(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ルート表示方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/13 20060101AFI20221116BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20221116BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20221116BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20221116BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G08G1/13
G01C21/34
G01C21/26 C
G09B29/00 F
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2018177440
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 高広
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-308543(JP,A)
【文献】特開2012-112848(JP,A)
【文献】特開2009-014486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/13
G01C 21/34
G01C 21/26
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行ルートを地図上で表示するルート表示方法であって、
前記走行ルートの設定に影響を及ぼす施設又は特徴的場所である注目ポイントを複数選定し、
前記走行ルートが含まれる地図上の2次元範囲を第1階層の区分によって複数の第1階層領域に区分し、かつ前記第1階層領域の各々を更に第2階層の区分によって複数の第2階層領域に区分し、
前記第1階層領域内における前記注目ポイントである第1階層注目ポイントを前記第1階層領域の各々に対応して記憶し、かつ前記第2階層領域内における前記注目ポイントである第2階層注目ポイントを前記第2階層領域の各々に対応して記憶した注目ポイント情報を記憶し、
前記注目ポイント情報に基づき、前記走行ルートが前記第1階層領域の一つに入る場合には当該第1階層領域に対応した前記第1階層注目ポイントを前記地図上に表示し、かつ前記走行ルートが前記第2階層領域の一つに入る場合には当該第2階層領域に対応した前記第2階層注目ポイントを前記地図上に表示
し、
前記注目ポイント情報における前記第1階層注目ポイント又は前記第2階層注目ポイントを、ユーザ又はルート表示の目的に応じて複数種類定めることを特徴とするルート表示方法。
【請求項2】
前記注目ポイント情報において、
予め設定された前記第1階層注目ポイント、前記第2階層注目ポイントのうちの少なくともいずれかに対して有効/無効の設定が可能とされ、無効と設定された前記第1階層注目ポイント、前記第2階層注目ポイントは前記地図上に表示させないことを特徴とする請求項1に記載のルート表示方法。
【請求項3】
前記注目ポイント情報において、
前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数に対して数値を対応させて設定し、
当該数値の値に基づき前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数の中で表示させる優先順位を定め
、
前記注目ポイント情報における、前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数に設定された前記数値を、ユーザ又はルート表示の目的に応じて複数種類定めることを特徴とする請求項1又は2に記載のルート表示方法。
【請求項4】
前記第2階層領域の各々を更に第3階層の区分によって複数の第3階層領域に区分し、前記注目ポイント情報において、前記第3階層領域内における前記注目ポイントである第3階層注目ポイントを前記第3階層領域の各々に対応して記憶し、
