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特許7177628基板処理方法、基板処理装置および基板処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221116BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20221116BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20221116BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20221116BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221116BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
H01L21/30 564C
B05D1/40 A
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018154079
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020031083
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】樋口 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】猶原 英司
(72)【発明者】
【氏名】沖田 有史
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 翔太
(72)【発明者】
【氏名】角間 央章
(72)【発明者】
【氏名】増井 達哉
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072344(JP,A)
【文献】特開2003-273003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
B05D 1/40
B05D 3/00
B05D 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
基板を保持する第1工程と、
第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、
前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、
前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程と
を備え
前記第5工程において、
前記撮像画像の各フレームのうち前記第1ノズルの先端から前記第1ノズルの吐出方向に延びる第1吐出判定領域内の画素値に基づいて統計量を算出し、当該統計量と予め設定された閾値との比較に基づいて前記停止タイミングを特定し、
各フレームのうち前記第2ノズルの先端から前記第2ノズルの吐出方向に延びる第2吐出判定領域内の画素値に基づいて前記統計量を算出し、当該統計量と前記閾値との比較に基づいて前記開始タイミングを特定し、
前記統計量は、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々からの処理液の吐出状態を反映する値である、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記開始タイミングを調整せずに前記停止タイミングを調整する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記第1吐出判定領域の画素値の前記統計量が前記閾値よりも大きいフレームと、当該フレームの次のフレームであって、前記第1吐出判定領域の前記統計量が前記閾値よりも小さいフレームとに基づいて前記停止タイミングを特定し、
前記第2吐出判定領域の画素値の前記統計量が前記閾値よりも小さいフレームと、当該フレームの次のフレームであって、前記第1吐出判定領域の前記統計量が前記閾値よりも大きいフレームとに基づいて前記開始タイミングを特定する、基板処理方法。
【請求項4】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記第6工程において、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについての前記統計量の時間変化を示すグラフをユーザインターフェースに表示し、
前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方たる対象タイミングに対する入力が前記ユーザインターフェースに対して行われたときに、前記入力に応じて当該対象タイミングを調整する、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第1吐出判定領域の前記統計量は、前記第1吐出判定領域の画素値の積分値または標準偏差であり、
前記第2吐出判定領域の前記統計量は、前記第2吐出判定領域の画素値の積分値または標準偏差である、基板処理方法。
【請求項6】
基板処理方法であって、
基板を保持する第1工程と、
第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、
前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、
前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程と
を備え、
前記第5工程において、
機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々について処理液の吐出/停止に分類し、その分類結果に基づいて前記タイミング差を求める、基板処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法であって、
前記第1ノズルについて吐出と分類されたフレームと、当該フレームの次のフレームであって前記第1ノズルについて停止と分類されたフレームとに基づいて前記停止タイミングを特定し、
前記第2ノズルについて停止と分類されたフレームと、当該フレームの次のフレームであって前記第2ノズルについて吐出と分類されたフレームとに基づいて前記開始タイミングを特定する、基板処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の基板処理方法であって、
前記停止タイミングは前記開始タイミングの後であり、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの両方が処理液を吐出すると分類されたフレームの数と、前記フレームの間の時間とに基づいて、前記タイミング差を求める、基板処理方法。
【請求項9】
請求項から請求項8のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記第6工程において、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、その旨を作業者に報知する、基板処理方法。
【請求項10】
基板処理方法であって、
基板を保持する第1工程と、
第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、
前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、
前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程と
を備え、
前記停止タイミングは前記開始タイミングの後であり、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、処理液が基板上で跳ねる液はねが生じているか否かを判定し、前記液はねが生じていると判定したときに、前記開始タイミングと前記停止タイミングとの間のタイミング差を低減するように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第7工程を更に備える、基板処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理方法であって、
前記第7工程において、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像の各フレームを前記液はねのあり/なしに分類する、基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理方法であって、
前記第7工程において、前記撮像画像の各フレームのうち、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの近傍の液はね判定領域を切り出し、前記分類器を用いて、前記液はね判定領域を液はねのあり/なしに分類する、基板処理方法。
【請求項13】
請求項6から請求項8、請求項11および請求項12のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つに応じた複数の機械学習済みの分類器のうちから一つを選択し、
選択された分類器に基づいて、前記撮像画像に含まれる各フレームを分類する、基板処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理方法であって、
前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つが入力部に入力されたときに、前記入力部への入力に応じて前記複数の分類器から一つを選択する、基板処理方法。
【請求項15】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、
前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御し、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整し、
前記制御部は、前記タイミング差を求める際に、前記撮像画像の各フレームのうち前記第1ノズルの先端から前記第1ノズルの吐出方向に延びる第1吐出判定領域内の画素値に基づいて統計量を算出し、当該統計量と予め設定された閾値との比較に基づいて前記停止タイミングを特定し、
各フレームのうち前記第2ノズルの先端から前記第2ノズルの吐出方向に延びる第2吐出判定領域内の画素値に基づいて前記統計量を算出し、当該統計量と前記閾値との比較に基づいて前記開始タイミングを特定し、
前記統計量は、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々からの処理液の吐出状態を反映する値である、基板処理装置。
【請求項16】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、
前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御し、
前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整し、
前記制御部は、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについて処理液の吐出/停止の状態を示すカテゴリに分類し、その分類結果に基づいて前記タイミング差を求める、基板処理装置。
【請求項17】
請求項16に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、
前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つに応じた複数の機械学習済みの分類器のうちから一つを選択し、
選択された分類器に基づいて、前記撮像画像に含まれる各フレームを分類する、基板処理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の基板処理装置であって、
前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つの入力が行われる入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部への入力に応じて前記複数の分類器から一つを選択する、基板処理装置。
【請求項19】
基板処理装置と、前記基板処理装置と通信するサーバとを有し、
前記基板処理装置は、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、
前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、
前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御する制御部と
を備え、
前記基板処理装置およびサーバは、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについて処理液の吐出/停止の状態を示すカテゴリに分類し、その分類結果に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと、前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、
前記制御部は、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法、基板処理装置および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに異なる処理液を基板に対して順次に供給して処理を行う基板処理装置が提案されている。この基板処理装置は、基板を水平姿勢に保持する基板保持部と、基板保持部を回転させて基板を水平面内で回転させる回転機構と、基板の上方から処理液を吐出する第1吐出ノズルおよび第2吐出ノズルとを備えている。第1吐出ノズルおよび第2吐出ノズルは平面視において基板の中央付近からそれぞれ処理液を吐出する。
【0003】
第1吐出ノズルから基板に向けて第1処理液を吐出すると、その第1処理液は基板の中央付近に着液し、基板の回転に伴う遠心力を受けて基板上で広がって、基板の周縁から飛散される。第1処理液としては、SC1液(アンモニア水、過酸化水素水および水の混合液)、SC2液(塩酸、過酸化水素水および水の混合液)、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。これにより、第1処理液に応じた処理を基板に対して行うことができる。
【0004】
次に第2処理液による処理を行う。つまり、処理液を吐出するノズルを第1吐出ノズルから第2吐出ノズルへと切り替える。具体的には、第1吐出ノズルからの第1処理液の吐出を停止しつつ、第2吐出ノズルからの第2処理液の吐出を開始する。第2処理液は基板の中央付近に着液し、基板の回転に伴う遠心力を受けて基板上で広がって、基板の周縁から飛散される。第2処理液としては、例えば純水を採用することができる。これにより、第1処理液を基板から洗い流すことができる。
【0005】
また吐出ノズルからの処理液の吐出状態をカメラで監視する技術も提案されている(例えば特許文献1,2)。特許文献1,2では、吐出ノズルの先端を含む撮像領域をカメラで撮像し、そのカメラの撮像画像に基づいて、吐出ノズルから処理液が吐出されているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-29883号公報
【文献】特開2015-173148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
処理液を吐出するノズルを第1吐出ノズルから第2吐出ノズルへの切り替える際には、第1吐出ノズルからの処理液の吐出停止タイミングと、第2吐出ノズルからの処理液の吐出開始タイミングとのタイミング差が重要である。
【0008】
例えば、第1吐出ノズルの吐出停止タイミングに対して第2吐出ノズルからの処理液の吐出の開始タイミングが遅いほど、基板の表面が部分的に乾燥しやすくなる(液かれ)。基板の表面が乾燥すると、不具合(例えばパーティクルの付着)を生じ得る。
【0009】
この基板の乾燥を回避するには、第1吐出ノズルの吐出停止タイミングよりも前に第2吐出ノズルの吐出を開始すればよい。例えば第1処理液の吐出停止中において、第1処理液の吐出量は時間の経過とともに低下し、いずれ零となる。この第1処理液の吐出停止中において第2処理液の吐出を開始することにより、基板上に途切れなく処理液を供給することができ、基板が乾燥する可能性を低減できる。
【0010】
しかしながら、第2吐出ノズルの吐出開始タイミングが早すぎると、未だ第1処理液が十分な吐出量で吐出される状態で、第2処理液の吐出が開始される。この場合、基板に供給される処理液の総量が大きくなり、処理液が基板上で跳ね返る(液はね)。このような液はねの発生は好ましくない。
【0011】
したがって、液はねおよび液かれが生じないようにタイミング差を調整することが望ましい。
【0012】
