IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -定植装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】定植装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20221116BHJP
【FI】
A01G31/00 601F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018126630
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020005507
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】松田 繁行
(72)【発明者】
【氏名】坪井 悠希
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-151435(JP,A)
【文献】特開2017-169587(JP,A)
【文献】特開昭51-102969(JP,A)
【文献】特公昭49-026334(JP,B1)
【文献】特開昭47-023211(JP,A)
【文献】特開2017-121213(JP,A)
【文献】特開平10-271925(JP,A)
【文献】特開2002-345353(JP,A)
【文献】特開昭57-177626(JP,A)
【文献】特開2003-158927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液を収容した定植容器と
上記定植容器の開口部に着脱自在に載置した一以上の定植パネルと
上記定植パネルに引っ掛けられる吊り下げ具を介して上記定植パネルの正面部に下部が養液に浸された状態で保持される苗床とを備え
上記苗床は、相対向する一対の吸水性、保水性を有するシートを当接させて形成された給水シートからなり、
上記定植パネルは、板状のパネル本体と、上記パネル本体の正面部に形成された凹溝と、上記凹溝の両側に形成された引掛け溝とを有し、
上記引掛け溝に上記吊り下げ具が引っ掛けられている
ことを特徴とする定植装置。
【請求項2】
養液を収容した定植容器と、
上記定植容器の開口部に着脱自在に載置した一以上の定植パネルと、
上記定植パネルに引っ掛けられる吊り下げ具を介して上記定植パネルの正面部に下部が養液に浸された状態で保持される苗床とを備え、
上記苗床は、相対向する一対の吸水性、保水性を有するシートを当接させて形成された給水シートからなり、
上記吊り下げ具が、支持板と、上記支持板の正面側から突出して上記給水シートを貫通する一つ又は複数の突起と、上記支持板の上端に設けられて上記定植パネルに引っ掛けられる引掛け部とを有する
ことを特徴とする定植装置。
【請求項3】
上記定植パネルは、板状のパネル本体と、上記パネル本体の正面部に形成された凹溝と、上記凹溝の両側に形成された引掛け溝とを有し、
上記引掛け溝に上記吊り下げ具が引っ掛けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の定植装置。
【請求項4】
上記定植容器の開口部には、二以上の上記定植パネルが載置されており、
上記定植パネルは、上記パネル本体の正面部に形成されて水平に張出す少なくとも一対のフックと上記パネル本体の背面部における上記フックと対向する位置に形成された一対の係合溝とを有し、
隣り合う二つの上記定植パネルのうちの一方の定植パネルの上記フックが他方の定植パネルの上記係合溝に嵌合されている
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の定植装置。
【請求項5】
上記引掛け溝は、上記フックの背面部に上記凹溝に向けて形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の定植装置。
【請求項6】
上記吊り下げ具が、支持板と、上記支持板の正面側から突出して上記給水シートを貫通する一つ又は複数の突起と、上記支持板の上端に設けた引掛け部とを有している
ことを特徴とする請求項1、請求項に従属する請求項4又請求項1に従属する請求項5に記載の定植装置。
【請求項7】
上記引掛け部が、上記支持板の上端に水平に取り付けたロッド又は上記支持板の上端両側に張出すフックで構成されている
