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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ばねユニット
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/10 20060101AFI20221116BHJP
   A47B 88/40 20170101ALI20221116BHJP
   A47B 88/453 20170101ALI20221116BHJP
   E05F 1/16 20060101ALI20221116BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F16F1/10
A47B88/40
A47B88/453
E05F1/16 C
F16F1/06 J
F16F1/06 C
F16F1/06 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018155292
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020029905
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591228683
【氏名又は名称】サンコースプリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一朗
(72)【発明者】
【氏名】大野 正博
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-155906(JP,U)
【文献】特開平01-266330(JP,A)
【文献】特開昭54-010845(JP,A)
【文献】特開2002-242558(JP,A)
【文献】特開2018-114129(JP,A)
【文献】特開2005-230468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 67/04
88/00-88/994
E05F 1/00-13/04
17/00
E06B 9/24- 9/388
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のばねを渦巻状に巻いたばねの円筒部と、前記円筒部をばねの内側端部またはボビンを介して回転自在に支持する支持軸を有し、ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記円筒部のばねの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、ばねの張力が調整され、
前記円筒部は、ばねの内側端部が前記支持軸に接続され、前記支持軸は前記円筒部の中心から所定の距離おいた位置に位置している、ばねユニット。
【請求項2】
帯状のばねを渦巻状に巻いたばねの円筒部と、前記円筒部をばねの内側端部を介して回転自在に支持する支持軸を有し、ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記円筒部のばねの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、ばねの張力が調整され、
前記円筒部のばねの内側部分がさらに渦巻状に巻かれて第二の円筒部を形成し、前記第二の円筒部は外側の前記円筒部から偏心している、ばねユニット。
【請求項3】
帯状のばねを渦巻状に巻いたばねの円筒部と、前記円筒部をばねの内側端部またはボビンを介して回転自在に支持する支持軸を有し、ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記円筒部のばねの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、ばねの張力が調整され、
前記円筒部は、概略円柱状のボビンの外周面に巻着され、前記ボビンはその円弧の中心から所定の距離おいた位置で前記支持軸によって回転自在に支持され、
前記ボビンは長孔を有し、前記支持軸は前記長孔を貫通して前記長孔の内部でスライド可能に設けられ、前記ボビンの前記長孔の端部又は前記支持軸に磁石が設けられている、ばねユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のばねユニットであって、
前記円筒部のばねの外側端部が延伸して前記円筒部の巻き方向と反対方向に渦巻状に巻いた巻取用ばね円筒部をさらに有し、
前記巻取用ばね円筒部は、ワイヤーを巻着した巻取車と一体に回転するように設けられ、前記巻取用ばね円筒部はその中心で第二の支持軸によって回転自在に支持されている、ばねユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のばねユニットであって、
ばねの引き出し行程の終点で荷重対象物との係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で前記荷重対象物との係合を開始させるストローク制御機構に接続するためのワイヤーを有する、ばねユニット。
【請求項6】
引き出し動作の補助機構であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載のばねユニットと、ストローク制御機構と、レールとを備え、
前記ばねユニットは、ワイヤーを介して、前記ストローク制御機構に接続しており、
前記ストローク制御機構は、
前記レールと係脱可能な係合部材と、
前記係合部材を、前記ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程の距離スライドさせるガイドと、を有し、
前記ばねユニットの前記ばねの引き出し行程の終点で前記レールと前記係合部材の係合を解放し、前記ばねの巻き取り行程の開始点で前記レールと前記係合部材の係合を開始させる、引き出し動作の補助機構。
【請求項7】
請求項6に記載の引き出し動作の補助機構であって、
