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特許7177502多連型ヒューズ、及び当該多連型ヒューズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】多連型ヒューズ、及び当該多連型ヒューズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/143 20060101AFI20221116BHJP
   H01H 69/02 20060101ALI20221116BHJP
   H01H 85/05 20060101ALI20221116BHJP
   H01H 85/12 20060101ALI20221116BHJP
   H01H 85/175 20060101ALI20221116BHJP
   H01M 50/583 20210101ALN20221116BHJP
【FI】
H01H85/143
H01H69/02
H01H85/05
H01H85/12
H01H85/175
H01M50/583
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020039540
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141008
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 佳信
(72)【発明者】
【氏名】梁中赫
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-252453(JP,A)
【文献】特開2018-26967(JP,A)
【文献】特開2019-36509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/00-85/62
H01H 69/02
H01M 50/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、複数の外部端子と、前記入力端子と前記外部端子との間に設けられた溶断部を備えるバスバー本体と、
当該バスバー本体を覆うハウジング本体と、を備える多連型ヒューズであって、
充電用の接続端子を接続してバッテリーの充電を行うための拡張バスバーを備え、
当該拡張バスバーは、前記入力端子と重なる入力拡張端子と、前記バスバー本体よりも外側へ延出し、前記充電用の接続端子を接続する外側拡張部とを備え、
前記拡張バスバーの入力拡張端子が、前記入力端子と重ねられた状態で、前記拡張バスバーと前記バスバー本体とが共に、前記ハウジング本体に固定されていることを特徴とする多連型ヒューズ。
【請求項2】
前記拡張バスバーの外側拡張部を覆う拡張ハウジングを備え、
当該拡張ハウジングは、前記外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えると共に、前記ハウジング本体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の多連型ヒューズ。
【請求項3】
前記拡張ハウジングの露出窓を開閉するカバー部を備えることを特徴とする請求項2に記載の多連型ヒューズ。
【請求項4】
入力端子と、複数の外部端子と、前記入力端子と前記外部端子との間に設けられた溶断部を備えるバスバー本体と、
当該バスバー本体を覆うハウジング本体と、を備える多連型ヒューズの製造方法であって、
充電用の接続端子を接続してバッテリーの充電を行うための拡張バスバーを備え、
前記充電用の接続端子を接続する外側拡張部を前記バスバー本体の外側へ突出させつつ、入力拡張端子を前記入力端子に重ね合わせた状態で、前記拡張バスバーを、前記バスバー本体と共に前記ハウジング本体に固定することを特徴とする多連型ヒューズの製造方法。
【請求項5】
前記拡張バスバーの外側拡張部を覆うと共に、当該外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えた拡張ハウジングを、前記ハウジング本体に固定することを特徴とする請求項4に記載の多連型ヒューズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車用電気回路等に用いられるヒューズに関し、特に、複数の外部端子を備える多連型ヒューズ、及び当該多連型ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒューズは、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられてきた。詳しくは、電気回路中に意図しない過電流が流れた場合に、溶断部が過電流による発熱により溶断して、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0003】
