(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】電力変換装置、発電システム、モータドライブシステム及び電力連系システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20221116BHJP
【FI】
H02M7/49
(21)【出願番号】P 2019571158
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2019004516
(87)【国際公開番号】W WO2019156192
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018020493
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲郎
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02961057(EP,A1)
【文献】特開2011-223735(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010474(WO,A1)
【文献】特開2013-099054(JP,A)
【文献】特開2015-012749(JP,A)
【文献】特開2015-035902(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102832841(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0250621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357937(US,A1)
【文献】特開2010-239723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流の各相がスター結線された構成を有する電力変換装置であって、
直列に接続された2つのスイッチを含む3つのスター変換レグと、少なくとも1つのコンデンサとを含むスター変換部と、
前記スター変換部の各前記スター変換レグと直列に接続された単位変換器とを備え、
前記スター変換部は、3つの前記スター変換レグと、前記コンデンサとが並列に接続され、各前記スター変換レグの2つの前記スイッチの間のスイッチ接続点に、前記三相交流の各相が前記単位変換器を介してそれぞれ接続され、3つの前記スター変換レグが接続された接続点が前記スター結線の中性点であり、
前記単位変換器は、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点にそれぞれ接続されており、
一つの前記スター変換レグと前記単位変換器とで正弦波近似電圧を出力し、
前記スター変換レグが、出力電圧の1周期の期間に、1つのパルス電圧である単パルスを出力する
電力変換装置。
【請求項2】
前記スター変換レグと前記単位変換器とで前記正弦波近似電圧を出力している際に、当該スター変換レグをスイッチングする機能を有する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記単位変換器は、コンデンサを有し、前記単位変換器の前記コンデンサと、前記スター変換部の前記コンデンサとが前記スイッチを介して接続されている
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記スター変換部と前記単位変換器との間で、直流電流が流れる
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記単位変換器は双方向チョッパ回路である
請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記スター変換部は、少なくとも3つのコンデンサを有し、各前記スター変換レグにそれぞれ少なくとも1つの前記コンデンサが並列に接続され、前記コンデンサが並列に接続された各前記スター変換レグを並列に接続している
請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
2つの前記スター変換部を備え、一の前記スター変換部の前記スター変換レグと、他の前記スター変換部の前記スター変換レグとの間に、前記単位変換器が直列に接続されている
請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記スター変換部は、各前記スター変換レグが前記スイッチ接続点と前記中性点との間に3種類の電圧を出力する3レベル変換器である
請求項1~7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記スター変換レグのアームは、スイッチが直列に接続されている
請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記スター変換レグの出力電圧の最大値と、当該スター変換レグに接続された前記単位変換器の出力電圧の合計値の最大値とが略同じである
請求項1~9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記スター変換レグの両端の直流電圧と、当該スター変換レグに接続された前記単位変換器内のレグの両端の直流電圧の合計値とが略同じである
請求項3~10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記スター変換部の前記スイッチを構成するスイッチング素子の耐圧が、当該スター変換レグに接続された前記単位変換器が有するスイッチを構成するスイッチング素子の耐圧より高い
請求項1~11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
3つの前記スター変換レグは、直列に接続された少なくとも4つの前記スイッチを備え、少なくとも2つの前記スイッチが直列に接続されたハイサイドスイッチ直列体と、少なくとも2つの前記スイッチが直列に接続されたローサイドスイッチ直列体との間のスイッチ接続点に、前記三相交流の各相が前記単位変換器を介してそれぞれ接続されている
請求項1~12のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
直列に接続された少なくとも2つの前記コンデンサが、前記スター変換レグと並列に接続されている
請求項1~13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記スター変換部は、前記スイッチ接続点が出力側の三相交流の各相のいずれか1つと接続された3つの前記スター変換レグをさらに備える
請求項1~14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記スター変換レグの前記スイッチを制御する制御回路を備え、前記制御回路が前記スター変換レグに単パルスを出力させる
請求項15に記載の電力変換装置。
【請求項17】
一の前記スター変換部の前記スター変換レグと、他の前記スター変換部の前記スター変換レグとの間に、各前記スター変換レグに電圧を出力する交流接続部が直列に接続されている
請求項7~16のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記交流接続部が、交流電圧源又は変圧器である
請求項17に記載の電力変換装置。
【請求項19】
一の前記スター変換部の前記コンデンサと、他の前記スター変換部の前記コンデンサとは、定格電圧が異なる
請求項17又は18に記載の電力変換装置。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、発電機と電力系統とを接続する発電システム。
【請求項21】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、電源とモータとを接続するモータドライブシステム。
【請求項22】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、電力系統同士を接続する電力連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、発電システム、モータドライブシステム及び電力連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタなしで、正弦波に近い電圧を出力する電力変換装置として、単位変換器をカスケードに直列に接続したモジュラー・マルチレベル変換器(以下、MMCと呼ぶ。)が知られている。MMCはスイッチング素子の耐圧を超える高電圧を出力できるメリットがあり(非特許文献1)、数百kVクラスの直流送電用途で広く使われている。MMCでは、少なくともゼロと所定電圧との2つの電圧をスイッチングにより出力できる単位変換器を直列に接続し、各単位変換器の出力電圧を足し合わせることで、高電圧の電力を変換できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】萩原誠・赤木泰文:「モジュラー・マルチレベル変換器(MMC)のPWM制御法と動作検証」、電気学会論文誌D、128巻7号、pp.957-965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MMCの各単位変換器は、コンデンサを有しており、スイッチングにより当該コンデンサ電圧もしくはゼロ電圧を出力する。コンデンサの出力が変動すると、単位変換器の出力も変動し、MMCが精度よく電力を変換できなくなる恐れがある。従来は、コンデンサの容量を大きくすることで、コンデンサの出力電圧の変動を抑制していた。そのため、容量の大きい大型のコンデンサを用いる必要があり、MMCの小型化が難しいという問題があった。さらに、このような短所を有することから、MMCの適用範囲は、事実上、数百kVクラスの直流送電など素子耐圧の十倍以上の電圧用途に限られていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、小型の電力変換装置、発電システム、モータドライブシステム及び電力連系システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電力変換装置は、三相交流の各相がスター結線された構成を有する電力変換装置であって、直列に接続された2つのスイッチを含む3つのスター変換レグと、少なくとも1つのコンデンサとを含むスター変換部と、前記スター変換部の各前記スター変換レグと直列に接続された単位変換器とを備え、前記スター変換部は、3つの前記スター変換レグと、前記コンデンサとが並列に接続され、各前記スター変換レグの2つの前記スイッチの間のスイッチ接続点に、前記三相交流の各相が前記単位変換器を介してそれぞれ接続され、3つの前記スター変換レグが接続された接続点が前記スター結線の中性点であり、前記単位変換器は、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点にそれぞれ接続されている。
