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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】掘削装置、および、回転式掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21B 4/16 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
E21B4/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018239333
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100995
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501085234
【氏名又は名称】大智株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】古木 一功
(72)【発明者】
【氏名】古木 栄一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092447(JP,A)
【文献】特開2013-124535(JP,A)
【文献】特開平08-093373(JP,A)
【文献】特開2010-043404(JP,A)
【文献】特表2000-506574(JP,A)
【文献】特開2010-281121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 4/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に設けられ、該回転軸と平行に設けられた駆動ユニット格納部が複数形成されると共に、該駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造であり、第1接続部が一端側に形成された胴部、および、エアを動力源とし、前記駆動ユニット格納部毎に配設される駆動ユニットを有する装置本体と、
前記第1接続部と嵌合構造を以て接続する第2接続部が形成されると共に、前記駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であるガイド穴が複数形成されたチャックガイドと、
前記ガイド穴に個別に嵌挿され、前記駆動ユニットからの駆動力を受けて軸方向に進退動する接続軸部、および、該接続軸部の先端に設けられた打撃面を含むヘッド部を有する、複数の掘削ビットと、
前記胴部の他端側に接続されると共に、前記各駆動ユニットへエアを送気可能なタンク胴部、および、該タンク胴部内にエアを導入可能なエア導入部を有するエアタンクと、
該エアタンク内から前記駆動ユニットに供給する前記エアを、該各掘削ビットの一部または全部がタイミングを違えて進退動するように分配可能なエア分配部とを備え
前記装置本体と前記エアタンクとの接続箇所において、前記装置本体の前記胴部における他端側に形成された第3接続部、及び、前記エアタンクにおける前記タンク胴部に形成された前記第3接続部と嵌合構造を以て接続する第4接続部を有し、嵌合状態にある前記第3接続部と前記第4接続部の離脱を抑制する離脱抑制構造が設けられており、
前記第3接続部が、前記胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部で、該凸部の側面に雄ネジが螺刻された構造であり、前記第4接続部が、前記第3接続部を密嵌可能な内径の前記タンク胴部の開口端であると共に、該開口端近傍の内側面に、前記雄ネジと螺合する雌ネジが螺刻された構造である
掘削装置。
【請求項2】
前記エアタンクと前記装置本体の接続部分の外面には、溶接による溶接部が形成されている
請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記第1接続部が、前記胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部で、端面視で、該凸部に前記駆動ユニット格納部の開口部と非重複な凹曲面状の切欠部が形成された構造であり、
前記第2接続部が、同装置本体との接続箇所の端面に、前記第1接続部を密嵌可能な凹部が形成された構造である
請求項2に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部の当接部分に回り止め構造が設けられている
請求項3に記載の掘削装置。
【請求項5】
掘削装置の掘削方向端面視において、前記各掘削ビットの打撃面が、前記チャックガイドの回転軸の周りに配置されると共に、前記打撃面の1つのみが前記回転軸と重複して配置された第1配置態様、または、前記打撃面の前記回転軸側に角部が形成され、同回転軸を挟んで対向配置された一組の同打撃面の前記回転軸側の縁部のみが同回転軸と重複し、かつ、前記角部の先端が同回転軸と重複しないように配置された第2配置態様、のいずれかであり、前記各打撃面の前記回転軸側の縁部が同回転軸の近傍で近接するように集合させた構成である
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項6】
前記各駆動ユニットが、一の駆動ユニットと他の駆動ユニットで異なる駆動力を供給可能に構成され、前記第1配置態様においては前記打撃面が前記回転軸と重複して配置された前記掘削ビット、または、前記第2配置態様においては前記打撃面が前記回転軸側縁部のみ前記回転軸と重複して配置された前記掘削ビット、のいずれかに対し、前記各駆動ユニットのなかで最大の駆動力を供給する駆動ユニットを充てる構造である
請求項5に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記各掘削ビットが、前記チャックガイドの回転軸方向視で同掘削ビットの外周縁となる位置に沿って、前記打撃面から被掘削物方向に突出する突条打撃部が形成されたものである
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項8】
回転軸を中心に回転可能に設けられ、該回転軸と平行に設けられた駆動ユニット格納部が複数形成されると共に、該駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造であり、第1接続部が一端側に形成された胴部、および、エアを動力源とし、前記駆動ユニット格納部毎に配設される駆動ユニットを含む装置本体、前記第1接続部と嵌合構造を以て接続する第2接続部が形成されると共に、前記駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であるガイド穴が複数形成されたチャックガイド、前記ガイド穴に個別に嵌挿され、前記駆動ユニットからの駆動力を受けて軸方向に進退動する接続軸部、および、該接続軸部の先端に設けられた打撃面を含むヘッド部を含む、複数の掘削ビット、前記胴部の他端側に接続されると共に、前記各駆動ユニットへエアを送気可能なタンク胴部、および、該タンク胴部内に外部から供給されるエアを導入可能なエア導入部を含むエアタンク、および、該エアタンク内から前記駆動ユニットに供給する前記エアを、該各掘削ビットの一部または全部がタイミングを違えて進退動するように分配可能なエア分配部を有し、
前記装置本体と前記エアタンクとの接続箇所において、前記装置本体の前記胴部における他端側に形成された第3接続部、及び、前記エアタンクにおける前記タンク胴部に形成された前記第3接続部と嵌合構造を以て接続する第4接続部を有し、嵌合状態にある前記第3接続部と前記第4接続部の離脱を抑制する離脱抑制構造が設けられており、
前記第3接続部が、前記胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部で、該凸部の側面に雄ネジが螺刻された構造であり、前記第4接続部が、前記第3接続部を密嵌可能な内径の前記タンク胴部の開口端であると共に、該開口端近傍の内側面に、前記雄ネジと螺合する雌ネジが螺刻された構造である
掘削装置と、
該掘削装置に回転力を付与する回転駆動装置と、
を備える
回転式掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置、および、回転式掘削機に関する。更に詳しくは、従来の掘削装置(以下「従来装置」という)よりも打撃力が向上し、かつ、掘削作業中に掘削した穴(以下「掘削穴」という)内において掘削装置が破断し、先部が掘削穴内に残存する事故(以下「破断残存事故」)の発生を抑制することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に都市部の建設工事において、基礎杭の杭打等に伴う掘削作業時に発生する振動および騒音が問題となっており、この問題を解決すべく、本発明者等は、下記特許文献1に記載された回転式掘削機を提案している。図11に、この回転式掘削機の掘削装置を掘削装置9として示す。
【0003】
掘削装置9は、回転駆動装置(図示省略)によって回転運動を付与されて掘削作業(以下「回転掘削作業」という)を行うものであり、掘削装置9の掘削側端に、掘削装置9の直径よりも小さく、回転中心に配置されるビット(以下「中央ビット91」という)と、この中央ビットの周辺に配置されるビット(以下「周辺ビット92」という)とからなる複数のビットを有し、各ビットが互いに時間をずらして打撃駆動するように構成されている。これにより、掘削穴と略同径の単一のビットを上下動させて地盤を打撃していた従来のダウンザホールハンマと比較して、ビットの打撃のサイクルを速くし、代わりにビットの一回の打撃毎に生じる地盤への衝撃が小さくなるようにして、低振動かつ低騒音での掘削作業を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-92447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者等が掘削装置9を使用した回転式掘削機の運用を行っていたところ、掘削装置9は、中央ビット91の打撃と周辺ビット92の打撃とが同時に行われる場合があることが判明した。仮にこのような同時打撃が起きたとしても、従来のダウンザホールハンマよりも低振動、低騒音での掘削作業が可能であるが、本発明者等は更なる振動、騒音の低減を目指し、掘削装置9を改良した試作機93を製作した。
【0006】
図12(a)に示す試作機93は、掘削面において、中央ビットを廃止すると共に、周辺ビットについて、打撃面931を試作機93の回転軸方向に拡張した角部933を設け、各周辺ビットの角部933の先端角を回転軸9Rに位置させ、各角部933を互いに突き合わせて配置したものである(以下、このような構成の周辺ビットを「掘削ビット930」という)。なお、一般的に、掘削ビットの打撃面には、打撃面に対して凸部となる超硬合金製のチップが複数植設されると共に、各チップは所定間隔で分散配置されており、本試作機93の掘削ビット930についても同様にチップ934を植設した構成としている。
【0007】
そして、本発明者等が試作機93を使用した回転式掘削機の運用を行っていたところ、試作機93は、打撃力に関する第1の課題と、破断残存事故に関する第2の課題があることが判明した。
【0008】
第1の課題は、本発明者等が試作機93を使用して掘削作業を行った際、土砂あるいは軟岩等からなる軟質層(以下「軟質層」という)からなると予測される地盤の掘削作業を行い、想定外の硬岩に当たった際に判明した。
【0009】
試作機93は、掘削ビット930の一回の打撃毎に生じる地盤への衝撃が小さくなるようにして、低振動かつ低騒音での掘削作業を可能とするものであるが、その反面、硬岩に対しては打撃力不足で、硬岩を破砕できないか、あるいは、硬岩の破砕に時間を要する、または、破砕できずに硬岩の傾斜面等に沿って掘削方向が逸れる、という支障(以下「打撃力不足による硬岩破砕不能等の支障」という)が生じていた。
