(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】水溶性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/06 20060101AFI20221116BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221116BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221116BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221116BHJP
A61K 38/40 20060101ALI20221116BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221116BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20221116BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61K33/06
A61P1/02
A61K9/08
A61K47/42
A61K38/40
A61K8/19
A61K8/64
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2022548951
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046291
【審査請求日】2022-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522320372
【氏名又は名称】株式会社げいほく薬局
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5898037(US,A)
【文献】特開2016-210758(JP,A)
【文献】特表2013-538199(JP,A)
【文献】特開2016-175901(JP,A)
【文献】特開2007-223975(JP,A)
【文献】近藤一郎ら,歯周炎患者におけるウシラクトフェリン経口投与の影響,日本歯科保存学雑誌,2008年,Vol.51, No.3,p.281-291
【文献】小林哲夫,歯周病患者におけるラクトフェリン摂取の効果,日本ラクトフェリン学会ニュースレター,2011年,No.3,p.2-6,URL: http://lactoferrin.jp/file/LFNews03.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/40
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムと、ナトリウムと、タンパク質とを含み、
マグネシウムとナトリウムとの含有比が、マグネシウム:ナトリウム=16:1~73:1であり、
タンパク質はラクトフェリンであり、
マグネシウムの含有率が、8.0~12.0w/v%であり、
ラクトフェリンの含有率が、3.0~10.0w/v%である、静菌用又は粘膜組織吸収用水溶性組成物。
【請求項3】
マグネシウムの含有率が、10.5~12.0w/v%であり、
口腔用である、請求項1に記載の静菌用又は粘膜組織吸収用水溶性組成物。
【請求項4】
下記工程を含む、請求項1に記載の静菌用又は粘膜組織吸収用水溶性組成物の製造方法:
マグネシウムとナトリウムとの含有比が、マグネシウム:ナトリウム=16:1~73:1であるナトリウム含有マグネシウム溶液を準備する工程、
ラクトフェリン及びナトリウム含有マグネシウム溶液を混合し、マグネシウムの含有率が8.0~12.0w/v%であり、ラクトフェリンの含有率が3.0~10.0w/v%である混合溶液を得る工程、および
前記混合溶液を消泡する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水溶性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周病は細菌感染症であると認識されている。そのため、歯周病を改善する手段として、殺菌効果を有する様々な口腔用の組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤を含む口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口腔内には、口内環境を整える、いわゆる善玉菌(プロバイオティクス)が存在する。しかしながら、このような殺菌効果の高い抗歯周病口腔用組成物は、悪玉菌だけでなく、善玉菌をも滅してしまうおそれがある。口腔ケアの対応方法としては、善玉菌を殺菌する必要はない。
【0006】
