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特許7177614チタン酸カルシウム粉体及びその製造方法並びに電子写真用トナー外添剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】チタン酸カルシウム粉体及びその製造方法並びに電子写真用トナー外添剤
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20221116BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C01G23/00 C
G03G9/097 374
G03G9/097 371
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018133928
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020011857
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000109255
【氏名又は名称】チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】関 敏正
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴康
(72)【発明者】
【氏名】三野 航
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】吉見 智子
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-025223(JP,A)
【文献】特開2009-192696(JP,A)
【文献】国際公開第2004/103900(WO,A1)
【文献】特表2009-540067(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102139914(CN,A)
【文献】特開2013-177259(JP,A)
【文献】特開2012-251082(JP,A)
【文献】特開2018-155912(JP,A)
【文献】MAO. Y. et al.,Advanced Materials,2005年08月03日,Vol.17,pp.2194-2199,DOI:10.1002/adma.200500437
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
C04B 35/465
G03G 9/00 - 9/16
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真用トナーの外添剤であって、
ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなる粉体を含有しており、
前記粒子の一次粒子の形状が粒状であり、
前記粒子の一次粒子の平均粒子径が20nm以上100nm以下の範囲にあり、
前記粒子におけるチタンに対するカルシウムのモル比が0.50以上0.90以下の範囲にあり、
前記粒子が、炭素(C)を10.0g/kg以上50.0g/kg以下の範囲で含む、上記電子写真用トナー外添剤。
【請求項2】
前記粒子が二酸化チタンを含まない、請求項1に記載の電子写真用トナーの外添剤。
【請求項3】
前記粒子の一次粒子径の体積基準による四分偏差を、前記粒子の一次粒子の平均粒子径で除した値が0.250以下である、請求項1または請求項2に記載の電子写真用トナーの外添剤。
【請求項4】
前記粒子が、炭素(C)を15.0g/kg以上40.0g/kg以下の範囲で含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電子写真用トナーの外添剤。
【請求項5】
前記粒子が、シリコーン又はシランカップリング剤をケイ素(Si)として1.00g/kg以上10.00g/kg以下の範囲で含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電子写真用トナーの外添剤。
【請求項6】
チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、糖と、アルカリとを混合して、100℃以上270℃以下に加熱して、高圧液相反応法によりチタン酸カルシウムを合成すること、及び、
得られたチタン酸カルシウムを脱カルシウム処理すること
を含む、粉体の製造方法であって、
前記高圧液相反応の際の前記糖の濃度は、0.030mol/L以上0.500mol/L以下であり、
前記粉体は、一次粒子の形状が粒状で、一次粒子の平均粒子径が20nm以上100nm以下の範囲にある、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなる、上記粉体の製造方法。
【請求項7】
前記粉体が、電子写真用トナーの外添剤である、請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの添加剤、特に外添剤として有用なチタン酸カルシウム粉体、及びそれを用いた静電記録用トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンの粉体は、隠蔽力の強い白色顔料、紫外線遮蔽能力あるいは光触媒機能等により塗料、インキ、プラスチック、化粧料、光触媒など多岐な分野、用途にわたりに使用されている。電子写真用トナーの外添剤としても、帯電調整、流動化、融着防止などを目的として使用されている。
【0003】