そして、このヒューズは用途に応じて様々な種類があり、例えば、特許文献1の多連型ヒューズは、車載のバッテリーと各種電装品に電源を供給する電線とを接続するものである。そして、このような多連型ヒューズは、各種電装品と接続される複数の外部端子を備え、当該外部端子と車載のバッテリーとの間に溶断部を介在させることで、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0004】
また、この特許文献1の多連型ヒューズでは、ハウジングの一部に、内部のバスバーを露出させる開口部が形成されているので、この開口部からバスバーに充電用の接続端子を接続して、バッテリーの充電を行うことができる。ただ、ハウジングの一部を切り欠いたように開口部を形成しているため、バスバーが露出する範囲は比較的狭く、充電用の接続端子が比較的大きい場合や、接続端子の形状が特殊な場合などは、充電用の接続端子を取り付けるのが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-36509号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、充電用の接続端子を取り付けやすい多連型ヒューズ、及び当該多連型ヒューズの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の多連型ヒューズは、入力端子と、複数の外部端子と、前記入力端子と前記外部端子との間に設けられた溶断部を備えるバスバー本体と、当該バスバー本体を覆うハウジング本体と、を備える多連型ヒューズであって、充電用の接続端子を接続してバッテリーの充電を行うための拡張バスバーを備え、当該拡張バスバーは、前記入力端子と重なる入力拡張端子と、前記バスバー本体よりも外側へ延出し、前記充電用の接続端子を接続する外側拡張部とを備え、前記拡張バスバーの入力拡張端子が、前記入力端子と重ねられた状態で、前記拡張バスバーと前記バスバー本体とが共に、前記ハウジング本体に固定されていることを特徴とする。
【0008】
上記特徴によれば、充電用の接続端子を接続する拡張バスバーの外側拡張部が、バスバー本体よりも外側へ延出しているので、充電用の接続端子を外側拡張部に容易に取り付けることが出来る。また、拡張バスバーの入力拡張端子がバスバー本体の入力端子と重ねられた状態で、拡張バスバーとバスバー本体とが離れないように一体的にハウジング本体に固定されているので、入力端子と拡張バスバーとの電気的な接続精度が高く、バッテリーの充電が効果的に行われる。さらに、拡張バスバーの入力拡張端子がバスバー本体の入力端子と重ねられた状態でハウジング本体に固定される態様なので、拡張バスバーの組付けを、多連型ヒューズの同一の製造ライン内で連続して実施することができ、生産効率が良いのである。
【0009】
本願発明の多連型ヒューズは、前記拡張バスバーの外側拡張部を覆う拡張ハウジングを備え、当該拡張ハウジングは、前記外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えると共に、前記ハウジング本体に固定されていることを特徴とする。
【0010】
上記特徴によれば、バスバー本体から外側へ延出している拡張バスバーの外側拡張部は、拡張ハウジングによって覆われて保護されており、さらに、拡張ハウジングは、外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えているので、充電用の接続端子を容易に外側拡張部に接続することができる。
【0011】
本願発明の多連型ヒューズは、前記拡張ハウジングの露出窓を開閉するカバー部を備えることを特徴とする。
【0012】
上記特徴によれば、人などが不用意に外側拡張部に触れないように保護できる。
【0013】
本願発明の多連型ヒューズの製造方法は、入力端子と、複数の外部端子と、前記入力端子と前記外部端子との間に設けられた溶断部を備えるバスバー本体と、当該バスバー本体を覆うハウジング本体と、を備える多連型ヒューズの製造方法であって、充電用の接続端子を接続してバッテリーの充電を行うための拡張バスバーを備え、前記充電用の接続端子を接続する外側拡張部を前記バスバー本体の外側へ突出させつつ、入力拡張端子を前記入力端子に重ね合わせた状態で、前記拡張バスバーを、前記バスバー本体と共に前記ハウジング本体に固定することを特徴とする。
【0014】
