(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 17/08 20060101AFI20221116BHJP
A01D 17/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A01D17/08
A01D17/06
(21)【出願番号】P 2019169694
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】小畑 真人
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-107829(JP,A)
【文献】米国特許第04787461(US,A)
【文献】実開昭63-098027(JP,U)
【文献】特開平10-248343(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0325480(KR,Y1)
【文献】中国特許出願公開第107318342(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
B65G 27/00-27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫物を搬送する搬送部と、
前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、
前記振動手段は、少なくとも前記搬送部を第1振動強さで振動させる第1振動入状態と、前記搬送部を前記第1振動強さよりも弱い第2振動強さで振動させる第2振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっており、
前記搬送部は、搬送方向に並ぶ複数の搬送部材を有し、
前記振動手段は、前記搬送部材との当接に基づいて前記搬送部に振動を付与する振動付与体を有
し、
前記複数の搬送部材は、前記振動付与体との当接位置の高さが異なる少なくとも2種類以上の搬送部材で構成され、当該搬送部材の配置パターンによって前記搬送部の振動パターンが決まる
ことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
収穫物を搬送する搬送部と、
前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、
前記振動手段は、前記搬送部を所定範囲内における任意の振動強さで振動させる振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっており、
前記搬送部は、搬送方向に並ぶ複数の搬送部材を有し、
前記振動手段は、前記搬送部材との当接に基づいて前記搬送部に振動を付与する振動付与体を有
し、
前記複数の搬送部材は、前記振動付与体との当接位置の高さが異なる少なくとも2種類以上の搬送部材で構成され、当該搬送部材の配置パターンによって前記搬送部の振動パターンが決まる
ことを特徴とする収穫機。
【請求項3】
収穫物を搬送する搬送部と、
前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、
前記振動手段は、少なくとも前記搬送部を第1振動強さで振動させる第1振動入状態と、前記搬送部を前記第1振動強さよりも弱い第2振動強さで振動させる第2振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっており、
前記振動手段は、
前記搬送部に当接する上下動可能な振動付与体と、
前記振動付与体が前記搬送部に当接しないように前記搬送部を支持する上下動可能な支持体とを有し、
前記振動手段の状態の切り換えの際に、前記振動付与体と前記支持体とが連動して上下動する
ことを特徴とする収穫機。
【請求項4】
収穫物を搬送する搬送部と、
前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、
前記振動手段は、前記搬送部を所定範囲内における任意の振動強さで振動させる振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっており、
前記振動手段は、
前記搬送部に当接する上下動可能な振動付与体と、
前記振動付与体が前記搬送部に当接しないように前記搬送部を支持する上下動可能な支持体とを有し、
前記振動手段の状態の切り換えの際に、前記振動付与体と前記支持体とが連動して上下動する
ことを特徴とする収穫機。
【請求項5】
前記振動手段は、この振動手段の状態を切り換えるための操作体を有し、
前記操作体の操作に基づく前記振動手段の状態の切り換えの際に、前記振動付与体と前記支持体とが連動して上下動する
ことを特徴とする請求項
3又は
4記載の収穫機。
【請求項6】
