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特許7177522揮発性フェロモンおよび情報化学物質を検知することによって貯蔵産物中の昆虫幼体および昆虫成体を検出するためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】揮発性フェロモンおよび情報化学物質を検知することによって貯蔵産物中の昆虫幼体および昆虫成体を検出するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/00 20060101AFI20221116BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A01M1/00 Q
G01N27/02 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020542262
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019016335
(87)【国際公開番号】W WO2019152832
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/625,000
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520284883
【氏名又は名称】センサー デベロップメント コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スマイラニック, ニコラス ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】レイカート, サミュエル ファイアストーン
(72)【発明者】
【氏名】タドロン, フランク バーナード
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0028667(US,A1)
【文献】特開2017-166826(JP,A)
【文献】特開2015-200647(JP,A)
【文献】特開2002-330684(JP,A)
【文献】特開平11-332444(JP,A)
【文献】SMILANICH, N. J.,STORED PRODUCT PROTECTION WITH A PHEROMONE BASED MULTI - INSECT DETECTOR.,米国,2017年01月31日,インターネット<URL:https://reeis.usda.gov/web/crisprojectpages/1006461-stored-product-protection-with-a-pheromone-based-multi--insect-detector.html>,[2021年8月23日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
G01N 7/00 - 7/22
G01N 27/00 - 27/24
G01N 30/00 - 30/96
G01N 33/00 - 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(VOC)を検出することによって貯蔵産物における昆虫侵入を識別する方法であって、
複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含むデバイスを提供するステップであって、ここで、各VOCセンサーは、
第1面と第2面とを有する基板と、
前記基板の第1面上に形成された抵抗ヒーター回路と、
前記基板の第2面上に形成された感知回路と、
前記基板の第2面上の感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルムと、を含む、ステップ;
記複数のVOCセンサーのうちの少なくとも第1VOCセンサー1動作温度に、そして前記複数のVOCセンサーのうちの少なくとも第2VOCセンサーを第2動作温度に加熱するステップであって、ここで、前記第1動作温度および第2動作温度が異なる、ステップ
前記複数のVOCセンサーを、標的流体フローと接触させるステップ
前記標的流体フローと接触させた前記複数のVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値(ΔK)のセットを決定するステップ;および
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度([X])を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のVOCセンサーを前記標的流体フローと接触させた後、前記複数のVOCセンサーについての信号コンダクタンスを測定することをさらに含み;
前記コンダクタンス変化値(ΔK)のセットが、前記標的流体フローと接触させた前記複数のVOCセンサーのそれぞれについての前記信号コンダクタンスと、前記対応するOCセンサーのそれぞれのベースラインコンダクタンスとの間の差異に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のVOCセンサーについての前記ベースラインコンダクタンスが、前記複数のVOCセンサーが標的VOCを一切含まない大気中にある状態で測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの標的VOCと接触させた後に、前記少なくとも1つの標的VOCとの接触前の前記対応するVOCセンサーの前記ベースラインコンダクタンスと合致するように、複数のVOCセンサーのベースラインコンダクタンスを調節することをさらに含み、
前記ベースラインコンダクタンスが、複数のVOCセンサーを少なくとも第2動作温度に加熱することによって調節される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
記複数のVOCセンサーを、標的VOCを一切含まないサンプル流体フローと接触させること;および
前記複数のVOCセンサーについてのベースラインコンダクタンスを測定すること、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
複数のVOCセンサーについての1つまたはそれを超える固有ネットコンダクタンス値を決定することをさらに含み、
各固有ネットコンダクタンス値が、前記標的VOCの1つに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的VOCに対応する各固有ネットコンダクタンス値が、
前記複数のVOCセンサーを、既知の濃度の前記標的VOCを含む制御流体フローと接触させること;
前記複数のVOCセンサーのそれぞれについての試験コンダクタンスを測定すること;および
前記複数のVOCセンサーのそれぞれについて、前記VOCセンサーの前記測定された試験コンダクタンスと、前記制御流体フロー中の前記標的VOCの前記既知の濃度に基づいて固有ネットコンダクタンス値を計算すること、
によって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数のVOCセンサーについての複数の固有ネットコンダクタンス値を決定することをさらに含み、
前記複数のVOCセンサーのそれぞれについての前記各固有ネットコンダクタンス値が、異なる標的VOCに対応する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記標的流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCについての前記ガス成分濃度([X])が、前記コンダクタンス変化値のセットと、前記複数のVOCセンサーのそれぞれについての前記1つまたはそれを超える固有ネットコンダクタンス値に基づいて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1動作温度が、約180℃~約400℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記標的流体フローが、評価される前記貯蔵産物の近傍内から採取された空気サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(VOC)を検出するためのデバイスであって、
前記デバイスが、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含み、
各VOCセンサーが、
基板;
前記基板の第1面上に形成された抵抗ヒーター回路;
前記基板の第2面上に形成された感知回路;および
前記基板の第2面上の感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルム、
を含
ここで、前記複数のVOCセンサーのうちの第1VOCセンサーの前記抵抗ヒーター回路は、前記第1VOCセンサーを第1動作温度に加熱するように構成され、そして前記複数のVOCセンサーのうちの第2VOCセンサーの前記抵抗ヒーター回路は、前記第2VOCセンサーを第2動作温度に加熱するように構成され、前記第2動作温度が前記第1動作温度と異なる、
デバイス。
【請求項13】
前記センサーアレイが、約2~約10個のVOCセンサーを含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数のVOCセンサーの少なくとも1つの前記抵抗ヒーター回路が、長手方向配線幅が約0.288mm~約0.352mm、および長手方向配線間隔幅が約0.333mm~約0.407mmの蛇行パターンである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数のVOCセンサーの少なくとも1つの前記感知回路が、1対の延在する指交差状接点を形成する第1感知素子と第2感知素子とを含み;
前記第1感知素子が、複数の延在する接点を含み、各接点の横配線幅は約0.162mm~約0.198mm、および横配線間隔が約0.738mm~約0.902mmであり;
前記第2感知素子が、複数の延在する接点を含み、各接点の横配線幅は約0.162mm~約0.198mm、および横配線間隔は約0.738mm~約0.902mmである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1感知素子および前記第2感知素子が、それぞれ少なくとも3つの延在する接点を含み、前記感知回路の、前記第1感知素子および前記第2感知素子の各延在する接点間の横配線間隔が、約0.288mm~約0.352mmである、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記抵抗ヒーター回路および前記感知回路の少なくとも1つが、白金を含む組成物から形成され、そして前記化学感受性フィルムが、酸化スズの水性ゲルから形成されたナノ結晶酸化スズフィルムである、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
前記化学感受性フィルムが、白金;パラジウム;モリブデン;タングステン;ニッケル;ルテニウム;およびオスミウムからなる群から選択されるドーピングエージェントを含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項19】
前記センサーアレイが、コントローラに作動可能に接続され、
前記コントローラが、
記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのコンダクタンスを測定し;
前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;そして
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成された、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項20】
貯蔵産物における昆虫侵入を識別するためのシステムであって、
複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを封入するテストチャンバーであって、ここで、各VOCセンサーが抵抗ヒーター回路を含む、テストチャンバー
前記テストチャンバーから流体フローを回収し、そして前記流体フローを前記テストチャンバーに送達するように構成された空気移送ユニット;および
前記空気移送ユニットと前記センサーアレイに作動可能に接続されたコントローラ、を含み、
ここで、前記コントローラが、
空気移送ユニットを作動させて、標的領域から前記流体フローを回収し、前記流体フローを前記テストチャンバーに送達し、ここで、記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーは、前記流体フローと流体接触
前記センサーアレイを作動させて、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーについてのコンダクタンスを測定し;
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;そして
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されており
ここで、前記複数のVOCセンサーのうちの第1VOCセンサーの前記抵抗ヒーター回路は、前記第1VOCセンサーを第1動作温度に加熱するように構成され、そして前記複数のVOCセンサーのうちの第2VOCセンサーの前記抵抗ヒーター回路は、前記第2VOCセンサーを第2動作温度に加熱するように構成され、前記第2動作温度が前記第1動作温度と異なる、
システム。
【請求項21】