ところで近年、歯周病の症状は、歯周組織の細胞環境に起因して引き起こされるという認識が広がりつつある。米国歯周病学会(AAP:American Academy of Periodontology)は、歯周病のカテゴリを感染症から炎症性疾患に変更した。歯周病を効果的に予防するためには、口腔内を殺菌するのではなく、善玉菌が増えやすい良好な口内環境とすることが重要であると考えられる。
【0007】
そこで本開示では、細胞環境を改善する水溶性組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
水溶性組成物は、
マグネシウムと、ナトリウムと、タンパク質とを含み、
マグネシウムとナトリウムとの含有比が、マグネシウム:ナトリウム=16:1~73:1であり、
タンパク質は、ラクトフェリンであり、
マグネシウムの含有率が、2.0~12.0w/v%であり、
ラクトフェリンの含有率が、3.0~10.0w/v%である。
【0009】
本開示によれば、粘膜組織から吸収されて細胞へ栄養素が補給されることにより、細胞環境が改善し、様々な効能を得ることができる。例えば、細菌性の炎症に対する抗炎症効果が得られる。本開示の水溶性組成物を、歯磨き剤やマウスウォッシュ剤等の口腔用組成物に用いた場合、口内の悪玉菌の運動性を低下させるとともに歯茎における細胞環境を改善し、歯茎の炎症や出血を抑えて歯周病を予防することができる。また、本開示の水溶性組成物を、経口摂取した場合、胃腸内の悪玉菌の運動性を低下させるとともに胃腸内の細胞環境を改善し、例えば腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスの乱れに起因する便秘を改善することができる。また、本開示の水溶性組成物を傷や火傷をした皮膚に塗布した場合、炎症の改善を促すことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本開示によると、細胞環境を改善する水溶性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ラクトフェリン2.0w/v%調製液の泡立ち評価の画像である。
【
図2】ラクトフェリン3.0w/v%調製液の泡立ち評価の画像である。
【
図3】水溶性組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】水溶性組成物の評価に用いた自覚的評価チェックシートの記入例であり、被験者007の評価結果である。
【
図7】試験開始前と3ヶ月経過時の自覚的評価の変化を示すグラフである。
【
図8】試験開始前と3ヶ月経過時の自覚的評価の変化を示すグラフである。
【
図9】プロービング検査の検査表の記入例であり、被験者007の試験開始前の検査結果である。
【
図10】プロービング検査の検査表の記入例であり、被験者007の3ヶ月経過時の検査結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を詳細に説明する。好ましい実施形態の説明は、例示に過ぎず、水溶性組成物の適用あるいは用途を制限するものではない。
【0013】
[組成、作用、用途]
本開示の水溶性組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、高濃度のマグネシウムと、ナトリウムと、タンパク質としてのラクトフェリンを含み、粘膜組織から吸収されて細胞へ栄養素が補給されることにより、細胞環境が改善し、様々な効能を得ることができる。
【0014】
[マグネシウム]
マグネシウムイオンは、細胞中に多く含まれており、生命維持に欠かせない主要なミネラルの1つである。細胞中のマグネシウムイオンが欠乏すると、細胞環境が悪化し、様々な疾病を引き起こすと考えられる。組成物によって、マグネシウムが粘膜組織から吸収されることにより、細胞環境が改善し、様々な効能を得ることが可能となる。
【0015】
水溶性組成物は、2.0~12.0w/v%のマグネシウム含有率を有することが好ましく、より好ましいマグネシウムの含有率は、8.0~12.0w/v%であり、さらに好ましくは8.5~12.0w/v%であり、特に好ましくは9.0~12.0w/v%であり、最も好ましくは10.5~12.0w/v%である。このような割合で配合することにより顕著な効果が得られる。なお本明細書中、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0016】
発明者は、歯周細胞環境が悪化する要因の1つとして、マグネシウム不足があると考えている。歯周細胞環境が悪化した歯周病から引き起こされる、歯茎からの出血、歯槽骨の溶解等の種々の症状を軽減するために、マグネシウムを補うことが有効であると考えられる。歯周病症状、特に、歯茎からの出血の改善には、9.0w/v%以上の高濃度のマグネシウムがより効果的に作用すると考えられる。
【0017】