前記搬送部は、対をなす無端部材と、これら両無端部材間に架設されて搬送方向に並ぶ複数の搬送部材とを有し、
前記振動付与体は、前記搬送部材との当接に基づいて前記搬送部に振動を付与し、
前記支持体は、前記振動付与体が前記搬送部材に当接しないように前記無端部材を支持する
ことを特徴とする請求項
3ないし
5のいずれか一記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業効率の向上を図ることができる収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された収穫機が知られている。この従来の収穫機は、土を土落下開口から落下させながら収穫物を斜め上後方に向けて搬送する搬送部と、この搬送部を振動させるための振動手段とを備えている。
【0003】
そして、振動手段は、ローラ支軸に対する振動ローラの水平方向の位置変更により、搬送部に振動を付与してこの搬送部を振動させる振動入状態と、搬送部に振動を付与しない振動切状態とに選択的に切換可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の収穫機では、振動入状態及び振動切状態に切り換えることができるものの、振動入状態での振動強さが一定であるため、作業効率が悪くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業効率の向上を図ることができる収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の収穫機は、収穫物を搬送する搬送部と、前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、前記振動手段は、少なくとも前記搬送部を第1振動強さで振動させる第1振動入状態と、前記搬送部を前記第1振動強さよりも弱い第2振動強さで振動させる第2振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっているものである。
【0008】
請求項2記載の収穫機は、収穫物を搬送する搬送部と、前記搬送部を振動させるための振動手段とを備え、前記振動手段は、前記搬送部を所定範囲内における任意の振動強さで振動させる振動入状態と、前記搬送部に振動を付与しない振動切状態とに切換可能となっているものである。
【0009】
請求項3記載の収穫機は、請求項1又は2記載の収穫機において、振動手段は、搬送部に当接する振動付与体と、前記振動付与体が前記搬送部に当接しないように前記搬送部を支持する支持体とを有するものである。
【0010】
請求項4記載の収穫機は、請求項3記載の収穫機において、振動付与体は、上下動可能であるものである。
【0011】
請求項5記載の収穫機は、請求項3記載の収穫機において、支持体は、上下動可能であるものである。
【0012】
請求項6記載の収穫機は、請求項3記載の収穫機において、振動付与体及び支持体は、いずれも上下動可能であるものである。
【0013】
請求項7記載の収穫機は、請求項6記載の収穫機において、振動手段は、この振動手段の状態を切り換えるための操作体を有し、振動付与体及び支持体は、前記操作体の操作に基づく上下動により、前記振動手段の状態に対応する位置に設定されるものである。
【0014】
請求項8記載の収穫機は、請求項1ないし7のいずれか一記載の収穫機において、搬送部は、最下位置の高さが異なる少なくとも2種類以上の複数本の搬送部材を有するものである。
【0015】
請求項9記載の収穫機は、請求項8記載の収穫機において、搬送部の搬送部材の配置パターンによって搬送部の振動パターンが決まるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る収穫機の側面図である。
【
図4】同上振動手段の第1振動入状態(振動「強」状態、第1搬送バー)を示す図である。
【
図5】同上振動手段の第1振動入状態(振動「強」状態、第2搬送バー)を示す図である。
【
図6】同上振動手段の第1振動入状態(振動「強」状態、第3搬送バー)を示す図である。
【
図7】同上振動手段の第2振動入状態(振動「弱」状態、第1搬送バー)を示す図である。
【
図8】同上振動手段の第2振動入状態(振動「弱」状態、第2搬送バー)を示す図である。
【
図9】同上振動手段の第2振動入状態(振動「弱」状態、第3搬送バー)を示す図である。
【
図10】同上振動手段の振動切状態(振動「切」状態)を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る収穫機の振動手段を示す図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る収穫機の振動手段を示す図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る収穫機の振動手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態について
