(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】水道使用時間計測装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20221116BHJP
【FI】
G01F1/00 T
(21)【出願番号】P 2017127413
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽太郎
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】波多江 進
【審判官】佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-93635(JP,A)
【文献】特開2007-24813(JP,A)
【文献】特開2008-267740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管に配置される圧力センサ又は流速センサと、
水の使用時間を計測するカウンタと、
水の連続使用時間を計測する制御部を備える水道使用時間計測装置であって、
前記制御部は、
前記圧力センサ又は前記流速センサにより出力されるセンサ信号を所定の間隔でサンプリング
して、前記センサ信号の微分値
及び分散
値を求め、
前記微分値及び前記分散値を評価して、何れかの給水点で水の使用が開始されたと判定
した場合に前記カウンタによるカウント動作を開始させ、何れかの給水点で水の使用が終了したと判定
した場合に前記カウンタをクリアする
ものである水道使用時間計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、水の使用が開始されたと判定して前記カウンタによるカウント動作を開始させた
後に、
前記分散値が水圧安定性判定閾値以下
である場合には、前記微分値が正の
値であるクリア判定閾値を超えている
ときに前記カウンタをクリアし、
前記分散値が前記水圧安定性判定閾値を超え
た場合には、前記微分値が
前記クリア判定閾値を超え
、且つ、前記センサ信号を取得して再計算した分散値が再計算前の分散値を超え
たときに前記カウンタをクリアする
ものである請求項1記載の水道使用時間計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記微分値が
、負の
値である微分値用の使用判定閾値を下回り、且つ前記分散値が
、前記水圧安定性判定閾値よりも低く設定される
分散値用の使用判定閾値を超える
ときに水の使用が開始されたと判定し、前記カウンタによるカウント動作を開始させる請求項2記載の水道使用時間計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道の継続的な使用時間を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道の蛇口の締め忘れによる漏水や、水道管の継ぎ手部分のゆるみによる漏水などを検出するためには、その前提として、水道管内で発生する圧力や流速の変化が通常の水道の使用によるものか否かを見極める必要がある。そこで、圧力センサや流速センサなどを用いて家庭内の水の使用状況を監視し、家庭内の使用では想定できないような所定の時間以上の水の使用を検知した場合に、漏水有りと判定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般の家庭内では複数箇所で同時に水が使用されることがある。したがって、上記の想定技術の場合、最初の1箇所目で水の使用を開始した時から最後の1箇所で水の使用を終了した時間までが、水の連続使用時間となってしまう。すると、予め設定した漏水判定時間を超えて、ユーザの意図に反して漏水を誤判定する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、同時に複数個所で水が使用されても、蛇口を締め忘れたような状態を判定するための水の使用連続時間を適切に計測できる水道使用時間計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の水道使用時間計測装置によれば、制御部は、水道管に配置される圧力センサ又は流速センサを介して、水道管内の水圧又は流速を監視する。そして、前記センサにより出力されるセンサ信号を所定の間隔でサンプリングして、当該信号の微分値と分散値とを求める。その微分値及び分散値を評価して、何れかの給水点で水の使用が開始されたと判定した場合にカウンタにカウント動作を開始させ、何れかの給水点で水の使用が終了したと判定した場合にカウンタをクリアする。これにより、水の連続使用時間を計測する。
