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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】マルチダイス
(51)【国際特許分類】
   B21C 3/02 20060101AFI20221116BHJP
   B21C 1/04 20060101ALI20221116BHJP
   B21C 3/14 20060101ALI20221116BHJP
   B21C 9/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B21C3/02 Z
B21C1/04
B21C3/14
B21C9/00 M
B21C3/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018149142
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2019048335
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017171919
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末光 文也
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 照之
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-017653(JP,U)
【文献】特開平07-051735(JP,A)
【文献】特開平04-147713(JP,A)
【文献】特開平05-154535(JP,A)
【文献】実開昭60-176809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ベアリングを有する第一ダイスと、
前記第一ベアリングより小径の第二ベアリングを有する、前記第一ダイスよりも下流に位置する第二ダイスと、
前記第一ダイスおよび前記第二ダイスを軸方向、径方向および周方向に固定するホルダーとを備え、
前記第一ダイスおよび前記第二ダイスの少なくとも一方には前記第一ダイスで伸線された後前記第二ダイスで伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路が設けられており、
前記第一ダイスは、前記第一ベアリングを有する第一ダイヤモンドと、前記第一ダイヤモンドに直接接触する第一マウント材と、前記第一マウント材を保持する第一ケースとを有し、
前記第二ダイスは、前記第二ベアリングを有する第二ダイヤモンドと、前記第二ダイヤモンドに直接接触する第二マウント材と、前記第二マウント材を保持する第二ケースとを有し、
前記第一ケースおよび前記第二ケースの少なくとも一方に、前記通路を構成する凹部形状が設けられている、マルチダイス。
【請求項2】
前記第一ダイスおよび前記第二ダイスが互いに直接接触する、請求項1に記載のマルチダイス。
【請求項3】
前記第二ダイスの断面積減少率は10%以下である、請求項1または2に記載のマルチダイス。
【請求項4】
前記第一ダイヤモンドの下流側の面は前記通路に露出している、請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチダイス。
【請求項5】
前記第二ダイヤモンドの上流側の面は前記通路に露出している、請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチダイス。
【請求項6】
前記第一および第二ダイスは、焼き嵌めにより前記ホルダーに固定されているか、前記ホルダーに焼結結合するか、または、接合剤を介在させて前記ホルダーに固定されている、請求項1からのいずれか1項に記載のマルチダイス。
【請求項7】
前記第一および第二ダイスは、固定具により前記ホルダーに固定されており、前記固定具を操作することにより前記第一および第二ダイスを前記ホルダーから取り外すことが可能である、請求項1からのいずれか1項に記載のマルチダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチダイスはたとえば特開2003-48014号公報、特開2005-46899号公報および特開平8-57531号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-48014号公報
【文献】特開2005-46899号公報
【文献】特開平8-57531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマルチダイスでは、伸線加工された線材の品質が低いという問題があった。
そこでこの発明は上記の問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るマルチダイスは、第一ベアリングを有する第一ダイスと、第一ベアリングより小径の第二ベアリングを有する、第一ダイスよりも下流に位置する第二ダイスと、第一ダイスおよび第二ダイスを軸方向、径方向および周方向に固定するホルダーとを備え、第一ダイスおよび第二ダイスの少なくとも一方には第一ダイスで伸線された後第二ダイスで伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施の形態1に従ったマルチダイスの断面図である。