図1ないし
図10を参照して説明する。
【0019】
図1及び
図2において、1は農作業機である収穫機で、この収穫機1は、圃場の収穫物(農作物)の収穫作業を行うための自走式収穫装置である。収穫物は、例えば圃場の土中に生育した略球形状の馬鈴薯である。なお、収穫物は、馬鈴薯以外に、例えば薩摩芋、玉葱、人参等でもよい。
【0020】
収穫機1は、機枠2に設置されたエンジン3と、このエンジン3からの動力に基づいて作動するクローラ4と、同じくエンジン3からの動力に基づいて作動する搬送手段であるコンベヤ5と、このコンベヤ5の搬送部6を上下方向に振動させるための振動手段7とを備えている。
【0021】
コンベヤ5の前側部分5aは、シリンダ11の伸縮に基づいて回動支点12を中心として後側部分5bに対して上下方向に回動可能となっている。そして、その前側部分5aには、掘取刃13及び左右のゲージ輪14が設けられている。ゲージ輪14の高さ位置は、調整ハンドル15によって調整可能である。
【0022】
また、収穫機1は、作業者が座る左右の座席16と、この各座席16の近傍に設けられたステップ17と、左側の座席16に座った作業者が操作可能な操作手段18と、コンテナ(収穫物が収納される容器)が載置される前コンテナ台19及び後コンテナ台20とを備えている。
【0023】
コンベヤ5は、掘取体である掘取刃13によって圃場の土中から掘り取られた収穫物を、搬送部6によって斜め上後方に向けて搬送する搬送装置である。つまり、コンベヤ5は、このコンベヤ5上に収穫物とともに搬入された圃場の土を土落下開口(隣り合う搬送バー33間の間隙)10から落下させながら収穫物を斜め上後方に向けて搬送する回行可能な無端状の搬送部6を有している。
【0024】
搬送部6は、前側の従動ローラ21及び後側の駆動ローラ22に巻き掛けられ、この駆動ローラ22からの動力で所定方向に回行する。この搬送部6は、複数の土落下開口10から土を落下させながら収穫物を搬送する往路面(複数の土落下開口を有する往路側搬送面)23を上側に有し、この往路面23は複数の固定ガイド24で支持されている。そして、搬送部6の往路面23の前側部分が、振動手段7によって上下の振動が付与されるようになっている。
【0025】
ここで、搬送部6は、
図2、
図4等に示すように、所定方向に回行する左右対をなす帯状の無端部材である無端ベルト31と、これら両無端ベルト31間に架設され、当該無端ベルト31とともに回行して収穫物を搬送する左右方向長手状の複数の搬送部材である搬送バー33を有している。なお、互いに隣り合う搬送バー(搬送杆)33間には、圃場に向けて土を落下させるための土落下開口10が存在している。
【0026】
複数本の搬送バー33は、最下位置(搬送ローラ41との当接位置である下端位置)の高さがそれぞれ異なる少なくとも2種類以上、すなわち例えば互いに形状が異なる3種類の搬送バー33a,33b,33cによって構成されている。つまり、搬送部6は、少なくとも2種類以上の複数本の搬送部材(搬送杆)として、例えば第1搬送バー33a、第2搬送バー33b及び第3搬送バー33cを有している。なお、第2搬送バー33bは、収穫物の転がりを防止するための上方突出状の転がり防止部34を有している。
【0027】
そして、
図4に示すように、搬送部6は、搬送方向に並ぶ複数の搬送バー群35を有し、この各搬送バー群35は、例えば3種類の7本の搬送バー33、つまり3本の第1搬送バー33a、1本の第2搬送バー33b及び3本の第3搬送バー33cでそれぞれ構成されている。
【0028】
振動手段7による搬送部6の振動パターン(振動リズム)は、複数種類(図示した例では3種類)からなる複数本の搬送バー33(33a,33b,33c)の配置パターン(並べ方)によって決まる。それゆえ、例えば搬送バー33を無端ベルト31に対して着脱可能とした場合には、搬送バー33の配置パターンの変更により、圃場条件等に応じて搬送部6の振動パターンを変えることも可能である。
【0029】
振動手段7は、土を振るい落とすためにコンベヤ5の搬送部6を上下方向に振動させるためのコンベヤ振動装置である。そして、この振動手段7は、少なくとも3つの状態、すなわち例えば搬送部6を第1振動強さ(振幅「20mm」及び振幅「9mm」を有する振動強さ)で振動させる第1振動入状態(振動「強」状態)と、搬送部6を第1振動強さよりも弱い第2振動強さ(振幅「8.2mm」を有する振動強さ)で振動させる第2振動入状態(振動「弱」状態)と、搬送部6に振動を付与しない振動切状態(振動「切」状態)とに選択的に切換可能となっている。
【0030】
振動手段7は、
図3、
