(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】無線伝送システム及び無線伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04J 3/16 20060101AFI20221116BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20221116BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20221116BHJP
H04J 3/08 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H04J3/16 Z
H04W72/04 131
H04W56/00 130
H04J3/08 A
(21)【出願番号】P 2018178737
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」に係る委託研究、産業力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 清志
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06813259(US,B1)
【文献】特開2015-095793(JP,A)
【文献】特開2003-309578(JP,A)
【文献】特開平11-355280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/16
H04W 72/04
H04W 56/00
H04J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側の無線装置と受信側の無線装置の間が複数の無線区間で構成された無線伝送システムにおいて、
各々の無線区間で重複がないように一定のパターンで無線フレームを割り当てると共に、その割り当てパターンを周期的に繰り返すように設定されており、
前記送信側の無線装置は、前記受信側の無線装置に送信するデータに、
当該データが入力されたタイミングで得られたフレームカウンタ値から現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号を差し引いたオフセット値を付与し、
前記受信側の無線装置は、受信したデータに付与された
オフセット値と現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号とを加算した値と、前記受信側の無線装置で管理しているフレームカウンタ値とが一致したタイミングでデータ出力することで、当該データが前記送信側の無線装置に入力されたタイミングに対応するタイミングで
のデータ出力
を実現することを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
送信側の無線装置と受信側の無線装置の間が複数の無線区間で構成された無線伝送システムにより実行される無線伝送方法において、
前記無線伝送システムは、各々の無線区間で重複がないように一定のパターンで無線フレームを割り当てると共に、その割り当てパターンを周期的に繰り返すように設定されており、
前記送信側の無線装置が、前記受信側の無線装置に送信するデータに、
当該データが入力されたタイミングで得られたフレームカウンタ値から現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号を差し引いたオフセット値を付与し、
前記受信側の無線装置が、受信したデータに付与された
オフセット値と現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号とを加算した値と、前記受信側の無線装置で管理しているフレームカウンタ値とが一致したタイミングでデータ出力することで、当該データが前記送信側の無線装置に入力されたタイミングに対応するタイミングで
のデータ出力
を実現することを特徴とする無線伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いてデータを伝送する無線伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1には、公共ブロードバンド無線システム(以下、公共BB無線システム)の構成例を示してある。
図1の公共BB無線システムは、送信側のネットワーク機器である送信処理部1が基地局(親局)2に接続され、受信側のネットワーク機器である受信処理部4が端末局(子局)3に接続された構成となっている。送信処理部1に入力されたデータは、基地局(親局)2から端末局(子局)3へ無線送信され、受信処理部4から出力される。なお、端末局3から基地局2にデータを送信する場合には、これらの関係が逆になる。
【0003】
図2には、公共BB無線システムで使用される無線装置の構成例を示してある。送信側の無線装置10は、送信データ処理部11と、MAC(Medium Access Control layer)部12と、PHY(PHYsical layer)部13と、RF(Radio Frequency)部14とを備えている。受信側の無線装置20は、RF部21と、PHY部22と、MAC部23と、受信データ処理部24とを備えている。
【0004】
送信データ処理部11及び受信データ処理部24は、無線装置に接続されたネットワーク機器とMAC部12,23との接続インタフェースとなるブロックである。MAC部12,23は、無線フレームの組み立てや分解などを行うブロックである。PHY部13,22は、変復調や誤り訂正などを行うブロックである。RF部14,21は、アンテナにより送受信する信号の増幅や変復調などを行うブロックである。
【0005】
送信側の無線装置10に接続されたネットワーク機器から入力されたデータは、送信データ処理部11、MAC部12、PHY部13、RF部14の順に処理され、無線装置10のアンテナから送信される。受信側の無線装置20のアンテナで受信されたデータは、RF部21、PHY部22、MAC部23、受信データ処理部24の順に処理され、無線装置20に接続されたネットワーク機器に出力される。