【0010】
このような場合、いったん試作機93を抜き取って、打撃力の大きな単ビット型ダウンザホールハンマと入れ替え、硬岩の破砕後に再度試作機93に入れ替えて、掘削作業を再開することで対処可能であるが、余計な手間と時間が掛かっていた。そして、単ビット型ダウンザホールハンマによる作業中は、大きな振動や騒音が発生していた。
【0011】
第2の課題は、同様に試作機93を使用して掘削作業を行った際、掘削穴内で試作機93が破断し、先部が掘削穴内に残存する事故が起きたことで判明した。
【0012】
試作機93は、装置本体と接続した接続物(例えば、掘削ビットの装着部分であるチャックガイド)との接続部が平坦面で、接続ボルトによって長さ方向に接続された構造であり、この構造においては、掘削装置が掘削穴中で回転する際に土圧による抵抗を受け、試作機93の長手方向において捻られるような剪断荷重が加わるため、接続ボルトに大きな剪断力が加わることになる。
【0013】
この状態が続くと接続ボルトが破断することがあり、接続ボルトが破断した場合、試作機93を掘削穴から引き揚げると、破断部分よりも先部が掘削穴内に残存すること(置き去り)になる。掘削作業を続行するためには、残存部分の引揚作業を要するが、残存部分もかなりの重量物であり、狭い穴内に収まった状態でもあるため、引揚作業に要する労力や時間、費用等の負担が大きかった。なお、掘削装置9でも同様の事故が起こりうるおそれがあった。
【0014】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、従来装置よりも打撃力が向上し、かつ、掘削作業中の掘削穴内における破断残存事故発生を抑制することができる掘削装置、および、回転式掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明の掘削装置は、回転軸を中心に回転可能に設けられ、回転軸と平行に設けられた駆動ユニット格納部が複数形成されると共に、駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造であり、第1接続部が一端側に形成された胴部、および、エアを動力源とし、駆動ユニット格納部毎に配設される駆動ユニットを有する装置本体と、第1接続部と嵌合構造を以て接続する第2接続部が形成されると共に、駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であるガイド穴が複数形成されたチャックガイドと、ガイド穴に個別に嵌挿され、駆動ユニットからの駆動力を受けて軸方向に進退動する接続軸部、および、接続軸部の先端に設けられた打撃面を含むヘッド部を有する、複数の掘削ビットと、胴部の他端側に接続されると共に、各駆動ユニットへエアを送気可能なタンク胴部、および、タンク胴部内に外部から供給されるエアを導入可能なエア導入部を有するエアタンクと、エアタンク内から駆動ユニットに供給するエアを、各掘削ビットの一部または全部がタイミングを違えて進退動するように分配可能なエア分配部とを備える。
【0016】
ここで、装置本体は、回転軸を中心に回転可能に設けられていることにより、回転駆動装置と組み合わせて回転力を付与された際に、回転軸を中心に軸回転し、複数の掘削ビットによる回転掘削作業を行うことができる。
【0017】
装置本体は、胴部に複数の駆動ユニット格納部が形成されていることにより、各駆動ユニットを格納することができる。また、駆動ユニット格納部は、回転軸と平行に設けられていることにより、駆動ユニットからの駆動力が掘削ビットヘ直線的に伝わり、伝達動力のロスを少なくすることができる。
【0018】
そして、駆動ユニット格納部は、回転軸と平行に設けられることによって回転軸の周りに配置されることになり、ロータリーテーブル等を使用して掘削装置全体に回転運動を加えた際に、軸ブレによる振動や、軸ブレに伴う掘削穴の不要な拡張を抑制することができる。
【0019】
更に、胴部は、従来装置のように胴部が中空筒体ではなく、駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造の柱体であることにより、従来装置と同体積であっても重量が大きくなるため、掘削対象である地盤等の被掘削物(以下「被掘削物」という)に対する打撃力が向上している。また、略中実構造であることによって、従来装置よりも剛性が高く、胴部に起因する破損が起きにくくなるので、耐用年数を延ばすことができる。
【0020】
なお、「駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造」とは、駆動ユニット格納部のほかに通気路あるいは通液路等が形成されているものの、駆動ユニット格納部と通液路等を除く部分が中実構造である態様を意味しており、また、中実構造も含む意味で使用している。
【0021】
胴部は、第1接続部が一端側に形成されていることによって、チャックガイドに形成された第2接続部と接続することができる。これにより、装置本体とチャックガイドとを嵌合状態で接続することができ、嵌合状態で接続された装置本体とチャックガイドは、接続箇所が一体化して補強され、これによって剪断強度が向上しているので、従来装置でみられた、当該接続箇所に起因する破断残存事故発生を抑制することができる。
【0022】
なお、第1接続部と第2接続部は、例えば、第1接続部が凸部である場合、第2接続部は凹部となるが、これに限定するものではなく、第1接続部が凹部で第2接続部が凸部であってもよい。また、第1接続部と第2接続部のそれぞれに複数の凸部と凹部が設けられた嵌合構造であってもよい。
【0023】
装置本体は、エアを動力源とする駆動ユニットを有することにより、装置の稼動にあたって、作動性が良く、動力源となる液状の作動流体等の廃棄物や排ガスが生じず、環境負荷を軽減することができる。また、装置本体は、駆動ユニットが駆動ユニット格納部毎に配設され、すなわち、駆動ユニットが複数であることにより、対応する配置の各掘削ビットヘ駆動力を供給し、複数の掘削ビットによる掘削作業を行うことができる。
【0024】
更に、駆動ユニットは駆動ユニット格納部毎に配設されていることにより、複数の駆動ユニットを回転軸の周囲にバランスの良い配置で設けることができ、回転掘削作業時おける軸ブレによる振動等を抑制することができる。
【0025】
本発明の掘削装置は、チャックガイドに第2接続部が形成されていることにより、前述した通り、装置本体の第1接続部と嵌合状態で接続することができ、これにより、装置本体と一体的に回転するように接続することができる。
【0026】
そして、チャックガイドは、複数のガイド穴が形成されていることにより、ガイド穴毎に掘削ビットを取り付けることができる。更に、各ガイド穴は、駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であることから、掘削ビットの接続軸部を軸方向に進退動するように嵌挿することができると共に、駆動ユニットからの駆動力を直線的に掘削ビットに伝えることができる。
【0027】
本発明の掘削装置は、各掘削ビットが接続軸部を有することにより、チャックガイドのガイド穴毎に嵌挿し、チャックガイドに取り付けることができる。
【0028】
そして、掘削ビットは、接続軸部がガイド穴に嵌挿されていることにより、駆動ユニットからの駆動力が接続軸部の基端に伝わり、駆動力を受けて接続軸部がガイド穴に沿って軸方向に進退動し、これに伴ってヘッド部を含む掘削ビット全体も進退動する。この結果、掘削ビットは、ヘッド部の打撃面で掘削装置の先にある被掘削物を打撃し、被掘削物の掘削を行うことができる。
【0029】
更に、各掘削ビットは、接続軸部がガイド穴に個別に嵌挿されていることにより、掘削ビットが各々独立して進退動することができる。
【0030】
ところで、駆動ユニット格納部は、回転軸と平行に設けられており、すなわち、回転軸の周辺に設けられた構成である。そして、チャックガイドの各ガイド穴は、駆動ユニット格納部と連通し同一軸線方向に貫通した構成であることから、チャックガイドの各ガイド穴も、回転軸の周辺に設けられた構成である。
【0031】
つまり、チャックガイドのガイド穴毎に嵌挿された各掘削ビットは、チャックガイドの回転軸の周りに配設された構成となり、この構成によれば、掘削装置を回転させながら掘削作業を行うと、各掘削ビットが被掘削物を複数回打撃することになり、被掘削物をムラ無く掘削することができる。
【0032】
本発明の掘削装置は、エアタンクがエア導入部を有することにより、タンク胴部内にエアを導入することができる。エアは、例えば、エア導入部にコンプレッサー等の機器に接続する等して外部から導入(供給)される態様が挙げられる。
【0033】
タンク胴部が装置本体の胴部の他端側に接続されることにより、装置本体とエアタンクを接続状態にすることができ、これにより、装置本体と一体的に回転するように接続することができる。そして、装置本体と接続状態にあるエアタンクは、タンク胴部内に導入されたエアを各駆動ユニットへ送気することができる。エアの送気は、例えば、装置本体とエアタンクの各々の接続面に開口し、エアタンクと駆動ユニット格納部とが通気可能に連通するように形成した経路を通して行う態様等が挙げられる。
【0034】
本発明の掘削装置は、エア分配部を備えることにより、駆動ユニットに供給されるエアを、掘削ビットの打撃タイミングが相違するように分配することができ、これにより、各掘削ビットが交互に被掘削物を打撃し、かつ、被掘削物に対する各掘削ビットの同時打撃が起きにくくいため、従来装置の一種であるダウンザホールハンマよりも低振動、低騒音で掘削作業を行うことができる。また、エア分配部の分配の態様としては、例えば、エアタンク内から駆動ユニットに至るエアを、供給量および供給タイミングの一方を違えるか、または、供給量および供給タイミングの両方を違えて分配する態様が挙げられる。
【0035】
なお、「各掘削ビットの一部または全部がタイミングを違えて」とは、各掘削ビットの進退動のタイミングが全て異なる場合と、各掘削ビットのうちの一部の進退動のタイミングが異なる場合の両方を含む意味で使用している。また、エア分配部の配置は特に限定するものではないが、例えば、エアタンク内や、エアタンクと装置本体の間に設ける態様であれば、エアの経路が短くて済み、エアタンク内に設けた場合は収まりが良く、かつ外力で破損する可能性も無いので、メンテナンスの面からより好ましい。
【0036】
また、掘削装置の掘削方向端面視において、各掘削ビットの打撃面が、チャックガイドの回転軸の周りに配置されると共に、打撃面の1つのみが回転軸と重複して配置された第1配置態様、または、打撃面の回転軸側に角部が形成され、回転軸を挟んで対向配置された一組の打撃面の回転軸側の縁部のみが回転軸と重複し、かつ、角部の先端が回転軸と重複しないように配置された第2配置態様、のいずれかであり、各打撃面の回転軸側の縁部が回転軸の近傍で近接するように集合させた構成である場合は、各掘削ビットが回転軸とその近傍において殆ど隙間を空けずに取り付けられた構成にすることができる。
【0037】
この掘削ビットの配置構成によれば、従来装置における掘削面中央に配置された掘削ビットを廃止したとしても、各掘削ビットが、打撃する被掘削物をムラ無く掘削することができ、特に硬岩掘削時において掘削穴の奥側中央に凸状の掘り残し部分(以下「中央凸部」という)が形成されることなく、掘削穴底を略平坦にする施工を行うことができる。
【0038】
中央凸部に関し、図12を参照して詳しく説明する。本発明者は、掘削装置9を更に改良し、前述した構成の試作機93(図12(a)参照)を作成した。そして、本発明者が試作機93を用いて掘削作業を行った際、土中の硬岩に偶然当たり、作業後に試作機93を引き抜いたところ、掘削穴H1の奥側中央に中央凸部H6が形成されていた(図12(c)参照)。