図4等に示すように、振動入状態時(第1振動入状態時、第2振動入状態時)に搬送部6の搬送バー33との当接に基づいて搬送部6に振動を付与する上下動可能な左右の振動付与体である振動ローラ41と、振動切状態時に振動ローラ41が搬送部6の搬送バー33に当接しないように搬送部6の無端ベルト31を摺動可能に支持する上下動可能な板状の左右の支持体である支持ガイド42とを有している。
【0031】
また、振動手段7は、この振動手段7の状態を3つの状態のうちのいずれか一の状態に切り換えるための回動可能な操作体である操作レバー43を有し、振動ローラ41及び支持ガイド42はその操作レバー43の回動操作に基づく上下動により振動手段7の状態に対応する所定位置に同時に設定される。
【0032】
そして、操作レバー43をロックピン44で第1振動入位置に固定することで振動手段7が第1振動入状態に切り換えられ、操作レバー43をロックピン44で第2振動入位置に固定することで振動手段7が第2振動入状態に切り換えられ、操作レバー43をロックピン44で振動切位置に固定することで振動手段7が振動切状態に切り換えられる。
【0033】
操作レバー43は、板状のレバー本体部46と、このレバー本体部46に固着されたコ字状枠部47とを有している。L字状のロックピン44は、レバー本体部46のピン用孔48及びコ字状枠部47のピン用孔49に挿入されている。また、ロックピン44のうちコ字状枠部47内に位置する部分には、切換プレート50の孔(第1振動入位置用孔51、第2振動入位置用孔52、振動切位置用孔53)に向けてロックピン44を付勢する付勢部材であるバネ55が装着されている。
【0034】
切換プレート50は、コンベヤ5の左側の側板56に固着されている。切換プレート50の前後側には、操作レバー43との当接によりこの操作レバー43の回動を規制するストッパ57,58が突設されている。それゆえ、操作レバー43の回動範囲は、前後のストッパ57,58によって制限されている。
【0035】
さらに、振動手段7は、コンベヤ5の左右の側板56間に回動可能に架設された回動軸61を有し、この回動軸61の左側の端部に操作レバー43のレバー本体部46の基端部が固着されている。なお、互いに離間対向する左右の側板(前コンベヤ枠)56は、連結パイプ60によって連結されている。
【0036】
回動軸61の2箇所には取付板62の基端側が固着され、この各取付板62の先端側には円筒状の回転体である振動ローラ41がベアリング40を介して回転可能に取り付けられている。また、回動軸61のうち取付板62よりも外側に位置する2箇所には、回動体である支持ガイド(ベルト支持ガイド板)42を支持する支持板63が固着されている。それゆえ、操作レバー43の操作による回動軸61の回動に基づいて、振動ローラ41と支持ガイド42とが連動して上下方向に回動する。
【0037】
支持ガイド42は、コンベヤ5の側板56に固定された支軸部(回動支点)64を中心として後端側が昇降するように上下方向に回動可能となっている。換言すると、支持ガイド42は、前端側の回動支点を中心として上下方向に回動可能となっている。
【0038】
この支持ガイド42は、1箇所で曲がったへ字状をなす細長板状のガイド本体部66と、このガイド本体部66の前端部に設けられた取付部67と、ガイド本体部66の下面に突設された突出板部68とを有している。そして、取付部67が支軸部64に回動可能に取り付けられ、かつ、ガイド本体部66の下面が支持板63の湾曲状の上端部である支持部70で支持されている。
【0039】
なお、振動ローラ41及び支持ガイド42は、コンベヤ5の左右の側板56間でかつ搬送部6の往路面23及び復路面26間の位置に配置されている。他方、操作レバー43は、作業者が側方から容易に操作できるように左側の側板56よりも外側の位置に配置されている。
【0040】
ここで、
図4ないし
図6は、振動手段7の第1振動入状態(操作レバー43を第1振動入位置にロックして振動「強」に設定した状態)を示す図である。
【0041】
そして、
図4に示す状態は、搬送部6の第1搬送バー33aと振動ローラ41との当接により、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42の上方へ持ち上げられた状態である。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「29.5mm」である。なお、無端ベルト31の下面は、第1搬送バー33aの最下位置(振動ローラ41が当接する被当接部39)と同じ高さ(略同じ高さを含む)に位置する。
【0042】
次いで、
図5に示す状態は、搬送部6の第2搬送バー33bと振動ローラ41との当接により、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42の上方へ持ち上げられた状態である。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「9.5mm」である。なお、無端ベルト31の下面は、第2搬送バー33bの最下位置(振動ローラ41が当接する被当接部39)よりも低い高さに位置する。
