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特許7177571高周波入力結合器用保護部材、高周波入力結合器用保護装置および高周波入力結合器
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  • 特許-高周波入力結合器用保護部材、高周波入力結合器用保護装置および高周波入力結合器 図1
  • 特許-高周波入力結合器用保護部材、高周波入力結合器用保護装置および高周波入力結合器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】高周波入力結合器用保護部材、高周波入力結合器用保護装置および高周波入力結合器
(51)【国際特許分類】
   H05H 7/02 20060101AFI20221116BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20221116BHJP
   H01P 3/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H05H7/02
H01P5/02 605Z
H01P3/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019079420
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020177820
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀治
(72)【発明者】
【氏名】安武 浩人
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145990(JP,A)
【文献】特開2019-004250(JP,A)
【文献】特開2018-113503(JP,A)
【文献】特開2017-21977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 7/02
H01P 5/02
H01P 3/06
H01J 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外導体およびこの外導体の内側に位置するとともに一端側が前記外導体よりも突出する内導体を有する高周波入力結合器に取り付けられる高周波入力結合器用保護部材であって、
前記内導体の一端側を覆い前記外導体に取り付けられる覆い部と、前記内導体の外周面に接触して前記内導体を振れ止めする振れ止め部とを備え、これら覆い部と振れ止め部が前記内導体の材質よりも軟質の材質で一体に形成されている
ことを特徴とする高周波入力結合器用保護部材。
【請求項2】
前記覆い部と前記振れ止め部は、前記内導体の材質よりも軟質かつ表面が滑らかな材質で一体に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の高周波入力結合器用保護部材。
【請求項3】
前記内導体の材質よりも軟質の材質は合成樹脂である
ことを特徴とする請求項1または2記載の高周波入力結合器用保護部材。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の高周波入力結合器用保護部材と、
前記高周波入力結合器用保護部材の前記覆い部と前記外導体との間に挟み込まれて塑性変形するガスケット、および前記覆い部と前記ガスケットとの間に挟み込まれて弾性変形するOリングを有するシール部材と
を具備することを特徴とする高周波入力結合器用保護装置。
【請求項5】
前記高周波入力結合器用保護部材の前記覆い部に設けられ、前記覆い部の内部と連通し、少なくとも空気抜き用の着脱ジョイントが着脱可能に接続されるとともに前記着脱ジョイントの着脱に応じて開閉するバルブ機構を有する被着脱ジョイントを具備する
ことを特徴とする請求項4記載の高周波入力結合器用保護装置。
【請求項6】
請求項1ないし3いずれか一記載の高周波入力結合器用保護部材が取り付けられている
ことを特徴とする高周波入力結合器。
【請求項7】
請求項4または5記載の高周波入力結合器用保護装置が取り付けられている