電子写真方式を利用した複写機及びプリンターでは、高精細化、高画質化の画像要求があるとともに、長期間にわたる安定性(耐候性)の要求がある。その一つとして、トナーの母体粒子の主成分は熱可塑性の樹脂であるため、高温下においてトナーの母体粒子同士が融着してトナーの流動性が劣化する。トナーの母体粒子同士が融着して流動性が低下すると、トナーが適切な帯電状態を維持できなくなり、画像品質が低下する。トナーの母体粒子同士の接触を防ぎ、流動性を維持するために、球状あるいは粒状の二酸化チタン微粒子が使用されている。
【0004】
しかしながら、二酸化チタンはIARC(国際がん研究機関)による「発がん性のリスク情報のリスト」において、グループ3(人に対する発がん性については分類できない)から、グループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)にランクが変更され、二酸化チタンを代替する物質の開発が望まれている。
【0005】
ペロブスカイト型構造のチタン酸カルシウムは研磨剤として一部の電子写真トナーに使用されており、さらに帯電調整、流動化、融着防止などを目的とした電子写真用トナーの外添剤としても検討されている。
【0006】
チタン酸カルシウムの製造方法としては、チタン化合物の加水分解生成物と水溶性カルシウム塩とを強アルカリ水溶液中で反応させる湿式合成法が開示されている(特許文献1)。しかし、得られるチタン酸カルシウムは1μm~3μmの粗大粒子である。
【0007】
また、常圧、又はオートクレーブを用いた加圧加熱法による、ペロブスカイト型チタン酸カルシウム並びにそれらの製造方法が開示されているが、得られるチタン酸カルシウムは一次粒子の平均粒径が0.26μm~0.42μm程度の正方柱、または正方柱類似の粒子(特許文献2)、あるいは長辺長が0.05μm~0.35μm、短辺長が0.04μm~0.20μmである直方体状の粒子である(特許文献3)。
【0008】
電子写真トナーの流動化剤に用いられる二酸化チタンは粒状で、粒径は100nm以下であるのに対して、これまでに提案されているチタン酸カルシウム粒子は、とがった角を持つ立方体状あるいは直方体状の粒子で、粒径も大きいため、電子写真用トナーの帯電調整剤、融着防止剤、特に流動化剤としての性能は粒状の微粒子二酸化チタンに劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭59-045927号公報
【文献】特開2004-323344号公報
【文献】特開2008-297142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の通り、粒子形状が粒状で、一次粒子の平均粒径が100nm以下となるチタン酸カルシウム微粒子は、これまで実質的に前例がなく、チタン酸カルシウムを帯電調整剤、流動化剤及び融着防止剤として使用した電子写真用トナーも前例がなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は二酸化チタンの代換え材料として、特には、流動化向上及び融着防止等を目的とした電子写真用トナーの外添剤に好適な、粒子形状が粒状で微粒子のチタン酸カルシウム粉体及びその製造方法並びにこのチタン酸カルシウム粉体を用いた電子写真用トナーの外添剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、電子写真用トナーに用いられる二酸化チタンの代換え材料としてチタン酸カルシウムに着目し、電子写真用トナーの外添剤、特には流動化剤として好適な形状及び粒径とする手法について検討した結果、高圧液相反応法によるチタン酸カルシウム合成において、糖を添加することで、粒子形状が粒状で微細なチタン酸カルシウム粉体が得られることを見いだした。
【0013】
さらに、当該チタン酸カルシウム粉体あるいは当該チタン酸カルシウムにシリコーンあるいはシランカップリング剤を被覆処理した粉体を外添剤として配合した電子写真用トナーは、その流動性が良好であることを見いだした。
【0014】
本発明は、これらに限定されないが、以下を含む。
(1)一次粒子の形状が粒状で、一次粒子の平均粒子径が20nm以上100nm以下の範囲にある、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなる粉体。
(2)粒子におけるチタンに対するカルシウムのモル比が0.50以上0.90以下の範囲にあり、粒子が二酸化チタンを含まない(1)に記載の粉体。
(3)一次粒子径の体積基準による四分偏差を、一次粒子の平均粒子径で除した値が0.250以下である(1)または(2)に記載の粉体。
(4)粒子が、炭素(C)を10.0g/kg以上50.0g/kg以下の範囲で含む(1)から(3)までのいずれか1項に記載の粉体。
(5)粒子が、シリコーン又はシランカップリング剤をケイ素(Si)として1.00g/kg以上10.00g/kg以下の範囲で含む(1)から(4)までのいずれか1項に記載の粉体。
(6)(1)から(5)までのいずれか1項に記載の粉体を含有する電子写真用トナー外添剤。