ことを特徴とする請求項2又は3、請求項3に従属する請求項4又は5、または請求項6に記載の定植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽装置で発芽させた水菜、小松菜、リーフレタス、サラダ菜、その他の葉菜植物の苗を移植させて生育させる水耕栽培用の定植装置、特にほうれん草の栽培にも利用できる定植装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、葉菜類植物の栽培には、播種―発芽―定植―収穫までの一連の工程に対応できる産業用のみならず家庭用の水耕栽培装置が開発されるようになっている。
【0003】
このうち、育苗床である発芽装置で播種―発芽させた葉菜植物の苗を育苗床から切り取った単一の苗床に保持した状態で移植させる定植装置として、例えば、特許文献1に開示されているタイプのものが使用されている。
この特許文献1に開示されている定植装置は養液を収容した水槽と、水槽の上部に浮かして設けた定植板と、定植板に形成した複数の定植孔とから構成されている。
そして、苗を定植板に移植させる時、定植孔内に予め発芽させた葉菜植物の苗を保持させたポリウレタンフォームからなる苗床(培地)をそれぞれ挿入させ、根を水養液中に垂れ下げるようにしているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-121213号公報(図面、段落0007、段落0015参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に示す定植装置には特に機能上の欠陥があるわけではないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0006】
すなわち、特許文献1に示す定植装置では苗の移植時に定植板に形成した定植孔に一つずつポリウレタンフォーム製の苗床を挿入する作業が必要であるからその移植作業が面倒であること、
苗床の直径と定植孔の直径とは必ずしも同一ではないので、苗床の定植孔に対する位置合わせが難しく、強制的に苗床を定植孔に挿入すると、苗床を破損させたり、苗を損傷させる恐れがあること、等の不具合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、発芽した葉菜植物の苗定植装置への移植作業を簡単且つスムースに行え、苗を損傷させるのを防止できる水耕栽培用の定植装置を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成させるため、本発明の定植装置は、養液を収容した定植容器と、上記定植容器の開口部に着脱自在に載置した一以上の定植パネルと、上記定植パネルに引っ掛けられる吊り下げ具を介して上記定植パネルの正面部に下部が養液に浸された状態で保持される苗床とを備え、上記苗床は、相対向する一対の吸水性、保水性を有するシートを当接させて形成された給水シートからなり、上記定植パネルは、板状のパネル本体と、上記パネル本体の正面部に形成された凹溝と、上記凹溝の両側に形成された引掛け溝とを有し、上記引掛け溝に上記吊り下げ具が引っ掛けられていることを特徴とする。また、他の発明の定植装置は、養液を収容した定植容器と、上記定植容器の開口部に着脱自在に載置した一以上の定植パネルと、上記定植パネルに引っ掛けられる吊り下げ具を介して上記定植パネルの正面部に下部が養液に浸された状態で保持される苗床とを備え、上記苗床は、相対向する一対の吸水性、保水性を有するシートを当接させて形成された給水シートからなり、上記吊り下げ具が、支持板と、上記支持板の正面側から突出して上記給水シートを貫通する一つ又は複数の突起と、上記支持板の上端に設けられて上記定植パネルに引っ掛けられる引掛け部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の定植装置によれば、次のような特有の効果を達成できる。
(A)発芽装置で発芽させた苗を定植装置へ移植する際、苗床を定植パネルの正面側吊り下げ具を介して保持させれば済む。このため、発芽した葉菜植物の苗を定植装置へ移植する作業を簡単且つスムースに行える。
B)また、苗床を定植パネルの定植孔に押し込む必要もないので、苗の損傷も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一の実施の形態に係る定植装置の縦断面図である。
図2】本発明の第二の実施の形態に係る定植装置の斜視図である。
図3図2のY-Y線縦断背面図である。
図4図2のX-X線縦断側面図である。
図5】定植パネルとホルダーの分解斜視図である。
図6】発芽装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の各実施の形態について、図1図6を参照しながら説明する。