ことを特徴とする高周波入力結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波入力結合器に取り付けられる高周波入力結合器用保護部材、この高周波入力結合器用保護部材を用いた高周波入力結合器用保護装置、これら高周波入力結合器用保護部材または高周波入力結合器用保護装置を用いた高周波入力結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電粒子(電子、イオン、陽子)加速器において、クライストロンなどの高周波増幅器から放出された高周波(マイクロ波)を加速空洞に入射する際に高周波入力結合器(カプラ)が用いられている。この高周波入力結合器は、加速空洞に高周波(マイクロ波)を入射するとき、加速空洞に対して良好なカップリングを持たせることのできる構造を有している。高周波入力結合器は、主に高周波透過窓構体と外導体と内導体(アンテナ)とにより構成される。外導体は、主にろう接やボルト締めで高周波透過窓構体と接合される。内導体は、主にろう接や溶接で高周波透過窓構体と接合される。外導体と内導体とは、同軸構造を形成しており、同軸度が高いこと(外導体に対し内導体の偏芯が少ないこと)、特に内導体の表面が平滑であることなどが要求される。
【0003】
高周波入力結合器においては、完成後の輸送時や保管時などに、外導体の内面や内導体の保護を目的として、保護キャップが取り付けられる。さらに、輸送時の振動で内導体が振れることによる内導体と高周波透過窓構体との接合部への応力集中や内導体自体の曲がりを防ぐため、主に銅からなる金属製の振れ止め部材が内導体に接触して振れ止めする。
【0004】
しかし、振れ止め部材が内導体に接触するため、内導体に対する振れ止め部材の着脱時や輸送時の振動によって、内導体の表面に傷を生じさせやすいという課題がある。内導体の表面に傷を付けると、その傷の位置で放電が生じ、高周波入力結合器の性能を低下させるおそれがある。
【0005】
また、外導体の内部や内導体の保護のために、保護キャップや振れ止め部材などの複数の部品が用いられており、部品点数が多く、組み立てに手間がかかる他、部品の管理なども煩雑となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-110698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内導体に傷を付けにくく、かつ部品点数を削減できる高周波入力結合器用保護部材、高周波入力結合器用保護装置および高周波入力結合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の高周波入力結合器用保護部材は、外導体およびこの外導体の内側に位置するとともに一端側が外導体よりも突出する内導体を有する高周波入力結合器に取り付けられる。高周波入力結合器用保護部材は、内導体の一端側を覆い外導体に取り付けられる覆い部と、内導体の外周面に接触して内導体を振れ止めする振れ止め部とを備え、これら覆い部と振れ止め部が内導体の材質よりも軟質の材質で一体に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示す高周波入力結合器用保護部材を備えた高周波入力結合器の一部の断面図である。
図2】同上高周波入力結合器を模式的に示す断面図である。
図3】比較例の高周波入力結合器用保護部材を備えた高周波入力結合器を模式的に示す断面図である。
図4】第2の実施形態を示す高周波入力結合器用保護装置を備えた高周波入力結合器の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態を、図1ないし図3を参照して説明する。
【0011】
図2に高周波入力結合器(カプラ)10の模式的な断面図を示す。高周波入力結合器10は、一端側(図2の上側)が加速器に接続され、他端側(図2の下側)が例えばクライストロンなどの高周波増幅器の導波管に接続される。高周波入力結合器10は、高周波増幅器から放射された高周波(マイクロ波)を伝送する図示しない導波管と加速器の加速空胴との間を結合するとともに、導波管内の大気圧と加速空胴内の高真空とを隔絶し、高周波を加速空胴に入射するのに用いられる。
【0012】
高周波入力結合器10は、同軸に配置される円筒状の外導体13と円柱状の内導体14を有している。これら外導体13と内導体14との間を通じて高周波を伝送する。さらに、高周波入力結合器10は、外導体13および内導体14の他端側に高周波透過窓構体15を備えている。
【0013】
外導体13は、例えば銅などの金属製で、円筒状に形成されている。外導体13は、軸方向の一部に、温度に応じた軸方向の伸縮および取付位置に応じた一端側と他端側の径方向のずれに対応するためのベローズ構体13aを備えている。
【0014】
内導体14は、例えば銅などの金属製で、円柱状に形成されている。内導体14は、外導体13の内側に位置され、一端側が外導体13の一端側よりも突出されている。この内導体14の一端側は、加速器の加速空胴に突出配置されるアンテナ部14aである。なお、内導体14の内部は、内導体14の他端側に連通する空洞状となっていてもよい。
【0015】