流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCの少なくとも1つが、4,8-ジメチルデカナール;(Z,Z)-3,6-(11R)-ドデカジエン-11-オリド;(Z,Z)-3,6-ドデカジエノリド;(Z,Z)-5,8-(11R)-テトラデカジエン-13-オリド;(Z)-5-テトラデセン-13-オリド;(R)-(Z)-14-メチル-8-ヘキサデセナール;(R)-(E)-14-メチル-8-ヘキサデセン-アール;γ-エチル-γ-ブチロラクトン;(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテート;(Z,E)-9,12-テトラ-デカジエン-1-オール;(Z,E)-9,12-テトラデカジエナール;(Z)-9-テトラデセニルアセテート;(Z)-11-ヘキサ-デセニルアセテート;(2S,3R,1’S)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(2S,3R,1’R)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(4S,6S,7S)-7-ヒドロキシ-4,6-ジメチルノナン-3-オン;(2S,3S)-2,6-ジエチル-3,5-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン;2-パルミトイル-シクロヘキサン-1,3-ジオン;および2-オレイル-シクロ-ヘキサン-1,3-ジオンからなる群から選択される、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「A DEVICE FOR DETECTING INSECT LARVAE AND ADULT INSECTS IN STORED PRODUCTS BY SENSING THEIR VOLATILE PHEROMONES AND SEMIOCHEMICALS」と称される、2018年2月1日に出願された米国仮特許出願第62/625,000号に対する優先権を主張し、その開示の全てが参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
以下の開示は、一般的には、昆虫および昆虫侵入の検出技術、化学感知技術、ガス検出技術、揮発性有機化合物分析技術、ガス感知マイクロチップアレイ、ならびにそれらに関連する方法およびデバイスに関する。本開示は、特に、貯蔵食物、およびその他の産物または材料における、昆虫の高感度かつ高選択性の検出に関する技術に関連する用途に用いられる。
【0003】
貯蔵産物昆虫(「SPI(stored product insect)」)は、完成した食物産物、および食物の成分を餌にしているところを見つかることがもっとも多く、あるいはSPIは、食物を調理、加工、パッケージ、または貯蔵する装置に群棲している。加工、輸送、および貯蔵システムにおけるこれらの害虫による経済的損失は、1回の異物混入、産物リコール、消費者からの苦情/提訴、および害虫駆除処理あたり数百万ドルに及びうる(Arthur et.al.,2009)。また、ある種のSPIは、誤って食べてしまうと、健康に関わり、幼児や高齢者では胃のストレスの原因となる(Okamura,1967)。
【0004】
現在、昆虫の検出は、フラッシュライト検査、ならびに多数の合成フェロモンルアーを有するトラップおよびSPIの成体を捕獲するためのトラップを使用することで行われている。フェロモンは、個々の種の雄および/または雌が放出する揮発性有機化合物(「VOC(volatile organic compound)」)である。フェロモンルアーおよびトラップは、昆虫の活動を利用しており、温度によって大きな影響を受け得る。フェロモンの揮発性、量/質、ならびに人間の活動および昆虫の動態がこれらの要素と相互作用するため、トラップデータはかなり変動する。トラップによる捕獲の判定は、集団の少数のサンプル(2~10%、またはそれ未満)に基づく。このため、害虫の侵入の検出や改善が難しい。
【0005】
ノシメマダラメイガ(「IMM(indianmeal moth)」)は、米国の至る所で見られる最も一般的な貯蔵産物昆虫である(Mueller,1998;Resener,1996)。IMMは、米国で、貯蔵食物および貯蔵穀物に見られる他のどの昆虫よりも多く見られる昆虫である。IMMの成体は、世界中の温帯地域のほとんどどこでも見られる。さらに、米国と欧州では、IMMは最大の損害を与えている昆虫の害虫である。われわれが住む環境中でこの昆虫がこのようにうまく生き延びてきたのには2つの理由がある。1つ目は、雌が、短い寿命の間に多数の卵を産むためであり、2つ目は、人間が食料を守るために使用する害虫駆除剤に耐えるように、遺伝的に変化または適応する能力(抵抗性)があるためである。IMMは、人類に知られた、最も薬剤抵抗性がある昆虫であることがわかった。50年あまりの間、この昆虫の遺伝的構造は、一般的に使用されている害虫駆除剤であるマラチオンに耐えるように変化してきた。1970年代に、IMMは、この一般的に用いられている昆虫駆除剤に対する抵抗性の兆候を見せ始めた。IMMは、この害虫駆除剤に対して、60,000倍の抵抗性を獲得した。
【0006】
IMMは、完成した食物産物、貯蔵小麦産物および製粉した/加工した小麦などの食物の成分、ならびに製粉した穀物産物、小麦粉、ふすま、パスタ産物、およびスパイスなどの他の貯蔵食物を餌にしているところ、あるいはIMMは、食物を調理、加工、パッケージ、または貯蔵する装置に群棲しているところを見つかることが最も多い。IMMの幼体は、この昆虫(IMM)における有害なライフステージであり、大食である。この幼体は、活発に移動し、絶えず新たな食料源を探し求めることができる。食物の価値は、IMMの幼体が食べてしまう食物、排泄する糞、およびこの幼体が移動した後に残すクモの巣状のものによって損なわれる。
【0007】
さらに、IMMは、他の貯蔵産物昆虫の先駆者となることが多い。未処理のIMMの侵入は、まだ来ていない他のSPIの侵入の指標でありうる(Mueller,2016)。最も普通に遭遇する5種の貯蔵産物昆虫(SPI)として、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella(ノシメマダラメイガ))、キマダラカツオブシムシ(Trogoderma variabile(キマダラカツオブシムシ))、コクヌストモドキ(Tribolium spp.(コクヌストモドキ種))、ヒラタムシ(Oryzaephilus spp.(ノコギリヒラタムシ種))、およびタバコシバンムシ(Lasioderma serricorne(タバコシバンムシ))があげられる(Mueller,1998;Hagstrum and Subramanyam,2006)。加工、輸送、および貯蔵におけるこれらの害虫による経済的損失は、1回の異物混入、産物リコール、消費者からの苦情/提訴、および害虫駆除処理あたり数百万ドルに及びうる(Arthur,2009)。依然として、これらの害虫を監視および検出するための効果的で低コストな方法は存在しない。
【0008】
いくつかのSPIフェロモンが識別されているが、短い保存寿命と製造コストのため市販されていない(Phillips et.al.,2000)。これらの化合物は種に特有であるが、貯蔵食物蛾の群およびTrogoderma complex(カツオブシムシ複合種)に含まれるものなどの種間の競争者を誘引することができる。単一のフェロモンである(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテートは、ノシメコクガで優勢なフェロモンであるが、Ephestia species(コナマダラメイガ類)の他の3種の食物蛾を誘引する。フェロモン化合物であるR,Z 14-メチル-8-ヘキサデセナールは、キマダラカツオブシムシ(Trogoderma variabile(キマダラカツオブシムシ))を誘引する主な成分であるが、検疫害虫の1種(ヒメアカカツオブシムシ、Trogoderma granarium(ヒメアカカツオブシムシ))を含む他の3種の一般的なTrogoderma species(カツオブシムシ類)もまた誘引する。コクヌストモドキのいくつかの種(Tribolium species(コクヌストモドキ類))は、1種類の化合物4,8-ジメチルデカナールに誘引され、ヒラタムシの2つの種(Oryzaephilus species(ノコギリヒラタムシ類))は(Z,Z)-3,6-ドデカジエン-11-オリドに誘引されるが、タバコシバンムシ類(Lasioderma serricorne(タバコシバンムシ))のフェロモンである(4S,6S,7S)-4,6-ジメチル-7-ヒドロキシノナ-3-オンは、この種に特異的である。
【0009】
さらに、可能性のある標的情報化学物質および/またはカイロモンに関し、そのような情報化学物質およびカイロモンは高分子量VOCである。よって、害虫が群がる貯蔵産物の上にあるヘッドスペース中の蒸気圧および濃度は低いであろうから、検出するのがより一層難しい。
【0010】
よって、多様なフェロモン濃度を検出および測定することができる方法、デバイス、およびシステムを用いて、害虫の存在/不存在、存在量、および場所を検出する際の変動性および不確実性をなくすことが望まれるであろう。また、類似の方法によって他の貯蔵食物昆虫の幼体を、その情報化学物質/カイロモンを感知することによって検出できる方法、デバイス、およびシステムを提供することが望まれるであろう。トレーラー、陸上/海洋コンテナ、バルクトート、袋詰め材料のパレット、または貯蔵室の中にいる最も一般的なSPIの存否を速やかに判定するために、閾値濃度を設定してもよい。建造物、壁の隙間、亀裂、および割れ目の中、または装置の中の、SPIが侵入した位置の特定およびその位置の正確な決定に役立ちうる、VOCの濃度勾配を検出する能力を提供することも求められるであろう。さらに、SPIモニタリングモデルから、活動に影響する要因としての昆虫の移動性および環境による影響の多くを解消するであろう携帯デバイスを提供することが望まれる。
参照による援用
開示の全てが参照により本明細書に援用される文献を以下に挙げる。
【0011】
Arthur F.H.Johnson J.A.Neven L.G.Hallman G.J.Follett P.A.(2009).Insect Pest Management in Postharvest Ecosystems in the United States of America.Outlooks on Pest Management,20:279-284.
【0012】
Hagstrum D.W.and Subramanyam B.(2006).Fundamentals of Stored-Product Entomology.St.Paul:AACC Int.
【0013】
Mueller,David K(1998).Stored Product Protection:A Period of Transition.Insects Limited,Indianapolis,Ind.
【0014】
Okumura,G.T.(1967).A Report of Canthariasis and Allergy Caused by Trogoderma(Coleoptera:Dermestidae).California Vector Views,Vol.14 No.3,pp.19-22.
【0015】
Phillips,T.W.,Cogan,P.M.and Fadamiro,H.Y.(2000).Pheromones in B.Subramanyam and D.W.Hagstrum(Eds.).Alternatives to Pesticides in Stored-Product IPM,pp.273-302 Kluwer Academic Publishers,Boston,MA.
【0016】
Resener,A.M.(1997).National Survey of Stored Product Insects.Fumigants and Pheromones,Issue 46,pp3-4.
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】Arthur F.H.Johnson J.A.Neven L.G.Hallman G.J.Follett P.A.(2009).Insect Pest Management in Postharvest Ecosystems in the United States of America.Outlooks on Pest Management,20:279-284.
【文献】Hagstrum D.W.and Subramanyam B.(2006).Fundamentals of Stored-Product Entomology.St.Paul:AACC Int.
【文献】Mueller,David K(1998).Stored Product Protection:A Period of Transition.Insects Limited,Indianapolis,Ind.
【文献】Okumura,G.T.(1967).A Report of Canthariasis and Allergy Caused by Trogoderma(Coleoptera:Dermestidae).California Vector Views,Vol.14 No.3,pp.19-22.
【文献】Phillips,T.W.,Cogan,P.M.and Fadamiro,H.Y.(2000).Pheromones in B.Subramanyam and D.W.Hagstrum(Eds.).Alternatives to Pesticides in Stored-Product IPM,pp.273-302 Kluwer Academic Publishers,Boston,MA.
