(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】浴用材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61H 33/04 20060101AFI20221116BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221116BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20221116BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20221116BHJP
A61K 8/9761 20170101ALI20221116BHJP
【FI】
A61H33/04 Z
A61Q19/10
A61K8/9794
A61K8/99
A61K8/9761
(21)【出願番号】P 2022059969
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518377263
【氏名又は名称】株式会社暖処和光
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】飯山 吉章
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063998(JP,A)
【文献】特開平11-192277(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213491(JP,U)
【文献】特開平11-216168(JP,A)
【文献】特開昭63-009438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00-14
A61K 8/9761
A61Q 19/10
A61K 8/9794
A61K 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有
し通気性のある袋に、原材料として檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、前記開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように前記
袋を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含
み、
前記微生物含有液は、微生物、米糠、及び黒蜜を配合した水溶液の状態で、微生物を培養して得たものである、浴用材の製造方法。
【請求項2】
前記発酵工程において、前記
袋に前記混合物を収納した状態で発酵させる、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程において、上部が開口した断熱箱に前記混合物を収納した状態で発酵を行う、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記発酵工程は、前記混合工程後前記混合物を静置する予備発酵工程と、前記予備発酵工程後、前記微生物含有液及び/又は水を配合して発酵を行う本発酵工程を含み、
前記微生物含有液及び/又は前記水は、前記混合工程及び前記本発酵工程に分けて投入される、請求項1~
3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記原材料の総質量が、40kg以下である、請求項1~
4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の製造方法により製造された前記浴用材を浴用材の種とし、前記浴用材の種、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び前記微生物含有液を投入し空気が混入するように混合した後、発酵させる工程を含む、浴用材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の製造方法により製造され、冷却された前記浴用材に米糠及び前記微生物含有液を投入し、空気が混入するように混合した後、再度発熱させる工程を含む、浴用材の製造方法。
【請求項8】
開口部を有
し通気性のある袋に、原材料として、予め準備した冷却済みの浴用材の種、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、前記開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように前記
袋を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含み、
前記
の冷却済みの浴用材の種は、檜おが屑、米糠、小麦粉及び前記微生物含有液を空気が混入するように混合し、発酵熱を発生させた後、冷却したものであ
り、
前記微生物含有液は、微生物、米糠、及び黒蜜を配合した水溶液の状態で、微生物を培養して得たものである、浴用材の製造方法。
【請求項9】
前記浴用材の種は、請求項1~
7に記載の製造方法によって製造されたものである、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記発酵工程は、前記混合工程後前記混合物を静置する予備発酵工程と、前記予備発酵工程後、前記微生物含有液及び/又は水を配合して発酵を行う本発酵工程を含み、
前記微生物含有液及び/又は前記水は、前記混合工程及び前記本発酵工程に分けて投入される、請求項
8又は
9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項
8~
10の何れか一項に記載の製造方法により製造され、冷却された前記浴用材に、米糠及び前記微生物含有液を投入し、空気が混入するように混合した後、再度発熱させる工程を含む、浴用材の製造方法。
【請求項12】
檜おが屑、米糠、及び微生物含有液を混合し、発酵させて得た浴用材を再発熱させる再発熱工程を含み、
前記再発熱工程が、開口部を有
し通気性のある袋に、再発熱させる前記浴用材と前記微生物含有液を投入し、前記浴用材に空気が混入するように前記
袋を振盪させることで前記浴用材を混合する再混合工程と、得られた混合物を発酵させる再発酵工程を含
み、
前記微生物含有液は、微生物、米糠、及び黒蜜を配合した水溶液の状態で、微生物を培養して得たものである、浴用材の製造方法。
【請求項13】
請求項1~
11の何れか一項に記載の方法で製造された前記浴用材を再発熱する、請求項
12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記浴用材が手又は足用である、請求項1~