高周波透過窓構体15は、気密を保ち高周波を透過する高周波透過窓15aを備えている。この高周波透過窓15aの材料には、例えばアルミナ等のセラミックが用いられている。高周波透過窓15aは、中央に円形の孔を有する円板状(円環状)に形成されている。そして、高周波透過窓15aの孔に内導体14が挿入され、高周波透過窓15aが外導体13の内側に挿入され、高周波透過窓15aの外側と内側とが外導体13と内導体14とに対してそれぞれろう接(ろう付け接合)により接合されている。
【0016】
また、高周波入力結合器10においては、完成後の輸送時や保管時などに、外導体13の内部や内導体14の保護を目的として、高周波入力結合器10の一端側に高周波入力結合器用保護部材としての保護キャップ構体17が取り付けられる。
【0017】
次に、図1に高周波入力結合器10の一部の断面図を示す。
【0018】
外導体13の一端側には、加速器に取り付けるための外導体フランジ部20を備えている。外導体フランジ部20には、複数の挿通孔21が形成されている。複数の挿通孔21は、外導体フランジ部20の周方向に等間隔に形成されている。
【0019】
外導体フランジ部20は、保護キャップ構体17を取り付けるのにも利用される。挿通孔21には、保護キャップ構体17を締結固定するためのボルト24が挿通される。ボルト24は、ワッシャ25,25を介して挿通される。これらワッシャ25,25は、例えば一方がスプリングワッシャ、他方が平ワッシャである。
【0020】
また、保護キャップ構体17は、内導体14の材質よりも軟質の材質で一体に形成されている。より好ましくは、保護キャップ構体17は、内導体14の材質よりも軟質かつ表面が滑らかで平滑な材質で一体に形成されている。内導体14が例えば銅により形成されている場合、保護キャップ構体17は、銅よりも軟質かつ表面が滑らかで平滑な材質で形成されている、例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:フッ素樹脂)などの合成樹脂により形成されている。また、保護キャップ構体17は、銅よりも軟質な材質であるアルミニウムなどの金属でもよい。
【0021】
保護キャップ構体17は、内導体14の一端側を覆い外導体13に取り付けられる覆い部30と、内導体14の外周面に接触して内導体14を振れ止めする振れ止め部31とを備え、これら覆い部30と振れ止め部31とが一体に形成されている。
【0022】
覆い部30は、外導体13から突出する内導体14の一端側つまりアンテナ部14aの周囲を囲むように覆う円筒部34、この円筒部34の一端側を閉塞して内導体14の一端側を覆う端面部35、および円筒部34の他端側に設けられたフランジ部36を一体に備えている。
【0023】
覆い部30の内部には、他端側に向けて開口されて外導体13の内部に連通される空間部37が形成されている。覆い部30の円筒部34は、内導体14の外径よりも大きい内径を有し、内導体14の外周面に対して離反される。
【0024】
覆い部30のフランジ部36は、円筒部34の他端側から径方向に突出され、高周波入力結合器10の外導体フランジ部20に取り付けられる。フランジ部36は、軸方向の厚みが円筒部34の厚みよりも大きい寸法に形成されている。フランジ部36には、外導体フランジ部20の挿通孔21を挿通するボルト24が螺合される複数の取付孔38が形成されている。取付孔38は、ボルト24が螺合される雌ねじが形成された雌ねじ孔である。複数の取付孔38は、外導体フランジ部20の各挿通孔21と対応する位置に形成されている。
【0025】
振れ止め部31は、覆い部30の内側に一体に形成されている。振れ止め部31は、覆い部30の内側の一端側つまり端面部35側に形成されている。振れ止め部31は、内導体14の一端側の先端部が挿入される孔部41、およびこの孔部41に挿入された内導体14の外周面に接触して径方向の位置を規制する環状の規制部42を有している。そして、振れ止め部31は、孔部41に挿入された内導体14の先端部の外周面に接触して内導体14を振れ止めする。
【0026】
孔部41は、覆い部30が外導体13に取り付けられた状態で、内導体14と同軸となる位置に形成されている。孔部41は、挿入される内導体14の先端部の形状に対応して、覆い部30の軸方向に直交する断面形状が円形の凹孔状に形成されている。孔部41は、内導体14の先端部を挿入可能とするとともに挿入された内導体14の径方向の位置を規制可能とする内径に形成されている。孔部41の深さは、覆い部30が外導体13に取り付けられた状態で、内導体14の先端部との間に隙間があく深さに形成されている。なお、孔部41は、空間部37に開口する方向に拡開するテーパ孔状に形成されていてもよい。
【0027】
そして、このように構成された保護キャップ構体17は、高周波入力結合器10の例えば輸送時や保管時などに高周波入力結合器10に取り付ける。
【0028】