図2図1中の矢印IIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図3図2中の矢印IIIで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図4図1中の矢印IVで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図5図4中の矢印Vで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図6】実施の形態2に従ったマルチダイスの断面図である。
図7】実施の形態3に従ったマルチダイスの断面図である。
図8図7中の矢印VIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図9図8中の矢印IXで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図10図7中の矢印Xで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図11図10中の矢印XIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図12】実施の形態4に従ったマルチダイスの断面図である。
図13図12中の矢印XIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図14図13中の矢印XIVで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図15図12中の矢印XVで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図16図15中の矢印XVIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図17】実施の形態5に従ったマルチダイスの断面図である。
図18図17中の矢印XVIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図19図18中の矢印XIXで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図20図17中の矢印XXで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図21図20中の矢印XXIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図22】実施の形態6に従ったマルチダイスの断面図である。
図23図22中の矢印XXIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図24図23中の矢印XXIVで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図25図22中の矢印XXVで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図26図25中の矢印XXVIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図27】実施の形態7に従ったマルチダイスの断面図である。
図28図27中の矢印XXVIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図29図28中の矢印XXIXで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図30図27中の矢印XXXで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図31図30中の矢印XXXIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図32】実施の形態8に従ったマルチダイスの断面図である。
図33図32中の矢印XXXIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図34図33中の矢印XXXIVで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図35図32中の矢印XXXVで示す方向から見た第二ダイスの正面図である。
図36図35中の矢印XXXVIで示す方向から見た第二ダイスの側面図である。
図37】実施の形態9に従ったマルチダイスの断面図である。
図38図37中の矢印XXXVIIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図39図38中の矢印XXXIXで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図40】実施の形態10に従ったマルチダイスの断面図である。
図41図40中の矢印XLIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図42図41中の矢印XLIIで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図43】実施の形態11に従ったマルチダイスの断面図である。
図44図43中の矢印XLIVで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図45図44中の矢印XLVで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図46】実施の形態12に従ったマルチダイスの断面図である。
図47図46中の矢印XLVIIで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図48図47中の矢印XLVIIIで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図49】実施の形態13に従ったマルチダイスの断面図である。