【0039】
加えて、各掘削ビット930の角部933近傍が摩滅すると共に、打撃面931自体も凹んだ状態の中央変形部H7が発生していた(図12(b)参照)。後日、硬岩に対する掘削作業を再試行したところ、やはり、中央凸部H6の形成と、試作機93の中央変形部H7の発生が確認された。
【0040】
前述の中央凸部H6形成と中央変形部H7発生の原因は必ずしも明らかではないが、以下のような理由によるのではないかと推察される。
(a)試作機93の稼働時において、掘削装置9の掘削側端に配置された掘削ビット930の各々は、個別に異なるタイミングで進退動作をする。つまり、退入状態と進出状態の各掘削ビット930が混在しており、その結果、各掘削ビット930に加わる荷重(自重による軸荷重、打撃による衝撃荷重)は、等分布せずに、進出状態の掘削ビット930に集中することになり、
(b)また、進出状態の掘削ビット930の打撃面931の縁、あるいは縁に近い部分が、平坦な他の部分より擦り減りやすく、特に角部933は先細りになっているので、先端に行くほど強度が弱い。加えて、角部とその近傍は、先細りになって他の部分よりも面積が狭いため、チップ934を他の部分と同様の密度で配置すると、植設可能なチップ934の数が少なく、
(c)前述の通り、進出状態の掘削ビット930に荷重が集中し、更に、進出状態の掘削ビット930のなかでも角部933に荷重が集中しやすいことを鑑みると、角部933に植設された少数のチップ934には、他の部分のチップより大きな負荷が加わり、これによって、他の部分よりも早い段階でチップ934が摩滅するか、あるいはチップ934の脱落といった破損が生じ、
(d)チップ934の破損で角部933近傍の掘削力が著しく低下したことで、打撃面931の他の部分との掘削力に差が生じると共に、チップ934よりも強度が劣るベース部分で直接掘削する状態になって、角部933とその近傍はベース部分ごと摩損または塑性変形して更に掘削力が低下し、
(e)この結果、打撃面931の中で回転軸9R近傍とその他の部分の掘削力の違いから、掘削穴H1の穴底面H3において外周よりも中央部が盛り上がった形状の中央凸部H6が形成され、
(f)更に、掘削作業中の試作機93の被掘削物側端には、自機の重量あるいは機外からの荷重による強い押圧力が生じており、この押圧状態下で、中央凸部H6に対し、前述の角部933近傍の打撃面931が当たりながら試作機93が回転し続けたことで、塑性変形あるいは偏摩耗が起き、打撃面931に中央変形部H7が発生した、と考えられる。
【0041】
しかしながら、本発明の掘削装置によれば、各掘削ビットが、前述の第1配置態様または第2配置態様のいずれかによって、各打撃面の回転軸側の縁部がチャックガイドの回転軸の近傍で近接するように集合させた構成であることによって、硬岩に対しても掘削作業が可能であると共に、掘削穴の奥側中央における中央凸部形成を抑制することができ、この中央凸部の形成に伴って生じる中央変形部の発生(即ち、掘削ビットの変形や偏摩耗)を抑制することができる。
【0042】
即ち、各掘削ビットが第1配置態様で構成されている場合、打撃面の1つのみがチャックガイドの回転軸と重複して配置される(以下「回転軸重複配置」という)ので、打撃面が回転軸とその近傍に常時重複した状態にすることができる。この回転軸重複配置によれば、回転掘削作業時に、前述の打撃面の一部がチャックガイドの回転軸とその近傍に確実に常時重複し通過する状態で掘削されるので、被掘削面の中央を常時掘削できると共に、角部への負荷集中が緩和される。この結果、硬岩掘削時においても、中央凸部の形成が抑制され、これに伴って中央変形部の発生も抑制される。
【0043】
そして、各掘削ビットが第2配置態様で構成されている場合、打撃面のチャックガイドの回転軸側に角部が形成され、回転軸を挟んで対向配置された一組の打撃面の回転軸側の縁部のみが回転軸と重複し、かつ、角部の先端が回転軸と重複しないように配置されるので、回転掘削作業時に、掘削ビットの角部先端が回転軸と重複しない配置(以下「打撃面への回転軸非重複配置」という)となって、角部先端ではなく、長尺な縁部を、回転軸とその近傍を断続的または略連続的に通過させることができる。これにより、被掘削面の中央を、対向配置された一組の打撃面のチャックガイドの回転軸側の縁部とこれに沿う部分の打撃面で掘削することになり、打撃面に集中する負荷を複数(少なくとも2つ)の打撃面で分散させることができると共に、角部への負荷集中も緩和され、この結果、硬岩掘削時においても、中央凸部の形成が抑制され、これに伴って中央変形部の発生も抑制される。
【0044】
また、各駆動ユニットが、一の駆動ユニットと他の駆動ユニットで異なる駆動力を供給可能に構成され、第1配置態様においては打撃面が回転軸と重複して配置された掘削ビット、または、第2配置態様においては打撃面が回転軸側縁部のみ前記回転軸と重複して配置された掘削ビット、のいずれかに対し、各駆動ユニットのなかで最大の駆動力を供給する駆動ユニットを充てる構造である場合は、回転軸に重複して配置された掘削ビットの打撃力を特に強化することができる。
【0045】
前述の構造によって、全ての掘削ビットが付与する打撃力が均一ではなく、打撃力に差を付けることができるので、例えば、回転掘削作業時に硬岩に当たった場合、最大の駆動力が供給された掘削ビットが硬岩を破砕するか、または、最初の打撃で硬岩に亀裂を生じさせ、続く他の掘削ビットの打撃によって小片に粉砕する(以下、これら作用効果を「硬岩を破砕等する」と総称する)ことができ、これによって、硬岩掘削時における中央凸部の形成抑止および中央変形部の発生抑制の各効果を更に高めることができる。
【0046】
ところで、各掘削ビット全ての打撃力を向上させようとした場合、駆動ユニットの各部品(ピストン等)の大型化等の措置が必要であり、掘削力の向上と引き換えに、装置全体の大型化、エアの消費量増加といった問題が生じるが、本発明は、少なくとも、各掘削ビットのいずれか1つについて打撃力を向上させる構成であるため、装置全体の大型化、駆動ユニットのエア消費量増加を必要最小限に抑えることもできる。
【0047】
加えて、前述の通り、掘削装置9等の従来装置では、想定外の硬岩に当たった場合に打撃力不足による硬岩破砕不能等の支障が生じうるが、本発明の掘削装置であれば、前述のいずれかの態様に設定された各掘削ビットによって硬岩に対処可能であるため、機材の入れ替えを行うことなく軟質層および硬岩のいずれにも対応することができ、これによって、機材の入れ替えによる余計な手間と時間を省略することができる。
【0048】
また、各掘削ビットが、チャックガイドの回転軸方向視で掘削ビットの外周縁となる位置に沿って、打撃面から被掘削物方向に突出する突条打撃部が形成されたものである場合は、突条に沿って荷重を集中させる突条打撃部を以て、被掘削物に対する最初の打撃を加えることができるので、平坦な打撃面による打撃よりも更に打撃力が向上しており、仮に、被掘削物が掘削穴中の硬岩であっても、この打撃をきっかけとして硬岩を破砕等することができる。
【0049】
そして、前述の各掘削ビットの打撃面は、1つの平坦面のみから構成されるもののみならず、例えば、被掘削側となる面が段付きで複数面から構成されるもの、異なる複数の傾斜面を含むもの等の態様であってもよい。また、突条打撃部が形成された掘削ビットは、各掘削ビットの少なくとも一つ以上であり、全ての掘削ビットに突条打撃部が形成された態様についても当然含む。なお、各掘削ビットは、側面にも掘削部分(例えば、穴の内側壁を掘削する部分を有していてもよいが、当該側面の掘削部分は、前述の打撃面には該当しない。
【0050】
また、第1接続部が、胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部で、端面視で、凸部に駆動ユニット格納部の開口部と非重複な凹曲面状の切欠部が形成された構造であり、
第2接続部が、装置本体との接続箇所の端面に、第1接続部を密嵌可能な凹部が形成された構造である場合は、第1接続部と第2接続部における前述の凹部と凸部による嵌合構造を以て、装置本体とチャックガイドを接続することができる。
【0051】
第1接続部は、胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部であることにより、凹部である第2接続部に嵌入させることができる。また、第1接続部は、端面視で、凸部に駆動ユニット格納部の開口部と非重複な凹曲面状の切欠部が形成されていることにより、駆動ユニット格納部とガイド穴が直線的に連通し、掘削ビットの接続軸部の進入と進退動を阻害しない構造となっている。
【0052】
第2接続部は、装置本体との接続箇所の端面に、第1接続部を密嵌可能な凹部が形成されていることにより、第2接続部に嵌合した第1接続部と密接に一体化し、掘削装置の長手方向に交差する方向で加わる外力に対して、嵌合部分全体で応力を分散する(応力集中を抑制する)ことができ、破断残存事故発生を抑制することができる。
【0053】
また、第1接続部と第2接続部の当接部分に回り止め構造が設けられている場合は、回転掘削作業時に、第1接続部と前記第2接続部が当接した当接部分において、相互に滑る回転が生じないようすることができる。これにより、装置本体とチャックガイドとの継ぎ目で生じる剪断応力に対する構造的な剛性が向上し、装置本体とチャックガイドとの間で破断残存事故発生を抑制することができる。
【0054】
なお、第1接続部と前記第2接続部の当接部分としては、例えば、第1接続部の先端面と第2接続部の底面の組み合わせが挙げられるが、これに限定するものではなく、第1接続部の側面と第2接続部の内側の側面の組み合わせであってもよい。また、回り止め構造としては、例えば、第1接続部に設けられた回り止め軸あるいはピンと、第2接続部に形成された回り止め軸の受け入れ穴からなる構造が挙げられるが、回り止めが可能な構造であれば、特に限定するものではない。
【0055】
また、装置本体とエアタンクとの接続箇所において、胴部の他端側に、凸部あるいは凹部のいずれかからなる第3接続部が形成されると共に、タンク胴部に、第3接続部と嵌合構造を以て接続する第4接続部が形成され、嵌合状態にある第3接続部と第4接続部の離脱を抑制する離脱抑制構造が設けられている場合は、前述の第3接続部と第4接続部の嵌合構造を以て、エアタンクと装置本体を接続することができる。
【0056】
装置本体は、胴部に、凸部あるいは凹部のいずれかからなる第3接続部が他端側に形成されていることによって、エアタンクに形成された第4接続部と接続することができる。これにより、装置本体とエアタンクとを嵌合状態で接続することができ、嵌合状態で接続された装置本体とエアタンクは、接続箇所が一体化して補強され、これによって剪断強度が向上しているので、従来装置でみられた、当該接続箇所に起因する破断残存事故発生を抑制することができる。
【0057】
そして、エアタンクは、タンク胴部に第4接続部が形成されていることにより、前述した通り、装置本体の第3接続部と嵌合状態で接続することができ、これにより、装置本体と一体的に回転するように接続することができる。
【0058】
更に、前述の離脱抑制構造が設けられていることにより、接続されたエアタンクと装置本体とが離脱する(外れる)ことを抑制することができる。また、離脱抑制構造としては、例えば、第3接続部と第4接続部を貫通する係止ピンや、第3接続部と第4接続部の螺合構造等が挙げられるが、これに限定するものではなく、部材間の離脱抑制が可能な他の公知構造あるいは公知手段であってもよい。
【0059】
なお、第3接続部と第4接続部は、例えば、第3接続部が凸部である場合、第4接続部は凹部となるが、これに限定するものではなく、第3接続部が凹部で第4接続部が凸部であってもよい。また、第3接続部と第4接続部のそれぞれに複数の凸部と凹部が設けられた嵌合構造であってもよい。
【0060】