また、マグネシウムは、天然由来の高濃度マグネシウム溶液を用いることが好ましい。天然由来の高濃度マグネシウム溶液は、容易に入手可能な市販の溶液を用いることができ、例えば、アメリカ合衆国ユタ州のグレイトソルト湖の湖水から生産された12.0w/v%のマグネシウム溶液が挙げられる。
【0018】
歯周病を予防するための口腔用組成物としては、マグネシウムの含有率は10.5~12.0w/v%が好適である。
【0019】
[ナトリウム]
ナトリウムは、マグネシウム溶液に含まれることにより、マグネシウムの効果を促進させることができる。しかしながら、細胞環境を改善するという上記マグネシウムの効果を相乗的に高めるためには、マグネシウムとナトリウムとの含有比(以下、「Mg:Na比」ともいう。)が重要であると考えられる。細胞環境を改善するという効果を得るためには、マグネシウムとナトリウムとの含有比は、ナトリウムに対してマグネシウムが16倍以上含まれることが好ましく、40倍以上含まれることが特に好ましい。現在入手可能なマグネシウム溶液として、マグネシウム:ナトリウム=73:1のマグネシウム溶液(ニュー・サイエンス社製、商品名「超高濃度マグネシウム」)がある。
【0020】
水溶性組成物のMg:Na比は、16:1~73:1であることが好ましい。高濃度にマグネシウムを含むことで、組成物が希釈される環境下においても充分な量のマグネシウムを粘膜組織に供給することができる。また、ナトリウム含有量を低くすることが、組成物が口腔内に取り込まれた場合、塩味を感じられにくくする観点から好ましい。
【0021】
マグネシウム溶液の例として、にがりが挙げられるが、天然由来のにがりは、マグネシウムとナトリウムの含有比が、細胞環境を改善するには適切でないと考えられる。一般的に、にがりは、塩化マグネシウム18.84g/100ml、塩化ナトリウム7.47g/100mlを含むことが知られており(プロムを中心とした「にがり工業」の現状と将来,日本海水学会誌,1980年 34巻 4号 p.217-23)、マグネシウム含有率は約5w/v%、マグネシウムとナトリウムとの含有比は、マグネシウム:ナトリウム=1.63:1である。
【0022】
[ラクトフェリン]
ラクトフェリンは、水溶性組成物に泡立ち性を付与することができる。ラクトフェリンを含むことで、ブラッシング時または含嗽時に、組成物が口内に長く留まり、マグネシウムの吸収をより効果的に高めることが可能となる。水溶性組成物は、ラクトフェリンの含有率が、3.0~10.0w/v%であることが好ましい。
【0023】
ラクトフェリンは、キレート構造を形成していないラクトフェリンであることが好ましく、錯体を形成し得るラクトフェリンであることがより好ましい。好ましいラクトフェリンとして、例えば、中空のローブを有するラクトフェリンが挙げられる。
【0024】
[ラクトフェリンの泡立ち評価]
精製水に所定量のラクトフェリンを溶解させ、ラクトフェリン濃度を1.0w/v%ずつ増やして1.0~10.0w/v%の10種類の調製液を調製した。各調製液を歯ブラシ(ライオン社製、クリニカ(登録商標)アドバンテージNEXT STAGE ハブラシ)に所定量付け、ふるいの網目上で200回ブラッシングした。なお、上記歯ブラシは、ブラッシングの際の圧力が、一定の圧力を超えると音と振動で知らせるものである。200回ブラッシング後、ふるいの表裏を観察して泡立ち性を評価した。
【0025】
図1にラクトフェリン2.0w/v%調製液の200回ブラッシング後の画像を示す。ラクトフェリンを1.0~2.0w/v%配合した調製液は、ほとんど泡立っていなかった。
図2にラクトフェリン3.0w/v%調製液の200回ブラッシング後の画像を示す。ラクトフェリンを3.0w/v%以上配合した各調製液は、よく泡立っていた。10.0w/v%より多く配合しても泡立ち性の効果に変化はないと考えられた。
【0026】
ラクトフェリンは天然由来のものを用いることが好ましい。組成物に3.0~10.0w/v%のラクトフェリンを配合することにより、界面活性剤等の発泡剤を含有することなく、天然由来成分のみで泡立ち性の良い組成物を構成することができる。
【0027】
[その他の成分]
水溶性組成物は、公知成分を適宜本開示の効果を妨げない範囲で配合し、様々な剤形を採用することにより、細菌性の炎症に対する多様な抗炎症効果を得ることが可能である。したがって、組成物が歯磨剤の助剤としても振る舞いうる。
【0028】
例えば、水溶性組成物を、口腔用組成物として採用した場合、口内の悪玉菌の運動性を低下させるとともに歯茎における細胞環境を改善し、歯茎の炎症や出血を抑えて歯周病を予防することができる。また、組成物を経口摂取した場合、胃腸内の悪玉菌の運動性を低下させるとともに胃腸内の細胞環境を改善し、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスの乱れに起因する便秘を改善することができる。また、例えば、水溶性組成物を傷や火傷をした皮膚に塗布した場合、炎症の改善を促すことができる。
【0029】