【0007】
本発明による電力変換装置は、三相交流の各相がスター結線された構成を有する電力変換装置であって、直列に接続された2つのスイッチを含む3つのスター変換レグと、少なくとも1つのコンデンサとを含む正側スター変換部と負側スター変換部とを備え、前記正側スター変換部は、3つの前記スター変換レグと、前記コンデンサとが並列に接続され、各前記スター変換レグの2つの前記スイッチの間のスイッチ接続点に前記三相交流の各相がそれぞれ接続され、3つの前記スター変換レグが接続された接続点が前記スター結線の第1中性点であり、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点と前記第1中性点との間に、第1所定電圧又はゼロを出力し、前記負側スター変換部は、3つの前記スター変換レグと、前記コンデンサとが並列に接続され、各前記スター変換レグの2つの前記スイッチの間のスイッチ接続点に前記三相交流の各相がそれぞれ接続され、3つの前記スター変換レグの接続点が前記スター結線の第2中性点であり、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点と前記第2中性点との間に、前記第1所定電圧と異なる第2所定電圧又はゼロを出力する。
【0008】
本発明による電力変換装置は、三相交流の各相がスター結線された構成を有する電力変換装置であって、直列に接続された2つのスイッチを含む3つのスター変換レグと、少なくとも1つのコンデンサとを含み、3つの前記スター変換レグと、前記コンデンサとが並列に接続され、各前記スター変換レグと前記コンデンサとが接続された接続点が前記スター結線の中性点である2つのスター変換部と、前記スター変換レグの2つの前記スイッチの間のスイッチ接続点を介して前記スター変換レグと直列に接続された単位変換器とを備え、一の前記スター変換部は、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点に、前記三相交流の各相が前記単位変換器を介してそれぞれ接続されており、他の前記スター変換部は、各前記スター変換レグの前記スイッチ接続点に、前記三相交流とは異なる三相交流の各相が前記単位変換器を介してそれぞれ接続されており、一の前記スター変換部と他の前記スター変換部が互いに接続されている。
【0009】
本発明による発電システムは、請求項1~25のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、発電機と電力系統とを接続する。
【0010】
本発明によるモータドライブシステムは、請求項1~25のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、電源とモータとを接続する。
【0011】
本発明による電力連系システムは、請求項1~25のいずれか1項に記載の電力変換装置を介して、電力系統同士を接続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電力変換装置では、スター変換部が3つのスター変換レグと、少なくとも1つのコンデンサとが並列に接続され、3つのスター変換レグの接続点が中性点である構成であるので、スター変換部の各スター変換レグを流れる交流電流の合計値がゼロであり、理想的には交流電力の変動量をほぼゼロにでき、コンデンサの電圧の変動を抑制することができる。よって、電力変換装置では、スター変換部のコンデンサの電圧の変動を抑制できるので、スター変換部のコンデンサに容量の小さいコンデンサを用いることができ、小型化でき、小型の電力変換装置、発電システム、モータドライブシステム及び電力連系システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2A、
図2Bは、本発明の実施形態の単位変換器を示す概略図であり、
図2Cは本発明の他の実施形態の単位変換器を示す概略図である。
【
図3】本発明の電力変換装置、スター変換レグ、及び、単位変換器の出力電圧波形を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図5】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図6】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図7】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図8】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図9】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図10】本発明の他の実施形態の単位変換器を示す概略図である。
【
図11】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図12】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図13】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図14】
図14Aは、端子102Rと端子Pとの間に出力したい電圧の電圧波形と、正側スター変換部1500Pのスター変換レグ153Rの出力電圧の電圧波形とを示すグラフであり、
図14Bは、スター変換レグ153Rに接続された単位変換器108の出力電圧の電圧波形を示すグラフである。
【
図15】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【
図16】本発明の他の実施形態の電力変換装置の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)本発明の実施形態の電力変換装置の全体構成
図1に示すように、電力変換装置101は、端子102R、102S、102Tが、変圧器(
図1には図示せず)を介して三相交流のR相、S相、T相にそれぞれ接続され、三相交流系統111に連系している。電力変換装置101は、端子Pと端子Nとの間に、直流装置110が接続されている。直流装置110は、抵抗器のような直流負荷や、直流電源、他の電力変換装置などを代表して描いたものである。このように電力変換装置101は、三相交流系統111の交流電力を直流電力に変換して直流装置110に供給したり、直流装置110が出力した直流電力を交流電力に変換して三相交流系統111に供給したり、三相交流モータに供給したりできる電力変換装置であり、MMCと同様に正弦波に近い電圧を出力できる。
【0015】
電力変換装置101は、正側電力変換部130Pと負側電力変換部130Nとで構成される。正側電力変換部130Pと負側電力変換部130Nとは、三相交流の各相と、交流接続部としての端子102R、102S、102Tを介して接続されている。正側電力変換部130Pは、正側スター変換部150Pと、3つの単位変換器108とを備え、負側電力変換部130Nは、負側スター変換部150Nと、3つの単位変換器109とを備えている。
【0016】
正側スター変換部150Pと負側スター変換部150Nとは同様の構成であるので、ここでは、代表して正側スター変換部150Pについて説明する。正側スター変換部150Pは、三相フルブリッジ構成の電力変換器であり、3つのスター変換レグ153R、153S、153Tと、コンデンサ159とを備え、これらが接続点NP1と接続点NP3との間(負側スター変換部150Nでの場合は接続点NP4と接続点NP2との間)で並列に接続された構成である。スター変換レグ153R、153S、153Tは、ハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lとを備え、これらが直列に接続された構成である。
【0017】
正側スター変換部150Pは、スター変換レグ153Rのハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lとの間のスイッチ接続点151Rが、後述する単位変換器108(負側スター変換部150Nでは単位変換器109)と、リアクトル112とを介して、端子102Rと接続され、三相交流のR相に接続されている。3つのスター変換レグの接続点と単位変換器が接続されたスイッチ接続点の間をアームとも呼び、各アームに1つずつスイッチを備えている。
【0018】
同様に、正側スター変換部150Pは、スター変換レグ153Sのハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lとの間の中間にあるスイッチ接続点151Sが、単位変換器108と、リアクトル112と、端子102Sとを介して、三相交流のS相に接続され、スター変換レグ153Tのハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lとの間のスイッチ接続点151Tが、単位変換器108と、リアクトル112と、端子102Tとを介して、三相交流のT相に接続されている。
【0019】
ここで、電力変換装置101では、接続点NP1と接続点NP2との間で、スター変換レグ153R、単位変換器108、リアクトル112、端子102R、リアクトル112、単位変換器109、スター変換レグ153Rがこの順に直列に接続されている。同様に、接続点NP1と接続点NP2との間で、スター変換レグ153S、単位変換器108、リアクトル112、端子102S、リアクトル112、単位変換器109、スター変換レグ153Sが直列に接続され、スター変換レグ153T、単位変換器108、リアクトル112、端子102T、リアクトル112、単位変換器109、スター変換レグ153Tが直列に接続されている。このように、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153R、153S、153Tと、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153R、153S、153Tとの間に、単位変換器108、109が直列に接続されている。本実施形態では、接続点NP1と接続点NP2との間で直列に接続されたこれらの構成要素群をレグ107R、レグ107S、レグ107Tとも呼ぶ。レグ107R、レグ107S、レグ107Tは並列に接続されている。
【0020】
電力変換装置101の正側電力変換部130Pでは、スター変換レグ153R、153S、153Tの接続点NP1で三相交流の各相が接続されており、三相交流の各相がスター結線された構成である。このことは、負側電力変換部130Nでも同様であり、接続点NP2で三相交流の各相がスター結線された構成となっている。接続点NP1、NP2は、並列に接続された各スター変換レグ153R、153S、153T(レグ107R、レグ107S、レグ107T)の接続点となっているだけでなく、スター結線の中性点(以下、接続点NP1を第1中性点NP1、接続点NP2を第2中性点NP2とも呼ぶ。)ともなっている。