図50図49中の矢印Lで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図51図50中の矢印LIで示す方向から見た第一ダイスの側面図である。
図52】実施の形態14に従ったマルチダイスの断面図である。
図53図52中の矢印LIIIで示す方向から見たホルダーの正面図である。
図54図53中のLIV-LIV線に沿った断面図である。
図55図53中のLV-LV線に沿った断面図である。
図56】実施の形態15に従ったマルチダイスの断面図である。
図57】実施の形態16に従ったマルチダイスの断面図である。
図58】実施の形態17に従ったマルチダイスの断面図である。
図59】実施の形態18に従ったマルチダイスの断面図である。
図60図59中の矢印LXで示す方向から見たホルダーの正面図である。
図61図60中のLXI-LXI線に沿った断面図である。
図62図60中のLXII-LXII線に沿った断面図である。
図63】実施の形態19に従ったマルチダイスの断面図である。
図64図63中の矢印LXIVで示す方向から見た第一ダイスの正面図である。
図65】実施の形態20に従ったマルチダイスの断面図である。
図66】実施の形態21に従ったマルチダイスの断面図である。
図67】実施の形態22に従ったマルチダイスの断面図である。
図68】段付きキャプスタンローラを備えたスリップ型伸線機の模式図である。
図69】ノンスリップ型伸線機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本発明の実施形態の説明]
マルチダイスは、第一ベアリングを有する第一ダイスと、第一ベアリングより小径の第二ベアリングを有する、第一ダイスよりも下流に位置する第二ダイスと、第一ダイスおよび第二ダイスを軸方向、径方向および周方向に固定するホルダーとを備え、第一ダイスおよび第二ダイスの少なくとも一方には第一ダイスで伸線された後第二ダイスで伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路が設けられている。
【0008】
第一ダイスおよび第二ダイスが互いに直接接触してもよい。この場合には、マルチダイスの厚みを薄くすることができる。
【0009】
マルチダイスは、第一ベアリングを有する第一ダイスと、第一ベアリングより小径の第二ベアリングを有する、第一ダイスよりも下流に位置して第一ダイスから離隔する第二ダイスと、第一ダイスおよび第二ダイスを軸方向、径方向および周方向に固定するホルダーとを備え、ホルダーには第一ダイスで伸線された後第二ダイスで伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路が設けられている。
【0010】
第二ダイスの断面積減少率は10%以下であってもよい。
第一ダイスは、第一ベアリングを有する第一ダイヤモンドと、第一ダイヤモンドに直接接触する第一マウント材と、第一マウント材を保持する第一ケースとを有していてもよい。
【0011】
第一ダイヤモンドの下流側の面は通路に露出していてもよい。この場合、第一ダイヤモンドの下流側の面は通路に露出するため、第一ベアリングで発生した切り屑が通路へ排出されやすくなる。
【0012】
第二ダイスは、第二ベアリングを有する第二ダイヤモンドと、第二ダイヤモンドに直接接触する第二マウント材と、第二マウント材を保持する第二ケースとを有していてもよい。
【0013】
第二ダイヤモンドの上流側の面は通路に露出していてもよい。この場合、第二ダイヤモンドの上流側の面は通路に露出するため、第二ベアリングで発生した切り屑が通路へ排出されやすくなる。
【0014】
第一および第二ダイスは、焼き嵌めによりホルダーに固定されているか、ホルダーに焼結結合するか、または、接合剤を介在させてホルダーに固定されていてもよい。焼き嵌め、焼結結合、および接着剤などで固定することによって、ホルダーから第一および第二ダイスを取り外すことが困難となるため、確実にホルダーに第一および第二ダイスを位置決めすることができる。その結果、線材の品質が向上する。
【0015】
第一および第二ダイスは、固定具によりホルダーに固定されており、固定具を操作することにより第一および第二ダイスをホルダーから取り外すことが可能であってもよい。この場合、第一および第二ダイスをホルダーから取り外して再研磨することが可能となる。
【0016】
特開2003-48014号公報は、ダイス筒に収納された複数のダイスを有するマルチダイスを開示している。しかしながら、ダイスは径方向、軸方向および周方向に固定されていない。
【0017】
特開2005-46899号公報は、アプローチダイスが周方向に回転可能である構造が開示されている。そのため、ダイスは周方向に固定されていない。
【0018】
特開平8-57531号公報は、入側ダイスと出側ダイスの2個に分割されタンデムに配置されたダイスが開示されている。しかしながら、ダイスは径方向および周方向に固定されていない。
【0019】
