム(以下、「文献公知発明」と記す。)は、後身頃におけるファンの取付部位が、内布と外布との二重構造となっており、両布の間に、板状の吸気誘導フードが取り付けられている。吸気誘導フードは、着脱が可能であり、吸気誘導フードが取り付けられたことで外布が立体的に盛り上がった状態であれば、ファンの周囲に空間が生じ、ファンによる吸気が可能となると共に、外布によって、雨による浸水が妨げられる。一方で、吸気誘導フードやファンが取り外されている場合、外布が、ファンの跡である孔を覆い、通常の衣服となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】登録実用新案第3220232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したとおり、文献公知発明は、吸気誘導フードの着脱によって、雨天対策用のファン付衣服(カバー付ファン衣服態様)と、ファンを有しない通常の衣服(単純衣服態様)とに変化するものであって、カバー付ファン衣服態様と、雨天に捉われない通常のファン付衣服(ファン衣服態様)とを選択できるものではない。仮に、吸気誘導フードを外布ごと着脱できたとすれば、カバー付ファン衣服態様又はファン衣服態様として用いることができるが、着脱部位が存在する以上、着脱部位から浸水する可能性があるため、防水性能が劣り、適当ではない。特に、着脱部位に、火の粉やスパッタ等が当たると、着脱部位が破損する場合や、破損した部位から異物が入り込む場合もある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、火の粉やスパッタ等が飛散する現場において好適であり、かつ、カバー付ファン衣服態様又はファン衣服態様として用いることができる衣服カバー体着脱構造及び衣服の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、ファンを取り付けるための孔が後身頃に形成された衣服本体の外側から、前記孔を覆う位置に前記孔と間を空けて対面するカバー体を着脱する衣服カバー体着脱構造であって、前記孔の周囲のうち、前記衣服本体の着丈方向における下方を除いた着脱位置において、前記後身頃と前記カバー体との間に、第一着脱手段を有し、この第一着脱手段の上方に、前記カバー体に重なるフラップ片を有し、前記フラップ片と前記カバー体との間に、第二着脱手段を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、前記フラップ片が、前記第一着脱手段の外周に設けられた、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、前記フラップ片に設けられた第二着脱手段と、前記第一着脱手段とが係止する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、前記カバー体が、前記孔に対して上方の前記着脱位置に取り付けられると共に、前記後身頃に対して斜め下方に傾斜した斜面部と、前記斜面部の縁から下方に向けて伸びると共に、前記孔に対して側方の前記着脱位置に取り付けられ、下端に通風口を形成する筒部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、前記斜面部の縁及び筒部の縁に、補強部材を有する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、前記衣服本体と前記カバー体とが、難燃性素材で構成された、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る衣服は、上記した衣服カバー体着脱構造を有する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る衣服は、前記ファンと、このファンの駆動原であるバッテリーと、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、ファンを取り付けるための孔が後身頃に形成された衣服本体の外側から、孔を覆う位置に孔と間を空けて対面するカバー体を着脱する衣服カバー体着脱構造であって、孔の周囲のうち、衣服本体の着丈方向における下方を除いた着脱位置において、後身頃とカバー体との間に、第一着脱手段を有し、この第一着脱手段の上方に、カバー体に重なるフラップ片を有し、フラップ片とカバー体との間に、第二着脱手段を有している。すなわち、フラップ片がカバー体に重なることで、着脱位置がフラップ片に覆われる。したがって、火の粉やスパッタ等から着脱位置を保護することができる。また、フラップ片がカバー体に重なることで、当該箇所における生地の厚みが増して堅牢となるため、損傷を抑えることができる。また、カバー体が、第一着脱手段によって後身頃と接着され、第二着脱手段によってフラップ片と接着されるため、堅牢である。また、カバー体が取り付けられれば、カバー付ファン衣服態様が実現し、カバー体が取り外されれば、ファン衣服態様として用いることができる。