前記ストローク制御機構は、前記係合部材に接続するショックアブソーバーをさらに有する、引き出し動作の補助機構。
【請求項8】
帯状のばねを渦巻状に巻いたばねの円筒部と、
前記円筒部のばねの外側端部が延伸して前記円筒部の巻き方向と反対方向に渦巻状に巻いた巻取用ばね円筒部と、
前記巻取用ばね円筒部のほぼ中心で前記巻取用ばね円筒部を回転自在に支持する支持軸と、
前記巻取用ばね円筒部と一体に回転するように設けられたカム状巻取車と、
前記カム状巻取車の外周面に巻着されたワイヤーと、を有し、
前記ワイヤーの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記ワイヤーの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、前記ワイヤーの張力が調整される、ばねユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
引出し(「抽斗」ともいう)が閉まる時に、筐体に衝突しないように制動装置やショックアブソーバー等の緩衝装置を設けることが従来から行われている。
【0003】
特許文献1には、抽斗を固定した一対の伸縮自在な可動レールと、ショックアブソーバーとを備え、ショックアブソーバーのロッドの先端部は結合部に接続し、該結合部は抽斗を閉めるときに、レールの一部と係合し、それによってショックアブソーバーのロッドが結合部ととともに後退し、逆に抽斗を開けるときは、ショックアブソーバーのロッドが結合部ととともに前進する抽斗案内具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-230468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引出し等の引き出し動作を伴う家具、装置、設備において、より快適な操作感が要求されるようになってきた。
【0006】
例えば、引出し等は、通常はむやみに開かないように閉状態を保持でき、開くためには明らかに開くための一定の力を加えることで開くことができ、かつ、いったん開き出したらその後は引き続きスムーズに開くように、少ない力で開くことができるのが好ましい。逆に、引出し等を閉めるときは、少しの力で閉め始めることができ、最後は衝突しないように減速し、かつ、増加した補助力でしっかり閉めることができるのが好ましい。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、引出しや引戸やロールスクリーンを含む荷重対象物の開閉動作に適合した簡単な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係るばねユニットは、
帯状のばねを螺旋状に巻いたばねの円筒部と、前記円筒部をばねの内側端部またはボビンを介して回転自在に支持する支持軸を有し、ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記円筒部のばねの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、ばねの張力が調整されることを特徴とする。
【0009】
前記円筒部は、概略円柱状のボビンの外周面に巻着され、前記ボビンはその円弧の中心から所定の距離おいた位置で前記支持軸によって回転自在に支持されることができる。
【0010】
前記円筒部は、ばねの内側端部が前記支持軸に接続され、前記支持軸は前記円筒部の中心から所定の距離おいた位置に位置することができる。
【0011】
前記円筒部のばねの内側部分がさらに螺旋状に巻かれて第二の円筒部を形成し、前記第二の円筒部は前記外側の円筒部から偏心することができる。
【0012】
前記ボビンは長孔を有し、前記支持軸は前記長孔を貫通して前記長孔の内部でスライド可能に設けられ、前記ボビンの前記長孔の端部又は前記支持軸に磁石が設けられることができる。
【0013】
前記円筒部のばねの外側端部が延伸して前記円筒部の巻き方向と反対方向に螺旋状に巻いた巻取用ばね円筒部をさらに有し、
前記巻取用ばね円筒部は、ワイヤーを巻着した巻取車と一体に回転するように設けられ、前記巻取用ばね円筒部はその中心で第二の支持軸によって回転自在に支持されることができる。
【0014】
ばねの引き出し行程の終点で荷重対象物との係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で前記荷重対象物との係合を開始させるストローク制御機構に接続するためのワイヤーを有することができる。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る引き出し動作の補助機構は、
ばねユニットと、ストローク制御機構と、レールとを備え、
前記ばねユニットは、ワイヤーを介して、前記ストローク制御機構に接続しており、
前記ストローク制御機構は、
前記レールと係脱可能な係合部材と、
前記係合部材を、前記ばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程の距離スライドさせるガイドと、を有し、
前記ばねユニットのばねの引き出し行程の終点で前記レールと前記係合部材の係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で前記レールと前記係合部材の係合を開始させることを特徴とする。
【0016】
前記ストローク制御機構部は、前記係合部材に接続するショックアブソーバーをさらに有することができる。
【0017】
また、本発明のさらに他の態様に係るばねユニットは、
帯状のばねを螺旋状に巻いたばねの円筒部と、
前記円筒部のばねの外側端部が延伸して前記円筒部の巻き方向と反対方向に螺旋状に巻いた巻取用ばね円筒部と、
前記巻取用ばね円筒部のほぼ中心で前記巻取用ばね円筒部を回転自在に支持する支持軸と、
前記巻取用ばね円筒部と一体に回転するように設けられたカム状巻取車と、
前記カム状巻取車の外周面に巻着されたワイヤーと、を有し、