上記特徴によれば、拡張バスバーの入力拡張端子がバスバー本体の入力端子と重ねられた状態でハウジング本体に固定される態様なので、拡張バスバーの組付けを、多連型ヒューズの同一の製造ライン内で連続して実施することができ、生産効率が良いのである。さらに、充電用の接続端子を接続する拡張バスバーの外側拡張部が、バスバー本体よりも外側へ延出しているので、充電用の接続端子を外側拡張部に容易に取り付けることが出来る。また、拡張バスバーの入力拡張端子がバスバー本体の入力端子と重ねられた状態で、拡張バスバーとバスバー本体とが離れないように一体的にハウジング本体に固定されているので、入力端子と拡張バスバーとの電気的な接続精度が高く、バッテリーの充電が効果的に行われる。
【0015】
本願発明の多連型ヒューズの製造方法は、前記拡張バスバーの外側拡張部を覆うと共に、当該外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えた拡張ハウジングを、前記ハウジング本体に固定することを特徴とする。
【0016】
上記特徴によれば、拡張ハウジングはハウジング本体に固定されているので、拡張ハウジングの組付けを、多連型ヒューズの同一の製造ライン内で連続して実施することができ、生産効率が良いのである。また、バスバー本体から外側へ延出している拡張バスバーの外側拡張部は、拡張ハウジングによって覆われて保護されており、さらに、拡張ハウジングは、外側拡張部の一部を露出させる露出窓を備えているので、充電用の接続端子を容易に外側拡張部に接続することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本願発明の多連型ヒューズ、及び当該多連型ヒューズの製造方法によれば、充電用の接続端子を取り付けやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本願発明の多連型ヒューズのバスバー本体の正面図、(b)は拡張バスバーの正面図である。
図2】(a)は、本願発明の多連型ヒューズのハウジング本体の一方のハウジング分割片の正面図、(b)は他方のハウジング分割片の正面図である。
図3】(a)は、本願発明の多連型ヒューズの拡張ハウジングの一方の拡張ハウジング分割片の正面図、(b)は他方の拡張ハウジング分割片の正面図である。
図4】本願発明の多連型ヒューズの製造過程を示す全体斜視図である。
図5】本願発明の多連型ヒューズの製造過程を示す全体斜視図である。
図6】本願発明の多連型ヒューズの製造過程を示す全体斜視図である。
図7】本願発明の多連型ヒューズの製造過程を示す全体斜視図である。
図8】本願発明の多連型ヒューズの製造過程を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
100 バスバー本体
110 入力端子
113 溶断部
120 外部端子
400 ハウジング本体
500 拡張バスバー
510 入力拡張端子
520 外側拡張部
H 多連型ヒューズ

【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本願発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態における多連型ヒューズの各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本願発明に係る多連型ヒューズのバスバー本体100、及び拡張バスバー500を示している。なお、図1(a)はバスバー本体100の正面図、図1(b)は拡張バスバー500の正面図である。
【0022】
図1(a)に示すように、バスバー本体100は、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板状部材を、所定形状にプレス機等で打ち抜き、バッテリー等と通電可能な入力端子110と、複数の外部端子120と、回路部130とを備える。そして、この入力端子110は回路部130に連結され、外部端子120は溶断部113を介して、回路部130に連結されている。そのため、入力端子110に接続されたバッテリー等の電源側から過電流が流れた場合は、溶断部113が溶断し、外部端子120に連結された各種電装品等の負荷を保護できる。
【0023】
なお、入力端子110には、バッテリー等に接続された端子を挿通させて固定する連結孔111が設けられている。また、入力端子110には、後述するハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔112が設けられている。同様に、外部端子120にもハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔121が、回路部130にもハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔131が設けられている。また、入力端子110と外部端子120を接続する部分である回路部130は、図1(a)に示すような略長方形に限定されず、仕様に応じて任意の形状とすることができる。