13の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴用材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素風呂は、おが屑や木屑等に、米糠や植物等を発酵させて得た発酵液を加えて発酵させて得た放熱材に、身体を埋めて温浴するものである。酵素風呂は、その遠赤外線による効果・効能が話題となり、美容及び健康促進の面から注目されている。
【0003】
酵素風呂は、おが屑等の生の原料を使用するため、その製造及び維持において適切な管理を行わないと、害虫の発生や腐敗による悪臭の発生が生じやすい。また、酵素風呂の浴用材を温浴用に適切な高温まで上昇させるために、経験に富んだ熟練の職人が、温度等の外部環境に応じて原料・水分量等の細やかな微調整を行うなど、酵素風呂の管理に手間が生じていた。
【0004】
そこで、酵素風呂の管理を容易にするため、様々な工夫がなされている。
例えば、特許文献1には、50~65℃に熱せられる好気性発酵層の上層と、40~45℃に熱せられる嫌気性発酵槽の下層の2層構造を備える酵素風呂が開示されている。これにより、浴剤全体を定期的に攪拌したり、浴剤全体を定期的に入れ換えたりする必要がなくなり、浴場の管理がしやすく省資源化を実現できる。
【0005】
また、上述の酵素風呂の技術を適用した足湯が考案されている。例えば、特許文献2には、オガクズを基材とする発酵原料を収納した容器に両下肢を挿入して使用する、酵素熱を使用した足温器が開示されている。また、特許文献3には、米糠を主成分とする酵素温床剤と、薄型ヒータの発する熱を利用する、酵素足湯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-192277号公報
【文献】実用新案昭63-11032号公報
【文献】特開2018-42880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の酵素風呂用の浴用材は、その製造に長年の経験が必要とされており、素人が浴用材として使用できるほどの安定した発熱持続性を有する浴用材を製造するのは困難であった。
また、酵素風呂用の浴用材は、数百リットルの体積を一度に製造するのが一般的であり、30kg程度の少量ボリュームで発熱させようとすると、発酵熱と放射冷却のバランスをとるのが難しく、十分な発熱が得られないといった問題があった。
【0008】
上記事情に鑑み、熟練の職人でなくとも手軽に実施可能な浴用材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、開口部を有する容器に、原材料として檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、前記開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように前記容器を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含む、浴用材の製造方法である。
【0010】
檜おが屑等を含む浴用材の製造では、微生物含有液に含まれる好気性微生物の活動を活発にするため、原材料の全体に空気をいきわたらせるよう撹拌混合する必要がある。本発明の製造方法によれば、容器を振盪させて材料を混合させるため、材料に空気を混入させつつ均一に混合することが可能となる。
【0011】
また、原料として小麦粉を配合することで、小容量で製造した場合であっても十分に発熱する浴用材を得ることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記容器が、通気性を有する容器である。
通気性を有する容器を用いることで、発酵工程において結露が発生しにくく、発酵過程での当該結露による浴用材の腐敗を防止することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記発酵工程において、前記容器に前記混合物を収納した状態で発酵させる。
上記形態とすることで、檜おが屑や米糠等の有機物を含む前記混合物に対し、虫よけのため別途網等を準備する手間が不要となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発酵工程において、上部が開口した断熱箱に前記混合物を収納した状態で発酵を行う。
上記形態とすることで、発酵工程において温度を保持し、効率的に発酵熱を上昇させることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記発酵工程は、前記混合工程後前記混合物を静置する予備発酵工程と、前記予備発酵工程後、前記微生物含有液及び/又は水を配合して発酵を行う本発酵工程を含み、
前記微生物含有液及び/又は前記水は、前記混合工程及び前記本発酵工程に分けて投入される。
混合工程と予備発酵工程に分けて微生物含有液、水等の水分を配合することで、水分調節が容易となり、過剰な水分の投入による失敗を防ぐことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記原材料の総質量が、40kg以下である。
本発明の製造方法は、特に40kg以下の小容量の浴用材を製造する場合に適する。そのため、原料の撹拌機器や、発熱させるための大規模なプール等の設備を用いることなく、手軽に浴用材の製造を行うことができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記微生物含有液は、微生物、米糠、及び黒蜜を配合した水溶液の状態で、前記微生物を培養して得たものである。
原料として特に黒蜜を配合した微生物含有液を用いることで、60℃以上の発熱持続性に優れた浴用材を製造することができる。
【0018】
また、本発明は、前記発酵工程及び前記混合工程を含む上述の製造方法により製造された前記浴用材を浴用材の種とし、前記浴用材の種、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び前記微生物含有液を投入し空気が混入するように混合した後、発酵させる工程を含む、浴用材の製造方法に関する。
浴用材の種を用いることで、種と同一品質の浴用材をより早く、大量に製造することができる。また、種を用いた製造においても小麦粉を配合することで、小容量で製造した場合であっても十分に発熱する浴用材を得ることができる。
【0019】
また、本発明は、前記発酵工程及び前記混合工程を含む上述の製造方法により製造され、冷却された前記浴用材に米糠及び前記微生物含有液を投入し、空気が混入するように混合した後、再度発熱させる工程を含む、浴用材の製造方法に関する。