【文献】Resener,A.M.(1997).National Survey of Stored Product Insects.Fumigants and Pheromones,Issue 46,pp3-4.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
簡単な説明
本明細書の種々の実施形態において、貯蔵産物の近傍領域からサンプリングされた標的流体フロー(例えば、空気サンプル)中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(「VOC」)の検出に基づいて、貯蔵産物(例えば、食物)における昆虫侵入を識別するための、低コストで高精度な方法、デバイス、およびシステムが開示される。開示されるコストが最小限で高精度な方法、システム、およびデバイスによって、産物が貯蔵されている環境中の昆虫幼体の情報化学物質/カイロモンまたは昆虫成体のフェロモンの、即時的で非侵襲的な検出の幅広い利用が可能になる。
【0019】
本開示の第1の実施形態により、標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCを検出することによって貯蔵産物における昆虫侵入を識別する方法が提供され、前記方法は、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含むデバイスを提供するステップ;1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーを、少なくとも第1動作温度に加熱するステップ;前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、標的流体フローと接触させるステップ;前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定するステップ;および前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度を決定するステップ、を含む。さらに、提供される前記センサーアレイの前記VOCセンサーのそれぞれは、第1面と第2面とを有する基板;前記基板の前記第1面上に形成された抵抗ヒーター回路;前記基板の前記第2面上に形成された感知回路;および前記第2面上の前記感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルムを含む。特定の実施形態において、前記方法は、流体フロー中のVOCマーカーをサンプリングした後、前記VOCセンサーのベースライン抵抗を初期ベースライン値に補正することを含んでもよく、これは前記標的VOCの各サンプリング後に、1つまたはそれを超えるVOCセンサーの前記動作温度を調節することによって実現しうる。
【0020】
本開示の別の実施形態により、標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCを検出するためのデバイスが提供され、前記デバイスは、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを備え、各VOCセンサーは、基板;前記基板の第1面上に形成された抵抗ヒーター回路;前記基板の第2面上に形成された感知回路;および前記基板の前記第2面上に形成された前記感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルムを含む。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態により、貯蔵産物における昆虫侵入を識別するためのシステムが提供され、前記システムは、センサーアレイを封入するテストチャンバー;流体フローを回収し、前記流体フローを前記テストチャンバーに送達するように構成された空気移送ユニット;および前記空気移送ユニットと前記センサーアレイに作動可能に接続されたコントローラ、を含む。前記センサーアレイは、複数のVOCセンサーを備え、前記コントローラは、前記空気移送ユニットを作動させて、標的領域から前記流体フローを回収し、前記流体フローを前記テストチャンバーに送達し;前記センサーアレイを作動させて、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーについてのコンダクタンスを測定し;前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;および前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、種々の要素および要素の配列の形態、ならびに種々のステップおよびステップの配列の形態を取りうる。図面は、単に好ましい実施形態を例示することを目的としており、本開示を限定するものと解釈すべきではない。
【0023】
図1図1は、本出願の1つの実施形態による、昆虫侵入を識別する方法を例示するフローチャートである。
【0024】
図2A図2A~2Bは、本出願のさらなる実施形態による、昆虫侵入を識別するさらなる方法を例示するフローチャートである。
図2B図2A~2Bは、本出願のさらなる実施形態による、昆虫侵入を識別するさらなる方法を例示するフローチャートである。
【0025】
図3図3は、本出願の1つの実施形態による、本明細書に開示された方法を実施するように構成されたシステムを例示するブロックダイアグラムである。
【0026】
図4図4A~4Bは、本出願のある特定の実施形態による、個々のVOCセンサーの第1面(図4A)および第2面(図4B)の説明図である。
【0027】
図5図5は、本出願の1つの実施形態による、ホルダーにつり下げられた個々のVOCセンサーの説明図である。
【0028】
図6図6は、本出願の1つの実施形態による、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイの代表的な側面断面図である。
【0029】
図7図7は、本出願の1つの実施形態による、侵入検出システムのブロックダイアグラムである。
【0030】
図8-1】図8A~8Dは、本出願の1つの実施形態による、種々の標的揮発性有機化合物に対するVOCセンサーアレイの感度を例示するグラフである。
図8-2】図8A~8Dは、本出願の1つの実施形態による、種々の標的揮発性有機化合物に対するVOCセンサーアレイの感度を例示するグラフである。
【0031】
図9-1】図9A~9Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第1VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図9-2】図9A~9Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵製品産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第1VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図9-3】図9A~9Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵製品産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第1VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
【0032】
図10-1】図10A~10Cは、本出願の別の実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第2VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図10-2】図10A~10Cは、本出願の別の実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第2VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図10-3】図10A~10Cは、本出願の別の実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第2VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
【0033】
図11-1】図11A~11Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第3VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図11-2】図11A~11Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第3VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図11-3】図11A~11Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第3VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
【0034】
図12-1】図12A~12Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第4VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図12-2】図12A~12Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第4VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図12-3】図12A~12Cは、本出願の1つの実施形態による、3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する第4VOCセンサーの応答を例示するグラフである。
【0035】
図13-1】図13A~13Dは、本出願の1つの実施形態による、異なる数の3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する4つのVOCセンサーの応答を例示するグラフである。
図13-2】図13A~13Dは、本出願の1つの実施形態による、異なる数の3つの標的貯蔵産物昆虫(「SPI」)の存在に対する4つのVOCセンサーの応答を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
以下の詳細および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有するものと定義される多数の用語に言及される。
【0037】
定義
【0038】
以下の詳細および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有するものと定義される多数の用語に言及される。以下の説明において、明確性のために特定の用語が用いられるが、それらの用語は図面における例示のために選択された実施形態の特定の構造を示すことのみを意図するものであり、開示の範囲を確定または限定することを意図するものではない。以下の図面および説明において、同様の数値の呼称は、同様の機能の要素を示すことを理解すべきである。さらに、図面は実際の縮尺ではないことを理解すべきである。
【0039】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかに反しないかぎり、複数の対象物も含む。
【0040】
用語「含む(comprising)」は、本明細書において、指定された要素/ステップが存在することが必要であり、他の要素/ステップが存在することも許されるものとして使用される。用語「含む(comprising)」は、指定された要素/ステップのみ存在することが許される用語「からなる(consisting of)」を含むものと解釈すべきである。
【0041】
数値は、同じ数の有効数字にしたときと同じ数値を含み、また、指定された値に対して、本出願において値を決定するために説明される形式の通常の測定技術における実験誤差未満の違いがある数値を含むものと理解すべきである。
【0042】
本明細書で開示される全ての範囲は、示された端点を含み、また、独立して組み合わせることができる(例えば、「2mm~10mm」という範囲は、端点である2mmおよび10mmを含み、また、そのなかの全ての中間値を含む)。
【0043】
用語「約」は、値の基本的な作用を変えることなく変化しうる任意の数値を包含させるために使用しうる。範囲と共に用いる場合、「約」は、2つの端点の確定的な値で規定される範囲も示し、例えば、「約2~約4」は、「2~4」という範囲も示す。より具体的には、用語「約」は、示された数値のプラスまたはマイナス10%を示してもよい。
【0044】
用語「ppm」および「ppb」は、それぞれ「百万分率(parts per million)」および「十億分率(parts per billion)」を示すものと理解すべきである。本明細書で用いられる場合、「ppm」、「ppb」などは、質量分率またはモル分率ではなく、体積分率を表す。例えば、1ppmという値は、1μV/Vと表してもよく、1ppbという値は、1nV/Vと表してもよい。
【0045】
本開示は、以下の詳細な説明、およびそこで議論される種々の図面を参照することによって、より容易に理解されうる。
【0046】
方法
【0047】
本明細書において、種々の貯蔵産物昆虫(「SPI」)の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(「VOC」)(例えば、ある特定の情報化学物質、カイロモン、および/またはフェロモンなど)の存在を検出することによって、貯蔵産物に昆虫侵入があるかどうかを決定する、高感度かつ高選択性の方法が開示される。
【0048】