【0021】
ここで、端子102Rと第1中性点NP1の間を流れる電流をアーム電流IRP、端子102Sと第1中性点NP1の間を流れる電流をアーム電流ISP、端子102Tと第1中性点NP1の間を流れる電流をアーム電流ITPとすると、電力変換装置101の正側電力変換部130P側では、第1中性点NP1で三相交流の各相がスター結線されているので、正側電力変換部130P側のアーム電流(正相交流成分)の合計値はゼロ(IRP+ISP+ITP=0)となる。そのため、正側スター変換部150Pのコンデンサ159を流れる交流電流成分も理想的にはゼロとなる。
【0022】
同様に、端子102Rと第2中性点NP2の間を流れる電流をアーム電流IRN、端子102Sと第2中性点NP2の間を流れる電流をアーム電流ISN、端子102Tと第2中性点NP2の間を流れる電流をアーム電流ITNとすると、電力変換装置101の負側電力変換部130N側では、第2中性点NP2で三相交流の各相がスター結線されているので、負側電力変換部130N側のアーム電流(正相交流成分)の合計値はゼロ(IRN+ISN+ITN=0)となる。そのため、負側スター変換部150Nのコンデンサ159を流れる交流電流も理想的にはゼロとなる。なお、端子Pは、第1中性点NP1から引き出され、端子Nは、第2中性点NP2から引き出されている。なお、
図1では、便宜上、端子P、端子Nを第1中性点NP1又は第2中性点NP2と同電位の場所から引き出している。
【0023】
続いて、
図2A、2Bを用いて単位変換器108、109について説明する。
図2Aに示すように、単位変換器108は、例えばIGBTでなるハイサイドスイッチング素子201H及びハイサイド還流ダイオード202Hで構成されたハイサイドスイッチ200Hと、例えばIGBTでなるローサイドスイッチング素子201L及びローサイド還流ダイオード202Lで構成されたローサイドスイッチ200Lと、コンデンサ204とを備える双方向チョッパ回路である。ハイサイドスイッチ200Hは、ハイサイドスイッチング素子201Hの正極(IGBTではコレクタ)側とハイサイド還流ダイオード202Hの負極側とが接続され、ハイサイドスイッチング素子201Hの負極(IGBTではエミッタ)側とハイサイド還流ダイオード202Hの正極側とが接続されて、ハイサイドスイッチング素子201H及びハイサイド還流ダイオード202Hが逆並列に接続された構成である。ローサイドスイッチ200Lでも同様に、ローサイドスイッチング素子201L及びローサイド還流ダイオード202Lが逆並列に接続された構成である。
【0024】
このように、ハイサイドスイッチ200H、ローサイドスイッチ200Lは、ハイサイドスイッチング素子201H、ローサイドスイッチング素子201Lにハイサイド還流ダイオード202H、ローサイド還流ダイオード202Lを逆並列に接続することで、IGBTの負極側から正極側に電圧が印加されたとき、ハイサイド還流ダイオード202H、ローサイド還流ダイオード202Lに電流が流れるようにし、IGBTの負極から正極に電流が流れることを防止して、IGBTを保護できる。なお、ハイサイドスイッチング素子201H、ローサイドスイッチング素子201Lの正極側を、それぞれハイサイドスイッチ200H、ローサイドスイッチ200Lの正極側とする。なお、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nのハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lも、単位変換器108のハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lと同様の構成である。
【0025】
単位変換器108は、ハイサイドスイッチ200Hの負極側と、ローサイドスイッチ200Lの正極側とが接続されて、ハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lとが直列に接続されている。ハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lは、図示しない制御回路に接続されており、制御回路からの制御信号によってオン・オフされるようになされている。コンデンサ204は、直列に接続されたハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lと並列に接続されている。
【0026】
単位変換器108は、コンデンサ204とハイサイドスイッチ200Hとの接続点Xから正極端子が引き出され、ハイサイドスイッチ200Hとローサイドスイッチ200Lとのスイッチ接続点Yから負極端子が引き出されている。
【0027】
単位変換器108は、ハイサイドスイッチ200Hがオフで、ローサイドスイッチ200Lがオンのとき、正極端子と負極端子間(単位変換器内のレグの両端)に、アーム電流IRP、ISP、ITPに依存せずコンデンサ204の電圧と概ね等しい電圧を出力する。本明細書ではこの状態を、単位変換器108がハイであると称する。なお、特に断りがない限り、本明細書でコンデンサの電圧といった場合、コンデンサが充電されたときのコンデンサの電圧を指し、単位変換器の出力電圧といった場合はハイである場合の出力を指す。
【0028】
単位変換器108は、ハイサイドスイッチ200Hがオンで、ローサイドスイッチ200Lがオフのとき、正極端子と負極端子間が短絡されて、端子間電圧がアーム電流IRP、ISP、ITPに依存せず概ねゼロと等しくなる。本明細書ではこの状態を、単位変換器108がローであると称する。
【0029】
単位変換器108は、ハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lが共にオンの場合、コンデンサ204が短絡されてしまう。そのため、このような動作は禁止する。
【0030】
単位変換器108は、ハイサイドスイッチ200Hと、ローサイドスイッチ200Lが共にオフの場合、正極端子と負極端子間の電圧が、単位変換器108を流れる電流の極性に依存する。電流が正の場合(正極端子から負極端子に電流が流れる場合)、出力電圧はコンデンサ204の電圧に概ね等しい。また、電流が負の場合(負極端子から正極端子に電流が流れる場合)、端子間の出力電圧は概ねゼロに等しい。このように単位変換器108は、スイッチの制御により、ハイと、ローとに制御できる。
【0031】
図2Bに示す単位変換器109は、単位変換器108とは正極端子及び負極端子が引き出された位置のみが異なり、他の構成は単位変換器108と同様である。単位変換器109では、正極端子がスイッチ接続点Yから引き出され、負極端子がローサイドスイッチ200Lとコンデンサ204との接続点Zから引き出されている。単位変換器109も、スイッチングの操作により、ハイとローとに制御できる。
【0032】
単位変換器109は、ハイサイドスイッチ200Hがオンで、ローサイドスイッチ200Lがオフのとき、正極端子と負極端子間(単位変換器内のレグの両端)に、アーム電流IRN、ISN、ITNに依存せずコンデンサ204の電圧と概ね等しい電圧を出力し、ハイとなる。
【0033】
単位変換器109は、ハイサイドスイッチ200Hがオフで、ローサイドスイッチ200Lがオンのとき、正極端子と負極端子間が短絡されて、端子間電圧がアーム電流IRN、ISN、ITNに依存せず概ねゼロと等しくなり、ローとなる。各スイッチが共にオンのときと、共にオフのときとの動作は単位変換器108と同様である。なお、
図2Cに示す単位変換器108aのように、ハイサイドスイッチング素子205H、ローサイドスイッチング素子205Lとして双方向導通可能なFETやMOS-FETを用い、所謂同期整流をすれば、単位変換器108、109から還流ダイオード(ハイサイド還流ダイオード202H、ローサイド還流ダイオード202L)を省略できる。
【0034】
このような単位変換器108は、正極端子が正側スター変換部150Pのスイッチ接続点151R、151S、151Tに接続され、負極端子がリアクトル112に接続されている。単位変換器109は、正極端子がリアクトル112に接続され、負極端子が負側スター変換部150Nのスイッチ接続点151R、151S、151Tにされている。
【0035】
次に、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153R、153S、153Tの動作について説明する。スター変換レグ153R、153S、153Tのハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lは、図示しない制御回路に接続されており、制御回路によりオン・オフ制御できる。スター変換レグ153R、153S、153Tの動作は、同様であるので、スター変換レグ153Rを代表として説明する。
【0036】
スター変換レグ153Rの動作は、単位変換器108と同様である。スター変換レグ153Rは、ハイサイドスイッチ200Hがオフで、ローサイドスイッチ200Lがオンのとき、第1中性点NP1とスイッチ接続点151R(スター変換レグ153Sではスイッチ接続点151Sで、スター変換レグ153Tではスイッチ接続点151T)との間に、アーム電流IRP(スター変換レグ153Sではアーム電流ISP、スター変換レグ153Tではアーム電流ITP)に依存せずコンデンサ159の電圧と概ね等しい第1所定電圧を出力し、ハイとなる。
【0037】
スター変換レグ153Rは、ハイサイドスイッチ200Hがオンで、ローサイドスイッチ200Lがオフのとき、第1中性点NP1とスイッチ接続点151R(スター変換レグ153Sではスイッチ接続点151Sで、スター変換レグ153Tではスイッチ接続点151T)との間が短絡されて、ローとなる。ハイサイドスイッチ200Hとローサイドスイッチ200Lとが他の状態のときの動作も単位変換器108と同様である。
【0038】
負側スター変換部150Nのスター変換レグ153R、153S、153Tの動作は、単位変換器109と同様である。すなわち、スター変換レグ153Rは、ハイサイドスイッチ200Hがオンで、ローサイドスイッチ200Lがオフのとき、スイッチ接続点151R(スター変換レグ153Sではスイッチ接続点151Sで、スター変換レグ153Tではスイッチ接続点151T)と第2中性点NP2との間に、アーム電流IRN(スター変換レグ153Sではアーム電流ISN、スター変換レグ153Tではアーム電流ITN)に依存せずコンデンサ159の電圧と概ね等しい第2所定電圧を出力し、ハイとなる。スター変換レグ153Rは、ハイサイドスイッチ200Hがオフで、ローサイドスイッチ200Lがオンのとき、スイッチ接続点151R(スター変換レグ153Sではスイッチ接続点151Sで、スター変換レグ153Tではスイッチ接続点151T)と第2中性点NP2との間が短絡されて、ローとなる。ハイサイドスイッチ200Hとローサイドスイッチ200Lとが他の状態のときの動作も単位変換器109と同様である。なお、本実施形態では、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nのコンデンサ159と、単位変換器108、109のコンデンサ204とを同じものを用いているので、第1所定電圧及び第2所定電圧と、単位変換器108、109とがハイのときの出力電圧は概略等しい値である。
