(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】除菌用オゾン発生装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
C01B13/11 A
(21)【出願番号】P 2021576750
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004406
(87)【国際公開番号】W WO2022038802
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020139459
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515206001
【氏名又は名称】株式会社紫光技研
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】篠田 傳
(72)【発明者】
【氏名】平川 仁
(72)【発明者】
【氏名】粟本 健司
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 武文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080297(JP,A)
【文献】特開2006-034948(JP,A)
【文献】特開2014-004113(JP,A)
【文献】特開2009-233106(JP,A)
【文献】富家 和男 他,紙パ技協誌,1996年,第50巻第2号,第256頁-第261頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン生成のための真空紫外線を発する発光面を備えた光源デバイスと、
該光源デバイスを駆動する駆動回路を搭載した駆動回路基板と、
前記光源デバイスおよび前記駆動回路基板を収容し、内部で発生したオゾンの放出部を有する容器と、を備え、
前記容器が缶状或いはタンブラー形状を有し、該容器内の空間を下部で繋がった略垂直方向の2つの空間に2分する仕切り板を設け、
該仕切り板の一方の側に前記光源デバイスをその発光面が一方の空間を向くよう支持すると共に、同仕切り板の他方の側に前記駆動回路基板を他方の空間に向けて取り付け、更に前記光源デバイスの発光面に沿った空気流を起こす送風ファンを設け、前記容器内の2分された他方の空間から前記仕切り板の下を通して前記一方の空間に連なる略U字状の空気流通路を形成してオゾンを放出するようにした
ことを特徴とする除菌用オゾン発生装置。
【請求項2】
オゾン生成のための真空紫外線を発する光源デバイスと、
該光源デバイスを駆動する駆動回路を搭載した駆動回路基板と、
前記光源デバイスおよび前記駆動回路基板を収容し、内部で発生したオゾンの放出部を有する容器と、を備え、
前記光源デバイスは、
絶縁支持体の一面に放電間隙を構成する隙間を挟んで両側に広がる少なくとも1対の電極対を備えた電極基板と、
該電極基板の上に前記隙間を横切る方向に配置された複数本のガス放電チューブからなるガス放電チューブアレイの構成を有し、
各ガス放電チューブは、放電により真空紫外線を発する放電ガスが封入され、かつ真空紫外線を発する前面側と前記絶縁支持体に接する背面側を有すると共に、前記背面側の内壁面に紫外線反射層を有するガラス細管から成り、
更に前記光源デバイスは、前記容器が水平面に置かれた状態で各ガス放電チューブの前面側の配列から成る発光面が略垂直方向となって前記容器内に当該発光面に沿った通風路を形成するよう配置され、
前記容器が缶状或いはタンブラー形状を有し、該容器内の空間を下部で繋がった略垂直方向の2つの空間に2分する仕切り板を設け、
該仕切り板の一方の側に上記光源デバイスをその発光面が一方の空間を向くよう支持すると共に、同仕切り板の他方の側に前記駆動回路基板を他方の空間に向けて取り付け、更に前記光源デバイスの発光面に沿った空気流を起こす送風ファンを設け、前記容器内の2分された他方の空間から前記仕切り板の下を通して前記一方の空間に連なる略U字状の空気流通路を形成してオゾンを放出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項3】
オゾン生成のための真空紫外線を発する光源デバイスと、
該光源デバイスを駆動する駆動回路を搭載した駆動回路基板と、
前記光源デバイスおよび前記駆動回路基板を収容し、内部で発生したオゾンの放出部を有する容器と、を備え、
前記光源デバイスは、
絶縁支持体の一面に放電間隙を構成する隙間を挟んで両側に広がる少なくとも1対の電極対を備えた電極基板と、
該電極基板の上に前記隙間を横切る方向に配置された複数本のガス放電チューブからなるガス放電チューブアレイの構成を有し、
各ガス放電チューブは、放電により真空紫外線を発する放電ガスが封入され、かつ真空紫外線を発する前面側と前記絶縁支持体に接する背面側を有すると共に、前記背面側の内壁面に紫外線反射層を有するガラス細管から成り、
前記光源デバイスは、前記容器内において略垂直方向の筒状に湾曲されたフレキシブルな電極基板の内側又は外側に略垂直方向に延びる複数のガス放電チューブを配列した筒状の構成を有し、更に該筒状光源デバイスの下方に送風ファンを配置して当該筒状光源デバイスの内側又は外側から前記光源デバイスの下端を通り外側又は内側に回る通風路を形成してオゾンを放出するようにしたことを特徴とする除菌用オゾン発生装置。
【請求項4】
オゾン生成のための真空紫外線を発する光源デバイスと、
該光源デバイスを駆動する駆動回路を搭載した駆動回路基板と、
該光源デバイスの発光面に送風する送風ファンとを、オゾン放出部を有する容器の中に収容して成り、
前記光源デバイスは、
絶縁支持体の一面に放電間隙を構成する隙間を挟んで両側に広がる1以上の電極対を有すると共に、複数の貫通孔を備えた電極基板と、
該電極基板の上に前記隙間を横切る方向に配置された複数本のガス放電チューブからなるガス放電チューブアレイの構成を有し、
各ガス放電チューブは、放電により真空紫外線を発する放電ガスが封入されたガラス細管から成り、かつ前記真空紫外線を放射する前面側と前記電極基板絶縁支持体に接する背面側を有すると共に、前記背面側の管内壁面に紫外線反射層を有し、
更に前記光源デバイスを、前記容器内において各ガス放電チューブの前面側の配列から成る発光面が略水平方向となるよう配置すると共に、前記電極基板の貫通孔が前記送風ファンからの通風路の一部となるよう前記送風ファンを前記光源デバイスの発光面に対向する位置に配置し、
かつ前記駆動回路から前記光源デバイスに対する駆動電圧の印加時間を制御するタイマー回路を設けてオゾンの発生動作を時間的に制御するようにしたことを特徴とする除菌用オゾン発生装置。
【請求項5】
前記容器の中に前記真空紫外線を発する第1の光源デバイスに加えて深紫外域の紫外線を発するガス放電チューブアレイから成る第2の光源デバイスを互いの発光面が平行となるよう配置し、前記第1の光源デバイスからの真空紫外線によりオゾンを発生すると共に、第2の光源デバイスからの深紫外線によりオゾンを分解して活性酸素を生成するように構成したことを特徴とする請求項4記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項6】
前記容器が水平面に置かれた状態で前記発光面が略下方向を向くように前記光源デバイスが配置され、
前記送風ファンは、前記発光面からから少なくとも20mmの間隔を隔てて前記発光面に対向して配置され、かつ前記駆動回路基板は前記送風ファンの吸気側に配置されていることを特徴とする請求項4記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項7】