図1を参照すると、標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物を検出することによって、貯蔵産物における昆虫侵入を識別する方法100が提供される。前記方法は、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含むデバイスを提供すること(S110);1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーを、少なくとも第1動作温度に加熱すること(S115);前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、標的流体フローと接触させること(S120);前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定すること(S125);および前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCのガス成分濃度を決定すること(S130)、を含む。前記方法100の第1の実施形態によれば、前記センサーアレイの前記各VOCセンサーは、基板;抵抗ヒーター回路;感知回路;および前記感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルムを含む。いくつかの実施形態において、前記抵抗ヒーター回路は、前記基板の第1面上に形成されてもよく、前記感知回路は、前記基板の第2面上に形成されてもよく、前記化学感受性フィルムは、前記基板の前記第2面上の前記感知回路を覆うように形成されてもよい。
【0049】
特定の実施形態において、前記方法100は、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを標的流体フローと接触させた後、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについての信号コンダクタンスを測定することを含む。すなわち、前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての信号コンダクタンスと、対応する前記各VOCセンサーのベースラインコンダクタンスとの間の差異に基づいて、前記コンダクタンス変化値のセットを決定してもよい。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超えるVOCセンサーについての前記ベースラインコンダクタンスは、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーが、標的VOCを一切含まない大気中にある状態で測定される。
【0050】
好ましい実施形態において、前記標的流体フローは、起こりうる昆虫侵入について評価される貯蔵産物の近傍内から採取された空気サンプルである。すなわち、前記標的流体フローは、対象となる貯蔵産物の上にあるヘッドスペースからのガスサンプルであってもよい。
【0051】
方法100は、S105で開始しS135で終了するが、特定の実施形態において、方法100は、評価される貯蔵産物(単数または複数)の複数の近傍内から、複数の標的流体フロー(例えば、空気サンプル)をサンプリングすることによって繰り返してもよい(例えば、S110~S130のステップを繰り返す)。すなわち、方法100は、貯蔵産物(単数または複数)から複数の距離だけ離れた位置(例えば、貯蔵産物から約1フィート未満の距離の位置;貯蔵産物から約1フィートと2フィートの間の距離の位置;貯蔵産物から約2フィートと3フィートの間の距離の位置;その他)における1つまたはそれを超える標的流体フローをサンプリングすることによって、起こりうる昆虫侵入の密度勾配を識別しうる。
【0052】
さらなる実施形態において、前記1つまたはそれを超える標的VOCは、SPIなどの、1つまたはそれを超える昆虫に関係する情報化学物質、カイロモン、および/またはフェロモンである。特に、前記1つまたはそれを超える標的VOCは、例えば、コクヌストモドキ、ノコギリヒラタムシ、キマダラカツオブシムシ、ノシメマダラメイガ、および/またはタバコシバンムシに関係する、情報化学物質、カイロモン、および/またはフェロモンであってもよい。特定の実施形態において、流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCのうちの少なくとも1つは、4,8-ジメチルデカナール;(Z,Z)-3,6-(11R)-ドデカジエン-11-オリド;(Z,Z)-3,6-ドデカジエン-オリド;(Z,Z)-5,8-(11R)-テトラデカジエン-13-オリド;(Z)-5-テトラデセン-13-オリド;(R)-(Z)-14-メチル-8-ヘキサデセナール;(R)-(E)-14-メチル-8-ヘキサデセン-アール;γ-エチル-γ-ブチロール-アクトン;(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテート;(Z,E)-9,12-テトラ-デカジエン-1-オール;(Z,E)-9,12-テトラデカジエナール;(Z)-9-テトラデセニルアセテート;(Z)-11-ヘキサ-デセニルアセテート;(2S,3R,1’S)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(2S,3R,1’R)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(4S,6S,7S)-7-ヒドロキシ-4,6-ジメチルノナン-3-オン;(2S,3S)-2,6-ジエチル-3,5-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン;2-パルミトイル-シクロヘキサン-1,3-ジオン;および2-オレイル-シクロ-ヘキサン-1,3-ジオンからなる群から選択されてもよい。
【0053】
図2Aおよび2Bを参照すると、本開示のさらなる実施形態により、標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物を検出することによる、貯蔵産物における昆虫侵入を識別する方法200が提供される。前記方法200は、S202で開始する。
【0054】
ステップS04において、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含むデバイスが提供される。前記センサーアレイの前記VOCセンサーは、それぞれ、基板;抵抗ヒーター回路;感知回路;および前記感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルム、を含む。いくつかの実施形態において、前記抵抗ヒーター回路は、前記基板の第1面上に形成されてもよく、前記感知回路は、前記基板の第2面上に形成されてもよく、前記化学感受性フィルムは、前記基板の前記第2面上の前記感知回路を覆うように形成されてもよい。
【0055】
特定の実施形態において、前記センサーアレイは、複数の区別されたVOCセンサーを含む。すなわち、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーにおける表面組成物は、前記化学感受性フィルム(すなわち、活性層)中に触媒材料を含有させることによって変化させられてもよい。言い換えると、1つまたはそれを超えるVOCセンサーの化学感受性フィルムは、ドーピングエージェントを含みうる。いくつかの実施形態において、前記ドーピングエージェントは、例えば、遷移金属であってもよい。例えば、前記ドーピングエージェントは、白金;パラジウム;モリブデン;タングステン;ニッケル;ルテニウム;およびオスミウムからなる群から選択されてもよい。
【0056】
ステップS206において、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーは、少なくとも第1動作温度に加熱される。特定の実施形態において、動作温度は、約180℃~約400℃である。さらなる実施形態において、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーの動作温度は、前記方法の後続するステップの間、維持される。特に、各VOCセンサーの加熱回路は、前記VOCセンサーの動作中、前記VOCセンサーの温度を測定および制御するために利用されてもよい。
【0057】
方法200の特定の実施形態において、前記方法は、1つまたはそれを超える校正ステップ208を含み、前記校正ステップ208は、1つまたはそれを超える複数の前記VOCセンサーを、標的VOCを一切含まないサンプル流体フローと接触させること(S210);1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのベースラインコンダクタンスを測定すること(S212);必要に応じて、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーとの接触から、前記流体フローを取り除くこと(S216);前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、既知の濃度の標的VOCを含む制御流体フローと接触させること(S218);前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての制御コンダクタンスを測定すること(S220);前記VOCセンサーの測定した前記制御コンダクタンスと、前記制御流体フロー中の前記標的VOCの既知の濃度に基づいて、固有ネットコンダクタンス値を計算すること(S222);および複数の制御流体フローについて、少なくともステップS218~S222を繰り返すこと(S226)、を含む。前記校正ステップ208は、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーとの接触から、前記流体フローを取り除くこと(S228);および少なくとも1つの標的VOCとの接触後、1つまたはそれを超えるVOCセンサーのベースラインコンダクタンスを調節すること(S230)、をさらに含んでもよい。
【0058】
ステップS210において、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーを、サンプル流体フローと接触させる。好ましい実施形態において、前記サンプル流体フローは、方法200による試験の対象であってもよい標的VOCを一切含まない、ある体積の空気である。
【0059】
ステップS212において、前記サンプル流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのベースラインコンダクタンスは、前記VOCセンサーの前記感知回路を用いて測定する。前記VOCセンサーの前記感知回路を覆うように形成された前記フィルムは化学感受性(例えば、半導電性)であるため、前記材料中を流れる電流はフィルムの伝導帯中の電子に起因し、望ましくないおよび/または標的となる化合物(例えば、標的VOC)の存在による影響を受けうる。よって、ステップS206における動作温度が得られた後、かつマーカーガスを含まないガスサンプル(すなわち、サンプル流体フロー)(すなわち、少なくとも1つの標的VOCを含む流体フロー)と接触した状態で、VOCセンサー抵抗を測定し、それをベースライン抵抗またはベースラインコンダクタンスとして記録する。いくつかの実施形態において、ベースラインコンダクタンス
【数1】
のセットを決定し、前記ベースラインコンダクタンスのセットは、前記複数のVOCセンサーのそれぞれについてのベースラインコンダクタンス(例えば、
【数2】
)を含む。
【0060】
ステップS216において、前記サンプル流体フローは、前記センサーアレイの前記VOCセンサーとの接触から取り除かれる。特定の実施形態において、これは、前記センサーアレイおよび/または1つまたはそれを超える前記VOCセンサーを収容するチャンバーまたはリアクターをパージすることを含んでもよい。
【0061】
ステップS218において、1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、既知の濃度の少なくとも1つの標的VOCを含む制御流体フロー(例えば、マーカーガス)と接触させる。
【0062】
ステップS220において、前記制御流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての制御コンダクタンスを測定する。前記制御流体フローとの接触によって、化学感受性フィルムによる伝導に利用される電子をより多くまたはより少なくすることが可能になりうるため、前記VOCセンサーの抵抗/コンダクタンスが変化する。
【0063】
よって、ステップS222において、前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーにおける固有ネットコンダクタンス値は、前記VOCセンサーの測定した前記試験コンダクタンスと、前記制御流体フロー中の前記標的VOCの既知の濃度に基づいて決定される。本明細書で検討および開示されるように、前記コンダクタンス変化の量は前記ガスの濃度に比例し、本明細書で用いられる前記固有ネットコンダクタンス(「SNC」)は比例係数を表す。特定の実施形態において、前記制御流体フローの第1の標的VOC濃度は、約10ppb~約400ppbである。好ましい実施形態において、前記制御流体フローの標的VOC濃度は、約200ppbである。
【0064】
その結果として生じる、ベースラインコンダクタンスと、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサーについて測定される前記制御コンダクタンスとの間の変化を決定し、特定の(すなわち、既知の)濃度で割ることによって、「nano-mhos/part per billion」または「nmho/ppb」で一般に表される単位のSNC値(すなわち、そのガスについてのそのチップの感度の尺度)が得られる。各チップは、その用途で対象とする標的ガスごとに異なるSNCを有する。
【0065】
さらなる校正のために、ステップS226において、追加の制御流体フローについて少なくともステップS218~S222を繰り返して、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーについての複数の固有ネットコンダクタンス(「SNC」)値を得てもよい(前記各VOCセンサーについての前記各固有ネットコンダクタンス値は、異なる標的VOCに対応する)。いくつかの実施形態において、前記複数のSNC値は、SNC値
【数3】
のセットであり、前記複数のVOCセンサーのそれぞれについての1つまたはそれを超える標的VOCに対応するSNC値(例えば、第1VOCセンサーについて、
【数4】
第2VOCセンサーについて、
【数5】
等)を含む(式中、Xは、特定の標的VOCを表す)。
【0066】