【0007】
複数箇所で水が使用される水道管では、水圧が低下又は流速が上昇し、圧力又は流速のばらつきが小さくなったことを検出すれば、新たに別の箇所で水の使用が開始されたか、又は同じ箇所で水の使用量が増えたことを判定できる。逆に、水圧が上昇又は流速が低下し、圧力又は流速のばらつきが大きくなったことを検出すれば、ある箇所での水の使用量が減ったことを判定できる。更に、水圧が上昇又は流速が低下し、圧力又は流速のばらつきが小さくなったことを検出すれば、ある箇所での水の使用が終了したことを判定できる。
【0008】
そして、本発明における「水の連続使用時間」とは、カウンタにより以下のように計測される時間である。
・複数の給水点の少なくとも何れか1箇所で水の使用が開始された時点から、計測が開始される。
・その後、水の使用箇所が増えていく場合は、計測を継続する。
・水の使用箇所が減少したと判定すると、その時点で計測を一旦クリアしてから計測を再開する。
【0009】
したがって「水の連続使用時間」は、何れか1箇所で水の使用が開始された時点以降に、途切れることなく複数個所で水の使用が開始されたケースでは、最終的に残った1つの使用箇所における水の連続使用時間となる。すなわち、制御部がカウンタの動作を上記のように制御すれば、ユーザが意図して複数個所で同時に水を使用している状態を「連続使用時間」として計測することを回避できる。そして、最後の1箇所において蛇口の締め忘れがあるような状態を、連続使用時間として計測できる。
【0010】
請求項2記載の水道使用時間計測装置によれば、制御部は、水の使用が開始されたと判定してカウンタのカウント動作を開始させた後に、分散値が水圧安定性判定閾値以下である場合には、微分値が正の値であるクリア判定閾値を超えているときにカウンタをクリアする。また、分散値が水圧安定性判定閾値を超えた場合には、微分値がクリア判定閾値を超え、且つ、センサ信号を取得して再計算した分散値が、再計算前の分散値を超えたときにカウンタをクリアする。
【0011】
ここで、水の使用量を便宜的に「大」,「中」,「小」の3レベルに区分する。水道における水の使用量が多い状態の「大」では圧力又は流速のばらつきは比較的小さいが、水の使用量が「中」程度になると、圧力又は流速のばらつきは比較的大きくなる。そのため、使用量が「中」の状態にあると、その状態を基準とする使用量の増減の判断がより難しくなる。そこで、センサ信号の分散値を水圧安定性判定閾値と比較することで、水の使用量の「大」,「中」を判別し、その判別結果に応じてカウンタをクリアする条件を変更する。
【0012】
すなわち、分散値が水圧安定性判定閾値以下であれば水の使用量は「大」と判定できるので、微分値がクリア判定閾値を超えている条件のみでカウンタをクリアする。また、分散値が水圧安定性判定閾値を超えていれば、水の使用量は「中」と判定できる。このケースでは、微分値がクリア判定閾値を超える条件に加えて、センサ信号を取得して再計算した分散値が再計算前の分散値を超えている条件によりカウンタをクリアする。これにより、水の使用量は「中」の状態においても、水の使用量が減少する方向への変化を捉えてカウンタをクリアすることができる。
【0013】
請求項3記載の水道使用時間計測装置によれば、制御部は、微分値が負の値である微分値用の使用判定閾値を下回り、且つ分散値が水圧安定性判定閾値よりも低く設定される分散値用の使用判定閾値を超えるときに水の使用が開始されたと判定して、カウンタにカウント動作を開始させる。すなわち、水の使用が開始されると、通常は使用開始前の状態よりも水圧が低下又は流速が上昇するが、水道管においては供給圧が変動することもあるため、センサ信号にその影響が及ぶ可能性もある。「使用開始前」から「使用開始後」に移行する際に、センサ信号の分散値は比較的大きく変化するので、分散値も併せて評価することで水の使用開始判定をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態であり、漏水検出システムの構成を示す機能ブロック図