前記ガス放電チューブの紫外線反射層は、各ガス放電チューブ背面側の管内壁面に形成された酸化マグネシューム(MgO)、酸化アルミニューム(Al2O3)及び2酸化珪素(SiO2)から選ばれた少なくとも1種の酸化物粉末の層から成り、真空紫外線を発光する放電ガスがキセノン(Xe)を含んだ混合ガスであることを特徴とする請求項2~6の何れか1項に記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項8】
前記ガス放電チューブの紫外線反射層が、真空紫外線の励起により深紫外域の蛍光を発する蛍光体材料からなり、該ガス放電チューブが真空紫外線と深紫外線とを同時に発光することを特徴とする請求項2~6の何れか1項に記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項9】
前記駆動回路基板は、光源デバイスに交番駆動電圧を供給するインバータ回路とオゾン発生量制御回路を含み、該オゾン発生量制御回路はインバータ回路に入力されるDC電圧を調整する電圧調整回路を備え、
該DC電圧の調整により前記インバータ回路から前記光源デバイスに供給する交番駆動電圧が調整される請求項1~8の何れか1項に記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項10】
前記駆動回路基板は、光源デバイスに交番駆動電圧を供給するインバータ回路とオゾン発生量制御回路を含み、該オゾン発生量制御回路は、前記タイマー回路からの時間設定により前記インバータ回路が前記光源デバイスに供給する交番駆動電圧の印加時間を調整する請求項4~6の何れか1項に記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項11】
前記電極対を構成する各電極が、互いの近接端部間に放電間隙を構成する隙間を隔てて両側に広がる主電極部と、前記主電極部の後端に位置する副電極部とに分割されたパターンを有し、
前記駆動回路基板は、前記主電極部のみで放電を行う駆動と、該主電極部と前記副電極部を接続した状態で放電を行う駆動との選択をするオゾン発生量調整用の選択回路を備え、該選択回路によって前記放電間隙を構成する隙間から離れる方向の有効放電長を調整する請求項2または4記載の除菌用オゾン発生装置。
【請求項12】
空気の導入部及び排出部を備えた容器の中に、オゾン生成のための真空紫外光を放射する紫外光源デバイスを、該紫外光源デバイスを駆動する回路を搭載した駆動回路基板、及び送風ファンと共に収容した空気を除菌する
オゾン発生装置であって、
前記紫外光源デバイスは、紫外線透過ガラスの細管の内部底面に紫外線反射機能を有する深紫外蛍光体層を形成すると共に、内部に真空紫外線を放射する放電ガスを封入して成る複数本のガス放電チューブを、各ガス放電チューブの背面側に対向する放電電極対と複数の貫通孔とを備えた電極基板上に平行に配列したガス放電チューブアレイの構成を有し、
前記ガス放電チューブは、空気中の酸素を分解してオゾンを生成する真空紫外線と、前記深紫外蛍光体層からの深紫外線とを当該ガス放電チューブの前面側配列面から成る発光面に対向して配置された前記送風ファンとの間の共通空間に放射し、
前記送風ファンは、前記容器内に導入された空気を前記オゾンと活性酸素で除菌して残留オゾンと共に前記電極基板の貫通孔を通して周囲環境に放出する送風路を構成し、
更に前記オゾン発生装置は、前記駆動回路から前記光源デバイスに印加する駆動電圧の印加時間を制御するタイマー回路を備え、該タイマー回路により前記オゾンの放出時間を制御するようにしたことを特徴とする空気除菌用オゾン発生装置。
【請求項13】
空気の導入部及び排出部を備えた容器の中に、オゾン生成のための真空紫外光を放射する紫外光源デバイスを、該紫外光源デバイスを駆動する回路を搭載した駆動回路基板、及び送風ファンと共に収容した空気を除菌する装置であって、
前記紫外光源デバイスは、紫外線透過ガラスの細管の内部底面に紫外線反射機能を有する深紫外蛍光体層を形成すると共に、内部に真空紫外線を放射する放電ガスを封入して成る複数本のガス放電チューブを、各ガス放電チューブの背面側に対向する放電電極対を備えた電極基板上に平行に配列したガス放電チューブアレイの構成を有し、
前記紫外光源デバイスは、前記真空紫外線と深紫外線を同時に放射する第1群のガス放電チューブに加えて、チューブ背面側の内面に紫外線反射層を形成した真空紫外線を放射する第2群のガス放電チューブを混在配列した構成を有することを特徴とする空気除菌用オゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線により生成されたオゾンを用いて空気や物体表面を除菌するためのオゾン発生装置に関し、特にガス放電チューブアレイ式の真空紫外線面光源デバイス(VUV面光源デバイス)からの真空紫外線により生成したオゾンを用いる空気除菌のための新しいオゾン発生装置に関するものである。発生したオゾンは、ウイルスや細菌の殺菌や消臭などの広い用途に有益である。
【背景技術】
【0002】
殺菌や消臭用途にオゾンを利用することは従来からよく知られており、オゾンの発生方式についても紫外線方式、気中放電方式、電気分解方式などが知られている。この内、紫外線方式は、波長200nm以下の真空紫外線で空気中の酸素を分解合成してオゾンを発生することを原理としたもので、可搬型のオゾン発生装置を構成するのに好ましい。
従来の紫外線方式によるオゾン発生装置の基本的構成は、特許文献1や2に開示のように、紫外線光源として専ら水銀ランプを使用していた。また近年、水銀ランプに代わる紫外線光源デバイスとして、特許文献3および4に記載のような発光管アレイ型のガス放電発光装置および光源装置が提案されている。なお、本発明の説明において、「オゾン発生装置」は、「オゾンを用いる除菌装置」と実質的に同じ意味を持つものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭63-051025号公報
【文献】特開2002-316041号公報
【文献】特開2016―225070号公報
【文献】特開2020―080297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水銀ランプを光源としたオゾン発生装置は、水銀による環境汚染の問題を避け得ない他、低温環境下では水銀蒸気が発生して放電が確立するまでの立ち上がりに時間を要し、頻繁なオン/オフ切り替えも寿命の観点から難しい。更に、発光スペクトルに無用な波長域を含むことから電力の利用効率もよくない。
従って本発明は、水銀フリーのガス放電チューブアレイを真空紫外線光源デバイスとして利用することにより、上記従来の問題を解決したオゾン発生装置、即ちオゾンを用いる除菌装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するために、上記特許文献2に開示された水銀フリーの面発光型ガス放電チューブアレイをオゾン発生用の真空紫外線(Vacuum Ultra Violet:VUV) 光源デバイスに適した構成に改良したことを特徴とする。更に具体的に述べると、本発明においては、内部にネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスを封入し、背面側の管内璧面に紫外線反射層又は紫外線反射機能を有する深紫外蛍光体層を形成したガス放電チューブを電極基板上に複数本並行に配列した構成のガス放電チューブアレイをオゾン発生用の真空紫外線光源デバイス(VUV光源デバイス)として用いることを特徴とするものである。なお本発明において、真空紫外域は10nm~200nmの波長範囲を指し、深紫外域は波長200nm~280nmの波長範囲を指すものとする。
【0006】