また、第3接続部が、胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部で、凸部の側面に雄ネジが螺刻された構造であり、第4接続部が、第3接続部を密嵌可能な内径のタンク胴部の開口端であると共に、開口端近傍の内側面に雌ネジが螺刻された構造である場合は、第3接続部と第4接続部における前述の凹部と凸部による嵌合構造を以て、装置本体とエアタンクを接続することができる。
【0061】
第3接続部は、胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な凸部であることにより、凹部である第4接続部に嵌入させることができる。また、第3接続部は、凸部の側面に雄ネジが螺刻された構造であることにより、第4接続部に螺刻された雌ネジと螺着させることができる。つまり、離脱抑止構造が雄ネジと雌ネジの組み合わせから簡易な構成でありながら、エアタンクと装置本体を強固に接続して離脱しないようにすることができ、また、組立時あるいは分解時の作業性も良い。
【0062】
第4接続部は、第3接続部を密嵌可能な内径のタンク胴部の開口端であることにより、第4接続部に嵌合した第3接続部と密接に一体化し、掘削装置の長手方向に交差する方向で加わる外力や捻り方向に生じる剪断力に対して、嵌合部分全体で応力を分散する(応力集中を抑制する)ことができ、破断残存事故発生を抑制することができる。なお、エアタンクと装置本体の接続に接続ボルトが不要な構造であることから、前述した接続ボルトに起因する破断残存事故が起きることがない。
【0063】
上記の目的を達成するために本発明の回転式掘削機は、回転軸を中心に回転可能に設けられ、回転軸と平行に設けられた駆動ユニット格納部が複数形成されると共に、駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造であり、第1接続部が一端側に形成された胴部、および、エアを動力源とし、駆動ユニット格納部毎に配設される駆動ユニットを含む装置本体、第1接続部と嵌合構造を以て接続する第2接続部が形成されると共に、駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であるガイド穴が複数形成されたチャックガイド、ガイド穴に個別に嵌挿され、駆動ユニットからの駆動力を受けて軸方向に進退動する接続軸部、および、接続軸部の先端に設けられた打撃面を含むヘッド部を含む、複数の掘削ビット、胴部の他端側に接続されると共に、各駆動ユニットへエアを送気可能なタンク胴部、および、タンク胴部内に外部から供給されるエアを導入可能なエア導入部を含むエアタンク、および、エアタンク内から駆動ユニットに供給するエアを、各掘削ビットの一部または全部がタイミングを違えて進退動するように分配可能なエア分配部を有する掘削装置と、掘削装置に回転力を付与する回転駆動装置とを備える。
【0064】
ここで、本発明の回転式掘削機は、掘削装置の装置本体が回転軸を中心に回転可能に設けられていることにより、回転駆動装置により回転力を付与された際に、回転軸を中心に軸回転し、複数の掘削ビットによる回転掘削作業を行うことができる。
【0065】
装置本体は、胴部に複数の駆動ユニット格納部が形成されていることにより、各駆動ユニットを格納することができる。また、駆動ユニット格納部は、回転軸と平行に設けられていることにより、駆動ユニットからの駆動力が掘削ビットヘ直線的に伝わり、伝達動力のロスを少なくすることができる。
【0066】
そして、駆動ユニット格納部は、回転軸と平行に設けられることによって回転軸の周りに配置されることになり、ロータリーテーブル等を使用して掘削装置全体に回転運動を加えた際に、軸ブレによる振動や、軸ブレに伴う掘削穴の不要な拡張を抑制することができる。
【0067】
更に、胴部は、従来装置のように胴部が中空筒体ではなく、駆動ユニット格納部を除く部分が略中実構造の柱体であることにより、従来装置と同体積であっても重量が大きくなるため、被掘削物に対する打撃力が向上している。また、略中実構造であることによって、従来装置よりも剛性が高く、胴部に起因する破損が起きにくくなるので、耐用年数を延ばすことができる。
【0068】
胴部は、第1接続部が一端側に形成されていることによって、チャックガイドに形成された第2接続部と接続することができる。これにより、装置本体とチャックガイドとを嵌合状態で接続することができ、嵌合状態で接続された装置本体とチャックガイドは、接続箇所が一体化して補強され、これによって剪断強度が向上しているので、従来装置でみられた、当該接続箇所に起因する破断残存事故発生を抑制することができる。
【0069】
装置本体は、エアを動力源とする駆動ユニットを有することにより、装置の稼動にあたって、作動性が良く、動力源となる液状の作動流体等の廃棄物や排ガスが生じず、環境負荷を軽減することができる。また、装置本体は、駆動ユニットが駆動ユニット格納部毎に配設され、すなわち、駆動ユニットが複数であることにより、対応する配置の各掘削ビットヘ駆動力を供給し、複数の掘削ビットによる掘削作業を行うことができる。
【0070】
更に、駆動ユニットは駆動ユニット格納部毎に配設されていることにより、複数の駆動ユニットを回転軸の周囲にバランスの良い配置で設けることができ、回転掘削作業時おける軸ブレによる振動等を抑制することができる。
【0071】
掘削装置は、チャックガイドに第2接続部が形成されていることにより、前述した通り、装置本体の第1接続部と嵌合状態で接続することができ、これにより、装置本体と一体的に回転するように接続することができる。
【0072】
そして、チャックガイドは、複数のガイド穴が形成されていることにより、ガイド穴毎に掘削ビットを取り付けることができる。更に、各ガイド穴は、駆動ユニット格納部と直線状に連通した貫通穴であることから、掘削ビットの接続軸部を軸方向に進退動するように嵌挿することができると共に、駆動ユニットからの駆動力を直線的に掘削ビットに伝えることができる。
【0073】
掘削装置は、各掘削ビットが接続軸部を有することにより、チャックガイドのガイド穴毎に嵌挿し、チャックガイドに取り付けることができる。そして、掘削ビットは、接続軸部がガイド穴に嵌挿されていることにより、駆動ユニットからの駆動力が接続軸部の基端に伝わり、駆動力を受けて接続軸部がガイド穴に沿って軸方向に進退動し、これに伴ってヘッド部を含む掘削ビット全体も進退動する。
【0074】
この結果、掘削ビットは、ヘッド部の打撃面で掘削装置の先にある被掘削物を打撃し、被掘削物の掘削を行うことができる。更に、各掘削ビットは、接続軸部がガイド穴に個別に嵌挿されていることにより、掘削ビットが各々独立して進退動することができる。
【0075】
なお、前述の通り、チャックガイドのガイド穴毎に嵌挿された各掘削ビットは、チャックガイドの回転軸の周りに配設された構成となり、この構成によれば、掘削装置を回転させながら掘削作業を行うと、各掘削ビットが被掘削物を複数回打撃することになり、被掘削物をムラ無く掘削することができる。
【0076】
掘削装置は、エアタンクがエア導入部を有することにより、タンク胴部内にエアを導入することができる。また、エアタンクは、タンク胴部が装置本体の胴部の他端側に接続されることにより、装置本体とエアタンクを接続状態にすることができ、これにより、装置本体と一体的に回転するように接続することができる。そして、装置本体と接続状態にあるエアタンクは、タンク胴部内に導入されたエアを各駆動ユニットへ送気することができる。
【0077】
掘削装置は、エア分配部を備えることにより、駆動ユニットに供給されるエアを、掘削ビットの打撃タイミングが相違するように分配することができ、これにより、各掘削ビットが交互に被掘削物を打撃し、かつ、被掘削物に対する各掘削ビットの同時打撃が起きにくくいため、従来装置の一種であるダウンザホールハンマよりも低振動、低騒音で掘削作業を行うことができる。
【0078】
更に、本発明の回転式掘削機は、前述の回転駆動装置を備えることにより、回転駆動装置と組み合わせて掘削装置を回転させることができ、これによって、掘削ビット群が周方向に回転しながら被掘削物に打撃力を加えて行う掘削方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の掘削装置、および、回転式掘削機によれば、従来装置よりも打撃力が向上し、かつ、掘削作業中の掘削穴内における破断残存事故発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明の回転式掘削機を示す正面図である。
図2図1に示す掘削装置(第1実施形態)を構成部品毎に分解して示す断面視説明図である。
図3図1に示す掘削装置全体の縦方向断面を示すと共に、装置本体とチャックガイドの接続構造を一部拡大して示す断面視説明図である。
図4図3で示す装置本体とチャックガイドの接続構造を斜視方向から示す説明図であり、(a)は装置本体の下面を表した斜視図、(b)はチャックガイドの上面を表した斜視図である。
図5】掘削装置の掘削ビットの打撃面の配置を示しており、(a)は第1実施形態の底面図、(b)は(a)で示す掘削ビットの他の態様(変形例1)の底面図である。
図6】掘削装置(第2実施形態)の掘削ビットの打撃面の配置を示しており、(a)は第2実施形態の底面図、(b)は(a)で示す掘削ビットの他の態様(変形例2)の底面図である。
図7】掘削装置(第3実施形態)の掘削ビットの打撃面の配置を示しており、(a)は第3実施形態の底面図、(b)は(a)で示す掘削ビットの他の態様(変形例3)の底面図、(c)は(a)で示す掘削ビットの他の態様(変形例4)の底面図である。
図8】掘削装置(第4実施形態)の掘削ビットを示しており、(a)は要部を拡大した側面視説明図、(b)は(a)で示す掘削ビットの打撃面の配置を示す底面図、(c)は(a)で示す掘削ビットの他の態様(変形例5)の底面図である。
図9】掘削装置(第5実施形態)であり、掘削装置全体の縦方向断面を示すと共に、エアタンクと装置本体の接続構造を一部拡大して示す断面視説明図である。
図10図9に示すエアタンクと装置本体の接続構造を示す説明図である。
図11】特許文献1記載の掘削装置を示す斜視図である。
図12】(a)は本発明前の掘削装置の試作機を示す斜視図、(b)は(a)に示す試作機の掘削作業前後の掘削ビットを比較した説明図、(c)は(a)に示す試作機により掘削された掘削穴の内部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1-10を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、〔第1実施形態〕-〔第5実施形態〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0082】
図1に示す回転式掘削機1は、掘削装置2と、掘削装置2に回転運動を付与可能な回転駆動装置3を備える。各部については以下で詳述する。
【0083】
〔第1実施形態〕
(掘削装置)
図1図5(a)を参照する。掘削装置2は、エアタンク21、装置本体22、チャックガイド25、複数の掘削ビット26、および、エア分配部27を備える。
【0084】
(装置本体)
装置本体22は、3つの駆動ユニット220、および、各駆動ユニット220を格納する胴部221を有する構造である。胴部221は、一方の端面(図2等で上方の端部)に第3接続部222が設けられ、他方の端面(図2等で下方の端部)に第1接続部223が設けられている。
【0085】
胴部221には駆動ユニット格納部224が設けられている。駆動ユニット格納部224は、装置本体22の回転軸の周りに、回転軸と平行に配置された貫通穴であり、等間隔で合計3つ設けられ、嵌挿された駆動ユニット220が丁度収まる広さに形成されている。また、駆動ユニット格納部224は、図2等で下方の端面にある開口部から駆動ユニット220を嵌挿することができるように構成されている。