【0024】
次に、図1(b)に示すように、拡張バスバー500は、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板状部材を、所定形状にプレス機等で打ち抜き、バッテリー等と通電可能な入力拡張端子510と、略正方形の外側拡張部520とを備える。そして、この入力拡張端子510は、後述するようにバスバー本体100の入力端子110と重ねられて密着し、入力端子110と通電可能に構成されている。また、入力拡張端子510は、バッテリー等に接続された端子を挿通させて固定する連結孔511と、後述するハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔512が設けられている。そして、後述するように、入力拡張端子510がバスバー本体100の入力端子110に重ねられた際に、連結孔511は入力端子110の連結孔111と、貫通孔512は入力端子110の貫通孔112とそれぞれ重なるように構成されている。
【0025】
さらに、外側拡張部520は、後述するように、バスバー本体100の回路部130よりも外側へ延出するように構成されており、クリップ状の充電用の接続端子を取り付けることが出来る。また、外側拡張部520の両側には、後述する拡張ハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔522が設けられている。さらに、外側拡張部520の下端523側は、バスバー本体100の回路部130と重ねられて密着する部分となっており、ハウジングの連結突起を貫通させる貫通孔524が設けられている。この貫通孔524は、バスバー本体100の貫通孔131と重なるように構成されている。なお、充電用の接続端子が不用意に外れないように、外側拡張部520の表面には滑り止め用の凸部521が設けられている。また、外側拡張部520は、クリップ状の充電用の接続端子を取り付けやすいように平坦状になっているが、これに限定されず、例えば、充電用の接続端子を挿通させて固定するために、外側拡張部520に連結孔を設けるなど、任意の形状とすることができる。
【0026】
では次に、図2を参照して、本願発明に係る多連型ヒューズのハウジング本体400について説明する。なお、ハウジング本体400は、一対のハウジング分割片200とハウジング分割片300とから構成されている。そして、図2(a)は一方のハウジング分割片200の内側を示した正面図、図2(b)は他方のハウジング分割片300の外側を示した正面図である。
【0027】
図2(a)に示すように、ハウジング分割片200は、合成樹脂製で略長方形形状をしており、バスバー本体100の回路部130を収容する上端側収容部210と、バスバー本体100の溶断部113を収容する中央側収容部220と、バスバー本体100の外部端子120の上端側(溶断部113と連結している側)を収容する下端側収容部230と、バスバー本体100の入力端子110の中央付近を収容する入力端子収容部240とを備える。また、上端側収容部210には、バスバー本体100の回路部130の貫通孔131に貫通させる連結突起211が複数形成されている。さらに、上端側収容部210には、後述する拡張ハウジングの一部と嵌合する嵌合孔212が設けられている。また、下端側収容部230には、バスバー本体100の外部端子120の貫通孔121に貫通させる連結突起231が形成されている。同様に、入力端子収容部240には、バスバー本体100の入力端子110の貫通孔112に貫通させる連結突起241が形成されている。
【0028】
次に、図2(b)に示すように、ハウジング分割片300は、合成樹脂製で略長方形形状をしており、ハウジング分割片200に収容されたバスバー本体100を挟み込んで覆うことが出来るように、ハウジング分割片200と対応した形状をしている。さらに、ハウジング分割片300は、ハウジング分割片200の上端側収容部210の連結突起211を挿通可能な挿通孔301と、ハウジング分割片200の下端側収容部230の連結突起231を挿通可能な挿通孔302と、ハウジング分割片200の入力端子収容部240の連結突起241を挿通可能な挿通孔303を備えている。また、ハウジング本体400内に収容されたバスバー本体100の溶断部113が、外部から視認できるように、ハウジング分割片300には透明な樹脂で出来た視認窓310が設けられている。
【0029】