本発明の発明者らは、紫外線を通しやすくなるよう微量のフッ素を添加して改良した硼珪酸系ガラスの細管を使用したガス放電チューブにおいて、当該ガラス細管の発光面となる前面側の肉厚を100μm程度に薄くすると共に、背面側の内面に紫外線反射層を設け、内部にネオン(Ne)とキセノン(Xe)との混合ガスを封入した複数本のガス放電チューブを電極基板上に配列して面光源デバイス作成した。そしてこの面光源デバイスにおいて、キセノン(Xe)を含んだ希ガスの放電で発生した波長178nmの真空紫外線をオゾンの生成に充分な照射強度で取り出すことに初めて成功した。また、ガラスチューブの背面側内面に紫外線反射機能を有する深紫外蛍光体層を形成したガス放電チューブでは、真空空紫外光(波長178nm)と共に深紫外蛍光体層からの深紫外光(波長260nm)を同時に取り出すことにも成功した。
【0007】
図1は、本発明の一実施形態によるオゾン発生の根拠を説明する線図である。縦軸を光子数、横軸を波長として上記ガス放電チューブを空気中と窒素(N)雰囲気中で放電させた場合の放射波長分布を比較して示している。曲線Aは、窒素雰囲気中で放電させた場合の放射光の波長スペクトルを示し、178nmを中心にして±30nmの広い波長範囲の真空紫外放射が観測されている。他方、同じガス放電チューブを空気中で放電させた場合のスペクトルは、曲線Bのように195nm付近から短い波長域においては窒素中の放射と乖離していくつかの低いピークを示すものの、183nm以下の真空紫外放射光子は殆ど観測されなくなる。
【0008】
即ち、
図1における曲線Aと曲線Bの差分に相当する光子が空気中の酸素分子と反応して吸収され、オゾンの発生に消費されていることが分かる。この点、185nmの狭いピーク波長の真空紫外線だけがオゾンの発生に寄与する水銀ランプに比べて、165~195nmの広い範囲の真空紫外放射をオゾン発生に利用する本発明は、基本的に異なるメカニズムでオゾンを発生するものであることが分かる。
【0009】
また
図2Aは、上記紫外線反射層に代えてチューブ背面側内面に紫外線反射機能を有する深紫外蛍光体層を形成した放電チューブの発光波長スペクトルを窒素雰囲気中で観測した線図である。波長178nmにピークを有する真空紫外域の発光成分VUVと、波長260nmにピークを有する深紫外域の発光成分UVCとが同時に放射されていることが判る。深紫外蛍光体層は、それ自体が白色で紫外線反射機能を有し、キセノン混合ガスの放電でチューブ内に発生した真空紫外線は、当該蛍光体層を励起してUVCを放射すると共に、前方への放射成分はそのまま薄い管壁を透過して管外に放射される。そしてこの放電チューブから前方に放射された真空紫外線VUVは、近辺の空気を分解してオゾンを発生する。
【0010】
他方、共通空間に放射された深紫外線VUCは、真空紫外線VUVで発生したオゾンを分解して発生期の活性酸素を生成する。
図2Bは、容積45L(リットル)のプラスチック容器の中にガス放電チューブアレイ式のVUV面光源デバイスとUVC面光源デバイスの二つの光源を入れ、VUV光源からの紫外線で発生したオゾンの量がほぼ40PPMに達した段階で、UVC光源を点灯して260nmの深紫外線を照射した時のオゾンの減衰状況を線Cで示している。図中、線Dは、UVCを照射しない場合のオゾンの自然減衰状況を示しており、線Cと線Dとの差の間でオゾンの急速な分解が行われて活性酸素が生成されていることが判る。
【0011】
また、
図2Cは、波長VUVとUVCとを共通空間に照射した時の消臭実験の結果を示す線図である。上記と同じ45Lの容器の中に臭気センサの値がほぼ飽和値となるまでアンモニアを注入し、その時点からピーク波長265nmのUVCを点灯照射した時の臭気の減衰状況を線UVCで示している。これに対して線VUV+UVCは、ピーク波長178nmのVUVとピーク波長265nmのUVCとを同時に照射した時の臭気の減衰状況を示している。また線Nは、アンモニア臭気の自然減衰曲線を示している。この線図からUVCの単独照射(線UVC参照)に比べ、VUVとUVCの同時照射(線VUV+UVC参照)が極めて短時間で優れた消臭効果を発揮することが判る。このことは深紫外線UVCによる消臭効果に加えて、真空紫外線VUVにより発生するオゾンと活性酸素の消臭効果が大きく作用していることの現れである。
【0012】
かくして本発明は、ガス放電チューブアレイ型の面発光紫外光源デバイスからの真空紫外線VUVを空気除菌のためのオゾン発生源として用いる考え方、並びに面発光紫外光源デバイスから真空紫外線VUVと深紫外線UVCとを同時に発生させて空気除菌のためのオゾン及び活性酸素の発生源として用いる考え方を基本とするものである。ガス放電チューブアレイを構成する個々のガス放電チューブは真空紫外線を単独で発生する構成でもよいし、単一のガス放電チューブから真空紫外線と深紫外線を同時に発生する構成でもよい。更には、ガス放電チューブアレイを真空紫外線用のチューブと深紫外線用のチューブとのハイブリッドアレイ構成としたもの、或いはVUVチューブアレイと、UVCチューブアレイとを別々の光源デバイスとして作成し、両光源を1つの容器内に収容して空気除菌のためのオゾン発生装置を構成することもできる。
【0013】
更に具体的に述べると、本発明の第1の形態においては、真空紫外線を発する光源デバイスと、該光源デバイスを駆動する駆動回路基板と、前記光源デバイスおよび前記駆動回路基板を収容してオゾンの放出部を有する筐体と、を備え、前記光源デバイスは、絶縁基板の一面に放電間隙を構成する隙間を挟んで両側に広がる少なくとも1対の電極対を備えた電極基板と、該電極基板の上に前記隙間を横切る方向に配置された複数本のガス放電チューブからなるガス放電チューブアレイの構成を有し、前記各ガス放電チューブは、放電により真空紫外線を発する放電ガスが封入された厚み300μm以下のガラス細管から成り、前記真空紫外線を発する前面側と前記電極基板に接する背面側を有すると共に、前記背面側の内壁面に紫外線反射層を有し、更に前記光源デバイスを、前記筐体が水平面に置かれた状態で各ガス放電チューブの前面側の配列からなる発光面が略垂直方向となるよう当該筐体内に配置されていることを特徴とする除菌用オゾン発生装置を提供する。
【0014】
ガス放電チューブの背面側の管壁面に設けられた紫外線反射層は、当該背面側管壁に接する電極基板が真空紫外線の照射を受けて劣化・損傷することを防止する役目を持つ。またこの紫外線反射層は、特許文献2に開示した従来の紫外線発光用ガス放電チューブアレイにおいて、チューブの背面側に形成していた紫外線蛍光体層に代ってガス放電による真空紫外線の前面からの放射を増強する役目も持つ。
【0015】
更に、本発明による除菌用オゾン発生装置の第1の形態においては、VUV面光源デバイスとしてのガス放電チューブアレイを、上下両面に通気孔を設けた筐体の中に発光面を略垂直方向に立てた状態で配置した。この配置により、光源デバイスの発熱により生じた上昇気流を利用して筐体の下面から導入した新しい空気を発光面に送ると同時に、発光面に沿って発生したオゾンを筐体上面の通気孔から送り出す。なお、この明細書において、「略垂直方向」等、方向における「略」は、基準となる方向に対して±15°以内、好ましくは±8°、より好ましくは±3°の誤差範囲内であることを示す。
【0016】
また、異なる態様としてこの発明は、真空紫外線を発生する光源デバイスと、該光源デバイスを駆動する駆動回路基板と、該光源デバイスの発光面に送風する送風ファンと、を備え、前記光源デバイスは、絶縁基板の一面に放電間隙を構成する隙間を挟んで両側に広がる1以上の電極対を備えた電極基板と、該電極基板の上に前記隙間を横切る方向に配置された複数本のガス放電チューブからなるガス放電チューブアレイの構成を有し、各ガス放電チューブは、放電により真空紫外線を発する放電ガスが封入されたガラス細管から成り、かつ前記真空紫外線を放射する前面側と前記電極基板と接する背面側を有すると共に、前記背面側の管内壁面に紫外線反射層を有し、更に前記光源デバイスを、前記筐体内において各ガス放電チューブの前面側の配列から成る発光面が略水平方向となるよう配置すると共に、前記送風ファンを前記光源デバイスの発光面側に対向して配置したことを特徴とする除菌用オゾン発生装置を提供する。