前記ワイヤーの引き出し行程あるいは巻き取り行程において前記ワイヤーの引出し部と前記支持軸の間の距離が変化することにより、ワイヤーの張力が調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、引出しや引戸やロールスクリーンを含む荷重対象物の開閉動作に適合した簡単な構成のばねユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるばねユニットを使用した引出しユニットの斜視図である。
図2図1のレール組立体のうちの一つとそれに対応するばねユニットを抜き出して示した斜視図である。
図3図2のレール組立体の後端部分を拡大して示した斜視図である。
図4図2のレール組立体の後端部分を拡大して示した斜視図である。
図5図1引出しユニットの正面に向かって右側のレール組立体を外側から見た側面図である。
図6】本発明の一実施形態によるばねユニットを分解して示した斜視図である。
図7図6のばねユニットの使用状態を示した斜視図である。
図8図7のばねユニットを後方上部から見た斜視図である。
図9】本発明の一実施形態によるばねユニットを示した斜視図である。
図10】本発明の一実施形態によるばねユニットのストロークと出力の関係を示したグラフである。
図11】本発明の一実施形態によるばねユニットのばねの引出し行程中のレールの状態を示した説明図である。
図12】本発明の一実施形態によるばねユニットのばねの引出し行程と巻き取り行程の時間と出力の関係を示したグラフと、ばねの円筒部の回転状態を示した説明図である。
図13】本発明の一実施形態によるばねユニットを示した斜視図である。
図14】本発明の一実施形態によるばねユニットのストロークと出力の関係を示したグラフである。
図15】本発明の一実施形態によるばねユニットのばねの引出し行程と巻き取り行程の時間と出力の関係を示したグラフと、ばねの円筒部の回転状態を示した説明図である。
図16】本発明の一実施形態によるばねユニットを示した斜視図である。
図17】本発明の一実施形態によるばねユニットのばねの引出し行程と巻き取り行程の時間と出力の関係を示したグラフと、ばねの円筒部の回転状態を示した説明図である。
図18】本発明の一実施形態によるばねユニットの斜視図である。
図19】本発明の一実施形態によるばねユニットの正面図及び側面断面図である。
図20】本発明の一実施形態によるばねユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態の例を、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態によるばねユニットを使用した引出しユニットの斜視図を示している。引出しユニット1は、収納用の筐体2と引出し3(「抽斗」とも言う)とを有している。図1では、引出し3は一つのみ示しているが、引出し3は複数段有していてもよい。ばねユニット4は、筐体2の背板5の近くに設けられている。
【0022】
引出し3は、一対のレール組立体6に取り付けられている。各レール組立体6は、上段レール7と中段レール8と下段レール9とを有している。下段レール9は、引出しユニット1の筐体2に固定されている。中段レール8は下段レール9の上にスライド可能に設けられている。上段レール7は中段レール8の上にスライド可能に設けられている。
【0023】
引出し3は、上段レール7の上面に載置されている。引出し3と上段レール7の取り付けは、下面ではなく両側面であってもよい。
【0024】
図2は、図1のレール組立体6のうちの一つ(引出しユニット1の正面に向かって右側のレール組立体6)とそれに対応するばねユニット4を抜き出して示した斜視図である。なお、以下の説明は、引出しユニット1の正面に向かって左側のレール組立体6とばねユニット4にも当てはまるものである。
【0025】
中段レール8は、一対のプーリー10を有している。プーリー10にはひも11が掛け回されている。ひも11は上段レール7と下段レール9が係合している。これによって、下段レール9に対して中段レール8がスライドすると、プーリー10が回転し、ひも11の上下部分が反対方向に相対的に移動する。このひも11の上下部分の相対的な移動により、下段レール9に対して中段レール8がスライドした距離と等しい距離を、上段レール7が中段レール8に対してスライドする。
【0026】
下段レール9の後端部上面には、ストローク制御機構12が固定されている。ストローク制御機構12は、後にさらに詳しく説明するように、ばねの引き出し行程の終点で荷重対象物(この場合は上段レール7と引出し3が荷重対象物である)との係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で荷重対象物との係合を開始させる機構である。
【0027】
図3図4は、図2のレール組立体6の後端部分を拡大して示した斜視図である。図3は、引出しユニット1の正面に向かって右側のレール組立体6を内側から見た斜視図であり、図4は同レール組立体6を外側から見た斜視図である。両図を併せて参照することにより、以下の説明が明らかに理解される。なお、図3においては、ばねユニット4は内部が見えるように側面(内側)を省略して示している。また、図4においては、ストローク制御機構12の内部が見えるように、ストローク制御機構12の側面を省略して示している。また、図4ではばねユニット4の側面(外側)も省略されている。
【0028】
図3,4に示すように、ストローク制御機構12が下段レール9の後端部の上面に固定されている。ばねユニット4は、ストローク制御機構12の延長線上に位置している。ばねユニット4は、ワイヤー13でストローク制御機構12に接続されている。
【0029】
ストローク制御機構12は、全体を収納するフレーム14を有している。フレーム14は、底壁15と側壁16と上壁17を有し、底壁15と上壁17の間の空間は側壁16によって幾つかの空間に分けられている。その空間の一つにショックアブソーバー18が収納されている。なお、ストローク制御機構12は、ばねの引き出し行程の終点で荷重対象物との係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で荷重対象物との係合を開始させる機構であるため、ショックアブソーバー18を有していない態様もあり得る。