では次に、図3を参照して、本願発明に係る多連型ヒューズの拡張ハウジング800について説明する。なお、拡張ハウジング800は、一対の拡張ハウジング分割片600と拡張ハウジング分割片700とから構成されている。そして、図3(a)は一方の拡張ハウジング分割片600の内側を示した正面図、図3(b)は他方の拡張ハウジング分割片700の外側を示した正面図である。
【0030】
図3(a)に示すように、拡張ハウジング分割片600は、合成樹脂製で略長方形形状をしており、拡張バスバー500の外側拡張部520を収容する収容部610を備える。また、収容部610は、収容部610内に収容された外側拡張部520の一部を外部に露出させために、表面から裏面にかけて貫通した露出窓620を備える。さらに、収容部610の両側には、拡張バスバー500の外側拡張部520の貫通孔522に貫通させる連結突起611が複数形成されている。さらに、拡張ハウジング分割片600の下端側には、ハウジング分割片200の嵌合孔212と対応した形状で、嵌合孔212と嵌合する嵌合突起612が設けられている。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、拡張ハウジング分割片700は、合成樹脂製で略長方形形状をしており、拡張ハウジング分割片600に収容された拡張バスバー500の外側拡張部520を挟み込んで覆うことが出来るように、拡張ハウジング分割片600と対応した形状をしている。また、拡張ハウジング分割片700は、拡張ハウジング800内に収容された外側拡張部520の一部を外部に露出させために、表面から裏面にかけて貫通した露出窓720を備える。
【0032】
さらに、拡張ハウジング分割片700の両側には、拡張ハウジング分割片600の連結突起611を挿通させる挿通孔711が、連結突起611と対応する位置に複数設けられている。そして、拡張ハウジング分割片600の露出窓620と拡張ハウジング分割片700の露出窓720は前後に重なるように配置されている。そのため、拡張ハウジング分割片600と拡張ハウジング分割片700により、拡張バスバー500の外側拡張部520を挟み込むように収容した際に、拡張ハウジング分割片600の露出窓620から外側拡張部520の裏面側が、拡張ハウジング分割片700の露出窓720から外側拡張部520の表面側が、それぞれ露出した状態となる。そして、露出した外側拡張部520の表面及び裏面の両側から挟み込むように、クリップ状の充電用の接続端子を容易に取り付けることができるのである。なお、拡張ハウジング分割片700の一部には、後述するカバー部を回動可能に軸支する回動軸730が設けられている。
【0033】
では次に、図4から図8を参照して、本願発明の多連型ヒューズHの製造方法について説明する。なお、図4から図8は、本願発明の多連型ヒューズHの製造過程を示す全体斜視図である。また、図4から図8に示す多連型ヒューズHの製造工程では、多連型ヒューズHは、同一の製造ライン内で作業員により組み付けられる、又は、同一の製造ライン内で組立装置によって自動で組み付けられている。
【0034】
まず、図4及び図5に示すように、バスバー本体100をハウジング分割片200に収容すると共に、拡張ハウジング分割片600をハウジング分割片200に固定する。具体的には、図4に示すように、ハウジング分割片200の上端側に拡張ハウジング分割片600を宛てがい、拡張ハウジング分割片600の嵌合突起612をハウジング分割片200の嵌合孔212に嵌め合わせて、図5に示すように、拡張ハウジング分割片600をハウジング分割片200に連結固定する。嵌合突起612は略台形形状をしているので、嵌合孔212に連結された拡張ハウジング分割片600は、上方へ抜けないように固定された状態となっている。また、図4に示すように、ハウジング分割片200の各連結突起211をバスバー本体100の回路部130の各貫通孔131に、ハウジング分割片200の各連結突起231をバスバー本体100の外部端子120の各貫通孔121に、ハウジング分割片200の連結突起241をバスバー本体100の入力端子110の貫通孔112にそれぞれ挿通させて、図5に示すようにバスバー本体100をハウジング分割片200に収容する。
【0035】
次に、図5及び図6に示すように、拡張バスバー500をハウジング分割片200及び拡張ハウジング分割片600に収容する。具体的には、図5に示すように、バスバー本体100の入力端子110の貫通孔112から突出している連結突起241を、拡張バスバー500の入力拡張端子510の貫通孔512に貫通させ、拡張バスバー500の入力拡張端子510をバスバー本体100の入力端子110に密着するように重ね合わせる。また、バスバー本体100の回路部130の貫通孔131から突出している連結突起211を、拡張バスバー500の外側拡張部520の下端523に設けられた貫通孔524に貫通させ、外側拡張部520の下端523をバスバー本体100の回路部130に密着するように重ね合わせる。さらに、拡張バスバー500の外側拡張部520を拡張ハウジング分割片600の収容部610に収容し、拡張ハウジング分割片600の連結突起611を外側拡張部520の貫通孔522に貫通させる。