上記した用途以外にも、水溶性組成物を適用可能であるが、組成物は特に口腔用組成物に好適である。口腔用組成物のうち、例えば歯磨剤として採用する場合、矯味剤、研磨剤、湿潤剤、発泡剤、増粘剤、香料、甘味料、着色剤、防腐剤、pH調整剤、有効成分などが配合されていてもよく、歯磨剤の助剤として用いてもよい。
【0030】
水溶性組成物を、口腔用組成物として用いる場合、マグネシウムの苦味をマスキングするために、矯味剤を含めることができる。好ましい矯味剤の例としてシクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリンは、α体、β体及びγ体、があるが、それぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。なお、シクロデキストリンと合わせて他の矯味剤を配合してもよい。
【0031】
研磨剤としては、例えば、シリカゲル等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、ペントナイト、合成樹脂等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0032】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、キシリット、マルチット等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0033】
発泡剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム、N-メチル-N-アシルアラニンナトリウム等のアニオン性界面活性剤や、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド等のノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0034】
増粘剤としては、例えば、グアールガム、キサンタンガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0035】
香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、ライム油、オレンジ油、シトラス油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミール油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油等の天然香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0036】
甘味料としては、例えば、キシリトール、サッカリンナトリウム、ステビオサイド等が挙げられる。
【0037】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、酢酸、硝酸等が挙げられる。
【0039】
有効成分としては、例えば、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等の抗炎症剤、ゼオライト、アズレン、ジヒドロコレステロール、クロロフィル、トウキ軟エキス、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、ビタミン類、歯石防止剤、歯垢防止剤などが挙げられる。これら有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【0040】
水溶性組成物は、乳酸菌、納豆菌、糖化菌、酪酸菌などの善玉菌を有用成分として含んでいてもよい。善玉菌の具体例には、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属などの細菌が挙げられる。有用成分としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス等のビフィズス菌、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・プランタラム、ストレプトコッカス・サーモフィルス等の乳酸菌が挙げられ、これを1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0041】
[製造方法]
水溶性組成物の製造方法は、
図3に示す手順で行う。
【0042】
第1の工程S1では、マグネシウムとナトリウムとの含有比が、マグネシウム:ナトリウム=16:1~73:1であるナトリウム含有マグネシウム溶液を準備する。原料として用いるナトリウム含有マグネシウム溶液は、海水や塩湖の湖水から製造された天然由来のマグネシウム溶液を使用することが好ましい。
【0043】
第2の工程S2では、上記ナトリウム含有マグネシウム溶液にラクトフェリンを混合する。得られる混合溶液が、マグネシウムの含有率が2.0~12.0w/v%であり、ラクトフェリンの含有率が3.0~10.0w/v%となるように調製する。このとき、水溶性組成物の用途や剤形によって、研磨剤、湿潤剤、発泡剤、増粘剤、香料、甘味料、矯味剤、着色剤、防腐剤、有効成分などの他の成分を一緒に混合してもよい。