【0043】
それゆえ、第1搬送バー33aの通過により振動ローラ41が第2搬送バー33bに当接することで、無端ベルト31が「20mm」下動する。この後、再び第1搬送バー33aが振動ローラ41に当接するので、無端ベルト31が「20mm」上動する。
【0044】
次いで、
図6に示す状態は、搬送部6の第3搬送バー33cと振動ローラ41との当接により、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42の上方へ持ち上げられた状態である。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「20.5mm」である。なお、無端ベルト31の下面は、第3搬送バー33cの最下位置(振動ローラ41が当接する被当接部39)よりも低い高さに位置するが、その高低差は
図5に示す状態に比べて小さい。
【0045】
それゆえ、第1搬送バー33aの通過により振動ローラ41が第3搬送バー33cに当接することで、搬送部6の所定部分が「9mm」下動する。この後、再び第1搬送バー33aが振動ローラ41に当接するので、無端ベルト31が「9mm」上動する。
【0046】
したがって、第1振動入状態(振動「強」の状態)では、コンベヤ5の搬送部6は、振動手段7の振動付与により、互いに大きさが異なる振幅「20mm(第1大振幅)」及び振幅「9mm(第1小振幅)」を有する第1振動強さ(第1の振動の大きさ)で、繰り返して上下振動する。
【0047】
また、
図7ないし
図9は、振動手段7の第2振動入状態(操作レバー43を第2振動入位置にロックして振動「弱」に設定した状態)を示す図である。
【0048】
そして、
図7に示す状態は、搬送部6の第1搬送バー33aと振動ローラ41との当接により、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42の上方へ持ち上げられた状態である。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「8.2mm」である。
【0049】
次いで、
図8に示す状態は、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42のガイド本体部66の上面によって摺動可能に支持された状態であり、この状態では、第2搬送バー33bと振動ローラ41とは当接しておらず、互いに離れている。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「0mm」である。
【0050】
それゆえ、第1搬送バー33aの通過により支持ガイド42が無端ベルト31を支持することで、無端ベルト31が「8.2mm」下動する。この後、再び第1搬送バー33aが振動ローラ41に当接するので、無端ベルト31が「8.2mm」上動する。
【0051】
次いで、
図9に示す状態は、上記
図8の状態と同様、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42のガイド本体部66の上面によって摺動可能に支持された状態であり、この状態では、第3搬送バー33cと振動ローラ41とは当接しておらず、互いに僅かに離れている。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「0mm」である。
【0052】
それゆえ、この場合も第1搬送バー33aの通過により支持ガイド42が無端ベルト31を支持することで、無端ベルト31が「8.2mm」下動する。この後、再び第1搬送バー33aが振動ローラ41に当接するので、無端ベルト31が「8.2mm」上動する。
【0053】
したがって、第2振動入状態(振動「弱」の状態)では、コンベヤ5の搬送部6は、振動手段7の振動付与により、第1振動強さの振幅(振動量)よりも小さい振幅「8.2mm(第2振幅)」を有する第2振動強さ(第2の振動の大きさ)で、繰り返して上下振動する。
【0054】
なお、図示した例では、第2振動強さの振幅(振動量)は、1つの第2振幅だけであるが、例えば第1振動強さのように複数の振幅である第2大振幅及び第2小振幅を有するような構成とすることも可能であり、また第1振動強さの振幅(振動量)を1つの第1振幅(単一の振幅)とすることも可能である。
【0055】
さらに、
図10は、振動手段7の振動切状態(操作レバー43を振動切位置にロックして振動「切」に設定した状態)を示す図である。
【0056】
そして、この
図10に示す状態では、常時、搬送部6の無端ベルト31が支持ガイド42のガイド本体部66の上面によって摺動可能に支持されており、振動ローラ41は、搬送部6の各搬送バー33(33a,33b,33c)のいずれとも当接しない。このとき、無端ベルト31と支持ガイド42との間の距離は、「0mm」である。