【0006】
一般的なデジタル無線方式では、無線信号の時間方向の情報を一定の期間で分割して伝送する。この一定の期間に分割された無線信号のブロックを無線フレームと呼ぶ。
図3には、公共BBの規格であるARIB STD-T103(IEEE 802.16-2009準拠)のようなOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)の無線フレームの構成例を示してある。
【0007】
公共BB無線システムの無線通信は、連続した無線フレームを使用して実現される。1つの無線フレームは、DL(Downlink)サブフレームとUL(Uplink)サブフレームに時間方向に分割される。DLサブフレームは、基地局から端末局への下り方向の通信に使用され、ULサブフレームは、端末局から基地局への上り方向の通信に使用される。
公共BB無線システムでは、基地局と端末局間で無線フレームが連続しているため、
図4に示すように、間欠的なデータ伝送を行っても、送信側のデータ入力タイミングと受信側のデータ出力タイミングのばらつきは概ね一定に保たれる。
【0008】
このような無線システムに関し、従来より種々の発明が提案されている。例えば、特許文献1には、同一の無線局に複数設けられてそれぞれ他の無線局との間で無線通信を行う無線ユニットにおいて、他の無線ユニットとの間でフレームタイミングを一致させるための発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5には、多段中継による無線伝送システムの構成例を示してある。
図5の無線伝送システムは、
図1に例示したシステムの基地局2と端末局3の間に、第1中継局(子局)5と、第2中継局(子局)6とを配置した構成となっている。すなわち、基地局2と端末局3の間の通信は、2段の中継局5,6によって中継される。
【0011】
このような中継無線方式において、中継の各無線リンクを時分割の無線フレームで伝送するシステムが提案されている。
図6には、多段中継の無線伝送システムで使用される無線フレームの構成例を示してある。同図の例では、無線フレームを一定の周期(繰り返し周期)でグループ化すると共に、繰り返し周期内で無線フレームを時分割して各無線区間に割り当てている。換言すれば、各々の無線区間で無線フレームが重複しないように一定のパターンで割り当てると共に、その割り当てパターンを周期的に繰り返すように設定してある。このようなフレーム割り当てとすることで、互いの無線送受信の干渉を回避する仕組みとなっている。
【0012】
ここで、
図6のフレーム割当てにおいて、端末局から基地局にデータを送信する場合を考える。
図7、
図8には、従来の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送の例を示してある。
図7は、データの入力周期が繰り返し周期より短い場合の例であり、
図8は、データの入力周期が繰り返し周期より長い場合の例である。
図7、
図8において、端末局は送信側の無線装置10として動作し、基地局は受信側の無線装置20として動作する。また、図の下部にある複数の上向き矢印は、端末局にデータが入力されたタイミングを示し、図の上部にある複数の上向き矢印は、基地局からデータが出力されたタイミングを示している。また、図内の数字はデータを表しており、同じデータには同じ数字を付すことで、端末局から基地局に伝送されるデータの流れを視覚的に表現している。
【0013】
図7の例では、無線フレームの繰り返し周期(12フレーム周期)より短い10フレーム周期で端末局にデータが入力されている。この場合、各無線区間への無線フレームの割り当て周期がデータ入力周期より長いため、基地局からデータを出力する間隔が少し長くなるところ(1→2→3→4、5→6→7)と、出力が連続するところ(4→5)とがある。
【0014】
一方、
図8の例では、無線フレームの繰り返し周期(12フレーム周期)より長い14フレーム周期で端末局にデータが入力されている。この場合、各無線区間への無線フレームの割り当て周期がデータ入力周期より短いため、基地局からデータを出力する間隔が全体的に少し短くなり(1→2→3、4→5)、一部で長くなる(3→4)。
【0015】
このように、従来の多段中継の無線伝送システムは、端末局に入力されたデータは、端末局への入力周期に応じて、データ入力間隔とは異なる間隔で基地局から出力される構成となっていた。すなわち、従来の多段中継の無線伝送システムは、端末局への入力間隔と同じ間隔で基地局から出力する必要があるデータの伝送には対応していなかった。このため、そのようなデータを取り扱うには、基地局や端末局に接続されたネットワーク機器側に、入力データにタイムスタンプや時刻情報などを付す仕組みや、それらの情報に応じたタイミングで受信データを出力する仕組みなどを追加する必要があった。
【0016】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、送信側にデータが入力された間隔と同じ間隔で受信側からデータを出力することが可能な無線伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明では、無線伝送システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る無線伝送システムは、送信側の無線装置と受信側の無線装置の間が複数の無線区間で構成された無線伝送システムにおいて、各々の無線区間で重複がないように一定のパターンで無線フレームを割り当てると共に、その割り当てパターンを周期的に繰り返すように設定されており、前記送信側の無線装置は、前記受信側の無線装置に送信するデータに、当該データが入力されたタイミングを示すフレーム情報を付与し、前記受信側の無線装置は、受信したデータに付与されたフレーム情報と、前記割り当てパターンの繰り返し周期の無線フレーム数とに基づいて、当該データが前記送信側の無線装置に入力されたタイミングに対応するタイミングで、データ出力することを特徴とする。
【0018】