前記走行ルートが前記第3階層領域の一つに入る場合には当該第3階層領域に対応した前記第3階層注目ポイントを前記地図上に表示することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のルート表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両を案内するためのルート表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線移動通信システムの進歩により、広範囲にわたり移動をする移動体(車両等)との間でもデータの送受信を行うことが可能となった。一方、GPS(Global Positioning System)測位技術の進歩によって、走行する移動体の位置情報が高精度で瞬時に得られるようになった。このため、これらの技術を融合させて、複数の車両の位置や走行状況をモニターする各種のシステムが用いられている。この車両がタクシーや運送用車両である場合には、こうした状況を把握することによって最適な配車状況を実現するための配車システムも用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、対象となる領域を複数の配車エリアに区分し、各配車エリア内において車両(タクシー)に優先度を設定し、配車の際には、指定された配車先(場所)と車両の位置関係だけでなく、この優先度も考慮して車両を選定するタクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システムが記載されている。これによって、配車エリアの特性に応じ、顧客にとって最適な車両を配車することができる。
【0004】
また、特許文献2には、空車状態にある車両の有無をエリア毎に認識し、空車と認識された車両を配車するシステムが記載されている。この際、配車を要求する顧客が同時に複数いる場合には、顧客に関する情報(待ち時間、利用頻度等)に応じて配車を行う。
【0005】
このような配車の指示は、車両に搭載された端末(移動局)と無線接続された管理センタ(基地局)により行われる。この際、管理センタは、配車された車両と配車先までの走行ルートを認識することができる。例えば、空車であり配車先までの到達時間が短いと推定される車両が複数ある場合には、
図7に示されるように、車両毎にその走行ルートと予想到達時間が表示される。ここでは、配車先(顧客迎え先)100となる駅の周囲で空車状態である車両として001、002、003、004が抽出され、各々の配車先100までの最短となる走行ルートが表示されている。各車両の走行状態が標準的なものであるとして上記の走行ルートを走行するのに要する時間が各車両の到着予想時間として図中の右側に表示されている。ここでは、到着予想時間が短い順に表示されており、この順序は車両を選択する際の優先順位とすることができる。
【0006】
また、上記のように空車状態の車両の配車先までの走行ルートだけではなく、顧客が乗車してから目的地に到達するまでの走行ルートも同様に表示することが可能である。これによって、走行時間を最短、料金を最低とするような走行ルートを設定することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-158830号公報
【文献】特開2018-49408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7の例においては、主に到達予想時間の最も短い車両として、例えば車両002が優先的に選択される。しかしながら、到達予想時間は、実際の道路の混雑状況や天候、あるいは周囲の催し物の状況等、様々な要因に応じて大きく変動する。また、実際には選択の対象となる各車両の仕様は同一ではなく、走行距離の最も短い車両が最適であるとは限らない。
【0009】
また、例えば走行する場所が観光地であり、顧客が観光客である場合には、乗車してから目的地に到達するまでの走行ルートが最短であることが好ましいとは限らない。この場合には、走行距離が長くなっても、人気のある観光スポットを通過するような走行ルートが好ましい。
【0010】
このため、上記のように車両の現在の位置と目的地の位置関係のみから走行ルートを設定したり、配車される車両を選定した場合には、適切ではない走行ルートや車両が設定される場合があった。このため、目的に応じた適切な走行ルートが選定しやすいルート表示方法が望まれた。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、車両が走行する走行ルートを地図上で表示するルート表示方法であって、前記走行ルートの設定に影響を及ぼす施設又は特徴的場所である注目ポイントを複数選定し、前記走行ルートが含まれる地図上の2次元範囲を第1階層の区分によって複数の第1階層領域に区分し、かつ前記第1階層領域の各々を更に第2階層の区分によって複数の第2階層領域に区分し、前記第1階層領域内における前記注目ポイントである第1階層注目ポイントを前記第1階層領域の各々に対応して記憶し、かつ前記第2階層領域内における前記注目ポイントである第2階層注目ポイントを前記第2階層領域の各々に対応して記憶した注目ポイント情報を記憶し、前記注目ポイント情報に基づき、前記走行ルートが前記第1階層領域の一つに入る場合には当該第1階層領域に対応した前記第1階層注目ポイントを前記地図上に表示し、かつ前記走行ルートが前記第2階層領域の一つに入る場合には当該第2階層領域に対応した前記第2階層注目ポイントを前記地図上に表示し、前記注目ポイント情報における前記第1階層注目ポイント又は前記第2階層注目ポイントを、ユーザ又はルート表示の目的に応じて複数種類定めることを特徴とする。
