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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】水中油型睫用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221116BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221116BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221116BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/19
A61Q1/10
A61K8/81
A61K8/39
A61K8/86
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018076351
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019182792
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】山脇 夕佳
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197460(JP,A)
【文献】特開2013-075870(JP,A)
【文献】特開2004-168791(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054731(WO,A1)
【文献】特開2010-254670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性皮膜形成剤と、(B)水溶性増粘剤と、(C)粉体と、(D)界面活性剤と、を含有し、
前記(B)成分が、セルロース系増粘剤及び多糖類系増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性増粘剤を含み、
前記(C)成分が、カーボンブラックを含み、
前記(D)成分が、(D1)HLB10~17の非イオン界面活性剤と、(D2)HLB8未満の非イオン界面活性剤とを含み、
前記カーボンブラックの含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~4.0質量%であり、
前記(D1)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、5.0~10.0質量%であり、
前記(D2)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.5~2.0質量%であり、
前記(D1)成分と前記(D2)成分との質量比(D1)/(D2)が、3.3~6.0である、水中油型睫用化粧料。
【請求項2】
前記(C)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~10.0質量%である、請求項1に記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項3】
前記カーボンブラック以外の粉体の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、6.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の水中油型睫用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型睫用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ等の睫用化粧料は、睫を太く長くみせることで目元の印象を際立たせるという化粧効果を有している。近年は、ぬるま湯で容易に除去できる水中油型乳化タイプの睫用化粧料が人気を集めている。また、化粧効果については、睫のボリューム感のみならず、睫のカールアップとそれを持続するカールキープ力の双方によって得られるカール効果が重視されている。
【0003】
しかしながら、水中油型の場合、水が主成分のため乾燥速度が遅く、化粧膜が固化する前に自重により睫が下がってしまい、カールアップさせることが困難であった。またカールアップしても、外相が水性成分のために空気中の水分を吸着しやすく、経時で化粧膜が重くなりカールが持続しにくいという問題があった。
【0004】
これまでにもカール効果を具体化する技術が検討されている。例えば、下記特許文献1及び2には水中油型の睫用化粧料に配合するワックスや皮膜形成剤について検討がなされている。また、下記特許文献3には、揮発成分を含むまつ毛用化粧料に特定の成膜特性及び重量平均分子量を有する皮膜形成剤を配合することが提案されている。更に、下記特許文献4には、水性媒体を連続相とする睫用化粧料に疎水化処理多孔質シリカを配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-227605号公報
【文献】特開2005-112770号公報
【文献】特開2005-298497号公報
【文献】特開2006-111536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近は、消費者が化粧料を何度も重ね塗りすることで、自分のイメージするカール効果やボリューム感を得る傾向にある。この場合、十分なボリューム感を得るためには、化粧料の使用性或いは使用感として、繰り返し重ね付けを行った際にもダマが発生しにくく、均一な化粧膜に仕上げやすいことや、睫に適量付着させることができるよう、上滑りしにくいことが求められる。
【0007】
しかし、上記特許文献1~4に記載の技術であっても、カール効果とボリューム感とを高水準で両立させることは未だ十分ではない。例えば、ワックスや皮膜形成剤の検討がなされている上記特許文献1~3の化粧料は、カール効果が十分ではなく、ダマ付きの無さや上滑りのしにくさの点においても改良の余地がある。また、ワックスや皮膜形成剤は外観が不透明なものが多いため、化粧膜の光沢感が失われたり、白っぽく見えてしまい、睫をつややかな印象にするツヤが得られにくい。更に、上記特許文献4のように、カール持続性を付与するために粉体を多量に配合すると、ダマ付きが発生しやすく、均一な化粧膜に仕上げることが難しくなる傾向にある。
