(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20221116BHJP
E05B 65/46 20170101ALI20221116BHJP
E05B 65/44 20060101ALI20221116BHJP
A47B 88/00 20170101ALI20221116BHJP
【FI】
E05B47/00 A
E05B65/46
E05B65/44 A
A47B88/00
(21)【出願番号】P 2018246895
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】東 陽太
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-340145(JP,A)
【文献】特開2009-074241(JP,A)
【文献】特開2010-084501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
E05C 1/00 - 21/02
A47B 88/00 - 88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を収納する収納部と、前記収納部を覆う正面板とを備えるキャビネットを施錠するロック装置であって、
前記正面板の背面に
取り付けられた基部に設けられ、前記収納部に係止される施錠位置と前記収納部との係止が解除される開錠位置との間で移動自在とされた係止部と、
前記係止部に設けられた第1の磁石と、
前記正面板の正面に設けられ、移動により前記第1の磁石に対する磁力作用で前記係止部を前記施錠位置と前記開錠位置との間で移動させる第2の磁石と、
前記正面板の正面に
取り付けられたベースに設けられ、前記第2の磁石を支持し、操作により前記第2の磁石を移動させる操作部と、
を備えることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記係止部を前記施錠位置に移動させるように前記操作部を付勢する付勢部を備えることを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記操作部による開錠操作方向は、前記キャビネットを開ける動作と同じ方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記施錠位置において、前記第2の磁石の一方の極が前記第1の磁石の一方の極に対して最接近し、前記開錠位置において、前記第2の磁石の他方の極が前記第1の磁石の
他方の極に対して最接近することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項5】
前記施錠位置において、前記第2の磁石の一方の極が前記第1の磁石の一方の極に対して最接近し、前記開錠位置において、前記第2の磁石の
他方の極が前記第1の磁石の
一方の極に対して最接近することを特徴とする請求項
1から3までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項6】
前記係止部は、前記施錠位置と前記開錠位置との間で回転自在に設けられていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項7】
前記操作部は、回転自在に設けられていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項8】
前記収納部は、前記施錠位置にある前記係止部が係止される被係止部を備えることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項9】
前記正面板の正面に着脱自在に設けられ、前記第2の磁石及び前記操作部を覆うカバー部を備えることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のロック装置。
【請求項10】
物を収納する収納部と、前記収納部を覆う正面板とを備えるキャビネットを施錠するロック装置であって、
前記正面板の背面に設けられ、前記収納部に係止される施錠位置と前記収納部との係止が解除される開錠位置との間で移動自在とされた係止部と、
前記係止部に設けられた第1の磁石と、
前記正面板の正面に設けられ、移動により前記第1の磁石に対する磁力作用で前記係止部を前記施錠位置と前記開錠位置との間で移動させる第2の磁石と、
前記正面板の正面に設けられ、前記第2の磁石を支持し、操作により前記第2の磁石を移動させる操作部と、を備え、
前記操作部による開錠操作方向は、前記キャビネットを開ける動作と同じ方向であることを特徴とするロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽斗や開き戸のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抽斗や開き戸の自由な開放を規制するロック装置が知られている。
例えば、把手を手前に引くと、把手にボルトを介して連結されている作動片と補強片が手前に移動し、ラッチが回転することで抽斗のロックが解除され、引き出すことができる抽斗が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、受け板の表面から操作磁石を当てると、係止具兼用磁石が操作磁石に吸引されてロックが解除され、引き出すことができる抽斗が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、開閉用磁石を開き戸に接着することにより、可動部材の係合用磁石が開閉用磁石に引き付けられ、可動部材が揺動してロックが解除され、開くことができる開き戸が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-45339号公報
【文献】特開2000-248790号公報
【文献】特開平5-340145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のロック装置においては、ロック装置を取り付ける際に、正面板の表面から裏面に貫通する貫通孔を事前に形成する必要があり、手間がかかる。特に、既存の抽斗にロック装置を設ける場合には、正面板の厚さや材質によっては強度確保のために制約があることもあり、取り付けが困難な場合もある。
また、特許文献2のロック装置においては、操作磁石は抽斗の把手に設けられていないため、紛失しないように保管しておく必要がある。また、頻繁に開閉を行う抽斗においては、開閉の度に保管場所から操作磁石を取り出す必要があるため、抽斗の開閉に手間がかかる。操作磁石の保管が十分でない場合には、操作磁石を紛失してしまうおそれもある。
