IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパステルモバイオマテリアル株式会社の特許一覧

<図1>
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図1
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図2
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図3
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図4
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図5
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図6
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図7
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図8
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図9
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図10
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図11
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図12
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図13
  • 特許-骨補填材および骨補填材の製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】骨補填材および骨補填材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/12 20060101AFI20221116BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 27/42 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20221116BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61L27/12
A61L27/24
A61L27/36 410
A61L27/58
A61L27/42
A61L27/44
A61L27/56
A61F2/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017203134
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2018094394
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2016240135
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304050912
【氏名又は名称】オリンパステルモバイオマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】本島 怜
(72)【発明者】
【氏名】山田 真也
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106823008(CN,A)
【文献】特開2006-320442(JP,A)
【文献】特開2008-086676(JP,A)
【文献】特開2010-273847(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103055352(CN,A)
【文献】国際公開第2013/005778(WO,A1)
【文献】特開2014-076387(JP,A)
【文献】PETERS, F., REIF, D.,Functional Materials for Bone Regeneration from Beta-Tricalcium Phosphate,Materials Science & Engineering Technology,2004年,VOL. 35, ISSUE 4,PAGES 203-207
【文献】SARIKAYA, B., AYDIN, H. M.,Collagen/Beta-Tricalcium Phosphate Based Synthetic Bone Grafts via Dehydrothermal Processing,BioMed Research International,2015年,VOL. 2015, Article ID 576532,PAGES 1-9