【
図2】給水点が3箇所ある水道において、水の使用箇所が順次増えて行く場合における圧力及び流量の変化の一例を示す図
【
図3】コントローラにより実行される水使用判定処理を示すフローチャート
【
図6】給水点がA,B,Cの3箇所ある水道の使用状態が変化した場合の水圧の変化及びカウンタによるカウント動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、漏水検出システムの構成を示す機能ブロック図である。水道管1は、例えば一般家庭に給水するために配管されているもので、その途中部位に電磁弁2及び圧力センサ3が配置されている。ここで、電磁弁2よりも上流側,つまり水源側の水道管を1a,電磁弁2と圧力センサ3との間の水道管を1b,圧力センサ3よりも下流側,つまり家庭側の水道管を1cとする。水道管1cの先は、家庭内の例えば洗面所や台所,トイレ等の各部に給水を行うため複数の配管に分岐している。水道管1cの末端部分は、例えば図示しない蛇口のような給水弁等により、水道の非使用時には閉塞されている。
【0016】
電磁弁2は、水道管1を全閉状態と全開状態とに切り替えるもので、その開閉制御はコントローラ4によって行われる。コントローラ4は、例えばマイクロコンピュータ等で構成されており、水道の連続使用時間を計測するためのソフトウェアによるカウンタ5を備えている。圧力センサ3が出力するセンサ信号は、コントローラ4に入力される。また、コントローラ4には表示機6が接続されている。表示機6は、例えば家屋内の壁面などに設置されており、コントローラ4が把握した水道管1の状態情報等が、シンボルや文字メッセージ等で表示される。
【0017】
また、コントローラ4は、無線通信機能を備えており、例えばユーザが所持しているスマートホン等に、上述した表示機6に表示されるような情報を送信してユーザに通知を行う。表示機6,無線通信による情報通知機能は、何れか一方のみを備えていても良い。これらの各構成要素の駆動電源にはバッテリを用いても良いし、商用交流電源より接続される電源回路により生成されるものでも良い。以上の構成において、圧力センサ3及びコントローラ4が、水道使用時間計測装置に相当する。
【0018】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2は、例えば給水点が3箇所ある水道において、
区間(0):使用開始前→区間(1):1箇所使用→区間(2):2箇所使用→
区間(3):3箇所使用
というように、順次使用箇所が増えて行く場合に、圧力P及び流量Qの変化の一例を示している。流量Qは、ゼロであるQ
0からQ
3にかけて順次増加するのに伴い、圧力Pは、初期値P
0からP
3にかけて順次減少する。
【0019】
ここで、各区間(0)~(3)に対応する圧力Pの分散値をそれぞれS0~S3としてこれらの大小関係を評価すると、流量Qの上昇に伴い圧力Pが低下するのに応じて、分散値Sも小さくなる。すなわち、蛇口が全く開放されていない未使用の状態では、そもそも圧力の低下が無いのでその圧力分散値S0は極小であり、実質的にゼロである。
【0020】
この状態から第1の蛇口が開放されると、圧力は高圧P0から低下し始めて不安定になり、分散値S1は大きくなる。更に、第2,第3の蛇口が開放されると、圧力は中圧P1からP2,P3に順次低下する。すると、圧力の下げ幅が狭まるため、低圧P2,P3では比較的安定することで分散値S2,S3は小さくなる。つまり、圧力の分散値は、第1の蛇口開放時のように変動できる圧力の幅が大きい場合には大きくなり、第2,第3の蛇口開放時のようには変動できる圧力の幅が小さい場合には小さくなる。したがって、圧力の分散値を監視すれば、既に開放済みの蛇口がある状態で、更に新しい蛇口が解放されたか、又は開放されていた蛇口の1つが閉められたかが検出できる。
【0021】