【0039】
このように、正側スター変換部150Pでは、第1中性点NP1が正極端子となり、スイッチ接続点151R、151S、151Tが負極端子となり、負側スター変換部150Nでは、スイッチ接続点151R、151S、151Tが正極端子となり、第2中性点NP2が負極端子となる。正側スター変換部150Pのスイッチ接続点151R、151S、151Tには、単位変換器108が接続され、負側スター変換部150Nのスイッチ接続点151R、151S、151Tには、単位変換器109が接続されている。このとき、各レグ107R、107S、107Tでは、各構成要素がすべて順方向に直列に接続されている。ここで、「順方向に」とは、構成要素に正極と負極の区別がある場合に、一の構成要素の正極端子と他の構成要素の負極端子とが接続され、構成要素の正極端子同士、又は、構成要素の負極端子同士が接続されていないことを意味している。
【0040】
MMCの単位変換器のコンデンサは、コンデンサを流れる電流が変動すると、コンデンサに流入する電力も変動し、それに伴いコンデンサの出力電圧が変動する。そのため、従来、MMCでは、単位変換器のコンデンサの容量を大きくして、コンデンサに蓄えられた電荷総量に対する電荷の変動量の割合を小さくすることで、出力電圧の変動を抑制していた。これに対して、本発明の電力変換装置101では、正側スター変換部150Pを流れる各アーム電流IRP、ISP、ITPの合計値、及び、負側スター変換部150Nを流れる各アーム電流IRN、ISN、ITN合計値は理想的にはゼロ(交流基本波正相成分の和がゼロ)であるので、理想的には交流電力の変動量をほぼゼロにでき、コンデンサの電圧の変動を抑制することができる。そのため、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nでは、コンデンサ159の電圧の変動を抑制できるので、コンデンサ159として容量の小さいコンデンサを用いることができる。よって、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nは、MMCの単位変換器よりもコンデンサが小さく、装置を小型化できる。
【0041】
リアクトル112は、各レグ107R、107S、107Tの第1中性点NP1、第2中性点NP2間の電圧であるレグ電圧VR、VS、VTが不一致である期間において、レグ107R、107S、107Tに過電流が流れてしまうことを抑制するために、各レグ107R、107S、107Tにそれぞれ設けている。また、リアクトル112は、レグ107R、107S、107Tで発生するスイッチング周波数の信号を減衰させる。リアクトル112は、単位変換器108、109と端子102R、102S、102Tとの間にそれぞれ設けているが、単位変換器108、109と各スター変換レグ153R、153S、153Tのスイッチ接続点151R、151S、151Tとの間に設けることもできる。
【0042】
続いて、このような電力変換装置101の動作を、直流から交流に変換する場合と、交流から直流に変換する場合とに分けて説明する。まずは、電力変換装置101によって直流から交流に変換する場合について説明する。この場合、直流装置110は、直流送電線(電力変換装置101が直流送電線から見て受電側の電力変換装置である場合)や、直流電源、回生制動しているモータドライブ用インバータなどを想定している。
【0043】
各レグの動作は同様であるので、ここではレグ107Rに注目して説明する。そして、コンデンサ159、204は予め定められた直流電圧Vに充電済みであり、直流装置110により、端子Pには正の直流電圧+Vが印加され、端子Nには負の直流電圧-Vが印加されている(レグ電圧VR=2V)ものとする。
【0044】
ここで、
図3には、端子102Rから出力される電圧の電圧波形1112(但し、端子102Rに接続される外部回路のインピーダンスが十分に大きい場合。インピーダンスが小さいと外部の交流電圧源とインピーダンス分圧した電圧となる)と、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rの出力電圧の電圧波形1111psと、単位変換器108の出力電圧の電圧波形1111pcと、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rの出力電圧の電圧波形1111nsと、単位変換器109の出力電圧の電圧波形1111ncとを示している。
図3の横方向は時間であり、縦方向は出力電圧である。端子102Rからの出力電圧値(交流相電圧)は、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rの出力電圧値と単位変換器109の出力電圧値との合計値から、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rの出力電圧値と単位変換器108の出力電圧値との合計値を減算した値となる。
【0045】
具体的には、電力変換装置101は、例えば、単位変換器109のみハイのとき、端子102Rは+Vを出力でき、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと単位変換器109とがハイのとき、端子102Rから+2Vを出力できる。一方で、電力変換装置101は、例えば、単位変換器108のみハイのとき、端子102Rは-Vを出力でき、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rと単位変換器109とがハイのとき、端子102Rから-2Vを出力できる。正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと単位変換器108、109とがすべてハイ又はすべてローのとき、電力変換装置101は、端子102Rから0を出力する。
【0046】
したがって、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rと、単位変換器108と、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと、単位変換器109とが、
図3に示す電圧波形1111ps、1111pc、1111ns、1111ncを出力できるように、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153R、単位変換器108、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153R、及び、単位変換器109のハイ、ローを制御することで、電力変換装置101は、端子102Rから
図3の電圧波形1112のような交流電圧を出力できる。なお、
図3に示す電圧波形1111ps、1111pc、1111ns、1111ncは、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rと、単位変換器108と、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと、単位変換器109の出力電圧をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御することで得ることができる。
【0047】
次に、電力変換装置101によって交流から直流に変換する場合ついて説明する。この場合、直流装置110は、直流送電線(電力変換装置101が直流送電線から見て送電側の電力変換装置である場合)や、直流負荷、駆動しているモータドライブ用インバータなどを想定している。
【0048】
この場合、直流装置110に直流電力が出力される。直流装置110にかかる直流電圧は、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153Rの出力電圧と、単位変換器108の出力電圧と、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rの出力電圧と、単位変換器109の出力電圧との合計値である。よって、正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと単位変換器108、109とのハイ、ローを制御することで、直流装置110にかかる直流電圧を調整できる。
【0049】
一方、直流装置110を流れる電流は、各レグ107R、107S、107Tを流れるアーム電流の和である。実際上、正側電力変換部130P側のアーム電流和(IRP+ISP+ITP)と負側電力変換部130N側のアーム電流和(IRN+ISN+ITN)は同じ値になり、各アーム電流IRP、ISP、ITP、IRN、ISN、ITNが零相直流成分を含まない場合には、IRP+ISP+ITP=0であり、IRN+ISN+ITN=0であるので、直流装置110に電力を伝送できない。そのため、直流装置110に電力を供給するために、レグ電圧VR、VS、VTの直流電圧成分を調節し、アーム電流IRP、ISP、ITP、IRN、ISN、ITNの零相成分、特に直流電流成分を制御する。
【0050】
(2)作用及び効果
以上の構成において、電力変換装置101は、三相交流の各相(R相、S相、T相)がスター結線された構成を有し、直列に接続された2つのスイッチ(ハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200L)を含むスター変換レグ(153R、153S、153T)と、少なくとも1つのコンデンサ159とを含むスター変換部(正側スター変換部150P及び負側スター変換部150N)と、スター変換部の各スター変換レグと直列に接続された単位変換器108、109とを備え、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nは、3つのスター変換レグ153R、153S、153Tと、コンデンサ159とが並列に接続され、各スター変換レグ153R、153S、153Tの2つのスイッチの間のスイッチ接続点151R、151S、151Tに三相交流の各相が単位変換器108、109を介してそれぞれ接続され、3つのスター変換レグ153R、153S、153Tが接続された接続点NP1がスター結線の中性点であり、R相に接続された単位変換器108、109がスター変換レグ153Rのスイッチ接続点151Rに接続され、S相に接続された単位変換器108、109がスター変換レグ153Sのスイッチ接続点151S、に接続され、T相に接続された単位変換器108、109がスター変換レグ153Tのスイッチ接続点151Tに接続されているように構成した。