【文献】高橋賢,骨補填材としての生体内吸収性リン酸カルシウム添加コラーゲン材料の効果について,歯科学報,1997年05月30日,第97巻第5号,pp. 509-536,ISSN: 0037-3710
【文献】Materials Letters,2006年,Vol.60,pp.999-1002
【文献】Biomaterials,2001年,Vol.22,pp.1705-1711
【文献】MATSUNO, Tomonori ET AL.,Development of beta-tricalcium Phosphate/Collagen Sponge Composite for Bone Regeneration,Dental Materials Journal,2006年,VOL. 25, ISSUE 1,PAGES 138-144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61F 2/00- 2/97
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウムと、化学架橋剤によって架橋された生分解性高分子とを、4:1以上10:1未満の質量比で含み、前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、
前記化学架橋剤が、エポキシドおよびカルボジイミドの少なくともいずれかを含み、
前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)であり、
前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含む多孔質の骨補填材。
【請求項2】
前記粒子の最頻径が1μm以上20μm以下である請求項1に記載の多孔質の骨補填材。
【請求項3】
前記骨補填材の気孔径は、20μmより大きい請求項1または請求項2に記載の骨補填材。
【請求項4】
前記骨補填材の気孔率は50%以上である請求項1から請求項3のいずれかに記載の骨補填材。
【請求項5】
リン酸カルシウムを含む前駆体を焼成してリン酸カルシウム微粉体を生成するステップと、
該リン酸カルシウム微粉体を、生分解性高分子溶液に混合して攪拌するステップと、
該攪拌ステップにより得られた成果物に架橋剤を添加して架橋することにより三次元構造の生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を形成させる架橋ステップと、
該架橋ステップにより生成した前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を凍結乾燥するステップと、
該凍結乾燥ステップにより得られたスポンジ状の前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材多孔体から未反応の前記架橋剤および反応副生成物を洗浄除去する洗浄ステップと、
洗浄された前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材多孔体を凍結及び乾燥して骨補填材を生成するステップと、を含み、
前記リン酸カルシウムと前記生分解性高分子との質量混合比が、4:1以上10:1未満であり、
前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、
前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)であり、
前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含む骨補填材の製造方法。
【請求項6】
前記骨補填材の気孔径は、20μmより大きい請求項に記載の骨補填材の製造方法。
【請求項7】
前記骨補填材の気孔率は50%以上である請求項またはに記載の骨補填材の製造方法。
【請求項8】
前記架橋が化学的架橋である請求項から請求項のいずれかに記載の骨補填材の製造方法。
【請求項9】
前記化学的架橋に用いられる化学架橋剤が、エポキシド、カルボジイミドの少なくともいずれかを含む請求項に記載の骨補填材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨補填材および骨補填材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高い骨伝導能を有する生体吸収性の骨補填材として、無機材料であるハイドロキシアパタイト(HA)やβ型-リン酸三カルシウム(β-TCP)に代表されるリン酸カルシウム系のセラミックスに、有機材料であるコラーゲンなどを混合して生成した複合材料が広く使用されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-76387号明細書