微生物含有液を加えて再度発酵させ、発熱させることで、浴用材を複数回にわたって使用することができる。
【0020】
また、本発明は、開口部を有する容器に、原材料として、予め準備した冷却済みの浴用材の種、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、前記開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように前記容器を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含み、
前記浴用材の種は、檜おが屑、米糠、小麦粉及び前記微生物含有液を空気が混入するように混合し、発酵熱を発生させた後、冷却したものである、浴用材の製造方法である。
【0021】
本発明の製造方法によれば、浴用材の種を用いることで、種と同一品質の浴用材をより早く、大量に製造することができる。また、容器を振盪させて材料を混合させるため、材料に空気を混入させつつ均一に混合することが可能となる。
また、原料として小麦粉を配合することで、小容量で製造した場合であっても十分に発熱する浴用材を得ることができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記浴用材の種は、前記発酵工程及び前記混合工程を含む上述の浴用材の製造方法によって製造されたものである。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記発酵工程は、前記混合工程後前記混合物を静置する予備発酵工程と、前記予備発酵工程後、前記微生物含有液及び/又は水を配合して発酵を行う本発酵工程を含み、
前記微生物含有液及び/又は前記水は、前記混合工程及び前記本発酵工程に分けて投入される。
混合工程と予備発酵工程に分けて微生物含有液及び水等の水分を配合することで、水分調節が容易となり、過剰な水分の投入による失敗を防ぐことができる。
【0024】
また、本発明は、上述の製造方法により製造された浴用材を浴用材の種として用いて製造され、製造後冷却された前記浴用材に、米糠及び前記微生物含有液を投入し、空気が混入するように混合した後、再度発熱させる工程を含む、浴用材の製造方法である。
微生物含有液を加えて再度発酵させ、発熱させることで、浴用材を複数回にわたって使用することができる。
【0025】
また、本発明は、檜おが屑、米糠、及び微生物含有液を混合し、発酵させて得た浴用材を再発熱させる再発熱工程を含み、
前記再発熱工程が、開口部を有する容器に、再発熱させる前記浴用材と前記微生物含有液を投入し、前記浴用材に空気が混入するように前記容器を振盪させることで前記浴用材を混合する再混合工程と、得られた混合物を発酵させる再発酵工程を含む、浴用材の製造方法である。
再発熱工程を含むことで、浴用材を複数回にわたって使用することができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記発酵工程及び前記混合工程を含む上述の方法で製造された前記浴用材を再発熱することを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記浴用材が手又は足用である。
本発明の製造方法によれば、小容量で発熱可能な浴用材を得ることができるため、手又は足等の局所用の温浴に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の浴用材の製造方法によれば、容器を用いた簡便な方法により浴用材を撹拌混合し、発酵熱を発生させることができるため、熟練の職人でなくとも手軽に浴用材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の浴用材の製造方法の製造工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の説明に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0031】
本発明において、「浴用材」とは、入浴の際に使用される発熱材を意味し、具体的には、酵素風呂で用いられる発熱材のことをいう。
また、本発明において、「発酵」とは、微生物による好気性発酵(いわゆる酸化発酵)及び嫌気性発酵の何れも含むものとする。
【0032】
また、以下で詳述するように、本発明では、水分量の調節のため「水」を投入する場合がある。かかる場合に使用する水の温度は特に限定されないが、より発酵の開始を早める場合には、40~60℃を使用することが好ましく、50~60℃を使用することがより好ましい。
【0033】
(1)浴用材の製造方法
本発明の浴用材の製造方法は、容器に原料を投入し、原材料に空気が混入するように容器を振盪させることで原材料を混合することを特徴とする。これにより、原材料に空気を送り込みつつ、原材料を素早く均一に混ぜ合わせることができる。
【0034】
使用する容器は、通気性を有することが好ましい。これにより、袋内での好気性発酵が促進され、放熱温度の高い浴用材を得ることができる。
【0035】
容器の形状は特に特定されないが、好ましくは袋状であることが好ましい。袋を用いることで、製造を迅速に行うことができるとともに、片付けが容易になるというという利点がある。用いる袋としては、ナイロン製のコンバイン袋が好ましく挙げられる。
【0036】
袋の容積は、製造する浴用材の体積に応じて適宜選択することができる。具体的には、20~120Lであることが好ましく、30~110Lであることがより好ましい。
上記の容積を有する袋は、以下に示す混合工程において、製造者が袋を振盪させて、袋ごと原料を混合する際に適した大きさである。
【0037】
また、本発明の浴用材の製造方法は、小容量での製造が可能である。具体的には、原料の総質量が好ましくは50kg以下、より好ましくは40kg以下、さらに好ましくは30kg以下である。
【0038】
以下、本発明にかかる浴用材の製造方法について、詳細に説明を加える。
【0039】
本発明の浴用材の製造方法は、開口部を有する容器に、原材料として檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように容器を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程S11と、得られた混合物を発酵させる発酵工程S12を含む。
【0040】
本発明に使用する檜おが屑及び米糠は、市販のものを使用することができる。また、米糠は、乾燥粉末を用いることが好ましい。
【0041】
本発明に用いる微生物含有液は、所定期間培養することで活性化した微生物、及び微生物による発酵産物を含む。本明細書において、微生物含有液は、酵素液ともいう。