ホルダーは第一ダイスおよび第二ダイスを軸方向、径方向および周方向に固定する。そのため、第一ダイスおよび第二ダイスの位置が固定される。第一ダイスおよび第二ダイスが径方向および周方向に固定されていない場合には、第一および第二ダイスは線材の形状に沿って配置される。そのため、線材の真円形状からのずれを増長するように線材を加工する。これに対して、第一および第二ダイスがホルダーに径方向および周方向に固定されていることで、第一ダイスおよび第二ダイスで線材を真円に近くなるように加工することができる。さらに第一ダイスで伸線されたのち第二ダイスで伸線される前の線材に潤滑剤が供給されるため、線材の品質を高めることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1で示すように実施の形態1に従ったマルチダイス1は、第一ベアリング14を有する第一ダイス10と、第一ベアリング14の径D1より小径の径D2を有する第二ベアリング24を有する、第一ダイス10よりも下流に位置する第二ダイス20と、第一ダイス10および第二ダイス20を軸方向、径方向および周方向に固定するホルダーとを備える。
【0021】
第一ダイス10および第二ダイス20は、外周に位置するケース11,21と、ケース11,21に保持されるマウント材12,22と、マウント材12,22に保持されるダイヤモンド13,23を有する。ダイヤモンド13,23は第一ベアリング14および第二ベアリング24を有する。
【0022】
第一ダイス10および第二ダイス20には、線材を伸線加工するためのダイス孔15,25が設けられている。ダイス孔15,25は、同一の軸線周りに、互いに距離を隔てて形成されている。
【0023】
矢印5で示す方向が伸線方向である。ダイス孔15,25に矢印5で示す方向に沿って線材が供給される。線材はダイス孔15,25内で伸線加工されるので、縮径されて排出される。伸線方向(ダイス孔15,25の延びる方向)に平行な方向が軸方向である。伸線方向に直交する方向が径方向である。伸線方向を回転軸とする回転方向が周方向である。
【0024】
第一ダイス10および第二ダイス20の第一ベアリング14および第二ベアリング24は、超硬合金、セラミックス、ダイヤモンドまたはcBNなどの超硬質材料により構成される。第一ダイス10および第二ダイス20は、単結晶または多結晶のいずれであってもよい。非晶質であってもよい。さらにダイヤモンドで第一ベアリング14および第二ベアリング24を構成する場合には、そのダイヤモンドにバインダが含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0025】
第一ダイス10および第二ダイス20の第一ベアリング14および第二ベアリング24は、ダイス孔15,25の最も孔径の小さい部分である。ダイス孔15,25の形状は、円形、楕円形、角形のいずれであってもよい。ダイス孔15は、伸線方向に従って、リダクション、第一ベアリング14、バックリリーフおよびエクジットを有する。ダイス孔25は、伸線方向に従って、リダクション、第二ベアリング24、バックリリーフおよびエクジットを有する。
【0026】
ダイヤモンド13,23を保持するマウント材12,22は、たとえば焼結体で構成される。粉末をダイヤモンド13,23の周囲に配置し、焼結することでマウント材12,22を形成することができる。
【0027】
ケース11,21とマウント材12,22とは、マウント材12,22を焼結する際にマウント材12,22の材質とケース11,21の材質とを固相拡散(焼結結合)させることで接合することができる。この実施の形態ではケース11,21とマウント材12,22との界面は直線状であるが、界面が凹凸形状となすようにしてケース11,21とマウント材12,22との接触面積を増加させて、マウント材12,22がケース11,21から外れにくくしてもよい。
【0028】
ケース11,21は、たとえばステンレス鋼などの金属により構成される。ケース11,21は第一ダイス10および第二ダイス20の外周を形成する。
【0029】
ケース11およびマウント材12に溝形状(凹部形状)の通路19が設けられている。ケース21およびマウント材22に通路29が設けられている。2つの通路19,29が潤滑剤の通路を形成している。第一ダイス10および第二ダイス20が直接接触している。
【0030】
環状のホルダー30がケース11,21に接触してケース11,21を保持している。ホルダー30の環内に第一ダイス10および第二ダイス20が嵌め合わされている。第一ダイス10および第二ダイス20の外形に合わせてホルダー30の環の形状が形成されている。第一ダイス10および第二ダイス20の外形は、円形、楕円形、角形のいずれであってもよい。
【0031】
第一ダイス10および第二ダイス20をホルダー30に固定する方法としては、ホルダー30を加熱して膨張させた後にホルダー30内に第一ダイス10および第二ダイス20を位置決めしてホルダー30を冷却して収縮させることでホルダー30に固定する焼き嵌めがある。さらに第一ダイス10および第二ダイス20をホルダー30に固定する方法としては、ホルダー30を構成する材料とケース11,21を構成する材料との固相拡散、ホルダー30とケース11,21との間に接合剤を介在させる、固定具によりホルダー30にケース11,21を取り付ける、等の方法がある。
【0032】
固相拡散させる場合には、ホルダー30とケース11,21の接触部分を固相拡散が生じる温度まで昇温させ、その後、降温することでホルダー30にケース11,21を固定することができる。
【0033】
接合剤を介在させる場合には、ホルダー30とケース11,21との間に、ロウ材、接着剤などを介在させ、これを溶融および凝固することで、ホルダー30にケース11,21を固定することができる。
【0034】
固定具としては、ボルト、六角穴付き止めねじ、などをホルダー30に螺合させ、ボルトなどの先端がケース11,21を押圧することで、ケース11,21をホルダー30に固定することができる。ボルトなどをホルダー30から外すことで固定が解除されてケース11,21をホルダー30から取り外すことができる。
【0035】