また、上記のタイミング差が基板への処理の良否に影響を及ぼす場合もある。この場合には、処理結果が良好となるようにタイミング差を調整することが望ましい。
【0013】
そこで、本願は、所望のタイミング差で第1ノズルから第2ノズルの切り替えを行うことができる基板処理方法、基板処理装置および基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
基板処理方法の第1の態様は、基板処理方法であって、基板を保持する第1工程と、第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程とを備え、前記第5工程において、前記撮像画像の各フレームのうち前記第1ノズルの先端から前記第1ノズルの吐出方向に延びる第1吐出判定領域内の画素値に基づいて統計量を算出し、当該統計量と予め設定された閾値との比較に基づいて前記停止タイミングを特定し、各フレームのうち前記第2ノズルの先端から前記第2ノズルの吐出方向に延びる第2吐出判定領域内の画素値に基づいて前記統計量を算出し、当該統計量と前記閾値との比較に基づいて前記開始タイミングを特定し、前記統計量は、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々からの処理液の吐出状態を反映する値である
【0015】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記開始タイミングを調整せずに前記停止タイミングを調整する。
【0017】
基板処理方法の第の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1吐出判定領域の画素値の前記統計量が前記閾値よりも大きいフレームと、当該フレームの次のフレームであって、前記第1吐出判定領域の前記統計量が前記閾値よりも小さいフレームとに基づいて前記停止タイミングを特定し、前記第2吐出判定領域の画素値の前記統計量が前記閾値よりも小さいフレームと、当該フレームの次のフレームであって、前記第1吐出判定領域の前記統計量が前記閾値よりも大きいフレームとに基づいて前記開始タイミングを特定する。
【0018】
基板処理方法の第の態様は、第の態様にかかる基板処理方法であって、前記第6工程において、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについての前記統計量の時間変化を示すグラフをユーザインターフェースに表示し、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方たる対象タイミングに対する入力が前記ユーザインターフェースに対して行われたときに、前記入力に応じて当該対象タイミングを調整する。
基板処理方法の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第1吐出判定領域の前記統計量は、前記第1吐出判定領域の画素値の積分値または標準偏差であり、前記第2吐出判定領域の前記統計量は、前記第2吐出判定領域の画素値の積分値または標準偏差である。
【0019】
基板処理方法の第6の態様は、基板処理方法であって、基板を保持する第1工程と、第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程とを備え、前記第5工程において、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々について処理液の吐出/停止に分類し、その分類結果に基づいて前記タイミング差を求める。
【0020】
基板処理方法の第7の態様は、第6の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1ノズルについて吐出と分類されたフレームと、当該フレームの次のフレームであって前記第1ノズルについて停止と分類されたフレームとに基づいて前記停止タイミングを特定し、前記第2ノズルについて停止と分類されたフレームと、当該フレームの次のフレームであって前記第2ノズルについて吐出と分類されたフレームとに基づいて前記開始タイミングを特定する、基板処理方法。
【0021】
基板処理方法の第8の態様は、第6の態様にかかる基板処理方法であって、前記停止タイミングは前記開始タイミングの後であり、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの両方が処理液を吐出すると分類されたフレームの数と、前記フレームの間の時間とに基づいて、前記タイミング差を求める。
【0022】
基板処理方法の第9の態様は、第から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記第6工程において、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、その旨を作業者に報知する。
【0023】
基板処理方法の第10の態様は、基板処理方法であって、基板を保持する第1工程と、第1ノズルの先端および第2ノズルの先端を含む撮像領域の、カメラによる撮像を開始して、撮像画像を生成する第2工程と、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始する第3工程と、前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止し、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する第4工程と、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第4工程において前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求める第5工程と、前記タイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定し、前記タイミング差が前記所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第6工程とを備え、前記停止タイミングは前記開始タイミングの後であり、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、処理液が基板上で跳ねる液はねが生じているか否かを判定し、前記液はねが生じていると判定したときに、前記開始タイミングと前記停止タイミングとの間のタイミング差を低減するように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する第7工程を更に備える。
【0024】
基板処理方法の第11の態様は、第10の態様にかかる基板処理方法であって、前記第7工程において、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像の各フレームを前記液はねのあり/なしに分類する。
【0025】
基板処理方法の第12の態様は、第11の態様にかかる基板処理方法であって、前記第7工程において、前記撮像画像の各フレームのうち、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの近傍の液はね判定領域を切り出し、前記分類器を用いて、前記液はね判定領域を液はねのあり/なしに分類する。
【0026】
基板処理方法の第13の態様は、第6から第8、第11、第12のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つに応じた複数の機械学習済みの分類器のうちから一つを選択し、選択された分類器に基づいて、前記撮像画像に含まれる各フレームを分類する。
【0027】
基板処理方法の第14の態様は、第13の態様にかかる基板処理方法であって、前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つが入力部に入力されたときに、前記入力部への入力に応じて前記複数の分類器から一つを選択する。
【0028】
基板処理装置の第1の態様は、基板を保持する基板保持部と、前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、制御部とを備え、前記制御部は、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御し、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整し、前記制御部は、前記タイミング差を求める際に、前記撮像画像の各フレームのうち前記第1ノズルの先端から前記第1ノズルの吐出方向に延びる第1吐出判定領域内の画素値に基づいて統計量を算出し、当該統計量と予め設定された閾値との比較に基づいて前記停止タイミングを特定し、各フレームのうち前記第2ノズルの先端から前記第2ノズルの吐出方向に延びる第2吐出判定領域内の画素値に基づいて前記統計量を算出し、当該統計量と前記閾値との比較に基づいて前記開始タイミングを特定し、前記統計量は、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの各々からの処理液の吐出状態を反映する値である
【0029】
基板処理装置の第2の態様は、基板を保持する基板保持部と、前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、制御部とを備え、前記制御部は、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御し、前記撮像画像に対する画像処理に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように、前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整し、前記制御部は、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについて処理液の吐出/停止の状態を示すカテゴリに分類し、その分類結果に基づいて前記タイミング差を求める。
【0030】
基板処理装置の第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つに応じた複数の機械学習済みの分類器のうちから一つを選択し、選択された分類器に基づいて、前記撮像画像に含まれる各フレームを分類する。
【0031】
基板処理装置の第4の態様は、第3の態様にかかる基板処理装置であって、前記基板の種類、前記処理液の種類、前記第1ノズルと前記第2ノズルとの位置、および、前記処理液の流量の少なくともいずれか一つの入力が行われる入力部を備え、前記制御部は、前記入力部への入力に応じて前記複数の分類器から一つを選択する。
【0032】
基板処理システムの第1の態様は、基板処理装置と、前記基板処理装置と通信するサーバとを有し、前記基板処理装置は、基板を保持する基板保持部と、前記基板に対して処理液を吐出する第1ノズル、および、前記基板に対して処理液を吐出する第2ノズルを有する処理液供給部と、前記第1ノズルの先端および前記第2ノズルの先端を含む撮像領域を撮像して、撮像画像を生成するカメラと、前記第1ノズルから前記基板への処理液の吐出を開始した後に、前記第2ノズルからの前記基板への処理液の吐出を開始し、前記第1ノズルからの前記基板への処理液の吐出を停止するように前記処理液供給部を制御する制御部とを備え、前記基板処理装置およびサーバは、機械学習済みの分類器を用いて、前記撮像画像に含まれる各フレームを、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルについて処理液の吐出/停止の状態を示すカテゴリに分類し、その分類結果に基づいて、前記第2ノズルからの処理液の吐出を開始する開始タイミングと、前記第1ノズルからの処理液の吐出を停止する停止タイミングとのタイミング差を求め、前記制御部は、前記タイミング差が所定の範囲外であると判定したときに、前記タイミング差が前記所定の範囲内となるように前記開始タイミングおよび前記停止タイミングの少なくともいずれか一方を調整する。
【発明の効果】
【0033】
基板処理方法の第1の態様、基板処理装置の第1の態様によれば、撮像画像に対する画像処理に基づいて開始タイミングと停止タイミングとのタイミング差を求めるので、高い精度でタイミング差を求めることができる。よって、高い精度でタイミング差を所定の範囲内に調整できる。
【0034】
これにより、例えば、基板の上で処理液が跳ねる液はね、および、基板が部分的に乾燥する液枯れの発生をほぼ回避できる。しかも、第1吐出判定領域および第2吐出判定領域の画素値を用いているので、撮像画像の全体に対して画像処理を行う場合に比して処理を軽くできる。
【0035】
基板処理方法の第2の態様によれば、第1ノズルからの処理液が供給される処理期間の長さを変更することなく、タイミング差を所定の範囲内とすることができる。
【0037】
基板処理方法の第3および第5の態様によれば、簡易な処理により開始タイミングおよび停止タイミングを特定できる。
【0038】
基板処理方法の第の態様によれば、作業者は統計量の時間変化を視認し、その時間変化に基づいてタイミング差を調整できる。
【0039】
基板処理方法の第6の態様、基板処理装置の第2の態様および基板処理システムの第1の態様によれば、機械学習により、高い精度でタイミング差を求めることができる。
【0040】
基板処理方法の第7の態様によれば、適切にタイミング差を特定できる。
【0041】
基板処理方法の第8の態様によれば、適切にタイミング差を特定できる。
【0042】
基板処理方法の第9の態様によれば、作業者はタイミング差が所定の範囲外であることを認識できる。
【0043】
基板処理方法の第10の態様によれば、液はねの発生を低減できるように、タイミング差を調整できる。
【0044】
基板処理方法の第11の態様によれば、高い精度で液はねの有無を判定できる。
【0045】
基板処理方法の第12の態様によれば、分類精度を向上できる。
【0046】
基板処理方法の第13の態様および基板処理装置の第3の態様によれば、高い精度で各フレームを分類できる。
【0047】
基板処理方法の第14の態様および基板処理装置の第4の態様によれば、作業者が情報を入力部に入力できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】基板処理装置の構成の概略的な一例を示す図である。
図2】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図3】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図4】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
図6】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
図7】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
図8】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
図9】監視処理の具体的な一例を示すフローチャートである。
図10】吐出判定領域内の輝度分布の一例を概略的に示すグラフである。
図11】吐出判定領域内の輝度分布の一例を概略的に示すグラフである。
図12】吐出判定領域内の画素値の統計量の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
図13】吐出判定領域内の画素値の統計量の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
図14】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図15】監視処理の具体的な一例を示すフローチャートである。
図16】撮像画像の複数のフレームの一例を概略的に示す図である。
図17】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図18】入力画面の一例を概略的に示す図である。
図19】基板処理装置およびサーバの一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図20】ディープラーニングのモデルの一例を概略的に示す図である。
図21】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
図22】液はね判定領域内の画素値の統計量の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。
図23】監視処理の具体的な一例を示すフローチャートである。
図24】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図25】カメラによって生成されたフレームの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0050】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0051】
第1の実施の形態.