方法200は、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーのベースラインコンダクタンス/抵抗を調節することを含むステップ(S230/S232)も含んでもよい。例えば、標的VOCと接触させた後に、VOCセンサーは、標的VOCとの接触前のベースラインコンダクタンスとは異なる、次の(すなわち、接触後の)ベースラインコンダクタンスを有してもよい。特定の実施形態において、このようなベースラインコンダクタンスの変化は、ステップS230/S232における標的VOCとの接触後にベースラインコンダクタンスを調節することによるものと評価されうる。校正208の間、前記制御流体フローは(例えば、センサーアレイチャンバーから)取り除かれS228、前記VOCセンサーのコンダクタンスを、ステップS230において、前記各VOCセンサーのコンダクタンスを測定して前記VOCセンサーの接触後コンダクタンスを決定すること、前記接触後コンダクタンスを前記ベースラインコンダクタンス214と比較すること、および第2動作温度における前記各VOCセンサーのコンダクタンスが、接触前の対応する前記ベースラインコンダクタンス214と合致するように、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーを、少なくとも第2動作温度に加熱すること、によって調節してもよい。前記各VOCセンサーについての前記第2動作温度は、対応するVOCセンサーの第1動作温度より高くても低くてもよく、前記VOCセンサーの測定された接触後コンダクタンスに基づく。
【0067】
図2Bに移って、校正ステップ208の後、前記VOCセンサーのベースラインコンダクタンスを、ステップS232において、標的VOCの前記センサーアレイチャンバーをクリーニングすること、1つまたはそれを超えるVOCセンサーのコンダクタンスを測定すること、測定した前記コンダクタンスを、対応するベースラインコンダクタンスと比較すること、および第2動作温度における前記各VOCセンサーのコンダクタンスが、前記対応するベースラインコンダクタンス214と合致するように、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーを、少なくとも第2動作温度に加熱すること、によって調節してもよい。
【0068】
調節ステップS232または加熱ステップS206に続いて、ステップS234において、1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、標的流体フローと接触させる。特定の実施形態において、前記標的流体フローは、起こりうる昆虫侵入について評価する貯蔵産物の近傍内から採取された空気サンプルである。そうであるから、前記標的流体フローは、1つまたはそれを超える昆虫(例えば、SPI)に関連する1つまたはそれを超える標的VOC、例えば情報化学物質、カイロモン、および/またはフェロモンなどを含んでもよい。例えば、ある特定のSPIについての、いくつかのフェロモンおよび情報化学物質を、以下の表1および表2に列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【0069】
ステップS236において、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを前記標的流体フローと接触させた後、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについて、信号コンダクタンスが測定される。
【0070】
次いで、ステップS238において、前記センサーアレイの1つまたはそれを超える前記VOCセンサーについて、コンダクタンス変化値({ΔK})のセットが決定される。特定の実施形態において、前記各VOCセンサーについて、前記コンダクタンス変化値は、以下に示すようにして決定してもよい:
【数6】
(式中、iは整数であり、
【数7】
はVOCセンサーiについてのコンダクタンス変化値であり、
【数8】
は標的流体フロー存在下で測定したVOCセンサーiの信号コンダクタンスであり、
【数9】
はVOCセンサーiについてのベースラインコンダクタンスである)。
【0071】
ステップS240において、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度([X])は、前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて決定される。特定の実施形態において、前記標的流体フロー中に、他の背景ガスおよび/または干渉ガスに加えて、1つを超える標的VOCが存在することがあり、そのことが分析を困難にする。特定の実施形態において、前記標的流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度([X])は、前記コンダクタンス変化値のセット、および前記各VOCセンサーについての前記1つまたはそれを超えるSNCに基づいて決定される。さらなる実施形態において、前記標的流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCについての前記ガス成分濃度([X])は、例えば、以下に示すような連立方程式を解くことによって決定される:
【数10】
(式中、
【数11】
は、センサー「i」について測定されたコンダクタンス変化であり、「i」は、1~4の範囲であり、SNCijは、ガス(例えば、標的VOC)「j」と接触したときのセンサー「i」の「固有ネットコンダクタンス」であり、「j」は、ガスまたはガスカテゴリーA、B、C、またはDであり、[X]は、ガスの体積/体積で表した、ガスA、B、C、またはDの濃度(すなわち全ての大気1リットルあたりのガスのリットル数)である。
【0072】
上記の説明では4つの標的VOC(すなわち、A、B、C、およびD)および4つのセンサー(すなわち、1、2、3、および4)だけが例示されているが、分析において存在する標的VOCの数、およびVOCセンサーの数は、利用法ごとに、または用途ごとに変わってもよく、4つだけに限られない。その結果、ある特定の流体フロー中に存在するいくつかの標的VOCならびに/または背景ガスおよび干渉ガスについての濃度を決定するという難問が可能となる。
【0073】
いくつかの実施形態において、方法200は、分析結果を伝達するようにユーザーインターフェースを作動させることをさらに含んでもよい(S242)。すなわち、ステップS204において提供されるデバイスは、標的流体フローの分析結果を随伴ユーザーに対して表示するように構成されたユーザーインターフェースをさらに含んでもよい。例えば、前記ユーザーインターフェースは、昆虫侵入が存在すること(1つまたはそれを超える昆虫(例えば、SPI)の存在を含む)を表示、またはその他の方法で示すように構成されていてもよい。侵入の存在は、所定の閾値濃度に基づいて示されてもよく、前記所定の閾値濃度は、貯蔵設備の種類(例えば、トレーラー、陸上/海洋コンテナ、バルクトート、袋詰め材料のパレット、または貯蔵室の中)、または試験される貯蔵産物の種類に関係していてもよい。前記ユーザーインターフェースは、さらに、検出された標的VOCに基づいて、昆虫の存在レベル(例えば、侵入の程度)を表示、またはその他の方法で示すように構成されていてもよい。
【0074】
特定の実施形態において、前記ユーザーインターフェースは、例えばTFT液晶ディスプレイスクリーン、IPS液晶ディスプレイスクリーン、静電容量式タッチスクリーン液晶ディスプレイ、LEDスクリーン、OLEDスクリーン、AMOLEDスクリーンなどの、専用スクリーンであってもよい。さらなる実施形態において、前記ユーザーインターフェースは、例えばBluetooth(登録商標)、BLE、Wi-Fi、3G、4G、5G、LTEなどの、有線または無線通信プロトコルを含んでいてもよく、かつ、前記ユーザーインターフェースは、分析結果を、通信プロトコルによって、随伴ユーザーの2次デバイス(例えば、移動電話、タブレット、コンピュータなど)に伝達するように構成されていてもよい。
【0075】
好ましい実施形態において、標的流体フローは、起こりうる昆虫侵入について評価する貯蔵産物の近傍内から採取された空気サンプル(または、容量)である。ステップS244において、ステップS232~S242を、評価される貯蔵産物(単数または複数)の複数の近傍の内から、複数の標的流体フロー(例えば、空気サンプル)をサンプリングすることによって繰り返してもよい。すなわち、方法200は、例えば、前記貯蔵産物(単数または複数)から異なる距離だけ離れた位置の2つまたはそれを超える標的流体フロー(例えば、第1の標的流体フロー、第2の標的流体フロー、第3の標的流体フローなど)にわたる標的VOCの濃度勾配を検出することによって、昆虫侵入の原因を識別することも含んでもよい。
【0076】
方法200のさらなる実施形態において、ステップS204において提供される前記デバイスは、前記センサーアレイと前記ユーザーインターフェースに作動可能に接続されたコントローラも含んでもよく、前記コントローラは、上記した方法200の1つまたはそれを超えるステップを実行するように構成されたプロセッサと、上述した1つまたはそれを超えるデータタイプを格納するように構成されたメモリーと、を含む。さらに、前記メモリーは、方法200の1つまたはそれを超える前記ステップを実行するための命令を格納するように構成されていてもよい。
【0077】
ステップS250において、方法200は終了する。
【0078】
本明細書で説明される方法100、200を実行するために用いられるデバイスのこれらの態様および他の態様は、以下の議論およびそこで議論される種々の図面を参照することによってより容易に理解できるであろう。
【0079】
デバイスおよびシステム
【0080】
この項において、上記の方法100、200を実行するためのデバイスおよびシステムが開示される。特に、ここで議論されるのは、標的流体フロー中の、種々の貯蔵産物昆虫(「SPI」)の、1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(「VOC」)(例えばある特定の情報化学物質、カイロモン、および/またはフェロモンなど)を検出するための、高感度かつ高選択性のデバイスである。さらに、前記デバイスおよびシステムは、容易に携帯でき手で持てるほど小型軽量でありうる。
【0081】
図3を参照すると、本出願の1つの実施形態により本明細書で開示される方法を実行するように構成されたデバイス300およびシステム302を例示するブロックダイアグラム。特に、デバイス300は、複数のVOCセンサー306を有するセンサーアレイ304を含む。センサーアレイ304の複数のVOCセンサー306は、約2~約10個(3個、4個、5個、および6個を含む)のVOCセンサーを含んでいてもよい。特定の実施形態において、センサーアレイ304は、チャンバー(またはリアクター)308に封入されていてもよく、センサー306は、チャンバー308内で要求される大気に曝露される(すなわち、接触する)。前記チャンバーは、チャンバーの外からの流体フロー314を受け入れるように構成された入口310、およびチャンバー308から流体フロー316を放出するように構成された出口312を有していてもよい。
【0082】
センサーアレイ304の個々のVOCセンサー306の第1面(図4A)および第2面(図4B)を例示する図4Aおよび図4Bに示すように、VOCセンサー306は、第1面320と第2面322とを有する基板318を含んでいてもよい。基板318は、例えば、セラミック材料であってもよく、アルミナ(Al)ウエハーまたはシリコンウエハーであってもよい。特定の実施形態において、基板318は、全体の幅が約5mm~約20mm、全体の高さが約4.3mm~約20mm、および全体の厚さが約0.32mm~約0.65mmであってもよい。VOCセンサー306は、基板318の第1面320上に形成された抵抗ヒーター回路、基板318の第2面322上に形成された感知回路326、および基板318の第2面322上の感知回路326を覆うように形成された化学感受性フィルム328を含んでいてもよい。
【0083】
抵抗ヒーター回路324は、基板318上に、ヒーター回路材料から、例えばフォトリソグラフィを用いて形成されてもよい。いくつかの実施形態において、前記ヒーター回路材料は、白金を含んでいてもよい。特定の実施形態において、前記ヒーター回路材料は、約70重量%~約95重量%の白金を含む白金インクであってもよい。
【0084】
前記ヒーター回路材料は、例えば、基板318上に、所望のパターンにフォトリソグラフィされうる。特定の実施形態において、センサーアレイ304の複数のVOCセンサー306の少なくとも1つのうちの抵抗ヒーター回路324は、基板318の一部を横切る蛇行(すなわち、曲がりくねる)パターンを有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、抵抗ヒーター回路324は、長手方向配線幅330が約0.288mm~約0.352mmであってもよい。さらなる実施形態において、抵抗ヒーター回路324は、長手方向配線間隔332が、例えば、約0.333mm~約0.407mmである。なおもさらなる実施形態において、抵抗ヒーター回路324の少なくとも一部は、配線の高さ334が約3.80mm~約3.96mm、配線の外幅336が約4.40mm~約4.58mm、および配線の厚さ(すなわち、深さ)が約0.19mm~約0.24mm(約0.21mmを含む)であってもよい。
【0085】
VOCセンサー306基板318の第1面320は、1つまたはそれを超える接点338、340も含んでいてもよい。例えば、図4Aに示すように、基板318の第1面320は、少なくとも2つの接点338、340を含み、接点338、340は、それぞれ抵抗ヒーター回路324の部分(例えば、反対側の端部)342、344に作動可能に接続されている。
【0086】
ここで図4Bに移って、感知回路326は、基板318上に、感知回路材料から、例えばフォトリソグラフィを用いて形成されてもよい。いくつかの実施形態において、前記感知回路材料は、白金を含んでいてもよい。特定の実施形態において、前記感知回路材料は、約70重量%~約95重量%の白金を含む白金インクを含んでいてもよい。
【0087】