【0017】
上記異なる態様における送風ファンは、紫外線の照射を受けて生成する分解汚染物質が発光面に堆積して紫外線の放射強度が低下することを防止する。この構成において更にVUV面光源デバイスの一つの構成要素である電極基板に複数の貫通スリットを設けて送風ファンからの送風が面光源デバイスの表裏を抜けて流れるようにすれば、生成したオゾンの環境空間への放出・拡散とチューブアレイの冷却に一層効果的である。
【0018】
更に本発明は、オゾン生成用の紫外線を発光するVUV面光源デバイス、該VUV面光源デバイスの発光面に沿った空気流を起こす送風ファンに加えて、前記VUV面光源デバイスを駆動する回路を搭載した駆動回路基板を一つの組み立て体(assembly)としてオゾン放出部を備えた筐体の中に収納したオゾン発生装置の構成を特徴とする。VUV面光源デバイスと駆動回路基板とを含む組み立て体を筐体の内部空間を縦に2分する仕切り部材として構成して脚台の上に配置し、該仕切り部材の両サイドの空間を脚台の下で繋いだU字型の空気通路を構成する。該U字型空気通路の一部に送風ファンを配置し、筐体上部から一方の空間に導入した空気を、仕切り部材の下端で折り返して光源デバイスの発光面側となる他方の空間を通してオゾンと共に上方に放出することができる。つまり、この構成においては、筐体の上面に空気の導入孔と排出孔をまとめて形成することが可能となる。
【0019】
また本発明の更に別の形態では、オゾンの他にオゾンから生成した活性酸素を利用した空気除菌装置を提供することができる。筐体の中に真空紫外線VUVと深紫外線UVCとを共通空間に発光するガス放電チューブアレイ式の面光源デバイスと、駆動回路基板とを収容して空気除菌装置を構成する。この装置においてVUVとUVCの面光源デバイスを点灯することで、真空紫外線VUVで発生したオゾンと、オゾンに対する深紫外線UVCの暴露で生成した活性酸素との共同作用により筐体内に導入した空気を除菌・消臭することができ、除菌された空気と残余のオゾンとを筐体から放出することで、周囲環境の空気を効果的に清浄化することができる。なお、環境空間への過度のオゾン放出は、人体に悪影響を及ぼす可能性があるので、周囲にオゾン濃度センサを配置して濃度が既定値を超えたとき、オゾンの発生量を少なくするように調節するか、或いは放出を停止するよう制御するのが望ましい。
【0020】
ここにおいて、駆動回路基板には、入力DC電圧を交番駆動電圧に変換するインバータ回路が含まれ、更に入力DC電圧を調整する手段を設けてオゾン発生量を制御することができる。或いは、交番駆動電圧の印加を断続的にオン/オフする時間を制御するタイマー回路を設けてオゾン発生量を調整するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オゾン生成用の真空紫外線光源デバイスとして水銀フリーのVUV面光源デバイスを使用するので、殺菌や消臭などの使用環境に対してより安全性の高いオゾン発生装置を提供することができる。またガス放電チューブアレイ式の光源デバイスは面発光であり、発光面の大きさを任意に設計できるので、オゾン発生量の大きな大型装置からオゾン発生量を調整できる可搬式の装置まで安価に提供することができる。その他、ガス放電チューブ特有の早い立ち上がり特性や、任意の時間間隔でのオン/オフ制御、或いは印加電圧の切り替え制御による発光強度の簡易な調整などの諸機能を実現できるので、使い勝手のよいオゾン発生装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明で利用するガス放電チューブの窒素雰囲気中と空気中における放射波長スペクトルの比較を示すグラフである。
【
図2A】真空紫外線VUVと深紫外線UVCとを同時発光するガス放電チューブアレイの発光波長スペクトル(a)と、VUVとUVC同時照射によるオゾンの減衰状況(b)と、アンモニアに対する消臭効果(c)を示す線図である。
【
図2B】VUVとUVC同時照射によるオゾンの減衰状況を示す線図である。
【
図2C】アンモニアに対する消臭効果を示す線図である。
【
図3】紫外線発光ガス放電チューブとそれを使用したVUV面光源デバイス及びその駆動原理を示す横断面図と斜視図並びに放電模式図である。
【
図4】電極基板の構成を示す平面図と断面図である。
【
図5】電極基板上にガス放電チューブを配列した構成を示す平面図と断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態によるオゾン発生装置の組み立て構成を示す内部透視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態によるオゾン発生装置の組み立て構成図である。
【
図8】本発明の第3実施形態によるオゾン発生装置の組み立て構成図である。
【
図9】本発明の第4実施形態によるオゾン発生装置の組み立て構成図である。
【
図10】本発明の第5実施形態によるオゾン発生装置の組み立て構成図である。
【
図11】本発明によるオゾン発生装置の第6実施形態を示す組み立て構成図である。
【
図12】本発明によるオゾン発生装置の駆動回路構成を示すブロック図である。
【
図13】VUV面光源デバイスのオン/オフ制御とオゾン発生量との関係を示すグラフである。
【
図14】DC入力電圧とオゾン発生量との関係を示すグラフである。
【
図15】発光面サイズ切り替え方式の構成を示す模式図である。
【
図16】オゾン発生装置の外観例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(真空紫外線光源デバイスの基本的構成と駆動原理)
図3(a)は、紫外線発光素子となるガス放電チューブの横断面図である。一例として長径寸法2mm、短径寸法1mm程度の扁平楕円断面を有するガラス細管10が、内部に真空紫外線を発光するネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスやHeとXe、或いはArとXeなどの希ガスを含んだ放電ガスを封入されてガス放電チューブ11を構成している。ガラス細管10の材料としては、安価な硼珪酸系のガラスや微量のフッ素等を添加して紫外線透過率を改良した硼珪酸系のガラスあるいは石英ガラスが用いられる。放電によって発生した真空紫外線が管壁を透過して充分に放射されるようガラス材料によっては肉厚が300μm以下若しくは100μm以下になるよう線引きされている。但し肉厚が50μm以下になると強度が不足して破損の危険があるので好ましくない。
【0024】
またガス放電チューブ11の横断面における背面側底部内面から側部内面にかけては、希ガス放電による真空紫外線が外に放射することを妨げる紫外線不透過層または紫外線反射層12が設けられている。即ち、オゾン発生装置用の紫外線光源デバイスとして、内部で発生した真空紫外線VUVがそのままガラス細管の全周から放射されると、近接配置された電極基板などの構成部材が損傷破壊される恐れがある。従って少なくとも後述する電極基板20と接するガス放電チューブ11の背面側底部内面に酸化マグネシューム(MgO)または酸化アルミニューム(Al2O3)、或いは二酸化珪素(SiO2)などの酸化物粉末から成る反射層12を形成しておく必要がある。
【0025】