<基板処理装置の概要>
図1は、基板処理装置100の全体構成を示す図である。基板処理装置100は、基板Wに対して処理液を供給して基板Wに対する処理を行う装置である。基板Wは、例えば半導体基板である。この基板Wは略円板形状を有している。
【0052】
この基板処理装置100は少なくとも2種の処理液を順次に基板Wに供給することができる。例えば基板処理装置100は、基板Wに対して洗浄用の薬液を供給した後に、基板Wに対してリンス液を供給することで、洗浄処理を行うことができる。当該薬液としては、典型的には、SC1液(アンモニア水、過酸化水素水および水の混合液)、SC2液(塩酸、過酸化水素水および水の混合液)、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。当該リンス液としては、例えば純水などが用いられる。本明細書では、薬液とリンス液とを総称して「処理液」と称する。なお洗浄処理のみならず、成膜処理のためのフォトレジスト液などの塗布液、不要な膜を除去するための薬液、エッチングのための薬液なども「処理液」に含まれる。
【0053】
基板処理装置100は、インデクサ102、複数の処理ユニット1および主搬送ロボット103を備える。インデクサ102は、装置外から受け取った未処理の基板Wを装置内に搬入するとともに、洗浄処理の終了した処理済みの基板Wを装置外に搬出する機能を有する。インデクサ102は、複数のキャリアを載置するとともに移送ロボットを備える(いずれも図示省略)。キャリアとしては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)またはSMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、あるいは、収納した状態で基板Wを外気に曝すOC(open cassette)を採用することができる。移送ロボットは、当該キャリアと主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0054】
基板処理装置100には、12個の処理ユニット1が配置されている。詳細な配置構成は、3個の処理ユニット1を積層したタワーが主搬送ロボット103の周囲を囲むように4個配置されるというものである。換言すれば、主搬送ロボット103を囲んで配置された4個の処理ユニット1が3段に積層されており、図1はそのうちの1層を示している。なお、基板処理装置100に搭載される処理ユニット1の個数は12に限定されるものではなく、例えば8個または4個であっても良い。
【0055】
主搬送ロボット103は、処理ユニット1を積層した4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサ102から受け取った未処理の基板Wを各処理ユニット1に搬入するとともに、各処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に渡す。
【0056】
次に、処理ユニット1について説明する。以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つを説明するが、他の処理ユニット1についても同様である。図2は、処理ユニット1の平面図である。また、図3は、処理ユニット1の縦断面図である。なお、図2は基板保持部20に基板Wが保持されていない状態を示し、図3は基板保持部20に基板Wが保持されている状態を示している。
【0057】
処理ユニット1は、チャンバー10内に、主たる要素として、基板Wを水平姿勢(基板Wの法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する基板保持部20と、基板保持部20に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための3つの処理液供給部30,60,65と、基板保持部20の周囲を取り囲む処理カップ40と、基板保持部20の上方空間を撮像するカメラ70とを備える。また、チャンバー10内における処理カップ40の周囲には、チャンバー10の内側空間を上下に仕切る仕切板15が設けられている。
【0058】
チャンバー10は、鉛直方向に沿う側壁11、側壁11によって囲まれた空間の上側を閉塞する天井壁12および下側を閉塞する床壁13を備える。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が基板Wの処理空間となる。また、チャンバー10の側壁11の一部には、チャンバー10に対して主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口を開閉するシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
【0059】
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。ファンフィルタユニット14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPAフィルタ)を備えており、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。ファンフィルタユニット14から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしても良い。
【0060】
基板保持部20は例えばスピンチャックである。この基板保持部20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられている。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように筒状のカバー部材23が設けられている。
【0061】
円板形状のスピンベース21の外径は、基板保持部20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する保持面21aを有している。
【0062】
スピンベース21の保持面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの外周円に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて(本実施形態のように4個のチャックピン26であれば90°間隔にて)配置されている。複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。基板保持部20は、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端に当接させて基板Wを把持することにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で保持面21aに近接した水平姿勢にて保持することができるとともに(図3参照)、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端から離間させて把持を解除することができる。
【0063】
複数のチャックピン26による把持によって基板保持部20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸CXまわりに基板Wを回転させることができる。
【0064】
処理液供給部30は、ノズルアーム32の先端に吐出ノズル31を取り付けて構成されている(図2参照)。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33は図示を省略するモータによって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。ノズル基台33が回動することにより、図2中の矢印AR34にて示すように、吐出ノズル31は基板保持部20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動する。
【0065】
処理液供給部30は、複数種の処理液が供給されるように構成されている。具体的には、処理液供給部30は複数の吐出ノズル31を有している。図2および図3の例では、吐出ノズル31として2つの吐出ノズル31a,31bが示されている。吐出ノズル31a,31bはノズルアーム32を介してノズル基台33に固定されている。よって、吐出ノズル31a,31bは互いに同期して移動する。吐出ノズル31a,31bは水平面内で隣り合うように設けられている。
【0066】
図3に例示するように、吐出ノズル31aは配管34aを介して処理液供給源37aに接続されており、吐出ノズル31bは配管34bを介して処理液供給源37bに接続されている。配管34a,34bの途中にはそれぞれ開閉弁35a,35bが設けられている。開閉弁35aが開くことにより、処理液供給源37aからの処理液Lq1が配管34aの内部を流れて吐出ノズル31aから吐出され、開閉弁35bが開くことにより、処理液供給源37bからの処理液Lq2が配管34bの内部を流れて吐出ノズル31bから吐出される。吐出ノズル31aからは例えばSC1液が吐出され、吐出ノズル31bからは例えば純水が吐出される。吐出ノズル31a,31bが処理位置で停止した状態で吐出された処理液Lq1,Lq2は、基板保持部20に保持された基板Wの上面に着液する。
【0067】
配管34a,34bの途中にはそれぞれサックバック弁36a,36bが設けられていてもよい。サックバック弁36aは処理液Lq1の吐出停止時において配管34a内の処理液Lq1を吸い込むことにより、吐出ノズル31aの先端から処理液Lq1を引き込む。これにより、吐出停止時において処理液Lq1が吐出ノズル31aの先端から比較的大きな塊(液滴)として落下するぼた落ちが生じにくい。サックバック弁36bも同様である。
【0068】
また、本実施形態の処理ユニット1には、上記の処理液供給部30に加えてさらに2つの処理液供給部60,65が設けられている。本実施形態の処理液供給部60,65は、上記の処理液供給部30と同様の構成を備える。すなわち、処理液供給部60は、ノズルアーム62の先端に吐出ノズル61を取り付けて構成され、その吐出ノズル61は、ノズルアーム62の基端側に連結されたノズル基台63によって、矢印AR64にて示すように基板保持部20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。同様に、処理液供給部65は、ノズルアーム67の先端に吐出ノズル66を取り付けて構成され、その吐出ノズル66は、ノズルアーム67の基端側に連結されたノズル基台68によって、矢印AR69にて示すように基板保持部20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。処理液供給部60,65も、複数種の処理液が供給されるように構成されていてもよく、あるいは、単一の処理液が供給されるように構成されていてもよい。
【0069】
処理液供給部60,65はそれぞれの吐出ノズル61,66が処理位置に位置する状態で、基板保持部20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。なお、処理液供給部60,65の少なくとも一方は、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであっても良い。また、処理ユニット1に設けられる処理液供給部は3つに限定されるものではなく、1つ以上であれば良い。ただし、本実施の形態では、2つの処理液を順次に切り替えて吐出することが前提なので、吐出ノズルは全体として2以上設けられる。処理液供給部60,65の各吐出ノズルも、処理液供給部30と同様に配管を介して処理液供給源に接続され、またその配管の途中には開閉弁が設けられ、さらにサックバック弁が設けられてもよい。以下では、代表的に処理液供給部30を用いた処理について述べる。
【0070】
処理カップ40は、基板保持部20を取り囲むように設けられている。処理カップ40は内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。内カップ41、中カップ42および外カップ43は昇降可能に設けられている。内カップ41、中カップ42および外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は内カップ41の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第1回収機構(不図示)によって回収される。内カップ41が下降し、中カップ42および外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は中カップ42の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第2回収機構(不図示)によって回収される。内カップ41および中カップ42が下降し、外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は外カップ43の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第3回収機構(不図示)によって回収される。これによれば、異なる処理液をそれぞれ適切に回収することができる。
【0071】
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であっても良いし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであっても良い。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施形態では処理液供給部30,60,65のノズル基台33,63,68を支持するための支持軸を通すための貫通孔(不図示)が形成されている。
【0072】
仕切板15の外周端はチャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0073】
また、チャンバー10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルタユニット14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15と間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