【0008】
本発明は、重ね塗りしてもダマ付きが発生しにくく且つ付着性にも優れ、睫にツヤと高いカール効果とボリューム感とを与えることができる水中油型睫用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)水溶性皮膜形成剤と、(B)水溶性増粘剤と、(C)粉体と、(D)界面活性剤と、を含有し、(B)成分が、セルロース系増粘剤及び多糖類系増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性増粘剤を含み、(C)成分が、カーボンブラックを含み、(D)成分が、(D1)HLB10~17の非イオン界面活性剤と、(D2)HLB8未満の非イオン界面活性剤とを含む水中油型睫用化粧料を提供する。
【0010】
本発明の水中油型睫用化粧料によれば、上記構成を有することにより、重ね塗りしてもダマ付きが発生しにくく且つ付着性にも優れ、睫にツヤと高いカール効果とボリューム感とを与えることができる。
【0011】
上記の効果が奏される理由として、従来黒色顔料として使用されている黒酸化鉄よりも比重が軽いカーボンブラックを水溶性皮膜形成剤と併用することにより、カールアップの効果とカールキープ力が得られやすくなり、更に、カーボンブラックが上記の成分と組み合わせて配合されることにより、繰り返し重ね付けを行った際にもダマが発生しにくく、睫に適量付着させることも容易となり、均一且つ適量の化粧膜に仕上げやすくなることで、睫にツヤを与えつつカール効果とボリューム感との両立が可能になったと本発明者らは考えている。
【0012】
また、本発明の水中油型睫用化粧料は、カーボンブラックが上記の成分と組み合わせて配合されることにより、黒さに優れた化粧膜を形成することができることから、マスカラなどの用途に好適なものになり得る。
【0013】
本発明の水中油型睫用化粧料は、化粧膜の均一性とカール効果の観点から、(C)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~10.0質量%であることが好ましい。
【0014】
また、化粧膜の均一性、カール効果、及びツヤと黒さの付与の観点から、カーボンブラックの含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~5.0質量%であることが好ましい。
【0015】
更に、化粧膜の均一性とカール効果の観点から、カーボンブラック以外の粉体の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、6.0質量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の水中油型睫用化粧料において、(D1)成分と(D2)成分との質量比(D1)/(D2)が、1.4~6.0であることが好ましい。このようにHLB10~17の非イオン界面活性剤の配合割合をHLB8未満の非イオン界面活性剤よりも多くすることにより、微細な乳化粒子を形成することができ、ツヤ感と黒さのある化粧膜が得られやすくなり、化粧料の保存安定性も向上させることができる。このような水中油型睫用化粧料は、稠度が変化しにくいことから重ね塗りの調整がしやすく、長期にわたって所望の化粧効果を得ることが容易となる。
【0017】
本発明の水中油型睫用化粧料において、保存安定性、並びに、ツヤ感及び黒さを有する化粧膜の形成の観点から、(D1)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、1.0~10.0質量%であり、(D2)成分の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.5~8.0質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、重ね塗りしてもダマ付きが発生しにくく且つ付着性にも優れ、睫にツヤと高いカール効果とボリューム感とを与えることができる水中油型睫用化粧料を提供することができる。
【0019】
また、本発明の水中油型睫用化粧料によれば、黒さに優れた化粧膜を形成することができる。更に、本発明の水中油型睫用化粧料は、十分な保存安定性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[水中油型睫用化粧料]
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、(A)水溶性皮膜形成剤((A)成分という場合もある)と、(B)水溶性増粘剤((B)成分という場合もある)と、(C)粉体((C)成分という場合もある)と、(D)界面活性剤((D)成分という場合もある)と、を含有する。
【0021】
<(A)水溶性皮膜形成剤>
水溶性皮膜形成剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(VP/VAコポリマー)が挙げられる。(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
水中油型睫用化粧料における(A)成分の含有量は、使用性を良好にし、睫にカール効果及びボリューム感を付与しやすくする観点から、水中油型睫用化粧料全量基準で、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5.0質量%であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の水中油型睫用化粧料には、水不溶性皮膜形成剤を配合することができる。水不溶性皮膜形成剤としては、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸アルキル重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体、酢酸ビニル重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合、メタアクリル酸アルキル・スチレン共重合体、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、オルガノポリシロキサン重合体等が挙げられる。
【0024】
<(B)水溶性増粘剤>