他方、上記紫外線反射層12は、深紫外蛍光体層12Pで代替することができる。放電チューブ11の背面側底部内面に深紫外蛍光体層を設けた構成では、放電により発生した真空紫外線VUVの励起により深紫外蛍光体層12Pから例えば波長260nmにピークを有する深紫外線UVCの放射を得ることができる。同時に、
図2(A)を参照して前述したように、窒素雰囲気中での観測において蛍光体層の励起に使われなかった残りの波長178nmの真空紫外線VUVも薄いチューブ管璧を通して前方に放射されることが確認される。因みに上記260nm近辺にピーク波長を有する発光スペクトルは、例えばZnAl
2O
4系の蛍光体、或いはLaPO
4:Prのようなリン酸塩系の蛍光体、またはBa(ZrHf)SiO
2のようなケイ酸塩系の蛍光体材料を適用して製造したガス放電チューブで得ることができる。このようなUVC発光蛍光体は、特開2019-19251号公開特許公報などにも開示されている。なお、MgO等の反射材料に深紫外蛍光体材料を混合して紫外線反射性の蛍光体層12Pを形成してもよい。
【0026】
ガス放電チューブ11の背面側底部外面に対向して電極基板20が設けられている。電極基板20は、ガラスエポキシ等の絶縁支持体21をベースとしてその下面に電極対22Xと22Yを備え、上面にガス放電チューブ11が粘着層或いは接着層(粘着/接着層23)で支持されている。電極対22X、22Yは、ガス放電チューブ11の略中央部に放電間隙を構成する隙間24を挟んで両サイドに広がり、各ガス放電チューブの長手方向をカバーするパターンを有する。
【0027】
図3(b)は、複数のガス放電チューブ11を含んだガス放電チューブアレイ式の紫外光源デバイスを模式的に示す斜視図である。電極基板20を構成する絶縁支持体21の上には複数本のガス放電チューブ11が平行に配列されている。電極対22X、22Yは、複数本の複数本のガス放電チューブ11を共通に横切る隙間24を挟んで各ガス放電チューブ11の背面側底面に共通に対向するパターンを有している。
【0028】
図3(c)は、駆動原理を説明するための模式図である。電極対22Xと22Yに対し、インバータ回路25からP―P電圧1000~2000Vで周波数30~40KHzの交番駆動電圧が印加される。印加される交番駆動電圧の上昇過程において電極対間の隙間24に対応したガス放電チューブ11内の放電間隙で初期放電が発生し、引き続く交番駆動波電圧の上昇に伴ってガス放電チューブ11の長手方向に放電が拡張する。このような放電が交番駆動電圧の印加で交互に繰り返し発生する。そしてガス放電チューブに封入するガスをネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスとした場合、他のガスに比べて低い放電電圧で147nmと173nmの真空紫外線を発生することができる。この駆動原理と具体的な駆動回路は特許文献2に詳細に述べられている。
【0029】
(電極基板の構成例)
図4は、本発明の空気除菌装置として使用するオゾン発生装置の主体となる真空紫外線光源デバイスとしてのVUV面光源デバイスに好適な別の電極基板30の構成例を示す平面図と、B-B線矢視断面図及び長側縁部に沿った断面図である。この電極基板の基本的構成は先に述べた特許文献3に開示の構成と実質的に変わらない。
【0030】
この電極基板30は、絶縁支持体31とその下面に形成された電極対32X、32Yからなる。電極基板30には、絶縁支持体31と電極対32X、32Yを貫通する複数の貫通スリット(貫通孔)33が互いに平行に設けられている。この貫通スリット33は、その上に配列されるガス放電チューブに対して放熱用の通気孔の役目を持つ。
【0031】
絶縁支持体31は、厚さ1mm以下、好ましくは600~800μm程度のガラスエポキシ基板からなる。電極対32X、32Yは、ガラスエポキシ基板の下面に鍍金や蒸着等で形成された銅やアルミの金属導体層をパターニングして形成されている。なお、電極対32X、32Yの表面には図示しない絶縁膜がコートされる。
【0032】
図4(a)の長側縁部に沿った断面を示す
図4(c)から明らかなように、電極対32X、32Yは、互いの近接端部間に放電間隙を構成する隙間DGを隔てて離間する主電極部32Xa、32Yaと、副電極部32Xb、32Ybとに分割されている。副電極部32Xb、32Ybは、隙間DGおよび主電極部32Xa、32Yaを隔てて離間し、主電極部32Xa、32Yとスリットを介してその後端側に配置されている。主電極部の長さと副電極部の長さの分割比は任意でよい。後述するように、この電極構成により有効放電長を切り替えることができ、発光面全体としての紫外線の発光強度とそれに伴うオゾンの発生量を制御することが可能となる。
【0033】
電極基板30の貫通スリット33は、電極対32X、32Yの放電間隙を構成する電極対間隙DGと平行に複数本設けられ、この貫通スリット33により電極32X、32Yは主電極部、副電極部ともそれぞれ両サイドで連結された2連のラダーパターン(梯子形態)となる。なお貫通孔のパターンはスリット形状に限らず、その上面に配列されるガス放電チューブの背面側底面が部分的に露出するパターンであればよい。例えば、円形または四角形の貫通孔を分散配置したパターンであってもよい。この場合電極パターンも対応した貫通孔部の欠落したメッシュ状パターンとなる。勿論、ガス放電チューブ内での長手方向の一様な放電の広がりに支障を及ぼさないようスリット幅、或いは貫通孔による電極欠落部の幅は5mm以下にする必要があり、2~3mmが適当である。
【0034】
(VUV面光源デバイスの構成例)
図5(a)及び(b)は、上記スリット付きの電極基板30上に複数本のガス放電チューブ11を複数本配列して構成したVUV面光源デバイス50の平面図と、そのB-B矢視断面図である。但し、
図5(b)の中央部は図示の都合上省略している。
【0035】
紫外線発光素子としてのガス放電チューブ11は、
図3の(a)に示した基本構成と同等の構成を持つ。即ち、各紫外線発光用ガス放電チューブ11は、真空紫外線の透過が可能な100μm以下の肉厚を有する横断面が扁平楕円形または円形の硼珪酸ガラスの細管で構成され、内部にキセノン(Xe)を含んだ混合ガスが封入されている。因みに、100×42mmの電極基板30の上に、長さ(有効放電長)80mmで長径側外径2mm、短径側外径1mmのガス放電チューブ11を隣接するガス放電チューブとの間に0.5mmの間隙hを空けた2.5mmの配列ピッチで12本配列することにより、80×30mmの発光面サイズを持ったガス放電チューブアレイ式のVUV面光源デバイスが作られる。
【0036】
複数のガス放電チューブ11は、
図4に示した電極基板30の上に好ましくは白色の紫外線耐性を有する粘着/接着層37で支持されている。ガス放電チューブ11を粘着/接着層37で貼付けた場合には、電極基板30からガス放電チューブ11の個別の離脱が可能となり、修理・交換に好都合である。なお、ガス放電チューブ11の貼付けに際しては、電極基板30の通気孔としての各スリット33が粘着剤で塞がらないようにすることが重要である。
【0037】
図5(b)の断面構成に見られるように、真空紫外線発光面光源デバイスとして組み立てられたVUV面光源デバイス50においては、各ガス放電チューブ11の底面が電極基板30の貫通スリット33との交差部で部分的に露出した構成となる。また、隣接するガス放電チューブ11の相互間にも間隙hがあるので、当該間隙hと貫通スリット33との交差部分では上下に開放した通気孔がドット状に分散形成された状態となる。つまり、電極基板30の貫通スリット33は、各ガス放電チューブ11に対して部分的な放熱路として作用する。同時にこれらドット状の分散配置の通気孔は真空紫外線で発生したオゾンの放出路としても作用する。
【0038】
(オゾン発生装置の実施形態1)