【0016】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、フラップ片が、第一着脱手段の外周に設けられている。この構成により、カバー体の周囲全体において、着脱位置がフラップ片に覆われる。したがって、着脱位置を保護し、堅牢とすることができる。
【0017】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、フラップ片に設けられた第二着脱手段と、第一着脱手段とが係止する。この構成により、カバー体が外された状態において、着脱位置の第一着脱手段と、フラップ片の第二着脱手段とが係止する。したがって、カバー体を外した跡である着脱位置を、フラップ片で隠すことができる。
【0018】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、カバー体が、孔に対して上方の着脱位置に取り付けられると共に、後身頃に対して斜め下方に傾斜した斜面部と、斜面部の縁から下方に向けて伸びると共に、孔に対して側方の着脱位置に取り付けられ、下端に通風口を形成する筒部と、を有している。この構成により、スパッタ等は、傾斜面で滑り落されるため、着脱位置から侵入することが抑止される。
【0019】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、斜面部の縁及び筒部の縁に、補強部材を有している。この構成により、カバー体の形状が維持されるため、カバー体がつぶれて流路が遮られるのを防ぐことができる。仮に、カバー体が押し潰されたとしても、弾性変形した補強部材が復元することで、流路を確保することができる。
【0020】
本発明に係る衣服カバー体着脱構造は、衣服本体とカバー体とが、難燃性素材で構成されている。したがって、火の粉やスパッタ等が飛散する現場において好適である。
【0021】
本発明に係る衣服は、衣服カバー体着脱構造を有している。したがって、衣服は、上記した衣服カバー体着脱構造と同じ効果を生じさせることができる。
【0022】
本発明に係る衣服は、ファンと、このファンの駆動原であるバッテリーと、を有している。したがって、火の粉やスパッタ等が飛散する現場においても、ファンによる風が衣服の内側を通ることで、作業者が快適に作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る衣服の背面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る衣服カバー体着脱構造におけるカバー体の外側外観斜視図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る衣服カバー体着脱構造におけるカバー体の内側外観斜視図である。
図4図4は、図1におけるVI-VI断面であって、本発明の第一実施形態に係る衣服カバー体着脱構造の概略断面図である。
図5図5は、本発明の第二実施形態に係る衣服の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は、本発明の第一実施形態に係る衣服カバー体着脱構造及び衣服の説明である。図1は、衣服1の背面が示されている。図2及び図3は、カバー体12の外観が示されている。図4は、衣服カバー体着脱構造11の断面が示されている。なお、以下の説明では、衣服1の着丈方向を縦、身幅方向を横とする。
【0025】
図1に示されているとおり、衣服1は、作業服である衣服本体2と、この衣服本体2に取り付けられたファン7と、このファン7の駆動源であるバッテリー(図示省略。)と、衣服本体2の外側からファン7と間を空けて衣服本体2に着脱されるカバー体12と、このカバー体12を衣服本体2に着脱する構造である衣服カバー体着脱構造(以下、「着脱構造」と記す。)11とから構成されている。衣服本体2及びカバー体12は、例えば、難燃性素材で構成され、後身頃3、前身頃(図示省略。)、袖4、ヨーク5、襟部6などが縫合されたものである。なお、難燃性素材は、繊維における高分子に、例えば、フッ素(F)、塩素Cl)等のハロゲンを含む化合物を共重合させたもの、リン(P)等を含む化合物を共重合させたもの等であり、また、剛直性の高い芳香族系の高分子等である。
【0026】
後身頃3は、ほぼ中央であって、着用者の背中のあたりに相当する箇所に、ランヤード(図示省略。)が通される開閉部8を有している。開閉部8は、後身頃3に形成された孔を開閉するものであり、ランヤードが通される際に開けられ、ランヤードが通されない場合に閉じられる。開閉の手段は、例えば、ファスナーや面ファスナー等である。
【0027】