【0086】
駆動ユニット格納部224は、回転軸と平行に設けられているため、駆動ユニット220からの駆動力が掘削ビット26へ直線的に伝わり、伝達動力のロスが少ない。また、駆動ユニット格納部224は、回転軸の周りに回転軸と平行に設けられているため、回転駆動装置3を使用して掘削装置2全体に回転運動を加えた際に、軸ブレによる振動や、軸ブレに伴う掘削穴の不要な拡張が抑制される。
【0087】
そして、胴部221は、金属製の円柱体であり、駆動ユニット格納部224を除く部分が略中実構造である(図2-3参照)。当該構造を採用したことにより、掘削装置2は、従来装置(胴部が中空筒体)と比較して同体積であっても重量が大きく(従来装置の約2倍の重量となる)、被掘削物に対する打撃力が向上している。また、胴部221は略中実構造であるため剛性が高く、外力による変形がほぼ起きないため、耐用年数を延ばすことができる。
【0088】
更にまた、胴部221の表面には、高張力鋼板による表面材(図示省略)が取り付けられている。この表面材を有することによって、胴部221自体が摩耗しないように対処されており、表面材が摩損あるいは毀損した際には、表面材の交換ないし補修を行うことで、耐摩耗性を回復することができる。
【0089】
第1接続部223は、胴部22の他方の端面(図2等において胴部22の下端)に設けられており、これを以て装置本体22とチャックガイド25を接続することができる。なお、装置本体22とチャックガイド25の接続には、接続ボルト251を使用している。
【0090】
第3接続部222は、胴部の一方の端部(図2等において胴部22の上端)に設けられている。本実施形態では第3接続部222は平坦面であり、これを以て、同様に平坦面であるエアタンク21の第4接続部212の下面を隙間無く当接させて、エアタンク21と装置本体22を接続することができる。
【0091】
本実施形態において、第1接続部223は、胴部221の長手方向中間部分の外径よりも径小な円盤状凸部を、後述するチャックガイド25のガイド穴250の延長方向に沿って凹曲面に切り欠いた形状(端面方向視で略三叉状)で構成されている。そして、チャックガイド25は、その上面(装置本体22方向に向いた端面)に、第1接続部223が丁度収まる凹部で構成された第2接続部252を有する構造である。
【0092】
当該構造を有することにより、第1接続部223と第2接続部252が、凹凸による嵌合構造を以て接続され、第2接続部252に第1接続部223が入り込んで一体化し、掘削装置2の長手方向に交差する方向で加わる外力に対して、嵌合部分全体で応力を分散する(換言すると、特定箇所への応力集中を抑制する)ことができ、破断残存事故発生を抑制することができる。
【0093】
そして、第1接続部223の凸部は、本来であればガイド穴250と重複する部分が、ガイド穴250の延長方向に沿って凹曲面に切り欠かれ、ガイド穴250の縁に沿った形状となっていることから、掘削ビットの接続軸部260の進退動を阻害しない。
【0094】
更に、第1接続部223と第2接続部252が当接する当接面には、回り止め構造4が設けられている。回り止め構造4は、第1接続部223に設けられた第1嵌入穴41(合計3箇所)と、第1嵌入穴41と対応する位置で第2接続部252に設けられた第2嵌入穴42(合計3箇所)が形成され、相互に位置を合わせた両穴に丁度収まる長さおよび太さの回り止め軸43が嵌着された構造である。
【0095】
回り止め構造4を有することにより、掘削装置2の回転掘削作業時に、第1接続部223と第2接続部252が、当接面において相互に滑る回転が生じないようすることができる。これにより、接続ボルト251単体で接続する構造よりも、装置本体22とチャックガイド25との継ぎ目で生じる剪断応力に対する構造的な剛性が向上し、装置本体22とチャックガイド25との間における破断残存事故発生を抑制することができる。
【0096】
駆動ユニット220は、エアを動力源として駆動力を供給することができる構造であり、本実施形態ではピストン構造のものを採用している。駆動ユニット220は、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば、特開昭61-92288号公報記載)とほぼ同様の構造であり、シリンダー、ピストン、チェックバルブ、エアディストリビュータ、バルブスプリング、メイクアップリング、O-リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング(以上、符号省略)等を有する構造である。
【0097】
なお、駆動ユニット220の作用を簡単に説明すると、駆動ユニット220に流入したエアが、まず、ピストン側面を通過して掘削ビット側(図2等において駆動ユニット220下方)に回り、ピストンがエアタンク側へ移動する。次に、このピストンの移動に伴ってエアがピストンのエアタンク側に回ると共に、後述する掘削ビット26の接続軸部260のエア流入口263から打撃面262の開口部エア排出口264へエアが排出され、これにより、エアタンク側から掘削ビット側へピストンが移動する。
【0098】
この動作の繰り返しによりピストンが進退動し、ピストンが掘削ビット側へ移動した際に掘削ビット26へ衝撃力(前述の駆動力に相当する)が加わり、この衝撃力によって掘削ビット26が駆動する。また、この駆動ユニット4は、エア分配部27によって、エアの流入タイミングが調節され、ピストンが各々異なるタイミングで進退するように設定されている。
【0099】
(チャックガイド)
チャックガイド25は、被掘削側に切欠が形成された平面視略円形状で所定の厚みを有する形状で、切欠に沿って複数のガイド穴250が形成されている。なお、チャックガイド25は、接続ボルト251とナット(符号省略)からなる締着具を用いて装置本体22に接続されている。チャックガイド25は、前述の通り装置本体22と接続されているので、装置本体22が回転する時は、装置本体22と一体的に回転する。
【0100】
チャックガイド25の上面は、前述の通り、第1接続部223が丁度収まる凹部が設けられ、同部分が第2接続部252を構成する。第2接続部252は、第1接続部223と対応する形状(端面方向視で略三叉状の凹み)であり、チャックガイド25の回転軸に重複し、かつ一部が各ガイド穴250の穴縁に沿うように形成されている。第2接続部252は、第1接続部223との嵌合状態において、第1接続部223の外周面(側面および下部端面)と第2接続部252の内周面(側面および底面)とが殆ど隙間無く密着し、当接する構造となっている。
【0101】
ガイド穴250は、チャックガイド25の回転軸の周りに、回転軸と平行、かつ駆動ユニット格納部224と連通し同一軸線方向に貫通して形成された貫通穴であり、等間隔で合計3つ設けられ、後述する掘削ビット26の接続軸部260が摺動可能に丁度収まる広さに形成されている。
【0102】
また、ガイド穴250は、図2等で下方の端面にある開口部から奥に向かって、所定長さの内径部分が断面視六角形に形成され、当該開口部から掘削ビット26の接続軸部260を嵌挿することができ、嵌挿状態において接続軸部260がガイド穴250に沿って進退することができる。
【0103】
つまり、チャックガイド25は、各ガイド穴250を介して掘削ビット26を取り付けることができ、ガイド穴250と連通した位置の駆動ユニット格納部224に格納された駆動ユニット220からの駆動力を、掘削ビット26に伝えることができる。
【0104】
また、第2接続部252が形成された側のガイド穴250の開口縁には、その外縁部分に沿って全体が繋がる溝状の凹部253が形成され、同凹部に、同凹部の幅および深さよりもやや大きいゴムリング254が圧入して嵌め込まれており(図3の拡大部分と図4(b)を参照)、これにより、ガタツキを押さえて緩衝効果を奏するように構成している。
【0105】
(掘削ビット)
図2図4図5(a)を参照する。掘削ビット26は、接続軸部260と、図2等において接続軸部260の下端部(駆動ユニット220と反対方向)に設けられたヘッド部261を有する。また、図2等においてヘッド部261の下端部(接続軸部260と反対方向)には打撃面262が設けられ、略中央にエア排出口264が形成されている。
【0106】
接続軸部260は、駆動ユニット220からの駆動力を受ける部分であり、ガイド穴250に嵌挿可能な略筒状の外形であって、先端はエア流入口263が形成された自由端であり、基端はヘッド部261上部と固着されている。なお、接続軸部260内の流路と、ヘッド部261内に形成された流路とが連通し、エア流路265を構成している。エア流路265は、エア流入口263を始点とし、エア排出口264を終点としており、流路中にヘッド部261方向へ向かうエアの逆流を防止する逆止弁(図示省略)が設けている。
【0107】
更に詳しくは、接続軸部260は、軸線方向中間からヘッド部261側の間の外周面が断面視六角形に形成されており、当該部分は、ガイド穴250への嵌挿時においてスプライン軸としての周方向への回転防止機能を発揮し、かつ、接続軸部260の進退動を阻害しないように構成されている。また接続軸部260は、前述したハンマビットリティーナリングとOリングにより、ガイド穴250から外れないように装着されている。
【0108】
ヘッド部261は、略五角柱状であり、打撃面262も略五角形である。打撃面262は、チャックガイド25への取着状態(以下、本段落中で単に「取着状態」という)における底面視で、掘削装置2の外周の一部に沿う部分が円弧状に設けられ、当該円弧状部分の反対方向(すなわち、掘削装置2の回転軸側)に先端が鈍角(略120°)な角部267が設けられている。角部267は、同角部を挟む両辺の長さが同一である(等辺)構成となっている。
【0109】
そして、ヘッド部261は、打撃面262の全域と、打撃面262から立ち上がった側壁の打撃面寄りの一部箇所に、ボタン状の超硬合金製のチップ(符号省略)が所定間隔で植設(分散配置)されている。
【0110】
エア排出口264は、打撃面262の略中央に形成され、ここからエア流路265を通過したエアが排出される。また、エア排出口264は、その口縁から打撃面262の側縁方向に向かう2条の排気ガイド溝266が形成されている。排気ガイド溝266は、掘削穴H1内において、エア排出口264から排出されるエアを、穴底面H3との間で、掘削装置2の外面方向にガイドし、穴内でエアを効率良く拡散させ、排土を促進することができる。
【0111】
前述の構成である掘削ビット26は、接続軸部260がガイド穴250に沿って進退動し、これに伴って、ヘッド部261を含む掘削ビット26全体も進退動するので、打撃面262が掘削装置2の先にある被掘削物を打撃し、掘削が行われる。
【0112】
また、3つの掘削ビット26は、角部267を突き合わせるようにして、装置本体の回転軸2Rの周りに配設され、この結果、底面視で略三叉状に組み合わされた態様になっている。本実施形態において、各掘削ビット26は、各々の角部267先端が回転軸2R近傍で近接すると共に、どの角部267も回転軸2Rと重複しない配置(以下「回転軸非重複配置」という)となっている。
【0113】
そして、掘削装置2は、各掘削ビット26が前述の構成で配設されていることにより、各掘削ビット26の各々の打撃面262が、装置本体の回転軸2Rの近傍で近接して集合し、回転軸2Rの周りに余分な隙間が空いていない構成となっている。当該構成によれば、掘削装置2を回転させながら掘削作業を行うことで、各掘削ビット26が打撃する被掘削物をムラ無く掘削することができる。
【0114】
なお、各掘削ビット26は同一構造であるため、後述する掘削ビット26b1-26f2のように2種類の掘削ビットを製造、購入あるいは保管する必要がなく、一種類のみの調達で済む。これにより、例えば、交換部品または予備部品として使用する際に、どの掘削ビットが欠損しても1種類の掘削ビットを準備するだけでよいので、一方の種類の掘削ビットが余るといった無駄を減らすことができ、また、保管の際の省スペース化を図ることができ、更には、現場に搬入する交換部品等の点数を減らすこともできる。