また、前記注目ポイント情報において、予め設定された前記第1階層注目ポイント、前記第2階層注目ポイントのうちの少なくともいずれかに対して有効/無効の設定が可能とされ、無効と設定された前記第1階層注目ポイント、前記第2階層注目ポイントは前記地図上に表示させない設定としてもよい。
また、前記注目ポイント情報において、前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数に対して数値を対応させて設定し、当該数値の値に基づき前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数の中で表示させる優先順位を定め、前記注目ポイント情報における、前記第1階層注目ポイントのうちの複数、又は前記第2階層注目ポイントのうちの複数に設定された前記数値を、ユーザ又はルート表示の目的に応じて複数種類定めてもよい。
また、前記第2階層領域の各々を更に第3階層の区分によって複数の第3階層領域に区分し、前記注目ポイント情報において、前記第3階層領域内における前記注目ポイントである第3階層注目ポイントを前記第3階層領域の各々に対応して記憶し、前記走行ルートが前記第3階層領域の一つに入る場合には当該第3階層領域に対応した前記第3階層注目ポイントを前記地図上に表示してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、目的に応じた適切な走行ルートが選定しやすいルート表示方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係るルート表示方法が実行される配車システム全体の構成を示す図である。
【
図2】配車システムで用いられる管理センタの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るルート表示方法が実行される移動局の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係るルート表示方法において用いられる注目ポイント情報の具体的内容を示す例である。
【
図5】実施の形態に係るルート表示方法による表示の例である。
【
図6】実施の形態に係るルート表示方法において用いられる注目ポイント情報の変形例を示す例である。
【
図7】従来のルート表示方法による表示の例である。
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るルート表示方法が実行される配車システム全体の構成を示す。ここでは、配車される各車両にはそれぞれ移動局10A~10Eが用いられる。移動局10A~10Eはそれぞれ車両(タクシー)に1対1に対応して各車両に搭載されるため、ここでは、車両全体も含めて各移動局として記載している。移動局10A~10EはGPS衛星Gが発したGPS(Global Positioning System)信号を受信して自身の位置情報(緯度、経度)を認識する位置情報認識部(図示せず)を具備する。各移動局としては、専用の無線通信端末を用いることができるが、通常使用されているスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末を用いることもできる。
【0016】
地上における複数の地点には、無線基地局20A~20Zが設置され、各無線基地局は、自身の近傍にある移動局と通信が可能とされる。このため、車両(移動局)の移動に伴って、移動局が通信可能となる無線基地局は変わる場合がある。
図1においては、移動局10A~10Eは通信可能範囲XA内で無線基地局20Aと通信可能とされる。ここで、各移動局は自身の位置情報を無線基地局20Aに送信する。また、各移動局は各車両の料金メータに接続され、料金メータは運行状態(信号待ち、渋滞等)に応じた自動的な制御や乗務員の操作により、車両の状態や情報を認識する。このように認識された状態や情報も移動局側から無線基地局20A側に送信される。ここで認識される車両の状態、情報としては、例えば(1)「実車」(顧客を乗せて目的地に向かっている状態)、(2)空車(顧客を乗せていない状態)、(3)「空車予定」(現在実車状態でありその後で空車になる予定時刻)、(4)「支払い」(車両が停止しており料金の支払処理を行っている状態)、(5)「休憩」(空車でありかつ乗務員が休憩する状態)等がある。
【0017】