また、特許文献3のロック装置においては、開閉用磁石は開き戸に設けられていないため、紛失しないように保管しておく必要がある。また、頻繁に開閉を行う開き戸においては、開閉の度に保管場所から開閉用磁石を取り出す必要があるため、開き戸の開閉に手間がかかる。開閉用磁石の保管が十分でない場合には、開閉用磁石を紛失してしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、抽斗や開き戸への事前の加工を必要とせず、既存の抽斗や開き戸にも簡単に取り付けることができ、磁石の保管も不要なロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、物を収納する収納部と、前記収納部を正面側から覆う正面板とを備えるキャビネットを施錠するロック装置であって、前記正面板の背面に設けられ、前記収納部に係止される施錠位置と前記収納部との係止が解除される開錠位置との間で移動自在とされた係止部と、前記係止部に設けられた第1の磁石と、前記正面板の正面に設けられ、移動により前記第1の磁石に対する磁力作用で前記係止部を前記施錠位置と前記開錠位置との間で移動させる第2の磁石と、前記正面板の正面に設けられ、前記第2の磁石を支持し、操作により前記第2の磁石を移動させる操作部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記ロック装置では、前記係止部を前記施錠位置に移動させるように前記操作部を付勢する付勢部を備えることが好ましい。
【0008】
また、前記ロック装置では、前記操作部による開錠操作方向は、前記キャビネットを開ける動作と同じ方向であることが好ましい。
【0009】
また、前記ロック装置では、前記施錠位置において、前記第2の磁石の一方の極が前記第1の磁石の一方の極に対して最接近し、前記開錠位置において、前記第2の磁石の他方の極が前記第1の磁石の一方の極に対して最接近することが好ましい。
【0010】
また、前記ロック装置では、前記開錠位置において、前記第2の磁石の一方の極が前記第1の磁石の他方の極に対して最接近することが好ましい。
【0011】
また、前記ロック装置では、前記係止部は、前記施錠位置と前記開錠位置との間で回転自在に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記ロック装置では、前記操作部は、回転自在に設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記ロック装置では、前記収納部は、前記施錠位置にある前記係止部が係止される被係止部を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記ロック装置では、前記正面板の正面に着脱自在に設けられ、前記第2の磁石及び前記操作部を覆うカバー部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抽斗や開き戸への事前の加工を必要とせず、既存の抽斗や開き戸にも簡単に取り付けることができ、磁石の保管も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】(a)はラッチ部の斜視図であり、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
【
図3】(a)はカバーを取り外した把手部の斜視図であり、(b)は(a)におけるB-B断面図である。
【
図4】抽斗がロックされた状態を説明する図である。
【
図5】抽斗のロックを解除する操作を説明する図である。
【
図6】抽斗のロックが解除された状態を説明する図である。
【
図7】抽斗のロックが解除された状態からロックされた状態に戻すときの操作を説明する図である。
【
図8】抽斗を筐体に収納するときの係止爪の動作を説明する図である。
【
図9】ロック装置の第2の実施の形態において、(a)は抽斗がロックされた状態を説明する図であり、(b)は抽斗のロックが解除された状態を説明する図である。
【
図10】ロック装置の第3の実施の形態において、把手部の斜視図である。
【
図11】ロック装置の第3の実施の形態において、(a)は抽斗がロックされた状態を説明する図であり、(b)は抽斗のロックが解除された状態を説明する図である。
【
図12】ロック装置の第4の実施の形態において、(a)は抽斗がロックされた状態を説明する図であり、(b)は抽斗のロックが解除された状態を説明する図である。
【
図13】ロック装置の第5の実施の形態において、(a)は係止爪が施錠位置にある状態を説明する図であり、(b)は係止爪が開錠位置にある状態を説明する図である。
【
図14】ロック装置の第5の実施の形態において、(a)は抽斗がロックされた状態を説明する図であり、(b)は抽斗のロックが解除された状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において種々の形態をとりうる。
【0018】
[第1の実施の形態]
<キャビネット>
図1に示すように、キャビネット100は、筐体1と、抽斗2と、ロック装置3と、を備えている。
筐体1は、抽斗2を移動自在に収納する。筐体1は、例えば、直方体状に形成されており、一方の面が開口されており、一又は複数の抽斗2を収納可能に区画形成されている。
抽斗2は、保管される物が載置され、筐体1内に収納することで、保管される物をキャビネット100に収納することができる。すなわち、筐体1と抽斗2は、保管対象となる物を収納する収納部として機能する。
抽斗2は、正面側を覆う正面板21を備えている。正面板21は、抽斗2が筐体1に収納されている状態において、キャビネット100の正面壁の一部を構成する。
抽斗2は、筐体1内に形成された空間に前後方向に往復移動自在に設けられている。すなわち、抽斗2は、キャビネット100の正面と背面とを結ぶ方向に沿って往復移動自在に設けられている。
ロック装置3は、筐体1と抽斗2との間に介在し、筐体1に対する抽斗2の移動の規制及び規制の解除を行う。
【0019】
<ロック装置>
図2、
図3に示すように、ロック装置3は、ラッチ部4と、把手部5と、を備えている。ラッチ部4は、抽斗2の正面板21の背面(裏面)に設けられており、把手部5は、抽斗2の正面板21の正面(表面)に設けられている。
【0020】
(ラッチ部)
図2に示すように、ラッチ部4は、基部41と、係止爪42と、磁石43と、を備えている。
基部41は、ラッチ部4を正面板21に取り付ける土台となる。基部41は、ネジ孔41aと、案内部41bと、ストッパ41cと、軸部41dと、を備えている。
ネジ孔41aは、ネジ等を挿通させて、基部41を正面板21に取り付ける際に用いられる貫通孔である。ネジ孔41aは、基部41の幅方向両端部近傍にそれぞれ一つずつ形成されている。ネジ孔41aは、その高さ方向に沿って延びる長孔状に形成されている。ネジ孔41aは、基部41を正面板21に取り付けた際に、同じ高さとなる位置に形成されている。
案内部41bは、二つのネジ孔41aに挟まれた位置に設けられており、係止爪42の回転をその幅方向両側から案内する。案内部41bは、係止爪42の幅方向両側にそれぞれ一つずつ設けられており、正面板21の背面に直交する方向に沿って抽斗2の奥側に向けて延びるように形成されている。
ストッパ41cは、二つの案内部41bに挟まれた位置で、係止爪42の回転軌道上に設けられている。ストッパ41cは、係止爪42が必要以上に回転しないように、ロックが解除されるのに必要最低限の位置で係止爪42を受け止めて、係止爪42のそれ以上の回転を規制する。
軸部41dは、係止爪42を回転自在に支持する。軸部41dは、二つの案内部41bの間に設けられており、その軸線方向が基部41の幅方向(正面板21の幅方向)に沿って設けられている。
【0021】