【0042】
微生物含有液は、微生物、米糠、及び糖類と、適宜水を配合し、好ましくは3日間以上培養させることで得ることができる。微生物含有液の培養は、室温20℃、相対湿度35%の条件下で行うことが好ましい。培養する水溶液に含まれる水は、微生物が増殖可能であれば特に含有量は制限されない。また、下記に示すEM菌-1のような液状で販売される微生物をそのまま配合することで水分を加えてもよい。
【0043】
微生物含有液の製造に使用する微生物は、前記発酵工程において活性を示すものであれば特に限定されない。例えば、好気性微生物、嫌気性微生物、又これらが共存していてもよく、具体的には、硝酸化成菌、糸状菌、酵母菌、乳酸菌、及び放線菌等が挙げられる。
本発明においては、乳酸菌、及び/又はEM菌(製品名:EM菌-1、EM研究所製)等を好ましく用いることができる。
【0044】
糖類としては、黒蜜、オリゴ糖、蜂蜜、白糖等が挙げられるが、本発明においては黒蜜を用いることが好ましい。
糖類として黒蜜を配合した微生物含有液を用いて製造された浴用材は、60℃以上の温度安定性に優れる。
【0045】
米糠は、乾燥粉末であることが好ましい。
また、その他植物・海藻粉末等を微生物含有液の原料として適宜配合することもできる。植物・海藻粉末としては、ヨモギ、ハーブ、コンブ粉末等が挙げられる。
【0046】
本発明においては、得られた微生物含有液は、原液のまま用いることもできるし、水で希釈して用いることもできる。原料コストの削減の観点からは、微生物含有液を希釈して用いることが好ましい。微生物含有液の希釈濃度は、好ましくは3~10%、より好ましくは5~10%である。
【0047】
また、本発明では、原材料として小麦粉を投入することが好ましい。小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉等を用いることができるが、本発明においては薄力粉を用いることが好ましい。
小麦粉は、発酵時に使用される蛋白源として配合される。小麦粉を配合することにより、小容量で浴用材を製造した場合であっても、60℃以上に素早く発熱させることができる。
【0048】
次いで、本発明の製造方法の各工程について、説明を加える。
【0049】
(1-1)混合工程S11
混合工程S11では、初めに、檜おが屑、米糠及び微生物含有液を容器に投入する。
【0050】
檜おが屑の配合量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは15~30質量%、より好ましくは20~30質量%、さらに好ましくは20~28質量%である。
【0051】
米糠の配合量(乾燥質量)は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは20~65質量%、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは30~50質量%、特に好ましくは30~45質量%である。
また、米糠は乾燥粉末を用いることが好ましい。
【0052】
小麦粉の配合量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1~20質量%、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%、特に好ましくは3~13質量%である。
【0053】
微生物含有液の配合量は、微生物含有液(原液)の換算で、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.0001質量%以上である。具体的には、0.0001~0.5質量%とすることができる。
【0054】
また、原材料の水分調節のため、上記の原材料に加えて別途水を加えてもよい。一方、微生物含有液の希釈濃度を調節することで、原材料の総質量に対する水分量の割合を調節してもよい。
【0055】
原材料の総質量に対する水分の合計量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは10~45質量%、より好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~45質量%、特に好ましくは25~35質量%である。
ここで、本発明において、配合する原材料のうち「水分」とは、微生物含有液と、微生物を含まない水のことをいい、「水分の合計量」とは、前記微生物含有液と前記水の配合量の合計のことをいう。
【0056】
発熱温度が60℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、外部環境が温度20℃以上30℃未満の場合において、原材料の総質量(100質量%)に対し、檜おが屑を15~30質量%、米糠を20~60質量%、小麦粉を3~20質量%、水分を計15~45質量%配合することが好ましい。
浴用材を60℃以上に発熱させることで、腐食菌等の増殖を抑えることができる。
【0057】
また、発熱温度が80℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、原材料の総質量(100質量%)に対し、檜おが屑を20~30質量%、米糠を30~50質量%、小麦粉を3~13質量%、水分を計25~35質量%配合することが好ましい。
少量の原材料で浴用材を製造する場合、放熱により温度が上昇しにくいという問題があった。原材料を上記の配合量とし、最高発熱温度を80℃以上まで上昇させることで、小容量での製造であっても温浴に適した温度を保持可能な浴用材となる。
【0058】
なお、本発明において「温度が持続する」とは、一定の温度(例えば60℃以上)まで温度を上昇させる力を保持することをいう。浴用材の温度は、一日の時間帯に応じて変化するものであるため、一定期間内に温度が規定温度以下となる時があっても、原料を交換することなく撹拌し空気と混合させることで再度規定温度以上に発熱する能力を有する場合は、温度持続性があると判断する。
【0059】
各原料を投入後、水分が均一にいきわたるように素手で原料を混合することが好ましい。これにより、手に付着した常在菌を原料へと付着させることができる。
【0060】
その後、容器の開口部を閉じ、容器ごと上下左右にリズムよく振盪して原材料を混合させる。これにより、空気を原材料に混入させつつ、原料を均一に混合することができる。容器の振盪時間は、10分程度が好ましい。
【0061】
(1-2)発酵工程S12
発酵工程S12では、混合工程S11後、得られた混合物を静置して発酵させる。発酵工程S12は、予備発酵工程S12aと、本発酵工程S12bの2段階で行うことが好ましい。
【0062】