前記感知回路材料は、例えば、基板318上に、所望のパターンにフォトリソグラフィされうる。特定の実施形態において、感知回路326は、1対の延在する指交差状接点(すなわち、近接しているがつながっていない、互い違いの接点)を形成する第1感知素子346と第2感知素子348とを含む。第1感知素子346は、複数の延在する接点350を含んでいてもよく、各接点350の横配線幅354は約0.162mm~約0.198mm、横配線間隔356は約0.738mm~約0.902mm、および配線の厚さ(すなわち、深さ)は約0.19mm~約0.24mmである。例えば、接点350は、横配線幅354が約0.18mm、横配線間隔356が約0.82mm、および配線の厚さが約0.21mmである。
【0088】
同様に、第2感知素子348は、複数の延在する接点352を含んでいてもよく、各接点352は、横配線幅358が約0.162mm~約0.198mm、横配線間隔360が約0.738mm~約0.902mm、および配線の厚さ(すなわち、深さ)が約0.19mm~約0.24mmである。例えば、接点354は、横配線幅358が約0.18mm、横配線間隔360が約0.82mm、および配線の厚さが約0.21mmである。
【0089】
いくつかの実施形態において、第1感知素子346は少なくとも3つの接点350を、第2感知素子348は少なくとも3つの接点352を含んでいてもよく、第1感知素子346の各接点350と第2感知素子348の各接点352との間の横配線間隔362は、約0.288mm~約0.352mm(約0.32mmを含む)であってもよい。さらに、各接点350、352の長手方向配線長364は、約3.0mm~約4.0mm(約3.8mmを含む)であってもよい。
【0090】
基板318の第2面322は、感知回路326の部分370、372に作動可能に接続されていてもよい、1つまたはそれを超える接点366、368も含んでいてもよい。
【0091】
加えて、感知回路326の接点350、352にコーティング組成物でオーバーコーティングを施し、化学感受性フィルム328を形成してもよい。いくつかの実施形態において、前記コーティング組成物はゲルを含んでいてもよく、フィルム328は、前記コーティング組成物を基板318の部分(例えば、接点350、352を覆う部分)に塗布し、前記コーティング組成物を、例えば約400℃~約900℃(約500℃~約700℃を含む)のような高温で乾燥および焼成することによって形成されてもよい。
【0092】
特定の実施形態において、フィルム328は、例えば酸化スズ(SnO)半導体フィルムなどの金属酸化物フィルムであってもよい。このような実施形態において、前記コーティング組成物は、水性ゲルを用いて製造した酸化スズを含みうる。ある特定の実施形態において、前記ゲルは、SnClで形成した酸性スズ溶液を中和してSnOゲルを生じさせることを含むゾル・ゲル法によって製造してもよい。次いで、例えば、基板318のセンサー面322上に前記SnO水性ゲルをスピンコーティングし、センサー306を第1の温度で乾燥させ、次いで第2の温度で焼成することによって、基板318上にナノ結晶酸化スズ(SnO)フィルム328を形成する。特定の実施形態において、乾燥を行う前記第1の温度は、約100℃~約150℃であり、好ましくは約130℃であってもよい。さらなる実施形態において、焼成を行う前記第2の温度は、約400℃~約900℃であり、好ましくは約700℃~約800℃であってもよい。重要なことは、これらの温度範囲によって、化学感受性フィルム328に優れた感度をもたらす孔径分布と粒径分布が生じることである。
【0093】
前記標的VOCの化学構造および各VOCセンサー306の作動条件に起因して、前記標的VOC(例えば、マーカーガス)が化学感受性フィルム328と接触した場合に、フィルム328の伝導帯において利用可能な電子数が影響を受けうる(すなわち増加または減少)。特定の実施形態において、1つまたはそれを超える前記標的VOCは「還元性ガス」であってもよく、前記還元性ガスは、フィルム328の前記伝導帯に追加の電子を供与し、それによってフィルム328の抵抗を減少させ、これがフィルム328のコンダクタンスの変化として測定される。ある特定の標的フェロモン、情報化学物質、およびカイロモンは、6員炭素環と、1つまたはそれを超えるカルボニル基(-C=O)を含んでいてもよい。そこは過剰な電子密度が存在する分子内の領域となり、これが半導体フィルム328との相互作用を可能にし、電荷担体をフィルム328の伝導帯に与える(すなわち、フィルム328の抵抗が減少する)。2つの情報化学物質についての化学構造を下記表3に示す。
【表3】
【0094】
好ましい実施形態において、センサーアレイ304は、複数の異なるVOCセンサー306を含む。すなわち、1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサー306の構造は異なっており、特定の検出ニーズに最適化されている。例えば、フィルム328を形成する前記コーティング組成物は、1つまたはそれを超える触媒またはドーパント(例えば、ドーピングエージェント)を含んでいてもよく、それらはゲルコーティング組成物を製造している間に添加してもよい。いくつかの実施形態において、前記コーティング組成物は、ドーピングエージェントを含む。いくつかの実施形態において、前記ドーピングエージェントは、例えば、遷移金属であってもよい。例えば、前記ドーピングエージェントは、白金;パラジウム;モリブデン;タングステン;ニッケル;ルテニウム;およびオスミウムからなる群から選択されてもよい。ドーピングエージェントをVOCセンサー306のフィルム328に添加することによって、各VOCセンサー306は、所定のガスまたは標的VOCに最適化されうる。特定の実施形態において、デバイス300は、複数のVOCセンサー306を含んでいてもよく、前記VOCセンサー306の少なくとも1つは、触媒またはドーパント(すなわち、ドーピングエージェント)の添加によって特定のガスまたは標的VOCのために最適化される。さらなる実施形態において、デバイス300内に存在する各VOCセンサー306は、触媒またはドーパント(すなわち、ドーピングエージェント)の添加によって特定のガスまたは標的VOCのために最適化される。例えば、特定の実施形態において、センサーアレイ304は、IMM幼体の情報化学物質のために最適化された第1VOCセンサー306、IMM成体のフェロモンのために最適化された第2VOCセンサー306、および可能性がある干渉ガスおよび/または背景ガスのために最適化された3つ以下のVOCセンサー306を含んでいてもよいが、他の組み合わせ、および他の数のVOCセンサー306も意図される。可能性のある干渉ガスおよび/または背景ガスは、例えば、炭化水素、アルコール、エステル、および/またはアルデヒドを含んでいてもよい。
【0095】
デバイス300の各VOCセンサー306は、チャンバー308に入る流体フローに化学感受性フィルム328が曝露されうるように、チャンバー308内に配置されてもよい。図5を参照すると、特定の実施形態において、各VOCセンサー306を、例えば、ワイヤーボンディング502、504、506、50、510、512を用いて、センサー306を支え、かつセンサー306の接点340、接点342、接点366、接点368それぞれをセンサーホルダー500の接点514、接点516、接点518、接点520、接点522、接点524に接触するように、ホルダー500内につり下げてもよい。
【0096】
さらに図6を参照すると、本開示のある特定の態様により、デバイス300の側面図が示される。特に、デバイス300は、チャンバー308内にセンサーホルダー500によってつり下げられている6つのVOCセンサー306(見えない)を含むセンサーアレイ304を例証している。さらに、いくつかの実施形態により、各センサーホルダー500の部分526は、ホルダー500とVOCセンサー306をデバイス300の回路基板530に作動可能に接続しているアダプター528を、作動可能に係合していてもよく、これが、例えば、電力がVOCセンサー306に供給され、測定が行われることを可能にする。
【0097】
言い換えると、センサーアレイ304は、上述した方法の1つまたはそれを超えるステップを実行するように構成されたコントローラ374に、作動可能に接続されていてもよい。特に、コントローラ374は、1つまたはそれを超える複数のVOCセンサー306を少なくとも第1動作温度に加熱し;1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサー306のコンダクタンスを測定し;流体フローと接触させた、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサー306のそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;および前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されていてもよい。
【0098】
図3に戻り、本出願の種々の態様にしたがって、侵入検出システム302の追加要素が説明される。システム302は、貯蔵産物の昆虫侵入を識別するために提供され、システム302は、上述したように、センサーアレイ304を含む。さらに、特定の実施形態において、システム302は、センサーアレイ304を封入するテストチャンバー308、空気移送ユニット376、および空気移送ユニット376とセンサーアレイ304に作動可能に接続されたコントローラ374を含む。
【0099】
空気移送ユニット376は、種々の実施形態において、システム302を通る流体フローを制御するためのバルブ378、システム302の外から流体フローを回収(または、引き込む)し、システム302を通る前記流体フローを送達(または、押し出す)するためのポンプ380、および空気移送ユニット376によって回収された流体の量(例えば、体積)を測定するための流体フローセンサー382を含んでいてもよい。特定の実施形態において、流体フローセンサー382は、マスフロー制御バルブまたは差圧変換器であってもよい。さらなる実施形態において、バルブ378とポンプ380は、ユーザーが作動させてもよい。すなわち、システム302の随伴オペレーターが、空気移送ユニット376を用いて、外部流体フローの回収を指示(例えば、物理的に始動)してもよい。
【0100】
空気移送ユニット302は、また、システム302の外からの流体フロー384の流体フロー流路を、デバイス300の入口310に入るフロー314に決定し、およびデバイス300の出口312を出るフロー316に決定してもよい。流体フローの部分314、316、384は、ポリマーチューブなどの流体フローキャリアを通して送られてもよい。
【0101】
また、空気移送ユニット376は、コントローラ374が空気移送ユニット376を作動させて、チャンバー308から流体フローを回収し、前記流体フローをチャンバー308に送達するように、コントローラ374に作動可能に接続されていてもよく、前記流体フローは、VOCセンサー306と流体接触していてもよい。特定の実施形態において、コントローラ374は、例えば、システム302に入る流体フローの量(例えば、体積)を測定し、測定した量が所定の閾値に達したら流体(例えば、空気)の吸引を止めるように空気移送ユニット376(例えば、ポンプ380および/またはバルブ378)に命令してもよい。いくつかの実施形態において、前記所定の閾値は、デバイス300が流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCの存在を検出し、測定するために十分な体積である。
【0102】
システム302のコントローラ374は、空気移送ユニット376とセンサーアレイ304に作動可能に接続されていてもよく、かつプロセッサおよびメモリーを含んでいてもよい。コントローラ374は、さらに、空気移送ユニット376を作動させてシステム302の外から流体フロー(例えば、流体フロー378)を回収し、前記流体フロー(例えば、流体フロー314)をテストチャンバー308に送達し(前記複数のVOCセンサー306は、流体フロー314と流体接触している);センサーアレイ304を作動させて、1つまたはそれを超えるVOCセンサー306を少なくとも第1動作温度に加熱し、かつ1つまたはそれを超える前記複数のVOCセンサー306についてのコンダクタンスを測定し;前記1つまたはそれを超えるVOCセンサー306のそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;そして前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記流体フロー314中の1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されていてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、システム302は、ユーザーインターフェース要素380をさらに含む。ユーザーインターフェース380は、コントローラ374に作動可能に接続されていてもよく、前記コントローラ374は、ユーザーインターフェース380を作動させて、実行した試験の結果を、システム302によって、随伴ユーザーに対して表示および/または伝達するように構成されていてもよい。ユーザーインターフェース380は、例えばTFT液晶ディスプレイスクリーン、IPS液晶ディスプレイスクリーン、静電容量式タッチスクリーン液晶ディスプレイ、LEDスクリーン、OLEDスクリーン、AMOLEDスクリーンなどを含むディスプレイなどの、システム302のユーザーまたはオペレーターが見ることができる専用ディスプレイ382であってもよい。さらなる実施形態において、ユーザーインターフェース380は、例えばBluetooth(登録商標)、BLE、Wi-Fi、3G、4G、5G、LTEなどの、有線または無線通信プロトコル384を含んでいてもよく、かつ、ユーザーインターフェース380は、分析結果を、通信プロトコルによって、随伴ユーザーの2次デバイス386(例えば、移動電話、タブレット、コンピュータなど)に伝達するように構成されていてもよい。
【0104】
システム302は、空気移送ユニット376、デバイス300、コントローラ374、およびユーザーインターフェース380のうちの少なくとも1つに作動可能に接続される電源388も含んでいてもよい。電源388は、システム302の1つまたはそれを超える要素に電力を供給するように構成されていてもよく、また、コントローラ374は、電源388を作動させるように構成されていてもよい。特定の実施形態において、電源388は、システム302に組み込まれていてもよい。さらなる実施形態において、電源388は、着脱式外部アクセサリであってもよい。いくつかの実施形態において、電源388は、充電式電源388であり得る。