係止爪42は、係止部として機能し、正面板21の背面において、基部41に軸部41dを介して回転自在に設けられている。係止爪42は、筐体1に設けられた受け部11に係止される施錠位置と、受け部11との係止が解除される開錠位置との間で移動自在に設けられている。ここで、受け部11は、係止爪42が係止される被係止部として機能する。
係止爪42は、側面視した際に、その中央付近で屈曲するように形成されている。係止爪42の一端は軸部41dを介して基部41に回転自在に設けられており、係止爪42の他端部は、鉤状に形成されて、筐体1の受け部11に係止可能な形状に形成されている。係止爪42の他端部に形成された鉤状部42aは、正面板21の正面側に折り返すように形成されており、その上縁部42bは抽斗2の奥側に向かうにつれて緩やかに傾斜する凸面状(円弧状)に形成されている。
【0022】
磁石43は、第1の磁石として機能し、係止爪42に設けられている。磁石43は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石であり、係止爪42における軸部41d近傍に設けられている。磁石43は、例えば、S極が上側、N極が下側となるように係止爪42に設けられている。磁石43は、係止爪42が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置するように係止爪42に設けられている。磁石43は、係止爪42と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置するように係止爪42に設けられている。
【0023】
(把手部)
図1、
図3、
図4に示すように、把手部5は、ベース51と、レバー52と、磁石53と、バネ54と、カバー55と、を備えている。なお、
図3においては、説明の便宜上、カバー55を取り外した状態を描いている。
ベース51は、把手部5を正面板21に取り付ける土台となる。ベース51は、ネジ孔51aと、案内部51bと、ストッパ51cと、軸部51dと、台部51eと、を備えている。
ネジ孔51aは、ネジ等を挿通させて、ベース51を正面板21に取り付ける際に用いられる貫通孔である。ネジ孔51aは、ベース51の幅方向両端部近傍にそれぞれ一つずつ形成されている。ネジ孔51aは、その高さ方向に沿って延びる長孔状に形成されている。ネジ孔51aは、ベース51を正面板21に取り付けた際に、同じ高さとなる位置に形成されている。
案内部51bは、二つのネジ孔51aに挟まれた位置に設けられており、レバー52の回転をその幅方向両側から案内する。案内部51bは、レバー52の幅方向両側にそれぞれ一つずつ設けられており、正面板21の正面に直交する方向に沿って抽斗2の手前側(抽斗2を引き出す方向)に向けて延びるように形成されている。
ストッパ51cは、二つの案内部51bの間の位置でレバー52の上方に設けられており、レバー52の回転軌道上に設けられている。ストッパ51cは、レバー52が必要以上に回転しないように、ロックするのに必要最低限の位置でレバー52を受け止めて、レバー52のそれ以上の回転を規制する。
軸部51dは、レバー52を回転自在に支持する。軸部51dは、二つの案内部51bの間で案内部51bに支持されており、その軸線方向がベース51の幅方向(正面板21の幅方向)に沿って設けられている。
台部51eは、ストッパ51cの下方に設けられており、二つの案内部51bに挟まれた位置に設けられている。台部51eには、バネ54の一端部が設けられている。
【0024】
レバー52は、操作部として機能し、正面板21の正面において、ベース51に軸部51dを介して回転自在に設けられている。レバー52は、係止爪42が筐体1に設けられた受け部11に係止される施錠位置と、係止爪42と受け部11との係止が解除される開錠位置との間で係止爪42を移動させることができる範囲で可動するようにベース51に回転自在に設けられている。レバー52による開錠操作方向は、筐体1から抽斗2を引き出す動作と同じ方向となるように、レバー52がベース51に回転自在に設けられている。すなわち、レバー52において手を掛ける手掛部52aは、レバー52の回転軌跡円の接線方向が抽斗2の引き出し方向に沿った位置となるように設けられている。換言すれば、レバー52の手掛部52aは、軸部51dの下方の位置にあることが好ましい。
レバー52は、側面視した際に、その中央付近で屈曲するように形成されている。レバー52の中央部は軸部51dを介してベース51に回転自在に設けられている。レバー52の一端部は、抽斗2を筐体1から引き出す際に手を掛ける手掛部52aであり、レバー52の他端部は、正面板21に対向し、正面板51の高さ方向にほぼ沿うように軸部51d回りに回転する。レバー52の一端部は、その幅が他の部分よりも大幅に拡大されており、使用者がカバー55の下方において広い範囲で手を掛けて抽斗2を引き出しやすくなるように形成されている。
【0025】
磁石53は、第2の磁石として機能し、レバー52の他端部に設けられている。磁石53は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石である。磁石53は、例えば、S極が上側、N極が下側となるようにレバー52に設けられている。磁石53は、レバー52が引かれていない状態、すなわち、係止爪42が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置するようにレバー52に設けられている。磁石53は、係止爪42と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置するようにレバー52に設けられている。磁石53は、レバー52の操作による移動により、磁石43に対する磁力作用で係止爪42を施錠位置と開錠位置との間で移動させる。
【0026】
バネ54は、レバー52の他端部と台部51eとの間に設けられている。バネ54は、正面板21の高さ方向にほぼ沿うように設けられており、その弾性力により、レバー52の他端部を上方に向けて付勢している。すなわち、バネ54は、自然長よりも圧縮された状態で、レバー52の他端部と台部51eとの間に設けられている。すなわち、バネ54の付勢によってレバー52の他端部は上方に押し上げられており、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置する状態となっている。換言すれば、レバー52に外力を付与してレバー52を回転させない限り、係止爪42は筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)にある。つまり、バネ54は、係止爪42を施錠位置に移動させるようにレバー52を付勢しており、抽斗2は、通常の状態では筐体1に係止されてロックされた状態となっている。
【0027】
カバー55は、カバー部として機能し、ベース51に着脱自在に設けられている。カバー55は、内側に空間が形成されており、把手部5を構成するベース51、レバー52、磁石53、及びバネ54を覆い、把手部5の美観を向上させる。カバー55の下方は開口されており、この開口部から手を入れてレバー52を操作することができるようになっている。
【0028】
<キャビネットの施錠方法及び開錠方法>
次に、
図4~
図8を用いて、ロック装置3によるキャビネット100の筐体1に対する抽斗2の施錠方法及び開錠方法について説明する。