【0074】
カメラ70は、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方に設置されている。カメラ70は、例えば撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device))と、電子シャッター、レンズなどの光学系とを備える。処理液供給部30の吐出ノズル31は、ノズル基台33によって、基板保持部20に保持された基板Wの上方の処理位置(図3の実線位置)と処理カップ40よりも外側の待機位置(図3の点線位置)との間で往復移動される。処理位置は、処理液供給部30から基板保持部20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出して洗浄処理を行う位置である。待機位置は、処理液供給部30が洗浄処理を行わないときに処理液の吐出を停止して待機する位置である。待機位置には、処理液供給部30の吐出ノズル31を収容する待機ポッドが設けられていても良い。
【0075】
カメラ70は、その撮像領域に少なくとも処理位置における吐出ノズル31の先端が含まれるように設置されている。より具体的には、吐出ノズル31の先端と、その先端から吐出される処理液とが撮像領域に含まれるように、カメラ70が設置される。本実施形態では、図3に示すように、処理位置における吐出ノズル31を前方上方から撮像する位置にカメラ70が設置される。よって、カメラ70は、処理位置における吐出ノズル31の先端を含む撮像領域を撮像することができる。同様に、カメラ70は、処理位置における処理液供給部60,65の吐出ノズル61,66の先端を含む撮像領域を撮像することもできる。なお、カメラ70が図2に示す位置に設置されている場合には、処理液供給部30,65の吐出ノズル31,66についてはカメラ70の撮像視野内で横方向に移動するため、処理位置近傍での動きを適切に撮像することが可能であるが、処理液供給部60の吐出ノズル61についてはカメラ70の撮像視野内で奥行き方向に移動するため、処理位置近傍での移動量を適切に撮像できないおそれもある。このような場合は、カメラ70とは別に処理液供給部60専用のカメラを設けるようにしても良い。
【0076】
また、図3に示すように、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方には照明部71が設けられている。通常、チャンバー10内は暗室であるため、カメラ70が撮像を行うときには照明部71が処理位置近傍の処理液供給部30,60,65の吐出ノズル31,61,66に光を照射する。カメラ70が生成した撮像画像は制御部9へと出力される。
【0077】
制御部9は基板処理装置100の各種構成を制御して基板Wに対する処理を進行する。また制御部9はカメラ70によって生成された撮像画像に対して画像処理を行う。制御部9はこの画像処理により、各吐出ノズルからの処理液の吐出の開始タイミングと停止タイミングとのタイミング差を求める。この画像処理については後に詳述する。
【0078】
制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えて構成される。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。また制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することにより、画像処理を行う。なお制御部9の機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0079】
ユーザインターフェース90はディスプレイおよび入力部を備えている。ディスプレイは例えば液晶表示ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。入力部は例えばタッチパネル、マウスまたはキーボードである。このユーザインターフェース90は制御部9に接続されている。ディスプレイは制御部9からの表示信号に基づいて表示画像を表示する。この表示画像には、例えばカメラ70からの撮像画像が含まれる。入力部は、ユーザによって入力された入力情報を制御部9に出力する。制御部9は入力情報に応じて各種構成を制御することができる。
【0080】
<制御部の動作>
図4は、制御部9の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、一例として、処理液供給部30を用いた処理について説明する。まずステップS1にて、主搬送ロボット103によって基板Wが基板保持部20上に搬送される。基板保持部20は、搬送された基板Wを保持する。
【0081】
次にステップS2にて、制御部9はノズル基台33を回動させて、吐出ノズル31a,31bを処理位置へと移動させる。吐出ノズル31a,31bが処理位置で停止した状態では、吐出ノズル31aの先端および吐出ノズル31bの先端はカメラ70の撮像領域に含まれている。
【0082】
次にステップS3にて、制御部9はカメラ70を制御して撮像を開始させる。これにより、カメラ70は吐出ノズル31aの先端および吐出ノズル31bの先端をより確実に撮像できる。カメラ70は所定のフレームレート(例えば60フレーム/秒)で撮像領域を撮像し、生成した撮像画像の各フレームを制御部9に順次に出力する。なおこのカメラ70による撮像はステップS2の吐出ノズル31a,31bの移動の開始を契機として開始してもよい。
【0083】
図5は、カメラ70によって生成された撮像画像のフレームIM1の一例を概略的に示す図である。図5に例示するフレームIM1においては、吐出ノズル31aの先端および吐出ノズル31bの先端が写っており、また基板Wの一部も写っている。フレームIM1では、吐出ノズル31aから処理液Lq1が未だ吐出されておらず、同様に、吐出ノズル31bからも処理液Lq2が未だ吐出されていない。
【0084】
次にステップS4にて、制御部9は吐出ノズル31aからの吐出を開始する。具体的には、制御部9は開信号を開閉弁35aへと出力する。開閉弁35aはこの開信号に基づいて開動作を行って配管34aを開く。これにより、処理液供給源37aからの処理液が吐出ノズル31aから吐出されて、基板Wの上面に供給される。なお、開信号が出力されてから実際に処理液Lq1が吐出するまでには、遅れ時間が生じる。この遅れ時間は開閉弁35aの開動作による弁体の移動速度および配管34aの配管長および圧力損失などの諸要因に依存する。
【0085】
また制御部9はステップS4の直前からスピンモータ22を回転させて基板Wを回転させる。
【0086】
図6は、カメラ70によって生成された撮像画像のフレームIM2の一例を概略的に示す図である。図6に例示するフレームIM2においては、吐出ノズル31aから処理液Lq1が吐出されており、吐出ノズル31bからは処理液Lq2が吐出されていない。吐出ノズル31aから吐出された処理液Lq1はいわゆる連続流であり、吐出ノズル31aの先端から基板Wの上面までの領域においては、鉛直方向に沿って延びる液柱形状を有している。この処理液Lq1は基板Wの略中央に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面において広がる。そして、基板Wの周縁から飛散する。これにより、処理液Lq1が基板Wの上面の全面に作用し、処理液Lq1に基づく処理が行われる。
【0087】
制御部9は例えばステップS4から所定時間が経過すると、ステップS5にて、処理液を吐出するノズルを吐出ノズル31aから吐出ノズル31bへと切り替える。即ち、制御部9は吐出ノズル31aからの処理液Lq1の吐出を停止させるとともに、吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出を開始する。つまり、制御部9は開閉弁35aに閉信号を送信するとともに開閉弁35bに開信号を送信する。具体的な一例として、制御部9はステップS4からの経過時間が第1基準時間に至ったときに、開信号を開閉弁35bに出力し、ステップS4からの経過時間が第2基準時間に至ったときに、閉信号を開閉弁35aに出力する。例えば第2基準時間は第1基準時間よりも長く設定され得る。
【0088】
開閉弁35bは開信号に基づいて開動作を行って配管34bを開く。これにより、処理液供給源37bからの処理液Lq2が吐出ノズル31bから吐出されて、基板Wの上面に着液する。なお、開信号が出力されてから実際に処理液Lq2が吐出するまでには、遅れ時間が生じる。この遅れ時間は開閉弁35bの開動作による弁体の移動速度、配管34bの配管長および圧力損失などの諸要因に依存する。
【0089】
開閉弁35aは閉信号に基づいて閉動作を行って配管34aを閉じる。なおサックバック弁36aが設けられている場合には、制御部9はサックバック弁36aに吸い込み信号を送信する。サックバック弁36aはこの吸い込み信号に基づいて吸い込み動作を行って、配管34a内の処理液を吸い込む。開閉弁35aの閉動作とサックバック弁36aの吸い込み動作は互いに並行して実行される。これにより、吐出ノズル31aの先端側の処理液Lq1が引き戻されて、処理液Lq1の吐出が適切に停止する。なお、閉信号が出力されてから実際に処理液Lq1の吐出が停止するまでには、遅れ時間が生じる。この遅れ時間は開閉弁35aの閉動作による弁体の移動速度、サックバック弁36aの弁体の移動速度、配管34aの配管長および圧力損失などの諸要因に依存する。
【0090】
図7および図8は、カメラ70によって生成された撮像画像のフレームの一例を概略的に示している。図7および図8にそれぞれ例示されたフレームIM3,IM4は、吐出ノズル31aから吐出ノズル31bの切り替え時におけるフレームを示している。フレームIM3は、開閉弁35a,35bがそれぞれ閉動作および開動作を行っている最中のフレームである。よって、フレームIM3では、吐出ノズル31aおよび吐出ノズル31bの両方からそれぞれ処理液Lq1,Lq2が吐出されている。ただし、吐出ノズル31aから吐出された処理液Lq1の幅はフレームIM2よりも狭くなっている。これは、開閉弁35aによる閉動作によって処理液Lq1の流量が小さくなるからである。フレームIM3では、開閉弁35bは未だ完全に開いていないので、吐出ノズル31bから吐出された処理液Lq2の幅も狭い。
【0091】
フレームIM4は、開閉弁35aが閉じ、開閉弁35bが開いた状態でのフレームである。よってフレームIM4においては、吐出ノズル31aから処理液Lq1が吐出されておらず、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出されている。吐出ノズル31bから吐出された処理液Lq2も連続流であって、吐出ノズル31bの先端から基板Wの上面までの領域においては、鉛直方向に沿って延びる液柱形状を有している。この処理液Lq2は基板Wの略中央に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面において広がる。そして、基板Wの周縁から飛散する。これにより、処理液Lq2が基板Wの上面の全面に作用し、処理液Lq2に基づく処理が行われる。
【0092】
ステップS5から所定時間が経過すると、ステップS6にて、制御部9は吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出を停止する。具体的な一例として、制御部9は、開閉弁35bに開信号を出力した時点からの経過時間が第3基準時間に至ったときに、開閉弁35bに閉信号を送信する。開閉弁35bはこの閉信号に基づいて閉動作を行って配管34bを閉じる。なおサックバック弁36bが設けられている場合には、サックバック弁36bに吸い込み信号を送信する。これにより、サックバック弁36bは開閉弁35aの閉動作と並行して吸い込み動作を行って、配管34b内の処理液Lq2を吸い込む。これにより、吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出が適切に停止する。なおこのときも、信号の出力から実際に処理液Lq2の吐出が終了するまでには、遅れ時間が生じる。
【0093】
制御部9はステップS6の後にスピンモータ22の回転を停止して、基板Wの回転を停止させてもよい。あるいは、制御部9はスピンモータ22の回転速度を増大させて、基板W上の処理液Lq2を回転力によって基板Wの周縁から飛散させて、基板Wを乾燥させた上で、スピンモータ22の回転を停止させてもよい。
【0094】
次にステップS7にて、制御部9はカメラ70による撮像を終了する。次にステップS8にて、制御部9はノズル基台33を制御して、吐出ノズル31a,31bを待機位置に移動させる。
【0095】
以上の動作によって、処理液Lq1,Lq2を用いた一連の処理を順次に行うことができる。
【0096】
また図4に例示するように、制御部9は処理液の吐出/停止タイミングを監視すべく、ステップS4~S6と並行してステップS10にて監視処理を行う。この監視処理は、ステップS5における吐出ノズル31bから処理液Lq2の吐出を開始する開始タイミングtbと吐出ノズル31aから処理液Lq1の吐出を停止する停止タイミングtaとのタイミング差が適切か否かを監視する処理である。
【0097】
図9は、監視処理の具体的な動作の一例を示すフローチャートである。まず制御部9は、カメラ70によって生成された撮像画像に対して画像処理を行って、吐出ノズル31bの開始タイミングtbおよび吐出ノズル31aの停止タイミングtaを特定する(ステップS11)。
【0098】
ここではまず吐出ノズル31bの開始タイミングtbについて述べる。制御部9はカメラ70からフレームが入力されると、そのフレームから吐出判定領域Rb1を切り出す。ここでいう吐出判定領域Rb1とは、撮像画像の各フレームのうち吐出ノズル31bの先端から処理液Lq2の吐出方向に延在する領域である(図5から図8も参照)。ここでは、処理液Lq2は鉛直下方へ向かって延在するので、吐出判定領域Rb1は撮像画像の縦方向に延在する長尺形状(例えば矩形状)を有する。吐出判定領域Rb1の横方向の幅は処理液Lq2の幅よりも広く設定され、吐出判定領域Rb1の縦方向の長さは吐出判定領域Rb1が処理液Lq2の着液位置を含まない程度の長さに設定される。
【0099】