【0057】
したがって、振動切状態では、コンベヤ5の搬送部6は、振動手段7からの振動付与がなく、積極的には上下振動しない。
【0058】
次に、上述した収穫機1の作用等を説明する。
【0059】
作業者は、圃場条件、すなわち例えば圃場の含水量や土質等に応じて、操作レバー43の操作により振動手段7を第1振動入状態、第2振動入状態及び振動切状態のうちのいずれか一の状態に設定しておく。
【0060】
そして、圃場においてクローラ4の作動により収穫機1を前方(
図1に示す進行方向)に移動させると、圃場の土中の収穫物は掘取刃13によって圃場の土中から掘り取られ、この掘り取られた収穫物は、コンベヤ5の搬送部6によって搬送され、この搬送途中で作業者の手作業によりコンテナ内に収納される。
【0061】
この際、振動手段7が第1振動入状態である場合にはコンベヤ5の搬送部6が第1振動強さで振動し、振動手段7が第2振動入状態である場合にはコンベヤ5の搬送部6が第1振動強さよりも弱い第2振動強さで振動するが、振動手段7が振動切状態であれば、コンベヤ5の搬送部6は振動しない。
【0062】
そして、このような収穫機1によれば、振動手段7は、第1振動入状態、第2振動入状態及び振動切状態(少なくとも3つの状態)に選択的に切換可能となっているため、従来の構成に比べて土質等の圃場条件に適切に対応でき、コンベヤ5の搬送部6上の土量を調整可能であることから、圃場の収穫物の収穫作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0063】
また、振動手段7は、コンベヤ5の搬送部6の搬送バー33に当接する振動ローラ41と、この振動ローラ41が搬送バー33に当接しないように無端ベルト31を下方から支持する支持ガイド42と、これら振動ローラ41及び支持ガイド42を上下方向に連動回動させて所定位置に設定する操作レバー43とを有するため、操作レバー43の操作によって振動手段7を所望状態に容易かつ適切に切り換えることができる。
【0064】
さらに、コンベヤ5の搬送部6は、3種類の搬送バー33(33a,33b,33c)を有するため、当該搬送バー33の並べ方や形状等によって振動手段7による搬送部6の振動パターン及び振幅を決めることができる。
【0065】
なお、収穫機1の振動手段7は、振動強さ(振動の大きさ)が段階的に異なる2つの振動入状態を含む3つの状態(第1振動入状態、第2振動入状態及び振動切状態)に切換可能な構成には限定されず、例えば振動強さが異なる3つ以上の振動入状態を含むような構成等でもよい。
【0066】
また、例えば
図11に示すような無段階の構成でもよく、この
図11の振動手段7は、搬送部6を所定範囲内における任意の振動強さで振動させる振動入状態と、搬送部6に振動を付与しない振動切状態とに選択的に切換可能となっている。換言すると、この構成では、搬送部6の振幅は、0から搬送部材(搬送バー)の段差までの間で無段階に調整可能である。
【0067】
つまり、この振動手段7は、操作レバー43の螺合孔部に螺合された螺合部材であるノブボルト(固定手段)71を有し、このノブボルト71によって操作レバー43を切換プレート50に対して振動切位置及び無段階の振動入位置(振動強さが異なる所定範囲内の任意位置)に固定できる。
【0068】
また、収穫機1の振動手段7は、コンベヤ5の側板(フレーム部)56に対して上下動可能な支持ガイド42を有する構成には限定されず、例えば
図12に示すように、固定具(ボルト及びナット等)73を用いて支持ガイド(支持体)42を側板56に固定した構成でもよい。
【0069】
さらに、収穫機1の振動手段7は、コンベヤ5の側板(フレーム部)56に対して上下動可能な振動ローラ41を有する構成には限定されず、例えば
図13に示すように、連結パイプ60に固着した取付板62にベアリング40を介して振動ローラ(振動付与体)41を回転可能に取り付けた構成、つまり振動ローラ41を側板56に対して固定した構成でもよい。
【0070】
また、振動手段7による搬送部6の振動強さ(振動の強弱)は、単一の振幅や大小2つの振幅を有するものには限定されず、例えば複数種類の搬送部材の組合せによっては3つ以上の振幅を有するようにもできる。
【0071】
さらに、操作レバー43の操作で回動軸61が回動する構成には限定されず、例えば操作手段18が有する振動切換用の操作部の操作でモータ等の駆動部が作動して回動軸が回動する構成等でもよい。
【0072】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 収穫機
6 搬送部
7 振動手段
33(33a,33b,33c) 搬送部材である搬送バー
41 振動付与体である振動ローラ
42 支持体である支持ガイド
43 操作体である操作レバー