図6は、本発明の第1の実施形態によるオゾン発生装置100の構成を模式的に示す内部透視図である。円筒型の筐体60は空気の導入口となる通気孔61を設けた底板62と、発生したオゾンの排出口となる通気孔63を形成した上板64を有する。また底板62の下には、設置面との間に空気の流通スペースを形成するためのゴム足65が緩衝機能を兼ねて設けられている。筐体60はオゾンや紫外線による損傷を避ける観点からステンレスレス等耐酸性の金属が好ましい。その他、樹脂或いは琺瑯や陶器で筐体を作ってもよい。
【0039】
筐体60の中には、上記ガス放電チューブアレイ式のVUV面光源デバイス66がその発光面をほぼ垂直にして図示しない支持具で底板62上に支持されている。また該VUV面光源デバイス66の背後には、同デバイスに交番駆動電圧を供給するインバータ回路を含む駆動回路基板67が、同じく図示しない支持具で底板62上に支持されている。
VUV面光源デバイス66が点灯すると、真空紫外線が放射され、発光面の前を流れる空気が分解されてオゾンが発生する。発生したオゾンはVUV面光源デバイス66の駆動に伴う発熱で生じた上昇気流とともに上板64の通気孔63を通して放出される。
【0040】
なお、上記実施形態1の構成においては、略垂直(縦方向)に置いたVUV面光源デバイス66の下に図示しない送風ファンを配置し、筐体下面の通気孔61から導入した空気を発光面に沿って発生したオゾンと共に上面の通気孔63から強制的に放出するようにすればオゾンの放出・拡散により効果的である。この場合、VUV面光源デバイス66と駆動回路基板67とをエアースペースを隔てて平行に配置した組み立て体(Assembly)とし、この組み立て体の発光面が略垂直方向となるよう筐体60の中に収納し、該組み立て体の下に送風ファンを配置した構成としてもよい。同組み立て体の下方から前記エアースペースを含めた面光源デバイスの両面を通って上方に向かう強制的な空気流を作れば、発生したオゾンの拡散・放出効果の増強に加えて、駆動回路基板と光源デバイスの過度の発熱を防ぐ効果がある。
【0041】
(オゾン発生装置の実施形態2)
図7に本発明によるオゾン発生装置100の第2の組み立て構成例を示す。ベース板110の上に送風ファン120とVUV面光源デバイス130とがそれぞれ支柱ピン111及び112で支持され、VUV面光源デバイス130の側方に駆動回路を搭載した駆動回路基板140が配置されている。ここに於いてVUV面光源デバイス130は、先に
図4及び5を参照して述べたスリット付き電極基板30を利用して組み立てられ、その発光面を下向きとして送風ファン120に対向するよう配置されている。従ってその発光面131は点灯動作中常に送風ファンからの送風に曝されて清浄に保たれる。同時に発光面近傍で発生するオゾンは、電極基板のスリットと隣接ガス放電チューブ間スペースの交差部にできる通気路を通して矢印で示した上方に放出される。また駆動回路基板140は、送風ファン120とVUV面光源デバイス130の間の通風路の側方スペースに縦向きに配置されていて、VUV面光源デバイス130と共に冷却される。
【0042】
VUV面光源デバイス130から放射される真空紫外線に曝されて送風ファン120や駆動回路基板140の部材が劣化することを防ぐため、送風ファン120や駆動回路基板140は発光面から少なくとも20mm、好ましくは40mm程度離して配置するのが望ましい。送風ファン120として市販の60mm角のファンを使用した場合、先に述べた発光面サイズが80×30mmの長辺側には20mm以上の間隔をとって駆動回路基板140を配置することができる。
【0043】
図7に示した構成例2のオゾン発生装置100は、全体として点線で囲んで模式的に示した筐体150の中に納められる。この際、ベース板110の下面にはクッション部材113を設けて、筐体内での衝撃を吸収する。また筐体150には図示省略した通気孔が上下及び/または前後/左右の側壁に複数設けられている。以上の構成例において筐体150のおよその外形寸法は縦横110×110mmで高さ95mmの方形のボックス型となるが、これに限らず、例えば丸い缶状であってもよい。なお筐体150の外観形状の1例については、
図16を用いて後述する。
【0044】
(オゾン発生装置の実施形態3)
図8に本発明によるオゾン発生装置100の第3実施形態の構成例を示す。この構成例3においては、駆動回路基板140を送風ファン120の裏側に配置した点が上記構成例1と異なっている。即ち、送風ファン120を挟んで送風側にVUV面光源デバイス130を正対配置し、吸気側に駆動回路基板140を正対配置した縦型の組み立て構成となっている。
【0045】
縦型配置のオゾン発生装置100においては、駆動回路基板140を送風ファン120の吸気側で効果的に冷却し、排気側の送風でVUV面光源デバイス130の発光面131に対する汚染物質の付着を効果的に排除する。同時に下向き発光面近傍で発生したオゾンを電極基板の貫通スリットを通して上方矢印の方向に放出する。この場合、縦方向の組み立て寸法が構成例1に比べて高くなるので、筐体150も高さが数センチ高い寸法のものが必要となる。
【0046】
(オゾン発生装置の実施形態4)
図9は、本発明によるオゾン発生装置の第4実施形態を示す概略構成図である。二つの面光源デバイス130aと130bとを2段階に組み合わせたオゾン発生装置の構成を示している。下段の光源130aは主として真空紫外線を発するガス放電チューブアレイの構成を有し、上段の面光源デバイス130bは、主として波長260nm近辺の深紫外線を放射するガス放電チューブアレイの構成を有する。何れの面光源デバイスも前述したスリット付き電極基板を基体としており、下段のデバイス130aは発光面を上向きとして真空紫外線VUVを上方に放射する。他方上段のデバイス130bは発光面を下向きとして深紫外線UVCを下方に放射する。他の構成は
図8の実施態様とか変わらない。
【0047】
かくして
図9のオゾン発生装置においては、下段のVUV面光源デバイス130aからの真空紫外線によりスリット付き電極基板を通して流入した空気が分解されてオゾンが生成される。そしてこのオゾンの一部が上段の面光源デバイスからの深紫外線の照射を受けて更に分解されて発生期の活性酸素となり、オゾンと共同して筐体内部を流通する空気の除菌・消臭作用を果たす。二つの光源デバイスで挟まれた共通空間で除菌された空気は、残存するオゾンと共に送風ファン120に煽られて上方に放出され、周囲環境の空気に対する除菌作用も並行して行うことができる。
【0048】
(オゾン発生装置の実施形態5)
図10(a)及び(b)に本発明によるオゾン発生装置の第5の実施形態に掛かる構成例を内部透視概略正面図及び側面図として示す。VUV面光源デバイス130は、上部仕切り板132Uの中程に形成された窓穴を挟んで、インバータ回路を搭載した駆動回路基板140と背中合わせに実装されている。上部仕切り板132Uの後ろ側(駆動回路基板140の実装面側)にL字型に折り曲げた下端が、下部仕切り板132Lの上端にねじ結合され、更に二段構成の脚台133の上にほぼ垂直に支持されている。脚台133の棚部には図示省略した電源回路やタイマーを含む制御回路が搭載されている。また下部仕切り板132Lを支持する脚台133の上面における下部仕切り板の前側(VUV面光源デバイス130の実装面側)には、送風ファン120が載置されている。上部仕切り板132Uおよび下部仕切り板132Lはそれぞれ略垂直に伸び、それらの結合体は金属容器151内の空間を
図10(b)において、下向きの矢印が記された右側の空間と、上向きの矢印が記された左側の空間とに仕切っている。
【0049】
上部仕切り板132Uの上端部には先端をL字型に折り曲げた取り付け金具が設けられ、その頂部に