さて、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出されていない場合の吐出判定領域Rb1内の画素値は、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出された場合の吐出判定領域Rb1内の画素値と相違する。図10および図11は、吐出判定領域Rb1内の横方向における輝度分布の一例を概略的に示す図である。図10には、処理液Lq2が吐出されていないときの輝度分布が例示されており、図11には、処理液Lq2が吐出されているときの輝度分布が例示されている。
【0100】
処理液Lq2が吐出されているときには、吐出判定領域Rb1内においてその処理液Lq2の液柱部分が写っている。カメラ70の撮像方向と同方向から照明光が入射する場合、処理液Lq2による液柱の表面が明るく光って見える。よって図11に例示するように、この液柱部分に相当する輝度は周囲よりも高い。具体的には、輝度分布は液柱部分において上に凸の形状を有している。つまり、輝度分布は処理液Lq2の液柱形状に起因した特徴を有している。
【0101】
一方で、処理液Lq2が吐出されていないときには、吐出判定領域Rb1内には処理液Lq2の液柱形状が写っていない。よって図10に例示するように、輝度分布は当然にその処理液Lq2の液柱形状に起因した特徴を有していない。当該輝度は基板Wの上面のパターンによる乱反射またはチャンバー10内部部品の映り込み等に応じて変動しているものの、比較的一様な分布を有している。
【0102】
ところで、カメラ70は、グレースケールの撮像画像を生成するタイプのカメラであってもよく、カラーの撮像画像を生成するタイプのカメラであってもよい。前者の場合、撮像画像の画素値は輝度値を示していると言える。以下では、グレースケールの撮像画像を生成するタイプのカメラを例に挙げて説明するものの、カラーの場合には、画素値から輝度値を算出し、その輝度値を用いればよい。
【0103】
制御部9は吐出判定領域Rb1内の画素値に基づいて、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出しているか否かを判定する。具体的には、制御部9は吐出判定領域Rb1内の画素値の統計量A2を算出する。統計量A2は、吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出状態を反映する値であり、例えば吐出判定領域Rb1内の画素値の総和(積分値)である。処理液Lq2が吐出しているときの画素値の総和は、処理液Lq2が吐出していないときの画素値の総和よりも大きくなるからである。
【0104】
統計量A2としては、画素値の総和に替えて画素値の分散を採用してもよい。図10および図11に示すように、処理液Lq2が吐出されたときの輝度分布は、処理液Lq2が吐出されていないときの輝度分布に比してばらつくからである。分散としては、例えば標準偏差を採用することができる。また、吐出判定領域Rb1内の全ての画素値に対する分散を採用することができる。
【0105】
その一方で、処理液Lq2は鉛直方向に沿う液柱形状を有しているので、吐出判定領域Rb1における縦方向の輝度分布の変動は小さい。そこで、横方向に沿って一列に並ぶ画素を切り出し、その複数の画素値の分散を採用してもよい。あるいは、縦方向に沿って一列に並ぶ画素値を、列ごとに積分して積分画素値を算出し、得られた列ごとの積分画素値の分散を採用してもよい。
【0106】
判定の例として、統計量A2についての閾値th1を設定し、統計量A2が閾値th1以上であるときには、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出していると判定でき、統計量A2が閾値th1より小さいときには、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出していないと判定できる。この閾値th1は予め実験またはシミュレーション等により設定することができる。
【0107】
図12は、図4のステップS4~S6における統計量A2の時間変化の一例を示すグラフである。図12において、横軸は、カメラ70が生成する撮像画像のフレーム番号を示しており、縦軸は統計量を示している。フレーム番号は時間の経過とともに増大するので、横軸は時間を示している、ともいえる。吐出判定領域Rb1についての統計量A2は破線で示されており、後述の吐出判定領域Ra1についての統計量A1は実線で示されている。
【0108】
図12では、初期的には統計量A2は閾値th1よりも小さい。なぜなら、処理の最初では吐出ノズル31bは処理液Lq2を吐出していないからである(図4のステップS4参照)。ステップS5における吐出ノズルの切り替えの際に、統計量A2は増大して閾値th1を超える。つまり、統計量A2は、閾値th1よりも小さい状態から閾値th1よりも大きい状態に遷移する。統計量A2が閾値th1を上回るタイミングが開始タイミングtbに相当する。よって、統計量A2の変化に基づいて開始タイミングtbを特定することができる。以下に、詳細に説明する。
【0109】
制御部9はフレームごとに統計量A2を算出し、その統計量A2が閾値th1よりも大きいか否かをフレームごとに判定する。そして、制御部9はその判定結果を記憶媒体に記憶する。制御部9は、前回のフレームにおいて統計量A2が閾値th1よりも小さく、かつ、今回のフレームにおいて統計量A2が閾値th1よりも大きいときに、統計量A2が閾値th1を上回ったと判定する。
【0110】
制御部9は前回のフレームと今回のフレームとに基づいて開始タイミングtbを特定する。つまり、制御部9は、統計量A2が閾値th1よりも小さい前回のフレームと、当該フレームの次のフレームであって、統計量A2が閾値th1よりも大きい今回のフレームとに基づいて、開始タイミングtbを特定する。例えば制御部9は前回のフレームの生成タイミングを開始タイミングtbとして特定してもよく、あるいは、今回のフレームの生成タイミングを開始タイミングtbとして特定してもよく、あるいは、前回と今回のフレームの生成タイミングの平均を開始タイミングtbとして特定してもよい。
【0111】
次に吐出ノズル31aの停止タイミングtaについて述べる。制御部9はフレームが入力されると、そのフレームから吐出判定領域Ra1を切り出す。ここでいう吐出判定領域Ra1とは、撮像画像の各フレームのうち吐出ノズル31aの先端から処理液Lq1の吐出方向に延在する領域である(図5から図8も参照)。ここでは、処理液Lq1は鉛直下方へ向かって延在するので、吐出判定領域Ra1は撮像画像の縦方向に延在する長尺形状(例えば矩形状)を有する。吐出判定領域Ra1の横方向の幅は処理液Lq1の幅よりも広く設定され、吐出判定領域Rb1の縦方向の長さは吐出判定領域Rb1が処理液Lq1の着液位置を含まない程度の長さに設定される。
【0112】
吐出判定領域Ra1内の輝度分布は吐出判定領域Rb1と同様に、処理液Lq1の吐出の有無に応じて相違する。そこで、制御部9は処理液Lq2の吐出有無判定と同様に、吐出判定領域Ra1の画素値に基づいて処理液Lq1の吐出の有無を判定する。より具体的には、制御部9は吐出判定領域Ra1内の画素値の統計量A1を算出する。統計量A1は統計量A2と同様であって、吐出ノズル31aからの処理液Lq2の吐出状態を反映する値であり、例えば吐出判定領域Ra1内の画素値の総和または分散である。
【0113】
統計量A1が大きいときには、吐出ノズル31aから処理液Lq1が吐出していると判定でき、統計量A1が小さいときには、吐出ノズル31aから処理液Lq1が吐出していないと判定できる。そこで、これらの判定に供する統計量A1についての閾値を設定する。ここでは、統計量A1についての閾値として、統計量A2についての閾値th1を採用する。なお統計量A1についての閾値として、閾値th1と異なる値を採用してもよい。
【0114】
図12に例示するように、統計量A1は初期的には閾値th1よりも大きい。なぜなら、処理の最初から処理液Lq1が吐出されるからである(図4のステップS4参照)。そして、ステップS5における吐出ノズルの切り替えの際に、統計量A1は低減して閾値th1を下回る。統計量A1が閾値th1を下回るタイミングが停止タイミングtaに相当する。よって、統計量A1の変化に基づいて停止タイミングtaを特定することができる。以下に、詳細に説明する。
【0115】
制御部9はフレームごとに統計量A1を算出し、その統計量A1が閾値th1よりも大きいか否かをフレームごとに判定する。そして、制御部9はその判定結果を記憶媒体に記憶する。制御部9は、前回のフレームにおいて統計量A1が閾値th1よりも大きく、かつ、今回のフレームにおいて統計量A1が閾値th1よりも小さいときに、統計量A1が閾値th1を下回ったと判定する。
【0116】
そして、制御部9は前回のフレームと今回のフレームとに基づいて停止タイミングtaを特定する。つまり、制御部9は、統計量A1が閾値th1よりも大きい前回のフレームと、当該フレームの次のフレームであって、統計量A2が閾値th1よりも小さい今回のフレームとに基づいて、停止タイミングtaを特定する。例えば制御部9は前回のフレームの生成タイミングを停止タイミングtaとして特定してもよく、あるいは、今回のフレームの生成タイミングを停止タイミングtaとして特定してもよく、あるいは、前回と今回のフレームの生成タイミングの平均を停止タイミングtaとして特定してもよい。
【0117】
次にステップS12にて、制御部9は開始タイミングtbと停止タイミングtaとのタイミング差を算出する。具体的には、制御部9は停止タイミングtaから開始タイミングtbを減算してタイミング差を算出する。
【0118】
次にステップS13にて、制御部9はこのタイミング差が所定の範囲外か否かを判定する。所定の範囲は例えば予め設定され、記憶媒体に記憶されていてもよい。所定の範囲の下限値および上限値は例えば正の値を有している。
【0119】
タイミング差が所定の範囲外であるとき、ステップS14にて、制御部9はエラーの報知処理を実行する。例えば制御部9はユーザインターフェース90のディスプレイにエラーを表示させる。あるいは、ブザーまたはスピーカなどの音出力部が設けられているときには、制御部9は音出力部にエラーを出力させてもよい。ユーザインターフェース90のディスプレイおよび音出力部は報知部の一例である。要するに、制御部9はこの報知部にエラーを報知させる。このような報知により、作業者はタイミング差が所定範囲外となっていることを認識できる。
【0120】
次にステップS15にて、制御部9はタイミング差が所定の範囲内となるように、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの少なくともいずれか一方を調整する。
【0121】
タイミング差が所定の範囲の上限値よりも大きいときには、タイミング差を小さくして所定の範囲内に収めるべく、制御部9は例えば吐出ノズル31bの開始タイミングtbをより遅いタイミングに更新する。より具体的な一例として、制御部9は、開閉弁35bを開くタイミングを規定する第2基準時間を、タイミング差が所定の範囲内となるように、より長い値に更新し、更新後の第2基準時間を記憶媒体に記憶する。これによれば、次回以降のステップS5の切り替えの際に、開閉弁35bへと開信号を出力するタイミングが遅れるので、開始タイミングtbが遅れる。よって、次回以後のステップS5(次の基板に対するステップS5)におけるタイミング差を小さくして所定の範囲内とすることができる。
【0122】
これによれば、処理液Lq1の吐出の停止タイミングtaは変更しないので、処理液Lq1についての処理期間の長さを変更されない。よって処理液Lq1による処理を適切に行うことができる。
【0123】
あるいは、制御部9は吐出ノズル31aの停止タイミングtaをより早いタイミングに更新してもよい。より具体的な一例として、制御部9は、開閉弁35aを閉じるタイミングを規定する第1基準時間を、タイミング差が所定の範囲内となるように、より短い値に更新し、更新後の第1基準時間を記憶媒体に記憶する。これによれば、次回以降のステップS5の切り替えの際に、開閉弁35aへと閉信号を出力するタイミングが早まるので、停止タイミングtaが早まる。よって、次回以後のステップS5におけるタイミング差を小さくして所定の範囲内とすることができる。
【0124】
また、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの両方を調整してタイミング差を小さくしてもよい。
【0125】
さて、タイミング差が所定の範囲の上限値よりも大きい場合には、処理液Lq1,Lq2の両方が吐出されるオーバーラップ期間が長い。つまり、基板Wに吐出される処理液の総量が一時的に増大する。これにより、例えば処理液Lq2が基板W上の処理液Lq1と衝突して処理液の一部が基板W上で跳ねる液はねが生じ得る。第1実施の形態では、タイミング差が所定の範囲の上限値よりも大きいときには、次回以降のステップS5におけるタイミング差を所定の範囲内に収めることができる。よって、所定範囲の上限値として液はねが生じないような値を採用することにより、液はねの発生をほぼ回避することができる。
【0126】
一方で、タイミング差が所定の範囲の下限値よりも小さいときには、タイミング差を増大させて所定の範囲内に収めるべく、制御部9は例えば吐出ノズル31bの開始タイミングtbをより早いタイミングに更新する。より具体的な一例として、制御部9は、開閉弁35bを開くタイミングを規定する第2基準時間を、タイミング差が所定の範囲内にとなるように、より短い値に更新し、更新後の第2基準時間を記憶媒体に記憶する。これによって、次回以降のステップS5におけるタイミング差を増大させて所定の範囲内とすることができる。
【0127】
これによれば、処理液Lq1の吐出の停止タイミングtaは変更しないので、処理液Lq1についての処理期間の長さを変更されない。よって処理液Lq1による処理を適切に行うことができる。
【0128】
あるいは、制御部9は、吐出ノズル31aの停止タイミングtaをより遅いタイミングに更新してもよい。より具体的な一例として、制御部9は、開閉弁35aを閉じるタイミングを規定する第1基準時間を、タイミング差が所定の範囲内となるように、より長い値に更新し、更新後の第1基準時間を記憶媒体に記憶する。これによっても、次回以降のステップS5におけるタイミング差を増大させて所定の範囲内とすることができる。
【0129】
また、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの両方を調整してタイミング差を大きくしてもよい。
【0130】