【文献】米国特許出願第2011/0117166号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ハイドロキシアパタイト(HA)とコラーゲンを混合して生成した骨補填材が記載されている。しかし、特許文献1の骨補填材は、ハイドロキシアパタイト(HA)とコラーゲンとの質量比が1:10~5:1(w/w)であるため、コラーゲンに対してハイドロキシアパタイトの質量が少なく、十分な新生骨形成効果が得られないという問題がある。また、特許文献2には、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)とコラーゲンを混合して生成した骨補填材が記載されているが、用いられるβ型-リン酸三カルシウム顆粒の粒径が100μm~300μmと大きいため、多孔体からなるコラーゲンマトリクス上に分散させると、図12に示されるように、コラーゲンマトリクス上に不均一に局在化してしまい、骨形成の足場環境が悪くなることで、骨伝導能が阻害されてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、骨形成性および形状維持性をさらに高めることができる骨補填材および骨補填材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、リン酸カルシウムと生分解性高分子とを、4:1以上10:1未満の質量比で含み、前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、前記生分解性高分子が架橋されている多孔質の骨補填材である。
上記態様の一実施形態において、前記生分解性高分子は化学的架橋される。
上記態様の他の実施形態において、前記粒子の最頻径は1μm以上20μm以下である。
【0007】
上記態様によれば、リン酸カルシウムと生分解性高分子との質量比が4:1以上10:1未満と適切に規定されているので、十分な柔軟性、および形状回復性を有しながら、十分な新生骨形成能を発揮することができる骨補填材を生成することができる。したがって、骨欠損部に隙間なく骨補填材を充填することができ、十分な新生骨形成効果を得ることができる。また、リン酸カルシウムの最頻径が20μm以下であるので、生分解性高分子のマトリクスの全域に均一かつ密に分散させることができ、新生骨形成の足場環境を向上させることができる。その結果、新生骨形成能をさらに向上させることができる。
なお、「最頻径」とは、粒子の粒度分布において、粒子径に対する体積%もしくは個数%の極大値であり、モード径とも呼ばれる。
【0008】
上記態様においては、前記骨補填材の気孔径を、20μmよりも大きいこととしてもよい。
また、前記骨補填材の気孔率を、50%以上であることとしてもよい。
このようにすることで、細胞や血管等の組織の侵入のために必要な骨補填材の気孔径を確保するとともに、細胞増殖および骨組織の形成に必要な血液や体液の循環が可能な空間を確保することができる。その結果、新生骨形成をさらに促進することができる。
【0009】
上記態様においては、前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)としてもよい。
このようにすることで、骨伝導能に優れ、かつ、高い生体吸収性を有する骨補填材を生成することができる。
【0010】
上記態様においては、前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含むこととしてもよい。
このようにすることで、簡易に柔軟性を有する骨補填材を生成することができる。
【0011】
上記態様においては、前記架橋が化学的架橋としてもよい。
このようにすることで、生成した骨補填材の弾力性、柔軟性および、形状回復性を向上させることができ、新生骨形成に必要な細胞や組織が侵入するための空間を維持することができる。また、新生骨形成のための足場環境の安定性を向上させることができる。
【0012】
上記態様においては、前記化学的架橋に用いられる化学架橋剤が、エポキシド、カルボジイミドの少なくともいずれかを含むこととしてもよい。
このようにすることで、湿潤状態であっても形状回復性が高く、かつ、生体安全性が高い骨補填材を得ることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、リン酸カルシウムを含む前駆体を焼成してリン酸カルシウム微粉体を生成するステップと、前記リン酸カルシウム微粉体を、生分解性高分子溶液に混合して攪拌するステップと、該攪拌ステップにより得られた成果物に架橋剤を添加して架橋することにより三次元構造の生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を形成させる架橋ステップと、該架橋ステップにより生成した前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を凍結乾燥するステップと、該凍結乾燥ステップにより得られたスポンジ状の前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合多孔体から未反応の前記架橋剤および反応副生成物を洗浄除去する洗浄ステップと、洗浄された前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合多孔体を凍結及び乾燥して骨補填材を生成するステップと、を含み、前記リン酸カルシウムと前記生分解性高分子との質量混合比が、4:1以上10:1未満であり、前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下である骨補填材の製造方法である。