【0044】
第3の工程S3では、ラクトフェリンの効果によって発泡した上記混合溶液を消泡する。具体的には、常温常圧で一定時間(例えば3日間)静置する方法や、常圧で0~5℃に冷却した状態を一定時間(例えば3日間)保つ方法や、室温で0atmに引圧した状態を一定時間(5~24時間)保つ方法がある。
【0045】
水溶性組成物の製造方法は、ナトリウム量を調整する工程をさらに含まないことが好ましい。具体的には、水溶性組成物の製造方法は、ナトリウムを添加する工程、および/または、ナトリウムを除去する工程を、さらに含まないことがより好ましい。すなわち、水溶性組成物中のMg:Na比は工程S1で規定される。換言すれば、第1の工程S1は、マグネシウムとナトリウムとの含有比を決定する工程を含む。
【実施例】
【0046】
[位相差観察による評価]
水溶性組成物が細菌にどのような影響を与えるかを、位相差顕微鏡を用いて評価した。具体的な評価方法は以下である。歯科受診患者から得られたプラークをスライドガラスに所定量分取し、そこへ下記表1に示す組成でそれぞれ調製した溶液を滴下した。スライドガラス上の試料にカバーガラスを載置して、各サンプルを得た。得られた各サンプルを、位相差顕微鏡(ピーテック社製、P-SCOPE Pro)を用いて3分間観察した。
【0047】
(比較例1)
まず、上記プラークのみをスライドガラスに塗布し、カバーガラスを置いて載置したものを、位相差顕微鏡で観察した。位相差顕微鏡の画像を
図4に示す。この比較例1では、多数の細菌が活発に動く様子が観察された。
【0048】
(実施例1)
マグネシウム含有率10.5w/v%、ナトリウム含有率0.25w/v%、カリウム含有率1.18w/v%及びラクトフェリン含有率4.5w/v%の水溶性組成物(以下、試料1ともいう。)を調製した。具体的には、まず、マグネシウム含有率が10.5w/v%であり、かつ、Mg:Na比が42.7:1であるナトリウム含有マグネシウム溶液(メイティア社製、マグネフォース(登録商標))を準備した。そして、ナトリウム含有マグネシウム溶液10mLにラクトフェリン0.45gを混合し、試料1の前駆物質である混合溶液を得た。その後、この混合溶液を常温常圧で3日間静置し、消泡させることにより、試料1を調製した。この試料1をプラークへ滴下した際の位相差顕微鏡による画像を
図5に示す。この実施例1では、細菌は全く動いておらず、試料1に細菌の働きを抑制する効果があることが確認できた。
【0049】
(実施例2)
上記試料1の調製において、ナトリウム含有マグネシウム溶液(メイティア社製、マグネフォース(登録商標))にさらに塩化ナトリウムを0.1g添加して、Mg:Na比を16.4:1とした以外は同様にして、試料1Aを調製した。この試料1Aをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、実施例1と同様に、細菌は全く動いておらず、試料1Aに細菌の働きを抑制する効果があることが確認できた。
【0050】
(比較例2)
マグネシウム含有率が10.5w/v%であり、かつ、Mg:Na比が42.7:1であるナトリウム含有マグネシウム溶液(メイティア社製、マグネフォース(登録商標))16mLに、精製水14mLを加えて希釈し、そこへ塩化ナトリウム0.11gを添加した。マグネシウムの含有率5.6w/v%、Mg:Na比20.3:1である試料2Aを調製した。この試料2Aをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、比較例1と同様に、多数の細菌が活発に動く様子が観察された。
【0051】
(比較例3)
上記試料2Aの調製において、塩化ナトリウム0.11g添加したことに代えて、塩化ナトリウムを0.15g添加したこと以外は同様にして、Mg:Na比10.7:1である試料2Bを調製した。この試料2Bをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、比較例1と同様に、多数の細菌が活発に動く様子が観察された。
【0052】
(比較例4)
市販されるにがり(白松社製、商品名「浜御塩の海水にがり」)20mLにラクトフェリン0.6gを混合し、試料2Cを調製した。試料2Cは、マグネシウム含有率5.6w/v%、ラクトフェリン含有率3.0w/v%、Mg:Na比1.3:1である。この試料2Cをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、比較例1と同様に、多数の細菌が活発に動く様子が観察された。
【0053】
(比較例5)