【0051】
電力変換装置101では、正側スター変換部150Pを流れる各アーム電流IRP、ISP、ITPの合計値、及び、負側スター変換部150Nを流れる各アーム電流IRN、ISN、ITN合計値がゼロであるので、理想的には正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nのコンデンサ159の交流電力の変動量をほぼゼロにでき、コンデンサ159の電圧の変動を抑制することができる。よって、電力変換装置101では、正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nのコンデンサ159の電圧の変動を抑制できるので、正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nのコンデンサに容量の小さいコンデンサを用いることができる。よって、小さいコンデンサを用いることで小型化でき、コンデンサの物量を削減すると、それを支える架台も削減でき、電力変換装置101を小型化できる。
【0052】
(3)他の実施形態
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記の実施形態では、正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nが、3つのスター変換レグ153R、153S、153Tとコンデンサ159とが並列に接続された構成をしている場合について説明したが、本発明はこれに限られず、
図4に示す電力変換装置1010のように、正側電力変換部131Pの正側スター変換部160P、及び、負側電力変換部131Nの負側スター変換部160Nが、3つのスター変換レグ153R、153S、153Tと3つのコンデンサ203とが並列に接続された構成をしていてもよい。電力変換装置1010は、コンデンサ203の電圧を、電力変換装置101のコンデンサ159の電圧に設定することで、電力変換装置101と概略等価である。
【0053】
電力変換装置1010では、スター変換レグ153R、153S、153Tのハイサイドスイッチ200H側の端子にコンデンサ203の正側を接続し、スター変換レグ153R、153S、153Tのローサイドスイッチ200L側の端子にコンデンサ203の負側を接続し、並列に接続されたスター変換レグ153R及びコンデンサ203と、並列に接続されたスター変換レグ153S及びコンデンサ203と、並列に接続されたスター変換レグ153T及びコンデンサ203と、をさらに並列に接続している。このようにして、各スター変換レグ153R、153S、153Tと各コンデンサ203とがそれぞれ交互に並列となるようにしている。電力変換装置1010では、スター変換レグ153R、コンデンサ203、スター変換レグ153S、コンデンサ203、スター変換レグ153T、コンデンサ203という並びで並列に接続することで、各スター変換レグ153R、153S、153Tの近傍にコンデンサ203をそれぞれ配置できるようにしている。このように電力変換装置1010では、各コンデンサ203と各スター変換レグ153R、153S、153Tを近接配置できるので、各コンデンサ203と各スター変換レグ153R、153S、153Tの間の寄生インダクタンスを小さくでき、各スター変換レグ153R、153S、153Tのハイサイドスイッチ200H、ローサイドスイッチ200Lをスイッチングする際のサージ電圧を抑制できるというメリットがある。
【0054】
また、上記の実施形態では、正側スター変換部150P及び負側スター変換部150Nの各スター変換レグ153R、153S、153Tの出力電圧と、単位変換器108、109の出力電圧とを等しくした場合について説明したが、本発明はこれに限られない。正側スター変換部及び負側スター変換部のコンデンサの定格電圧を、単位変換器のコンデンサの定格電圧と異なるようにして、各スター変換レグの出力電圧と、単位変換器の出力電圧とを異なるようにしてもよい。この場合、コンデンサをより削減できるという効果を奏する。さらに、正側スター変換部150Pのコンデンサの定格電圧と、負側スター変換部150Nのコンデンサの定格電圧とを異なるようにし、正側スター変換部150Pのスター変換レグの出力電圧と、負側スター変換部150Nのスター変換レグの出力電圧も異なるようにしてもよい。
【0055】
上記の実施形態で説明した電力変換装置101及び上記の変形例の電力変換装置1010では、端子102R、102S、102Tと正側スター変換部150P(160P)との間には単位変換器108が、端子102R、102S、102Tと負側スター変換部150N(160N)との間には単位変換器109が、それぞれ1つずつ接続されるように構成したが、本発明はこれに限られない。単位変換器108、109の数は適宜変更することができる。
【0056】
例えば、
図5に示す電力変換装置301のように、正側電力変換部132P、負側電力変換部132Nが、それぞれ正側スター変換部160P及び負側スター変換部160Nのみを有し、正側スター変換部160P、負側スター変換部160Nに接続された単位変換器108、109を有していないようにしてもよい。単位変換器108、109は単相変換器なので、低周波ではコンデンサ204の電圧変動が大きくなるが、単位変換器108、109を接続しないと、単相変換器が存在しないので低周波で駆動してもコンデンサ電圧変動に与える影響が軽微であるというメリットがある。
【0057】
さらに、電力変換装置301では、正側スター変換部160Pのコンデンサ203と、負側スター変換部160Nのコンデンサ203とを、定格電圧が異なるコンデンサに変えて、コンデンサの出力電圧が異なるようにし、正側スター変換部の各スター変換レグが、ハイとローとで、第1所定電圧及びゼロを出力し、負側スター変換部の各スター変換レグが、ハイとローとで、第1所定電圧とは異なる第2所定電圧及び0を出力するようにしてもよい。このようにすることで、電力変換装置301は、従来よりも多レベルで電圧を出力することができ、従来の方法で同じレベル数の電圧を出力しようとする場合と比較して、装置を小型化できる。
【0058】
また、
図6に示す電力変換装置401のように、正側電力変換部133Pが、端子102R、102S、102Tと正側スター変換部160Pのスター変換レグ153R、153S、153Tの間にそれぞれ3つの単位変換器108(スター変換レグ153R、153S、153Tに近い方から第1単位変換器108、第2単位変換器108、第3単位変換器108ともいう。)が直列に接続された構成にし、負側電力変換部133Nが、端子102R、102S、102Tと負側スター変換部160Nのスター変換レグ153R、153S、153Tの間にそれぞれ3つの単位変換器109(スター変換レグ153R、153S、153Tに近い方から第1単位変換器109、第2単位変換器109、第3単位変換器109ともいう。)が直列に接続された構成にしてもよい。
【0059】
また、端子102R、102S、102Tと、正側スター変換部150P、負側スター変換部150N、正側スター変換部160P、負側スター変換部160N(正側スター変換部及び負側スター変換部のコンデンサの電圧をVとする)との間に直列に接続する単位変換器108、109の数をそれぞれn個(第1単位変換器108、109~第n単位変換器108、109までのn個)にし、各単位変換器108、109の出力電圧(すなわち、コンデンサの電圧)をすべて同じ電圧Vに設定することで、本発明の電力変換装置から出力される交流電圧を0から±(n+1)Vまでの多レベルの任意の波形に制御でき、nの数を増やすことにより、電力変換装置から出力される交流電圧の波形をより正弦波に近づけることができる。また、電力変換装置401では、直列に接続された単位変換器108、109は、すべて同じコンデンサ204を有し、同じ電圧を出力するようにしているが、直列に接続された単位変換器108、109内で、各単位変換器のコンデンサの定格電圧を異なるようにし、各単位変換器の出力電圧が異なるようにしてもよい。
【0060】
また、上記の電力変換装置401では、正側スター変換部160P、負側スター変換部160Nのスター変換レグ153R、153S、153Tで使用するスイッチング素子を高い電圧でも使用できる高圧スイッチング素子(例えば、後述の高耐圧IGBT)とし、単位変換器108、109で使用するスイッチング素子を低圧低損失スイッチング素子としてもよい。この場合、スター変換レグ153R、153S、153Tで使用するスイッチング素子の耐圧が単位変換器108、109で使用するスイッチング素子の耐圧よりも高い。このように、正側スター変換部160P、負側スター変換部160Nのスター変換レグ153R、153S、153Tで使用するスイッチング素子を高圧スイッチング素子とすることで、正側スター変換部160P、負側スター変換部160Nで使用するコンデンサ203の出力電圧を高く設定し、その分、単位変換器108、109のコンデンサ204の出力電圧を低く設定することができる。その結果、単位変換器108、109では、コンデンサ204のサイズを小さくできると共に、スイッチング素子も低圧低損失スイッチング素子に変えることができるので、電力変換装置401をさらに小型化することができる。高圧スイッチング素子としては、例えば、IGBT、GCT、SiCで形成されたMOS-FETなどを用いることができ、低圧低損失スイッチング素子としては、GaNで形成されたFET、MOS-FETなどを用いることができる。
【0061】
さらに、本発明の電力変換装置は、