後身頃3は、縦方向における下部であって、中心線に対して横方向における左右側に、ファン7が取り付けられる孔9が形成されている。換言すれば、孔9は、後身頃3において、着用者の背中又は腰のあたりに相当する箇所に形成されている。孔9の外側には、上方が開口した網状のポケット10が形成されている。孔9には、ファン7が取り付けられている。ファン7は、例えば、モーターと一体で構成され、モーターにバッテリーが接続される。バッテリーは、例えば前身頃の内側のポケット等に収容される。ファン7は、バッテリーからの通電によって稼働する。ファン7が稼働すると、衣服本体2の内側に向けて送風される。
【0028】
着脱構造11は、カバー体12を、孔9及びファン7を覆う位置に孔9及びファン7と間を空けて対面させて後身頃3に着脱するものである。着脱構造11は、後身頃3の着脱位置20とカバー体12との間に設けられた第一着脱手段21と、カバー体12に重なるフラップ片27と、このフラップ片27とカバー体12との間に設けられた第二着脱手段24とを有している。第一着脱手段21及び第二着脱手段24は、例えば面ファスナーである。
【0029】
着脱位置20は、後身頃3における孔9の周囲のうち、衣服本体2の縦方向における下方を除いた部位である。すなわち、着脱位置20は、孔9の上方及び左右側方であり、上位置20a、左位置20b及び右位置20cから構成されている。
【0030】
着脱位置20は、第一着脱手段21である第一面ファスナーのうち、フック側と係止するループ側である第一ループ面23が取り付けられている。すなわち、第一ループ面23は、上位置20aに取り付けられた横長の長方形である上第一ループ面23a、左位置20bに取り付けられた縦長の長方形である左第一ループ面23b、及び、右位置20cに取り付けられた縦長の長方形である右第一ループ面23cから構成されている。上第一ループ面23a(上位置20a)の上方は、フラップ片27が設けられている。フラップ片27は、扁平な横長の長方形であり、横長の一辺が、上第一ループ面23aに沿って後身頃3に縫合されている。したがって、フラップ片27は、縫合された一辺を基点として上下に開閉する。フラップ片27の縦幅は、ほぼ上第一ループ面23aの縦幅と同じである。
【0031】
フラップ片27のうち、上第一ループ面23aと対面する側は、第二着脱手段24である第二面ファスナーのうち、フック側と係止するループ側である第二ループ面26が取り付けられている。
【0032】
図1図2及び図3に示されているとおり、カバー体12は、着脱位置20における上位置20aに着脱されると共に後身頃3に対して斜め下方に傾斜した斜面部13と、この斜面部13の先縁から下方に向けて伸びると共に、着脱位置20における左右位置20b,cに着脱され、かつ、下端に通風口18を形成する筒部15とを有している。斜面部13は、上位置20aの上第一ループ面23aとほぼ同形状の上端部14を有し、この上端部14から斜め下方に向けて凸弧状に湾曲した半円形状の面を有している。筒部15は、上端部14の両端において上端部14と直角に連接されると共に下方に伸びて左右位置20b,cの左右第一ループ面23b,cとほぼ同形状の左端部16及び右端部17を有し、この左右端部16,17間において外側に向けて凸弧状に湾曲した半円筒状の面を有している。筒部15の上縁と斜面部13の湾曲した先縁とは連接され、この連接された箇所に、補強部材19が取り付けられている。筒部15の下端は、上端と同様の補強部材19が取り付けられている。補強部材19は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂である。この補強部材19によってカバー体は一定の形状を維持することができ、筒部15の下縁の通風口18が確保される。
【0033】
斜面部13における上端部14のうち、外側面は、第二面ファスナーのうち、第二ループ面26と係止するフック側である第二フック面25が取り付けられている。上端部14の内側面及び左右端部16,17の内側面は、第一面ファスナーのうち、第一ループ面23と係止するフック側である第一フック面22が取り付けられている。すなわち、第一フック面22は、上端部14の内側面に取り付けられた横長の長方形である上第一フック面22a、左端部16の内側面に取り付けられた縦長の長方形である左第一フック面22b、及び、右端部17に取り付けられた縦長の長方形である右第一フック面22cから構成されている。
【0034】
上記のとおり構成された着脱構造11によれば、カバー体12は、次のとおり着脱位置20に装着される。フラップ片27が、上側に開いた状態において、カバー体12における各端部14,16,17の各第一フック面22a,b,cが、着脱位置20における各第一ループ面23a,b,cに取り付けられる。この状態で、フラップ片27が下側に閉じると、フラップ片27が、カバー体12の上端部14に重ねられ、フラップ片27の第二ループ面26が、カバー体12の第二フック面25に取り付けられる。図4に示されているとおり、ファン7の外側は、通風路が確保された状態で、カバー体12によって覆われる。フラップ片27は、内側面および外側面が、各面ファスナーによって係止され、かつ、着脱位置20の上位置20aを覆う。