【0012】
本発明は葉菜植物の水耕栽培に適する定植装置に関するものである。
【0013】
葉菜植物の水耕栽培では播種-発芽-定植の工程を経て収穫の工程に進むが本発明の各実施の形態に係る定植装置はこのうちの少なくとも、定植から収穫までの工程で利用されるものである。
【0014】
第一の実施の形態に係る定植装置は、図1に示すように、養液Wを収容した定植容器(図示せず)と、この定植容器の開口部に着脱自在に載置した定植板である定植パネルPと、吸水性、保水性を有する苗床Sとこの苗床Sを保持する吊り下げ具RとからなるホルダーQとを備え、上記苗床Sに播種させた種子U又は発芽させた苗を保持させた状態で上記吊り下げ具Rを上記定植パネルPの正面側に吊り下げたことを特徴とするものである。
【0015】
そして、この定植装置を使用して実施する本発明の定植方法は、図1に示すように、吸水性、保水性を有する苗床Sと、苗床Sを保持した吊り下げ具Rとを備えたホルダーQを予め用意しておく。
次に、苗床Sに種子Uを保持させながら当該苗床Sを吊り下げ具Rを介して定植パネルPの正面側に吊り下げて苗床Sの下部を栽培ベッド(図示せず)内の養液Wに浸すものである。
この場合、苗床Sを定植パネルPの正面側に吊り下げておき、この状態で苗床Sに播種させても良く、又は最初から苗床Sに播種させておき、その後で吊り下げ具Rを介して定植パネルPの正面側に吊り下げ、その後発芽から育成を経過させて収穫までこの状態を維持させる。
他方、本発明では、予め育苗床で播種して発芽させた苗を育苗床から切り取った単一の苗床Sを保持させながらこの苗床を吊り下げ具Rを介して定植パネルPの正面側に吊り下げて移植しても良い。
上記の定植方法の実施に使用する苗床Sは公知の種子挿入用のポットを備えたポリウレタンフォーム、種子挿入用の切り込みを備えたポリウレタンフォーム、又は二枚のシートを当接させて両者の間に種子挿入用の隙間を形成している給水シートで構成しても良い。
次に、本発明に係る第二の実施の形態に係る定植装置Tについて説明する。
この定植装置Tは第一の実施の形態に係る定植装置の苗床として、給水シートを利用したものである。
この定植装置Tは図2~図6に示すように、養液2を収容した栽培ベッドとして使用される定植容器1と、定植容器1の開口部に着脱自在に載置した複数の定植パネル3(定植板)と、定植パネル3に取り外し自在に吊り下げるホルダー4とを備えている。
定植パネル3は板状のパネル本体3aと、パネル本体3aの正面部(図5の右側面部)に形成した一つ又は複数の凹溝3bと、凹溝3bの両側に形成した引掛け溝3c、3cとで構成されている。
【0016】
ホルダー4は相対向する一対の吸水性、保水性を有するシート5a、5bを当接させた苗床としての給水シート5と、給水シート5を保持した吊り下げ具6とで構成されている。
【0017】
この場合、二枚のシート5a、5bの当接方法は、二枚のシート5a、5bのほぼ中間部を水平方向に沿って任意の間隔を置いて部分的に接合したり、或いは、播種された種子の落下は防止するが発芽した苗の根が延びた時この根の延びを阻害しない程度に接触させておくものである。
【0018】
この実施の形態に係る定植装置Tは、例えば、別の発芽装置を利用して上記各シート5a、5b間の隙間内で発芽させた苗PAを保持した状態で上記給水シート5を上記凹溝3b内に収容しながら上記吊り下げ具6を上記引掛け溝3cに引掛けて当該給水シート5の下部を上記定植容器1の養液2内に吊り下げて浸すものである。
【0019】
上記定植パネル3一つだけ定植容器1内に設け、この単一の定植パネル3にホルダー4を介して葉菜植物の苗PAを一つ吊り下げても良いが、図2図5に示すように二つ以上の定植パネル3を結合して水平方向に連続して載置し、それぞれの定植パネル3、3間に苗PAを吊り下げて多量生産に対応させるのが好ましい。
この場合は図5に示すように、それぞれのパネル本体3aの正面部に形成して凹溝3bの両側から水平に張出す少なくとも一対のフック3e、3eと、背面部にフック3e、3eと対向する位置に形成した一対の係合溝3d、3dとを設け、一方の、例えば、図5における左側の定植パネル3のフック3eを他方の右側の定植パネル3の係合溝3dに嵌合して二つの定植パネル3、3を結合し、少なくとも二つ以上の定植パネル3、3を平行に並べて定植容器1の開口部に載置するようになっている。
上記引掛け溝3cは図5に示すように、上記フック3eの背面部に上記凹溝3bに向けて形成している。
この引掛け溝3c、3cに後述する吊り下げ具6を引掛けた時ホルダー4が凹溝3b内に吊り下げられるようになっている。