(7)チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、糖と、アルカリとを混合して、100℃以上270℃以下に加熱して、高圧液相反応法によりチタン酸カルシウムを合成すること、及び、得られたチタン酸カルシウムを脱カルシウム処理することを含む、(1)に記載の粉体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなる粉体(本明細書において、単に、「チタン酸カルシウム粉体」とも呼ぶ。)は、チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、糖と、アルカリとを混合して、100℃以上270℃以下に加熱することを含む高圧液相反応法により製造される。得られたチタン酸カルシウム粉体は、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなり、一次粒子の形状が粒状で、一次粒子の平均粒子径が20nm以上100nm以下となる。本発明のチタン酸カルシウム粉体は、粒状で、なおかつ粒径が微細であり、トナー母体粒子同士の接触及び凝結を防止できる。さらに流動性も付与するため、電子写真用トナーの外添剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例5により製造されたチタン酸カルシウム粉体の透過型電子顕微鏡写真(観察倍率5万倍×画像拡大2倍)である。
図2】比較例1により製造されたチタン酸カルシウム粉体の透過型電子顕微鏡写真(観察倍率1万倍×画像拡大2倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のチタン酸カルシウム粉体は、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸化合物を主成分とする粒子からなり、一次粒子の形状が粒状で、一次粒子の平均粒子径が20nm以上100nm以下である。本発明のチタン酸カルシウム粉体は、粒子におけるチタン(Ti)に対するカルシウム(Ca)のモル比Ca/Tiが0.50以上0.90以下の範囲にあり、二酸化チタンを含まないことが好ましい。Ca/Tiは、さらに好ましくは0.60以上0.80以下である。また、一次粒子径の体積基準による四分偏差を一次粒子の平均粒子径で割った値が0.250以下であることが好ましく、0.230以下であることがさらに好ましい。また、本発明のチタン酸カルシウム粉体は、粒子が炭素(C)を10.0g/kg以上50.0g/kg以下の範囲で含むことが好ましく、15.0g/kg以上40.0g/kg以下の範囲で含むことがさらに好ましい。さらに、本発明のチタン酸カルシウム粉体はシリコーン又はシランカップリング剤をケイ素(Si)として1.00g/kg以上10.00g/kg以下の範囲で含むことが好ましい。
【0018】
本明細書において、「一次粒子の形状が粒状」とは、図1にみられるような、一次粒子が不定形または略球状の外形を持つものをいう。例えば、図2にみられるような直方体状であったり、立方体状、角柱のような明確な角を持つ形状や、針状、板状のような特定方向に細長い形状の粒子は、本明細書における「粒状」に含まないものとする。本発明の粉体を構成する粒子は、アスペクト比が1.0以上1.8以下の範囲であることが好ましく、1.0以上1.5以下の範囲がさらに好ましい。アスペクト比は、粒子の短軸の長軸に対する比であり、電子顕微鏡観察により一次粒子像の短軸、長軸を計測することにより算出することができる。
【0019】
「一次粒子の平均粒子径」とは、電子顕微鏡観察による一次粒子像の直径を計測して決定される体積基準の50%粒子径をいう。一次粒子の平均粒子径が前記の範囲を外れると、トナーの流動性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0020】
「ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子からなる粉体」とは、本発明の粉体を構成する個々の粒子が、主にペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムからなることを意味する。「主にペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムからなる」または「ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする」とは、これに限定されないが、粉体を構成する個々の粒子の90質量%以上、好ましくは95質量%以上がペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムであることを意味する。本発明の粉体を構成する個々の粒子は、チタン酸カルシウム以外にも、糖由来の炭素や、シリコーンまたはシランカップリング剤の被覆を含み得るので、「ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする」と表記した。
【0021】
体」とは、粒子が集合したものである。本発明の粉体は、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とする粒子が集合することにより構成されている。なお、体は不可避的不純物を含みうるが、そのような不可避的不純物を含む粉体も、本発明の他の構成を満たせば、本発明の粉体に含まれることとする。体は、また、体を使用する際、体と他の剤を混合することも考えられるが、得られた混合品におけるチタン酸カルシウムを主成分とする粒子が、本発明の構成を満たす場合には、本発明の粉体を使用したとみなすことができる。
【0022】
「一次粒子径の体積基準による四分偏差」とは、電子顕微鏡観察による一次粒子像の直径を計測して決定される体積基準の75%粒子径と25%粒子径の差の1/2をいう。「一次粒子径の体積基準による四分偏差を一次粒子の平均粒子径で除した値」は粒度分布の指標となり、この値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0023】