無線基地局20A~20ZはネットワークNWを介して管理センタ30と接続される。このため、管理センタ30側では、その管理下にある車両(移動局10A~10E)の位置を無線基地局20A~20Zのいずれかを介して認識することができる。また、位置情報だけでなく上記のような各車両の状態、情報も、認識することができる。このような各車両の位置、状態、情報は、短い周期で定期的に管理センタ30が認識する。
【0018】
一方、顧客は、ネットワークNWを介して管理センタ30と接続された配車センタ40と接続し、配車の要求を管理センタ30に送信する。配車センタ30は、実際にはネットワークNWと接続された複数の端末である配車端末41A~41Yで構成され、各配車端末を操作するオペレータが顧客の要求を入力する。ここで入力される情報(配車情報)としては、顧客の特定情報(氏名、人数等)、配車先情報(顧客が乗車を希望する場所)、目的地情報(地名、施設名等)、配車希望時刻、希望車種等がある。
【0019】
管理センタ30は、配車センタ40から上記の配車情報を入手すると、上記のように入手したその時点での最新の各車両(移動局)の位置、状態、車両に関する情報に基づいて、この顧客に対して配車する車両を選定し、この車両の移動局にこの配車情報を送信する。これにより、この車両の乗務員は、自身が選定された旨、及びその後に向かうべき配車先、顧客を認識することができる。ここで、管理センタ30は、このように車両を選定するために、この車両の状態が上記の(2)「空車」となっているものを選定することができる。また、これ以外にも、(3)「空車予定」の時刻が近いもの、(4)「支払い」の状態となっているもの、も選定の対象とすることができる。更に、上記の要件を満たす車両のうち、配車先までの到達時間が最も短いものを最優先とすることができる。このように配車情報を入手した移動局が配車先に移動する途中の位置情報も上記と同様に管理センタ30が認識することができ、この移動局(車両)が配車先に到着し待機状態になったこと、顧客を乗せて目的地への走行を開始したことも、上記の車両に関する情報として、管理センタ30は認識することができる。なお、顧客の人数に応じ、同時に選択される車両は複数となる場合もある。また、配車情報(顧客側からの配車に対する要求)には、希望する車両の特性(車種、色等)等を含めることができ、この場合にはこの特性も考慮される。
【0020】
なお、
図1に示された構成自身は、例えば特許文献1等に記載されたシステムと共通する。なお、顧客は、例えばタクシー会社のホームページにアクセスする、顧客が所持する携帯端末のアプリケーションを用いて管理センタ30に情報を送信する、管理センタ30の自動受付に電話連絡する、等の手法により、上記の配車センタ40を介さずに、上記の配車情報を管理センタ30に入力することもできる。
【0021】
図2は、上記の管理センタ30の構成を示すブロック図である。管理センタ30は、機能毎に設けられた3つのサーバ(地図サーバ31、配車サーバ32、データベースサーバ33)を具備する。
【0022】
地図サーバ31は、各車両が走行する全ての領域の地図情報を管理するサーバであり、出発地点と目的地点が定められると、これらを結ぶ経路の探索や、その直線距離、走行距離(経路の総距離)、所要移動時間等の算出を行う経路探索部311を具備する。
【0023】
配車サーバ32は、配車する車両を地図サーバ31や後述するデータベースサーバ33を利用して行うサーバである。配車サーバ32は、上記の配車情報に応じて、配車に適した車両を検索(探車)する候補車検索部321と、候補車検索部321により検索された車両(移動局)に対して配車指示を行う配車指示部322と、を具備する。
【0024】
候補車検索部321は、上記の配車情報と、上記のように認識された各車両(移動局)の位置、状態、情報に応じて配車する候補となる車両を選定する。配車指示部322は、このように選定された車両(移動局)に対して上記の配車情報を送信する。
【0025】
この際に、データベースサーバ33は、選択された移動局に対して車両の現在地から配車先までの走行ルート、配車先から目的地までの走行ルートを指示し、移動局側で表示させる。本願発明においては、この際の走行ルートの表示方法に特徴を有する。このために用いられるデータとしては、車両の走行する領域内の各種の情報(エリア情報)と、上記のように移動局側から入手した各車両の位置、状態、情報がある。前者の記憶、管理にはエリア情報管理部331が、後者の記憶、管理には車両情報管理部332が、それぞれ設けられる。前記の通り、車両情報管理部332における車両の位置、状態、情報は、短時間で最新のものに更新される。
【0026】
本願発明の配車システムにおいては、特に、上記の走行ルートの表示方法に特徴を有する。