保護キャップ構体17の取り付けは、まず、保護キャップ構体17の空間部37に内導体14の先端部が挿入されるように保護キャップ構体17を内導体14に被せ、保護キャップ構体17のフランジ部36の取付孔38を外導体フランジ部20の挿通孔21に位置合わせしつつ、保護キャップ構体17のフランジ部36を外導体フランジ部20に重ね合せる。このとき、保護キャップ構体17の振れ止め部31の孔部41に内導体14の先端部が挿入される。保護キャップ構体17の振れ止め部31の孔部41に内導体14の先端部が挿入されることにより、外導体13に対する保護キャップ構体17の径方向の位置が位置決めされる。
【0029】
次いで、ワッシャ25,25を挿通したボルト24を外導体フランジ部20の下方から挿通孔21に挿入するとともに保護キャップ構体17のフランジ部36の取付孔38に螺合し、保護キャップ構体17のフランジ部36と外導体フランジ部20とを締め付ける。この結果、保護キャップ構体17が高周波入力結合器10に固定される。
【0030】
また、保護キャップ構体17は、高周波入力結合器10を使用する際に、上記の手順とは逆順の作業によって取り外される。保護キャップ構体17を取り外した高周波入力結合器10は、導波管と加速器の加速空胴との間を結合するように取り付けられる。
【0031】
そして、保護キャップ構体17の覆い部30により、外導体13および内導体14を覆っているため、外導体13の内面および内導体14を保護する。さらに、保護キャップ構体17の振れ止め部31により、内導体14を振れ止めするため、輸送時の振動で内導体14が振れることによる内導体14と高周波透過窓構体15との接合部への応力集中や内導体14自体の曲がりを防ぐ。
【0032】
このように構成された第1の実施形態の保護キャップ構体17によれば、覆い部30と振れ止め部31が、内導体14の材質よりも軟質の材質で一体に形成されているため、内導体14に傷を付けにくく、部品点数を削減できる。
【0033】
すなわち、保護キャップ構体17を高周波入力結合器10に取り付ける際または取り外す際、あるいは輸送時の振動により、保護キャップ構体17の振れ止め部31と内導体14とが接触状態で動き、擦れたとしても、振れ止め部31が内導体14の材質よりも軟質の材質で形成されていることにより、内導体14に傷を付けにくくできる。
【0034】
さらに、覆い部30と振れ止め部31が一体に形成されていることにより、保護キャップ構体17の部品点数を削減でき、組み立ての手間がかからず、保護キャップ構体17の部品管理も容易にできる。
【0035】
ここで、図3に比較例の保護キャップ構体17aを示す。比較例の保護キャップ構体17aが金属製である場合、覆い部材30aと振れ止め部材31bとがそれぞれ別体に形成され、一体化するように組み立てられる。この場合、保護キャップ構体17aを高周波入力結合器10に取り付ける際または取り外す際、あるいは輸送時の振動により、保護キャップ構体17aの振れ止め部材31aと内導体14とが接触状態で動き、金属同士が擦れるため、内導体14に傷を付けやすい。内導体14の表面に傷が付くと、その傷の位置で放電が生じ、高周波入力結合器10の性能を低下させるおそれがある。また、覆い部材30aと振れ止め部材31bとが別々であると、部品点数が多く、一体化するために組み立てが必要となり、部品の管理なども煩雑となる。
【0036】
それに対して、第1の実施形態の保護キャップ構体17は、覆い部30と振れ止め部31が、内導体14の材質よりも軟質の材質で一体に形成されているため、内導体14に傷を付けにくく、部品点数を削減できる。
【0037】
また、保護キャップ構体17の覆い部30と振れ止め部31が、内導体14の材質よりも軟質かつ表面が滑らかで平滑な材質で一体に形成されていることにより、内導体14に傷をより付けにくくできる。
【0038】
次に、第2の実施形態を、図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この第2の実施形態は、保護キャップ構体17と高周波入力結合器10との間を気密シールし、保護キャップ構体17によって高周波入力結合器10の内部を気密に保つ。
【0040】
保護キャップ構体17のフランジ部36と外導体フランジ部20との間にシール部材50が介在される。シール部材50は、円環状のガスケット51、およびこのガスケット51に重ね合わされるOリング52を有している。シール部材50は、外導体フランジ部20および保護キャップ17のフランジ部36を挿通するボルト24の位置よりも内側(中心側)に配置されている。
【0041】
ガスケット51は、例えば銅により形成され、外導体フランジ部20と保護キャップ構体17のフランジ部36との間に挟み込まれて塑性変形され、少なくとも外導体フランジ部20との間を気密に封止する。外導体フランジ部20の端面には円環状のエッジ部55が突設され、このエッジ部55がガスケット51に食い込んで気密性が確保されている。
【0042】