【0014】
上記態様によれば、リン酸カルシウムと生分解性高分子との質量比が4:1以上10:1未満と適切に規定されているので、十分な柔軟性、および形状回復性を有しながら、十分な新生骨形成能を発揮する骨補填材を製造することができる。リン酸カルシウム粒子の最頻径が20μm以下であるので、生分解性高分子のマトリクスの全域に均一かつ密に分散させることができ、新生骨形成の足場環境を向上させることができる。その結果、新生骨形成能をさらに向上させることができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記骨補填材の気孔径が20μmよりも大きいことが好ましい。
また、前記骨補填材の気孔率が、50%以上であることが好ましい。
このようにすることで、細胞や血管等の組織の侵入のために必要な骨補填材の気孔径を確保するとともに、細胞増殖および骨組織の形成に必要な血液や体液、酸素の循環が可能な空間を確保することができる。その結果、新生骨形成をさらに促進することができる。
【0016】
上記態様においては、前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)であることが好ましい。
このようにすることで、骨伝導能に優れ、かつ、高い生体吸収性を有する骨補填材を製造することができる。
【0017】
また、上記態様においては、前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含むことが好ましい。
このようにすることで、簡易に柔軟性を有する骨補填材を製造することができる。
【0018】
また、上記態様においては、前記架橋が化学的架橋であることが好ましい。
このようにすることで、生成した骨補填材の弾力性、柔軟性および、形状回復性を向上させることができ、新生骨形成に必要な細胞や組織が侵入するための空間を維持することができる。また、新生骨形成のための足場環境の安定性を向上させることができる。
【0019】
また、上記態様においては、前記化学的架橋に用いられる化学架橋剤が、エポキシド、カルボジイミドの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
このようにすることで、湿潤状態であっても形状回復性が高く、かつ、生体安全性が高い骨補填材を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新生骨形成性および形状維持性をさらに高めることができる骨補填材および骨補填材の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る骨補填材の断面図である。
図2図1の骨補填材の生成過程を示す図である。
図3図1の骨補填材断面の走査電子顕微鏡写真である。
図4】気孔率50%以上、平均気孔径が50μm以上である骨補填材断面の走査電子顕微鏡写真であって、(a)は、100倍の低倍率写真、(b)は、300倍の高倍率写真である。
図5図1の骨補填材の製造方法を示すフローチャートであって、(a)は、β-TCP微粉体製造工程、(b)は、熱変性コラーゲン製造工程、(c)は、骨補填材製造工程をそれぞれ示している。
図6】実施例1の実験結果を示すグラフであり、骨補填材の形状回復性を評価したグラフである。
図7】頭蓋骨の骨欠損部に骨補填材が充填されたラットの充填部の写真である。
図8】実施例2において、骨伝導性の判定に用いられるスコアの一例を示すμCT画像であって、(a)には、移植された骨補填材が全範囲に癒合していることが示され、(b)には、部分的に癒合していることが示され、(c)には、癒合が確認されなかったことが示されている。
図9】実施例2において、骨進入性の判定に用いられるスコアの一例を示すμCT画像であって、(a)には、移植された骨補填材が骨欠損部の中心部に進入していることが示され、(b)には、骨欠損部の辺縁部のみで新生骨が形成されていることが示され、(c)には、骨進入が確認されなかったことが示されている。
図10】実施例2に係る骨補填材をラットの頭蓋骨に移植してから6週間後の実験結果であって、サンプルA~Kの骨再生度の状態を示すμCT画像である。
図11】実施例2の実験結果を示すグラフである。
図12】従来技術に係る骨補填材の生成過程を示す図である。
図13図12で生成した骨補填材の断面の走査電子顕微鏡写真である。