【0020】
定植装置Tは図6に示す発芽装置Hで発芽させた葉菜植物の苗PAをホルダー4が保持したまま移植させ、栽培収穫まで管理させるものである。
【0021】
この場合、ホルダー4は発芽装置Hから定植装置Tまで連続して同じものをそのまま使用している。
【0022】
このホルダー4は図5図6に示すように、相対向する一対の吸水性、保水性を有するシート5a、5bを当接させて部分的に接合した給水シート5と、給水シート5を保持した吊り下げ具6とで構成されている。
吊り下げ具6は支持板6aと、支持板6aの正面側から突出して給水シート5を貫通する一つ又は複数の突起6bと、支持板6aの上端に設けた引掛け部6cとで構成されている。
引掛け部6cは支持板6aの上端に水平に取り付けたロッドで構成されているが、支持板6aの上端両側に張出すフックで構成しても良い。
ところで、上記した発芽装置Hは図6に示すように、発芽容器7と、発芽容器7内に吊り下げたホルダー4とを備え、シート5a、5b間に葉菜植物の種子を播種させた後にシート5a、5bに所定量の水を含浸させて発芽させるものである。
そして、図6に示すように、ホルダー4内で発芽した葉菜植物の苗PAはホルダー4ごと発芽容器7内から引きげられ、そのまま本発明の定植装置Tに持ち込まれ、後述するように定植パネル3に吊り下げられることで葉菜植物の苗PAが移植される。
即ち、本発明の定植装置Tでは、先ず図6に示すように、発芽装置Hから葉菜植物の苗PAをホルダー4に保持させたまま引きげ、次いでこの引き上げたホルダー4を図5に示すように定植装置Tに持ち込むものである。
次いで、吊り下げ具6に保持された給水シート5と苗PAを定植パネル3の凹溝3b内に収容させ、この状態で、吊り下げ具6における引掛け部6cを一対の引掛け溝3cに引掛け、給水シート5と苗PAの根PBを養液2に侵入させる。
この場合、定植パネル3が一つの場合は、一つの定植パネル3の凹溝3b内に給水シート5を吊り下げるだけで良い。
他方、定植パネル3を多数並べてそれぞれの定植パネル3にそれぞれ苗PAを吊り下げて多数移植させる場合は、例えば、図5における左側の一方の定植パネル3の凹溝3bに苗PAを収容した後、右側の他方の定植パネル3の係合溝3dに左側の定植パネル3のフック3eを係合させ、二つの定植パネル3、3を一対水平な状態で結合させなら苗PAを両側の定植パネル3、3間に吊り下げ、この状態を図4に示すように連続して定植パネル3を接続すれば良い。
上記のようにホルダー4を介して葉菜植物の苗PAを定植装置T内に吊り下げた時給水シート5、又は給水シート5と葉菜植物の苗PAの根PBが養液2に浸入し、根PBが直接又は給水シート5を介して養液2を吸収し、生育される。
上記の実施の形態に係る定植装置では発芽装置で発芽させた苗を定植パネル3に移植させているが、最初から給水シート5を定植パネル3に吊り下げておき、この状態で播種-発芽-定植-栽培の一連の工程を連続して良い。
【0023】
以上のように本発明の定植装置Tによれば、育苗床である発芽装置Hで発芽させた葉菜植物の苗PAを定植パネルP又は3にホルダーQ又は4を介して吊り下げるだけで移植作業を行えるので移植作業を簡単且つスムースに行える。
苗PAを定植パネルP又は3に吊り下げるだけ移植できるので無理に定植パネルP又は3に押し込む必要が無く、その結果苗PAの損傷を防止できる。
苗PAを吊り下げた時自動的に苗PAの根PBを養液W又は2内に垂れ下げることができ、根PBを養液W又は2内に侵入させる作業が不要である。
ホルダーQ又は4を介して苗PAを吊り下げるので、移植時に苗PAの根PBに付着している塵等が作業者の手に付着するの防止できる。
苗PAを保持したホルダーQ又は4は独立して定植パネルP又は3内に複数吊り下げできるので、それぞれの苗PAとホルダーQ又は4を独立して管理できる。
【0024】
さらに、成長した葉菜植物を定植装置Tから取り外す際、葉菜植物の根が成長に伴い太くなっていたとしても、定植パネル3、3を分解すれば、容易に根を定植装置Tから取り外すことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 定植容器
2、W 養液
3、P 定植パネル
3a パネル本体
3b 凹溝
3c 引掛け溝
3d 係合溝
3e フック
4、Q ホルダー
5 給水シート
5a、5b シート
6、R 吊り下げ具
6a 支持板
6b 突起
6c 引掛け
苗床
種子
定植装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6