【0115】
(エアタンク)
エアタンク21は、装置本体22の他端側に接続され、図1等において掘削装置2の上部となるように(換言すると、掘削装置2の掘削方向と反対方向になる位置に)配置されている(図1-4参照)。なお、エアタンク21と装置本体22の接続には、接続ボルト219を使用している。エアタンク21は、前述の通り装置本体22と接続されているので、装置本体22が回転する時は、装置本体22と一体的に回転する。
【0116】
そして、エアタンク21は、機外のコンプレッサー等(図示省略)のエア供給源から導入した高圧なエアを一時貯留して装置本体22に供給するものであり、装置本体22よりも径小な有蓋円筒形状のタンク胴部210、タンク胴部210の一端側(図2等で上側)の蓋に設けられたエア導入部211、タンク胴部210の他端側(図2等で下側)に設けられた第4接続部212、タンク胴部210の側面に設けられた螺旋羽根213を有する構造である。
【0117】
本実施形態において、エアタンク21は、着脱可能な円筒形状のアタッチメント(符号省略)を外嵌めして取り付けた構造であり、図1等でエアタンク21側面に表れた螺旋羽根213はアタッチメントに設けられたものであるが、これに限定するものではなく、例えば、螺旋羽根213に代えて装置長手方向に延びたフラットバー等を設けてもよいし、アタッチメント不使用で、エアタンク3表面に螺旋羽根を直接設ける態様であってもよい。
【0118】
タンク胴部210は、装置本体22よりも径小であることにより、タンク胴部210の最大径部分21Mと装置本体22の最大径部分22Mとが同一ないしタンク胴部210の方が僅かに径小(以下「略同一」という)となるように設定されており(図4等参照)、これにより、掘削作業の際に、装置本体22の最大径部分22Mから設定した当初設定値よりも掘削穴H1の穴径が拡張することなく、螺旋羽根を介して土を上昇させて排土を可能にしている。また、タンク胴部30は、気密構造であり、外部から供給されたエアを高圧状態で一時貯留することができる。
【0119】
エア導入部211は、その回転軸とエアタンク21の回転軸が一致する六角柱状の連結ジョイントであって、基端がエアタンク21に取り付けられている。そして、エア導入部211は、その先端が自由端で開口した開口部214が形成されており、この開口部214からエアタンク21内に連通した流通路215が形成されている(図2参照)。このエア導入部211により、エアタンク21と後述する吊下軸体34とが回転可能に接続されると共に、吊下軸体34に接続されたエア供給管341を介して外部のコンプレッサー等からエアタンク21へエアが供給される(図1-3参照)。
【0120】
第4接続部212は、所要の厚みを有し、駆動ユニット220の各端部を嵌挿するための嵌入穴218が各々(合計3つ)形成されている(図2参照)。嵌入穴218は、後述する装置本体22の駆動ユニット格納部224と連通し、駆動ユニット220の先部が嵌合するように図2等で上方の領域が段付きで徐々に狭くなる形状になっており、先端部分はエアタンク21のタンク胴部210内に開口している。この開口部分は、エアを駆動ユニット格納部224へ導出可能なエア導出穴226となっている。
【0121】
また、タンク胴部210下端と第4接続部212上端の接続部分の外面には、溶接による溶接部217が形成されている。この溶接部217によって、タンク胴部210下端と第4接続部212上端の接続部分における耐摩耗性、剪断応力に対する剛性、および、緩み止め力が向上している。
【0122】
(エア分配部)
エア分配部27は、エアタンク21内において第4接続部212上面に配置され、エア受部270と支持台部271を有する。エア受部270は、平板状で、上部に凹曲面が形成されている。支持台部271は、円筒状で、上端でエア受部270の下面を支え、下端が第4接続部212上面に固定されている。エア分配部27は、エアタンク21内において、エア導入部211を通じて供給されるエアの流れ方向を制御する。
【0123】
詳しくは、最初に、エア受部270が、エア導入部211方向から供給されるエアを直接受け、その後、エアは、エア受部270に当たって流れの方向が変わると共にエアタンク21内で旋回し、旋回したエアが、各々異なるタイミングで装置本体22のエア導出穴226へ流入することで、エアの流通が制御される。このように、エアタンク21内のエアの流れを変えることにより、エアタンク21から駆動ユニット220に至るエアの到達時間も変わり、駆動ユニット220のピストンが各々異なるタイミングで進退動する。
【0124】
(回転駆動装置)
本実施の形態において、回転駆動装置3は、上下方向に貫通した挿通穴311が形成された回転テーブル31を有する本体部30と、本体部30を支持するアウトリガー構造の支持脚32を備えている。回転テーブル31は、油圧モータ、ギヤ装置等で構成される駆動部(図示省略)を有する。また、回転テーブル31の挿通穴311の内壁には、係止凸条部(図示省略)が挿通穴311の中心軸線に沿う方向に形成されている。
【0125】
回転駆動装置3は、前述の構成を備えることにより、掘削装置2を回転テーブル31の挿通穴311に通した際に、本装置に設けた係止凸条部と、掘削装置2の螺旋羽根213に形成された係止凹部(符号省略)とがスライド可能に係止され、これによって、回転駆動装置3に取り付けられた掘削装置2は、その自重により下降可能な状態となる。そして、係止凸条部と係止凹部とが係止状態にあるため、回転駆動装置3からの駆動力が掘削装置2に付与され、掘削装置2を水平方向に回転駆動させることができる。なお、回転駆動装置3は、例えば、特開2011-26955に開示されているような公知構造を有しているので、構造および作用の説明は上記概略の説明に止め、詳細については省略する。
【0126】
〔変形例1〕
図5(b)を参照する。同図に示す掘削装置2aは、掘削装置2の他の態様(変形例1)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0127】
掘削装置2aは、同形状の掘削ビット26aを4つ有する態様である。底面視で、掘削ビット26aは、角部267aが直角(略90°)に設けられ、角部267aを挟む両辺の長さが同一である(等辺)構成となっている。この結果、各掘削ビット26aの打撃面262aが、底面視で、周方向に等間隔な略十字状の配置となっている。
【0128】
なお、この相違点に伴い、掘削ビット26aの数に対応する部分(装置本体22における胴部221の駆動ユニット格納部224、駆動ユニット220、および、エア導出穴226、チャックガイド25におけるガイド穴250)の数も4つずつとなるように構成されている。
【0129】
〔第2実施形態〕
図6(a)を参照する。同図に示す掘削装置2bは、掘削装置2の他の態様(第2実施形態)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0130】
掘削装置2bは、2組の形状の異なる掘削ビット26b1、26b2(合計4つ)を組み合わせてなり、打撃面の配置に前述した第2配置態様が適用された態様である。また、掘削ビット26b1、26b2は、打撃面262b1(掘削ビット26b1の打撃面)、262b2(掘削ビット26b2の打撃面)が装置本体の回転軸2Rの周りに配置されており、同じ形状の掘削ビットが隣接しない(すなわち、掘削ビット26b1同士、掘削ビット26b2同士は隣接しない)並びとなっている。
【0131】
掘削ビット26b1は、打撃面262b1に角部267b1を有し、角部267b1は、同角部を挟む両辺の長さが相違する(不等辺)構成となっている。掘削ビット26b2は、打撃面262b2に角部267b2を有し、角部267b2は、同角部を挟む両辺の長さが同一である(等辺)構成となっている。そして、掘削ビット26b1、26b2は、角部267b1、267b2が、装置本体の回転軸2Rの方向に向き、同回転軸近傍で近接して隙間が空かないように、集合して配置されている。
【0132】
各掘削ビット26b1は、装置本体の回転軸2Rを挟んで対向配置され、角部267b1の長辺のみが装置本体の回転軸2Rと重複し、かつ、角部267b1の先端が装置本体の回転軸2Rと重複しないように配置されている。また、各掘削ビット26b2は、各掘削ビット26b1の間で、装置本体の回転軸2Rを挟んで対向配置され、角部267b2の先端および両辺が装置本体の回転軸2Rと重複しないように配置されている。
【0133】
この第2配置態様で配置された掘削ビット26b1、26b2によれば、各打撃面262b1、262b2が、装置本体の回転軸2Rとその近傍において、殆ど隙間を空けずに取り付けられる。この構成によれば、掘削ビット26b1、26b2が打撃する被掘削物Hは、ムラ無く掘削され、掘削作業によって形成された掘削穴H1は、内底に中央凸部が形成されることなく略平坦なものとなる。
【0134】
また、回転軸非重複配置である掘削ビット26b1、26b2は、回転掘削作業の際に、角部267b1を挟む長縁部分が、装置本体の回転軸2Rとその近傍を断続的または略連続的に通過し、当該長縁部分とこれに沿う部分の打撃面262b1、262b2を以て掘削することになる。これにより、装置本体の回転軸2R近傍の打撃面に集中する負荷が、複数箇所(本実施形態では2箇所)で分散されて角部にある少数のチップへの負荷集中も緩和され、この結果、硬岩掘削時においても中央凸部H6形成が抑制され、これに伴って中央変形部H7の発生も抑制される。
【0135】
なお、掘削ビット26b1、26b2は、打撃面等の形状および大きさが相違しており(掘削ビット26b1よりも掘削ビット26b2の方が小さい)、これによって、回転軸方向視において、各掘削ビット26b1の長辺部分のみが装置本体の回転軸2Rに近接配置され、一方で、掘削ビット26b2は、角部267b2と同角部を挟む両辺のいずれもが装置本体の回転軸2Rに近接配置されない(換言すると、装置本体の回転軸2Rから離隔配置される)構成となっている。
【0136】
掘削ビット26b1、26b2は、その角部の先端が、装置本体の回転軸2Rを基準として、装置本体の回転軸2Rから胴部221の外周端までの距離の約6%となる箇所に配置されるように設定されている。
【0137】
〔変形例2〕
図6(b)を参照する。同図に示す掘削装置2cは、掘削装置2bの他の態様(変形例2)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2bと概ね同じであるため、その説明を省略する。また、変形例2においては、掘削ビットの数に対応する部分(駆動ユニット格納部、駆動ユニット、および、エア導入穴、チャックガイド25におけるガイド穴)の数が3つずつとなるように構成されている。
【0138】
掘削装置2cは、2組の形状の異なる掘削ビット26c1、26c2(合計3つ)を組み合わせてなり、打撃面の配置に前述した第1配置態様が適用された態様である。また、掘削ビット26c1、26c2は、打撃面262c1(掘削ビット26c1の打撃面)、262c2(掘削ビット26c2の打撃面)が装置本体の回転軸2Rの周りに配置され、各掘削ビットの打撃面が周方向に等間隔の並んだ三叉状の配置となっている。
【0139】
掘削ビット26c1は、打撃面262c1に角部267c1を有し、角部267c1は、同角部を挟む両辺の長さが同一である(等辺)構成となっている。掘削ビット26c2は、打撃面262c2に角部267c2を有し、角部267c2は、同角部を挟む両辺の長さが相違する(不等辺)構成となっている。そして、掘削ビット26c1、26c2は、角部267c1、267c2が、装置本体の回転軸2Rの方向に向き、同回転軸近傍で近接して隙間が空かないように、集合して配置されている。
【0140】