図3は、このように走行ルートを表示させる移動局10(10A~10E)の構成を示す図である。移動局10は、無線通信により上記のように管理センタ30と情報の授受を行うための無線通信部12、自身の位置を認識する位置認識部13、自身の動作に関わる各種のデータを記憶する記憶部14、車両の乗務員により操作される操作部15、地図、走行ルートをはじめとする各種の情報を表示させる表示部16と、移動局10側全体の制御を行う制御部11を具備する。
【0027】
制御部11は、管理センタ30側から入手した地図情報、指示された走行ルートを基にして、地図上の走行ルートを表示部16に表示させる。この際、単純に地図上に走行ルートを表示させるだけでなく、同様に管理センタ30側から入手したエリア情報に基づき、表示された範囲内における注目ポイントを走行ルートと共に表示させる。注目ポイントは、走行ルートの設定に影響を及ぼす施設又は特徴的場所であり、地図上で走行ルートと共に表示可能な対象である。ただし、ユーザがその存在を地図上で容易に認識できるためには表示可能な注目ポイントの数は限定されるため、表示される注目ポイントは限定される。
【0028】
ここで、この注目ポイントは、(X)車両が走行する広い範囲内においてその存在を認識しておくことが有効であるもの、(Y)車両が走行する範囲内において前者と比べると局所的にその存在を認識しておくことが有効であるもの、の2種類に区分される。前者の例としては、著名な観光地、レストラン、緊急時避難場所等がある。例えば、著名な観光地は、観光客にとっては、現在地からの距離が近くない場合(車両がその近傍にない場合)でも、その存在を認識することが好ましい場合が多い。レストラン、緊急時避難場所についても同様である。
【0029】
一方、後者の例としては、渋滞エリア(渋滞の発生頻度が高い場所)、注意エリア(事故発生率の高い場所)、コンビニエンスストア、トイレ等がある。渋滞エリアや注意エリアは、これらの場所の迂回が容易である場合には、車両がその近傍にいる場合においてのみその存在を認識すれば十分である。また、コンビニエンスストアやトイレは、その存在する数が多いために、車両のごく近傍のもののみを表示させれば十分である。また、逆に、広い範囲においてこれらの対象物を全て表示させた場合には、その表示される数が多くなりすぎ、ユーザがその存在を地図上で認識しにくい。
【0030】
このため、この管理センタ30では、上記の(X)広い範囲内においてその存在を認識しておくことが有効であるものに対応して、この広い範囲に対応した第1階層の領域区分が設定され、この領域(第1階層領域)内で上記の(X)となる注目ポイント(第1階層注目ポイント)が設定される。また、この領域が更に細かく区分された第2階層の領域区分が設定され、この領域(サブ領域:第2階層領域)内で上記の(Y)となる注目ポイント(第2階層注目ポイント)が設定され、注目ポイント情報としてデータベースサーバ33に記憶されて用いられる。
図4は、このように設定された注目ポイント情報として各領域、サブ領域に対応して設定された注目ポイントの具体的な例を示す表である。
【0031】
また、
図5は、ここで用いられるルート表示方法が用いられた表示部16や配車センタ40の配車端末41A~41Yの表示の例である。ここで表示された範囲内において、第1階層領域となる矩形形状の領域A(左上)、B(右上)、C(左下)、D(右下)が設定されている。また、領域Aについては、更にこれが第2階層領域となる矩形形状のサブ領域A1(左上)、A2(右上)、A3(左下)、A4(右下)が設定されている。同様に、領域B、C、Dについても、それぞれサブ領域B1~B4、C1~C4、D1~D4が設定されている。なお、各サブ領域は図示されるように直線で区分されているが、領域A~Dについては、これらは前記のように広い領域に対応し、図示されるようにこれらは隣接部分で重複する部分を有する。また、
図5においては、指示された走行ルートRは太い実線で示されている。
【0032】
図4において、領域A~Dにおいては、上記の(X)となる注目ポイント(第1階層注目ポイント)として、(1)観光地、(2)レストラン、(3)緊急時避難場所、の3種類が共通して設定されており、各注目ポイントの詳細情報として例えば領域A内における(1)観光地の具体的名称(城A)等が記憶されている。サブ領域A1においても、上記の(Y)となる注目ポイント(第2階層注目ポイント)として、(11)渋滞エリア、(12)注意エリア、(13)コンビニエンスストア(コンビニ)、(14)トイレの4種類が共通して設定されており、各注目ポイントの詳細情報としてその具体的名称等が記憶されている。なお、
図4においては、この詳細情報として名称のみ(あるいは該当なし)が記載されているが、実際には注目ポイント情報としてその正確な位置情報(緯度、経度)も対応して記憶されているため、これらの各注目ポイントを
図5の地図上に表示することができる。また、