【0105】
ここで、上述したシステムの種々の要素を、図7を参照してさらに詳細に説明する。示されているように、図7は、例えば、1つまたはそれを超える標的VOCの存在の検出およびレベルの測定によって、貯蔵産物における昆虫侵入を識別するためのシステム700のブロックダイアグラムを図示する。システム700は、プロセッサ702を有するコントローラ374を含むセンサーアレイ306、メモリー704、および1つまたはそれを超える入出力(I/O)インターフェース706、708を含む。バス710は、プロセッサ702、メモリー704、およびI/Oインターフェース706、708を互いに作動可能に接続していてもよい。メモリー704は、本明細書で開示される方法の、1つまたはそれを超えるステップを実行するための命令712を格納し、プロセッサ702は、メモリー704と通信し、前記1つまたはそれを超えるステップを実施するための命令を実行するように構成されていてもよい。
【0106】
図示されているように、システム700は、複数のVOCセンサー306を含むセンサーアレイ304、ならびに空気移送ユニット376およびユーザーインターフェース380も含んでいてもよい。プロセッサ702は、システム700の動作全般(センサーアレイ304、空気移送ユニット376、およびユーザーインターフェース380の動作を含む)を制御してもよい。
【0107】
メモリー704は、例えばランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、磁気ディスクもしくは磁気テープ、光ディスク、フラッシュメモリー、またはホログラフィックメモリーなどの、任意の種類の非一時的なコンピュータ可読媒体を表してもよい。1つの実施形態において、メモリー704は、ランダムアクセスメモリーとリードオンリーメモリの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ702とメモリー704は、シングルチップ中に一体化されていてもよい。入出力(I/O)インターフェース706、708は、有線または無線接続によって、コントローラ374がシステム700の他の要素(例えばセンサーアレイ304、流体フローセンサー382、空気移送ユニット376、およびユーザーインターフェース380など)と通信することを可能にする。デジタルプロセッサ702は、例えばシングルコアプロセッサ、デュアルコアプロセッサ(または、より一般的にはマルチコアプロセッサによって)、デジタルプロセッサ、および協調方式コプロセッサ、デジタルコントローラなどによって、様々に具現化されうる。
【0108】
用語「ソフトウェア」は、本明細書で用いられる場合、コンピュータまたは他のデジタルシステムによって実行可能であり、コンピュータまたは他のデジタルシステムにそのソフトウェアが目的とするタスクを行わせる、任意の命令の集合またはセットを包含することが意図される。用語「ソフトウェア」は、例えばRAM、ハードディスク、光ディスクなどの記憶媒体に格納された、そのような命令を包含することが意図され、また、ROMなどに格納されたソフトウェアである、いわゆる「ファームウェア」も包含することが意図される。このようなソフトウェアは、種々の方法で組織化されていてもよく、ライブラリ、リモートサーバーなどに格納されたインターネットベースのプログラム、ソースコード、解釈コード、オブジェクトコード、直接実行可能なコードなどとして組織化されたソフトウェア要素を含んでいてもよい。前記ソフトウェアは、サーバーまたは他の場所にあるシステムレベルコードまたは他のソフトウェアに対する呼び出しを実行させ、ある特定の機能を発揮させうることが意図される。
【0109】
コントローラ374の命令712は、種々の実施形態において、例えば、コンダクタンス変更モジュール714、固有ネットコンダクタンス(「SNC」)データモジュール716、ガスフロー管理モジュール718、動作温度モジュール720、VOC濃度モジュール722、およびレポート出力モジュール724などを含みうる。
【0110】
コンダクタンス変更モジュール714は、センサーアレイ304の1つまたはそれを超えるVOCセンサー306のコンダクタンスを測定し、そのコンダクタンスデータ728をメモリー704に記録するように構成されていてもよい。すなわち、特定の実施形態において、コンダクタンス変更モジュール714は、プロセッサ702に命令して、各感知回路326を用いて、1つまたはそれを超えるVOCセンサー306の化学感受性フィルム328のバルク抵抗変化を測定するように構成されていてもよい。よって、コンダクタンス変更モジュール714は、センサーアレイ304のVOCセンサー306からのコンダクタンス信号を、I/Oインターフェース706によって、測定および受信し、かつ前記コンダクタンスを、コンダクタンスデータ728としてメモリー306に格納するように構成されていてもよい。コンダクタンス変更モジュール714は、また、例えば、VOCセンサー306からの測定された前記コンダクタンス信号の電子雑音およびドリフトを最小化し、正確で精密な測定を可能にするように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、コンダクタンス変更モジュール714は、例えば、信号モデルおよび/またはアルゴリズムを適用して、前記センサーコンダクタンスの測定におけるコンダクタンスドリフトおよび電子雑音という問題を管理または除去するように構成されていてもよい。さらなる実施形態において、コンダクタンス変更モジュール714は、前記VOCセンサーの前記コンダクタンスを測定し、かつ、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーの動作温度を、VOCセンサーについてのコンダクタンス値が予め決定したベースラインコンダクタンス値と合致するまで(動作温度モジュール720によって)上昇または下降させることによって、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのコンダクタンス値を調節するように構成されていてもよい。
【0111】
SNCデータモジュール716は、上述したように、センサーアレイ304の1つまたはそれを超える前記VOCセンサー306の前記固有ネットコンダクタンス(「SNC」)を決定するように構成されていてもよい。特に、SNCデータモジュール716およびコンダクタンス変更モジュール714は、ある特定のコンダクタンス信号(例えば、標的VOCを含まない制御流体フローおよび/またはサンプル流体フローと接触させたVOCセンサーのコンダクタンス値)を、I/Oインターフェース706によって、測定および受信するように作動してもよい。次いで、前記SNCデータモジュールは、VOCセンサー306についてのSNC値のセットを決定し、前記SNC値のセットを、SNCデータ726としてメモリー704に格納してもよい。
【0112】
ガスフロー管理モジュール718は、空気移送ユニット326を作動させて、流体フロー(例えば、流体フロー384)を回収し、前記流体フローをデバイス300に送達し、および前記流体フロー(例えば、流体フロー316)をシステム302からパージするように構成されていてもよい。特に、ガスフロー管理モジュール718は、空気移送ユニット376の流体フローセンサー382から、I/Oインターフェース706によって、ガスフローデータ730を受信するように構成されていてもよい。例えば、ガスフローデータ730は、流体取り入れ閾値(例えば、体積)およびフローセンサー382からの測定値を含んでもよく、これらはメモリー704に格納されてもよい。また、ガスフロー管理モジュール718は、空気移送ユニット376(バルブ378およびポンプ380を含む)、ならびにシステム302を通る流体フロー流路を制御する入口310および出口312を作動させるように構成されていてもよい。
【0113】
動作温度モジュール720は、センサーアレイ304のVOCセンサー306のヒーター回路324を、I/Oインターフェース706によって作動させるように構成されていてもよい。特に、動作温度モジュール720は、VOCセンサー306の加熱回路324に電力が加えられるように命令することによって、1つまたはそれを超えるVOCセンサー306を、少なくとも第1動作温度および第2動作温度に加熱するように構成されていてもよい。動作温度モジュール720は、さらに、センサーアレイ304の各VOCセンサー306の温度を監視し、かつ、供給される電力を調節してVOCセンサー306の動作温度(単数または複数)を制御するように構成されていてもよい。温度モジュール720は、VOCセンサー306の動作温度(単数または複数)の設定値、ならびに測定した温度を、温度732として、メモリー704に格納してもよい。
【0114】
VOC濃度モジュール722は、上述したように、流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されていてもよい。1つまたはそれを超える前記標的VOCは、前記流体フロー(例えば、空気フロー)中においてガス状であってもよい。特定の実施形態において、1つまたはそれを超える前記標的VOCは、フェロモン;情報化学物質;およびカイロモンのうちの少なくとも1つである。さらなる実施形態において、前記流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCのうちの少なくとも1つは、4,8-ジメチルデカナール;(Z,Z)-3,6-(11R)-ドデカジエン-11-オリド;(Z,Z)-3,6-ドデカジエノリド;(Z,Z)-5,8-(11R)-テトラデカジエン-13-オリド;(Z)-5-テトラデセン-13-オリド;(R)-(Z)-14-メチル-8-ヘキサデセナール;(R)-(E)-14-メチル-8-ヘキサデセン-アール;γ-エチル-γ-ブチロラクトン;(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテート;(Z,E)-9,12-テトラ-デカジエン-1-オール;(Z,E)-9,12-テトラデカジエナール;(Z)-9-テトラデセニルアセテート;(Z)-11-ヘキサ-デセニルアセテート;(2S,3R,1’S)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(2S,3R,1’R)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(4S,6S,7S)-7-ヒドロキシ-4,6-ジメチルノナン-3-オン;(2S,3S)-2,6-ジエチル-3,5-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン;2-パルミトイル-シクロヘキサン-1,3-ジオン;および2-オレイル-シクロ-ヘキサン-1,3-ジオンからなる群から選択されてもよい。しかしながら、他のフェロモン、情報化学物質、およびカイロモンも意図される。1つまたはそれを超えるこれらの標的VOCについて決定された濃度は、VOCデータ734として、前記メモリーに格納されてもよい。
【0115】
レポート出力モジュール724は、所望のシステム出力738を生じさせ、かつユーザーインターフェース380を作動させて、前記出力738を、I/Oインターフェース380によって、システム302の随伴ユーザーに伝達するように構成されていてもよい。特定の実施形態において、ユーザーインターフェース380は、専用ディスプレイであってもよく、または補助ユーザーデバイス(例えば、PC、例えば。デスクトップコンビュータ、ラップトップコンピュータ、パームトップコンピュータ、ポータブル情報端末(PDA)、サーバーコンピュータ、携帯電話、タブレットコンピュータ、モバイルデバイスなど、またはそれらの組み合わせ)であってもよい。いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェース380は、スピーカーまたはスピーカーシステムを含んでもよい。よって、いくつかの実施形態において、I/Oインターフェース708は、有線通信インターフェースであってもよい。他の実施形態において、I/Oインターフェース708は、無線通信要素を含んでもよく、かつ、ユーザーインターフェース380との通信は、例えばBluetooth(登録商標)、BLE、Wi-Fi、3G、4G、5G、LTE無線通信プロトコルなどの無線通信プロトコルによって行われてもよい。
【0116】
どちらの場合でも、システム出力738は、測定されたVOCデータを示すユーザーインターフェース380(例えば、種々の実施形態において、グラフ、チャート、表、またはデータセットなど)によって伝達されてもよい。いくつかの実施形態において、出力738は、例えば可聴音、音色のセット、または聞き取れる言葉などの可聴要素を含んでもよく、前記可聴要素は、ユーザーインターフェース380のスピーカーまたはスピーカーシステムによって伝達されてもよい。前記可聴出力要素は、検出された1つまたはそれを超える前記標的VOCのガス成分濃度(単数または複数)に基づいて変化する周波数(例えば、より高い検出レベルで周波数が上がる)で鳴る音であってもよい。特定の実施形態において、出力738は、貯蔵産物中に昆虫侵入がありそうか否かの判定を含む。さらなる実施形態において、出力738は、蓋然性のある侵入原因についての推定(例えば、前記VOCデータに基づく1つまたはそれを超える特定のSPIの識別)を含んでもよい。なおもさらなる実施形態において、出力738は、貯蔵産物の価値を守るために取るべき対応措置(例えば、燻蒸)の提案を含んでもよい。
【実施例
【0117】
以下の特定の実施例は、本開示の新たな態様およびそこで用いられる手順を説明する。これらの実施例は、単に例示目的を意図しており、本発明の最も広い態様に対する限定と解釈すべきではない。
【0118】
図8A~8Dを参照して、VOCセンサーチップの種々の実施形態、およびフェロモンに対するそれらの感度に関する実験室ベンチテストのグラフを示す。昆虫成体フェロモンを、A31高圧ガス容器内の乾燥窒素中で濃度2ppmの試験ガスとした。この試験ガスを追加の乾燥窒素で希釈し、フェロモン濃度が100ppb~300ppbのガス流を得た。このガス流をプレプロトタイプデバイス内に注入し、ネットコンダクタンスを決定した。以下のチャートは、5つの異なるセンサーの応答を示し、1つは触媒を加えないものであり、4つは触媒Pd、Pt、Os、およびWを加えたものである。W触媒は、IMMフェロモンに対して(図8A)、タバコシバンムシフェロモンに対して(図8C)、およびキマダラカツオブシムシフェロモンに対して(図8D)、優れた感度を示す。Pd触媒は、コクヌストモドキフェロモンに対して優れた感度を示した(図8B)。他の触媒は、フェロモンに対する高感度な応答について効果が低かった。