【0035】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0036】
上記したとおり、本実施形態によれば、着脱位置20は、後身頃3における孔9の周囲のうち、衣服本体2の縦方向における下方を除いた、上位置20a、左位置20b及び右位置20cから構成され、各位置20a,b,cに、第一着脱手段である第一ループ面23が取り付けられている。上第一ループ面23a(上位置20a)の上方は、フラップ片27が設けられ、このフラップ片27は、第二着脱手段24である第二ループ面26が取り付けられている。一方で、カバー体12における上端部14の内側面及び左右端部16,17の内側面は、第一着脱手段21である各第一フック面22a,b,cが取り付けられ、カバー体12における上端部14の外側面は、第二着脱手段24である第二フック面25が取り付けられている。フラップ片27が、上側に開いた状態において、カバー体12における各端部14,16,17の各第一フック面22a,b,cが、着脱位置20における各第一ループ面23a,b,cに取り付けられ、フラップ片27が下側に閉じると、フラップ片27が、カバー体12の上端部14に重ねられ、フラップ片27の第二ループ面26が、カバー体12の第二フック面25に取り付けられる。
【0037】
すなわち、フラップ片27がカバー体12の上端部14に重なることで、上位置20aがフラップ片27に覆われるため、火の粉やスパッタ等から上位置20aを保護することができる。また、フラップ片27がカバー体12に重なることで、当該箇所における生地の厚みが増して堅牢となるため、火の粉やスパッタ等による損傷を抑えることができる。また、カバー体12が、第一着脱手段21によって後身頃3と接着され、第二着脱手段24によってフラップ片27と接着されるため、堅牢である。また、カバー体12が取り付けられれば、カバー付ファン衣服態様が実現し、カバー体12が取り外されれば、ファン衣服態様として用いることができる。なお、カバー体12が着脱位置20に取り付けられる構成、フラップ片27がカバー体12の上端部14に重なる構成であれば、面ファスナーにおけるフック面及びループ面のうち、いずれが各着脱手段21,24に取り付けられていてもよい。
【0038】
本実施形態によれば、カバー体12は、着脱位置20における上位置20aに着脱されると共に後身頃3に対して斜め下方に傾斜した斜面部13と、この斜面部13の先縁から下方に向けて伸びると共に、着脱位置20における左右位置20b,cに着脱され、かつ、下端に通風口18を形成する筒部15とを有している。この構成により、スパッタ等は、傾斜面13で滑り落されるため、上位置20aから侵入することが抑止される。
【0039】
本実施形態によれば、カバー体12において、筒部15の上縁と斜面部13の湾曲した先縁とが連接された箇所、及び、筒部15の下端に、樹脂等の補強部材19が取り付けられている。この構成により、カバー体12の形状が維持されるため、カバー体12がつぶれて流路が遮られるのを防ぐことができる。仮に、カバー体12が押し潰されたとしても、弾性変形した補強部材19が復元することで、流路を確保することができる。
【0040】
本実施形態によれば、衣服本体2及びカバー体12は、難燃性素材で構成されている。したがって、火の粉やスパッタ等が飛散する現場において好適である。
【0041】
本実施形態によれば、ファン7と、このファン7の駆動源であるバッテリーとを有している。したがって、火の粉やスパッタ等が飛散する現場においても、ファン7による風が衣服1の内側を通ることで、作業者が快適に作業することができる。
【0042】
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。図5は、衣服1の背面が示されている。なお、以下では、主として第一実施形態と異なる構成が説明され、第一実施形態と同様の構成は、同一の符号で図示することをもって適宜説明が省略されている。
【0043】
図5に示されているとおり、着脱構造211は、フラップ片が第一着脱手段221の外周すべてに設けられている点、及び、各フラップ片に対応した第二着脱手段24がカバー体212に設けられている点において、着脱構造11と異なる。すなわち、左第一ループ面23b(左位置20b)の左方は、左フラップ片27bが設けられ、右第一ループ面23c(右位置20c)の右方は、右フラップ片27cが設けられている。左右フラップ片27b、cは、扁平な縦長の長方形であり、縦長の一辺が、左右第一ループ面23b、cに沿って後身頃3に縫合されている。したがって、左右フラップ片27b、cは、縫合された一辺を基点として左右に開閉する。左右フラップ片27b、cの横幅は、ほぼ左右第一ループ面23b、cの横幅と同じである。左右フラップ片27b、cのうち、左右第一ループ面23b、cと対面する側は、第二着脱手段24である第二面ファスナーのうち、ループ側である左右第二ループ面26b、cが取り付けられている。