【0030】
ショックアブソーバー18は、本体19とロッド20を有している。ショックアブソーバー18の本体19には、緩衝用の流体が格納され、ロッド20の加速度に比例した抵抗を生じるようになっている。ロッド20の先端は、係合部材21に接続されている。係合部材21が前方に移動するときは、係合部材21がロッド20を引っ張って前方に移動し、逆に係合部材21が後方に移動するときは、係合部材21がロッド20を押しながら後方に移動する。
【0031】
図4に明らかに示すように、ストローク制御機構12のフレーム14の側壁16の一部が切り欠かれ、係合部材21を長手方向にスライドさせるガイド22になっている。なお、ガイド22の切り欠かれた長手方向の孔の長さは、係合部材21をスライドさせる距離、すなわち、ばねユニット4のばねの引き出し行程あるいは巻き取り行程の距離になっている。
【0032】
ここで、図5を使用して、ばねユニット4のばねの引き出し行程の終点で上段レール7と係合部材21の係合を解放し、ばねの巻き取り行程の開始点で上段レール7と係合部材21の係合を開始させる、ストローク制御機構12の仕組みを説明する。
【0033】
図5は引出しユニット1の正面に向かって右側のレール組立体6を外側から見た側面図である。図5は図示しない引出し3を収納する途中の状態を示している。このとき、上段レール7と中段レール8は図面の右方向に動いており、上段レール7は中段レール8より速く動き、中段レール8に対して相対的に矢印Mの方向に動いている。
【0034】
上段レール7は、その下面の一部に一対の爪23を有している。爪23は係合部材21と係脱可能な部分になっている。係合部材21は先端部に傾斜部24を有し、傾斜部24の基端側に爪23と係合する凹部25を有している。図5はばねの巻き取り行程のちょうど開始点を示している。このとき、爪23の右側の爪は係合部材21の傾斜部24にかかっている。上段レール7が図5の状態からさらに矢印Mの方向に動くと、右側の爪23が凹部25に入って係合部材21と係合し、係合部材21を矢印Mの方向に押す。このようにして、上段レール7と係合部材21の係合が開始される。なお、上段レール7がさらに矢印Mの方向に動くと、上段レール7(図示しない引出し3を含む)が係合部材21を介してロッド20を押し、これによってショックアブソーバー18の機能によって上段レール7の動きが緩衝される。
【0035】
上記のばねの巻き取り行程とは反対に、ばねユニット4のばねの引き出し行程では、上段レール7は爪23で係合部材21と係合したまま、右側から引き出し行程の終点に近づく。ばねの引き出し行程の終点で、係合部材21は、図示しない底壁15上の案内溝に案内されて、傾斜部24が爪23を外す方向に回動する。これにより、係合部材21はばねユニット4(不図示)のばねの引き出し行程の終点で上段レール7との係合を解放し、係合部材21はその位置に停止し、上段レール7(図示しない引出し3を含む)は引き続き図5の左方向に移動する。
【0036】
再び図3,4に戻り、ばねユニット4及びばねユニット4とストローク制御機構12の関係について説明する。
【0037】
ばねユニット4は、ストローク制御機構12に面した側面が開放しているケーシング26を有している。ばねユニット4の内部が見えるように、図3ではストローク制御機構12の方向から見てケーシング26の左側の側壁を省略し、図4ではその右側の側壁を省略している。ケーシング26の内部には、帯状のばね27を螺旋状に重ねて巻いた円筒部28と、円筒部28の外側のばね27の端部を延伸させ、円筒部28の巻き方向と反対の方向に螺旋状に重ねて巻いた巻取用ばね円筒部29とを有している。なお、このような反対の巻き方向を有する二つのばねの円筒状の巻き部を有する定荷重ばねを「N型偏心定荷重ばね」という。ここで、理解容易のために円筒部28,29は複数層のばね27が重なって一つの円筒部を形成するように記載したが、円筒部28,29のばね27は一重でもよい。
【0038】
円筒部28は第一の支持軸30によって回転可能に支持され、巻取用ばね円筒部29は第二の支持軸31によって回転可能に支持されている。巻取用ばね円筒部29は、ワイヤー13を巻着した巻取車32と一体に回転するように設けられている。後にさらに詳しく説明するように、円筒部28の中心は第一の支持軸30と偏心している。一方、巻取用ばね円筒部29の中心は第二の支持軸31とほぼ一致している。
【0039】
ワイヤー13を引き出すと、巻取車32が回転し、それに伴って巻取用ばね円筒部29が回転し、円筒部28からばね27が引き出される。これをばねの引出し行程という。反対に、ワイヤー13を引き出した状態から、初期荷重を与えると、巻取用ばね円筒部29が反対方向に回転し、ばね27が円筒部28に巻き取られる。これをばねの巻き取り行程という。
【0040】
図3に特に明らかに示すように、巻取車32に巻着されたワイヤー13は、伸長して係合部材21の一部に接続されている。すなわち、上段レール7がばねユニット4から離れる方向に移動すると、係合部材21が上段レール7とともに移動し、それによってワイヤー13を介してばね27が引き出される。反対に、上段レール7がばねユニット4から離れた状態からばねユニット4に近づく方向に移動すると、ばね27が巻き取られる。
【0041】
ばねユニット4とストローク制御機構12と、上段レール7は引き出し動作の補助機構100を構成している。引き出し動作の補助機構100は、ストローク制御機構12がショックアブソーバー18を備えている場合も含む。
【0042】
この引き出し動作の補助機構100において、ばねユニット4は、ワイヤー13を介して、ストローク制御機構12に接続している。ストローク制御機構12は、上段レール7と係脱可能な係合部材21と、係合部材21を、ばね27の引き出し行程あるいは巻き取り行程の距離スライドさせるガイド22と、を有している。引き出し動作の補助機構100は、ばねユニット4のばね27の引き出し行程の終点で、上段レール7と係合部材21の係合を解放し、ばね27の巻き取り行程の開始点で上段レール7と係合部材21の係合を開始させることができる。