また、区間(2),(3)の分散値S2,S3は略等しい。すなわち、ある一定量以上の水が流れており圧力又は流速の変化も安定している状態から、更に水の使用量が増えた場合は、水量が変化する前後の差異は圧力値又は流速値の絶対値の差のみとなり、分散について有意な差は出ない。
【0022】
そして、水が未使用の状態である区間(0)における圧力Pの分散値S
0は極めて小さいので、未使用と判定する分散値の閾値,
図2では分散値S
3,S
0を判別する閾値を設けることで、水の使用が完全に終了したか、一部の箇所のみで使用が終了したのかを判別できる。
【0023】
また、圧力の微分値は圧力の変化の大きさを示すので、水の使用量が増減するタイミングにおいて、微分値は有意な変化を示す。したがって、圧力の微分値及び分散値を組み合わせて評価すれば、水の使用が開始された時点や、水の使用量が増減した時点や、最終的に水の使用が終了した時点をより確実に判別し分けることができる。
【0024】
図3は、コントローラ4により実行される水使用判定処理を示すフローチャートである。先ず、圧力センサ3のセンサ信号をA/D変換して読み込んで(S1)、圧力値の微分値を算出する(S2)。センサ信号のサンプリング間隔は、例えば0.2秒である。そして、微分値を負の閾値と比較する(S3)。微分値が閾値以上であれば(NO)ステップS1に戻る。一方、微分値が閾値未満であれば(YES)圧力値の分散値S
Sを算出し(S4)、その分散値S
Sを水使用判定用の閾値と比較する(S5)。前記閾値は、例えば「0.004」程度に設定する。分散値が閾値以下であれば(NO)ステップS1に戻り、閾値を超えていれば(YES)漏水判定処理を実行する(S6)。
【0025】
図4は、漏水判定処理を示すフローチャートである。先ず、カウンタ5により計測される水の連続使用時間のカウント値tをインクリメントする(S11)。そして、圧力センサ3のセンサ信号をA/D変換して読み込み(S12)、圧力値の分散値S
0を算出する(S2)。尚、これは
図2中に示した分散値S
0とは無関係であり、以降の同じ符号の分散値も同様である。それから、分散値S
0を、ステップS5と同様に水使用判定用の閾値と比較する(S14)。
【0026】
分散値S
0が閾値以下であれば(NO)、カウンタ5をクリアして(S18)
図3に示す水使用判定処理に移行する(S19)。一方、分散値S
0が閾値を超えていると(YES)連続使用時間判定処理を行う(S15)。当該処理を実行すると、カウンタ5のカウント値tを漏水判定用の閾値と比較し(S16)、カウント値tが閾値以下であれば(NO)ステップS11に移行する。一方、カウント値tが閾値を超えていると(YES)漏水有と判定する(S17)。この場合、コントローラ4は電磁弁2を閉じて表示機6にその旨を表示させ、無線によりユーザのスマートホンにその旨を通知する等の漏水対応処理を行う。
【0027】
図5は、連続使用時間判定処理を示すフローチャートである。先ず、圧力値の微分値ΔPを算出し(S21)、分散値S
0を、水圧安定性判定用の閾値と比較する(S22)。前記閾値は、例えば「0.02」程度に設定する。分散値S
0が閾値以下であれば(NO)水の使用量は「大」であると判断する。そして、微分値ΔPを正の閾値と比較し(S28)閾値を超えていれば(YES)、使用している水量が減少したと判断し、カウンタ5のカウンタ値tをクリアして(S27)処理を終了する。微分値ΔPが閾値以下であれば(NO)そのまま処理を終了する。
【0028】
一方、ステップS22において、分散値S0が閾値を超えていると(YES)水の使用量は「中」であると判断する。この場合、ステップS28と同様の判断を行い(S23)、微分値ΔPが閾値以下であれば(NO)処理を終了する。微分値ΔPが閾値を超えていれば(YES)、再度圧力センサ3のセンサ信号を読み込み(S24)、その分散値S1を算出する(S25)。そして、分散値S1,S0を比較し(S26)、(S1≦S0)であれば(NO)処理を終了し、(S1>S0)であれば(YES)ステップS27に移行する。
【0029】