図7に示す電力変換装置501のように、正側スター変換部161P、負側スター変換部161Nが、直列に接続された2つコンデンサ203と、スター変換レグ154R、154S、154Tとがそれぞれ並列に接続された構成であってもよい。スター変換レグ154R、154S、154Tは、スイッチとしてのハイハイサイドスイッチSA及びハイローサイドスイッチSB(ハイサイドスイッチ直列体ともいう)と、ローハイサイドスイッチSC及びローローサイドスイッチSD(ローサイドスイッチ直列体ともいう)の4つが直列に接続された構成である。そのため、各スター変換レグ154R、154S、154Tにおいて、直列に接続されたスイッチを構成するスイッチング素子の耐圧の総和が、上記の実施形態より高く、さらには、単位変換器108、109のスイッチを構成するスイッチング素子の耐圧より高くできる。スター変換レグ154R、154S、154Tは、ハイサイドスイッチ直列体及びローサイドスイッチ直列体のスイッチ接続点、すなわち、ハイローサイドスイッチSBと、ローハイサイドスイッチSCとのスイッチ接続点152R、152S、152Tが単位変換器108、109に接続されている。各アームがスイッチを直列に接続された構成である。電力変換装置501は、このようにすることで、より高い電圧を出力でき、且つ、正側スター変換部161P(負側スター変換部161N)の出力電圧範囲と直列に接続された3つの単位変換器108(単位変換器109)の出力電圧の合計値の範囲をほぼ同じにできる。すなわち、スター変換レグ154R、154S、154Tの内の少なくとも1つ以上の出力電圧の最大値と、当該スター変換レグに接続された単位変換器108(単位変換器109)(この実施例では3つの単位変換器)の出力電圧の合計値の最大値とを略同じにすることができる。これは、各スター変換レグ154R、154S、154Tにおいて直列に接続されたスイッチの数が増えたことで、スイッチの耐圧の総和が増え、より高い直流の電圧にも耐えられるようになり、コンデンサ203としてより容量の大きいコンデンサを用いることができるようになったからである。そして、正側スター変換部161P(負側スター変換部161N)のコンデンサのコンデンサ電圧(この変形例の場合、直列に接続された2つのコンデンサ203の合計電圧)、すなわち、スター変換レグ154R、154S、154Tの内の少なくとも1つ以上の両端の直流電圧と、当該スター変換レグに接続された3つの単位変換器108(単位変換器109)内のレグの両端の直流電圧の合計値とを略等しくできる。本実施例は、スイッチを直列にすることにより高電圧を出力できるというメリットがある。より高い電圧を出力するために、直列に接続したコンデンサ203やアームにおいて直列に接続したスイッチの数をさらに増やしてもよい。正側スター変換部161P、負側スター変換部161Nは、NPC3レベル変換器とは異なり、2レベルの電圧を出力する。
【0062】
上記の実施形態では、正側スター変換部150P(負側スター変換部150N)が第1所定電圧(第2所定電圧)とゼロとを出力できる2レベル変換器である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、
図8に示す電力変換装置601のように、正側スター変換部162P、負側スター変換部162Nが、各スター変換レグ154R、154S、154Tがスイッチ接続点152R、152S、152Tと中性点との間に後述する3種類の電圧を出力する3レベル変換器であってもよい。
【0063】
この場合、例えば、正側スター変換部162Pは、スイッチとしてのハイハイサイドスイッチSA、ハイローサイドスイッチSB、ローハイサイドスイッチSC、ローローサイドスイッチSDの4つが直列に接続された構成のスター変換レグ154R、154S、154Tと、直列に接続されたハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lとでなる3つのコンデンサ直列体とが並列に接続された構成である。さらに正側スター変換部162Pは、2つのダイオードDを直列に接続した3つのダイオード直列体が、各スター変換レグ154R、154S、154TのハイハイサイドスイッチSAとハイローサイドスイッチSBの接続点及びローハイサイドスイッチSCとローローサイドスイッチSDの接続点の間に、それぞれ逆並列に接続され、ダイオード直列体の各ダイオードDの接続点と、ハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lの接続点とが導線120によって接続されている。負側スター変換部162Nも同様の構成である。
【0064】
正側スター変換部162Pの各スター変換レグ154R、154S、154Tは、制御回路によるスイッチの制御によって、スイッチ接続点152R、152S、152Tと第1中性点NP1との間に、第1所定電圧としてハイサイドコンデンサ203Hの出力電圧を出力し、第3所定電圧としてハイサイドコンデンサ203Hとローサイドコンデンサ203Lの出力電圧の合計値を出力できる。同様に、負側スター変換部162Nの各スター変換レグ154R、154S、154Tは、制御回路によるスイッチの制御によって、スイッチ接続点152R、152S、152Tと第2中性点NP2との間に、第2所定電圧としてハイサイドコンデンサ203Hの出力電圧を出力し、第4所定電圧としてハイサイドコンデンサ203Hとローサイドコンデンサ203Lの出力電圧の合計値を出力できる。このようにすることで、電力変換装置601は、正側スター変換部及び負側スター変換部が2レベル変換器である場合よりも多レベルの電圧を出力することができ、2レベル変換器のみを用いて同じレベル数の電圧を出力しようとする場合と比較して、装置を小型化できる。
【0065】
また、
図9に示す電力変換装置602のように、
図1に示す電力変換装置101の正側スター変換部150Pと負側スター変換部150Nとを、上述の3レベル変換器である正側スター変換部162P及び負側スター変換部162Nに変えた構成としてもよい。この場合、正側電力変換部138Pは、正側スター変換部162Pと3つの単位変換器108とを備え、正側スター変換部162Pの各スター変換レグ154R、154S、154Tのスイッチ接続点152R、152S、152Tに、単位変換器108がそれぞれ直列に接続された構成である。そして、負側電力変換部138Nは、負側スター変換部162Nと3つの単位変換器109とを備え、負側スター変換部162Nの各スター変換レグ154R、154S、154Tのスイッチ接続点152R、152S、152Tに、単位変換器109がそれぞれ直列に接続された構成である。正側スター変換部162Pの各スター変換レグ154R、154S、154Tには、単位変換器108がそれぞれ1つ直列に接続されているが、本発明はこれに限られず、各スター変換レグ154R、154S、154Tに直列に接続される単位変換器108の数は2つでもよく、3つ以上でもよい。負側スター変換部162Nと単位変換器109についても同様である。
【0066】
この実施形態の場合、正側スター変換部162P及び負側スター変換部162Nのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lとを同じコンデンサで構成しているので、第1所定電圧と第2所定電圧は等しく、第3所定電圧と第4所定電圧は等しい。なお、3レベル変換器としての正側スター変換部162P、負側スター変換部162Nの構成は、特に限定されない。正側スター変換部162P、負側スター変換部162Nの3つのコンデンサ直列体を1つのコンデンサ直列体に統合してもよい。
【0067】
また、第1所定電圧と第2所定電圧とを異なるようにし、第3所定電圧と第4所定電圧とを異なるようにしてもよい。この場合、正側スター変換部162Pのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lと、負側スター変換部162Nのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lとを定格電圧が異なるコンデンサを用いて構成し、出力電圧を異なるようにする。例えば、正側スター変換部162Pのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lの出力電圧が1.8kVとなるようにし、負側スター変換部162Nのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lの出力電圧が0.6kVとなるようにする。このようにすることで、正側スター変換部162Pが、1.8kV(第1所定電圧)、3.6kV(第3所定電圧)、0を出力し、負側スター変換部162Nが、1.2kV(第2所定電圧)、0.6kV(第4所定電圧)、0を出力できる。その結果、電力変換装置601は、0.6kV刻みの9レベルで表された交流電圧を出力できる。
【0068】
上記の実施形態では、単位変換器108、109として双方向チョッパ回路を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、コンデンサやバッテリなどのエネルギー貯蔵素子を備え、少なくとも2端子の回路で、かつ、2端子間に少なくとも正又はゼロの電圧を出力できる回路であってもよい。例えば、
図10に示す単位変換器708のように、フルブリッジ回路方式であってもよい。この単位変換器は、今まで説明してきたいずれの電力変換装置にも適用できる。単位変換器708は、ハイサイドスイッチ702XH、702YH、ローサイドスイッチ702XL、702YLを制御することで、正負の所定電圧±Vとゼロとの3種類の電圧を出力できる3レベル変換器である。本発明の電力変換装置は、単位変換器708を用いることで端子P、端子N間の極性を逆転させることができる。このフルブリッジ回路構成は、正側スター変換部及び負側スター変換部のスター変換レグにも適用でき、その場合、直列に接続されたハイサイドスイッチ702XH及びローサイドスイッチ702XLと、直列に接続されたハイサイドスイッチ702YH及びローサイドスイッチ702YLとを並列に接続した構成がスター変換レグとなる。例えば、ハイサイドスイッチ702XH及びローサイドスイッチ702XLの接続点Xを第1中性点NP1又は第2中性点NP2に接続し、ハイサイドスイッチ702YH及びローサイドスイッチ702YLのスイッチ接続点Yを三相交流の各相のいずれかに接続するようにする。そして、このようなスター変換レグ3つと、コンデンサ703を少なくとも1つ以上並列となるように接続する。このようなスター変換レグを3つ、少なくとも1つのコンデンサと共に並列に接続することで、スイッチ接続点Yと中性点との間に3種類の電圧を出力できる3レベル変換器である正側スター変換部及び負側スター変換部を構成できる。
【0069】
上記の実施形態では、電力変換装置101で変換した三相交流を図示しない変圧器を介して三相交流系統111に連系する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、電力変換装置101が変圧器を備えるようにしてもよい。例えば、
図11に示す電力変換装置801では、交流接続部として、特許第6121582号に開示されている変圧器と同様の変圧器103を備えるようにし、電力の変換に加えて電力変換装置801で変圧もして、直流電力から変換した交流電力を三相交流系統111に直接連系するようにしている。電力変換装置801は、変圧器103を設けることで、リアクトル112を省略することができる。電力変換装置801は、正側スター変換部160Pの各スター変換レグのスイッチ接続点が、変圧器103の端子RP、SP、TPにそれぞれ接続され、各スイッチ接続点と端子RP、SP、TPとの間に単位変換器108が設けられている。さらに、電力変換装置801は、負側スター変換部160Nの各スター変換レグのスイッチ接続点が、変圧器103の端子RN、SN、TNにそれぞれ接続され、各スイッチ接続点と端子RN、SN、TNとの間に単位変換器109が設けられている。
【0070】