本発明のチタン酸カルシウム粉体は、代表的には、高圧液相反応法において、チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品と、カルシウムを含む水溶性化合物と、糖と、アルカリとを混合して、100℃以上270℃以下に加熱して、チタン酸カルシウムを主成分とする微粒子を合成し、次いで、得られたチタン酸カルシウムを主成分とする微粒子を脱カルシウム処理することを含む方法で製造される。
【0024】
[高圧液相反応法]
チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品としては、硫酸法で得られたメタチタン酸であり、SO含有量を15g/kg以下、好ましくは10g/kg以下としたものを塩酸でpHを0.8以上1.5以下に調整して解膠したものを用いることが好ましい。これにより、粒度分布が狭いチタン酸カルシウム粒子を得ることができる。メタチタン酸中のSO 含有量が15g/kgを超えると解膠が進まない。一塩基酸としては塩酸の他に、硝酸、臭化水素、ヨウ化水素、ギ酸、酢酸等を用いることもできる。
【0025】
カルシウムを含む水溶性化合物としては、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウムなどを好ましく使用することができる。アルカリとしては、苛性アルカリを使用することができ、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
【0026】
前記糖としては、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、マルトース、ラクトース、アラビノース、セロビオース、スクロース、トレハロース等の単糖類及び二糖類を好適に使用することができる。これらの糖を高圧液相反応法で添加することにより、合成されるチタン酸カルシウムの粒子の形状を粒状とし、粒径を小さくすることができる。本発明の粉体を構成する粒子には、これらの糖由来の炭素が含まれうる。本発明の粉体の粒子における炭素の量は、10.0g/kg以上50.0g/kg以下の範囲であることが好ましく、15.0g/kg以上40.0g/kg以下の範囲がさらに好ましい。チタン酸カルシウム粉体の粒子における炭素の量は、高圧液相反応時に添加する糖の量により調整することができる。
【0027】
前記製造方法において、得られるチタン酸カルシウムを主成分とする粒子の形状及び粒子径に影響を及ぼす因子としては、高圧液相反応法における原料の濃度と混合割合、アルカリの濃度及び反応温度等が挙げられる。
【0028】
高圧液相反応時におけるチタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品と、カルシウムを含む水溶性化合物の混合割合は、Ca/Tiのモル比で1.00以上1.60以下、好ましくは1.10以上1.50以下が適切である。チタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品は水への溶解度が小さいため、Ca/Tiモル比が1.00未満の場合、反応生成物はチタン酸カルシウム粒子だけでなく、未反応の酸化チタンが残存し易くなる。高圧液相反応時のチタン化合物の加水分解物の一塩基酸解膠品の濃度としては、Tiとして0.5mol/L以上1.5mol/L以下、好ましくは0.7mol/L以上1.4mol/L以下が適切である。
【0029】
高圧液相反応時の糖の濃度は、0.030mol/L以上0.500mol/L以下、好ましくは0.050mol/L以上0.350mol/L以下が適切である。当該濃度範囲外では二酸化チタンが残存しやすくなり、0.030mol/L未満では微細なチタン酸カルシウムが得られない。
【0030】
高圧液相反応時のアルカリの濃度は、0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.5mol/L以上2.3mol/L以下の範囲である。
高圧液相反応時の温度は、100℃以上270℃以下であり、より好ましくは、120℃以上200℃以下である。100℃未満であると、微細なチタン酸カルシウムを得がたくなり、270℃を超えると圧力が増大し、圧力に耐えうる反応容器の設備費用が高額となる。反応時間は、温度によっても異なるが、1時間以上20時間以下が好ましい。反応器としては、所定の温度及び圧を達成できるものであればよく、特に限定されない。例えば、通常のオートクレーブ装置を用いることができる。
【0031】
[脱カルシウム処理]
高圧液相反応法によってチタン酸カルシウムを合成した後、脱カルシウム処理する。高圧液相反応により得られたチタン酸カルシウム粉体において、Ca/Tiのモル比が1.00を超える場合、反応終了後に残存した未反応のカルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸カルシウムなどの不純物粒子が生成される。これら不純物粒子が粉体に残存すると粉体の粒度分布が広くなる。また、粒子表面に炭酸カルシウムなどの不純物が残存すると、疎水性を付与するための表面処理をする際に、不純物の影響で表面処理剤を均一に被覆することができない。したがって、未反応のカルシウムを取り除くため脱カルシウム処理を行う。
【0032】
さらに、脱カルシウム処理では、二酸化チタンが生成しないように、チタン酸カルシウム粉体におけるチタンに対するカルシウムのモル比を0.50以上0.90以下に調整し、粒子表面をチタン酸カルシウムのカルシウムとチタンの理論量論比よりもカルシウムが欠乏した状態にすることが好ましい。上記モル比は、さらに好ましくは、0.60以上0.80以下である。これにより有機表面処理剤をより均一に被覆することができるようになり、トナーに良好な帯電安定性や流動性を付与することができるようになる。