【0036】
すると、図6に示すように、拡張バスバー500がハウジング分割片200及び拡張ハウジング分割片600に収容された状態となる。また、拡張バスバー500が収容された状態で、外側拡張部520がバスバー本体100よりも上方へ向けて外側に延出して突出している。また、バスバー本体100と拡張バスバー500は、連結突起(241、211)によって、互いに離れないように一体的に固定されるが、これに限定されず、その他の構成によって、バスバー本体100と拡張バスバー500は、互いに離れないように一体的に固定されてもよい。
【0037】
次に、図6及び図7に示すように、ハウジング分割片300及び拡張ハウジング分割片700を組み付ける。具体的には、図6に示すように、ハウジング分割片200に収容されたバスバー本体100及び拡張バスバー500の入力拡張端子510を覆って挟み込むように、ハウジング分割片300をハウジング分割片200に取り付ける。その際、バスバー本体100又は拡張バスバー500から突出しているハウジング分割片200の各連結突起211を、ハウジング分割片300の各挿通孔301に挿通させる。同様に、バスバー本体100から突出しているハウジング分割片200の各連結突起231をハウジング分割片300の挿通孔302に、連結突起241をハウジング分割片300の挿通孔303にそれぞれ挿通させる。また、図6に示すように、拡張ハウジング分割片600に収容された拡張バスバー500の外側拡張部520を覆って挟み込むように、拡張ハウジング分割片700を拡張ハウジング分割片600に取り付ける。その際、外側拡張部520から突出している拡張ハウジング分割片600の各連結突起611を、拡張ハウジング分割片700の挿通孔711に挿通させる。
【0038】
すると、図7に示すように、バスバー本体100が、ハウジング分割片200とハウジング分割片300によって構成されるハウジング本体400によって内部に収容される。また、拡張バスバー500が、ハウジング本体400と、拡張ハウジング分割片600及び拡張ハウジング分割片700によって構成される拡張ハウジング800によって、内部に収容された状態となる。なお、突出している各連結突起(611、211、231、241)の先端を局所的に過熱して周囲と溶着させることで、ハウジング本体400及び拡張ハウジング800は強固に固定された状態となる。
【0039】
次に、図8に示すように、拡張ハウジング800の裏側の露出窓620と表側の露出窓720から外側拡張部520が露出しているので、不用意に外側拡張部520に触れないように、外側拡張部520を覆うカバー部900を取り付ける。このカバー部900は、合成樹脂製で中空状に形成されており、2枚の板状の側壁(910及び920)、及び、拡張ハウジング800の回動軸730に連結される軸孔930を備えている。
【0040】
このようにして、すべての部材を組み付けることで、図8に示すような多連型ヒューズHの製造が完了するのである。そして、完成した多連型ヒューズHは、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられる。具体的には、ハウジング本体400の下端から突出している入力端子110及び入力拡張端子510に、バッテリー等の電源に接続された端子を連結し、ハウジング本体400の下端から突出している各外部端子120に各種電装品を接続している。そして、多連型ヒューズHの入力端子110に接続されたバッテリーからの電力を各外部端子120を介して各種電装品に供給しており、過度な電流が流れた際は、多連型ヒューズHの溶断部113が溶断して電流を遮断することで、各種電装品を保護しているのである。
【0041】
また、通常時は、人などが不用意に外側拡張部520に触れないように、カバー部900を回動軸730を中心に下方へ回動させて、露出窓(620、720)から外部に露出している外側拡張部520を、カバー部900で覆い隠した状態となっている。一方、バッテリーが上がってしまった場合などの緊急時には、バッテリーを充電するために、カバー部900を回動軸730を中心に上方へ回動させて、外側拡張部520を外部へ露出させる。そして、充電用の他のバッテリー(例えば、他の車両等に搭載されたバッテリーなど)に接続された充電用の接続端子(不図示)を外側拡張部520に接続し、多連型ヒューズHの入力端子110及び入力拡張端子510に接続されたバッテリー(上がってしまった側)を充電するのである。