予備発酵工程S12aは、容器に混合物を入れた状態で混合物を発酵させる工程である。本工程では、混合物を30分間程度静置し、発酵させることが好ましい。
【0063】
本発酵工程S12bは、予備発酵工程S12a後、水を配合し、再度発酵を行う工程である。本工程で投入する水の量は、混合工程S11で配合した水の量に応じて適宜調節することが好ましい。ここで、上述の混合工程S11で記載した水分量の合計量は、混合工程S11で加える水分量と予備発酵工程S12aで加える水分量の合計量である。
このように、水等の水分を投入するタイミングを混合工程S11と、本発酵工程S12bの2回に分けて調節することで、水分を投入するタイミングが明確となり、水分量の調節を容易に行うことができる。
【0064】
また、本発酵工程S12bでは、水に代えて、又は水と共に、微生物含有液を投入してもよい。この場合、混合工程S11及び本発酵工程S12bで投入した微生物含有液(原液)の配合量の合計が、上述の混合工程S11で記載した微生物含有液(原液)の配合量(質量%)となることが好ましい。
【0065】
本発酵工程S12bでは、水と共に、乳酸菌を加えることが好ましい。用いる乳酸菌の種類は特に限定されず、その投入量は好ましくは1~10ml、より好ましくは3~5mlである。
【0066】
本発酵工程S12bにおける発酵期間は、好ましくは7日間以上である。この時、混合物は容器に収納された状態で発酵させることが好ましい。容器に収納した状態とすることで、混合物に虫よけのため別途網等を準備する手間が不要となる。
【0067】
また、本発酵工程S12bでは、混合物は容器ごと発泡スチロール等の断熱箱に入れて発酵させることが好ましい。さらに、箱の一部が開放された状態で発酵させることが好ましい。これにより、発酵時に結露が生じることによる混合物の腐敗を抑制することができる。具体的には、箱の上部、側部等の一部が開放されていればよい。本発明では、箱の上部が開放された状態で発酵を行うことが好ましい。
【0068】
また、本発酵工程S12bにおいて、24時間毎に容器を振盪させ、混合物に空気を混入させることが好ましい。これにより、発酵熱を安定して放出させることができる。
【0069】
発酵終了後、安定して熱が放出されるようになったら、得られた混合物は浴用材として使用可能となる。浴用材は、製造後すぐに使用してもよいし、容器を通気性のある蓋等で閉鎖するか、袋の場合は口を閉じて冷暗所に静置することで、保管することもできる。冷却した浴用材は、後述する(3)浴用材の再発熱によって、再度発熱させることができる。
【0070】
また、好ましい実施の形態では、混合工程S11で投入する水分量を一定にし、本発酵工程S12bにおいて、外部環境の温度及び相対湿度に応じて投入する水分量を調節する。これにより、水分量の調節を容易にすることができる。
【0071】
混合工程S11で投入する水分量を一定にする場合、混合工程S11で投入する水分量は、外部環境の温度が20℃以上30℃未満の条件下で、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは5~30質量%、より好ましくは15~30質量%、さらに好ましくは18~20質量%である。
混合工程S11において投入する水分量を上記の範囲とすることで、水分が過剰となることがなく、その後の発酵工程S12にて微生物を活性化させ、十分な発酵熱を放出させることができる。
この場合、混合工程S11において微生物含有液を含む必要分の水分量を投入し、本発酵工程S12bにおいては前記外部環境に応じた量の水を投入することが好ましい。
【0072】
(2)タネを用いた浴用材の製造方法
また、本発明は、浴用材の一部を種として利用した、浴用材の製造方法にも関する。投入する浴用材の種が発酵の「種菌」としての役割を果たすため、少量の浴用材の種を配合することで、浴用材の種と同品質の浴用材を短期間で容易に製造することができる。
【0073】
本発明における「浴用材の種」は、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を混合し、発酵熱を発生させた後、冷却したものをいう。本発明の好ましい実施形態では、浴用材の種は、上述の(1)浴用材の製造方法にて製造された浴用材の全部またはその一部である。
【0074】
以下、浴用材の種を用いた浴用材の製造方法(以下、種を用いた製造方法ともいう)について詳細に説明を加える。
【0075】
本発明の種を用いた製造方法は、開口部を有する容器に、冷却済みの浴用材の種、檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、開口部を閉じた後、原材料に空気が混入するように容器を振盪させることで原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含む。
浴用材の種は、上述の浴用材の製造方法等を用いて、予め製造したものであってもよい。
【0076】
(2-1)混合工程S21
混合工程S21では、浴用材の種に、新たに檜おが屑、米糠及び微生物含有液を混合する。好ましい混合方法、及び使用する原材料の詳細は、(1-1)の記載を援用する。
【0077】
檜おが屑の配合量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは30~65質量%、より好ましくは35~55質量%、さらに好ましくは35~50質量%である。
【0078】
米糠の配合量(乾燥質量)は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは30~65質量%、より好ましくは40~65質量%、さらに好ましくは50~60質量%である。
【0079】
小麦粉の配合量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.7~2.5質量%、さらに好ましくは1.5~2.5質量%である。
【0080】
浴用材の種の配合量は、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.7~2.5質量%、さらに好ましくは1.5~2.5質量%である。
【0081】
微生物含有液の配合量は、微生物含有液(原液)の換算で、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.0001質量%以上である。具体的には、0.0001~0.002質量%とすることができる。
【0082】
また、原材料の水分調節のため、上記の原材料に加えて別途水を加えてもよい。一方、微生物含有液の希釈濃度を調節することで、原材料の総質量に対する水分量の割合を調節してもよい。
【0083】