図4に示すように、レバー52の操作がされていない状態においては、抽斗2は筐体1にロックされた状態となっている。レバー52はバネ54の弾性力によって、磁石53が設けられているレバー52の他端部が上方に付勢され、押し上げられており、レバー52はストッパ51cに当接している。
このとき、レバー52の磁石53は、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置しており、かつ、係止爪42の磁石43は、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置している。これにより、磁石53のN極と磁石43のS極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,53が引き寄せ合う。レバー52は、ストッパ51cによって磁石53が磁石43に近づく方向への移動が規制されているため、磁石43のS極が磁石53のN極に近づく。そのため、磁石43が設けられている係止爪42も軸部41dを中心として磁石43が引き寄せられる方向にともに回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11に係止され、係止爪42は施錠位置にある状態となる。
【0029】
ロック装置3によるロックを解除して抽斗2を筐体1から引き出す際には、
図5に示すように、使用者は、カバー55の下方から手を入れてレバー52の手掛部52aに手を掛け、抽斗2を引き出す方向Pと同じ方向、つまり、キャビネット100に向き合っている使用者がいる手前側にレバー52を引く。
レバー52を引くと、レバー52は、バネ54の付勢力に抗して軸部51dを中心として回転し、バネ54が縮むとともに、レバー52の他端部は下方に移動する。
このとき、レバー52の磁石53は、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置することになり、かつ、磁石53に引き寄せられていた係止爪42の磁石43は、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置している。これにより、磁石53のS極と磁石43のS極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,53が反発しあう。磁石53は、使用者にレバー52が保持されていて動けないため、磁石43は、磁石53から離れる方向に向かって移動する。そのため、磁石43が設けられている係止爪42も軸部41dを中心として磁石43が磁石53から離れる方向にともに回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11から離れて係止が解除され、係止爪42は開錠位置にある状態となる。
【0030】
図5に示すレバー52の操作により、係止爪42が回転して開錠位置にある場合、
図6に示すように、磁石53のS極と磁石43のN極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,53が引き寄せ合う。磁石53は、使用者にレバー52が保持されていて動けないため、磁石43は、磁石53に近づく方向に向かって移動する。これにより、係止爪42が開錠位置にある状態を維持することができ、抽斗2を筐体1から引き出すことができる。
【0031】
筐体1から抽斗2を引き出した後、使用者は、レバー52から手を放す。レバー52を放すと、
図7に示すように、レバー52は、バネ54の付勢力によって軸部51dを中心として回転し、バネ54が伸びるとともに、レバー52の他端部は上方に移動する。
このとき、レバー52の磁石53は、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置することになり、かつ、磁石53に引き寄せられていた係止爪42の磁石43は、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置している。これにより、磁石53のN極と磁石43のN極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,53が反発しあう。磁石53は、レバー52がストッパ51cに移動を規制されていて動けないため、磁石43は、磁石53から離れる方向に向かって移動する。そのため、磁石43が設けられている係止爪42も軸部41dを中心として磁石43が磁石53から離れる方向にともに回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11に近づいて係止され、係止爪42は施錠位置にある状態となる。
【0032】
抽斗2を筐体1内に戻す際には、使用者は抽斗2の正面板21を筐体1に向かって押す。このとき、
図8に示すように、レバー52は引かれていないため、係止爪42は施錠位置にあり、係止爪42の鉤状部42aが筐体1の受け部11に反対側から接触する。しかし、鉤状部42aの上縁部42bは、抽斗2の奥側に向かうにつれて緩やかに傾斜する凸面状(円弧状)に形成されているため、係止爪42は、受け部11に引っ掛かることなく、軸部41dを中心として回転する。受け部11を通過した後は、磁石43,53の磁力作用により、係止爪42は受け部11に係止されて施錠位置にある状態となる。
【0033】
ロック装置3によれば、正面板21の正面と背面に設けた二つの磁石43,53の磁力作用により、抽斗2の施錠及び開錠を行うことができるので、ラッチ部4と把手部5とを機械的に連結する必要がない。そのため、正面板21に貫通孔を形成する等の加工を事前に行う必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、既存のキャビネット100の正面板21にも簡単に取り付けることができる。
磁石43は係止爪42に設けられており、磁石53はレバー52に設けられているので、両磁石43,53は、正面板21に取り付けられたままの状態でロック装置3を用いることができるので、一方の磁石53を操作用の磁石として保管する必要がなく、磁石53の紛失を防止することができる。また、抽斗2を開閉するたびに磁石53の取り出し及び保管を繰り返す必要がなくなるので、使用者の手間を減らすことができる。
レバー52に磁石53が設けられているので、レバー52の操作がロックの施錠及び開錠に繋がるため、ロック装置3の操作を簡単なものとすることができる。
レバー52による開錠操作方向は、キャビネット100の抽斗2を開ける動作と同じ方向であるため、使用者はレバー52を手前に引くという一つの動作でロックの解除と抽斗2の引き出しを連動して行うことができ、操作性に優れる。これにより、抽斗2が常にロックされていて頻繁に抽斗2を開閉する場合であっても、使用者が煩わしさを感じることなく抽斗2を使用することができる。
カバー55は、ベース51に着脱自在とされているので、キャビネット100の載置場所の雰囲気や使用者の好みによって自由に、簡単に交換することができる。また、レバー52の形状や抽斗2の大きさに応じて、形状や大きさの異なるカバー55に自由に変更することができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
次に、ロック装置の第2の実施の形態について説明する。ロック装置の一部の構成は、第1の実施の形態と同じであるため説明を省略し、第1の実施の形態との相違点について説明する。