図4の表においては、以下の例では無関係となるサブ領域A2、A3についてのこれらの詳細情報の記載は省略されている。
【0033】
ここで、どのような種類の注目ポイントを表示させるかは、予めユーザが選択させることができる。この設定は、
図4における「有効/無効」の選択によって行うことができる。例えば、
図4における領域Aの(2)レストランは、「無効」とされているため、走行ルートRによらずにその表示は行われない。
【0034】
図5においては、走行ルートRは、領域A、B、C内を通過するが、領域Dは通過しない。また、走行ルートRは領域Aにおいてはサブ領域A4のみを通過しサブ領域A1~A3は通過しない。また、走行ルートRは領域Bにおいてはサブ領域B1、B2を通過しサブ領域B3、B4は通過しない。また、走行ルートRは領域Cにおいてはサブ領域C2、C3を通過しサブ領域C1、C4は通過しない。
【0035】
このルート表示方法においては、走行ルートRが通過する領域、サブ領域における注目ポイントのみが走行ルートと共に表示される。このため、まず、領域Aにおいては、領域Aに対応する第1階層注目ポイントとして、実際にはサブ領域A1内にある(1)観光地が表示されている。走行ルートRが通過するサブ領域A4においては、該当する第2階層注目ポイントがあれば表示されるところ、第2階層注目ポイントとなる対象はサブ領域A4には存在しないため、サブ領域A4では第2階層注目ポイントは表示されない。
【0036】
一方、領域Bにおいては、第1階層注目ポイントとして(2)レストランと(3)緊急避難場所が存在しているが、(2)レストランは無効とされているため、実際にはサブ領域B3内にある(3)緊急避難場所のみが表示されている。また、第2階層注目ポイントとして、サブ領域B1においては(11)渋滞エリア、(13)コンビニが、サブ領域B2においては(12)注意エリアが、それぞれ表示されている。
【0037】
領域Cにおいては、対応する第1階層注目ポイントとして該当する対象が存在しない。一方、第2階層注目ポイントとして、サブ領域C2においては(12)注意エリア、(13)コンビニが、サブ領域C3においては(11)渋滞エリアがそれぞれ表示されている。
【0038】
このように、上記のルート表示方法においては、領域(第1階層領域)、これよりも狭いサブ領域(第2階層領域)毎に注目ポイントが選択して表示されるために、必要な注目ポイントのみを選択して表示させることができる。この際、走行ルート設定の目的に応じて、前記の「有効/無効」の設定を行うことにより、更に必要な注目ポイントを絞り込んで表示させることができる。例えば、この走行ルートRが配車のために設定され、配車先までに最短時間で到着するためのものである場合には、
図4における走行時間に影響を及ぼす(11)渋滞エリア、(12)注意エリア以外の項目は全て無効としてもよい。
【0039】
このため、上記のルート表示方法によれば、目的に応じた適切な走行ルートが選定しやすくなる。この際、例えば特許文献1、2に記載の技術においては、区分された領域内の情報が配車のために用いられたのに対し、上記のルート表示方法においては、領域の区分は表示される注目ポイントの選定のために用いられている。
【0040】
また、上記の例では、予め注目ポイントとして設定される対象を(1)~(3)、(11)~(14)として設定した上で、表示させる注目ポイントをその中から「有効/無効」によって選択したが、例えば、
図4における「優先度」を設定してもよい。この場合、はじめには優先度1の注目ポイントのみが表示され、例えばユーザの操作部15に対する操作により、優先度2の注目ポイントも表示させ、更なる操作により優先度3の注目ポイントも表示させる設定とすることができる。この際、例えば
図4の例では、領域Aにおいて(1)観光地は城Aのみが存在するが、(1)観光地として他の施設も同様に領域Aに存在する場合もある。こうした場合には、これらの各々に異なる優先度を付与してもよい。サブ領域内においても同様である。
【0041】
このように「有効/無効」や優先度を設定する場合には、各領域、サブ領域において予め注目ポイントを設定し、ユーザやルート表示の目的等に応じてこれらの設定のみを変えて用いることができる。
図6は、こうした場合における3種類(3人のユーザ)の設定の例を示す。ここで、ユーザ1は例えば管理センタ30の運行管理者であり、この場合には、車両の運行の安全管理が最重要であるため、(3)緊急時避難場所や(12)注意ポイントが有効かつその優先度が高くされる。ユーザ2は例えば車両の乗務員であり、この場合には、観光客を乗せた場合の運行を考慮し、(1)観光地、(12)注意ポイントが有効かつその優先度が高くされる。ユーザ3は例えば観光ツアー企画者であり、この場合には、観光客の利便性を最優先とし、(1)観光地、(14)トイレが有効かつその優先度が高くされる。