水溶性増粘剤としては、セルロース系増粘剤、多糖類系増粘剤、粘土鉱物、デンプン系増粘剤、アルギン酸系増粘剤、動物系増粘剤等が挙げられる。(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本実施形態においては、重ね塗りしてもダマ付きが発生しにくく、十分なボリューム感が得られやすいことから、(B)成分が、セルロース系増粘剤及び多糖類系増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性増粘剤((B1)成分という場合もある)を含むことが好ましい。
【0026】
セルロース系増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0027】
多糖類系増粘剤としては、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、アラビアゴム等が挙げられる。
【0028】
上述した水溶性増粘剤によって睫用化粧料にチキソトロピー性を付与することができる。チキソトロピー性を有する睫用化粧料は、応力のない状態においては流動性を示さないが、睫を塗布する際にシェアがかかることで粘度が下がり流動性を有することができる。これにより、一度に多量の化粧料が付着することを防ぐことができる。さらに(A)成分と組み合わせることで、ダマ付き及び上滑りの発生が抑制され付着性に優れる結果、重ね塗り(又は重ね付け)が容易となり、均一な化粧膜が得られやすくなる。
【0029】
水中油型睫用化粧料における(B)成分の含有量は、重ね塗りしてもダマ付きが発生しにくくボリューム感を付与しやすくする観点から、水中油型睫用化粧料全量基準で、0.01~1質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましい。
【0030】
<(C)粉体>
粉体としては、化粧料に用いられる公知の粉体を配合することができ、体質粉体、着色顔料等が挙げられる。粉体は、球状、板状、針状等の形状;煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径;多孔質、無孔質等の粒子構造等について特に限定されず用いることができる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本実施形態においては、(C)成分としてカーボンブラックを配合することが好ましい。カーボンブラックと上記(B1)成分とを組み合わせることにより、より高いカールキープ力を得ることができる。また、カーボンブラックを配合することにより、ツヤ感と黒さに優れた化粧膜を形成することが容易となる。
【0032】
カーボンブラックは、カール効果の観点から、比重1.5~2.5g/cmのものを用いることができ、DK BLACK No.2(大東化成工業社製、比重:1.7~1.9g/cm)などの市販品を用いることができる。
【0033】
水中油型睫用化粧料におけるカーボンブラックの含有量は、カール効果、並びに、ツヤ感及び黒さを有する化粧膜の形成の観点から、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~4.0質量%であることがより好ましく、0.1~2.0質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
また、水中油型睫用化粧料におけるカーボンブラックの含有量は、カーボンブラックの吸油性によって化粧料が硬くなりすぎたり、ダマ付きが発生しやすくなることを抑制する観点から、水中油型睫用化粧料全量を基準として、10.0質量%以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、カーボンブラック以外の(C)成分として、例えば、黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素、ガラス末、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム等の体質顔料や、架橋型ポリメチルメタクリレート、シリコーンエラストマー等の球状粉体を含有することができる。
【0036】
また、本実施形態の水中油型睫用化粧料は、カーボンブラック以外の(C)成分として、繊維を含むことができる。繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維等が挙げられる。繊維の長さは特に制限されないが、一般的には、0.1~10mmが好ましく、0.3~7mmがより好ましい。繊維の太さは、一般的には0.1~25テックス(以下、単に「T」と示す。)が好ましく、0.3~20Tがより好ましい。繊維の断面の形状は特に限定されない。これらの繊維は材質、太さ、長さの異なる1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
水中油型睫用化粧料における(C)成分の含有量は、化粧膜の均一性、カール効果、ツヤと黒さの付与の観点から、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.01~10.0質量%であることが好ましい。
【0038】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、化粧膜の均一性、カール効果の観点から、カーボンブラック以外の粉体の含有量が、水中油型睫用化粧料全量を基準として、6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
<(D)界面活性剤>
界面活性剤としては、化粧料に用いられる公知の界面活性剤を配合することができる。(D)成分は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、保存安定性、並びに、ツヤ感及び黒さを有する化粧膜の形成の観点から、(D)成分として、(D1)HLB10~17の非イオン界面活性剤((D1)成分という場合もある)と、(D2)HLB8未満の非イオン界面活性剤((D2)成分という場合もある)とを含むことが好ましい。(D1)成分及び(D2)成分はそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