【0042】
以上のように、本願発明の多連型ヒューズHによれば、充電用の接続端子を接続する拡張バスバー500の外側拡張部520が、バスバー本体100よりも外側へ延出しているので、充電用の接続端子を外側拡張部520に容易に取り付けることが出来る。また、拡張バスバー500の入力拡張端子510がバスバー本体100の入力端子110と重ねられた状態で、拡張バスバー500とバスバー本体100とが離れないように一体的にハウジング本体400に固定されているので、入力端子110と拡張バスバー500との電気的な接続精度が高く、バッテリーの充電が効果的に行われる。
【0043】
さらに、拡張バスバー500の入力拡張端子510がバスバー本体100の入力端子110と重ねられた状態でハウジング本体400に固定される態様なので、拡張バスバー500の組付けを、多連型ヒューズHの同一の製造ライン内で連続して実施することができ、生産効率が良いのである。特に、バスバー本体100と拡張バスバー500の一部を共に、ハウジング分割片200とハウジング分割片300とで挟み込んで一体的に固定しているので、バスバー本体100と拡張バスバー500との電気的な接続精度が高く、また、拡張バスバー500の組付けを、多連型ヒューズHの同一の製造ライン内で連続して実施することができる。
【0044】
また、図8では、入力端子110の連結孔111と入力拡張端子510の連結孔511とが重なっているので、例えば、連結孔111と連結孔511とに、ボルト状の充電用の接続端子を挿通させてナットで締結すれば、入力端子110と入力拡張端子510とが強固に密着した状態となり、入力端子110と拡張バスバー500との電気的な接続精度がより高くなる。なお、図8では、入力端子110と入力拡張端子510とが同じ形状をしており、入力端子110と入力拡張端子510とが全体的に互いに重なっているが、これに限定されず、入力端子110と入力拡張端子510とが異なる形状でもよく、入力端子110と入力拡張端子510とは互いの一部が重なるように構成されていればよい。
【0045】
また、バスバー本体100から外側へ延出している拡張バスバー500の外側拡張部520は、拡張ハウジング800によって覆われて保護されている。さらに、拡張ハウジング800は、外側拡張部520の一部を露出させる露出窓を備えているので、充電用の接続端子を容易に外側拡張部520に接続することができる。また、拡張ハウジング800の露出窓を開閉するカバー部900を備えているので、人などが不用意に外側拡張部520に触れないように保護できるのである。さらに、拡張ハウジング800はハウジング本体400に固定されているので、拡張ハウジング800の組付けを、多連型ヒューズHの同一の製造ライン内で連続して実施することができ、生産効率が良いのである。
【0046】
なお、図8に示すように、多連型ヒューズHの拡張ハウジング800は、カバー部900を備えているが、これに限定されず、カバー部900を備えなくてもよい。さらに、多連型ヒューズHは、拡張ハウジング800を備えているが、これに限定されず、拡張ハウジング800を備えず、外側拡張部520全体を外部に露出した状態としてもよい。また、多連型ヒューズHの拡張ハウジング800には、裏面と表面の両方に、露出窓620と露出窓720を備えているが、これに限定されず、充電用の接続端子を取り付けることができるのであれば、任意の形状で任意の数の露出窓を、任意の場所に設けることができる。また、充電用の接続端子は、クリップ形状に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0047】
なお、充電用の接続端子を接続する部分は、外部環境に晒されて劣化したり、何度も接続端子に接続されて損傷する虞のある部分であるため、表面にメッキ処理等を施して保護する必要がある。そのため、充電用の接続端子を接続する部分をバスバー本体100に直接設けると、バスバー本体100全体をメッキ処理する必要があり、それだけ製造コストが上がってしまう。そこで、充電用の接続端子を接続する部分として、バスバー本体100とは別体の拡張バスバー500を設けたことで、拡張バスバー500のみにメッキ処理を施せばよいため、製造コストの削減が行える。
【0048】
また、本願発明の多連型ヒューズ、及び多連型ヒューズの製造方法は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
図1
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図8