ホルダー30を直径方向に貫通するように潤滑剤入口通路31および潤滑剤出口通路32が形成されている。潤滑剤入口通路31および潤滑剤出口通路32は通路19,29に連なる。これにより、潤滑剤入口通路31から矢印2で示す方向に供給された潤滑剤は、矢印3で示すように通路19,29を経由して矢印4で示すように潤滑剤出口通路32から排出される。
【0036】
すなわち、マルチダイス1は第一ベアリング14を有する第一ダイス10と、第一ベアリング14より小径の第二ベアリング24を有する、第一ダイス10よりも下流に位置する第二ダイス20と、第一ダイス10および第二ダイス20を軸方向、径方向および周方向に固定するホルダー30とを備える。第一ダイス10および第二ダイス20の少なくとも一方には第一ダイス10で伸線された後第二ダイス20で伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路19,29が設けられている。
【0037】
第一ダイス10および第二ダイス20が互いに直接接触してもよい。
第二ダイスの断面積減少率は10%以下であってもよい。断面積減少率は、ダイスで伸線加工される前のダイスの断面積をS1とし、ダイスで伸線加工された後の線材の断面積をS2とすると、1-(S2/S1)で定義される。断面積減少率が10%よりも大きいと、線材の表面を仕上げる効果が小さくなるおそれがある。
【0038】
第一ダイス10は、第一ベアリング14を有する第一ダイヤモンドとしてのダイヤモンド13と、ダイヤモンド13に直接接触する第一マウント材としてのマウント材12と、マウント材12を保持する第一ケースとしてのケース11とを有していてもよい。
【0039】
第二ダイス20は、第二ベアリング24を有する第二ダイヤモンドとしてのダイヤモンド23と、ダイヤモンド23に直接接触する第二マウント材としてのマウント材22と、マウント材22を保持する第二ケースとしてのケース21とを有していてもよい。
【0040】
第一および第二ダイス10,20は、ホルダー30に焼結結合するか、または、接合剤を介在させてホルダー30に固定されていてもよい。
【0041】
第一および第二ダイス10,20は、固定具によりホルダー30に固定されており、固定具を操作することにより第一および第二ダイス10,20をホルダー30から取り外すことが可能であってもよい。
【0042】
図2および図3で示すように、入口側の第一ダイス10は、正面視において直線状で、断面視において長方形状の通路19を有する。通路19は、第一ダイス10の一方端部から他方端部にまで延在している。ケース11およびマウント材12に通路19が設けられている。通路19は、第一ダイス10の中心に設けられたダイス孔15に到達する。通路19は、ダイス孔15を通過し、かつ、第一ダイス10の半径方向に延びるように設けられている。
【0043】
図4および図5で示すように、出口側の第二ダイス20は、正面視において直線状で、断面視において長方形状の通路29を有する。通路29は、第二ダイス20の一方端部から他方端部にまで延在している。ケース21およびマウント材22に通路29が設けられている。通路29は、第二ダイス20の中心に設けられたダイス孔25に到達する。通路29は、ダイス孔25を通過し、かつ、第二ダイス20の半径方向に延びるように設けられている。
【0044】
このように構成されたマルチダイス1においては、矢印2で示した方向から潤滑剤が供給されて、矢印3で示すように第一ダイス10および第二ダイス20の近傍を潤滑剤が流れる。伸線時に発生する屑が潤滑剤によって運ばれるため、屑がつまることを防止できる。
【0045】
第一ダイス10および第二ダイス20を接触させているため、矢印5で示す伸線方向の寸法が小さくなる。そのため、小さなスペースにマルチダイス1を設置することができる。
【0046】
(実施の形態2)
図6で示すように、実施の形態2に従ったマルチダイス1では、潤滑剤出口通路32がL形に設けられる点において、実施の形態1に従ったマルチダイス1と異なる。この実施の形態では、潤滑剤出口通路32は、90°曲げられた形状となっている。しかしながら、90°に限られず、潤滑剤出口通路32は任意の角度をなすように曲げられる。
【0047】
(実施の形態3)
図7から図11で示すように、実施の形態3に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20に設けられる通路19,29の幅が実施の形態1と異なる。実施の形態3では通路19,29の幅が広いため、通路19,29の側面がマウント材12,22に設けられておらず、ケース11,21にのみ設けられている。この実施の形態では、通路19,29の側面を形成する場合にマウント材12,22を加工する必要が無く、ケース11,21のみを加工すればよいため加工が容易となる。
【0048】
(実施の形態4)
図12から図16で示すように、実施の形態4に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20に設けられる通路19,29の形状が実施の形態1と異なる。実施の形態4では通路19,29の側面がテーパー形状である。テーパー形状の通路19,29を形成することで、テーパー形状でない実施の形態1のマルチダイス1と比較して通路19,29の側面と冷却材との接触面積が大きくなる。その結果、通路19,29の側面から多くの熱を放散することができる。
【0049】
(実施の形態5)
図17から図21で示すように、実施の形態5に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20に設けられる通路19,29の形状および幅が実施の形態1と異なる。実施の形態5では通路19,29の側面がテーパー形状である。テーパー形状の通路19,29を形成することで、テーパー形状でない実施の形態1のマルチダイス1と比較して通路19,29の側面と冷却材との接触面積が大きくなる。その結果、通路19,29の側面から多くの熱を放散することができる。さらに、通路19,29の幅が広いため多くの潤滑剤を流すことができる。