図9に示すように、ロック装置3Aは、正面板21に対して、把手部5を上下逆にして取り付けたものである。
係止爪42に設けられている磁石43は、例えば、S極が上側、N極が下側となるように係止爪42に設けられている。磁石43は、係止爪42が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、上側のS極が下側のN極よりも正面板21側に位置するように係止爪42に設けられている。磁石43は、係止爪42と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、下側のN極が上側のS極よりも正面板21側に位置するように係止爪42に設けられている。
レバー52に設けられている磁石53は、例えば、N極が上側、S極が下側となるようにレバー52に設けられている。磁石53は、レバー52が引かれていない状態、すなわち、係止爪42が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、上側のN極が下側のS極よりも正面板21側に位置するようにレバー52に設けられている。磁石53は、係止爪42と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、下側のS極が上側のN極よりも正面板21側に位置するようにレバー52に設けられている。
係止爪42が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)においては、係止爪42に設けられている磁石43の上側のS極と、レバー52に設けられている磁石53の上側のN極とが引き寄せ合うとともに、磁石43の下側のN極と、磁石53の上側のN極とが反発し合っている。
【0035】
ロック装置3Aによるロックを解除して抽斗2を筐体1から引き出す際には、
図9(b)に示すように、使用者は、カバー55の上方から手を入れてレバー52の手掛部52aに手を掛け、抽斗2を引き出す方向Pと同じ方向、つまり、キャビネット100に向き合っている使用者がいる手前側にレバー52を引く。
レバー52を引くと、レバー52は、バネ54の付勢力に抗して軸部51dを中心として回転し、バネ54が縮むとともに、レバー52の他端部は上方に移動する。
このとき、レバー52の磁石53は、下側のS極が上側のN極よりも正面板21側に位置することになる。これにより、磁石53のS極と磁石43のN極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,53が引き寄せ合う。磁石53は、使用者にレバー52が保持されていて動けないため、磁石43は、磁石53に近づく方向に向かって移動する。そのため、磁石43が設けられている係止爪42も軸部41dを中心として磁石43が磁石53に近づく方向にともに回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11から離れて係止が解除され、係止爪42は開錠位置にある状態となる。
図9(b)に示すレバー52の操作により、係止爪42が回転して開錠位置にある場合、互いの磁石43,53が引き寄せあっているので、係止爪42が開錠位置にある状態を維持することができ、抽斗2を筐体1から引き出すことができる。
【0036】
ロック装置3Aによれば、正面板21の正面と背面に設けた二つの磁石43,53の磁力作用により、抽斗2の施錠及び開錠を行うことができるので、ラッチ部4と把手部5とを機械的に連結する必要がない。そのため、正面板21に貫通孔を形成する等の加工を事前に行う必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、既存のキャビネット100の正面板21にも簡単に取り付けることができる。
磁石43は係止爪42に設けられており、磁石53はレバー52に設けられているので、両磁石43,53は、正面板21に取り付けられたままの状態でロック装置3Aを用いることができるので、一方の磁石53を操作用の磁石として保管する必要がなく、磁石53の紛失を防止することができる。また、抽斗2を開閉するたびに磁石53の取り出し及び保管を繰り返す必要がなくなるので、使用者の手間を減らすことができる。
レバー52に磁石53が設けられているので、レバー52の操作がロックの施錠及び開錠に繋がるため、ロック装置3Aの操作を簡単なものとすることができる。
レバー52による開錠操作方向は、キャビネット100の抽斗2を開ける動作と同じ方向であるため、使用者はレバー52を手前に引くという一つの動作でロックの解除と抽斗2の引き出しを連動して行うことができ、操作性に優れる。これにより、抽斗2が常にロックされていて頻繁に抽斗2を開閉する場合であっても、使用者が煩わしさを感じることなく抽斗2を使用することができる。
カバー55の上方の開口から手を入れてレバー52を操作することができるため、床付近の低い位置にある抽斗2を開閉するときの操作を簡単にすることができる。
カバー55は、ベース51に着脱自在とされているので、キャビネット100の載置場所の雰囲気や使用者の好みによって自由に、簡単に交換することができる。また、レバー52の形状や抽斗2の大きさに応じて、形状や大きさの異なるカバー55に自由に変更することができる。
【0037】
[第3の実施の形態]
次に、ロック装置の第3の実施の形態について説明する。ロック装置の一部の構成は、第1の実施の形態と同じであるため説明を省略し、第1の実施の形態との相違点について説明する。
図10、
図11に示すように、ロック装置3Bは、把手部5に代えて、把手部5とは構成の異なる把手部6を備えている。
【0038】
図10に示すように、把手部6は、ベース61と、レバー62と、磁石63と、バネ64と、カバー65と、を備えている。
ベース61は、把手部6を正面板21に取り付ける土台となる。ベース61は、ネジ孔61aと、案内部61bと、ストッパ61cと、台部61dと、を備えている。
ネジ孔61aは、ネジ等を挿通させて、ベース61を正面板21に取り付ける際に用いられる貫通孔である。ネジ孔61aは、ベース61の幅方向両端部近傍にそれぞれ一つずつ形成されている。ネジ孔61aは、その高さ方向に沿って延びる長孔状に形成されている。ネジ孔61aは、ベース61を正面板21に取り付けた際に、同じ高さとなる位置に形成されている。
案内部61bは、二つのネジ孔61aに挟まれた位置に設けられており、レバー62の上下移動をその幅方向両側から案内する。案内部61bは、レバー62の幅方向両側にそれぞれ一つずつ設けられており、正面板21の背面に直交する方向に沿って抽斗2の手前側(抽斗2を引き出す方向)に向けて延びるように形成されている。
ストッパ61cは、二つの案内部61bの間の位置でレバー62の下方に設けられており、レバー62の上下移動の軌道上に設けられている。ストッパ61cは、レバー62が必要以上に下方に移動しないように、ロックするのに必要最低限の位置でレバー62を受け止めて、レバー62のそれ以上の移動を規制する。
台部61dは、ストッパ61cの上方に設けられており、レバー62の上端部に対向する位置に設けられている。台部61dには、バネ64の一端部が設けられており、レバー62の上端部には、バネ64の他端部が設けられている。
【0039】