さて、タイミング差が所定の範囲の下限値よりも小さい場合には、処理液Lq1,Lq2の両方が吐出されるオーバーラップ期間が短くなる。つまり、処理液Lq1の吐出がほぼ停止した状態で処理液Lq2の吐出が開始される。基板Wは回転しているので、その上面に供給される処理液Lq1は遠心力を受けて基板Wの周縁側に移動する。よって、処理液Lq2が吐出されていない状態で処理液Lq1の吐出量が少なくなれば、基板Wの上面の処理液Lq1が減少して基板Wが部分的に乾燥し得る(液枯れ)。特に、処理液Lq1の着液位置近傍において基板Wの上面が部分的に乾燥し得る。そのような乾燥は基板Wの上面に不具合(例えばパーティクルの付着等)を招き得るので好ましくない。第1実施の形態では、タイミング差が所定の範囲の下限値よりも小さいときにも、次回以降のステップS5におけるタイミング差を所定の範囲内に収めることができる。よって、所定範囲の下限値として、基板Wの部分的な乾燥が発生しないような値に設定することにより、基板Wの部分的な乾燥の発生をほぼ回避できる。
【0131】
以上のように第1の実施の形態によれば、タイミング差が所定の範囲外であるときに、所定の範囲内に調整する。よって、タイミング差が所定の範囲外となることによる不具合(液はねおよび液枯れ)の発生をほぼ回避できる。
【0132】
また第1の実施の形態によれば、カメラ70からの撮像画像に対する画像処理により、吐出ノズル31bの開始タイミングtbおよび吐出ノズル31aの停止タイミングtaを特定している。つまり、実際の処理液Lq1,Lq2の吐出状態に基づいて開始タイミングtbおよび停止タイミングtaを特定できるので、その特定精度を向上することができる。そして、高い精度で特定されたタイミングに基づいてタイミング差を算出するので、タイミング差の算出精度も高い。したがって、より高い精度でタイミング差を所定の範囲内に収めることができる。
【0133】
また吐出判定領域Ra1,Rb1の画素値を用いているので、撮像画像の全体に対して画像処理を行う場合に比して処理を軽くできる。
【0134】
また統計量と閾値th1との大小の比較に基づいてタイミング差を求めることができるので、処理が簡易である。
【0135】
なお上述の例では、所定範囲の上限値を液はねが生じない程度の値に設定し、下限値を液枯れが生じない程度の値に設定した。しかるに、他の要因等により、上限値をより小さい値に設定してもよく、下限値をより大きい値に設定しても構わない。例えばこのタイミング差が基板Wに対する処理結果の良否に影響を及ぼす場合がある。この場合、処理結果が良好となるようにタイミング差の所定範囲の上限値および下限値を実験またはシミュレーション等により設定してもよい。
【0136】
複数の処理ユニット1の製造バラツキ等により、吐出制御についての遅れ時間は処理ユニット1ごとに相違し得る。しかるに、制御部9が処理ユニット1ごとに上述の動作を行うことにより、処理ユニット1ごとにタイミング差を所定の範囲内に調整することができる。従来では、処理ユニット1ごとに開始タイミングtbおよび停止タイミングtaを調整すべく、基板Wのレシピ情報を処理ユニット1ごとに変更していた。これにより、レシピ情報の管理が煩雑となっていた。第1の実施の形態では、共通のレシピ情報を採用しても、処理ユニット1ごとに最適なタイミング差で処理を行うことができ、安定した処理性能を実現することができる。
【0137】
また上述の例では、吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出を開始した後に、吐出ノズル31aからの処理液Lq1の吐出を停止した。図13は、統計量の時間変化の他の一例を示すグラフである。図13の例では、吐出ノズル31aの停止タイミングtaの後に吐出ノズル31bの開始タイミングtbが現れており、そのタイミング差は比較的大きい。このような場合にも、処理液Lq2の吐出前に基板Wの上面の処理液Lq1が減少するので、基板Wが部分的に乾燥し得る。
【0138】
この場合、ステップS12において停止タイミングtaから開始タイミングtbを減算して得られるタイミング差は負の値を有する。よって、このタイミング差は所定の範囲の下限値よりも小さく、ステップS13にて、制御部9はタイミング差が所定の範囲外であると判定する。よって、ステップS15にて、制御部9はタイミング差が所定の範囲内となるように、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの少なくともいずれか一方を調整する。したがって、次回以降のステップS5においてタイミング差を所定の範囲内とすることができる。
【0139】
また上述の説明は、基板Wに対する処理時の動作と把握することもできるし、基板処理装置100の設置の際などに行われる初期設定時の動作と把握することもできる。即ち初期設定時において、仮のタイミングを設定して基板Wに対して実際に処理を行えば、その仮のタイミングが不適切であるときに、適切なタイミングが設定される。
【0140】
<ユーザインターフェース>
上述の例では、タイミング差が所定の範囲外であるか否かを制御部9が判定した。しかるに、作業者が判定してもよい。以下、具体的に説明する。
【0141】
制御部9はユーザインターフェース90のディスプレイに統計量A1,A2の時間変化を示すグラフを表示させる。制御部9は閾値th1も当該グラフに表示することが望ましい。具体的には、制御部9は、図12または図13に示すグラフをディスプレイに表示させる。これにより、作業者は、統計量A1,A2の時間変化を視認することができ、タイミング差の大小を判定することができる。
【0142】
ユーザインターフェース90の入力部は、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaを調整するための入力を調整するための入力を受け付ける。例えば作業者は、タイミング差が所定の範囲の上限値よりも大きいと判定すると、開始タイミングtbを遅らせるための入力および停止タイミングtaを早めるための入力の少なくともいずれか一方を入力部に対して行う。入力部はその入力情報を制御部9に出力する。制御部9は入力情報に応じて開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの少なくともいずれか一方を調整する。タイミング差が所定範囲の下限値よりも小さいと作業者が判定したときも同様である。
【0143】
以上のように、作業者は統計量A1,A2の時間変化を視認し、その時間変化に基づいてタイミング差を調整することができる。
【0144】
<機械学習>
上述の例では、制御部9は画素値の統計量に基づいて開始タイミングtbと停止タイミングtaとのタイミング差を求めたものの、必ずしもこれに限らない。制御部9は監視処理において機械学習により開始タイミングtbと停止タイミングtaとのタイミング差を求めてもよい。
【0145】
図14は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す図である。制御部9は分類器91および機械学習部92を備えている。分類器91には、カメラ70からの撮像画像の各フレームが順次に入力される。分類器91は、入力された各フレームを、吐出ノズル31a,31bの吐出/停止に関する以下の4つのカテゴリC1~C4に分類する。カテゴリはクラスとも呼ばれ得る。
【0146】
4つのカテゴリC1~C4は、図5から図8にそれぞれ示された吐出状態を示すカテゴリである。より具体的には、カテゴリC1は、吐出ノズル31a,31bの両方が処理液を吐出していない状態(図5)を示すカテゴリであり、カテゴリC2は、吐出ノズル31aのみが処理液を吐出している状態(図6)を示すカテゴリであり、カテゴリC3は、吐出ノズル31a,31bの両方が処理液を吐出している状態(図7)を示すカテゴリであり、カテゴリC4は、吐出ノズル31bのみが処理液を吐出している状態(図8)を示すカテゴリである。
【0147】
この分類器91は、複数の教師データを用いて機械学習部92によって生成される。つまり、この分類器91は機械学習済みの分類器であるといえる。機械学習部92は、機械学習のアルゴリズムとして、例えば、近傍法、サポートベクターマシン、ランダムフォレストまたはニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)などを用いる。
【0148】
教師データは学習データ、および、その学習データがどのカテゴリに分類されるのかを示すラベルを含んでいる。学習データは、カメラ70によって撮像された撮像画像のフレームであり、予め生成されている。各学習データには、正しいカテゴリがラベルとして付与される。この付与は、作業者の例えばユーザインターフェース90に対する操作によって行うことができる。機械学習部92はこれらの教師データに基づいて機械学習を行って分類器91を生成する。
【0149】
一例として、近傍法によりフレームを分類する分類器91について説明する。分類器91は、特徴ベクトル抽出部911と、判定部912と、判定データベース913が記憶された記憶媒体とを備えている。特徴ベクトル抽出部911には、カメラ70からの撮像画像の各フレームが順次に入力される。特徴ベクトル抽出部911は所定のアルゴリズムにしたがってフレームの特徴ベクトルを抽出する。この特徴ベクトルは吐出ノズル31a,31bの吐出状態に応じた特徴量を示しやすいベクトルである。当該アルゴリズムとしては、公知のアルゴリズムを採用できる。特徴ベクトル抽出部911はその特徴ベクトルを判定部912に出力する。
【0150】
判定データベース913には、機械学習部92によって複数の教師データから生成された複数の特徴ベクトル(以下、基準ベクトルと呼ぶ)が記憶されており、その基準ベクトルは各カテゴリC1~C4に分類されている。具体的には、機械学習部92は複数の教師データに対して特徴ベクトル抽出部911と同じアルゴリズムを適用して複数の基準ベクトルを生成する。そして機械学習部92は、当該基準ベクトルに対して教師データのラベル(正しいカテゴリ)を付与する。
【0151】
判定部912は特徴ベクトル抽出部911から入力された特徴ベクトルと、判定データベース913に記憶された複数の基準ベクトルとに基づいてフレームを分類する。例えば判定部912は特徴ベクトルが最も近い基準ベクトルを特定し、特定した基準ベクトルのカテゴリにフレームを分類してもよい(最近傍法)。これにより、判定部912は、分類器91(特徴ベクトル抽出部911)に入力されたフレームをカテゴリC1~C4のうち一つに分類することができる。
【0152】
制御部9は分類器91によって各フレームを分類し、その分類結果に基づいて、吐出ノズル31bの開始タイミングtbと吐出ノズル31aの停止タイミングtaとのタイミング差を求める。
【0153】
図15は、監視処理における制御部9の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS40にて、制御部9は、画像処理として機械学習によって、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaを特定する。
【0154】
図16は、撮像画像の複数のフレームFの一例を概略的に示す図である。図16の例では、時系列に沿ってフレームFが並んで配置されている。ここでフレームの符号を変更しているのは、説明の便宜を図るためであり、フレームFは上述したフレームIM1~IM4と同種のものである。
【0155】
図16に例示するように、基板処理装置100の動作初期には、吐出ノズル31a,31bのいずれも処理液を吐出していない。よって、図16に例示するフレームF[1]~F[k]は分類器91によってカテゴリC1に分類される。
【0156】
そして吐出ノズル31aから処理液Lq1が吐出される(ステップS4)と、図16に例示するように、続くフレームF[k+1]~F[m]は分類器91によってカテゴリC2に分類される。
【0157】
次に処理液を吐出するノズルを吐出ノズル31aから吐出ノズル31bへと切り替える(ステップS5)。つまり、吐出ノズル31bから処理液Lq2が吐出される。よって、図16に例示するように、続くフレームF[m+1]~F[n]は分類器91によってカテゴリC3に分類される。次に吐出ノズル31aからの処理液Lq1の吐出が停止する。よって、図16に例示するように、続くフレームF[n+1]以降のフレームであって、吐出ノズル31bからの処理液Lq2の吐出が終了するまでのフレームは、分類器91によってカテゴリC4に分類される。
【0158】
制御部9は各フレームの分類結果に基づいて以下に詳述するように、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaを特定する。
【0159】
即ち、制御部9は、吐出ノズル31bについて停止(カテゴリC2)と分類されたm番目のフレームF[m]と、フレームF[m]の次の(m+1)番目のフレームであって、吐出ノズル31bについて吐出(カテゴリC3)と分類されたフレームF[m+1]とに基づいて、吐出ノズル31bの開始タイミングtbを特定する。例えば制御部9は、フレームF[m]の生成タイミングを開始タイミングtbとして特定してもよく、フレームF[m+1]の生成タイミングを開始タイミングtbとして特定してもよく、あるいは、フレームF[m],F[m+1]の生成タイミングの平均を開始タイミングtbとして特定してもよい。
【0160】
同様に、制御部9は、吐出ノズル31aについて吐出(カテゴリC3)と分類されたn番目のフレームF[n]と、フレームF[n]の次の(n+1)番目のフレームであって、吐出ノズル31aについて停止(カテゴリC4)と分類されたフレームF[n+1]とに基づいて、吐出ノズル31aの停止タイミングtaを特定する。例えば制御部9は、フレームF[n]の生成タイミングを停止タイミングtaとして特定してもよく、フレームF[n+1]の生成タイミングを停止タイミングtaとして特定してもよく、あるいは、フレームF[n],F[n+1]の生成タイミングの平均を停止タイミングtaとして特定してもよい。
【0161】
以上のように、制御部9によれば、機械学習によって吐出ノズル31a,31bの吐出状態を判定(分類)することができる。よって、高い精度で各フレームを分類できる。ひいては、高い精度で停止タイミングtaと開始タイミングtbとのタイミング差を求めることができる。
【0162】
停止タイミングtaおよび開始タイミングtbの特定した後のステップS41~S44はそれぞれ第1の実施の形態のステップS12~S15と同様である。
【0163】