図10(c)に示した上蓋136がねじ止めされている。上蓋136には、その上面を二分する上部仕切り板132Uとの結合位置を挟んで空気導入孔137と、オゾン排出孔138が設けられている。また上蓋136の空気導入孔側には、電源スイッチを兼ねたオゾン発生量調節用の回転式調整具139が取り付けられている。
【0050】
図10(a)及び(b)のように組み立てられたVUV面光源デバイス130をメイン要素とするオゾン発生機構101は、最後に
図10(a)及び(b)において点線で示したタンブラー型の金属容器151の中に納められて本発明による第5実施形態のオゾン発生装置が完成する。金属容器151は、この実施形態によるオゾン発生装置100の筐体に該当する。この構成においては、VUV面光源デバイス130を含む上部と下部の仕切り板132Uと132Lの組み立て体によりタンブラー型容器151の内部空間が縦に二つに分割された形となる。かくして送風ファン120の駆動により、
図10(b)の矢印で示すように縦に仕切られた空間をU字状に折り返す空気の流通路が形成されることになる。即ち、上蓋136の空気導入孔137から入った空気は、右側スペース(駆動回路基板140の取り付け面側)を下方に流れ、脚台133の隙間を通して反転し、左側スペース(VUV面光源デバイス130の取り付け面側)を上方に流れて排出孔138から放出される。この通路を流れる空気は、VUV面光源デバイス130の前において、該光源から放射される真空紫外線によりオゾンに分解され、空気流とともに排出孔138から放出され、周辺環境の空気を除菌することができる。
【0051】
(オゾン発生装置の実施形態6)
本発明においてオゾン発生のために用いるガス放電チューブアレイ式の真空紫外線光源デバイスは、電極基板をフレキシブルな樹脂フィルムで構成することによりチューブ配列方向に湾曲することが可能となる。従って、このフレキシブルな面光源を、円筒状の金属管の中に発光面が内側となるように丸めて縦に収容した構成を採れば、光源デバイスを熱源とした煙突効果による上昇気流を利用して発生したオゾンをより効果的に拡散でき、大きな発光面を持つ小型のオゾン発生装置を得ることができる。勿論この場合、丸めた光源デバイスの下方に送風ファンを配置してもよい。
【0052】
図11は、上記のようにガス放電チューブアレイを円筒状に丸めて構成したVUV面光源デバイス130cを用いた空気除菌用のオゾン発生装置を第6実施形態として示す図である。この場合、面光源デバイス130cを構成するガス放電チューブ11は、フレキシブルな電極基板20の内側に円周方向に複数本配列されて、紫外線を円筒光源の内側に向けて放射する形となる。それぞれのチューブ11はVUVを発生する構成であってもよいし、VUVとUVCとを同時に発生する構成であってもよい。或いはVUVを発生するチューブとUVCを発生するチューブとを混在配列した構成とすることもできる。更には円筒状の面光源デバイス130cをVUV発光用の下段光源デバイスとUVC発光用の上段光源デバイスとの2段に重ねてVUVとUVCとが同時に発生する2段円筒状の構成としてもよい。この構成においては、先に
図9を参照して説明した実施形態4と同様にVUVで発生したオゾンの一部がUVCの照射で分解されて活性酸素が生成され、筐体60の中に吸い込まれた空気をオゾンと活性酸素の共同作用で除菌・消臭することができる。上段及び下段の光源デバイスを別々の駆動回路を設けて個別に制御できるようにすれば、オゾンの発生量と発生期の酸素の発生量を最適状態にコントロールすることが可能となる。
上記実施態様6のオゾン発生装置において、円筒状光源デバイス内の通風路で除菌された空気と残存オゾンは、円筒状光源デバイス130cの下方に配置された送風ファン120の作用で筐体上方から放出されて周囲空間の清浄化が行われる。
【0053】
上記円筒状光源デバイス130cとその下方に配置した送風ファン120との組み立て体を、円筒型またはタンブラー型の筐体60(
図11では便宜上点線箱型形状で示す)の中に同軸的に収納することにより、筐体内には内筒となる光源デバイスで仕切られた内外二つの空気流通路ができる。従って、筐体内壁と光源デバイスの間にできる空気通路の上端に対応して空気の吸い込み口を配置し、円筒状光源デバイス内側の空気通路上端に対応して空気の排出口を設ける。かかる構成によりVUVとUVCの照射面となる内部通路において、そこを通過する空気は、生成されたオゾンと活性酸素と紫外線の相互作用により除菌・消臭され、残存オゾンと共に送風ファン120の作用で筐体上部から放出され、周囲空間の清浄化が行われる。
【0054】
なお、この実施形態6に於いても、照射面を内側に向けた外筒となる第1光源デバイスと、それより小さい直径を持って照射面を外側または内側に向けて配置した内筒としての第2の光源デバイスを用意し、これら二つの光源デバイスを二重筒構成のオゾン発生機構として筐体の中に縦方向に収容して大型の除菌装置を構成することもできる。外筒となる第1光源デバイスからの深紫外光UVCを、前述のスリット付きフレキシブル電極基板で構成した内筒となる第2光源デバイスからの真空紫外光VUVで生成したオゾンの一部に作用させて活性酸素を生成できる。かくして、筐体と外筒との間の隙間を通して取り込んだ空気を、オゾンと活性酸素で除菌した後、残存オゾンと共に両筒状光源デバイスの内側の空気通路を通して筐体上部から放出することができる。
【0055】
(駆動回路の構成例)
図12は、本発明によるオゾン発生装置の駆動回路構成例を示すブロック図である。ガス放電チューブアレイ式のVUV面光源デバイス130に対して交番駆動電圧を供給するインバータ回路141が接続され、更にプログラマブルタイマー142を含んだ制御回路143と、送風ファン120が設けられる。制御回路143は、例えばマイクロコンピュータを用いた回路で実現できる。制御回路143には電源スイッチPWと、スタートボタンST及び強弱選択ボタンHLが付設されている。電源としては12VのDC電圧が用いられる。この電源は筐体150の外または内に置いた電池でもよいし、100Vの商用電圧をDC変換するACアダプタでもよい。
【0056】
ユーザーが電源スイッチPWをオンにしてスタートボタンSTを押すと、制御回路143は、動作中ランプONが点灯すると共に、プログラマブルタイマー142の第1設定による時間計測を開始し、同時にインバータ回路141を制御して交番駆動電圧をVUV面光源デバイス130に印加させる。ここで、ユーザーが強弱選択ボタンHLの弱ボタンLを押すと、制御回路143はタイマー回路142の第2設定を有効とし、インバータ回路141の動作が例えば数分の周期でオン/オフ交互に切り替わるように制御する。これによりVUV面光源デバイス130からの真空紫外線の放射が断続的に行われる。制御回路143は、インバータ回路141を周期的にオン/オフさせることを繰り返すことで、オゾンの発生量を面光源の点灯時間に応じて制御できる。強弱選択の強ボタンHがユーザーにより押されると、制御回路143は、インバータ回路141からの交番駆動電圧の供給が連続的に行われるように制御する。このとき、最大レベルのオゾン発生量となる。勿論、制御回路143がタイマー回路142のオン/オフ切り替えのデューティ比や時間を任意に設定することにより、オゾン発生量の調整を多段階で行うことも可能である。また、前記タイマー回路142の第1設定時間は、例えば30分または1時間に設定され、制御回路143は、当該設定時間の動作が経過したら電源スイッチPWを強制的にオフにして、安全を確保するように制御する。
【0057】
(オゾン発生量の制御)
(オゾン発生量制御その1)