図14】サンプルA~Jの骨補填材断面の低倍率および高倍率写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態に係る骨補填材について説明する。
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係る骨補填材について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る骨補填材1は、図1および図2に示されるように、生分解性高分子であるコラーゲンを主成分とするコラーゲンマトリクス2と、β-TCP(β型-リン酸三カルシウム)3の微粉体とを混合させてなるコラーゲン/β-TCP複合材である。β-TCP3は、骨欠損部に移植された後、周囲の骨組織からの作用により徐々に生体に吸収されながら自家骨へと置換するようになっている。
【0024】
コラーゲンマトリクス2は、架橋剤5により架橋処理が施されている。これにより、コラーゲン分子同士が架橋してつながれ、三次元的な構造を形成することで、一定の弾性を有しながら、生体内でその形状を一定期間保持できるようになっている。本実施形態においては、架橋処理は、特に、化学的架橋で架橋することが好ましい。
化学架橋剤としては、架橋反応のしやすさや、得られた骨補填材1の生体適合性等を考慮すると、エポキシド、カルボジイミド等の架橋剤が特に好ましいが、これらに限られるものではない。
【0025】
β-TCP3の微粉体は、粒径が異なる複数の粒子を含んでおり、その最頻径は、20μm以下となっている。β-TCP3の微粉体粒子の最頻径が20μmより大きくなると、骨形成を促進する作用が低下する可能性がある。β-TCP3の微粉体は、コラーゲンマトリクス2の気孔壁に取り込まれる形で複合化されている。
【0026】
図1図3および図4(a)および(b)に示されるように、骨補填材1には、平均径が50μm以上である気孔4が複数形成されている。図4(a)および(b)には、気孔率50%以上、平均気孔径が50μm以上である場合の骨補填材1断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像が示されている。図4(a)には、骨補填材1を100倍の低倍率で観察したSEM画像が、図4(b)には、骨補填材1を300倍の高倍率で観察したSEM画像が、それぞれ示されている。骨補填材1にこのような気孔4を複数形成することで、細胞や血管等の組織の侵入を促進するとともに、血液や体液の循環を可能にし、効率的に骨形成を促進させることができるようになっている。
【0027】
本実施形態に係る骨補填材1は、β-TCP3とコラーゲンマトリクス2との質量比が4:1以上10:1未満となるよう形成されている。したがって、十分な柔軟性、および形状回復性を有しながら、十分な骨形成能を発揮することができるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、リン酸カルシウムとして、生体内で長期間安定に存在することができ、生体材料として特に優れているβ-TCPを用いたものについて説明したが、これに限られず、生体安全性および生体適合性を有するもの、すなわち、生体材料として適用可能なものであればよい。例えば、リン酸カルシウム系化合物としては、ハイドロキシアパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、本実施形態では、生分解性高分子としてコラーゲンを用いたものについて説明したが、これに代えて、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン等を用いることとしてもよく、これに限られない。
【0030】
このように構成された本実施形態に係る骨補填材1は以下の製造方法によって製造される。
本実施形態に係る骨補填材1の製造方法は、図5(a)~(c)に示されるように、β-TCP3の微粉体を製造するβ-TCP微粉体製造工程SAと、熱変性コラーゲンを製造する熱変性コラーゲン製造工程SBと、β-TCP微粉体製造工程SAおよび熱変性コラーゲン製造工程SB1により得られたβ-TCP3の微粉体およびアテロコラーゲン酸性溶液からコラーゲン/β-TCP複合材からなる骨補填材1を製造する骨補填材製造工程SCとを備えている。
【0031】
β-TCP微粉体製造工程SAは、図5(a)に示されるように、β-TCP3の前駆体を合成する合成ステップSA1と、合成されたβ-TCP3の前駆体を焼成することによりβ-TCP凝集体を生成する焼成ステップSA2と、生成されたβ-TCP3の凝集体を粉砕する粉砕ステップSA3と、を備えている。
合成ステップSA1は、例えば、カルシウム供給物質とリン酸供給物質から合成されたβ-TCP3の前駆物質を含むスラリーを乾燥することにより行われる。この合成ステップSA1によりβ-TCP3の前駆体が得られる。
焼成ステップSA2は、ステップSA1により得られたβ-TCP3の前駆体を焼成することにより行われる。これにより、β-TCP3の凝集体が得られる。