【0033】
脱カルシウム処理では、塩酸を用いてpH2.5以上7.0以下、より好ましくはpH4.5以上6.0以下に調整することが好ましい。酸としては、塩酸の他に硝酸、酢酸等を脱カルシウム処理に用いることができる。しかし、硫酸を用いると、水への溶解度が小さい硫酸カルシウムが発生するので好ましくない。
【0034】
本発明において、チタン酸カルシウム粉体は、従来、外添剤として使用されている二酸化チタンやシリカと同じように、帯電調整や環境安定性の改良のため、二酸化ケイ素、三酸化二アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム等の無機酸化物や脂肪酸、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の疎水化剤で表面被覆してもよい。特にシリコーンまたはシランカップリング剤で表面被覆すると、トナー流動性が向上するので好ましい。シリコーンまたはシランカップリング剤は、本発明の粉体に対して、ケイ素(Si)として1.00g/kg以上10.00g/kg以下の範囲で付与することが好ましい。電子写真用トナーの外添剤として使用する場合には、チタン酸カルシウム粉体を液相に分散して、液相中で疎水化剤を被覆すると、トナー中で外添状態にあるチタン酸カルシウムの分散性が良好となるので好ましい。
【0035】
本発明のチタン酸カルシウム粉体は磁性一成分トナー、二成分トナー及び非磁性一成分トナーのあらゆる静電記録方式で使用することができる。また粉砕法あるいは重合法で製造したトナーの外添剤としても使用できる。トナー用のバインダー樹脂としては、特に限定されず、トナーに慣用される合成樹脂または天然樹脂を用いればよい。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂及びウレタン系樹脂等が挙げられる。また、目的に応じて帯電調整剤や離型剤等の添加剤をバインダー中に添加しても良い。
【0036】
本発明のチタン酸カルシウム粉体を含有する外添剤は、バインダーを含むトナー全体の質量に対し、3g/kg以上50g/kg以下の割合でチタン酸カルシウム粉体を外添して使用することができる。必要に応じ電子写真の分野で使用されている公知の流動化剤、例えば、二酸化ケイ素、三酸化二アルミニウム等の1種又は2種以上を併用しても良く、また、他の外添剤を併用しても良い。
【実施例
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下に挙げる例は単に例示のために記すものであり、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
[測定法]
本発明において、チタン酸カルシウム粉体の一次粒子の形状及び平均粒子径、四分偏差、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、Ca/Tiモル比、比表面積、トナー見掛け密度向上率等は、以下の方法で測定した。
【0038】
[一次粒子の形状]及び[一次粒子の平均粒子径]
一次粒子の形状は、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM-1400plusを用いて観察することにより決定した。一次粒子の平均粒子径は、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM-1400plusを用いて観察視野内の約200個の粒子の円径をCarl Zeiss社製Particle Size Analyzer TGZ-3の参照円径(4mm~10mm)に整合させて、求めることができる一次粒子像の面積と等価な面積の円の直径を計測して粒子径とした場合の体積基準の50%粒子径とした。観察倍率は、測定対象となる粒子の大きさに応じて変更した。例えば、一次粒子の平均粒子径が150nm~200nmの範囲にある粒子は30000倍(光学顕微鏡の観察倍率10000倍×印画3倍)で観察すると、Carl Zeiss社製Particle Size Analyzerの参照円径(4mm~10mm)範囲内に入る。同様に、一次粒子の平均粒子径が200nm~500nmは20000倍(光学顕微鏡の観察倍率10000倍×印画2倍)、一次粒子の平均粒子径が80nm~150nmは50000倍(光学顕微鏡の観察倍率20000倍×印画2.5倍)、一次粒子の平均粒子径が40nm~80nmは100000倍(光学顕微鏡の観察倍率30000倍×印画10/3倍)、一次粒子の平均粒子径が20nm~40nmは200000倍(光学顕微鏡の観察倍率100000倍×印画2倍)とすれば、参照円径(4mm~10mm)範囲内に入る。測定対象の粒子の大きさを参照円形範囲内に整合させないと、大きすぎる粒子や小さすぎる粒子が存在することになり、測定誤差が大きくなる。
【0039】
[四分偏差]
四分偏差は、透過型電子顕微鏡写真から上述の方法により測定される体積基準の75%粒子径と25%粒子径の差の1/2で表した。
【0040】
[炭素(C)量]
試料の炭素(C)量はLECO製CS-230炭素・硫黄分析装置を用いて分析した。
[ケイ素(Si)量]及び[Ca/Tiモル比]
島津製作所製蛍光X線分析装置XRF-1700を用いて各元素のカウント値を測定し、Fundamental Parameter法により算出した(JIS K 0119:2008)。
【0041】
[X線回折]
リガク製X線回折装置RINT-TTR IIIによりX線回折パターンを測定し、解析ソフトにより構成相を同定した。
【0042】
[比表面積]