レバー62は、操作部として機能し、正面板21の正面において、ベース61に対して上下方向に移動自在に設けられている。
レバー62は、係止爪42が筐体1の受け部11に係止される施錠位置と、係止爪42と受け部11との係止が解除される開錠位置との間で係止爪42を移動させることができる範囲で可動するようにベース61に上下移動自在に設けられている。
【0040】
磁石63は、第2の磁石として機能し、レバー62に設けられている。磁石63は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石である。磁石63は、例えば、係止爪42の磁石43のN極が下側、S極が上側である場合に、N極が上側、S極が下側となるようにレバー62に設けられている。磁石63は、レバー62が上方に押し上げられていない状態、すなわち、係止爪42が受け部11に係止された施錠位置において、磁石43のN極と磁石63のN極とが他極よりも最接近した状態となっている。磁石63は、レバー62の操作による移動により、磁石43に対する磁力作用で係止爪42を施錠位置と開錠位置との間で移動させる。
【0041】
バネ64は、レバー62の上端部と台部61dとの間に設けられている。バネ64は、正面板21の高さ方向にほぼ沿うように設けられており、その弾性力により、レバー62の上端部を下方に向けて付勢している。すなわち、バネ64は、自然長よりも圧縮された状態で、レバー62の上端部と台部61dとの間に設けられている。すなわち、バネ64の付勢によってレバー62の上端部は下方に押し下げられている。なお、バネ64を設けることなく、レバー62の重力によってレバー62を下方に移動させることもできるが、レバー62の案内部61bに沿った移動時のがたつきや、レバー62がストッパ61cに衝突して音が出ることを防止するため、バネ64は設けた方が好ましい。
【0042】
カバー65は、ベース61に着脱自在に設けられている。カバー65は、内側に空間が形成されており、把手部6を構成するベース61、レバー62、磁石63、及びバネ64を覆い、把手部6の美観を向上させる。カバー65の下方は開口されており、この開口部から手を入れてレバー62を操作することができるようになっている。
【0043】
ロック装置3Bによるロックを解除して抽斗2を筐体1から引き出す際には、
図11に示すように、使用者は、カバー65の下方から手を入れてレバー62に手を掛け、レバー62を上方に向けて押し上げる。
レバー62を押し上げると、レバー62は、バネ64の付勢力に抗して上方に移動し、バネ64が縮む。
レバー62の磁石63は、上側のN極が磁石43の下側のN極と反発し合い、係止爪42は施錠位置にあるが、レバー62が上方に移動して、磁石63の下側のS極が磁石43の下側のN極に最接近すると、磁石43と磁石63が引き寄せ合うので、係止爪42は軸部41dを中心として回転し、係止爪42は筐体1の受け部11から離れるように回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11から離れて係止が解除され、係止爪42は開錠位置にある状態となる。
【0044】
図11に示すレバー62の操作により、係止爪42が回転して開錠位置にある場合、磁石63のS極と磁石43のN極とが他の極よりも最接近した状態となり、磁力作用により、互いの磁石43,63が引き寄せ合う。磁石63は、使用者にレバー62が保持されていて動けないため、磁石43は、磁石63に近づく方向に向かって移動する。これにより、係止爪42が開錠位置にある状態を維持することができ、抽斗2を筐体1から引き出すことができる。
【0045】
筐体1から抽斗2を引き出した後、使用者は、レバー62から手を放す。レバー62を放すと、レバー62は、バネ64の付勢力によって下方に移動し、バネ64が伸びる。
このとき、レバー62の磁石63は、レバー62が下方に移動して、磁石63の上側のN極が磁石43の下側のN極に最接近すると、磁石43と磁石63が反発し合うので、係止爪42は軸部41dを中心として回転し、係止爪42は筐体1の受け部11に近づくように回転する。その結果、係止爪42の鉤状部42aは、筐体1の受け部11に係止され、係止爪42は施錠位置にある状態となる。
また、抽斗2を筐体1内に戻す際には、使用者は抽斗2の正面板21を筐体1に向かって押す。このとき、レバー62は引かれていないため、係止爪42は施錠位置にあり、係止爪42の鉤状部42aが筐体1の受け部11に反対側から接触する。しかし、鉤状部42aの上縁部42bは、抽斗2の奥側に向かうにつれて緩やかに傾斜する凸面状(円弧状)に形成されているため、係止爪42は、受け部11に引っ掛かることなく、軸部41dを中心として回転する。受け部11を通過した後は、磁石43,63の磁力作用により、係止爪42は受け部11に係止されて施錠位置にある状態となる。
【0046】
ロック装置3Bによれば、正面板21の正面と背面に設けた二つの磁石43,63の磁力作用により、抽斗2の施錠及び開錠を行うことができるので、ラッチ部4と把手部6とを機械的に連結する必要がない。そのため、正面板21に貫通孔を形成する等の加工を事前に行う必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、既存のキャビネット100の正面板21にも簡単に取り付けることができる。
磁石43は係止爪42に設けられており、磁石63はレバー62に設けられているので、両磁石43,63は、正面板21に取り付けられたままの状態でロック装置3Bを用いることができるので、一方の磁石63を操作用の磁石として保管する必要がなく、磁石63の紛失を防止することができる。また、抽斗2を開閉するたびに磁石63の取り出し及び保管を繰り返す必要がなくなるので、使用者の手間を減らすことができる。
レバー62に磁石63が設けられているので、レバー62の操作がロックの施錠及び開錠に繋がるため、ロック装置3Bの操作を簡単なものとすることができる。
レバー62は、正面板21の面方向に沿って上下方向に移動させるように構成されているので、レバー62を前後方向(抽斗2の引き出し方向)に沿って引くような構成よりも把手部6を薄く作ることができる。これにより、正面板21の表面からの把手部6の突出量が減るため、狭い場所での設置に好適となる。
カバー65は、ベース51に着脱自在とされているので、キャビネット100の載置場所の雰囲気や使用者の好みによって自由に、簡単に交換することができる。また、レバー62の形状や抽斗2の大きさに応じて、形状や大きさの異なるカバー65に自由に変更することができる。
【0047】
[第4の実施の形態]
次に、ロック装置の第4の実施の形態について説明する。ロック装置の一部の構成は、第1の実施の形態と同じであるため説明を省略し、第1の実施の形態との相違点について説明する。
図12に示すように、ロック装置3Cは、ラッチ部7と、把手部8と、を備えている。
ラッチ部7は、基部71と、係止爪72と、磁石73と、を備えている。
基部71は、ネジ等を介して正面板21の背面に取り付けられている。基部71には、軸部71dを介して係止爪72が回転自在に設けられている。軸部71dは、その軸線が正面板21の厚さ方向(抽斗2の引き出し方向)に沿うように基部71に設けられている。