粉砕ステップSA3は、例えば、ステップSA2により得られたβ-TCP3の凝集体を十分に細かく粉砕すること等により行われる。これにより、β-TCP3の微粉体が得られる。なお、粉砕の方法は特に限定されない。
【0032】
熱変性コラーゲン製造工程SBは、図5(b)に示されるように、ペプシン処理によりアテロ化されたアテロコラーゲンを、酸性溶媒に溶解してアテロコラーゲン酸性溶液を調製するステップSB1と、ステップSB1により得られたアテロコラーゲン酸性溶液を凍結乾燥させる乾燥ステップSB2と、乾燥ステップSB2により得られたコラーゲンスポンジに適量のリン酸緩衝溶液を加えて調製し、加熱処理を施してコラーゲンを変性させ熱変性コラーゲンを得る熱変性ステップSB3と、を備えている。
【0033】
骨補填材製造工程SCは、図5(c)に示されるように、β-TCP微粉体製造工程SAにより得られたβ-TCP3の微粉体と、熱変性コラーゲン製造工程SBで得られたアテロコラーゲン酸性溶液とを混合して攪拌する混合ステップSC1と、混合された混合液からコラーゲン/β-TCP複合材ゲルを得るコラーゲン/β-TCP複合材ゲル生成ステップSC2と、コラーゲン/β-TCP複合材ゲルを攪拌してゲルを崩し、懸濁させるコラーゲン/β-TCP複合材ゲル攪拌ステップSC3と、コラーゲン/β-TCP複合材ゲルを攪拌して得られた成果物にリン酸緩衝液を添加しコラーゲン/β-TCP複合材懸濁液を調製するコラーゲン/β-TCP複合材懸濁液調製ステップSC4と、コラーゲン/β-TCP複合材懸濁液に熱変性コラーゲンを得る熱変性ステップSB3で得られた熱変性コラーゲンを添加する熱変性コラーゲン添加ステップSC5と、コラーゲン/β-TCP複合材懸濁液に架橋剤5を添加して架橋処理を施す架橋ステップSC6と、架橋処理したコラーゲン/β-TCP複合材懸濁液を凍結乾燥するコラーゲン/β-TCP複合材懸濁液凍結乾燥ステップSC7と、コラーゲン/β-TCP複合材懸濁液凍結乾燥ステップSC7により得られたコラーゲン/β-TCP複合材から未反応の架橋剤5を洗浄する洗浄ステップSC8と、洗浄ステップSC8により未反応の架橋剤5が除去された後のコラーゲン/β-TCP複合材を凍結乾燥させる乾燥ステップSC9と、乾燥されたスポンジ状のコラーゲン/β-TCP複合材を加工して、任意形状の弾力性を有する骨補填材1を生成する加工ステップSC10と、を備えている。
【0034】
このようにして製造された本実施形態に係る骨補填材1は、生体内の骨欠損部に移植されることにより、骨欠損部の治療に用いられる。移植された骨補填材1は骨芽細胞が新生骨を形成する際の足場となり、時間の経過に伴って骨欠損部に新生骨が形成される。これにより、骨欠損部を治癒することができる。
【0035】
本実施形態によれば、β-TCP3の微粉体と、コラーゲンマトリクス2の質量比を4:1以上10:1未満にすることにより、従来使用されていた骨補填材に比べて弾力性を向上させることができ、十分な柔軟性および形状回復性を実現しながら、迅速かつ十分に新生骨が形成される。また、骨欠損部に隙間なく移植された骨補填材1の内部へ血液や骨芽細胞が侵入可能な気孔を確保しつつ、リン酸カルシウム粒子の最頻径を20μm以下としたβ-TCP3の微粉体をコラーゲンマトリクス2の全域に均一かつ密に万遍なく分散させることで、β-TCP3の微粉体が移植部周囲の骨欠損部と密に接することができる。この結果、骨欠損部の周辺から新生骨形成に必要な骨芽細胞を骨補填材1に誘導することで、新生骨の形成を促進することができる。
【実施例
【0036】
次に、上述した本発明の実施形態の実施例1~5について、図面を参照して以下に説明する。
〔実施例1〕
(形状回復性評価)
β-TCPとコラーゲンの配合質量比を変えた合計4つの骨補填材1の試料を作製し、作製した各試料の形状回復性を、以下の手順により評価した。
まず、xを、コラーゲンを1としたときのβ-TCPの質量比、yを、β-TCP微粉体粒子の最頻径としたとき、xBTyであらわされる以下の4つの試料を調製した。なお、β-TCP微粉体粒子の最頻径yは、全て10μm未満に調製した。
試料1: 4BT10(β-TCP:コラーゲン=4:1(w/w))
試料2: 9BT10(β-TCP:コラーゲン=9:1(w/w))
試料3:13BT10(β-TCP:コラーゲン=13:1(w/w))
試料4:16BT10(β-TCP:コラーゲン=16:1(w/w))
試料1~4は全て1cmの立方体に加工された。
【0037】
次に、調製した上記試料1~4の形状回復性を、以下の実験により評価した。
まず、試料1~4のそれぞれに最大吸水可能量を超えて吸水不可となるまでRO水(Reverse Osmosis水)を滴下した。次に、十分吸水させた試料1~4を、オートグラフを用いて荷重をかけ、厚さが2mmになるまで圧縮した。次に、圧縮された試料1~4を除圧して形状を回復させ、回復した試料1~4の厚さを測定した。以上の手順を10回繰り返し、試料1~4の形状回復率を測定した。試料1~4の形状回復率測定結果を図6に示す。