市販されるにがり(白松社製、商品名「浜御塩の海水にがり」)10mLを精製水15mLで希釈した溶液に、ラクトフェリン0.75gを混合し、試料2Dを調製した。試料2Dは、マグネシウム含有率2.2w/v%、ラクトフェリン含有率3.0w/v%、Mg:Na比1.3:1である。この試料2Dをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、比較例1と同様に、多数の細菌が活発に動く様子が観察された。
【0054】
(実施例3)
ナトリウム含有マグネシウム溶液(メイティア社製、マグネフォース(登録商標))とラクトフェリンとを用いて、マグネシウム含有率8.8w/v%、ラクトフェリン含有率3.9w/v%、Mg:Na比47.7:1である試料3Aを調製した。この試料3Aをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなったところ、実施例1と同様に、細菌はほとんど動いておらず、細菌が静菌された様子を観察できた。
【0055】
(実施例4)
ナトリウム含有マグネシウム溶液(メイティア社製、マグネフォース(登録商標))とラクトフェリンとを用いて、マグネシウム含有率8.0w/v%、ラクトフェリン含有率3.5w/v%、Mg:Na比47.4:1である試料3Bを調製した。この試料3Bをプラークへ滴下して位相差顕微鏡による観察をおこなった。実施例4では、実施例1から3ほど明確な静菌の様子は観察されなかったが、比較例1から比較例5と比較すると、菌の動きは弱まっており、静菌の傾向にあると言えた。
【0056】
試料1,1A、試料2A~2D、試料3A及び3Bを用いた位相差観察結果を表1に示す。上記のように、試料1、試料1A、試料3A及び試料3Bは、静菌作用があることが確認できた。
【0057】
【0058】
上記実施例では、静菌可能な水溶性組成物の組成を実験的に示すことができた。上記実施例から、水溶性組成物の菌の活動を抑える効果に対する好ましいマグネシウム含有率を示唆することができる。しかしながら、上記実験は臨床試験ではない。例えばこの水溶性組成物を歯磨き剤として使用した場合は、使用者の口腔内で唾液と混ざり合い、患部対して様々な改善効果を示す。水溶性組成物の好ましい組成の根拠として、以下の臨床試験の結果がより重要となる。
【0059】
次に、本開示の水溶性組成物を口腔用組成物、具体的には歯磨き剤として使用した場合について、その作用を自覚的評価及び他覚的評価の両方で評価した。
【0060】
[自覚的評価]
17名の被験者を募り、3ヶ月間、本開示の水溶性組成物を歯磨き剤として使用させた。被験者には、可能な限り、歯磨き時のうがいの水は吐き出さず、可能な限り水溶性組成物を飲み込むように指示した。被験者には、試験開始前と3ヶ月経過時において、以下10の自覚的評価項目を0~10の整数で評価させた。例えば、各項目について、「強く感じる」又は「とても当てはまる」場合は10点であり、「全く感じない」又は「全く当てはまらない」場合は0点である。
・口臭が気になる
・ネバつき・ヌメり
・歯がぐらつく
・歯が浮く、硬いものが噛みにくい
・歯茎の色が悪い
・歯茎が時々腫れる
・歯茎からの出血
・歯茎が下がってきた
・歯と歯の隙間が空いてきた
・口内炎を繰り返す
自覚的評価チェックシートの記入例として、
図6に被験者007の評価結果を示す。いくつかの項目について、試験開始前と比して3ヶ月経過時の点数が小さくなっており、症状が改善されていた。
【0061】
被験者001~017の評価結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
表2中、試験前に使用していた歯磨き剤I~XIは以下である。なお、「-」の表記は歯磨き剤を使っていなかったこと、すなわち、被験者が水洗いブラッシングを行っていたことを示す。
歯磨き剤I:ニュー・サイエンス社製、マグネシウム歯磨きペースト。塩化マグネシウム(MgCl・6H2O)を含有する。マグネシウム含有量から換算したマグネシウム含有率は、1.8w/v%である。ナトリウム、ラクトフェリンを含有しない。
歯磨き剤II:花王社製、クリアクリーン(登録商標)プレミアム美白。
歯磨き剤III:グラクソ・スミスクライン社製、ニューアクアフレッシュ(登録商標)ZF3。
歯磨き剤IV:サンスター社製、Ora2(登録商標)プレミアムステインクリア。
歯磨き剤V:グラクソ・スミスクライン社製、カムテクト(登録商標)コンプリートケアEX。
歯磨き剤VI:シャボン玉石けん社製、シャボン玉せっけん(登録商標)ハミガキ。
歯磨き剤VII:花王社製、クリアクリーン(登録商標)RR。
歯磨き剤VIII:サンスター社製、薬用G・U・M(登録商標)デンタルペーストGS。
歯磨き剤IX:小林製薬社製、生薬Hc。
歯磨き剤II~IXは、マグネシウム及びラクトフェリンを含有しない。
歯磨き剤X:AT-MARK CONSUL.社製、B+。化石サンゴを主成分とする。公知の分析例によれば、天然化石サンゴのマグネシウム含有率は1%未満であることから、この歯磨き剤に含まれるマグネシウム含有率も1w/v%未満であると考えられる。ラクトフェリンを含有しない。