係止爪72は、その長手方向中央部付近で軸部71dに支持されている。係止爪72は、一端部に筐体1の受け部11に係止される鉤状部72aを有しており、他端部に磁石73を収容する収容部72bを有している。係止爪72は、磁石73を設けた状態において、一端側より他端側の方が重くなるように形成されている。したがって、係止爪72に何も力が作用していない状態においては、係止爪72の他端部は自重により下方に向かって回転し、一端部は上方に向かって回転して受け部11に係止される。
【0048】
磁石73は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石であり、例えば、S極が軸部71d側(抽斗2の奥側)、N極が正面板21側(抽斗2の手前側)となるように係止爪72の収容部72bに設けられている。磁石73は、係止爪72が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、正面板21から離れた状態となっており、係止爪72と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、正面板21の背面に最接近した位置にある状態となっている。
【0049】
把手部8は、ベース81と、つまみ82と、磁石83と、を備えている。
ベース81は、ネジ等を介して正面板21の正面に取り付けられている。ベース81には、つまみ82が上下方向に沿って往復移動自在に設けられている。
つまみ82は、ベース81に設けられた状態で正面板21の厚さ方向に延びるように形成された棒状の部材であり、一端部がベース81に嵌め込まれ、他端部がベース81の外側に露出している。つまみ82の一端部には、磁石83が設けられている。
磁石83は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石であり、例えば、S極がつまみ82の一端部側(正面板21側)、N極がつまみ82の他端部側となるようにつまみ82に設けられている。
二つの磁石73,83は、つまみ82を下端まで下げた状態では、互いの磁力作用によって引き寄せあわない程度の距離が確保されており、つまみ82を上端に上げる途中で、徐々に距離が縮まり、磁力作用によって互いに引き寄せ合う。このような状態を満たすよう、係止爪72とつまみ82の位置が決定されている。
【0050】
ロック装置3Cによるロックを解除して抽斗2を筐体1から引き出す際には、
図12に示すように、使用者は、つまみ82を持ってつまみ82を上方に向けて押し上げる。
つまみ82を上方に移動させると、つまみ82に設けられた磁石83は、係止爪72に設けられた磁石73に徐々に近づいていく。やがて、両磁石73,83の磁力作用により、磁石73のN極と磁石83のS極が引き寄せ合うことによって、係止爪72の他端部は上方に向かうように軸部71dを中心として回転し、係止爪72の一端部の鉤状部72aは筐体1の受け部11から離れるように回転する。その結果、係止爪72の鉤状部72aは、筐体1の受け部11から離れて係止が解除され、係止爪72は開錠位置にある状態となる。これにより、使用者は、つまみ82を上方に押し上げた状態でつまみ82を手前に引くことにより、抽斗2を筐体1から引き出すことができる。
【0051】
筐体1から抽斗2を引き出した後、使用者は、つまみ82から手を放す。つまみ82を放すと、つまみ82は、自重によって下方に移動する。
このとき、つまみ82の磁石83は、つまみ82とともに下方に移動して、磁石83のS極が磁石73のN極から徐々に離れていく。やがて、両磁石73,83間に引き寄せ合うほどの磁力が及ばなくなるので、係止爪72において磁石73が設けられている他端部は、その自重によって軸部71dを中心として回転し、係止爪72において鉤状部72aが設けられている一端部は、筐体1の受け部11に近づくように回転する。その結果、係止爪72の鉤状部72aは、筐体1の受け部11に係止され、係止爪72は施錠位置にある状態となる。
また、抽斗2を筐体1内に戻す際には、使用者は抽斗2の正面板21を筐体1に向かって押す。このとき、つまみ82は上方に押し上げられていないため、係止爪72は施錠位置にあり、係止爪72の鉤状部72aが筐体1の受け部11に反対側から接触する。しかし、
図12に示すように、受け部11の下面には、抽斗2の奥側に向かうにつれて緩やかに下方に傾斜する斜面11aが形成されているため、係止爪72は、受け部11に引っ掛かることなく、軸部71dを中心として回転する。受け部11を通過した後は、係止爪72において磁石73が設けられている他端部は、その自重によって軸部71dを中心として回転し、係止爪72において鉤状部72aが設けられている一端部は、筐体1の受け部11に近づくように回転する。これにより、係止爪72は受け部11に係止されて施錠位置にある状態となる。
【0052】
ロック装置3Cによれば、正面板21の正面と背面に設けた二つの磁石73,83の磁力作用により、抽斗2の施錠及び開錠を行うことができるので、ラッチ部7と把手部8とを機械的に連結する必要がない。そのため、正面板21に貫通孔を形成する等の加工を事前に行う必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、既存のキャビネット100の正面板21にも簡単に取り付けることができる。
磁石73は係止爪72に設けられており、磁石83はつまみ82に設けられているので、両磁石73,83は、正面板21に取り付けられたままの状態でロック装置3Cを用いることができるので、一方の磁石83を操作用の磁石として保管する必要がなく、磁石83の紛失を防止することができる。また、抽斗2を開閉するたびに磁石83の取り出し及び保管を繰り返す必要がなくなるので、使用者の手間を減らすことができる。
つまみ82に磁石83が設けられているので、つまみ82の操作がロックの施錠及び開錠に繋がるため、ロック装置3Cの操作を簡単なものとすることができる。
【0053】
[第5の実施の形態]
次に、ロック装置の第5の実施の形態について説明する。ロック装置の一部の構成は、第1の実施の形態と同じであるため説明を省略し、第1の実施の形態との相違点について説明する。
図13、
図14に示すように、ロック装置3Dは、ラッチ部9と、把手部10と、を備えている。
ラッチ部9は、基部91と、係止爪92と、磁石93と、を備えている。
基部91は、ネジ等を介して正面板21の背面に取り付けられている。基部91には、軸部91dを介して係止爪92が回転自在に設けられている。軸部91dは、その軸線が正面板21の厚さ方向(抽斗2の引き出し方向)に沿うように基部91に設けられている。
係止爪92は、その長手方向中央部付近で軸部91dに支持されている。係止爪92は、一端部に筐体1の受け部11に係止される鉤状部92aを有しており、他端部に磁石93を収容する収容部92bを有している。係止爪92は、磁石93を設けた状態において、一端側より他端側の方が重くなるように形成されている。したがって、係止爪92に何も力が作用していない状態においては、係止爪92の他端部は自重により下方に向かって回転し、一端部は上方に向かって回転して受け部11に係止される。係止爪92は、鉤状部92aが基部91から出没するように、基部91内に収容されている。
【0054】