【0050】
(実施の形態6)
図22から図26で示すように、実施の形態6に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20に設けられる通路19,29の形状が実施の形態1と異なる。実施の形態6では通路19,29の側面が曲面形状である。曲面形状の通路19,29を形成することで、矩形の通路19,29を有する実施の形態1のマルチダイス1と比較して通路19,29に角部が設けられないため、通路19,29内に切り屑が溜まることを防止できる。
【0051】
(実施の形態7)
図27から図31で示すように、実施の形態7に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20に設けられる通路19,29の幅が実施の形態6と異なる。実施の形態7では実施の形態6と比較して、通路19,29の幅が広く、通路19,29が曲面形状である。幅の広い曲面形状の通路19,29を形成することで、矩形の通路19,29を有する実施の形態1のマルチダイス1と比較して通路19,29に角部が設けられないため、通路19,29内に切り屑が溜まることを防止できる。さらに通路19,29の幅が広くなるため、多くの潤滑剤を流すことができる。
【0052】
(実施の形態8)
図32から図36で示すように、実施の形態8に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10のみに通路19が設けられており、第二ダイス20には通路が設けられていない。この実施の形態では第一ダイス10のみに通路19が設けられているが、第二ダイス20のみに通路が設けられていてもよい。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに接触している。第一ダイス10のみに通路19を設けるため、第一ダイス10に通路19を設け第二ダイス20に通路29を設ける場合と比較して通路19の加工が容易となり製造コストを減少させることができる。
【0053】
(実施の形態9)
図37から図39で示すように、実施の形態9に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に設けられる通路19の幅が実施の形態8と異なる。実施の形態9では通路19の幅が広いため、通路19の側面がマウント材12に設けられておらず、ケース11にのみ設けられている。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに接触している。この実施の形態では、通路19の側面を形成する場合にマウント材12を加工する必要が無く、ケース11のみを加工すればよいため加工が容易となる。第二ダイス20には通路が設けられていない。
【0054】
(実施の形態10)
図40から図42で示すように、実施の形態10に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に設けられる通路19の形状が実施の形態8と異なる。実施の形態10では通路19の側面がテーパー形状である。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに接触している。テーパー形状の通路19を形成することで、テーパー形状でない実施の形態8のマルチダイス1と比較して通路19の側面と冷却材との接触面積が大きくなる。その結果、通路19の側面から多くの熱を放散することができる。
【0055】
(実施の形態11)
図43から図45で示すように、実施の形態11に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に設けられる通路19の形状および幅が実施の形態8と異なる。実施の形態11では通路19,29の側面がテーパー形状である。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに接触している。テーパー形状の通路19を形成することで、テーパー形状でない実施の形態8のマルチダイス1と比較して通路19の側面と冷却材との接触面積が大きくなる。その結果、通路19の側面から多くの熱を放散することができる。さらに、通路19の幅が広いため多くの潤滑剤を流すことができる。
【0056】
(実施の形態12)
図46から図48で示すように、実施の形態12に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に設けられる通路19の形状が実施の形態8と異なる。実施の形態12では通路19の側面が曲面形状である。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに接触している。曲面形状の通路19を形成することで、矩形の通路19を有する実施の形態8のマルチダイス1と比較して通路19に角部が設けられないため、通路19内に切り屑が溜まることを防止できる。
【0057】
(実施の形態13)
図49から図51で示すように、実施の形態13に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に設けられる通路19の幅が実施の形態12と異なる。実施の形態13では実施の形態12と比較して、通路19の幅が広い。通路19が曲面形状である。幅の広い曲面形状の通路19を形成することで、矩形の通路19を有する実施の形態8のマルチダイス1と比較して通路19に角部が設けられないため、通路19内に切り屑が溜まることを防止できる。さらに通路19の幅が広くなるため、多くの潤滑剤を流すことができる。