【0042】
これらの場合には、領域、サブ領域の設定と共に、注目ポイントとして選定された対象自身は全て共通として、予めデータベースサーバ33に記憶させることができる。その後、ユーザ、ルート表示の目的に応じて「有効/無効」や優先度を適宜変えて用いることができる。
【0043】
また、
図4においては、優先度(1以降の整数)と共に、重要度がポイントとして設定されている。例えば、重要度は、優先度とは逆に値が大きな方が表示の対象とされやすくなるように設定することができる。この場合、走行ルートの表示だけでなく、走行ルートの選定のためにもこの重要度を用いることができる。例えば、
図5のように走行ルートRの近傍において表示された注目ポイントの重要度を累計し、走行ルートRを複数種類設定してこの重要度の累計値を比較し、この累計値が最も大きくなった走行ルートを採用するように管理センタ30が指示を出すこともできる。
図6における前記の「有効/無効」、優先度と同様に、重要度もユーザやルート表示あるいはルート設定の目的に応じて適宜設定が可能である。この場合においても、注目ポイントの具体的内容としては、予め設定されたものを変えずに用いることができる。この場合、例えば、重要度の低い注目ポイントは走行ルートRとの間の距離が一定値よりも遠い場合には表示させず、重要度の高い注目ポイントはこの距離が一定値よりも遠くとも表示させるように、上記の優先度による選定の場合よりも更に詳細な場合分けで表示を行うことができる。
【0044】
また、前記のように、領域A~Dの各々において選定される注目ポイントは(X)車両が走行する広い範囲内においてその存在を認識しておくことが有効であるものであり、その数は少なく、隣接する領域においても認識することが好ましい。このため、
図5において、領域A~Dは単純に分割された領域ではなく、隣接部分で互いに重複するように設定されている。これによって、領域内でデータとしてリストアップされた注目ポイントに漏れが発生することが抑制される。一方、サブ領域A1~A4等において選定される注目ポイントは(Y)車両が走行する範囲内において局所的にその存在を認識しておくことが有効であるものであり、その数も多い。このため、サブ領域間で注目ポイントが重複することを抑制するために、
図5において、隣接するサブ領域間では重複部分は存在しないように設定されている。
【0045】
また、上記のように注目ポイント(第1階層注目ポイント、第2階層注目ポイント)として設定される項目(1)~(3)、(11)~(14)の内容は、適宜設定が可能である。第1階層領域内、第2階層領域内におけるこれらの設定を目的等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0046】
また、上記の例では、第1階層領域(A~D)、第2階層領域(A1~A4等)が設定されたが、表示範囲が広い場合には、同様にして、第2階層領域を更に区分した第3階層の区分により第3階層領域を設定し、各第3階層領域で注目ポイント(第3階層注目ポイント)を設定し、これらに対応した表示を上記と同様に行わせてもよい。逆に、第1階層領域A~Dを含む広い領域が更に広い領域を区分した領域となるような設定としてもよい。すなわち、上記の例ではこのような区分の階層は2であったが、このような区分の階層を3以上としてもよい。
【0047】
なお、上記の例は、上記のルート表示方法がタクシーにおいて用いられ、上記の注目ポイント情報は管理センタ30側で記憶され、表示は移動局側で行われるものとした。しかしながら、同様に車両の走行ルートを表示させる場合において上記の構成は有効であり、他の車両、例えばバス、運送用車両、一般乗用車(上記と同様に観光用に用いる場合も含む)、緊急車両等においても有効である。こうした場合には、上記のような管理センタを用いずに、これらの車両側の装置(カーナビゲーションシステム等)において上記の注目ポイント情報を記憶させ、同様の表示方法を実行させることができる。この場合には、単なる走行ルートの表示を行うだけでなく、例えば上記の重要度を用いた最適ルートの設定等の手法は特に有効となる。
【0048】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0049】
10、10A~10E 移動局
11 制御部
12 無線通信部
13 位置認識部
14 記憶部
15 操作部
16 表示部
20A~20Z 無線基地局
30 管理センタ
31 地図サーバ
32 配車サーバ
33 データベースサーバ
40 配車センタ
41A~41Y 配車端末
100 配車先
311 経路探索部
321 候補車検索部
322 配車指示部
331 エリア情報管理部
332 車両情報管理部
XA 通信可能範囲
G GPS衛星
NW ネットワーク
001~004 車両