比表面積は、MICROMETORICS INSTRUMENT CO.製ジェミニ2375を用いて、BET法にて測定した。
【0043】
[トナー見掛け密度向上率]
ポリアクリルスチレンを樹脂成分とする粉砕法による体積基準のメディアン径7.5μmの外添剤を含まない黒色トナーに5g/kgの試料を添加して、協立理工製サンプルミルSK-M10S型を用いて撹拌、混合して外添剤添加トナーを得た。外添剤を添加していないトナーと当該外添剤添加トナーの嵩密度をJIS K 5101-12-1:2004の静置法により測定した。外添剤を添加していないトナーの嵩密度をρ1とし、試料を添加したトナーの嵩密度をρ2としたとき、トナー見掛け密度向上率は下記の式(1)で定義される。
【0044】
見掛け密度向上率(%)=(ρ2-ρ1)/ρ1×100 式(1)
[実施例1]
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行って、SO含有量が9.3g/kgのメタチタン酸の洗浄済みケーキを得た。洗浄済みケーキに水を加えて、Tiとして2.13mol/Lのスラリーとした後、塩酸を加えてpH1.4とし、解膠処理を行った。解膠処理品であるメタチタン酸をTiOとして0.764mol採取して反応容器に投入した。これにCa/Tiモル比で1.15となるように水酸化カルシウムを添加し、さらにグルコースを0.044mol添加した後、水酸化ナトリウムを0.9mol添加し、水を加えて総容量を0.6Lとして、当該混合溶液を30分間撹拌した。
【0045】
前記混合溶液をさらに撹拌混合しつつ150℃に加温し、10時間撹拌を続け反応を終了した。当該反応終了スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加えて、さらに1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過による分離後、大気中、120℃で10時間乾燥して、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の形状は粒状で、平均粒子径は61nm、四分偏差を平均粒子径で割った値は0.189、炭素(C)量は18.6g/kg、ケイ素(Si)量は0.02g/kg、Ca/Tiモル比は0.65、比表面積は61m/gであった。粉末X線回折法により、当該粉体はペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とし、二酸化チタン相は同定されなかった。トナー見掛け密度の向上率は0.4%であった。
【0046】
[実施例2]
実施例1でデカンテーション洗浄を終了したスラリーからチタン酸カルシウムを20g採取し、当該スラリーのチタン酸カルシウムの濃度を150g/Lに調整した。スラリーのpHを5.5以上6.0以下の範囲に調整し、表面処理剤としてシリコーンである東レ・ダウコーニング製シリコーンエマルションのSM 7060(有効成分600g/kg)を0.1g添加した後、1時間撹拌保持した。さらに、ろ過・洗浄による固液分離の後、大気中、120℃で12時間乾燥して、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の形状は粒状で、平均粒子径は60nm、四分偏差を平均粒子径で割った値は0.190、炭素(C)量は18.8g/kg、ケイ素(Si)量は1.30g/kg、Ca/Tiモル比は0.65、比表面積は62m/gであった。粉末X線回折法により、当該粉体はペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸カルシウムを主成分とし、二酸化チタン相は同定されなかった。トナー見掛け密度の向上率は3.9%であった。
【0047】
[実施例3]
実施例1において、グルコースの添加量を0.167molに変更した以外は実施例1と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0048】
[実施例4]
実施例3でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0049】
[実施例5]
実施例1において、グルコースの添加量を0.148mol、高圧液相反応の温度を180℃、撹拌保持を3時間に変更した以外は実施例1と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。実施例5によるチタン酸カルシウム粉体の透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0050】
[実施例6]
実施例5でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0051】
[実施例7]
実施例6において、表面処理剤をi-ブチルトリメトキシシランである東レ・ダウコーニング製XIAMETER(登録商標)OFS-2306 Silanに変更し、2.06g添加した以外は実施例6と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0052】
[実施例8]
実施例5において、グルコースをフルクトースに変更した以外は実施例5と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0053】
[実施例9]
実施例8でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0054】
[実施例10]