HLB10~17の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。保存安定性の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
【0042】
HLB8未満の非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、自己乳化型グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0043】
水中油型睫用化粧料における(D1)成分の含有量は、保存安定性、並びに、ツヤ感及び黒さを有する化粧膜の形成の観点から、水中油型睫用化粧料全量を基準として、1.0~10.0質量%であることが好ましく、2.5~8.0質量%であることがより好ましく、4.2~8.0質量%であることがさらに好ましい。
【0044】
また、水中油型睫用化粧料における(D2)成分の含有量は、保存安定性、並びに、ツヤ感及び黒さを有する化粧膜の形成の観点から、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.5~8.0質量%であることが好ましく、0.5~3.0質量%であることがより好ましく、0.5~2.0質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
更に、本実施形態の水中油型睫用化粧料において、(D1)成分と(D2)成分との質量比(D1)/(D2)が、1.4~6.0であることが好ましく、1.8~6.0であることがより好ましく、3.3~6.0であることがさらに好ましい。(D1)/(D2)をこのような範囲とすることにより、微細な乳化粒子を形成することができ、ツヤ感と黒さのある化粧膜が得られやすくなり、化粧料の保存安定性も向上させることができる。
【0046】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、(D1)成分及び(D2)成分以外の非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を含有することができる。これらの界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸とアルカリとからなる高級脂肪酸塩が挙げられる。高級脂肪酸は、乳化安定性の観点から、ステアリン酸、パルミチン酸が好ましい。アルカリは、乳化安定性の観点から、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)が好ましい。
【0048】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、付着性及びカーボンブラックの分散性を向上させる観点から、高級脂肪酸塩を含有することができる。高級脂肪酸塩の含有量は、水中油型睫用化粧料全量を基準として、0.5~10.0質量%であることが好ましく、1.0~6.0質量%であることがより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、上述した成分以外の水性成分及び油性成分を含むことができる。
【0050】
水性成分は、水中油型睫用化粧料の水相(外相)を構成する成分であり、例えば、水;1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,2-ペンタンジオール、ソルビトール、マンニトール等の多価アルコール;エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
油性成分は、水中油型睫用化粧料の油相(内相)を構成する成分であり、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
油脂としては、硬化ヒマシ油、水添ホホバ油、パーム油、モクロウ等の固形油脂、及び、ホホバ種子油、ヒマワリ種子油、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、ツバキ油、ナタネ油、アマニ油、トリグリセリン等の液状油脂が挙げられる。
【0053】
ロウ類としては、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ヒマワリ種子ロウ、ヌカロウ、鯨ロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0054】
炭化水素としては、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、ミネラルオイル等が挙げられる。
【0055】
エステル油としては、トリベヘン酸グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、ダイマー酸エステル等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
【0058】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、等が挙げられる。
【0059】
更に本実施形態の水中油型睫用化粧料には、上記の各成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば保湿剤、紫外線吸収剤、防腐剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0060】
本実施形態の水中油型睫用化粧料は、使用性の観点から、バルク稠度が0.05~0.8であることが好ましく、0.1~0.5であることがより好ましい。なお、化粧料のバルク稠度は、以下の測定方法により求められる。
【0061】
<バルク稠度の測定方法>
加熱により溶融した化粧料を容量30mLのスクリューカップに充填し、25℃にて一晩放置した測定用サンプルを用意する。この測定用サンプルについて、FUDOHレオメーター RT-2002D・D((株)レオテック製)を用い、25℃にて、感圧軸8φ球形、針入速度6cm/min、針入深度10mmで稠度を得た。
【0062】
本実施形態の水中油型睫用化粧料の用途としては、マスカラ、マスカラ下地、マスカラオーバーコートなどが挙げられる。
【0063】
[水中油型睫用化粧料の製造方法]
本実施形態に係る水中油型睫用化粧料の製造方法としては、例えば、上述した(A)成分、(B)成分及びその他の水性成分、並びに、(C)成分を含む水相部と、上述した(D)成分及び油性成分を含む油相部をそれぞれ調製し、これらを混合、乳化することにより得ることができる。