Oリング52は、保護キャップ構体17のフランジ部36に形成された円環状の溝部56内に配置されている。Oリング52は、フランジ部36の溝部56とガスケット51との間に挟み込まれて弾性変形し、フランジ部36の溝部56とガスケット51とにそれぞれ密着し、フランジ部36の溝部56とガスケット51との間の気密性が確保されている。
【0043】
ボルト24は、外導体フランジ部20の挿通孔21および保護キャップ構体17のフランジ部36の取付孔38を挿通し、フランジ部36の外側においてワッシャ57,57を介してナット58と螺合され、外導体フランジ部20と保護キャップ構体17のフランジ部36とを締め付け固定している。ワッシャ57,57は、例えば一方がスプリングワッシャ、他方が平ワッシャである。
【0044】
また、保護キャップ構体17には、端面部35の外面側と内側の空間部37とを連通する通気孔61が形成されている。通気孔61は、端面部35の外面側に連通開口する外側孔部62と、空間部37に連通開口する内側孔部63とを有している。外側孔部62には雌ねじが形成されている。
【0045】
また、保護キャップ構体17の通気孔61には、空気抜き用やガス充填用の図示しない外部の着脱ジョイントが着脱可能に接続される被着脱ジョイント66が気密に取り付けられている。外部の着脱ジョイントは、例えば真空ポンプに接続されるチューブやホースなどの配管の先端や、ガスボンベなどガス供給部に接続されるチューブやホースなどの配管の先端に取り付けられ、被着脱ジョイント66に対して着脱可能に結合される。
【0046】
被着脱ジョイント66は、円筒状のジョイント本体67、およびこのジョイント本体67から突出されて通気孔61の外側孔部62に螺合されて取り付けられる雄ねじを有する取付部68を備えている。さらに、被着脱ジョイント66は、ジョイント本体67の端面から取付部68の端面に亘って設けられた図示しない通気路、および外部の着脱ジョイントの接続または取り外しに応じて通気路を開放または閉止する図示しないバルブ機構を備えている。このような被着脱ジョイント66は、例えばクイックジョイントなどと呼ばれている。被着脱ジョイント66の取付部68の端面に開口する通気路は、保護キャップ構体17の通気孔61を通じて覆い部30の内側の空間部37と連通されている。
【0047】
そして、保護キャップ構体17、シール部材50および被着脱ジョイント66などによって、高周波入力結合器10の内部を気密に保つ高周波入力結合器用保護装置70が構成されている。
【0048】
このように構成された高周波入力結合器用保護装置70は、高周波入力結合器10の例えば輸送時や保管時などに高周波入力結合器10に取り付ける。
【0049】
高周波入力結合器用保護装置70の取り付けは、まず、ガスケット51を外導体フランジ部20のエッジ部55上に配置し、Oリング52を保護キャップ構体17に装着し、保護キャップ構体17の空間部37に内導体14の先端部が挿入されるように保護キャップ構体17を内導体14に被せ、保護キャップ構体17のフランジ部36の取付孔38を外導体フランジ部20の挿通孔21に位置合わせしつつ、保護キャップ構体17のフランジ部36を外導体フランジ部20に重ね合せる。
【0050】
このとき、保護キャップ構体17の振れ止め部31の孔部41に内導体14の先端部が挿入される。保護キャップ構体17の振れ止め部31の孔部41に内導体14の先端部が挿入されることにより、外導体13に対する保護キャップ構体17の径方向の位置が位置決めされる。さらに、保護キャップ構体17に装着されているOリング52がガスケット51上に接触される。
【0051】
次いで、ワッシャ25,25を挿通したボルト24を外導体フランジ部20の下方から挿通孔21および保護キャップ構体17のフランジ部36の取付孔38に挿通し、フランジ部36を挿通したボルト24の先端にワッシャ57,57を介してナット58を螺合し、ボルト24の頭部とナット58との間で外導体フランジ部20と保護キャップ構体17のフランジ部36とを締め付ける。
【0052】
これにより、外導体フランジ部20と保護キャップ構体17のフランジ部36との間でガスケット51を挟み込み、外導体フランジ部20のエッジ部55がガスケット51に食い込んで、ガスケット51が塑性変形し、外導体フランジ部20とガスケット51との間を気密に封止する。さらに、保護キャップ構体17のフランジ部36の溝部56とガスケット51との間にOリング52が挟み込まれて弾性変形し、Oリング52がフランジ部36の溝部56とガスケット51とにそれぞれ密着し、保護キャップ構体17のフランジ部36とガスケット51との間を気密に封止する。
【0053】
この結果、保護キャップ構体17が高周波入力結合器10に固定され、保護キャップ構体17と外導体13との間の内部空間が気密に保たれる。
【0054】