水分の合計量は、外部環境の温度が20℃以上30℃未満の条件下で、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.04~0.15質量%、より好ましくは0.05~0.1質量%、さらに好ましくは0.05~0.07質量%である。
【0084】
発熱温度が60℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、外部環境が温度20℃以上30℃未満の場合において、浴用材の種を0.7~2.5質量%、檜おが屑を30~65質量%、米糠を30~65質量%、小麦粉を0.7~2.5質量%、水分を計0.04~0.15質量%配合することが好ましい。
【0085】
また、発熱温度が80℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、外部環境が温度20℃以上30℃未満の場合において、浴用材の種を1.5~2.5質量%、檜おが屑を35~50質量%、米糠を50~60質量%、小麦粉を1.5~2.5質量%、水分を計0.05~0.07質量%配合することが好ましい。
【0086】
原材料の投入後、上記(1-1)に記載の通り、容器を振盪させて原材料を混合させる。容器の振盪時間は、10分程度が好ましい。
【0087】
(2-2)発酵工程S22
発酵工程S22では、混合工程S21後、得られた混合物を静置して発酵させる。発酵工程S22は、予備発酵工程S22aと、本発酵工程S22bの2段階で行うことが好ましい。
【0088】
予備発酵工程S22aは、上述の(1-2)に記載の予備発酵工程S12aと同様の手順で行うことができる。本工程では、混合物を5分間程度静置し、発酵させることが好ましい。好ましい実施の形態の詳細は、上述の(1-2)にかかる予備発酵工程S12aの記載を援用する。
【0089】
本発酵工程S22bは、上述の(1-2)に記載の本発酵工程S12bと同様の手順で行うことができる。なお、本発酵工程S22bでは、発酵時間は24時間程度である。好ましい実施の形態の詳細は、上述の(1-2)にかかる本発酵工程S12bの記載を援用する。
【0090】
なお、混合工程S21で投入する水分量を一定にし、本発酵工程S22bにおいて、外部環境の温度及び相対湿度に応じて投入する水分量を調節する場合、混合工程S21で投入する水分量は、外部環境の温度が20℃以上30℃未満の条件下で、原材料の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.01~0.07質量%、より好ましくは0.02~0.04質量%である。
【0091】
製造した浴用材は、製造後すぐに使用することもできるし、容器を通気性のある蓋等で閉鎖するか、袋の場合は口を閉じて冷暗所に静置することで、保管することができる。冷却した浴用材は、後述する(3)浴用材の再発熱よって、再度発熱させることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、好ましい形態として混合工程S21において容器を振盪させて原材料を混合する形態を例示したが、浴用材の種を用いた製造方法においては、原材料に空気が混入するように混合すれば、混合方法はこれに限定されない。例えば、上部開放型の容器に原材料を混入し、腕又は既存の撹拌機器を用いて材料を混合する方法を採用してもよい。
【0093】
(3)浴用材の再発熱
上述の製造方法により得られた浴用材は、一度冷却し、再度発熱処理を行うことで、酵素風呂の浴用材として使用できる。
すなわち、本発明は、檜おが屑、米糠、及び微生物含有液を混合し、発酵させて得た浴用材を再発熱させる再発熱工程を含む、浴用材の製造方法にも関する。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、再発熱させる浴用材は、上述の(1)浴用材の製造方法又は(2)タネを用いた浴用材の製造方法にて製造された浴用材である。
【0095】
以下、浴用材を再発熱する方法について、詳細に説明を加える。
【0096】
本発明の製造方法は、檜おが屑、米糠、及び微生物含有液を空気が混入するように混合し、発酵させて得た浴用材を再発熱させる再発熱工程を含む。再発熱工程は、開口部を有する容器に、再発熱させる浴用材と微生物含有液を投入し、浴用材に空気が混入するように容器を振盪させることで浴用材を混合する再混合工程S31と、得られた混合物を発酵させる再発酵工程S32を含む。
【0097】
なお、本明細書において、製造後、冷却された浴用材は、冷却浴用材ともいう。
【0098】
(3-1)再混合工程S31
再混合工程S31では、冷却浴用材に米糠及び微生物含有液を投入し、浴用材に均一に混合する。使用する原材料の詳細は、(1-1)の記載を援用する。
【0099】
米糠の配合量は、冷却浴用材100質量部に対し、好ましくは0.03~0.065質量部、より好ましくは0.04~0.055質量部、さらに好ましくは0.045~0.055質量部である。
【0100】
微生物含有液の配合量は、微生物含有液(原液)の換算で、冷却浴用材100質量部に対し、好ましくは0.0001質量部以上である。具体的には、0.0001~0.002質量部であることが好ましい。
【0101】
また、原材料の水分調節のため、上記の原材料に加えて別途水を加えてもよい。一方、微生物含有液の希釈濃度を調節することで、原材料の総質量に対する水分量の割合を調節してもよい。
【0102】
水分の合計量は、外部環境の温度が20℃以上30℃未満の条件下で、冷却浴用材100質量部に対し、好ましくは0.04~0.08質量部、より好ましくは0.04~0.075質量部、さらに好ましくは0.055~0.065質量部である。
【0103】
発熱温度が60℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、外部環境が温度20℃以上30℃未満の場合において、冷却浴用材100質量部に対し、米糠を0.03~0.065質量部、水分を計0.04~0.08質量部、配合することが好ましい。
【0104】
また、発熱温度が80℃以上であり、温度持続性に優れた浴用材を得るという観点からは、外部環境が温度20℃以上30℃未満の場合において、冷却浴用材100質量部に対し、米糠を0.04~0.055質量部、水分を計0.055~0.065質量部、配合することが好ましい。
【0105】
原料の投入後、固まった部分を潰しつつ、均一となるまで混合する。原料の混合は、素手で行ってもよいし、上記(1-1)と同様に容器を振盪させて原材料を混合させてもよい。容器を用いる場合、好ましい実施の形態は、上述の(1)の記載を援用する。
【0106】
(3-2)再発酵工程S32
再発酵工程S32では、再混合工程S31後、得られた混合物を静置して発熱させる。再発酵工程S32は、予備発酵工程S32aと、本発酵工程S32bの2段階で行うことが好ましい。