ここで、一構成例として、前記送信側の無線装置は、前記受信側の無線装置に送信するデータに、当該データが入力されたタイミングで得られたフレームカウンタ値を、前記フレーム情報としてデータに付与し、前記受信側の無線装置は、受信したデータに付与されたフレームカウンタ値を前記繰り返し周期の無線フレーム数で除算した余りと、前記受信側の無線装置で管理しているフレームカウンタ値を前記繰り返し周期の無線フレーム数で除算した余りとが一致したタイミングで、データ出力するよう構成される。
【0019】
また、別の構成例として、前記送信側の無線装置は、前記受信側の無線装置に送信するデータに、当該データが入力されたタイミングで得られたフレームカウンタ値から現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号を差し引いたオフセット値を、前記フレーム情報としてデータに付与し、前記受信側の無線装置は、受信したデータに付与されたオフセット値と現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号とを加算した値と、前記受信側の無線装置で管理しているフレームカウンタ値とが一致したタイミングで、データ出力するよう構成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、送信側にデータが入力された間隔と同じ間隔で受信側からデータを出力することが可能な無線伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】公共BB無線システムの構成例を示す図である。
【
図2】公共BB無線システムで使用される無線装置の構成例を示す図である。
【
図3】公共BB無線システムで使用される無線フレームの構成例を示す図である。
【
図4】公共BB無線システムによる間欠データ伝送の例を示す図である。
【
図5】多段中継の無線伝送システムの構成例を示す図である。
【
図6】多段中継の無線伝送システムで使用される無線フレームの構成例を示す図である。
【
図7】従来の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送(データの入力周期が繰り返し周期より短い場合)の例を示す図である。
【
図8】従来の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送(データの入力周期が繰り返し周期より長い場合)の例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る無線伝送システムで使用される無線装置の構成例を示す図である。
【
図10】
図9の無線伝送システムにおける無線区間パケットのフレームフォーマットの例を示す図である。
【
図11】
図9の無線伝送システムにおけるフレーム情報付与部の処理フローの例を示す図である。
【
図12】
図9の無線伝送システムにおけるタイミング復元部の処理フローの例を示す図である。
【
図13】
図9の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送(データの入力周期が繰り返し周期より短い場合)の例を示す図である。
【
図14】
図9の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送(データの入力周期が繰り返し周期より長い場合)の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る無線伝送システムについて、図面を参照して説明する。
図9には、本発明の一実施形態に係る無線伝送システムで使用される無線装置の構成例を示してある。本例の無線伝送システムは、例えば、多段中継による映像伝送に使用される。
【0023】
無線装置(送信局)110は、データ入力側のネットワーク機器が接続される無線装置であり、送信データ処理部111と、MAC部112と、PHY部113と、RF部114とを備えている。送信データ処理部111、PHY部113、RF部114は、従来の無線装置10の送信データ処理部11、PHY部13、RF部14と同じ動作を行う。また、MAC部112は、従来の無線装置10のMAC部112と基本的な動作は同じだが、フレーム情報付与部115を有する点で異なっている。
【0024】
無線装置(受信局)120は、データ出力側のネットワーク機器が接続される無線装置であり、RF部121と、PHY部122と、MAC部123と、受信データ処理部124とを備えている。RF部121、PHY部122、受信データ処理部124は、従来の無線装置20のRF部21、PHY部22、受信データ処理部24と同じ動作を行う。また、MAC部123は、従来の無線装置20のMAC部23と基本的な動作は同じだが、タイミング復元部125を有する点で異なっている。
【0025】
無線装置(中継局)130は、無線装置110と無線装置120の間の通信を中継する無線装置であり、RF部131と、PHY部132と、MAC部133と、PHY部134と、RF部135とを備えている。RF部131、PHY部132は、従来の無線装置20のRF部21、PHY部22と同じ動作を行う。また、PHY部134、RF部135は、従来の無線装置10のPHY部13、RF部14と同じ動作を行う。また、MAC部133は、従来の中継用の無線装置のMAC部と基本的な動作は同じだが、フレーム情報受け渡し部136を有する点で異なっている。
【0026】
ここで、無線装置110~130は、それぞれの無線フレームが時間的に同期するように、無線フレームのフレーム番号を生成するフレームカウンタを制御している。また、無線フレームの繰り返し周期も、無線装置110~130のそれぞれで同期するように制御されているものとする。
【0027】
送信側の無線装置110のMAC部112が有するフレーム情報付与部115は、送信データ処理部111から入力されたデータをMACデータに変換する際に、当該データが入力されたときのMAC部112で管理されるフレームカウンタ値を、フレーム情報としてMACデータに付与する。フレーム情報付与部115によりフレームカウンタ値が付与されたMACデータは、PHY部113へ出力される。