図6は、以上の処理を実行することで、例えば給水点がA,B,Cの3箇所ある水道の使用状態が変化した場合の水圧の変化及びカウンタ5によるカウント動作の一例を示す。カウンタ5のよるカウント動作は、水の使用箇所がA→(A+B)→(A+B+C)と順次増えて行く際には継続される。一方、前記カウント動作は、水の使用箇所が(A+B+C)→(A+B)→Aと順次減少する際には、減少するタイミングでリセットされる。したがって最終的には、1つだけ残った給水点Aについての連続使用時間tがカウントされる。そして、その連続使用時間tが閾値を超えると、漏水判定処理におけるステップS16で「YES」となり、漏水が検出される。すると、コントローラ4は、ステップS27において漏水対応処理を行う。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、コントローラ4は、複数の給水点に向かう配管が分岐する分岐点よりも上流側の水道管1に配置される圧力センサ3を介して、水道管1内の水圧を監視する。そして、圧力センサ3により出力されるセンサ信号を所定の間隔でサンプリングすると、当該信号の微分値と分散値とを求める。その微分値及び分散値を評価して、何れかの給水点で水の使用が開始されたと判定するとカウンタ5にカウント動作を開始させ、何れかの給水点で水の使用が終了したと判定するとカウンタ5をクリアする。これにより、水の連続使用時間tを計測する。
【0031】
これにより、連続使用時間tは、何れか1箇所で水の使用が開始された時点以降に、途切れることなく複数個所で水の使用が開始されたケースでは、最終的に残った1つの使用箇所における水の連続使用時間となる。よって、コントローラ4がカウンタ5の動作を上記のように制御すれば、ユーザが意図して複数個所で同時に水を使用している状態を「連続使用時間」として計測することを回避できる。そして、最後の1箇所において蛇口の締め忘れがあるような状態を、連続使用時間tとして計測できる。
【0032】
具体的には、コントローラ4は、水の使用が開始されたと判定してカウンタ5のカウント動作を開始させた際に、分散値S0が水圧安定性判定閾値以下であれば、微分値ΔPが正のクリア判定閾値を超えているとカウンタ5をクリアする。また、分散値S0が水圧安定性判定閾値を超えていれば、微分値ΔPが正のクリア判定閾値を超えており、且つ、センサ信号を取得して再計算した分散値S1が、再計算前の分散値S0を超えているとカウンタ5をクリアする。
【0033】
すなわち、分散値S0が水圧安定性判定閾値以下であれば水の使用量は「大」と判定できるので、微分値ΔPがクリア判定閾値を超えている条件のみでカウンタ5をクリアする。また、分散値S0が水圧安定性判定閾値を超えていれば、水の使用量は「中」と判定できる。このケースでは、微分値ΔPがクリア判定閾値を超える条件に加えて、センサ信号を取得して再計算した分散値S1が分散値S0を超えている条件によりカウンタ5をクリアする。これにより、水の使用量は「中」の状態においても、水の使用量が減少する方向への変化を捉えてカウンタ5をクリアすることができる。
【0034】
また、コントローラ4は、微分値ΔPが負の使用判定閾値を下回り、且つ分散値SSが水圧安定性判定閾値よりも低く設定される使用判定閾値を超えると水の使用が開始されたと判定して、カウンタ5にカウント動作を開始させる。すなわち、水の使用が開始されると、通常は使用開始前の状態よりも水圧が低下又は流速が上昇するが、水道管においては供給圧が変動することもあるため、センサ信号にその影響が及ぶ可能性もある。「使用開始前」から「使用開始後」に移行する際に、センサ信号の分散値SSは比較的大きく変化するので、分散値も併せて評価することで水の使用開始判定をより正確に行うことができる。
【0035】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
水の使用開始判定については、必要とされる精度に応じて圧力の微分値のみで判定したり、絶対値で判定しても良い。
圧力センサ3に替えて流速センサを用い、圧力に替えて流速に基づき同様の使用時間計測を行っても良い。
水使用判定用の閾値と水圧安定性判定用の閾値との具体的数値は、前者が後者よりも小さいという条件下で、適用するシステムに応じて適宜設定すれば良い。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1は水道管、2は電磁弁、3は圧力センサ、4はコントローラ、5はカウンタ、6は表示機を示す。