【0038】
図6は、実施例1の実験結果を示すグラフである。横軸が各試料の圧縮回数を示しており、縦軸が各試料を圧縮させた後に除圧して形状を回復させた後の試料の厚さを計測し、圧縮前の各試料の厚さと比較した場合の形状回復率(%)を示している。図6に示されるように、コラーゲンに対するβ-TCPの配合率(質量比)と、形状回復率との間には相関関係が存在することが確認され、コラーゲンに対するβ-TCPの配合率(質量比)が小さいほど形状回復率が高くなるという知見が得られた。特に、試料1(4BT10)、試料2(9BT10)、試料3(13BT10)では、圧縮回数が増えた場合であっても約80%以上の高い形状回復率が確保できることが確認された。反面、試料4(16BT10)の1回目以降の形状回復率は80%以下に低下しており、コラーゲンに対するβ-TCPの配合率(質量比)が大きくなると、形状回復率が低下することが確認された。
【0039】
以上の結果から、β-TCPと、コラーゲンとの質量比を4:1以上10:1未満とすることにより、骨補填材の形状回復性を向上させることで骨欠損部に隙間なくかつ密に骨補填材を充填させた場合にも、骨補填材内部への血液や骨芽細胞の侵入を促し、新生骨形成を促進することができることが示唆された。
【0040】
〔実施例2〕
(新生骨形成能評価)
次に、β-TCPとコラーゲンの配合質量比およびβ-TCP粒子の最頻径を変えた合計10個の骨補填材1のサンプルを作製し、作製した各試料の新生骨形成能を比較した。
具体的には、作製したサンプルA~Jをそれぞれ直径3mmに切り出して、ラットの頭蓋骨の左右に形成した直径3mmの骨欠損部に移植した(図7参照)。移植後、頭蓋骨の骨膜は保存して縫合した。移植から6週間経過後のμCT画像を撮像して各サンプルA~Jの新生骨再生状態を観察した。その写真を図10に示す。また、図14には、各サンプルA~Jの骨補填材1断面を低倍率および高倍率で観察したSEM画像が、それぞれ示されている。移植から6週間経過後のサンプルA~Jを移植部周囲の頭蓋骨とともに摘出し、骨伝導性と骨進入性を評価した。なお、比較例として、骨欠損部に骨補填材1を移植せずに空洞のままとした場合をサンプルKとした。
【0041】
実験条件及び結果を表1にまとめた。なお、比較実験は検体数3もしくは5で行われ、その平均値により評価が行われた。
【表1】
【0042】
新生骨再生状態は、主に骨伝導性と骨進入性を評価することにより確認した。図8(a)~(c)は、骨伝導性の判定に用いられる各ポイントの判定基準を示すμCT画像であり、図9(a)~(c)は、骨進入性の判定に用いられる各ポイントの判定基準を示すμCT画像である。
【0043】
骨伝導性の評価は、移植された骨補填材1が全範囲に癒合していることが確認された場合には2ポイント(図8(a)参照))、部分的に癒合していることが確認された場合には1ポイント(図8(b)参照)、癒合が確認されなかった場合には0ポイント(図8(c)参照)として評価した。
また、骨進入性の評価は、移植された骨補填材1が骨欠損部の中心部に進入していることが確認された場合には2ポイント(図9(a)参照))、骨欠損部の辺縁部のみで新生骨が形成されていることが確認された場合には1ポイント(図9(b)参照)、骨進入が確認されなかった場合には0ポイント(図9(c)参照)として評価した。
骨伝導性および骨進入性の判定基準を表2に示す。
【表2】
【0044】
サンプルA~Kについて、表2の判定基準に基づいて骨伝導性および骨進入性をカウントし、形成した骨欠損部における新生骨が形成された領域の状態を評価した。その結果を図11に示す。
【0045】
この実験の結果、骨欠損部を空洞のまま6週間経過させた場合、骨伝導性および骨進入性の合計スコアは0.5ポイントと著しく低かった。図10に示される6週間経過後のサンプルKのμCT画像においては、骨欠損部が空洞のまま取り残されており、新生骨の形成はほぼ確認されなかった。
また、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径を100-300μmとしたサンプルC~FおよびJ、および、β-TCP粒子の最頻径を50-100μmとしたサンプルIでは、β-TCPとコラーゲンの質量比の大小にかかわらず、骨伝導性および骨進入性の合計スコアは1~2ポイントと低かった。図10に示される6週間経過後のサンプルC~F、I、およびJのμCT画像では、骨欠損部内に充填された骨補填材1の癒合および骨進入が殆ど進んでいないことが確認された。
【0046】