歯磨き剤XI:ライオン社製、デンターシステマ(登録商標)EXW。マグネシウム及びラクトフェリンを含有しない。
【0064】
被験者001は、マグネシウム含有率2.0w/v%、ラクトフェリン含有率3.2w/v%、Mg:Na比が42.8:1の水溶性組成物(以下、試料4という。)を用いた。被験者002~017は、上記実施例1の試料1を用いた。
【0065】
表2中、A~Cの評価について、試験開始前と比較して3ヶ月経過時に症状が3点以上改善された場合をA、1~2点改善された場合をB、変化がなかった場合をCと表記した。
【0066】
試験前に被験者001は、マグネシウムを1.8w/v%含み、ラクトフェリン及びナトリウムを含まない歯磨き剤Iを使用していた。試験開始から3ヶ月経過時、被験者001は、口臭、ネバつき・ヌメり、歯茎の腫れや出血、口内炎等の症状が大きく改善されたと回答した。この結果から、マグネシウムとともにナトリウム及びラクトフェリンを配合することで、口内の細胞環境が改善されることが示された。
【0067】
被験者016及び017は変化が感じられなかったと回答したが、その他の被験者は、多くの項目で改善されたと回答した。
【0068】
図7及び
図8には、被験者17名の自覚的評価の結果について、試験開始前と3ヶ月経過時の、点数の推移を視覚的に示したグラフである。表2においては3点以上の改善をAとしたが、
図7及び
図8を見ると、8~10点の大きな改善を感じた被験者も多数存在することが分かる。
【0069】
表3には、被験者17名の自覚的評価の結果について、試験開始前と3ヶ月経過時の、点数の推移から改善率を算出した結果と、5点以下と評価した人数の推移から改善を感じた人数の増加率を算出した結果を示す。
【0070】
【0071】
改善率及び改善を感じた人数の増加率からも、本開示の水溶性組成物が口内の細胞環境を整える効果があることが示された。
【0072】
[他覚的評価]
上記17名の被験者のうち、一部の被験者に、歯科にて、試験前後で同一の施術者による他覚的評価を行わせた。具体的には、歯周ポケット深さと出血の有無の確認する、プロービング検査を行った。
【0073】
プロービング検査には、
図9及び
図10に示す検査表を用いた。
図9及び
図10中の「PD」の表記は、歯周ポケット深さ(Probing depth)である。全ての歯の表裏の歯肉溝に歯周ポケットプローブを挿入し、先端が歯肉溝の底に達した際のプローブの挿入深さを目視で確認し、歯周ポケット深さを測定した。
図9及び
図10中の数字の表記は歯周ポケット深さの測定結果(単位はmm)である。
【0074】
一般的に、歯周ポケット深さは、歯の中央部で1mmまで、歯間部で2mmまであれば、歯茎の状態が良好であるとされている。3mmは軽度、4~5mmは中度、6mm以上は重度の歯周病と診断される。
図9及び
図10に示すように、検査表では歯周ポケット深さの測定結果を示す数字が、軽度、中度、重度の症状別に色分けされる。
【0075】
図9及び
図10中、「BoP」の表記は、プロービング検査時の出血(Bleeding on Probing)の有無の検査を示し、出血が見られた箇所は、歯周ポケット深さの測定値の上下両側においてマス目を着色して示してある。歯周ポケット深さの測定は重要な臨床検査であるが、その歯周ポケット深さの測定の際に、測定部位から出血が見られた場合、その部位に炎症が存在していることを意味する。全ての歯の表裏の歯周ポケット深さの測定後に、歯周ポケットプローブを抜き出し、歯肉溝から出血があるかどうかを目視で判定した。
図9及び
図10に示すように、検査表では、出血が確認された箇所が着色される。つまり、検査表の着色箇所について、歯肉に炎症があると考えられる。プロービング検査時に出血が見られた検査箇所の数を、検査箇所の総数で割り、パーセンテージで示したものは「BOP率」と呼ばれる。BOP率が顕著な場合、歯周病が進行傾向にあると言え、日本歯周病学会ではBOP率は10%以下であることが望ましいとされている。
【0076】
表4には、上記17名の被験者のうち7名について、試験開始前と3ヶ月経過時に行った上記プロービング検査の結果を示す。表4中、「歯周ポケット深さの改善率」とは、試験開始前と比して3ヶ月経過時に歯周ポケット深さが浅くなった検査箇所の数を、検査箇所の総数で割り、パーセンテージで示した数値である。表4中、「BOP率の改善」とは、試験開始前のBOP率から3ヶ月経過時のBOP率を差し引いた数値である。「歯周ポケット深さの改善率」及び「BOP率の改善」はともに、数値が大きいほど改善されていることを示す。
【0077】
【0078】
試料1を用いた被験者の中で、歯周ポケット深さの改善が見られた人(被験者007,008、016)は、25~39%と高い改善率を示した。試料4を用いた被験者001においても歯周ポケット深さの改善が見られたが、改善率は被験者007,008、016よりも低かった。また、試料1を用いた被験者は、全体的にBOP率の改善が見られた。
【0079】