【0043】
次に、図6-8を用いて一実施形態のばねユニット4の細部を説明する。図6は、引出しユニット1の正面に向かって左側のばねユニット4を分解して示した斜視図である。図7は、同ばねユニット4の使用状態を示した斜視図である。図8は、同ばねユニット4を後方上部から見た斜視図である。
【0044】
ばねユニット4は、ケーシング26を有し、帯状のばね27を螺旋状に重ねて巻いた円筒部28と、円筒部28の外側のばね27の端部を延伸させて円筒部28の巻き方向と反対の方向に螺旋状に重ねて巻いた巻取用ばね円筒部29とを有している。円筒部28は、概略円柱状のボビン33の外周面に巻着され、ボビン33はその円弧の中心から所定の距離偏心した支持軸30によって支持されている。第一の支持軸30はケーシング26の孔に支持され、これによって、ボビン33を偏心的に回転自在に支持している。ばね27が円筒部28から引き出される場所、すなわち、ばね27が円筒部28の円弧と概ね接する場所をばねの引出し部34という。ボビン33の円弧の中心と支持軸30は所定の距離偏心しているため、支持軸30を中心にボビン33が回転すると、ボビン33が偏心的に回転し、支持軸30とばねの引出し部34の間の距離が変化する。支持軸30とばねの引出し部34の間の距離が変化することにより、ばね27を引き出す張力が変化する。
【0045】
巻取用ばね円筒部29は、概略円柱状の第二のボビン35の外周面に巻着され、ボビン35はその円弧の中心で支持軸31によって支持されている。支持軸31はケーシング26の孔に貫挿され、ボビン35を回転自在に支持している。ボビン35の側面の一つに巻取車32が一体的に回転するように設けられ、巻取車32にワイヤー13が巻着されている。なお、ボビン33とボビン35は、円柱状の一部が切り欠かれて平面になっているが、概ね円柱形をなしている。切り欠きがない場合も本発明の範囲内である。
【0046】
なお、ボビン33を用いないで、円筒部28のばねの内側端部を延伸させて支持軸30に接続するようにしてもよい。また、ボビン33は任意の形体のものでもよく、支持軸30から円筒部28を偏心的に支持することができるものであればよい。
【0047】
図9は、本発明の他の一実施形態によるばねユニットを示している。理解容易のため、図6-8と同一の部分には同一の符号を付している。
【0048】
ばねユニット36は、第一の円筒部28のボビンの代わりに、第一の円筒部28の内側に第二の円筒部37を有している。具体的には、第一の円筒部28のばね27の内側部分はさらに螺旋状に巻かれて第二の円筒部37を形成している。第二の円筒部37の中心は第一の円筒部28の中心からずれている。すなわち、第二の円筒部37は、第一の円筒部28に対して偏心している。第二の円筒部37は第一の支持軸30に遊嵌され、第二の円筒部37と第一の支持軸30はほぼ同心状に嵌合している。これにより、ばね27が引き出されると、第一の円筒部28は支持軸30に対して偏心的に回転する。このばねユニット36によっても、ばね27が引き出され或いは巻き取られると、支持軸30とばねの引出し部34の間の距離が変化し、ばね27を引き出す張力が変化する。
【0049】
次に、本実施形態によるばねユニットのばねの引出し行程及び巻き取り行程における張力の変化について以下に説明する。
【0050】
図10-12はN型偏心定荷重ばねの引出し行程及び巻き取り行程と張力の変化の例を示している。図10は、本実施形態によるN型偏心定荷重ばねのばねユニット4のストローク(mm)と出力(kgf)の関係を示したグラフである。図11は、本実施形態によるN型偏心定荷重ばねの引出し行程中の4つの時点T1,T2,T3,T4におけるレールの状態(A),(B),(C),(D)を示している。図11のレールの状態(A),(B),(C),(D)は、それぞれレールの平面と側面を示している。図12は、ばねの引出し行程と巻き取り行程の1ストローク分の時間Tと出力(kgf)の関係とばねの円筒部28と巻取用ばね円筒部29の回転状態を示している。図10-12中の符号は、図1-8と同一部分について同一符号を付している。
【0051】
図10は、本実施形態によるばねユニット4のショックアブソーバー18等の影響を除いたストローク(mm)と出力(kgf)の関係を示している。図10中の符号38はばねの引出し行程の曲線を示し、符号39はばねの巻き取り行程の曲線を示している。
【0052】
図10に示すように、本実施形態によるばねユニット4は、ばねの円筒部28とその支持軸30の偏心により、ばねの引出し行程の曲線38において、初期の所定領域で高出力帯域を有し、高出力帯域に続いて平坦な低出力帯域を有している。この高出力帯域と低出力帯域は、ばねユニット4を使用する対象に合わせて、円筒部28と第一の支持軸30の偏心量や円筒部28の径を調整することにより、調整することができる。例えば、本実施形態によるばねユニット4を引出しユニット1に使用する場合、引出し3がむやみに開かないように、引出し3を開ける最初の段階では一定の力を要する高出力帯域を設けることができる。一定のストロークを開けた後は、ほどよい力で開けられる低出力帯域を設けることができる。ばねの引出し行程において、高出力帯域は、好ましくはストローク0-20mmの帯域で、出力0.6-1.0kgfとすることができる。同ばねの引出し行程において、低出力帯域は、好ましくはストローク20-40mmの帯域で、出力0.6-0.65kgfとすることができる。ばねの巻き取り行程では、わずかな力でばねの巻き取りを開始することができ、最後は引出し3等をしっかり閉じることができるようにしなければならない。したがって、ばねの巻き取り行程において、低出力帯域は、好ましくはストローク15-40mmの帯域で、出力0.3-0.35kgfとすることができる。同ばねの巻き取り行程において、高出力帯域は、好ましくはストローク5-15mmの帯域で、出力0.35-0.4kgfとすることができる。
【0053】