このようにして、正側スター変換部160Pのスター変換レグと、負側スター変換部160Nのスター変換レグとの間に、各スター変換レグに電圧を出力する変圧器103が直列に接続されている。なお、変圧器103に変えて、電力変換装置に交流接続部として、交流電圧源を挿入するようにしてもよい。この場合、後述する正側2次巻線106RP、106SP、106TPと、負側2次巻線106RN、106SN、106TNとの6つの巻き線に換えて、交流電圧源をそれぞれ接続する。
【0071】
電力変換装置801に設ける変圧器103の構成の一例を説明する。電力変換装置801は、
図4に示す電力変換装置1010に変圧器103を設けたものである。変圧器103は、鉄心104R、104S、104Tと、1次巻線105RS、105ST、105TRと、正側2次巻線106RP、106SP、106TPと、負側2次巻線106RN、106SN、106TNとを備えている。
【0072】
正側2次巻線106RPは、鉄心104Rに巻回され、正側2次巻線106SPは、鉄心104Sに巻回され、正側2次巻線106TPは、鉄心104Tに巻回されている。正側2次巻線106RP、106SP、106TPは、一端が端子RP、SP、TPを介して、正側電力変換部131Pの単位変換器108と接続され、他端が負側2次巻線106RN、106SN、106TNに接続されている。さらに、正側2次巻線106RP、106SP、106TPの他端は、接続点Mに接続されてY結線されている。
【0073】
負側2次巻線106RNは、鉄心104Rに巻回され、負側2次巻線106SNは、鉄心104Sに巻回され、負側2次巻線106TNは、鉄心104Tに巻回されている。負側2次巻線106RN、106SN、106TNは、一端が端子RN、SN、TNを介して、負側電力変換部131Nの単位変換器109と接続され、他端が正側2次巻線106RP、106SP、106TPに接続されている。さらに、負側2次巻線106RN、106SN、106TNの他端は、接続点Mに接続されてY結線されている。
【0074】
このようにY結線された正側2次巻線106RP、106SP、106TPの中性点と、Y結線された負側2次巻線106RN、106SN、106TNの中性点とが、接続点Mで電気的に接続されている。そして、正側2次巻線106RP、106SP、106TPと負側2次巻線106RN、106SN、106TNとは、相毎に互いに逆極性となるように磁気結合している。このようにすることで、正側2次巻線106RP、106SP、106TPが発生する直流起磁力と、負側2次巻線106RN、106SN、106TNが発生する直流起磁力とを相殺でき、鉄心104R、104S、104Tに直流磁束が発生しないようにできる。
【0075】
さらに、鉄心104R、104S、104Tには1次巻線105RS、105ST、105TRが巻回されている。1次巻線105RS、105ST、105TRはΔ結線され、三相交流系統111に接続されている。
【0076】
図11に示す変圧器103では、1次巻線105RS、105ST、105TRは正側2次巻線106RP、106SP、106TPと同極性となるように磁気結合しているが、1次巻線105RS、105ST、105TRが負側2次巻線106RN、106SN、106TNと同極性となるように磁気結合させた場合も、同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、交流接続部として、変圧器103に変えて、
図12に示す電力変換装置901のように、国際公開第WO2010/116806号に開示されている変圧器と同様の変圧器800を備えるようにしてもよい。変圧器800は、変圧器103とは、正側2次巻線106RP、106SP、106TPと負側2次巻線106RN、106SN、106TNとの間の結線が異なり、互いに違う相の巻線と磁気的に結合している点が異なる。変圧器800では、正側2次巻線106RPと負側2次巻線106TNとが結線され、正側2次巻線106SPと負側2次巻線106RNとが結線され、正側2次巻線106TPと負側2次巻線106SNとが結線された変圧器となっている。このような結合形態にすることにより、直流磁束を相殺して変圧器800が飽和することを防止できる。
【0078】
図12に示す電力変換装置901は、正側電力変換部130Pと、負側電力変換部136Nとの間に、変圧器800が挿入された構成をしている。負側電力変換部136Nは、
図1に示す負側電力変換部130Nとは、単位変換器109を有していない点が異なっているが、他の構成は同じである。上記の実施形態では、正側電力変換部及び負側電力変換部から出力される交流電圧波形が逆極性であった。一方で、電力変換装置901のような構成とすることで、正側電力変換部130P及び負側電力変換部136Nから出力される交流電圧波形が同極性となる。
【0079】
例えば、電力変換装置901では、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153Rと単位変換器108が、端子Pと端子Nとの間に出力したい直流電圧と、変圧器800の2次巻線106RNに出力したい電圧の差分の電圧を出力するように制御する。このような出力形態に制御することにより、電力変換装置901は、任意の交流電圧と任意の直流電圧を出力できる。なお、電力変換装置901では、正側電力変換部130Pが単位変換器108を有しているが、正側電力変換部130Pから単位変換器108を除去し、負側電力変換部136Nを、単位変換器109を有する負側電力変換部130Nに置き換えてもよい。
【0080】
また、2つの正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nの出力電圧を違えてもよい。この場合、例えば、正側スター変換部150Pのスター変換レグ153R、153S、153Tを6.5kV耐圧のパワー半導体素子(スイッチング素子)2直列構成、負側スター変換部150Nのスター変換レグ153R、153S、153Tを6.5kV耐圧のパワー半導体素子(スイッチング素子)1直列構成、単位変換器108のスイッチを3.3kV耐圧のパワー半導体素子1直列構成として、それぞれのコンデンサの出力電圧を約7.2kV(正側スター変換部150Pのコンデンサ159)、約3.6kV(負側スター変換部150Nのコンデンサ159)、約1.8kV(単位変換器108のコンデンサ)にすれば、少ない段数で8レベルの電圧出力が可能なほか、変圧器800の各2次巻線に国内配電系統や、モータの主要定格電圧である6.6kVを出力することができる。なお、本明細書における変圧器とは2次巻線が交流磁束と鎖交する構造を有することを持って、変圧器の要件とする。
【0081】
上記の実施形態では、本発明の電力変換装置で、交流電力から直流電力に変換する場合、直流電力から交流電力に変換する場合について説明したが、これに限られず、交流電圧から交流電圧に変換する(AC/ACコンバータ)場合にも適用できる。実際上、
図1に示す電力変換装置101を2つ用意し、2つの電力変換装置101の端子P同士と端子N同士とを接続することで、電力が交流―直流-交流の順に変換され、AC/ACコンバータを構成することができる。
【0082】
この場合、2つの電力変換装置101の正側スター変換部150Pのコンデンサ159同士の間に導線を設け、コンデンサ159同士を電気的に並列に接続しても他の電力変換装置101の正側スター変換部150Pのコンデンサ159の間に導線を設け、コンデンサ159同士が電気的に並列になるようにしても、2つの電力変換装置101の端子P同士、端子N同士を接続した場合と等価である。そして、このような並列に接続された2つコンデンサ159は、1つのコンデンサ159に置き換えることができる。
【0083】
図13に示す電力変換装置1001は、このように2つの電力変換装置の端子P同士、端子N同士を接続し、2つの正側スター変換部150P、150P’のコンデンサを導線611で並列に接続し、並列接続の2つのコンデンサを1つのコンデンサ159に置き換えた構成である。電力変換装置1001では、同様に、2つ負側スター変換部150N、150N’のコンデンサを導線611で並列に接続し、並列接続の2つのコンデンサ159を1つのコンデンサ159に置き換えている。
【0084】
このように電力変換装置1001では、一の正側スター変換部150Pと他の正側スター変換部150P’とがコンデンサ159を共有し、一の負側スター変換部150Nと他の負側スター変換部150N’とがコンデンサ159を共有しているような構成となっている。実際には、電力変換装置1001は、入力側の三相交流系統111のR相、S相、T相がハイサイドスイッチとローサイドスイッチのスイッチ接続点にそれぞれ接続されたスター変換レグ153R、153S、153Tと、出力側の三相交流系統111aのu相、v相、w相がハイサイドスイッチとローサイドスイッチのスイッチ接続点にそれぞれ接続されたスター変換レグ153R’、153S’、153T’と、コンデンサ159とが並列に接続された正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nとを有する構成となっている。この場合、コンデンサ159を1つに集約できるので装置を小型化できる。スター変換レグ153R’、153S’、153T’のハイサイドスイッチとローサイドスイッチのスイッチ接続点が出力側の三相交流系統111aのu相、v相、w相に接続されている場合について説明したが、例えば三相交流モータのu相、v相、w相にそれぞれ接続されるようにしてもよい。
【0085】
さらに、電力変換装置1001では、正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nに入力される交流電力が、出力側の三相交流系統111aに接続されたスター変換レグ153R’、153S’、153T’を介して出力側の三相交流系統111aに供給されて相殺される。したがって、コンデンサ159を個別設置した際のコンデンサ容量よりもさらにコンデンサ容量の削減が可能である。
【0086】
さらに、上記の実施形態では、レグ107Rを流れるアーム電流IRPの直流電流成分は、正側スター変換部150Pと単位変換器108とで共通であり、アーム電流IRNの直流電流成分は、負側スター変換部150Nと単位変換器108とで共通であった。レグ107S、レグ107Tについても同様である。したがって、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nと単位変換器108、109とが出力する直流電力の比は正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nと単位変換器108、109と出力する直流電圧比に等しい。定常状態では、受け取る交流電力と出力する直流電力は等しいので、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nと単位変換器108、109と受け取る交流電力の比は、正側スター変換部150P、負側スター変換部150Nと単位変換器108、109との出力する直流電圧比と大略同じである必要があった。しかし、本実施例の電力変換装置1001では、導線611が直流電流成分をバイパスする経路となるため、その制約に縛られる必要がない。したがって、正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nでより多くの交流電力を受け取り、単位変換器108、109の交流電力を少なくすることによって、直流電流を削減できるという効果がある。