打撃面262c1は打撃面262c2と比較してやや大きく形成され、角部267c1の先端が、装置本体の回転軸2Rを越えて(回転軸を含んで、とも換言できる)延出した回転軸重複配置である。つまり、角部267c1のみが装置本体の回転軸2Rと重複し、角部267c2は装置本体の回転軸2Rと重複しないように配置されている。また、各打撃面262c2は、角部267c2の一方の側縁が直径線を挟んで隣接し、他方の側縁が角部267c1と隣接するように配置されている。
【0141】
この第1配置態様で配置された掘削ビット26c1、26c2によれば、各打撃面262c1、262c2が、装置本体の回転軸2Rとその近傍において、殆ど隙間を空けずに取り付けられる。この構成によれば、掘削ビット26c1、26c2が打撃する被掘削物Hは、ムラ無く掘削され、掘削作業によって形成された掘削穴H1は、内底に中央凸部が形成されることなく略平坦なものとなる。
【0142】
また、掘削ビット26c1、26c2は、回転掘削作業の際に、掘削ビット26c1の打撃面267c1が、装置本体の回転軸2Rとその近傍を常時通過しながら掘削する。これにより、装置本体の回転軸2R近傍の打撃面に集中する負荷を、比較的広く、かつチップが多く配置されている角部267c1で受けるため、負荷集中が緩和され、この結果、硬岩掘削時においても中央凸部H6形成が抑制され、これに伴って中央変形部H7の発生も抑制される。
【0143】
掘削ビット26c1、26c2は、その角部の先端が、装置本体の回転軸2Rを基準として、装置本体の回転軸2Rから胴部221の外周端までの距離の約5.4%となる箇所に配置されるように設定されている。
【0144】
〔第3実施形態〕
図7(a)を参照する。同図に示す掘削装置2dは、掘削装置2の他の態様(第3実施形態)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0145】
掘削装置2dは、掘削装置2bと同様、2組の形状の異なる掘削ビット26b1、26b2(合計4つ)を組み合わせてなり、打撃面の配置に前述した第2配置態様が適用された態様である。そして、掘削装置2dは、4つの駆動ユニット220a、220b、220c、220dが、打撃面が回転軸側縁部のみ回転軸と重複して配置された掘削ビットに対し、各掘削ビット中で最大の打撃力を付与する構造となっている。
【0146】
駆動ユニット220a、220b、220c、220dは、シリンダーが各々異径で、内蔵するピストンの重量が相違するように設定してある。
【0147】
具体的には、図7(a)の右下側に位置する掘削ビット26b1を基準として、掘削ビット26b1に駆動力を供給する駆動ユニット220aは、直径が10インチ(254mm)で重量が46kgであり、その時計回り周方向に隣接する掘削ビット26b2に駆動力を供給する駆動ユニット220bは、直径が6インチ(152.4mm)で重量が23kgであり、その時計回り周方向に隣接する掘削ビット26b1に駆動力を供給する駆動ユニット220cは、直径が8インチ(203.8mm)で重量が31kgであり、その時計回り周方向に隣接する掘削ビット26b1に駆動力を供給する駆動ユニット220cは、直径が5インチ(127mm)で重量が9.4kgに、設定されている。
【0148】
このように、掘削ビット26b1、26b2中で最大の打撃面(掘削ビット26b1の打撃面262b1)に対して、最大のピストンを有する駆動ユニット220aが宛がわれ、最大の打撃力が付与されるため、回転掘削作業時に、掘削ビット26b1が硬岩H4を破砕するか、または、硬岩H4に亀裂を生じさせ、続く他の掘削ビット26b1、26b2の打撃によって小片に粉砕することができる。
【0149】
掘削装置2dによれば、装置全体の重量増加、作動流体(エア)の消費量増加を必要最小限に抑えつつも、硬岩掘削時における中央凸部H6の形成抑止および中央変形部H7の発生抑制の各効果を更に高めることができる。
【0150】
〔変形例3〕
図7(b)を参照する。同図に示す掘削装置2eは、掘削装置2dの他の態様(変形例3)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2dと概ね同じであるため、その説明を省略する。また、変形例3においても、変形例1と同様に、掘削ビットの数に対応する部分(駆動ユニット格納部、駆動ユニット、および、エア導入穴、チャックガイド25におけるガイド穴)の数も3つずつとなるように構成されている。
【0151】
掘削装置2eは、掘削装置2cと同様、2組の形状の異なる掘削ビット26c1、26c2(合計3つ)を組み合わせてなり、打撃面の配置に前述した第1配置態様が適用された態様である。そして、掘削装置2eは、3つの駆動ユニット220e、220f、220gが、打撃面が回転軸と重複して配置された掘削ビットに対し、各掘削ビット中で最大の打撃力を付与する構造となっている。
【0152】
駆動ユニット220e、220f、220gは、シリンダーが各々異径で、内蔵するピストンの重量が相違するように設定してある。
【0153】
具体的には、図7(b)の中央下側に位置する掘削ビット26c1を基準として、掘削ビット26c1に駆動力を供給する駆動ユニット220eは、直径が10インチ(254mm)で重量が46kgであり、その時計回り周方向に隣接する掘削ビット26b2に駆動力を供給する駆動ユニット220fは、直径が8インチ(203.8mm)で重量が31kgであり、その時計回り周方向に隣接する掘削ビット26b2に駆動力を供給する駆動ユニット220gは、直径が6インチ(152.4mm)で重量が23kgに設定されている。
【0154】
掘削装置2eもまた、装置全体の重量増加、作動流体(エア)の消費量増加を必要最小限に抑えつつも、硬岩掘削時における中央凸部H6の形成抑止および中央変形部H7の発生抑制の各効果を更に高めることができる。
【0155】
〔変形例4〕
図7(c)を参照する。同図に示す掘削装置2fは、掘削装置2dの他の態様(変形例4)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2dと概ね同じであるため、その説明を省略する。また、変形例4においても、変形例1と同様に、掘削ビットの数に対応する部分(駆動ユニット格納部、駆動ユニット、および、エア導入穴、チャックガイド25におけるガイド穴)の数も2つずつとなるように構成されている。
【0156】
掘削装置2fは、2組の形状の異なる掘削ビット26f1、26f2(合計2つ)を組み合わせてなり、打撃面の配置に前述した第1配置態様が適用された態様である。掘削ビット26f1、26f2は打撃面が略半円形であり、掘削ビット26f1の打撃面262f1が、掘削ビット26f2の打撃面262f2よりも大きい。そして、掘削ビット26f1の打撃面262f1の装置本体の回転軸2R側の縁部が、装置本体の回転軸2Rを越えて(回転軸を含んで、とも換言できる)延出した回転軸重複配置である。つまり、打撃面262f1のみが装置本体の回転軸2Rと重複し、打撃面262f2は装置本体の回転軸2Rと重複しないように配置されている。
【0157】
そして、掘削装置2fは、2つの駆動ユニット220h、220iが、シリンダーが各々異径で、内蔵するピストンの重量が相違するように設定してあり、打撃面が回転軸と重複して配置された掘削ビットに対し、各掘削ビット中で最大の打撃力を付与する構造となっている。
【0158】
具体的には、図7(c)の左下側に位置する掘削ビット26f1を基準として、掘削ビット26f1に駆動力を供給する駆動ユニット220hは、直径が10インチ(254mm)で重量が46kgであり、隣接する掘削ビット26f2に駆動力を供給する駆動ユニット220iは、直径が8インチ(203.8mm)で重量が31kgに設定されている。
【0159】
掘削装置2fは、静粛性や低振動性に関しては前述した他の掘削装置に譲るものの、単一ビットのダウンザホールハンマよりも低振動かつ低騒音であり、他の掘削装置よりも打撃力が大きいため、硬岩を多く含む被掘削物に対し好適に使用することができる。そして、掘削装置2fもまた、装置全体の重量増加、作動流体(エア)の消費量増加を必要最小限に抑えつつも、硬岩掘削時における中央凸部H6の形成抑止および中央変形部H7の発生抑制の各効果を更に高めることができる。
【0160】
なお、本変形例では、掘削装置2fの駆動ユニットが、シリンダー径とピストン重量が相違するように設定されているが、これに限定するものではなく、例えば、シリンダーが同径で、内蔵するピストンの重量も同じ態様であってもよい。
【0161】
〔第4実施形態〕
図8(a)、(b)を参照する。同図に示す掘削装置2gは、掘削装置2の他の態様(第4実施形態)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0162】
掘削装置2gは、掘削装置2と掘削ビットの構造が相違しており、掘削装置2gは、4つの掘削ビット26gを組み合わせてなる態様である。各掘削ビット26gは、回転軸方向視で、掘削ビット26gの外周縁となる位置に沿って、打撃面262gから被掘削物方向に突出する突条打撃部268が形成されている。
【0163】
突条打撃部268は、打撃面262gの平坦部分との間に傾斜面が形成され、この傾斜面は、平坦部分から突条打撃部268先端面に向かう傾斜角度が35°の逆テーパ状であり、突条打撃部268の突出高さは平坦部分から3cmに設定されている。
【0164】
掘削装置2gは、各掘削ビット26gにおいて突条に沿って荷重を集中させる突条打撃部268を以て、被掘削物に対する最初の打撃を加えることができるので、平坦な打撃面による打撃よりも更に打撃力が向上しており、仮に、被掘削物が掘削穴中の硬岩であっても、この打撃をきっかけとして硬岩を破砕等することができる。
【0165】
また、掘削装置2gは、この突条打撃部268を有することで、機材の入れ替え不要で軟質層および硬岩のいずれにも対応することができ、かつ、機材の入れ替えによる余計な手間と時間を省略することができる。そして、硬岩掘削時にも、比較的低騒音かつ低振動で掘削作業を行うことができる。加えて、この突条打撃部268は、前述の傾斜角度および突出高さに設定されたことで、欠けにくく優れた耐久性を発揮する構造となっている。
【0166】
〔変形例5〕
図8(c)を参照する。同図に示す掘削装置2hは、掘削装置2gの他の態様(変形例5)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0167】
掘削装置2hは、同形状の掘削ビット26hを3つ有し、底面視で、周方向に等間隔な三叉状の配置となっている態様である。各掘削ビット26hは、回転軸方向視で、掘削ビット26gの外周縁となる位置に沿って、打撃面262hから被掘削物方向に突出する突条打撃部268が形成されている。突条打撃部268は、打撃面262hの平坦部分との間に傾斜面が形成され、この傾斜面は、平坦部分から突条打撃部268先端面に向かう傾斜角度が35°の逆テーパ状であり、突条打撃部268の突出高さは平坦部分から3cmに設定されている。
【0168】
なお、この相違点に伴い、掘削ビット26hの数に対応する部分(駆動ユニット格納部、駆動ユニット、および、エア導入穴、チャックガイドにおけるガイド穴)の数も3つずつとなるように構成されている。
【0169】
〔第5実施形態〕
図9、10を参照する。同図に示す掘削装置2iは、掘削装置2の他の態様(第5実施形態)であり、図面に基づいて相違点について説明する。なお、後述する相違点を除き、各部における構造および作用効果は、掘削装置2と概ね同じであるため、その説明を省略する。
【0170】
掘削装置2iは、エアタンク21iの第4接続部212iが、後述する第3接続部222iが丁度収まる内径の開口部で、開口部近傍の内面に雌ネジ216が設けられた構造である。これにより、第4接続部212iは、内部に第3接続部222iを嵌合させ、かつ、雌ネジ216と後述する第3接続部222iの側面に設けられた雄ネジ225を以て螺着することができる。