実施例9において、表面処理剤をi-ブチルトリメトキシシランである東レ・ダウコーニング製XIAMETER OFS-2306 Silanに変更し、1.54g添加した以外は実施例9と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0055】
[実施例11]
実施例5において、グルコースをマルトースに変更した以外は実施例5と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0056】
[実施例12]
実施例11でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、炭素(C)量、Ca/Tiモル比、二酸化チタン(TiO)の有無、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0057】
[実施例13]
実施例5においてグルコースをスクロースに変更した以外は実施例5と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0058】
[実施例14]
実施例13でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、炭素(C)量、Ca/Tiモル比、二酸化チタン(TiO)の有無、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表3に示す。
【0059】
[比較例1]
実施例1において、グルコース等の糖の添加を0gとした以外は実施例1と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の形状は直方体状で、平均粒子径は425nm、四分偏差を平均粒子径で割った値は0.190、炭素(C)量は0.2g/kg、ケイ素(Si)量は0.23g/kg、Ca/Tiモル比は0.66、比表面積は5.3m/gであった。粉末X線回折法により、ペロブスカイト型チタン酸カルシウムとアナターゼ型の二酸化チタンの二相が同定された。トナー見掛け密度の向上率は-0.1%であった。
【0060】
[比較例2]
比較例1でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の形状は直方体状で、平均粒子径は430nm、四分偏差を平均粒子径で割った値は0.198、炭素(C)量は0.2g/kg、ケイ素(Si)量は1.33g/kg、Ca/Tiモル比は0.66、比表面積は6.6m/gであった。粉末X線回折法により、ペロブスカイト型チタン酸カルシウムとアナターゼ型の二酸化チタンの二相が同定された。トナー見掛け密度の向上率は0.0%であった。
【0061】
[比較例3]
実施例1において、グルコースの添加量を0.333molに変更した以外は、実施例1と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0062】
[比較例4]
比較例3でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0063】
[比較例5]
実施例1において、グルコースの添加量を0.017molに変更した以外は、実施例1と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0064】
[比較例6]
比較例5でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0065】
[比較例7]
実施例5において、高圧液相反応温度を95℃に変更した以外は実施例5と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0066】
[比較例8]
比較例7でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0067】
[比較例9]
実施例1において、メタチタン酸をTiOとして0.383mol添加し、グルコースを0.011mol添加し、Ca/Tiモル比で1.15となるように水酸化カルシウムを添加し、高圧液相反応の温度を95℃とした以外は、実施例1と同様とした。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0068】
[比較例10]
比較例9でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0069】
[比較例11]
実施例5においてグルコースをグリセリンに変更した以外は実施例5と同様の条件で高圧液相反応、脱カルシウム処理、洗浄、ろ過及び乾燥を行い、チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0070】
[比較例12]
比較例11でデカンテーション洗浄を終了したスラリーを用いて、実施例2と同様の条件でシリコーン処理を行い。チタン酸カルシウム粉体を得た。このチタン酸カルシウム粉体の一次粒子の粒子形状、平均粒子径、四分偏差/平均粒子径、二酸化チタン(TiO)の有無、Ca/Tiモル比、炭素(C)量、ケイ素(Si)量、比表面積及びトナー見掛け密度の向上率を表4に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
比較例1、2、5~12では、粒子形状が直方体状となった。比較例1~8、11、及び12では、二酸化チタンの相が観察され、二酸化チタンの代換え材料としては不適であった。本発明の粉体は、二酸化チタン相が観察されず、総じてトナー見掛け密度向上率が高く、特に表面処理を施したものはトナー見掛け密度向上率が顕著に高くなった。トナー見掛け密度向上率が高いことは、一般的に、トナーの流動性が高いこと、また、トナー粒子同士が凝結しにくいことを意味する。
図1
図2