【0058】
(実施の形態14)
図52で示すように、実施の形態14に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10および第二ダイス20が離れて設けられている点において、実施の形態1に従ったマルチダイス1と異なる。第一ダイス10と第二ダイス20との間の空間が通路39である。通路39内に潤滑剤を流すことができる。
【0059】
ホルダー30の第一ダイス用収納空間37に第一ダイス10が収納される。ホルダー30の第二ダイス用収納空間38に第二ダイス20が収納される。第一ダイス用収納空間37においてホルダー30に第一ダイス10が固定される。第二ダイス用収納空間38においてホルダー30に第二ダイス20が固定される。第一ダイス用収納空間37および第二ダイス用収納空間38はともに環状である。
【0060】
マルチダイス1は、第一ベアリング14を有する第一ダイス10と、第一ベアリング14より小径の第二ベアリング24を有する、第一ダイス10よりも下流に位置して第一ダイス10から離隔する第二ダイス20と、第一ダイス10および第二ダイス20を軸方向、径方向および周方向に固定するホルダー30とを備える。ホルダー30には第一ダイス10で伸線された後第二ダイス20で伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路39が設けられている。
【0061】
図53で示すように、開口形状である第二ダイス用収納空間38は円形状である。その円の中心を通るようにスリット形状の通路39が設けられている。第二ダイス用収納空間38は底38bを有する円筒状であり、その底38bの一部分が通路39によって切り欠かれた形状とされている。円筒状の第二ダイス用収納空間38が底38bを有するため第二ダイス20が底38bに接触する。これにより伸線方向の第二ダイス20の位置を決定することができる。通路39から第二ダイス用収納空間38に潤滑剤が供給される。
【0062】
図54の断面では、通路39と、第一ダイス用収納空間37および第二ダイス用収納空間38との間には段差が存在する。これは、通路39は、ケースに設けられた角形の通路であり、第一ダイス用収納空間37および第二ダイス用収納空間38は円筒状であり、これらの間に形状の違いがあるからである。
【0063】
図55で示すように、リング状のホルダー30には、半径方向に延在するブリッジ部材36が設けられている。ブリッジ部材36は2つの板状部材によって構成されている。2つの板状部材の間に通路39が設けられている。ブリッジ部材36の一方端面が底37bであり、他方端面が底38bである。
【0064】
すなわち、マルチダイス1は、第一ベアリング14を有する第一ダイス10と、第一ベアリング14より小径の第二ベアリング24を有する、第一ダイス10よりも下流に位置して第一ダイス10から離隔する第二ダイス20と、第一ダイス10および第二ダイス20を軸方向および径方向に固定するホルダー30とを備える。ホルダー30には第一ダイス10で伸線された後第二ダイス20で伸線される前の線材に潤滑剤を供給した後排出するための通路39が設けられている。第一ダイス10および第二ダイス20の全周がホルダー30に接続されているため、第一ダイス10および第二ダイス20とホルダー30との間の隙間から潤滑剤が漏れることを防止できる。
【0065】
実施の形態14に従ったマルチダイス1では第一ダイス10および第二ダイス20に通路を形成する必要が無い。
【0066】
(実施の形態15)
図56で示すように、実施の形態15に従ったマルチダイス1では、潤滑剤出口通路32がL形に設けられる点において、実施の形態14に従ったマルチダイス1と異なる。
【0067】
(実施の形態16)
図57で示すように、実施の形態16に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10のみに通路19が設けられており、第二ダイス20には通路が設けられていない。この実施の形態では第一ダイス10のみに通路19が設けられているが、第二ダイス20のみに通路が設けられていてもよい。第一ダイス10および第二ダイス20は互いに離れている。
【0068】
第一ダイス10の通路19は、ホルダー30の通路39に沿った形状とされる。通路39を大きくするとブリッジ部材の強度を低下させるが、通路19の大きさはブリッジ部材の大きさに影響を与えない。そのため、通路19を設けることで通路39を小さくすることができ、ブリッジ部材の強度の低下を抑制できる。
【0069】
(実施の形態17)
図58で示すように、実施の形態17に従ったマルチダイス1では、第一ダイス10に通路19が設けれられる。第二ダイス20に通路29が設けられる。通路19,29は、通路39に沿った形状とされる。
【0070】
通路39以外に通路19,29が設けられるため、通路39の断面積を小さくしても潤滑剤の流量を確保することができる。その結果、通路39の断面積を小さくすることができ、ブリッジ部材の強度の低下を抑制できる。
【0071】
(実施の形態18)
図59および図60で示すように、実施の形態18に従ったマルチダイス1では、潤滑剤出口通路32が2つ設けられている。これに合わせて通路39も下流側において分岐した構造とされている。
【0072】
図61の断面では、通路39と、第一ダイス用収納空間37および第二ダイス用収納空間38との間には段差が存在する。これは、通路39は、ケースに設けられた角形の通路であり、第一ダイス用収納空間37および第二ダイス用収納空間38は円筒状であり、これらの間に形状の違いがあるからである。