次いで、例えば真空ポンプにチューブやホースなどの配管によって接続されている真空吸引用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66に接続する。真空吸引用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66に接続することにより、被着脱ジョイント66のバルブ機構が開放する。真空ポンプによって外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の気体を吸引する。また、気体の吸引完了後、真空吸引用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66から外す。真空吸引用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66から外す際、被着脱ジョイント66のバルブ機構が閉止し、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の真空気密を保持する。
【0055】
また、必要に応じて、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間に、例えば窒素やアルゴンなどの酸化防止用のガスを充填する。
【0056】
ガスボンベなどガス供給部にチューブやホースなどの配管によって接続されているガス充填用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66に接続する。ガス充填用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66に接続することにより、被着脱ジョイント66のバルブ機構が開放する。ガス供給部によって外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間にガスを供給して充填する。また、ガスの充填完了後、ガス充填用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66から外す。ガス充填用の着脱ジョイントを被着脱ジョイント66から外す際、被着脱ジョイント66のバルブ機構が閉止し、ガスが充填されている外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の気密を保持する。
【0057】
このように、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の真空気密を保つこと、あるいは外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間にガスが充填された状態で気密を保つことにより、輸送時や保管時において、外導体13の内面や内導体14を外気との接触による酸化に対して保護できる。
【0058】
このように構成された第2の実施形態の高周波入力結合器用保護装置70によれば、外導体13と保護キャップ構体17との間をシール部材50によって気密に封止するため、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の真空気密を保持したり、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間にガスが充填された状態で気密を保持することができ、外導体13の内面や内導体14を外気との接触による酸化に対して保護できる。
【0059】
シール部材50は、外導体13と保護キャップ構体17との間に挟み込まれて塑性変形するガスケット51、および保護キャップ構体17とガスケット51との間に挟み込まれて弾性変形するOリング52を有するため、保護キャップ構体17が内導体14の材質よりも軟質の材質で一体に形成されていても、保護キャップ構体17と外導体13との間を確実に気密に封止することができる。
【0060】
さらに、保護キャップ構体17の覆い部30に被着脱ジョイント66を設けているため、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間の真空気密を保持したり、外導体13と保護キャップ構体17との間の内部空間にガスが充填された状態で気密を保持することが容易にできる。
【0061】
なお、被着脱ジョイント66は、覆い部30の円筒部30に設けてもよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10 高周波入力結合器
13 外導体
14 内導体
17 高周波入力結合器用保護部材としての保護キャップ構体
30 覆い部
31 振れ止め部
50 シール部材
51 ガスケット
52 Oリング
66 被着脱ジョイント
70 高周波入力結合器用保護装置
図1
図2
図3
図4