【0107】
予備発酵工程S32aにおける好ましい実施の形態の詳細は、上述の(2-2)にかかる予備発酵工程S22aの記載を援用する。
【0108】
本発酵工程S32bにおける好ましい実施の形態の詳細は、上述の(2-2)にかかる本発酵工程S22bの記載を援用する。
【0109】
なお、再混合工程S31で投入する水分量を一定にし、本発酵工程S32bにおいて、外部環境の温度及び相対湿度に応じて投入する水分量を調節する場合、再混合工程S31で投入する水分量は、外部環境の温度が20℃以上30℃未満の条件下で、冷却浴用材100質量部に対し、好ましくは0.01~0.07質量部、より好ましくは0.02~0.05質量部、さらに好ましくは0.02~0.04質量部である。
【0110】
再発熱工程を実施することで、一度50℃以下に冷却された浴用材であっても、簡便な方法で浴用材を発熱させることができる。
【0111】
また、本発明の製造方法により得られた浴用材は、その一部を新たな原材料と交換し、再度発熱処理を行うメンテナンス作業を行うことで、複数回使用することができる。
メンテナンス作業では、浴用材の一部を廃棄し、廃棄した質量分、檜おが屑及び米糠を当量混ぜたものを投入し、再度発熱処理を行う。当該発熱処理においては、さらに微生物含有液を投入することが好ましい。
【0112】
メンテナンス作業における混合方法、並びに微生物含有液、及び水分量の配合量は、上述の(3-1)の記載を援用する。かかる場合、(3-1)の記載のうち「冷却浴用材100質量部に対する質量部」との部分は、「混合する原料の総量100質量部に対する質量部」と読み替えて適用するものとする。
また、メンテナンス作業における発熱処理は、上述の(3-2)と同様の手順で行うことができる。
【0113】
本発明の製造方法により得られた浴用材は、酵素風呂用に用いることができる。
また、本発明の製造方法によれば、浴用材は30~40kg程度の少量単位で製造することができる。これにより、酵素風呂用の大容量のプール等の設備や材料撹拌用の専用機器を所持していなくとも、手軽に必要量の酵素風呂を手軽に製造することができる。
【0114】
また、得られた小容量の浴用材は、手、又は足湯用等の、体の局部に使用するための浴用材として用いることができる。具体的には、断熱箱に製造した浴用材を入れ、その中に手又は足を入れることで、天然の発酵熱による温浴を楽しむことができる。
【0115】
通常、酵素風呂は、微生物の状態により24時間毎に浴用材の温度状態が変化する。さらに、原材料を一から発酵させて浴用材を得る場合、浴用材として使用できるほど安定した温度となるまでに24時間以上の日数がかかる。そのため、天然の発酵熱のみを利用する酵素風呂の場合、酵素風呂の温度を顧客の方々に応じて直ちに上昇させることが困難であった。
【0116】
しかしながら、本発明の製造方法を用いれば、製造した浴用材を冷却して保存しておき、必要時に直ちに再発熱させて使用することができる。そのため、顧客の要望に応じて必要な量の浴用材を迅速に準備することができる。このように、本発明の製造方法によれば、ボイラー等の外部温熱器を使用せずとも、自然発生した発酵熱で好みの温度を調節することができ、さらには発生した遠赤外線で体を内部から温めることができるため、より顧客満足度の高い酵素風呂を提供することができる。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を用いて、より詳細に本発明について説明する。本実施例において、%(
パーセント)による表記は、特に断らない限り質量を基準としたものである。
【0118】
<試験例1>原料の混合量の検討
試験例1は、(1-1)酵素液(微生物含有液)の調整を除き、温度は20℃、相対湿度は50%の条件下で実施した。
【0119】
(1-1)酵素液(微生物含有液)の調整
黒糖を液体化した黒蜜を2L、微生物としてEM菌(EM-1、EM菌研究所製)を1Lと乳酸菌を10mL、米糠(粉末)を6L、昆布粉末10mL及びヨモギ粉末10mLを混合し、室温20℃、相対湿度35%の条件下で3日間静置した。得られた原液1Lに純水を14L加えて約7%に希釈し、酵素液(微生物含有液)を得た。
【0120】
(1-2)浴用材の製造
ナイロン製のコンバイン袋(外形:0.5m×0.3m×0.7m)に、下記表1の原料を順次投入し、素手で均等に混合した。その後、開封部分を閉じ、袋を胸の前に持ち上げて、上下左右にリズムよく10分間振盪した。振盪混合後、袋を30分間静置して予備発酵させた。
【0121】
【0122】
予備発酵後、コンバイン袋に上記表1の分量(2回目)の水と、乳酸菌を5mL加え、袋の上から揉みこんで均一に混合した。
その後、コンバイン袋を発泡スチロール製の断熱箱に入れ、直射日光及び風の当たらない場所で7日間静置し、本発酵させた。本発酵時、24時間毎に、混合物に空気を送り込むためにコンバイン袋を振って混合物を撹拌した。本発酵後、得られた浴用材のタネの最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表1)。
【0123】
(結果)
表1に示す通り、上記手順により、発熱可能な浴用材を得ることができた。また、実施例1-1~1-7は、60℃以上の温度を15時間以上保持していた。このことから、混合物の総量(100質量%)に対し檜おが屑を15~30質量%、米糠を20~60質量%、小麦粉を3~20質量%、水分を計15~45質量%配合することで、安定して60℃以上に発熱する浴用材を製造できることが分かった。
【0124】
また、実施例1-1~1-3は、80℃以上の温度を15時間以上持続していた。このことから、混合物の総量(100質量%)に対し檜おが屑を20~30質量%、米糠を30~50質量%、小麦粉を3~13質量%、水分を計25~35質量%配合することで、安定して80℃以上に発熱する浴用材を製造できることが分かった。
【0125】
(1-3)浴用材の種を用いた、30kgの浴用材の製造
(1-2)と同様のナイロン製のコンバイン袋に、下記表2の原料を順次投入し、団子状に固まった原料を潰しつつ、素手で混合した。浴用材の種は、上記(1-2)で製造した浴用材を風の当たらない場所で24時間かけて自然冷却したものを使用した。
混合後、開封部分を閉じ、袋を胸の前に持ち上げて、上下左右にリズムよく10分間振盪した。振盪混合後、袋を5分間静置して予備発酵させた。
【0126】
【0127】
予備発酵後、コンバイン袋に上記表2に示す分量の水と乳酸菌を3mL加え、袋の上から揉みこんで均一に混合した。その後、コンバイン袋を断熱容器に入れ、直射日光及び風の当たらない場所で静置し、本発酵させた。
本発酵後、得られた浴用材の最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表2)。