図11図12を対応させて説明する。図12のグラフは、横軸がばねの引出し行程と巻き取り行程の1ストローク分の時間T、縦軸が出力(kgf)になっている。図12の曲線はばねの引出し行程と巻き取り行程の出力の移り変わりを示している。図12のグラフの下部は、各時点における円筒部28と巻取用ばね円筒部29の回転状態を示している。図11は、図12の各時点T1,T7,T8,T9におけるレールの状態(A),(B),(C),(D)を示している。図11の符号40は、ばねの引出し行程の終点で、係合部材21の先端部を案内して回動させて爪23との係合を解除させる案内溝40を示している。
【0054】
図12のグラフの下部の円筒部28と巻取用ばね円筒部29の回転状態は、円筒部28が反時計回りに45度ずつ回転した状態を示している。円筒部28が反時計回りに回転している推移を示しているので、図12のグラフの下部の円筒部28と巻取用ばね円筒部29の回転状態は、ばねの引出し行程のみを示している。
【0055】
時点T1から時点T2までに、ばねの円筒部28は図12に示すように、反時計回りに45度回転する。この間、レールの状態は図11の(A)に示すように、最初は上段レール7の爪23が係合部材21と係合したまま、上段レール7が図11の右方向に移動する。時点T1から時点T2までは、円筒部28のばね27の引出し部と第一の支持軸30の間の距離が短いため、ばね27の出力が高く、高出力帯域になっている。次に、時点T2から時点T3までは、ばね27の引出し部と第一の支持軸30の間の距離が長くなり、ばね27の出力が低下し、低出力帯域に移行する。時点T3から時点T6までは、低出力帯域になっている。
【0056】
時点T7は、係合部材21と上段レール7の爪23の係合が解放される直前を示し、時点T8は、係合部材21と上段レール7の爪23の係合が解放された直後を示している。時点T7では、レールの状態は図11の(B)に示すように、係合部材21と爪23が係合したままばねの引出し行程の終点に達している。その後、係合部材21の先端部は、案内溝40に案内されて回動し、それによって係合部材21と爪23の係合が外れ、図11の(C)の状態になる。
【0057】
その後の時点T9では、図11の(D)に示すように、係合部材21と爪23の係合が外れた後に、上段レール7がさらに図11の右方向に移動するが、係合部材21はばねの引出し行程の終点、すなわち図11の(C),(D)の場所に留まる。
【0058】
引出し3を閉める際には、上記とは逆に、図11の(D),(C),(B),(A)の順に変移し、図12に示すT9,T8,T7,T6,T5,T4,T3,T2,T1の順に巻き戻される(なお、円筒部28、29の回転方向は、引き出しの際とは逆となる)。
【0059】
図13は、本発明の他の実施形態によるばねユニット41を示している。
【0060】
このばねユニット41は、ばねの円筒状の巻き部を一つのみ有し、「C型偏心定荷重ばね」という。
【0061】
具体的には、ばねユニット41は、帯状のばね42を螺旋状に巻いた円筒部43を有している。円筒部43のばねの内側端部は、さらに螺旋状に巻かれて第二の円筒部44を形成している。第二の円筒部44の中心は第一の円筒部43の中心からずれている。すなわち、第二の円筒部44は、第一の円筒部43に対して偏心している。第二の円筒部44は支持軸45に遊嵌され、支持軸45を中心に回転するようになっている。第一の円筒部43と第二の円筒部44が偏心していることにより、ばね42が引き出されると、第一の円筒部43が支持軸45に対して偏心的に回転し、これによってばねの引出し部と支持軸45の距離が変化し、ばねユニット41の出力が変化する。
【0062】
ばね42を引き出す端部にはワイヤー等を接続するための接続孔46が設けられている。支持軸45はブラケット47に設けられ、ブラケット47は他の部材に取り付けるための台座部48に接続されている。接続孔46とブラケット47と台座部48は必要に応じて設けるものであり、形状も任意なものでよい。
【0063】
円筒部43の内側は、第二の円筒部44の代わりに、図6-8に示したようなボビンあるいは任意の接続部材とすることができる。ボビン等を設ける場合も、ボビン等は支持軸45に対して偏心して設けるようにする。
【0064】
図14はばねユニット41のストローク(mm)と出力(kgf)の関係の例を示している。図14中の符号49はばねの引出し行程の曲線を示し、符号50はばねの巻き取り行程の曲線を示している。
【0065】
図14に示すように、本実施形態によるばねユニット41は、ばねの引出し行程の曲線49において、初期の所定領域で高出力帯域を有し、高出力帯域に続いて低出力帯域を有している。これは、図13で説明したようにばねの円筒部43とその支持軸45の偏心によってばねの張力が変化するためである。高出力帯域と低出力帯域は、ばねユニット41を使用する対象に合わせて、円筒部43と支持軸45の偏心量(距離)や円筒部43の径を調整することにより、調整することができる。本ばねユニット41を引出しユニット1に使用する場合、引出し3がむやみに開かないような高出力帯域を設け、一方、いったん引出し3を開いた後は、スムーズに開くように張力を調整することができる。ばねの引出し行程において、高出力帯域は、好ましくはストローク5-35mmの帯域で、出力0.2-0.33kgfとすることができる。続くばねの引出し行程において、低出力帯域は、好ましくはストローク40-80mmの帯域で、出力0.13-0.15kgfとすることができる。ばねの巻き取り行程では、わずかな力でばねの巻き取りを開始することができ、最後は引出し3等をしっかり閉じることができるようにしなければならない。したがって、ばねの巻き取り行程において、低出力帯域は、好ましくはストローク40-60mmの帯域で、出力0.15-0.16kgfとすることができる。また、ばねの巻き取り行程において、高出力帯域は、好ましくはストローク20-40mmの帯域で、出力0.16-0.17kgfとすることができる。
【0066】
図15は、ばねユニット41のばねの引出し行程と巻き取り行程の時間Tと出力(kgf)の関係とばねの円筒部43の回転状態を示している。
【0067】