磁石93は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石であり、例えば、S極が抽斗2の奥側、N極が正面板21側(抽斗2の手前側)となるように係止爪92の収容部92bに設けられている。磁石93は、係止爪92が筐体1の受け部11に係止されている状態(施錠位置)において、下方の位置にある状態となっており、係止爪92と筐体1の受け部11との係止が解除されている状態(開錠位置)において、上方の位置にある状態となっている。
【0055】
把手部10は、ベース101と、レバー102と、磁石103と、カバー105と、を備えている。
ベース101は、ネジ等を介して正面板21の正面に取り付けられている。ベース101には、レバー102が上下方向に沿って往復移動自在に設けられている。
レバー102は、正面板21の正面において、ベース101に対して上下方向に移動自在に設けられている。レバー102は、係止爪92が筐体1の受け部11に係止される施錠位置と、係止爪92と受け部11との係止が解除される開錠位置との間で係止爪92を移動させることができる範囲で可動するようにベース101に上下移動自在に設けられている。
磁石103は、例えば、フェライト磁石等の永久磁石であり、例えば、S極が正面板21に対向するようにレバー102に設けられている。
二つの磁石93,103は、レバー102を下端まで下げた状態では、互いの磁力作用によって引き寄せあわされた状態となっており、レバー102を上方に移動させると、磁石103も上方に移動し、磁石93も磁石103に引き寄せられる。これにより、係止爪92の他端部も上方に移動する。
カバー105は、ベース101に着脱自在に設けられている。カバー105は、内側に空間が形成されており、把手部10を構成するベース101、レバー102、及び磁石103を覆い、把手部10の美観を向上させる。カバー105の下方は開口されており、この開口部から手を入れてレバー102を操作することができるようになっている。
【0056】
ロック装置3Dによるロックを解除して抽斗2を筐体1から引き出す際には、
図14に示すように、使用者は、カバー105の下方から手を入れてレバー102を上方に向けて押し上げる。
レバー102を上方に移動させると、レバー102に設けられた磁石103も上方に移動し、磁力作用により、磁石103に引き寄せられている磁石93も磁石103とともに上方に移動する。磁石103が上方に移動することにより、係止爪92の他端部は上方に向かうように軸部91dを中心として回転し、係止爪92の一端部の鉤状部92aは筐体1の受け部11から離れるように回転する。その結果、係止爪92の鉤状部92aは、筐体1の受け部11から離れて係止が解除され、係止爪92は開錠位置にある状態となる。これにより、使用者は、レバー102を上方に押し上げた状態でレバー102を手前に引くことにより、抽斗2を筐体1から引き出すことができる。
【0057】
筐体1から抽斗2を引き出した後、使用者は、レバー102から手を放す。レバー102を放すと、レバー102は、自重によって下方に移動する。
このとき、磁石103は、レバー102とともに下方に移動するため、磁石93も磁石103に引き寄せられて下方に移動する。磁石103の移動に伴い、係止爪92において磁石93が設けられている他端部は、その自重によって軸部91dを中心として回転し、係止爪92において鉤状部92aが設けられている一端部は、筐体1の受け部11に近づくように回転する。その結果、係止爪92の鉤状部92aは、筐体1の受け部11に係止され、係止爪92は施錠位置にある状態となる。
また、抽斗2を筐体1内に戻す際には、使用者は抽斗2の正面板21を筐体1に向かって押す。このとき、レバー102は上方に押し上げられていないため、係止爪92は施錠位置にあり、係止爪92の鉤状部92aが筐体1の受け部11に反対側から接触する。しかし、
図13に示すように、鉤状部92aの上縁部92cは、抽斗2の奥側に向かうにつれて緩やかに傾斜する凸面状(円弧状)に形成されているため、係止爪92は、受け部11に引っ掛かることなく、軸部91dを中心として回転する。受け部11を通過した後は、係止爪92において磁石93が設けられている他端部は、その自重、及び磁石93,103の磁力作用によって軸部91dを中心として回転し、係止爪92において鉤状部92aが設けられている一端部は、筐体1の受け部11に近づくように回転する。これにより、係止爪92は受け部11に係止されて施錠位置にある状態となる。
【0058】
ロック装置3Dによれば、正面板21の正面と背面に設けた二つの磁石93,103の磁力作用により、抽斗2の施錠及び開錠を行うことができるので、ラッチ部9と把手部10とを機械的に連結する必要がない。そのため、正面板21に貫通孔を形成する等の加工を事前に行う必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、既存のキャビネット100の正面板21にも簡単に取り付けることができる。
磁石93は係止爪92に設けられており、磁石103はレバー102に設けられているので、両磁石93,103は、正面板21に取り付けられたままの状態でロック装置3Dを用いることができるので、一方の磁石103を操作用の磁石として保管する必要がなく、磁石103の紛失を防止することができる。また、抽斗2を開閉するたびに磁石103の取り出し及び保管を繰り返す必要がなくなるので、使用者の手間を減らすことができる。
レバー102に磁石103が設けられているので、レバー102の操作がロックの施錠及び開錠に繋がるため、ロック装置3Dの操作を簡単なものとすることができる。
係止爪92を回転自在に支持する軸部91dは、その軸線が正面板21の厚さ方向(抽斗2の引き出し方向)に沿うように基部91に設けられているため、係止爪92の長手方向を正面板21の背面に沿って配置することができる。これにより、係止爪92の抽斗2内への突出量を減らすことができ、ラッチ部9を薄く作ることができる。よって、抽斗2内の収納領域を増やすことができる。
レバー102は、正面板21の面方向に沿って上下方向に移動させるように構成されているので、レバー62を前後方向(抽斗2の引き出し方向)に沿って引くような構成よりも把手部10を薄く作ることができる。これにより、正面板21の表面からの把手部6の突出量が減るため、狭い場所での設置に好適となる。
カバー105は、ベース101に着脱自在とされているので、キャビネット100の載置場所の雰囲気や使用者の好みによって自由に、簡単に交換することができる。また、レバー102の形状や抽斗2の大きさに応じて、形状や大きさの異なるカバー105に自由に変更することができる。
【0059】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更することができる。
また、上記の実施の形態においては、ロック装置は、抽斗を有するキャビネットに設けられるが、ロック装置を開き戸に設け、扉の施錠及び開錠をするような構成であってもよい。この場合においても、扉を手前に引く動作により扉の開錠と扉の開放を一連の動作で行うことができるので、操作性に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0060】
1 筐体
2 抽斗
3 ロック装置
4,7,9 ラッチ部
5,6,8,10 把手部
11 受け部
42,72 係止爪
43,73,93 磁石
52,62,102 レバー
53,63,83,103 磁石
54,64 バネ
55,65,105 カバー
82 つまみ
100 キャビネット