【0128】
(結果)
表3に示す通り、上述の製造方法により、60℃以上の放熱が可能な浴用材が製造された。また、実施例2-1~2-9の全てにおいて、材料の混合後、放熱開始までの時間は1時間であった。
【0129】
また、表3の実施例2-1~2-7は、60℃以上の温度を15時間以上保持していた。このことから、混合物の総量(100質量%)に対し、檜おが屑を35~65質量%、米糠を30~60質量%、浴用材の種を0.7~2.5質量%、小麦粉を0.7~2.5質量%、水分を0.04~0.15質量%配合することで、60℃以上の放熱安定性に優れた浴用材を製造できることが分かった。
【0130】
また、表2の実施例2-1~2-3は、80℃以上の温度を15時間以上保持していた。このことから、檜おが屑を35~50質量%、米糠を50~60質量%、浴用材の種を1.5~2.5質量%、小麦粉を1.5~2.5質量%、水分を計0.05~0.07質量%配合することで、60℃以上の放熱安定性に優れた浴用材を製造できることが分かった。
【0131】
また、浴用材の種を用いて製造することで、(1)に示した浴用材の製造よりも短期間で30kg程度の浴用材を製造することが可能となる。
【0132】
(1-4)浴用材の再発熱
(1-3)で得られた浴用材をナイロン袋に入れた状態で、該袋の開口部を閉じ、冷暗所に24時間静置して冷却した。その後、冷却された浴用材に下記表3に示す原材料を投入し、5分間予備発酵を行った。
【0133】
【0134】
予備発酵後、コンバイン袋に上記表3に示す分量の水を加え、袋の上から揉みこんで均一に混合した。その後、コンバイン袋を断熱箱に入れ、直射日光及び風の当たらない場所で本発酵させた。その後、得られた浴用材の最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表3)。
【0135】
表3に示す通り、上述の再発熱方法により、浴用材を再発熱できることが示された。また、実施例3-1~3-7は、60℃以上の温度を8~12時間保持していた。これにより、冷却済み浴用材100質量部に対し、米糠を0.03~0.065質量部、水分を0.04~0.08質量部配合することで、浴用材を60℃に再発熱させることができることが明らかとなった。
【0136】
また、実施例3-1~3-3は、最高温度が80℃以上まで上昇した。この結果から、冷却浴用材100質量部に対し、米糠を0.04~0.055質量部、水分を計0.055~0.065質量部配合することで、浴用材の最高温度が80℃以上まで再発熱させることができることが示された。
【0137】
<試験例2>酵素液(微生物含有液)の原材料の検討
(2-1)酵素液(微生物含有液)の調整
下記の表4の原料を混合し、室温20℃、相対湿度35%の条件下で3日間静置した。得られた原液を3倍希釈し、酵素液(微生物含有液)を得た。
【0138】
【0139】
(2-2)浴用材の製造
室温20℃、相対湿度30%の条件下で、ナイロン製のコンバイン袋を用いて、上記(1-2)と同様の手順で浴用材を製造した。原材料としては、檜おが屑を5L、米糠を15L、小麦粉を0.007kg、酵素液(微生物含有液)を0.25L、水を2L配合した。
本発酵後、得られた浴用材の最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表5)。
【0140】
(2-3)浴用材の種を用いた浴用材の製造
室温20℃、湿度50%の条件下で、ナイロン製のコンバイン袋を用いて、上記(1-2)と同様の手順で浴用材を製造した。すなわち、檜おが屑13kg、米糠15kg、浴用材の種0.5kg、酵素液(微生物含有液)0.9mL、水10mLを混合し、5分間の予備発酵後、水を18mL投入し本発酵を行った。
本発酵後、得られた浴用材の最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表5)。
【0141】
(2-4)浴用材の再発熱
室温20℃、相対湿度50%の条件下で、ナイロン製のコンバイン袋に、冷却済みの浴用材を30kg、米糠を0.015kg、酵素液(微生物含有液)を0.9mL及び水を18mL投入し、(1-2)と同様の手順で浴用材を製造した。
本発酵後、得られた浴用材の最高温度、温度持続時間、及び放熱開始までにかかる時間を測定した(表5)。
【0142】
【0143】
(2-5)結果及び考察
表5に示す通り、糖類として黒蜜を配合し発酵させた酵素液(微生物含有液)を使用した実施例4は、(2-2)にかかる浴用材の製法、(2-3)にかかる種を用いた浴用材の製法、及び(2-4)にかかる浴用材の再発熱方法の何れの方法を採用しても、安定して60℃以上に発熱させることができるとともに、最高温度が80℃以上となった。
一方、他の糖類を配合し発酵させた酵素液(微生物含有液)を使用した比較例1~3は、何れも最高温度が80℃に到達しなかった。
【0144】
以上の結果より、糖類として黒蜜を配合し発酵させた微生物含有液を用いることで、80℃以上に安定して発熱可能な浴用材を製造できることが分かった。
【0145】
<試験例3>浴用材のメンテナンス作業
(1-4)の方法で発熱処理を行った浴用材について、温度が60℃以上に上昇しなくなった浴用材のメンテナンスを実施した。すなわち、30kgの浴用材のうち2kgを破棄し、新たに檜おが屑1kg、米糠1kg、(1-1)で製造した酵素液(微生物含有液)を9ml及び水を18ml加え、発酵処理を行った。発酵時の室温は15℃、相対湿度は30%であった。
発酵後、得られた浴用材は、最高温度が80℃であり、当該最高温度を12時間以上保持することができた。
【0146】
以上の結果から、本発明の製造方法を用いて製造した浴用材は、一部新たな原料に交換し、発酵処理を行うことで、再度発熱させて使用することができることが示された。このように、本発明の製造方法によれば、浴用材を使い捨てとして使用するのではなく、複数回にわたって使用し続けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の浴用材の製造方法は、酵素風呂等に用いる浴用材の製造に用いることができる。
【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、熟練の職人でなくとも手軽に実施可能な浴用材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】開口部を有する容器に、原材料として檜おが屑、米糠、小麦粉、及び微生物含有液を投入し、前記開口部を閉じた後、前記原材料に空気が混入するように前記容器を振盪させることで前記原材料を混合する混合工程と、得られた混合物を発酵させる発酵工程を含む、浴用材の製造方法。
【選択図】
図1