これに対し、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径が1.0-2.0μm、コラーゲン1に対するβ-TCPの質量比が10であるサンプルAや、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径が1-10μm、コラーゲン1に対するβ-TCPの質量比が10、架橋剤WSC(1-エチルー3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)の濃度が5.0wt%であるサンプルGでは、骨伝導性および骨進入性の合計スコアが3.7~4と高かった。図10に示される6週間経過後のサンプルAやサンプルGのμCT画像においても、移植部位において骨補填材1の癒合が進み、また移植部位の中心部にまで新生骨が進入して新生骨再生が促進されていることが確認された。また、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径が1.0-2.0μm、コラーゲン1に対するβ-TCPの質量比が5であるサンプルBや、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径が10-50μm、コラーゲン1に対するβ-TCPの質量比が10、架橋剤WSCの濃度が5.0wt%であるサンプルHの骨伝導性および骨進入性の合計スコアは3と比較的高かった。また、図10に示される6週間経過後のサンプルBやサンプルHのμCT画像では、骨補填材1の癒合が部分的に進み、移植部位の中心部に骨進入していることが確認された。このように、サンプルA、サンプルB、サンプルG、およびサンプルHにおいて、新生骨形成が著しく促進されることが確認された。
【0047】
〔実施例3〕
(成分質量比評価)
次に、実施例2のサンプルAおよびBの成分質量比を測定した。成分質量比測定は、焼成により減少したコラーゲン質量を算出することにより行った。
具体的は、まず、焼成に用いるるつぼの質量を測定した。次に、サンプルA(β-TCP/コラーゲン=10/1(w/w:仕込み時)およびサンプルB(β-TCP/コラーゲン=5/1(w/w:仕込み時)質量を測定した。その後、サンプルAおよびBをるつぼに入れ、マッフル炉により1050℃で10時間焼成した。焼成後、サンプルAおよびBに残存するβ-TCPの質量を測定した。この測定結果から、減少したコラーゲンの重量質量を算出した。最後に、焼成前のサンプルAおよびサンプルBにおけるβ-TCP/コラーゲンの質量比を算出した。
【0048】
(サンプルA)
<測定結果>
るつぼAの質量:152.0460g
焼成前質量:るつぼA+サンプルA(β-TCP/コラーゲン複合材)の質量=156.1773g
焼成後質量:るつぼA+サンプルA(β-TCP)の質量=155.7560g
<算出結果>
β-TCP+コラーゲン複合材の質量:4.1313g
β-TCP質量:3,710g
コラーゲン質量:0.4213g
β-TCP/コラーゲン質量比=8.81/1(w/w)
(サンプルB)
<測定結果>
るつぼB質量:10.3905g
焼成前質量:るつぼB+サンプルB(β-TCP/コラーゲン複合材)の質量=10.4572g
焼成後質量:るつぼB+サンプルB(β-TCP)の質量=10.4444g
<算出結果>
β-TCP+コラーゲン複合材の質量:
0.0667g
β-TCP質量:0.0539g
コラーゲン質量:0.0128g
β-TCP/コラーゲン質量比=4.21/1(w/w)
以上より、新生骨形成の促進効果が認められたサンプルAおよびサンプルBのβ-TCP/コラーゲンの質量比が、それぞれ、8.81/1(w/w)、4.21/1(w/w)であることが確認された。
【0049】
〔実施例4〕
(気孔率および気孔径測定)
次に、骨補填材1のβ-TCP粒子の気孔率および気孔径を測定した結果を以下に示す。気孔率の測定は、水銀圧入法による細孔分布測定とした。
まず、前処理として、β-TCP粒子を120℃で4
時間真空乾燥した。次に、水銀の表面張力を480dynes/cm、水銀とβ-TCP粒子との接触角を140degreesに設定して、β-TCP粒子の細孔に水銀を浸入させた。測定装置としては、オートポアIV9520(micromeritics
社製)を使用した。
測定結果を以下に示す。
<測定結果>
β-TCP粒子の気孔率:96%
β-TCP粒子の気孔径(メジアン径):141.1μm
β-TCP粒子の気孔径の許容範囲:20~1000μm
β-TCP粒子の気孔径最適範囲:50~500μm
【0050】
(粒度分布測定)
最後に、β-TCP粒子の粒度分布を測定した結果を以下に示す。
まず、前処理として、β-TCP粒子を少量取り、精製水を加えて、5分間超音波処理することにより、β-TCP粒子の凝集をキャンセルした。測定条件は、β-TCPの屈折率は1.557-0.000i、水の屈折率を1.333と規定した。測定装置としては、LS
13320(BECKMAN COULTER 社)を使用した。
測定結果を以下に示す。
<測定結果>
β-TCP粒子の最頻径:15.65μm
【符号の説明】
【0051】
1 骨補填材
2 コラーゲンマトリクス(生分解性高分子)
3 β-TCP(リン酸カルシウム)
4 気孔
5 架橋剤
SA β-TCP微粉体製造工程
SB コラーゲンマトリクス製造工程
SC 骨補填材製造工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14