なお吐出ノズル31aの吐出の停止の前に吐出ノズル31bの吐出が開始する場合、処理液Lq1,Lq2の両方が吐出されるオーバーラップ期間がタイミング差に相当する。よってこの場合、制御部9は、カテゴリC3に分類されたフレーム数に基づいてタイミング差を算出してもよい。例えば制御部9はフレーム間の時間とフレーム数とを乗算してタイミング差を算出してもよい。
【0164】
<分類器への入力>
上述の例では、分類器91への入力データとして、撮像画像の各フレームFの全領域を採用しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば制御部9は、フレームFのうち吐出判定領域Ra1,Rb1をそれぞれ示す画像を切り出して、その画像を分類器91に入力してもよい。この場合、機械学習部92に入力される学習データとしても、吐出判定領域Ra1,Rb1をそれぞれ示す画像を採用する。
【0165】
これによれば、分類器91は、吐出状態とは関連性の低い領域の影響を除去して分類を行うことができるので、その分類精度を向上することができる。ひいては、開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの特定精度を向上することができる。また吐出判定領域Ra1,Rb1を用いれば、撮像画像のフレームの全体に対して分類器91による処理を行う場合に比して処理を軽くできる。
【0166】
なお、分類器91は吐出判定領域Ra1,Rb2の画像ごとに吐出状態を分類してもよい。つまり、分類器91は吐出判定領域Ra1の画像に基づいて、その画像を次の2つのカテゴリCa1,Ca2に分類してもよい。即ち、カテゴリCa1は吐出ノズル31aが処理液Lq1を吐出していない状態を示し、カテゴリCa2は吐出ノズル31aが処理液Lq1を吐出している状態を示している。同様に、分類器91は吐出判定領域Rb2の画像に基づいて、その画像を次の2つのカテゴリCb1,Cb2に分類してもよい。即ち、カテゴリCa2は吐出ノズル31aが処理液Lq2を吐出している状態を示している。カテゴリCb1は吐出ノズル31bが処理液Lq2を吐出していない状態を示し、カテゴリCb2は吐出ノズル31bが処理液Lq2を吐出している状態を示している。
【0167】
制御部9は、カテゴリCb1に分類された画像を含むフレームと、当該画像の次の画像であって、カテゴリCb2に分類された画像を含むフレームとに基づいて、吐出ノズル31bの開始タイミングtbを特定することができる。吐出ノズル31aの停止タイミングtaも同様である。
【0168】
また、分類器91への入力データとしては、例えば吐出判定領域Ra1,Rb1の各々において横一列に並ぶ画素の画素値群を採用してもよい。図10および図11に示すように、横方向に並ぶ画素の画素値群は処理液の吐出の有無に応じて変化するからである。あるいは、分類器91の入力データとしては、吐出判定領域Ra1,Rb1の各々において、縦方向に一列に並ぶ画素値の総和である積分値を列ごとに含む積分値群を採用してもよい。
【0169】
<複数の分類器>
図17は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部9は複数の分類器91を備えている点を除いて図14と同様である。これら複数の分類器91も機械学習部92によって生成される。
【0170】
例えば機械学習部92は、処理液Lq1,Lq2の種類ごとに複数の分類器91を生成する。図17の例では、複数の分類器91として3つの分類器91A~91Cが示されている。分類器91A~91Cは、異なる教師データを用いて生成された分類器である。
【0171】
例えばある種類の処理液Lq1,Lq2を用いた処理を行った場合の撮像画像の各フレームを学習データとして採用する。機械学習部92は、その学習データを含む教師データに基づいて分類器91Aを生成する。これにより、その処理液Lq1,Lq2の種類の組(以下、第1組)用の分類器91Aを生成することができる。同様に、機械学習部92は、第1組とは異なる第2組の処理液Lq1,Lq2を用いた教師データに基づいて、第2組用の分類器91Bを生成し、第1組および第2組のいずれとも種類が異なる第3組の処理液Lq1,Lq2を用いた教師データに基づいて、第3組用の分類器91Cを生成する。
【0172】
図17の例では、特徴ベクトル抽出部911および判定部912は分類器91A~91Cにおいて共通に設けられており、その分類器91A~91Cは判定データベース913によって区別される。要するに、機械学習部92はそれぞれ第1組から第3組用の判定データベース913A~913Cを生成することにより、分類器91A~91Cを生成する。判定データベース913Aには、第1組の処理液Lq1,Lq2を用いたときの基準ベクトルがその正しいカテゴリとともに記録されている。判定データベース913B,913Cも同様である。
【0173】
判定部912には、ユーザインターフェース90が接続されている。作業者は、処理液Lq1,Lq2の種類をユーザインターフェース90に入力する。図18は、ユーザインターフェース90のディスプレイに表示される入力画面90aの一例を示す図である。入力画面90aには、処理液Lq1,Lq2に関する表901が表示されている。この表901では、処理液の種類、流量、基板Wの回転速度および処理時間が示されている。表901の各種情報は作業者による入力部への入力によって、変更することができる。例えば表901の該当部分をクリック(またはタッチ)することにより、該当部分の情報を入力することができる。例えば当該クリックにより、該当部分においてプルダウン形式で複数の情報が表示され、作業者がそのうちの一つを選択することで情報を入力することができる。
【0174】
図18に例示する入力画面90aでは、基板Wの種類を選択するためのソフトキー902も表示されている。作業者はソフトキー902をクリックまたはタッチすることにより、ソフトキー902を選択することができる。基板Wの種類としては、例えばシリコン(Si)基板およびシリコンカーバイド(SiC)基板などがある。その他に、基板Wの上面への膜の形成の有無、または、基板Wの上面に形成された膜種(例えば、SiO、SiN、TiN等)によって、判定データベースを選択することができてもよい。
【0175】
また図18に例示する入力画面90aでは、カメラ70によって生成された撮像画像が表示される領域903が示されている。これにより、作業者はカメラ70の撮像画像を視認することができる。
【0176】
ユーザインターフェース90は、作業者によって入力された入力情報(処理液Lq1,Lq2の種類等)を判定部912に出力する。
【0177】
特徴ベクトル抽出部911は、入力されたフレームの特徴ベクトルを抽出し、その特徴ベクトルを判定部912に出力する。判定部912は、処理対象となる処理液Lq1,Lq2の種類に応じた判定データベース913を選択する。判定部912は、入力された特徴ベクトルと、選択した判定データベース913の基準ベクトルとを用いて、フレームを分類する。
【0178】
これによれば、処理液Lq1,Lq2の種類に応じた分類器91を用いてフレームを分類するので、フレームの分類精度を向上することができる。ひいては、タイミング差の算出精度を向上することができる。
【0179】
なお上述の例では、処理液Lq1,Lq2の種類ごとに分類器91を生成したものの、例えば基板Wの種類ごと、または、処理液Lq1,Lq2の流量ごとに分類器91を生成してもよい。また例えばカメラ70の撮像画像における吐出ノズルの位置が相違し得る。例えば撮像画像において、処理液供給部30の吐出ノズル31の位置関係と、処理液供給部65の吐出ノズル66の位置関係は相違し得る。この場合、吐出ノズルの位置ごとに分類器91を生成してもよい。またこれらは組み合わせても構わない。例えば処理液Lq1,Lq2の組の種類と基板Wの種類とに応じた分類器91を生成してもよい。例えば処理液Lq1,Lq2の組の種類としてN種類があり、基板Wの種類としてM種類がある場合には、その組み合わせに応じた(N×M)個の分類器91を生成してもよい。
【0180】
ユーザインターフェース90は、分類器91の選択に必要な情報(処理液Lq1,Lq2の種類、基板Wの種類、処理液Lq1,Lq2の流量および吐出ノズルの位置の少なくともいずれか一つ)の入力を受け付け、その入力情報を制御部9へと出力すればよい。
【0181】
また分類器91の選択に必要な情報は必ずしも作業者によって入力される必要はない。例えば基板処理装置100の上流側から基板Wについての基板情報が制御部9に送信され、その基板情報にこれらの情報が含まれている場合がある。この場合、制御部9は基板情報内の当該情報に基づいて分類器91を選択すればよい。
【0182】
<サーバ>
上述の例では、基板処理装置100に設けられた制御部9が機械学習によって分類器91を生成し、その分類器91によりフレームを分類した。しかるに、この制御部9による機械学習機能の少なくとも一部がサーバに設けられていてもよい。
【0183】
図19は、基板処理システムの電気的な構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。基板処理システムは基板処理装置100およびサーバ200を備える。図19に例示するように、基板処理装置100の制御部9は通信部93を介してサーバ200と通信する。通信部93は通信インターフェースであって、有線または無線によりサーバ200と通信することができる。
【0184】
図19の例では、サーバ200は、機械学習部210と、判定データベース220が記憶された記憶媒体とを備えている。機械学習部210は機械学習部92と同様の機能を有しており、教師データに基づいて判定データベース220を生成することができる。判定データベース220は判定データベース913と同様である。
【0185】
判定部912は、判定データベース220を要求する要求信号を、通信部93を介してサーバ200へと送信する。サーバ200は当該要求信号に応じて、判定データベース220を通信部93へと送信する。これにより、判定部912はサーバ200に格納された判定データベース220を利用することができる。なおこの場合、機械学習部92および判定データベース913は必ずしも必要ではない。
【0186】
また上述の例では、判定部912は基板処理装置100の制御部9に設けられているものの、判定部912がサーバ200に設けられてもよい。この場合、特徴ベクトル抽出部911は特徴ベクトルを、通信部93を介してサーバ200へと送信する。サーバ200は、受信した特徴ベクトルと、判定データベース220とに基づいて、フレームを分類し、その分類結果を通信部93へと送信する。通信部93はこの分類結果を制御部9へと出力する。
【0187】
また上述の例では、特徴ベクトル抽出部911は基板処理装置100の制御部9に設けられているものの、特徴ベクトル抽出部911がサーバ200に設けられていてもよい。つまり、分類器91自体がサーバ200に設けられてもよい。この場合、制御部9は、カメラ70によって生成された撮像画像のフレームを、通信部93を介してサーバ200に送信する。サーバ200はそのフレームから特徴ベクトルを抽出し、抽出した特徴ベクトルと、判定データベース220とを用いて当該フレームを分類し、その分類結果を通信部93へと送信する。通信部93はこの分類結果を制御部9へと出力する。
【0188】
上述した態様によれば、サーバ200に判定処理機能が設けられているので、複数の基板処理ユニットに対して共通の判定を行うことができる。
【0189】
なおサーバ200の機械学習部210は、処理液Lq1,Lq2の種類、基板Wの種類、処理液Lq1,Lq2の流量および吐出ノズル31a,31bの位置の少なくとも一つごとに、判定データベース220を生成してもよい。この場合、制御部9は、使用すべき判定データベース220を指定する情報を、通信部93を介してサーバ200へと送信すればよい。
【0190】
要するに、機械学習済みの分類器を用いて撮像画像に含まれる各フレームを各カテゴリに分類し、その分類結果に基づいてタイミング差を求める機能を、基板処理装置100およびサーバ200の全体で発揮すればよい。
【0191】
<ディープラーニング>
機械学習として、ディープラーニングを採用してもよい。図20は、ニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)NN1のモデルが示されている。このモデルには、入力層と中間層(隠れ層)と出力層とが設けられている。各層は複数のノード(人工ニューロン)を有しており、各ノードにはその前段の層のノードの出力データがそれぞれ重み付けられて入力される。つまり、各ノードには、前段のノードの出力に対してそれぞれの重み付け係数を乗算して得られる乗算結果がそれぞれ入力される。各ノードは例えば公知の関数の結果を出力する。中間層の層数は1に限らず、任意に設定できる。
【0192】
機械学習部92は教師データに基づいて学習を行うことにより、各ノード間の重み付けで用いられる重み付け係数を決定する。この重み付け係数は判定データベースとして記憶される。これにより、機械学習部92は実質的に分類器91を生成できる。
【0193】
入力層には、カメラ70によって生成されたフレームFが入力される。分類器91は判定データベースに記憶された各重み付け係数を用いて、フレームFに基づいて入力層から中間層を経て出力層の演算処理を行うことにより、フレームFが各カテゴリC1~C4に該当する確率を算出する。そして分類器91は最も確率が高いカテゴリにフレームを分類する。
【0194】
以上のように、ニューラルネットワークによってフレームを分類することができる。ニューラルネットワークでは、分類器91が特徴量を自動で生成するので、設計者が特徴ベクトルを決定する必要がない。
【0195】
なおニューラルネットワークにおいても複数の分類器91が生成されてもよい。例えば機械学習部92は処理液Lq1,Lq2の種類ごとの教師データを用いて機械学習を行って、それぞれの種類ごとの判定データベース(重み付け係数)を生成してもよい。
【0196】
分類器91は、ユーザインターフェース90からの入力情報に応じて処理液Lq1,Lq2の種類を特定し、その種類に応じた判定データベースを用いてフレームFを分類する。これにより、分類精度を向上することができる。
【0197】
もちろん、処理液Lq1,Lq2の種類に限らず、基板Wの種類、処理液Lq1,Lq2の流量および吐出ノズル31a,31bの位置の少なくとも一つごとに、分類器91を生成してもよい。