【実施例
【0064】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、表中の数値は、化粧料基材全量を基準とする含有量(質量%)を示す。
【0065】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0066】
<使用感及び目元の印象度の評価>
化粧品評価専門パネル20名に、実施例及び比較例の水中油型睫用化粧料を左右の睫に10回程度塗布し、下記の評価項目について、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を下記の判定基準に従って判定した。
[評価項目]
(a)化粧膜の均一性(ダマ付きのなさ):重ね塗りしたときにダマ付きがないかを評価
(b)付着性:化粧料が上滑りせず、睫に適量付着するかを評価
(c)ツヤ感:化粧膜にツヤがあるかを評価
(d)黒さ:化粧膜に黒さがあるかを評価
(e)カール効果:化粧料を使用後、睫がカールアップしているかと、その後パネルに通常通り過ごしてもらった6時間後にカールが持続しているかを評価

[評点:評価基準]
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い

[判定基準(評点の平均点)]
◎:4以上
○:3以上4未満
△:2以上3未満
×:2未満
【0067】
なお、化粧膜の均一性及び付着性の評価が良好であると、使用性に優れ、ボリューム感の調整が容易であり、ツヤ感と黒さ及びカール効果の評価が良好であると、目元の印象度などの化粧効果が得られやすい。
【0068】
<(f)保存安定性>
保存安定性については、各試料の調整直後の状態を基準として、50℃恒温槽に1ヶ月保管し、稠度の変化及び排液の有無を下記4段階基準により評価した。
[判定基準]
◎:変化なし
○:ごくわずかに変化がある
△:やや変化がある
×:著しい変化がある
【0069】
(実施例1~11、14、参考例12、13及び比較例1~7)
表1~5に示す組成の水中油型睫用化粧料を以下の製法により調製し、上記の評価を行
った。その結果を併せて表1~5に示す。
【0070】
<製法>
成分1~13を混合し、90℃に加熱して溶解、均一化し、これを油相とした。次に、90℃に加熱溶解した成分14~28を油相に添加し、乳化した。乳化物を冷却した後、成分29を添加し、撹拌した。これを容器に充填し、水中油型睫化粧料を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
表1~5中、*1~*6の詳細は下記のとおりである。
【0077】
*1:PVP K-90(アイエスピー・ジャパン社製、製品名)
*2:ゴーセノール EG-25(日本合成化学工業社製、製品名)
*3:PVP/VA S-630(アイエスピー・ジャパン社製、製品名)
*4:DK BLACK No.2(大東化成工業社製、製品名、比重1.8)
*5:TAROX BL-100(チタン工業社製、製品名、比重5)
*6:ヨドゾールGH800F(アクゾノーベル社製、製品名)
【0078】
表1~5に示されるように、実施例1~11、14、参考例12、13の化粧料は、(a)化粧膜の均一性(ダマ付きのなさ)、(b)付着性、(c)ツヤ感と黒さ、(d)カール効果、及び(e)保存安定性のすべての評価項目において「〇」以上の評価であった。
【0079】
(実施例15:マスカラ(繊維入り))
(成分) (配合割合(質量%))
1. カルナウバロウ 4.0
2. ミツロウ 4.0
3. ステアリン酸 3.0
4. ステアリルアルコール 2.0
5. トコフェロール 適量
6. シメチコン 適量
7. PEG-60水添ヒマシ油 5.0
8. ステアリン酸グリセリル 1.5
9. カーボンブラック *4 1.0
10.ナイロンファイバー 2.0
11.精製水 残量
12.1,3-ブチレングリコール 5.0
13.防腐剤 適量
14.AMP 1.0
15.ポリビニルピロリドン *1 1.0
16.キサンタンガム 0.2
17.アクリル酸アルキル共重合体エマルション *6 25.0
【0080】
*1、4、6の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0081】
<製法>
成分(1)~(10)を約90℃に加熱し、均一に混合し、これを油相とした。次に、得られた油相に、約90℃に加熱した成分(11)~(16)を添加し、乳化した。乳化物を冷却した後、成分(17)を添加し、撹拌した。これを容器に充填し、水中油型のマスカラ(繊維入り)を得た。
【0082】
<評価>
得られたマスカラ(繊維入り)について、上記同様の評価を行ったところ、(a)化粧膜の均一性(ダマ付きのなさ)、(b)付着性、(c)ツヤ感、(d)黒さ、(e)カール効果、及び(f)保存安定性のすべての評価項目において「◎」の評価であった。
【0083】
(実施例16:マスカラ下地)
(成分) (配合割合(質量%))
1. パラフィンワックス 3.0
2. ミツロウ 5.0
3. ステアリン酸 2.0
4. パルミチン酸 1.0
5. セトステアリルアルコール 1.0
6. トコフェロール 適量
7. シメチコン 適量
8. PEG-60水添ヒマシ油 5.0
9. ステアリン酸グリセリル 1.5
10.カーボンブラック *4 0.05
11.シリカ 2.0
12.精製水 残量
13.1,3-ブチレングリコール 5.0
14.防腐剤 適量
15.トリエタノールアミン 1.0
16.ポリビニルアルコール *2 1.0
17.キサンタンガム 0.1
18.アクリル酸アルキル共重合体エマルション *6 30.0
【0084】
*2、4、6の詳細は、すでに上述したものと同様である。
【0085】
<製法>
成分(1)~(11)を約90℃に加熱し、均一に混合し、これを油相とした。次に、得られた油相に、約90℃に加熱した成分(12)~(17)を添加し、乳化した。乳化物を冷却した後、成分(18)を添加し、撹拌した。これを容器に充填し、マスカラ下地を得た。
【0086】
得られたマスカラ下地について、上記同様の評価を行ったところ、(a)化粧膜の均一性(ダマ付きのなさ)、(b)付着性、(c)ツヤ感、(e)カール効果、及び(f)保存安定性のすべての評価項目において「◎」の評価であった。