【0087】
図14Aは、横軸が時間で縦軸が電圧であり、端子102Rと端子Pとの間に出力したい電圧の電圧波形1011と、正側スター変換部1500Pのスター変換レグ153Rの出力電圧の電圧波形1012とを示すグラフであり、
図14Bは、横軸が時間で縦軸が電圧であり、スター変換レグ153Rに接続された単位変換器108の出力電圧の電圧波形1013を示すグラフである。端子102Rと端子Pとの間に電圧波形1011のような電圧を出力しようとする場合、スター変換レグ153Rは、出力電圧の波形が単パルス波形となるのが望ましいので、例えば電圧波形1012のような単パルスを出力する。実際上、スター変換レグ153Rの制御回路(不図示)が、スター変換レグ153Rのスイッチを制御し、スター変換レグ153Rに単パルスを出力させる。そのため、単位変換器108は、例えば電圧波形1013のように、端子102Rと端子Pとの間に出力したい電圧とスター変換レグ153Rの出力電圧との差電圧を出力するように制御される。単位変換器108が複数個直列に接続されている場合は、各単位変換器108の出力電圧の合計値をこのように制御する。
【0088】
電力変換装置1001では、このように、スター変換レグ153Rと単位変換器108が大略同じ電圧波形を出力する場合、単位変換器108の出力電圧は出力したい出力電圧の1/2となる。電圧波形1013の交流基本波成分は、出力したい電圧波形1011の1/2の電圧より明らかに小さい。単位変換器108の交流電力が小さくなるので、単位変換器108出力直流電力が小さくすみ、単位変換器108直流電流を小さくできる。さらに、スター変換レグ153Rは、1パルススイッチングとなるのでスイッチング損失を低減できるメリットがある。さらに、力率1運転においては、スター変換レグ153Rはゼロ電流スイッチングとなり、理想的にはスイッチング損失が発生しない。以上のように、電力変換装置1001では、さらに損失低減効果が期待できる。
【0089】
また、
図15に示す電力変換装置1101のように、正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nの各スター変換レグ153R、153S、153Tを構成するハイサイドスイッチ200H及びローサイドスイッチ200Lのハイサイドスイッチング素子201H及びローサイドスイッチング素子201Lを高耐圧IGBTにし、ハイサイドスイッチ200H、ローサイドスイッチ200Lを、Si基板上にGaNで形成されたFETなどの低圧低損失スイッチング素子250H、250Lで構成するようにした単位変換器188、189で単位変換器108、109を置き換えてもよい。電力変換装置1101では、リアクトルの代わりに変圧器103が設けられている。
【0090】
このように電力変換装置1101では、上記のように出力電圧として単パルスを順次出力していく1パルス駆動となるように制御するため、スイッチング回数が比較的少ない各スター変換レグ153R、153S、153Tのスイッチとして、導通損失は小さいがスイッチング損失が大きい高耐圧IGBT(スイッチング素子)を用い、比較的にスイッチング回数の多い単位変換器188、189のスイッチとして、スイッチング損失の小さな低圧低損失スイッチング素子を用いているので、パワー半導体素子の直列接続などの特殊な技術を用いることなく低損失な電力変換ができる。さらに、GaNで形成されたFETがダブルゲート型の双方向導通型のFETであれば、さらに低損失を実現できる。さらに、当該FETが安価なSi上に形成されていれば経済的な負担も小さい。
【0091】
電力変換装置1001の正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nは、2レベル変換器であるが、上記の実施形態と同様に、電力変換装置1001の正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nを3レベル変換器にすることもできる。例えば
図16に示す電力変換装置1301は、3レベル変換器である正側スター変換部1500P、負側スター変換部1500Nと、正側の変圧器103と、負側の変圧器103とを備えている。
【0092】
電力変換装置1301では、正側スター変換部1800Pが、スター変換レグ154R、154S、154Tと、スター変換レグ154R’、154S’、154T’と、ハイサイドコンデンサ159Hとローサイドコンデンサ159Lとが直列に接続されたコンデンサ直列体とが並列に接続された構成を有する。スター変換レグ154R、154S、154Tは、ハイハイサイドスイッチSA、ハイローサイドスイッチSB、ローハイサイドスイッチSC、ローローサイドスイッチSDの4つが直列に接続された構成を有し、ハイローサイドスイッチSB及びローハイサイドスイッチSC間のスイッチ接続点152R、152S、152Tが入力側の変圧器103の端子RP、SP、TPにそれぞれ接続され、入力側の三相交流系統111のR相、S相、T相が入力側の変圧器103を介して、スター変換レグ154R、154S、154Tのスイッチ接続点152R、152S、152Tにそれぞれ接続されている。
【0093】
スター変換レグ154R’、154S’、154T’は、ハイハイサイドスイッチSA、ハイローサイドスイッチSB、ローハイサイドスイッチSC、ローローサイドスイッチSDの4つが直列に接続された構成を有し、ハイローサイドスイッチSB及びローハイサイドスイッチSC間のスイッチ接続点152R’、152S’、152T’が出力側の変圧器103の端子RP、SP、TPにそれぞれ接続され、出力側の三相交流系統111のu相、v相、w相が出力側の変圧器103を介して、スター変換レグ154R’、154S’、154T’のスイッチ接続点152R’、152S’、152T’にそれぞれ接続されている。さらに、スター変換レグ154R、154S、154Tと、スター変換レグ154R’、154S’、154T’とは、2つのダイオードDを直列に接続したダイオード直列体が、ハイハイサイドスイッチSAとハイローサイドスイッチSBの接続点及びローハイサイドスイッチSCとローローサイドスイッチSDの接続点の間に、それぞれ逆並列に接続されている。そして、各ダイオード直列体のダイオードD同士の接続点とハイサイドコンデンサ159H及びローサイドコンデンサ159Lの接続点とが導線611bによって接続されている。負側スター変換部1800Nも同様の構成である。
【0094】
このように構成することで、正側スター変換部1800Pのスター変換レグ154R、154S、154T、154R’、154S’、154T’は、第1所定電圧、第3所定電圧、又はゼロを出力でき、負側スター変換部1800Nのスター変換レグ154R、154S、154T、154R’、154S’、154T’は、第2所定電圧、第3所定電圧、又はゼロを出力できる。第1所定電圧及び第2所定電圧が同じ電圧で、第3所定電圧及び第4所定電圧が同じ電圧となるようにしてもよく、第1所定電圧、第2所定電圧、第3所定電圧、第4所定電圧が、異なる値となるようにしてもよい。
【0095】
例えば、正側スター変換部1800Pのハイサイドコンデンサ159H及びローサイドコンデンサ159Lの出力電圧が1.8kVとなるようにし、負側スター変換部1800Nのハイサイドコンデンサ203H及びローサイドコンデンサ203Lの出力電圧が0.6kVとなるようにする。このようにすることで、正側スター変換部1800Pが、1.8kV(第1所定電圧)、3.6kV(第3所定電圧)、0を出力し、負側スター変換部1800Nが、1.2kV(第2所定電圧)、0.6kV(第4所定電圧)、0を出力できる。その結果、電力変換装置1301は、三相交流系統111の交流電圧を変換し、0.6kV刻みの9レベルで表された交流電圧を出力側の三相交流のu相、v相、w相の各相に出力できる。
【0096】
(4)本発明の電力変換装置の用途
本発明の電力変換装置は、例えば、太陽光や風力などの発電機で発電した電力を電力系統へと供給するための発電システム、交流モータや直流モータを駆動するためのモータドライブシステム、電力系統同士を接続するための電力連系システムなどに用いられる。発電システムでは、例えば、発電機で発電した直流電力を交流電力に変換するインバータとして用いる。
【0097】
発電システムでは、例えば、
図1に示す電力変換装置101の端子Pと端子Nとの間にコンデンサを挿入し、端子Pと端子Nとを発電機で発電された直流電圧の入力端子とする。そして、端子Pと端子Nとに発電機を接続し端子102R、102S、102Tを電力系統に接続し、電力変換装置を介して、発電機と電力系統とを接続する。発電システムは、電力変換装置101に、電力変換装置101に入力された直流電圧を、系統電圧に所定電圧を加えた電圧に変換させ、電力変換装置101から電力系統に出力させる制御装置を備えていてもよい。
【0098】
モータドライブシステムでは、本発明の電力変換装置を介して、電源とモータとが接続され、電源としての直流電圧源の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータに供給するためのインバータ、電源としての交流電圧源の交流電圧を直流電圧に変換して直流モータに供給するためのコンバータ、電源としての電力系統の交流電圧を所定の交流電圧に変換してモータに供給するAC/ACコンバータなどとして用いられる。このとき、モータドライブシステムでは、電力変換装置の出力電圧などを制御してモータの回転数を制御する制御装置を備えていてもよい。
【0099】
電力連系システムでは、本発明の電力変換装置を介して、電力系統同士が接続され、電力系統間で電力の送電・受電が行われる。例えば、
図1に示す電力変換装置101を2つ用意し、一の電力変換装置101と、他の電力変換装置101との端子P同士及び端子N同士を電線で接続し、電力変換装置101間を直流で送電し、2つの電力系統を連系するようにしてもよい。また、例えば、
図13に示す電力変換装置1001のようなAC/ACコンバータ型の電力変換装置を用い、電力変換装置1001を介して2つの電力系統を直接連系するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
101 電力変換装置
102R、102S、102T 端子
107R、107S、107T レグ
108、109 単位変換器
110 直流装置
111 三相交流系統
112 リアクトル
151R、151S、151T スイッチ接続点
153R、153S、153T スター変換レグ
150P 正側スター変換部
150N 負側スター変換部
159、204 コンデンサ
NP1 第1中性点
NP2 第2中性点