図15のグラフは、横軸が時間T、縦軸が出力(kgf)になっている。図15のグラフにばねの引出し行程の曲線51と巻き取り行程の曲線52が示されている。引出し行程の曲線51には時間(1),(2),(3)、巻き取り行程の曲線52には時間(4),(5),(6)がそれぞれ示されている。図15のグラフの下部は、時間(1),(2),(3),(4),(5),(6)における円筒部43の回転状態が示されている。
【0068】
図15のグラフの下部の円筒部43の回転状態は、引出し行程で反時計回りに90度ずつ回転し、一方、巻き取り行程で時計回りに90度ずつ回転した状態を示している。円筒部43の各回転状態(1),(2),(3),(4),(5),(6)はグラフ中の時間(1),(2),(3),(4),(5),(6)とそれぞれ対応している。
【0069】
時間(1)から時間(1)と(2)の中間点までは、円筒部43のばねの引出し部53と支持軸45の間の距離は短い長さからさらに短くなって再び長くなる。このため、ばねの引出し行程の曲線51に示すように、出力が高出力帯域になっている。次に、時間(1)と(2)の中間点から時間(3)では、円筒部43のばねの引出し部53と支持軸45の間の距離が長くなり、時間(3)で最も長くなる。この領域では、ばねの引出し行程の曲線51に示すように、ばねの出力は全体としてなだらかな低出力帯域になっている。時間(3)でばねの引出し行程の終点に達する。時間(4)はばねの巻き取り行程の開始点である。時間(4)から時間(5)と(6)の中間点までは、円筒部43のばねの引出し部53と支持軸45の間の距離が短くなり、ばねの張力が徐々に大きくなる。この領域では、ばねの巻き取り行程の曲線52に示すように、ばねの出力は全体としてなだらかに増加する低出力帯域になっている。時間(5)と(6)の中間点から時間(6)までは、円筒部43のばねの引出し部53と支持軸45の間の距離が最も短くなって再び長くなる。このため、ばねの巻き取り行程の曲線52に示すように、ばねの出力は高出力帯域になっている。
【0070】
図16は、本発明のさらに他の実施形態によるばねユニット54を示している。
【0071】
このばねユニット54は、ばねの円筒状の巻き部を一つのみ有し、「C型偏心定荷重ばね」の一種であり、「磁石型偏心定荷重ばね」という。このばねユニットは磁石によって支持軸の位置が変わるようになっている。
【0072】
具体的には、ばねユニット54は、帯状のばね55を螺旋状に巻いた円筒部56を有している。円筒部56は、概略円柱状のボビン57の外周面に巻着されている。ボビン57には、長孔58が設けられている。長孔58に、支持軸59が挿通している。支持軸59は長孔58を貫通し、長孔58の内部でスライド可能になっている。磁石60がボビン57の長孔58の一端部に設けられており、支持軸59の一部には、この磁石60に引き寄せられる金属が設けられている。なお、磁石60の配設は、支持軸59が長孔58の一端部から、所定の力がかかったときに、他の端部へスナップ的に移動できればよい。例えば、支持軸59のみに磁石60を設け、長孔58の一端部で近くのばねの円筒部56に吸着し、所定の力がかかったときに、長孔58の他端部にスナップ的に移動するようにしてもよい。あるいは、支持軸59に磁石60を設けず、長孔58の両端部に磁石60を設けるようにしてもよい。あるいは、支持軸59と、長孔58の両端部に磁石60を設けるようにしてもよい。または、支持軸59の長孔58の両端に対向する二つの位置に磁石を配置し、長孔58の一端には、支持軸59の対向する磁石に吸着する極性の磁石を、長孔59の他端には、支持軸59に対向する磁石に反発する極の磁石を設けるようにしてもよい。こうすれば、支持軸59は、長孔58の一端に近づきやすくなり、他端からは離れやすくなるため、引き出し動作の初期状態において、後述する図17の時間(1)の状態を取り易くなる。
【0073】
ばねユニット54は、支持軸59を支持するブラケット61を有している。ばねユニット54はさらに、ブラケット61を支持する台座部62を有している。符号63は、円筒部56からばね55を引き出す場所、すなわち、ばねの引出し部63を示している。
【0074】
支持軸59が長孔58の内部で磁石60の作用でスライドすると、ばねの引出し部63と支持軸59の間の距離が変化し、ばね55の張力が変化する。
【0075】
図17は、ばねユニット54のばねの引出し行程と巻き取り行程の時間Tと出力(kgf)の関係とばねの円筒部56の回転状態を示している。
【0076】
図17のグラフは、横軸が時間T、縦軸が出力(kgf)になっている。図17のグラフにばねの引出し行程の曲線64と巻き取り行程の曲線65が示されている。引出し行程の曲線64には時間(1),(2),(3)、巻き取り行程の曲線65には時間(4),(5),(6)が示されている。図17のグラフの下部は、時間(1),(2),(3),(4),(5),(6)における円筒部56の回転状態が示されている。
【0077】
図17のグラフの下部の円筒部56の回転状態は、引出し行程で反時計回りに90度ずつ回転し、一方、巻き取り行程で時計回りに90度ずつ回転した状態を示している。円筒部56の各回転状態には、符号(1),(2),(3),(4),(5),(6)が付され、それらはグラフ中の時間(1),(2),(3),(4),(5),(6)とそれぞれ対応している。
【0078】
時間(1)から時間(1)と(2)の中間点までは、円筒部56のばねの引出し部63と支持軸59の間の距離が短い長さからさらに短くなって再び長くなる。このため、ばねの引出し行程の曲線64に示すように、出力が高出力帯域になっている。次に、時間(1)と(2)の中間点から時間(3)までは、円筒部のばねの引出し部63と支持軸59の間の距離が長くなり、時間(3)で最も長くなる。この領域では、ばねの引出し行程の曲線64に示すように、ばねの出力は全体としてなだらかな低出力帯域になっている。時間(3)でばねの引出し行程の終点に達する。時間(3)で、磁石の吸着力を超えた力が働き、円筒部56は図17に示すように図の右方向に移動する。
【0079】