図13は、先に例示した発光面サイズ80×30mmのガス放電チューブアレイ式の真空紫外線光源デバイス130を内容積9.8リットルの密閉容器に入れ、プログラマブルタイマー142を用いて点灯動作をオン/オフ制御した場合のオゾン発生量のモニタリング線図である。データ線M1は、VUV面光源デバイス130の点灯を5分(300秒)毎にオン/オフして容器内のオゾン濃度が20ppmに達するまでのオゾン発生量の増加の状況を示し、データ線M2は20分間連続点灯することでオゾン濃度が20ppmに達したことを示している。この線図から明らかなように本発明のオゾン発生装置では、VUV面光源デバイスに使用するガス放電チューブが高速の応答性を有するので、光源オン/オフのデューティ比を任意に設定することでオゾンの発生量を複数段階に制御することが容易に可能となる。
また本発明で用いる面光源デバイスに印加する駆動電圧は30~40KHzの交番波であり、動作期間中連続的に印加する連続駆動ケースと、数ミリ秒単位で間欠的に印加するバースト駆動ケースがある。ここでバースト駆動ケースにおけるバースト周期のデューティ比を変えると発光強度が変化し、それに伴いオゾンの発生量を制御することができる。デューティ比の制御は制御回路143のプログラム設定で行うことができる。
【0058】
(オゾン発生量制御その2)
なお、オゾン発生量を調整する別のやり方として、本発明においてはVUV面光源デバイス130に印可する交番駆動電圧のレベルを切り替える構成を採ることができる。この場合、
図12の駆動回路構成におけるプログラマブルタイマー142に代えて/若しくは追加して点線で示したDC-DCコンバータ144を設ける。これによって、インバータ回路141に対する入力DC電圧を、上記オゾン発生量の強弱選択ボタンHLに対応して、例えば12Vと8Vの間で切り替えできるような構成とする。この電圧切り替え用のDC-DCコンバータ144は、最も簡単には入力DC電圧を抵抗分割する形で構成することができる。即ち、インバータ回路141のDC入力側に強弱選択ボタンLまたはHに対応する接続スイッチ介して所定抵抗値の分圧抵抗器を追加すればよい。また交番駆動電圧のレベルを制御する方法としては、インバータ回路の切り替え用パルス幅を制御するやり方を用いても良い。
【0059】
図14は、DC入力電圧の変化に対する1時間当りのオゾン発生量の変化の状態を示す線図である。この線図から、入力DC電圧が8Vの場合、1時間当りのオゾン発生量はほぼ2.4mg/Hrとなり、DC電圧が12Vの場合は1時間当り4.4mg/Hrのオゾン発生を確認することができる。この間、インバータ回路141に含まれる図示しない昇圧トランスからVUV面光源デバイス130の電極対間に印可される交番駆動電圧は、点灯動作の可能な1500Vから2000Vの範囲で切り替わる。
【0060】
(オゾン発生量制御その3)
更にオゾン発生量の他の切り替え方式として、本発明においては、VUV面光源デバイスの有効発光面サイズを変更するやり方が提案される。即ち、
図5を参照して先に述べたような80mm長の12本のガス放電チューブをスリット付き電極基板上に平行配列したVUV面光源デバイス130において、分割した主電極部32Xa、32Yaと副電極部32Xb、32Ybとを接続した状態で駆動する。その場合は、フルサイズの発光面から真空紫外線放射を行うことができる。他方、副電極部32Xb及び32Ybを主電極部から切り離し、主電極部32Xaと32Yaとの間のみで放電動作を行う。その場合は、主電極部の長さに対応したパーシャルサイズの発光面から真空紫外線放射を行うことができる。
【0061】
図15は、発光面サイズ切り替え方式によるオゾン発生量の調整原理を模式的に示している。即ち、発光面サイズの大きさは当然真空紫外線の発光強度に関係するので、それに応じてオゾン発生量も変化する。従ってオゾン発生量の選択ボタンHLを主電極と副電極との接続スイッチSWx、SWyに関連づけておくことにより、オゾン発生量の強弱を2段階で切り替えることが可能となる。
【0062】
(オゾン発生装置の外観構成例)
図16は、本発明によるオゾン発生装置の外観構成例を示す斜視図である。一例として
図7または
図8に示したオゾン発生用の組み立て体を収容する筐体150は、幅(W)100mm、奥行き(D)80mm、高さ(H)165mmの大きさの縦長四角缶であり、上下四辺に複数の通気孔211を有する。前面にはタイマーパネル212と電源スイッチPW、スタートボタンST、強弱選択ボタンHLが配置され、タイマーパネル212には動作時間やデューティ比などをプログラム設定する操作ボタンが付けられている。また振動吸収のため底面四隅には図面上隠れたゴム足が設けられ、筐体の底板は、設置面から浮いた状態となるように構成されている。この結果、底板に設けた通気孔211からの空気が内部に組み込まれた送風ファン120により効果的に吸い込まれ、VUV面光源デバイス130の冷却と上板の通気孔211からのオゾン放出がスムースに行われる。
【0063】
(その他の変形例)
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず種々の変形が可能である。例えば、
図8を参照して説明した第3実施形態のオゾン発生装置において、各ガス放電チューブ11をVUVとUVCとを同時に放射する構成し、かつ筐体150の発光面側をオープンとすることにより、VUVで生成したオゾンと共に深紫外線UVCを前方に照射することができる。つまりオゾンを含んだ深紫外線照射装置を構成して、照射対象空間や対象物表面をオゾンと紫外線とで効果的に除菌することが可能となる。
【0064】
また
図4(c)及び
図14に示した発光面サイズ切り替え形式のVUV光源デバイスに使用する電極基板においては、主電極部32Xa、32Yaを絶縁支持体31の裏面に形成し、副電極部32Xb及び32Ybを絶縁支持体31の表面に形成する構成としてもよい。主電極対間のみでの部分サイズ発光動作の場合と、主電極と副電極連動のフルサイズ発光動作の場合とで供給する電力量は当然異なることになる。
【0065】
なお、本発明のオゾン発生装置は、
図15に示したような単独の装置として構成する以外に、ガス放電チューブアレイ式のVUV面光源デバイスとその駆動回路から成るオゾン発生機構(モジュール)として、例えば空気清浄機や除湿器、或いはエアコンディショナ等に組み込んだ複合機の形で構成してもよい。
【0066】
何れにしても本発明による除菌装置としてのオゾン発生装置は、水銀フリーの真空紫外線発光用面光源デバイスを主体としているので、環境破壊の問題が無いほか、オゾン発生量の制御も容易なので、居住空間やオフィス或いは車内の殺菌・消臭用などに用いる可搬型のオゾン発生装置又は除菌装置として空気中や物体表面のウイルスや細菌の除菌に極めて有益である。
【0067】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0068】
10:ガラス細管、 11:ガス放電チューブ、 12:反射層、 20,30:電極基板、 21,31:絶縁支持体、 22X,22Y,32X,32Y:電極対、 23,37:粘着/接着層、 24:電極対間隙、隙間、 25,141:インバータ回路、 32Xa,32Ya:主電極部、 32Xb,32Yb:副電極部、 33:貫通スリット、 50,66,130:真空紫外線光源デバイス、VUV面光源デバイス、 60:筐体、 61,63,211:通気孔、 65:ゴム足、 67,140:駆動回路基板、
100:オゾン発生装置、 101:オゾン発生機構、 110:ベース板、 111,112:支柱ピン、 113:クッション部材、 120:送風ファン、 131:発光面、 132U:上部仕切り板、 132L:下部仕切り板、 133:脚台、 、136:上蓋、 137:空気導入口、 138:オゾン排出口、 139:回転式調整具、 142:プログラマブルタイマー、タイマー回路、 143:制御回路、 144:DC-DCコンバータ、 150:筐体、 151:金属容器、 212:タイマーパネル
HL:強弱選択ボタン、 ON:動作中ランプ、 PW:電源スイッチ、 ST:スタートボタン