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  • 特許-地中超高圧送電ケーブル撤去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】地中超高圧送電ケーブル撤去方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20221116BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G9/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021161779
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594068114
【氏名又は名称】五十嵐工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】大槻 典夫
(72)【発明者】
【氏名】山岡 浩二
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-147478(JP,A)
【文献】特開2021-78323(JP,A)
【文献】特開平4-12609(JP,A)
【文献】特開平1-252109(JP,A)
【文献】特開昭60-234408(JP,A)
【文献】特開平6-121424(JP,A)
【文献】実開平5-77339(JP,U)
【文献】特開2012-60746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールとマンホールとをつなぐ地中の管路に布設されたまま長時間経過した地中超高圧送電ケーブルを撤去する方法であって、
一、予め両端が切断された、撤去を要する前記送電ケーブルの両端部のうち終端を有するマンホールの土間に仮フックを設ける工程と
二、前記仮フックに油圧ジャッキを接続する工程と
三、前記油圧ジャッキに前記送電ケーブルの終端を接続する工程と
四、前記油圧ジャッキを駆動し、その引き力により、前記送電ケーブルを側圧および自重圧に抗して前記管路から前記マンホールに引き出す、縁切り工程と
を有することを特徴とする地中超高圧送電ケーブル撤去方法。
【請求項2】
前記油圧ジャッキは、複数台の油圧ジャッキを直列に接続して構成する、請求項1に記載の地中超高圧送電ケーブル撤去方法。
【請求項3】
前記管路から引き出した前記送電ケーブルを地上の撤去車で巻き取る、請求項1又は2に記載の地中超高圧送電ケーブル撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールとマンホールをつなぐ地中の管路に布設された地中超高圧送電ケーブルの撤去方法に関わり、さらに詳しくは、マンホールの土間に設けた仮フックと該仮フックに接続した油圧ジャッキにより得られる強い引き力による、効率の良い安全性の高い地中超高圧送電ケーブルの撤去方法の提供にある。
【背景技術】
【0002】
マンホールとマンホールをつなぐ地中の管路に布設され長時間経過した地中超高圧送電ケーブルを撤去するためには、当該ケーブルを側圧および自重圧に抗して管路からマンホールに引き出すための強い引き力を要するため、様々な撤去方法が検討されてきた。
マンホール内の既設のフックの反力を用いる方法も検討されたが、既設のフックでは管路に布設され長時間経過した地中超高圧送電ケーブルを引き出すための引き力に対し強度が十分ではなく、また、管路口とフックが直線状にない場合、フックが存在しない場合等があり、既設のフックは、地中超高圧送電ケーブルの撤去に用いるには十分な設備ではなかった。
【0003】
上記の欠点に対し、特許文献1では、管路口部又は壁面にアダプタ(A)を装着し、このアダプタに2組以上並列に配置された油圧シリンダ(24、25)を装着し、強い引き力を得る手段が提案されている(図1参照)。
壁面にアダプタを装着した場合、アダプタの装着方向と引き力の方向が真逆となり、アダプタが壁面から勢いよくすっぽ抜け、それがマンホール内の作業員に当たって大怪我を負わせる危険性が存在する。
管路口部にアダプタを装着した場合、管路口部付近の壁面は、管路の空洞の存在により、強度が他の壁面部分に比べ劣り、アダプタに強い反力がかかることで、壁面が破損する危険性が存在する。
【0004】
特許文献2では、既設フック(F)の反力を用いる手段が提案されているが(図2参照)、これも上述のとおり、必要な引き力に対し強度が十分ではなく、壁面に備わる既設フックを用いることで、フックが壁面から勢いよくすっぽ抜け、それがマンホール内の作業員に当たって大怪我を負わせる危険性が同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61―180505号公報
【文献】特開平10―80029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、マンホールの土間に仮フックを設け、前記仮フックの地中超高圧送電ケーブル方向に向かって油圧ジャッキを接続し、さらに、前記油圧ジャッキに前記送電ケーブルの終端を接続し、ついで前記油圧ジャッキを駆動することで、強い引き力を得、効率良くかつ安全に、前記送電ケーブルを前記管路から前記マンホールに引き出すことのできる地中超高圧送電ケーブル撤去方法を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、マンホールとマンホールとをつなぐ地中の管路に布設されたまま長時間経過した地中超高圧送電ケーブルを撤去する方法であって、
一、予め両端が切断された、撤去を要する前記送電ケーブルの両端部のうち終端を有するマンホールの土間に仮フックを設ける工程と
二、前記仮フックに油圧ジャッキを接続する工程と
三、前記油圧ジャッキに前記送電ケーブルの終端を接続する工程と
四、前記油圧ジャッキを駆動し、その引き力により、前記送電ケーブルを側圧および自重圧に抗して前記管路から前記マンホールに引き出す、縁切り工程と