【0044】
カバー体212における左右端部16,17のうち、外側面は、第二面ファスナーのうち、左右第二ループ面26b、cと係止する左右第二フック面25b、cが取り付けられている。
【0045】
上記のとおり構成された着脱構造211によれば、カバー体212は、次のとおり着脱位置20に装着される。フラップ片27が上側に、左右フラップ片27b、cが左右側に開いた状態において、カバー体212における各端部14,16,17の各第一フック面22a,b,cが、着脱位置20における各第一ループ面23a,b,cに取り付けられる。この状態で、フラップ片27が下側に閉じると、フラップ片27が、カバー体212の上端部14に重ねられ、第二ループ面26が、端部14の第二フック面25に取り付けられる。同様に、左右フラップ片27b、cが、カバー体の左右端部16,17に重ねられ、左右第二ループ面26b、cが、左右端部16,17の左右第二フック面25b、cに取り付けられる。フラップ片27及び左右フラップ片27b、cは、内側面および外側面が、各面ファスナーによって係止され、かつ、着脱位置20の上位置20a及び左右位置20b、cを覆う。
【0046】
上記した第二実施形態によれば、フラップ片27及び左右フラップ片27b,cが、第一着脱手段221の外周に設けられている。この構成により、カバー体12の周囲全体において、着脱位置20がフラップ片27及び左右フラップ片27b,cに覆われる。したがって、着脱位置20を保護し、堅牢とすることができる。
【0047】
なお、本発明は、以下の実施形態も含まれる。他の実施形態では、フラップ片27(又は/及び27b,c)に設けられた第二着脱手段24と、着脱位置20の第一着脱手段21とが係止する。すなわち、フラップ片27(又は/及び左右フラップ片27b,c)のうち、上第一ループ面23a(又は/及び左右第一ループ面23b、c)と対面する側は、第二着脱手段24である第二面ファスナーのうち、ループ側と係止するフック側である第二フック面が取り付けられている。一方で、カバー体212における上端部14(又は/及び左右端部16,17)のうち、外側面は、第二面ファスナーのうち、第二フック面と係止するループ側である第二ループ面が取り付けられている。
【0048】
この構成により、カバー体12が外された状態において、着脱位置20の上第一ループ面23a(又は/及び左右第一ループ面23b、c)と、フラップ片27(又は/及び左右フラップ片27b,c)の第二フック面とが係止する。したがって、カバー体12を外した跡である着脱位置20を、フラップ片27(又は/及び左右フラップ片27b,c)で隠すことができる。なお、フラップ片27(又は/及び27b,c)に設けられた第二着脱手段24と、着脱位置20の第一着脱手段21とが係止する構成であれば、面ファスナーにおけるフック面及びループ面のうち、いずれが各着脱手段21,24に取り付けられていてもよい。
【0049】
他の実施形態は、ファン及びバッテリーを有していない。他の実施形態は、着脱構造のみから構成されている。他の実施形態は、難燃性素材以外の素材で構成され、例えば、易燃性繊維に難燃剤を付着させて防炎加工が施されたものである。他の実施形態は、補強部材を有していない。他の実施形態は、カバー体の形状が任意であり、例えば、円筒状、角形筒状等である。他の実施形態は、斜面部の全面がフラップ片で覆われる。他の実施形態は、作業服以外の衣服である。他の実施形態は、第一着脱手段及び第二着脱手段が、ボタンやファスナーである。ただし、当該実施形態が高温下で用いられる場合は、熱伝導率が高い金属や、耐熱性の低い樹脂は馴染まない。他の実施形態では、フラップ片の横幅と着脱位置における上位置の横幅、及び、カバー体の上端部の横幅とが同一である。他の実施形態では、左右フラップ片の縦幅と着脱位置における左右位置の縦幅、及び、カバー体の左右端部の縦幅とが同一である。
【0050】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,201 衣服
2 衣服本体
3 後身頃
4 袖
5 ヨーク
6 襟部
7 ファン
8 開閉部
9 孔
10 ポケット
11,211 着脱構造(衣服カバー体着脱構造)
12,212 カバー体
13 斜面部
14 上端部
15 筒部
16 左端部
17 右端部
18 通風口
19 補強部材
20 着脱位置
20a 上位置
20b 左位置
20c 右位置
21,221 第一着脱手段
22 第一フック面
22a 上第一フック面
22b 左第一フック面
22c 右第一フック面
23 第一ループ面
23a 上第一ループ面
23b 左第一ループ面
23c 右第一ループ面
24 第二着脱手段
25 第二フック面
25b 左第二フック面
25c 右第二フック面
26 第二ループ面
26b 左第二ループ面
26c 右第二ループ面
27 フラップ片
27b 左フラップ片
27c 右フラップ片
図1
図2
図3
図4
図5