【0171】
掘削装置2iは、装置本体22iの胴部221iの一方の端面(図2等において胴部221iの上端)に設けられた第3接続部222iが、第4接続部212iと嵌合する形状であると共に、接続状態にある第4接続部212iの離脱を抑制する離脱抑制構造を含む構造である。第3接続部222iと第4接続部212iは、嵌合構造を以て接続することができ、すなわち、エアタンク21と装置本体22を接続することができる。
【0172】
より詳しくは、第3接続部222iは、胴部22iの長手方向中間部分の外径よりも径小で、かつ、第4接続部212iの開口部に丁度収まる外径の略円柱状凸部であり、その側面に雄ネジ225(離脱抑制構造の対となる一部)が設けられた構造である。これにより、第3接続部222iを第4接続部212i内に嵌合させ、かつ、雌ネジ216と雄ネジ225を以て螺着することができる。そして、第3接続部222iは、基端から上端までの高さが約20cmに設定されている。
【0173】
前述の構造において雌ネジ216と雄ネジ225とが螺着すると、接続されたエアタンク21iと装置本体22iとが離脱する(外れる)ことが抑制される。加えて、従来装置と比較して、エアタンク21iと装置本体22iの接続に接続ボルトが不要な構造でもあるので、掘削穴内における破断残存事故発生の可能性が低減している。また、当該嵌合構造は、簡易な構造であるため、組立時あるいは分解時の作業性も良い。
【0174】
更に、この嵌合構造によれば、第4接続部212i内に第3接続部222iが隙間無く密に入り込んで一体化し、嵌合部分全体で応力を分散する(換言すると、特定箇所への応力集中を抑制する)ことで剪断強度が向上しており、この点も相俟って破断残存事故発生の可能性が低減している。
【0175】
また、掘削装置2iでは、エアタンク21i下端と装置本体22i上端の接続部分の外面には溶接による溶接部217が形成されている。この溶接部217によって、エアタンク21i下端と装置本体22i上端の接続部分における耐摩耗性、剪断応力に対する剛性、および、緩み止め力が向上している。
【0176】
掘削装置2-2iは、装置本体22に格納された駆動ユニット220-220iの数が、2つないし4つであるが、これに限定するものではなく、例えば、5つ以上であってもよく、その場合、駆動ユニット格納部の数、掘削ビットの数等もこれに合わせた数に適宜変更してもよい。
【0177】
装置本体22は、胴部221外周の長手方向と平行なフラットバーが設けられた態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、胴部外周の長手方向に亘って排土のための螺旋羽根を設ける態様、更に、螺旋羽根の間に架設した補強リブを設ける態様等の各種変形を除外するものではない。
【0178】
装置本体22は、第3接続部の一例として、胴部の長手方向中間部分の外径よりも径小な略円柱状凸部で構成される構造を挙げているが、これに限定するものではなく、例えば、楕円柱状凸部、三角柱状凸部、四角その他の多角柱状凸部であってもよく、エアタンク21の第4接続部の形状も第3接続部に合わせて形状変更してもよい。この場合、離脱抑制構造には、例えば、第4接続部と第3接続部の両方を貫通する係止ピンで固定する等の公知手段を適用してもよい。
【0179】
また、第3接続部222iは、基端から上端までの高さが約20cmに設定されているが、これに限定するものではなく、例えば、第3接続部222iの基端から上端までの高さは、10cm-30cmの範囲内であることが好ましい。10cm未満であると嵌合部分が小さくなり、全体で応力を分散することによる剪断強度向上効果があまり期待できないため好ましくなく、また、30cmを超えるとエアタンク内の内底が底上げされることになってタンク容量が少なくなるため、やはり好ましくない。
【0180】
更にまた、装置本体22の第1接続部と、チャックガイド25の第2接続部は、凹凸が逆(第1接続部が凹部で、第2接続部が凸部)の構造であってもよく、そして、凸部形状は前述の形状のみならず、他の形状に適宜変更してもよい。同様に、装置本体22の第3接続部222iと、エアタンク21の第4接続部212iは、凹凸が逆(第3接続部が凹部で、第4接続部が凸部)の構造であってもよい。
【0181】
掘削ビット26-26hは、打撃面262-262hに設けられたエア排出口が1つであるが、これに限定するものではなく、例えば、エアの流路をヘッド部内で分岐させ、エア排出口を2以上設ける態様であってもよい。エア排出口を2以上設けた場合、掘削穴底において掘削屑を周方向に拡散させやすくすることができ、排土の効率を更に促進することができる。
【0182】
また、掘削ビット26-26hは、排気ガイド溝266がエア排出口264の口縁から異なる向きで2条(エア排出口264を中心に2条が合流するので、1条とも表現可能)形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、排気ガイド溝は1条または3条以上であってもよいし、また、排気ガイド溝266の向きが同じ方向に向いた態様等であってもよい。
【0183】
更にまた、掘削ビット26-26hは、打撃面262-262hにチップを分散配置して植設しているが、これに限定するものではなく、例えば、打撃面に凹溝を複数条形成し、平坦面と凹部が連続した結果、平坦面が実質的に凸部としてチップの機能を代替するようにした態様等であってもよい。
【0184】
各掘削ビットが第1配置態様または第2配置態様で配置されている場合において、各掘削ビットは、その角部の先端が、装置本体の回転軸2Rを基準として、装置本体の回転軸2Rから胴部221の外周端までの距離の約6%となる箇所に配置されるように設定されているが、これに限定するものではなく、例えば、当該距離は5%~30%の半径領域の内側に収まるように設定されていることが好ましい。5%未満であると角部が回転軸に寄り過ぎ、硬岩掘削時において掘削穴の奥側中央に、図12(c)に示すような中央凸部H6が形成され、これに伴う掘削ビットに中央変形部H7が発生するおそれがあるため、好ましくなく、一方、30%を超えると、ピストン部材の直径よりも小さくなる掘削ビットが生じる可能性があり、打撃力の伝達効率が低下するおそれがあるため、やはり好ましくない。
【0185】
掘削ビット26-26hは、打撃面262-262hの面形状が五角形または略半円形に形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、打撃面の形状は、扇形、略三角形または略方形の四角形等であってもよく、掘削装置へ複数の掘削ビットを装着した状態において、各掘削ビットの装置本体の回転軸2Rの方向の部分が、同回転軸近傍で近接して隙間が空かないように、集合して配置されるように構成されていればよい。また、ヘッド部は、角柱状のみならず、底面が打撃面となる錐台状等であってもよい。
【0186】
掘削ビットに設けられた突条打撃部268は、傾斜面の傾斜角度が35°に設定されているが、これに限定するものではなく、例えば、同傾斜角度は20°~60°の範囲内に設定されることが好ましく、更に好ましくは30°~50°である。この傾斜角度が20°未満では打撃面部全体における傾斜面が広くなり過ぎて全体的に平坦となり、硬岩に食い込ませるような打撃力が発揮しにくくなり、更に、掘削穴に中央凸部が発生するおそれがあることから好ましくなく、一方、この傾斜角度が60°を超えると、突条打撃部が尖鋭に突出し過ぎて、硬岩打撃時に突条打撃部が欠けやすくなり、やはり好ましくないためである。
【0187】
また、突条打撃部268は、その突出高さが打撃面の平坦部分から3cmに設定されているが、これに限定するものではなく、例えば、この高さは平坦部分から2cm~6cmの高さであることが好ましく、更に好ましくは3~5cmである。突出高さが2cm未満では平坦部分からの突出高さが低いため、硬岩に食い込ませるような打撃力が発揮しにくいことから好ましくなく、一方、6cmを超えると突条打撃部が突出し過ぎて、硬岩を打撃した際に突条打撃部が欠けやすくなり、やはり好ましくないためである。
【0188】
図示したエア分配部27は、盃形状であるが、これに限定するものではなく、例えば、エア分配部は、円周方向に所定間隔で穴が開いたディスク状の板体を第1接続部222上面に沿って回動可能に取り付け、回転に伴って装置本体22に形成されたエア導出穴226を断続的に塞ぐようにした構造のもの、エアタンク21から駆動ユニット220-220iに至る各々の経路の長さを長短に分けて流入タイミングを変更する構造のもの、エア導出穴が断続的に開閉する構造のもの等、エアタンク内のエアが駆動ユニットに同じタイミングで流れ込まない形状又は構造に設計されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0189】
図示した回転駆動装置3は、掘削装置2a-2iの自重により下降可能な状態で掘削装置に回転力を付与する態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、回転駆動装置は取り付けた掘削装置を被掘削物側へ押し出す機構を有する態様であってもよく、その場合、特に岩壁等の壁状の被掘削物に対して好適に使用することができる。また、図示した回転駆動装置3は、テーブル状に設けられた態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、掘削装置の胴部に取り付ける抱持部を有し、抱持部を介して掘削装置に回転力を付与する態様の回転駆動装置等、掘削装置に回転力を付与可能な装置であれば、特に限定されるものではない。
【0190】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0191】
1 回転式掘削機
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i 掘削装置
2R 装置本体の回転軸
21、21i エアタンク
210 タンク胴部
211 エア導入部
212、212i 第4接続部
213 螺旋羽根
214 開口部
215 流通路
216 雌ネジ
217 溶接部
218 嵌入穴
219 接続ボルト
21M タンク胴部の最大径部分
22、22i 装置本体
220、220a、220b、220c、220d、220e、220f、220g、220h、220i 駆動ユニット
221、221i 胴部
222、222i 第3接続部
223 第1接続部
224 駆動ユニット格納部
225 雄ネジ
226 エア導入穴
22M 装置本体の最大径部分
25 チャックガイド
250 ガイド穴
251 接続ボルト
252 第2接続部
253 凹部
254 ゴムリング
26、26a、26b1、26b2、26c1、26c2、26f1、26f2、26g、26h 掘削ビット
260 接続軸部
261 ヘッド部
262、262a、262b1、262b2、262c1、262c2、262f1、262f2、262g、262h 打撃面
263 エア流入口
264 エア排出口
265 エア流路
266 排気ガイド溝
267、267a、267b1、267b2、267c1、267c2 角部
268 突条打撃部
27 エア分配部
270 エア受部
271 支持台部
3 回転駆動装置
30 本体部
31 回転テーブル
311 挿通穴
32 支持脚
34 吊下軸体
341 エア供給管
4 回り止め構造
41 第1嵌入穴
42 第2嵌入穴
43 回り止め軸
9 掘削装置
91 中央ビット
92 周辺ビット
93 試作機
930 掘削ビット
931 打撃面
933 角部
934 チップ
9R 回転軸
H 被掘削物
H1 掘削穴
H6 中央凸部
H7 中央変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12