【0119】
図9A~9C、図10A~10C、および図11A~11Cを参照して、昆虫がついた産物の上にあるヘッドスペースに対するセンサーチップの応答に関する野外テストの実験結果を示す。野外試験において、きれいな白色の小麦粉の10ポンドのサンプルの上にあるヘッドスペースガスをプレプロトタイプデバイス内に注入し、ベースライン抵抗値を確立した。前記ベースライン抵抗値を確立してすぐに、きれいな白色の小麦粉の10ポンドのコンパニオンサンプルの上にあるヘッドスペースガスに、異なる数の4種の生きた昆虫(IMM、コクヌストモドキ、キマダラカツオブシムシ、およびタバコシバンムシ)を含むバイアルを投入した。生きた昆虫が埋まった産物の上にあるヘッドスペースガスについての抵抗データを、無触媒チップ(図9A~9B)、白金触媒チップ(図10A~10C)、オスミウム触媒チップ(図11A~11C)、およびタングステン触媒チップ (図12A~12C)について示す。
【0120】
各ケースに見られるように、昆虫の個体数の増加に伴い、抵抗は明らかに減少する。さらなる昆虫が、ヘッドスペース中にさらなるフェロモンを産生する。より高いフェロモン濃度によって、センサーチップ抵抗は低下する。よって、センサーチップは、昆虫の個体数に応じた信号を生じさせることができる。この信号を分析し、昆虫の個体数と信号の間の相関を確率することができる。
【0121】
図13A~13Dに関し、上述したデータの分析結果を示すグラフが示される。生データは、チップ抵抗値(R)をチップコンダクタンス値(数学的にはKで表される)に変換することによって分析した。ネットコンダクタンスは、昆虫が存在するときのチップコンダクタンス(K)から、昆虫が存在しないときのチップコンダクタンス(K)を差し引くことによって決定した。前記ネットコンダクタンスは、数学的にはΔKで表される。ΔK対昆虫数のプロットを、図13A~13Dに示す。その結果、これらのプロットによって、各フェロモンについての最適な触媒(例えば、IMMについては無触媒チップ;キマダラカツオブシムシについてはOs触媒チップ;およびタバコシバンムシについては無触媒チップ)を選択することが可能になる。
【0122】
本明細書は、好ましい実施形態を参照して説明されている。間違いなく、本明細書を読み、理解した者には、変形や変更が思い浮かぶであろう。添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内である限り、本発明は、そのような変形および変更の全てを含むように解釈されることが意図される。言い換えると、上述の、および他の特徴および機能、またはそれらに代わるもののうちの多数が、望ましくは、組み合わされて他の多くの異なるシステムまたは利用法となることが理解され、また、現在予見または予期されていない、それらの種々の代替、変形、変化、または改良が、後に当業者によって行われるであろうことが理解され、それらも同様に以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(VOC)を検出することによって貯蔵産物における昆虫侵入を識別する方法であって、
複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含むデバイスを提供することであって、ここで、各VOCセンサーは、
第1面と第2面とを有する基板と、
前記基板の第1面上に形成された抵抗ヒーター回路と、
前記基板の第2面上に形成された感知回路と、
前記基板の第2面上の感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルムと、を含む、提供すること;
前記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、少なくとも第1動作温度に加熱すること;
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、標的流体フローと接触させること;
前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値(ΔK )のセットを決定すること;および
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度([X] )を決定すること、
を含む、方法。
(項2)
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを前記標的流体フローと接触させた後、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについての信号コンダクタンスを測定することをさらに含み;
前記コンダクタンス変化値(ΔK )のセットが、前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての前記信号コンダクタンスと、前記対応する各VOCセンサーのベースラインコンダクタンスとの間の差異に基づいて決定される、上記項1に記載の方法。
(項3)
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについての前記ベースラインコンダクタンスが、前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーが標的VOCを一切含まない大気中にある状態で測定される、上記項2に記載の方法。
(項4)
少なくとも1つの標的VOCと接触させた後に、前記少なくとも1つの標的VOCとの接触前の前記対応するVOCセンサーの前記ベースラインコンダクタンスと合致するように、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーのベースラインコンダクタンスを調節することをさらに含み、
前記ベースラインコンダクタンスが、1つまたはそれを超える前記VOCセンサーを少なくとも第2動作温度に加熱することによって調節される、上記項3に記載の方法。
(項5)
前記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、標的VOCを一切含まないサンプル流体フローと接触させること;および
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのベースラインコンダクタンスを測定すること、
をさらに含む、上記項2に記載の方法。
(項6)
1つまたはそれを超える前記VOCセンサーについての1つまたはそれを超える固有ネットコンダクタンス値を決定することをさらに含み、
各固有ネットコンダクタンス値が、前記標的VOCの1つに対応する、上記項1に記載の方法。
(項7)
標的VOCに対応する各固有ネットコンダクタンス値が、
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーを、既知の濃度の前記標的VOCを含む制御流体フローと接触させること;
前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての試験コンダクタンスを測定すること;および
前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについて、前記VOCセンサーの前記測定された試験コンダクタンスと、前記制御流体フロー中の前記標的VOCの前記既知の濃度に基づいて固有ネットコンダクタンス値を計算すること、
によって決定される、上記項6に記載の方法。
(項8)
1つまたはそれを超える前記VOCセンサーについての複数の固有ネットコンダクタンス値を決定することをさらに含み、
前記各VOCセンサーについての前記各固有ネットコンダクタンス値が、異なる標的VOCに対応する、上記項7に記載の方法。
(項9)
前記標的流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCについての前記ガス成分濃度([X] )が、前記コンダクタンス変化値のセットと、前記1つまたはそれを超える各VOCセンサーについての前記1つまたはそれを超える固有ネットコンダクタンス値に基づいて決定される、上記項6に記載の方法。
(項10)
前記第1動作温度が、約180℃~約400℃である、上記項1に記載の方法。
(項11)
前記標的流体フローが、評価される前記貯蔵産物の近傍内から採取された空気サンプルである、上記項1に記載の方法。
(項12)
標的流体フロー中の1つまたはそれを超える標的揮発性有機化合物(VOC)を検出するためのデバイスであって、
前記デバイスが、複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを含み、
各VOCセンサーが、
基板;
前記基板の第1面上に形成された抵抗ヒーター回路;
前記基板の第2面上に形成された感知回路;および
前記基板の第2面上の感知回路を覆うように形成された化学感受性フィルム、
を含む、デバイス。
(項13)
前記センサーアレイが、約2~約10個のVOCセンサーを含む、上記項12に記載のデバイス。
(項14)
前記複数のVOCセンサーの少なくとも1つの前記抵抗ヒーター回路が、長手方向配線幅が約0.288mm~約0.352mm、および長手方向配線間隔幅が約0.333mm~約0.407mmの蛇行パターンである、上記項12に記載のデバイス。
(項15)
前記複数のVOCセンサーの少なくとも1つの前記感知回路が、1対の延在する指交差状接点を形成する第1感知素子と第2感知素子とを含み;
前記第1感知素子が、複数の延在する接点を含み、各接点の横配線幅は約0.162mm~約0.198mm、および横配線間隔が約0.738mm~約0.902mmであり;
前記第2感知素子が、複数の延在する接点を含み、各接点の横配線幅は約0.162mm~約0.198mm、および横配線間隔は約0.738mm~約0.902mmである、上記項12に記載のデバイス。
(項16)
前記第1感知素子および前記第2感知素子が、それぞれ少なくとも3つの延在する接点を含み、前記感知回路の、前記第1感知素子および前記第2感知素子の各延在する接点間の横配線間隔が、約0.288mm~約0.352mmである、上記項15に記載のデバイス。
(項17)
前記抵抗ヒーター回路および前記感知回路の少なくとも1つが、白金を含む組成物から形成され、そして前記化学感受性フィルムが、酸化スズの水性ゲルから形成されたナノ結晶酸化スズフィルムである、上記項12に記載のデバイス。
(項18)
前記化学感受性フィルムが、白金;パラジウム;モリブデン;タングステン;ニッケル;ルテニウム;およびオスミウムからなる群から選択されるドーピングエージェントを含む、上記項12に記載のデバイス。
(項19)
前記センサーアレイが、コントローラに作動可能に接続され、
前記コントローラが、
前記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのコンダクタンスを測定し;
前記標的流体フローと接触させた前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;そして
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記標的流体フロー中の1つまたはそれを超える前記標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成された、上記項12に記載のデバイス。
(項20)
貯蔵産物における昆虫侵入を識別するためのシステムであって、
複数のVOCセンサーを含むセンサーアレイを封入するテストチャンバー;
前記テストチャンバーから流体フローを回収し、そして前記流体フローを前記テストチャンバーに送達するように構成された空気移送ユニット;および
前記空気移送ユニットと前記センサーアレイに作動可能に接続されたコントローラ、を含み、
ここで、前記コントローラが、
空気移送ユニットを作動させて、標的領域から前記流体フローを回収し、前記流体フローを前記テストチャンバーに送達し、ここで、前記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーは、前記流体フローと流体接触し;
前記センサーアレイを作動させて、前記複数のVOCセンサーのうちの1つまたはそれを超えるVOCセンサーについてのコンダクタンスを測定し;
前記1つまたはそれを超えるVOCセンサーのそれぞれに対応するコンダクタンス変化値のセットを決定し;そして
前記コンダクタンス変化値のセットに基づいて、前記流体フロー中の1つまたはそれを超える標的VOCについてのガス成分濃度を決定するように構成されている、システム。
(項21)
流体フロー中の前記1つまたはそれを超える標的VOCの少なくとも1つが、4,8-ジメチルデカナール;(Z,Z)-3,6-(11R)-ドデカジエン-11-オリド;(Z,Z)-3,6-ドデカジエノリド;(Z,Z)-5,8-(11R)-テトラデカジエン-13-オリド;(Z)-5-テトラデセン-13-オリド;(R)-(Z)-14-メチル-8-ヘキサデセナール;(R)-(E)-14-メチル-8-ヘキサデセン-アール;γ-エチル-γ-ブチロラクトン;(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテート;(Z,E)-9,12-テトラ-デカジエン-1-オール;(Z,E)-9,12-テトラデカジエナール;(Z)-9-テトラデセニルアセテート;(Z)-11-ヘキサ-デセニルアセテート;(2S,3R,1’S)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(2S,3R,1’R)-2,3-ジヒドロ-3,5-ジメチル-2-エチル-6(1-メチル-2-オキソブチル)-4H-ピラン-4-オン;(4S,6S,7S)-7-ヒドロキシ-4,6-ジメチルノナン-3-オン;(2S,3S)-2,6-ジエチル-3,5-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン;2-パルミトイル-シクロヘキサン-1,3-ジオン;および2-オレイル-シクロ-ヘキサン-1,3-ジオンからなる群から選択される、上記項19に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13-1】
図13-2】