【0198】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる基板処理装置100の構成の一例は第1の実施の形態と同様であり、その動作の一例は図4に示すとおりである。ただし、監視処理の具体例が第1の実施の形態と相違する。第2の実施の形態では、制御部9は、カメラ70によって撮像された撮像画像に対して画像処理を行うことで、吐出ノズル31aから吐出ノズル31bへの切り替えの際に生じる液はねを検知する。つまり監視処理において、液はねが生じているかどうかの監視を行う。
【0199】
図21は、カメラ70によって生成された撮像画像のフレームの一例を示す図である。図21に例示するフレームIM5においては、吐出ノズル31a,31bからそれぞれ処理液Lq1,Lq2が吐出されており、液はねが生じている。この液はねは吐出ノズル31a,31bの着液付近の近傍に生じる。
【0200】
液はねが生じる領域は予め分かるので、その液はねを検出すべく、撮像画像において液はね判定領域R2を設定することができる。具体的には、液はね判定領域R2は撮像画像の各フレームにおいて吐出ノズル31a,31bの近傍に設定される。液はね判定領域R2は、基板Wが写る領域内の領域であって、吐出判定領域Ra1,Rb1とは重複しない領域に設定される。図21の例では、液はね判定領域R2は判定領域R21,R22を有しており、これらは吐出ノズル31a,31bの近傍に設定される。より具体的には、判定領域R21,R22は撮像画像の横方向において吐出ノズル31a,31bの一組に対して互いに反対側に位置している。図21の例では、判定領域R21,R22は矩形状の形状を有している。
【0201】
判定領域R21,R22内において液はねが写っていると、その液はねにおける照明光の反射によって判定領域R21,R22内の輝度値の平均値は高くなり、またその輝度分布が大きくばらつくことになる。逆に言えば、判定領域R21,R22内の画素値の総和または分散(例えば標準偏差)に基づいて液はねの発生の有無を判定することができる。そこで、制御部9は判定領域R21の画素値の総和または分散(例えば標準偏差)である統計量B1、および、判定領域R22の画素値の総和または分散(例えば標準偏差)である統計量B2を算出する。この判定領域R21,R22内の画素値の統計量B1,B2が大きくなると、液はねが生じていると判定できる。
【0202】
図22は、統計量B1,B2の時間変化の一例を示すグラフである。図22の例は、ステップS5において液はねが生じたときの統計量B1,B2を示している。図22に例示するように、液はねが生じたときには、統計量B1,B2が増大して閾値th2を超える。逆に言えば、統計量B1および統計量B2の少なくとも一方が閾値th2よりも大きいときには、液はねが生じていると判定できる。このような閾値th2は例えば実験またはシミュレーション等により予め設定することができる。
【0203】
<制御部9の動作>
制御部9の動作の一例は図4のフローチャートと同様である。ただし、ステップS10における監視処理の具体的な内容が相違する。第2の実施の形態では、この監視処理は、カメラ70によって生成された撮像画像に基づいて液はねが生じているか否かを監視する処理である。
【0204】
図23は、第2の実施の形態にかかる監視処理の動作の一例を示すフローチャートである。まずステップS30にて、制御部9は値nnを1に初期化する。次にステップS31にて、制御部9はnn番目のフレームF[nn]に基づいて液はねが生じているか否かを判定する。具体的には、制御部9はフレームF[nn]の判定領域R21,R22内の画素値の統計量B1,B2を算出する。
【0205】
次に制御部9は統計量B1,B2の少なくともいずれか一方が閾値th2以上であるか否かを判定する。統計量B1,B2の両方が閾値th2未満であるときには、液はねが生じていないと判定し、ステップS32にて、制御部9は値nnに1を加算して更新して、更新後の値nnについてステップS31を実行する。つまり、統計量B1,B2の両方が閾値th2未満であるときには、液はねが生じていないと判定して、次のフレームについてのステップS31の判定を行うのである。
【0206】
一方で、統計量B1,B2の少なくともいずれか一方が閾値th2以上であるときには、ステップS33にて、制御部9はエラーの報知処理を行う。例えば制御部9はユーザインターフェース90のディスプレイにエラーを表示させる。あるいは、ブザーまたはスピーカなどの音出力部が設けられているときには、制御部9は音出力部にエラーを出力させてもよい。このような報知により、作業者は液はねが生じたことを認識できる。
【0207】
次にステップS34にて、制御部9は開始タイミングtbおよび停止タイミングtaのいずれか一方を調整する。つまり、統計量B1,B2の少なくともいずれか一方が閾値th2以上であるときには、液はねを検知したと判定して、制御部9はタイミング差を調整する。具体的には、タイミング差が小さくなるように開始タイミングtbおよび停止タイミングtaの少なくともいずれか一方を調整する。
【0208】
タイミング差の低減量は予め定められていてもよい。つまり、ステップS34において制御部9はタイミング差を予め決められた低減量だけ低減してもよい。そして、制御部9は再び図4の動作を実行する。このとき、ステップS31において再び液はねを検知すると、ステップS34にてタイミング差が当該低減量だけ再び低減される。この一連の動作を繰り返すことにより、タイミング差は液はねが生じない値に調整される。
【0209】
以上のように、第2の実施の形態では、液はねが生じたことを検知したときに、液はねが生じないようにタイミング差を調整する。これにより、以後の処理において液はねの発生を回避または抑制できる。
【0210】
<機械学習>
上述の例では、制御部9は画素値の統計量B1,B2に基づいて液はねを検知したものの、必ずしもこれに限らない。制御部9は機械学習により、液はねを検知してもよい。
【0211】
制御部9の内部構成の一例は図14と同様である。ただし第2の実施の形態において、分類器91は、カメラ70から入力された各フレームを次の2つのカテゴリC11,C12に分類する。即ち、カテゴリC11は、液はねが生じていない状態を示すカテゴリであり、カテゴリC12は、液はねが生じている状態を示すカテゴリである。
【0212】
学習データとしてはカメラ70によって撮像された撮像画像のフレームを採用し、学習データに対して正しいカテゴリをラベルとして付与することで、教師データを生成する。機械学習部92は教師データに基づいて判定データベース913を生成する。
【0213】
この監視処理における制御部9の動作の一例を示すフローチャートは、図23と同様である。ただし、ステップS31において、制御部9は、フレームF[nn]に対する分類器91の分類結果に基づいて液はねの検知の有無を判断する。具体的には、制御部9はフレームF[nn]がカテゴリC11に分類されているときには、液はねが検知されていないと判断し、フレームF「nn」がカテゴリC12に分類されているときに、液はねが検知されたと判断する。
【0214】
以上のように、機械学習によって生成された分類器91によって、フレームF[nn]をカテゴリC11またはカテゴリC12に分類する。よって、高い分類精度でフレームを分類することができる。ひいては、高い検知精度で液はねを検知できる。
【0215】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に複数の分類器91を生成してもよく、また、分類器91および機械学習部92の一部または全部をサーバ200に設けてもよい。
【0216】
変形例.
上述の例では、基板Wの鉛直上方に設けられた2つの吐出ノズル31a,31bを利用して処理を行った。しかるに、必ずしもこれに限らない。図24は、処理ユニット1Aの構成の一例を示す図である。処理ユニット1Aは処理液供給部80の有無を除いて処理ユニット1と同様である。処理液供給部80は吐出ノズル81を有しており、この吐出ノズル81は基板Wの側方であって基板Wの上面よりも高い位置に設けられている。吐出ノズル81は処理液が基板Wの上面に着液するように、略水平方向に沿って処理液Lq3を吐出する。この処理液Lq3は吐出ノズル81の先端から弧状に放出されて基板Wの上面の略中央付近に着液する。吐出ノズル81は配管82を介して処理液供給源84に接続されている。配管82の途中には、開閉弁83が設けられている。開閉弁83が開くことにより、処理液供給源84からの処理液Lq3が配管82の内部を流れて吐出ノズル81から吐出される。
【0217】
このような処理ユニット1Aにおいて、基板Wの上方に位置する吐出ノズル(例えば吐出ノズル31a)と、基板Wの側方に位置する吐出ノズル81とを用いて、順に処理液を基板Wに供給することがある。ここでは、吐出ノズル31aからの処理液Lq1により基板Wに対する処理を行い、その後、処理液を吐出するノズルを吐出ノズル31aから吐出ノズル81に切り替え、吐出ノズル81からの処理液Lq3により基板Wに対する処理を行う場合について説明する。
【0218】
カメラ70は、吐出ノズル31a,31b,81の先端が撮像領域に含まれる位置に設けられる。カメラ70が撮像して生成した撮像画像の各フレームは順次に制御部9に出力される。
【0219】
図25は、カメラ70によって生成した撮像画像のフレームIM6の一例を概略的に示す図である。フレームIM6では、吐出ノズル31a,81がそれぞれ処理液Lq1,Lq3を吐出している。つまり、フレームIM6は、吐出ノズル31a,81の切り替えの際に、両方が処理液を吐出するタイミングでのフレームである。
【0220】
このフレームIM6においては、基板W上において液はねが生じている。この液はねも吐出ノズル31a,81の両方がそれぞれ処理液Lq1,Lq3を吐出することに起因する。なお吐出ノズル81からの処理液Lq3は基板Wの側方から基板Wの中央付近に向かって吐出されるので、液はねは、基板Wの中心に対して吐出ノズル81とは反対側に生じやすい。
【0221】
フレームIM6には、吐出判定領域Rc1が設定されている。この吐出判定領域Rc1は吐出ノズル81の先端から基板Wの着液位置までの処理液Lq3の吐出経路上に設けられており、例えば吐出ノズル81の先端から処理液Lq3が延在する方向に延びている。吐出判定領域Rc1は例えば矩形状の形状を有している。
【0222】
制御部9は、吐出ノズル81からの処理液Lq3の吐出の有無を、吐出ノズル31a,31bと同様に、吐出判定領域Rc1内の画素値の統計量の大小により判定し、吐出ノズル81の開始タイミングを特定する。ここでいう統計量としては、吐出判定領域Rc1内の画素値の総和または分散を採用することができる。また吐出ノズル81は横方向に処理液Lq3を吐出することから、その横方向における輝度分布のばらつきは小さく、処理液Lq3による特徴は縦方向における輝度分布に現れる。よって統計量としては、縦方向に一列に並ぶ画素の分散を採用してもよい。あるいは、横方向に並ぶ画素の画素値を行ごとに積分し、その行ごとの積分値の分散を採用してもよい。
【0223】
また第1の実施の形態と同様にして、制御部9は吐出ノズル31aの停止タイミングも特定する。
【0224】
制御部9は吐出ノズル81の開始タイミングと吐出ノズル31aの停止タイミングとのタイミング差を算出する。例えば停止タイミングから開始タイミングを減算してタイミング差を算出する。そして、制御部9はそのタイミング差が所定の範囲外であるか否かを判定する。タイミング差が所定の範囲外となっているときには、制御部9はタイミング差が所定の範囲内となるように、吐出ノズル31aの停止タイミングおよび吐出ノズル81の停止タイミングのいずれか一方を調整する。
【0225】
以上のように処理ユニット1Aにおいても、吐出ノズル31aの停止タイミングと吐出ノズル81の開始タイミングとのタイミング差を調整することができる。
【0226】
なお吐出ノズル81からの処理液Lq3の吐出の有無は第2の実施の形態と同様に、機械学習済みの分類器によって判定されてもよい。
【0227】
また図25の例では、液はね判定領域R3が設けられている。この液はね判定領域R3は基板Wが写る領域内であって、基板Wの中心に対して吐出ノズル81とは反対側の領域に設けられている。液はね判定領域R3は例えば矩形形状を有している。
【0228】
制御部9は液はね判定領域R2と同様に、液はね判定領域R3内の画素値の統計量の大小に基づいて液はねの有無を判定する。ここでいう統計量としては、吐出判定領域Rc1内の画素値の総和または分散を採用することができる。そして、液はねが生じているときには、制御部9は、液はねが生じないように、吐出ノズル81の開始タイミングと吐出ノズル31aの停止タイミングとのタイミング差を調整する。
【0229】
また液はねの有無の判定は、第4の実施の形態と同様に、機械学習済みの分類器によって判定されてもよい。
【0230】
以上、本基板処理装置の実施の形態について説明したが、この実施の形態はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。上述した各種の実施の形態および変形例は適宜に組み合わせて実施することができる。例えば第1の実施の形態および第2の実施の形態の両方を行って、タイミング差の監視および液はねの監視の両方を行ってもよい。
【0231】
また基板Wとしては、半導体基板を採用して説明したが、これに限らない。例えばフォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板または光磁気ディスク用基板などの基板を採用してもよい。
【0232】
さらに、本実施の形態は、移動可能なノズルから基板に処理液を吐出して所定の処理を行う装置であれば適用することができる。例えば、上記実施形態の枚葉式の洗浄処理装置の他に、回転する基板にノズルからフォトレジスト液を吐出してレジスト塗布を行う回転塗布装置(スピンコータ)、表面に膜が成膜された基板の端縁部にノズルから膜の除去液を吐出する装置、あるいは、基板の表面にノズルからエッチング液を吐出する装置などに本実施の形態にかかる技術を適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0233】
20 基板保持部
30,60,65 処理液供給部
31a 第1ノズル(吐出ノズル)
31b 第2ノズル(吐出ノズル)
70 カメラ
90 ユーザインターフェース
91,91A~91C 分類器
100 基板処理装置
W 基板
図1
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