【0073】
図62で示すように、リング状のホルダー30には、半径方向に延在するブリッジ部材36が設けられている。ブリッジ部材36は2つの板状部材によって構成されている。2つの板状部材の間に通路39が設けられている。ブリッジ部材36の一方端面が底37bであり、他方端面が底38bである。
【0074】
(実施の形態19)
図63および図64で示すように、第一ダイス10に二股の通路19が形成されてもよい。潤滑剤出口通路32も通路19に合わせて図60で示すように二股に構成されている。通路19の出口側が二股になっている構造に限られず、通路19の入口側が二股になっていてもよい。
【0075】
(実施の形態20)
図65で示すように第二ダイス20にも通路29が設けられてもよい。通路29は図64で示す通路19と同様に二股に構成されている。これに合わせて潤滑剤出口通路32が二股に構成されている。
【0076】
(実施の形態21)
図66で示すように、実施の形態21に従ったマルチダイス1では、ダイヤモンド23の上流側表面23fが通路29に露出している。上流側表面23fは通路29の表面と同一平面とされる。この実施の形態では上流側表面23fは通路29の表面と同一平面であるが、上流側表面23fが通路29の表面から上流側(ダイヤモンド13側)に突出していてもよい。
【0077】
ダイヤモンド23の上流側表面23fが通路29に露出しているため、第二ベアリング24で発生する切り屑が通路29側へ排出されやすくなるという効果がある。
【0078】
(実施の形態22)
図67で示すように、実施の形態22に従ったマルチダイス1では、ダイヤモンド13の下流側表面13fが通路19に露出している。下流側表面13fは通路19の表面と同一平面とされる。この実施の形態では下流側表面13fは通路19の表面と同一平面であるが、下流側表面13fが通路19の表面から下流側(ダイヤモンド23側)に突出していてもよい。
【0079】
ダイヤモンド13の下流側表面13fが通路19に露出しているため、第一ベアリング14で発生する切り屑が通路19側へ排出されやすくなるという効果がある。
【0080】
なお、この実施の形態では、下流側表面13fと上流側表面23fの両方が通路19,29に露出しているが、下流側表面13fが通路19に露出しており上流側表面23fが通路29に露出していなくてもよい。
【0081】
図68で示すように、段付きキャプスタンローラー101,102を備えたスリップ型伸線機では複数のダイス9が配置される。各ダイス9のパス毎に所定の断面積減少率となるように各ダイス9のベアリングの直径を設定する。線材8はダイス9を通過する毎に走行速度が増加する。段付きキャプスタンローラー101,102の各段は、その周速度が、線材の走行速度よりも常に早くなるように設計される。これにより線材8がたわまないようにする。したがって、線材8の走行速度と、段付きキャプスタンローラー101,102の周速度の速度差分だけスリップしながら伸線加工が行われる。スリップしながら伸線されるため、線材8の表面に傷が発生する問題がある。線材8の直径は、最終のパスとなる仕上げ用のマルチダイス1のベアリングの直径によって決定される。最終の仕上げ用のマルチダイス1の精度(ベアリングの直径、真円度)は精密に制御しなければならない。実施の形態で示すマルチダイス1は仕上げ用のダイスとして用いるとその性能を最大限に発揮する。ダイス9を実施の形態のマルチダイス1で構成してもよい。
【0082】
供給ボビン103から線材8が矢印111で示す方向に供給される。線材8はダイスによって伸線される。段付きキャプスタンローラー101,102によって線材が送られる。段付きキャプスタンローラー101,102は矢印R1で示す方向に回転する。段付きキャプスタンローラー101,102の外径は、線材8の流れの下流に行くにしたがって大きくなる。これは下流に行くほど線材8の断面積が小さくなり、線材8の送り速度が速くなるからである。最後に線材8は巻取りボビン104に巻き取られる。
【0083】
図69で示すように、ノンスリップ型伸線機に実施の形態に従ったマルチダイス1を適用してもよい。ダンサープーリ124、マルチダイス1およびキャプスタンローラー121,122をひとつの伸線機として、複数の伸線機を同期制御してつなげた形式としたのがノンスリップ型伸線機である。マルチダイス1通過後の線材8の走行速度は、次に接触するキャプスタンローラー121,122の周速度に等しいので、線材8とキャプスタンローラー121,122の間でスリップが発生しない。ダンサープーリ―124が矢印で示す方向に回動可能であるためダンサープーリ―124によって供給ボビン103、キャプスタンローラー121,122、ボビン131間の距離を調整することができる。その結果、線材8がキャプスタンローラー121,122に対してスリップすることを防止できる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 マルチダイス、2,3,4,5 矢印、8 線材、9 ダイス、10 第一ダイス、11,21 ケース、12,22 マウント材、13,23 ダイヤモンド、14 第一ベアリング、15,25 ダイス孔、19,29,39 通路、20 第二ダイス、30 ホルダー、31 潤滑剤入口通路、32 潤滑剤出口通路、36 ブリッジ部材、37 第一ダイス用収納空間、37b,38b 底、38 第二ダイス用収納空間、121,122 キャプスタンローラー、101,102 段付きキャプスタンローラー、103 供給ボビン、104 巻取りボビン、124 ダンサープーリ。
図1
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