時間(4)はばねの巻き取り行程の開始点である。時間(4)から時間(6)までは、円筒部56のばねの引出し部63と支持軸59の間の距離が短くなり、ばねの張力が徐々に大きくなる。この領域では、ばねの巻き取り行程の曲線65に示すように、ばねの出力は全体としてなだらかに減少する低出力帯域になっている。時間(6)はばねの巻き取り行程の終点であり、磁石の吸着力により、円筒部56は図17に示すように図の右方向に移動する。
【0080】
このばねユニット54によれば、ばねの引出し行程の終点で支持軸59の支持位置を変えることができ、これによって、ばねの巻き取り行程の初期の出力を高くし、ばねの巻き取り行程の出力を単調に減少させることができる。
【0081】
図18は、本発明のさらに他の実施形態によるばねユニット66を示している。
【0082】
ばねユニット66はカム状巻取車67を有している。
【0083】
図18は、ばねユニット66の斜視図を示している。ばねユニット66は、一面が開放した外形が概略矩形のケーシング68を有している。帯状のばね69が螺旋状に重ねて巻かれて円筒部70を形成している。円筒部70の外側のばね69の端部は延伸して円筒部70の巻き方向と反対の方向に重ねて巻かれて巻取用ばね円筒部71を形成している。
【0084】
円筒部70は、概略円柱状のボビン72の外周面に巻着されている。ボビン72はその円弧のほぼ中心で第一の支持軸73によって支持されている。第一の支持軸73はケーシング68の孔に回転可能に支持されている。
【0085】
巻取用ばね円筒部71は、概略円柱状のボビン74の外周面に巻着されている。ボビン74はその円弧のほぼ中心で第二の支持軸75によって支持されている。第二の支持軸74はケーシング68の孔に回転可能に支持されている。
【0086】
ボビン74の側面の一つにカム状巻取車67が一体的に回転するように設けられている。カム状巻取車67の外周面にはワイヤー76が巻かれている。ワイヤー76の先端は、前述したストローク制御機構に接続されている。
【0087】
図19は、ばねユニット66の正面(図19(a))と、図19(a)の矢印A-A方向に見たばねユニット66の側面断面(図19(b))を示している。
【0088】
図19(b)に示すように、カム状巻取車67の外周面はカム状になっている。図19(a)と図19(b)を併せて参照すると明らかなように、第二の支持軸75は巻取用ばね円筒部71及びボビン74の円弧のほぼ中心に位置している。カム状巻取車67の外周面は、第二の支持軸75を中心に螺旋状になっている。すなわち、カム状巻取車67の外周面は、第二の支持軸75から最短距離の位置から、反時計回りに角度とともに距離が大きくなっている。最初の最短距離の位置から360度回転したところで第二の支持軸75から最大の距離になっている。ワイヤー76は、カム状巻取車67の外周に巻着されている。
【0089】
第一の支持軸73は、ばね69の円筒部70及びボビン72の中心に位置している。
【0090】
このばねユニット66において、ワイヤー76を引き出すと、ワイヤー76の引出し部(ワイヤー76とカム状巻取車67の外周が接線になっている部分)と、第二の支持軸75の中心の距離は、カム状巻取車67の回転とともに増大する。ばね69の巻取り力はほぼ一定であるため、第二の支持軸75とワイヤー76の引き出し部の距離が増大すると、ワイヤー76を引き出す力が減少する。すなわち、ワイヤー76は引き出す初期の段階では張力が大きく、引き出す長さにつれて張力が小さくなる。
【0091】
図20は、種々の断面形状の巻取車の、ワイヤーの引出し距離(ストローク)(mm)とばねの出力(kgf)と巻取車の外周面の曲率の関係を比較して示している。
【0092】
図20の左側は巻取車の断面形状を示している。符号(1)は円形断面の巻取車、符号(2),(3)は異なる曲率のカム状断面の巻取車を示している。
【0093】
図20の右側は横軸をストローク(mm)とし、縦軸をばね出力(kgf)と曲率としたグラフになっている。グラフ中、符号(1),(2),(3)はそれぞれ断面形状が(1),(2),(3)の巻取車に対応している。
【0094】
グラフに示すように、巻取車が円形断面のときは、定荷重ばねの性質により、ばねの出力はほぼ一定である。巻取車の断面をカム形状にすると、カム形状を調製することにより、ばねの出力を変化させることができる。巻取車の断面形状を(2)のようにすることにより、ばねの出力を直線的な単調減少にすることができる。また、巻取車の断面形状を(3)のようにすることにより、ばねの出力を最初は直線的な単調減少で後半は一定の出力にすることができる。
【0095】
なお、本発明のばねユニットは、引出し(抽斗)に限られず、引き出す動作を伴う他の家具、装置、設備にも用いることができる。上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態の例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1:引出しユニット
2:筐体
3:引出し
4、36、41、54、66:ばねユニット
5:背板
6:レール組立体
7:上段レール
8:中段レール
9:下段レール
10:プーリー
11:ひも
12:ストローク制御機構
13、76:ワイヤー
14:フレーム
15:底壁
16:側壁
17:上壁
18:ショックアブソーバー
19:本体
20:ロット
21:係合部材
22:ガイド
23:爪
24:傾斜部
25:凹部
26、68:ケーシング
28、43、56、70:円筒部
27、42、55、69:ばね
29、71:巻取用ばね円筒部
30、73:第一の支持軸
31、75:第二の支持軸
32:巻取車
33、35、57、72、74:ボビン
34:ばねの引出し部
37、44:第二の円筒部
38、49、51、64:ばねの引出し行程の曲線
39、50、52、65:ばねの巻き取り行程の曲線
40:案内溝
45、59:支持軸
46:接続孔
47、61:ブラケット
48、62:台座部
53、63:引出し部
58:長孔
60:磁石
67:カム状巻取車
100:引き出し動作の補助機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20