を有することを特徴とする地中超高圧送電ケーブル撤去方法に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記油圧ジャッキを複数台直列に接続して構成する、請求項1に記載の地中超高圧送電ケーブル撤去方法に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記方法により前記管路から引き出した前記送電ケーブルを地上の撤去車で巻き取る、地中超高圧送電ケーブル撤去方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、予め両端が切断された、撤去を要する前記送電ケーブルの両端部のうち終端を有するマンホールの土間に、地中超高圧送電ケーブルの強い引き力の反力の大きさに耐えることのできる仮フックを設け、前記仮フックに強い引き力を実現する油圧ジャッキを接続し、前記油圧ジャッキに前記送電ケーブルの終端を接続し、油圧ジャッキを駆動させることで、地中超高圧送電ケーブルを側圧および自重圧に抗して縁切りし、管路からマンホールに効率良く引き出し、撤去することができる。
仮フックを固定する複数のアンカーボルトの打ち込み方向が、仮フックが油圧ジャッキから受ける反力の方向とほぼ直交するため、複数のアンカーボルトが反力に対し鉤爪のような役割を果たし、仮フックが突然勢いよくすっぽ抜け、それがマンホール内の作業員に当たるという危険性から解放される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、複数台の油圧ジャッキを直列に接続することによりさらに強い油圧ジャッキの引き力を得て、地中超高圧送電ケーブルを側圧および自重圧に抗して管路からマンホールに効率良く安全に引き出し、撤去することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、前記方法により、前記マンホールに効率良く安全に引き出した地中超高圧送電ケーブルを地上の撤去車で巻き取ることで、撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の地中超高圧送電ケーブル撤去方法の外観図である。
図2】従来の地中超高圧送電ケーブル撤去方法の外観図である。
図3】本発明の地中超高圧送電ケーブル撤去方法の外観図である。
図4】油圧ジャッキの一方の端に仮フックを接続し、他端に地中超高圧送電ケーブルを接続した状態を示す外観図である。
図5】仮設フックの(1)平面図、(2)正面図、(3)右側面図であり、正面図では、参考としてアンカーボルトを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳述する。
かかる実施形態に示す規格、数値等は例示に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明に直接関係の無い要素については図示を省略する。
【0018】
マンホール開口部(M1)に手摺等の保安設備を設置し、作業員は、ガス検知・換気等に注意しながら、安全にマンホール(M)に入坑する。
本発明の実施にあたり、各所に配置された作業員は、適宜無線通話で連絡を取り合い、安全に作業を進める。
【0019】
マンホール(M)とマンホール(M’)をつなぐ地中の管路(P)に布設され長時間経過した地中超高圧送電ケーブル(C)に対し、ケーブルの縁切りを行い、始端部及び終端部を形成する。
地中超高圧送電ケーブル(C)は、あらかじめ切断されている場合がある。
【0020】
マンホール(M)の土間(M2)に、仮フック(1)を、複数のアンカーボルト(B)により強力に固定する。
仮フック(1)に、反力に抗する十分な耐性を与えるため、仮フック(1)の材質を、例えば、ステンレス鋼(SS490)とすることや、アンカーボルト(B)の打ち込みに先立ち、土間にコンクリート(Co)打設を施す手立てを採り得る。
20tの反力に耐えることができる仮フック(1)を設置する。
【0021】
仮フックに油圧ジャッキ(2)を、クレビス(cl)を介して取り付ける。
必要な引き力に応じ、複数台の油圧ジャッキ(2)を、クレビス(cl)を介し直列に連結する。
油圧ジャッキ(2)に油圧ホース(図示せず)を接続し、その油圧ホースの他端に油圧ポンプ(図示せず)を連結し、油圧ジャッキ(2)の駆動力を得る。
【0022】
地中超高圧送電ケーブル(C)の終端(3)にプーリングアイ(PY)を取り付け、油圧ジャッキの他端(4)とプーリングアイ(PY)をクレビス(cl)を介して連結する。
【0023】
油圧ポンプの計器を注視しながら、油圧ジャッキ(2)に引き力を与え、合計15tの引き力により前記送電ケーブル(C)を引き抜く。
1回のプーリングアイ(PY)の取付けで油圧ジャッキ(2)を1~4台直列に接続し引抜き、油圧ジャッキ(2)の台数を減らしながらできるだけ長く引き抜く。
引き出した前記送電ケーブル(C)の縁切りを行いながら、プーリングアイ(PY)の再取付け、油圧ポンプの再駆動により、撤去車(R)による前記送電ケーブル(C)の巻き取りができる張力以下になるまで前記送電ケーブル(C)の引き出しを繰り返す。
撤去車(R)により前記送電ケーブル(C)の巻き取りを行う。
場合によっては、ウインチ車(W)により前記送電ケーブル(C)を引き戻す作業が発生する。
【0024】
一例として、油圧ジャッキ(2)として、株式会社大阪ジャッキ製作所製のE形パワージャッキ、クレビス(cl)として、同社のEシリーズ用のクレビス、油圧ポンプとして、同社のG形油圧ポンプを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、マンホールとマンホールをつなぐ地中の管路に布設された地中超高圧送電ケーブルの撤去方法に利用することができる。
特に、本発明によれば、仮フックを別途に設け、強い引き力を実現できることから、地中超高圧送電ケーブルを側圧および自重圧に抗して縁切りし、管路からマンホールに効率良く引き出し、撤去することができる。
【符号の説明】
【0026】
C:地中超高圧送電ケーブル
M:マンホール
M’:マンホール
M2:土間
P:管路
1:仮フック
2:油圧ジャッキ
3:地中超高圧送電ケーブルの終端
【要約】
【課題】
地中超高圧送電ケーブルを強い引き力で効率良く安全に撤去する方法を提供する。
【解決手段】
マンホール(M)の土間(M2)に仮フック(1)を設け、前記仮フック(1)の地中超高圧送電ケーブル(C)方向に向かって油圧ジャッキ(2)を接続し、さらに、前記油圧ジャッキ(2)に前記送電ケーブルの終端(3)を接続し、ついで前記油圧ジャッキ(2)を駆動し、その引き力により、前記送電ケーブル(C)を管路(P)から前記マンホール(M)に引き出す。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5