被験者016及び017は、上記自覚的評価では、改善が感じられなかったと回答したが、他覚的評価では改善が見られた。具体的には、被験者016は歯周ポケット深さ及びBOP率の両方について高い改善が見られ、被験者017はBOP率に改善が見られた。被験者016は、試験開始前のBOP率92.9%、歯周ポケット深さ4mm以上の箇所も多くあったことから、軽度~中度の歯周病であった。そのため、被験者017では改善の効果が顕著に見られたと考えられる。被験者017は、試験開始前のBOP率は5.4%、歯周ポケット深さ4mm以上の箇所がなく、良好な口内環境であった。そのため、顕著な変化はなかったが、口内環境はより改善されたと考えられる。
【0080】
他覚的評価の結果から、本開示の水溶性組成物を口腔用組成物として適用する場合、マグネシウム含有率2.0w/v%の場合に、歯周ポケット深さを改善することができると分かった。また、マグネシウム含有率10.5w/v%以上とした場合には、歯周ポケット深さ及びBOP率は、より効果的に改善できると考えられた。
【0081】
また、上記17名の被験者の他にも、さらに9名の被験者に3ヶ月間、試料1を歯磨き剤として使用させた。計26名の被験者には、試験開始3ヶ月経過時に、本開示の水溶性組成物を使用した感想として、口腔内の変化に限らず、体調の変化などを自由に述べさせた。
【0082】
その結果、26名中、4名の被験者が「便秘が改善された」と回答した。本開示の水溶性組成物によって、口腔内の細胞環境が改善されたことにより、胃腸の細胞環境も改善され、細菌由来の便秘が改善されたと考えられる。この結果から、本開示の水溶性組成物を経口摂取した場合に胃腸の細胞環境が改善されることが示された。
【0083】
ある被験者は、「試験開始前に、歯の被せ物が取れて痛みがあった。その後、歯医者へ行けなかったが、10日間試料1を患部に塗布したところ痛みが治まった。」と述べ、またある被験者は、「アレルギーによる唇の腫れがあったが、試料1を使用しているうちにその症状が改善された。」と述べた。この結果から、試料1に口腔内の炎症を抑える効果があることが示された。
【0084】
被験者Xが、試料1を火傷の傷に塗布したところ、塗布していないところと比べて火傷の症状の改善が早かった。
【0085】
被験者Xは、試料1を左右の眼にそれぞれ1滴ずつ滴下し、点眼した。また、被験者Yは、水2.5mlに試料1を2滴滴下して溶液を調製し、得られた溶液を用いて洗眼した。被験者X及び被験者Yは、点眼または洗眼後、眼脂による不快感およびドライアイによる不快感が消失した。この結果から、試料1は、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、およびコンタクトレンズ装着液としての使用に好適であることが示された。
【0086】
被験者Yは、試料1を綿棒状のスワブに数滴含浸させ、外耳道に塗布した。外耳の擦傷による炎症が48時間経過後に鎮静し、外耳道内の菌バランスが改善されたと考えられる。
【0087】
被験者Yは、市販の化粧水約1.5mlに試料1を0.2ml滴下して得られた溶液を、肌に塗布した。8時間経過後、肌の皮脂膜および/または角質層の状態が滑らかになった。
【0088】
被験者Xは、試料1を用いて倍量に希釈し得られた溶液を、腓腹痙攣部分に過剰に塗布し、経皮吸収させた。8時間経過後、腓腹部の筋肉の緊張が緩和し、痛みが改善した。
【0089】
試料1は、カプセルに詰め、坐剤として用いることも可能であり、排便の誘発、肛門周りの出血が改善、痔の症状の改善、直腸内の菌バランスの改善が期待できる。被験者Zは、試料1をカプセルに詰めた坐剤を用いたところ、潰瘍性大腸炎による出血が抑制された。
【0090】
試料1は、希釈して鼻洗浄液や点鼻剤として用いることも可能であり、鼻粘膜の炎症の改善や、副鼻腔炎の改善、鼻腔内の菌バランスの改善が期待できる。
【0091】
水溶性組成物は、歯磨き剤として使用することにより、口内炎の改善、歯の被せ部分の痛みの改善、口腔内の乾燥の防止、口臭の改善、口唇のただれの改善、口唇の腫れの改善、頭痛の改善にも効果が期待できる。また、水溶性組成物は、外用剤として使用することにより、副鼻腔炎の改善、皮膚のかゆみの改善、皮膚の保湿、頭皮のフケ防止、日焼けの改善、乳首のただれの改善等にも効果が期待できる。また、水溶性組成物は、内服剤として使用することによって、痔の改善にも効果が期待できる。
【0092】
上記したように、この水溶性組成物は、特に口腔用組成物として有用であるが、他の用途においても有用であることが示された。
【要約】
細胞環境を改善する水溶性組成物及びその製造方法を提供する。水溶性組成物は、マグネシウムと、ナトリウムと、タンパク質とを含み、マグネシウムとナトリウムとの含有比が、マグネシウム:ナトリウム=16:1~73:1であり、タンパク質は、ラクトフェリンであり、マグネシウムの含有率が、2.0~12.0w/v%であり、ラクトフェリンの含有率が、3.0~10.0w/v%である。