【0028】
受信側の無線装置120のMAC部123が有するタイミング復元部125は、PHY部122から入力されたMACデータに付与されたフレームカウンタ値と、無線フレームの繰り返し周期と、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値とに基づいて、受信データ処理部124にデータを出力するタイミングを、MACデータに付与されたフレームカウンタ値に応じたタイミングとなるように制御する。
【0029】
具体的には、MACデータに付与されたフレームカウンタ値を無線フレームの繰り返し周期で除算した余りと、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値を無線フレームの繰り返し周期で除算した余りとを比較し、両者が一致したタイミングで、データの出力が行われるよう制御する。
【0030】
なお、上記の手法は一例に過ぎず、他の手法によりデータ出力のタイミングを制御することも可能である。例えば、MACデータに付与されたフレームカウンタ値に無線フレームの繰り返し周期を加算した値が、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値と一致したタイミングで、データの出力が行われるよう制御してもよい。ただし、この手法では、MACデータに付与されたフレームカウンタ値に繰り返し周期を加算した値が、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値よりも小さい(既に過ぎている)可能性がある。この場合には、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値より大きくなるまで繰り返し周期の加算を繰り返した後に、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値との比較を行えばよい。
【0031】
中継動作を行う無線装置130のMAC部133が有するフレーム情報受け渡し部136は、MAC部133に入力されたMACデータに付与されたフレームカウンタ値を、MAC部133から出力するMACデータに付与する。すなわち、送信側の無線装置110におけるデータ入力時のフレームカウンタ値を受信側の無線装置120に引き継ぐように動作する。
【0032】
図10には、本例の無線伝送システムで使用される無線区間パケットであるPDU(Protocol Data Unit)のフレームフォーマットの例を示してある。「Generic MAC header」は、PDUに共通に付与されるヘッダである。「Other subheader」は、Generic MAC headerに付随するその他のヘッダ(オプション)である。「CRC(Cyclic Redundancy Check)-32」は、、誤り検出符号の一種であり、PDUの整合性チェックに使用される。本例の無線伝送システムでは、PDUに「Frame information subheader」を追加し、このサブヘッダに送信側の無線フレームのフレーム情報を格納するように構成してある。
【0033】
図11には、フレーム情報付与部115の処理フローの例を示してある。
フレーム情報付与部115は、送信データ処理部111からのデータ入力を待ち(ステップS11)、データ入力の有無を判定する(ステップS12)。データ入力があった場合(ステップS12;Yes)には、MAC部112で管理されるフレームカウンタ値を読み込み(ステップS13)、そのフレームカウンタ値をフレーム情報としてMACデータに付与し(ステップS15)、MACデータをPHY部113へ出力する(ステップS15)。
【0034】
図12には、タイミング復元部125の処理フローの例を示す図である。なお、図中の「%」は、整数値を整数値で割った余りを算出する演算子である。
タイミング復元部125は、PHY部122からのデータ入力を待ち(ステップS21)、データ入力の有無を判定する(ステップS22)。データ入力があった場合(ステップS22;Yes)には、入力されたMACデータに付与されたフレームカウンタ値(A)と、無線フレームの繰り返し周期(B)を取得する(ステップS23)。その後、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値(C)を読み込み(ステップS24)、MACデータに付与されたフレームカウンタ値(A)を無線フレームの繰り返し周期(B)で除算した余り(A%B)と、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値(C)を無線フレームの繰り返し周期(B)で除算した余り(C%B)とを比較する(ステップS25)。両方の値が一致しない場合(ステップS25;No)には、次の無線フレームまで待機してステップS24に戻る。そして、両方の値が一致した場合(ステップS25;Yes)に、受信データ処理部123へのデータ出力を行う(ステップS26)。
【0035】
図13、
図14には、本例の無線伝送システムにおける多段中継の間欠データ伝送の例を示してある。
図13は、データの入力周期が繰り返し周期より短い場合の例であり、
図14は、データの入力周期が繰り返し周期より長い場合の例である。
図13、
図14において、端末局は送信側の無線装置110として動作し、基地局は受信側の無線装置120として動作する。また、図の下部にある複数の上向き矢印は、端末局にデータが入力されたタイミングを示し、図の上部にある複数の上向き矢印は、基地局からデータが出力されたタイミングを示している。また、図内の数字はデータを表しており、同じデータには同じ数字を付すことで、端末局から基地局に伝送されるデータの流れを視覚的に表現している。また、図中の破線ブロックは、従来の無線伝送システムによるデータ出力のタイミングを示している。
【0036】
本例の無線伝送システムによれば、
図13に示すように、データの入力周期が繰り返し周期より短い場合に、端末局にデータが入力された間隔と同じ間隔で基地局からデータを出力することが可能となる。また、
図14に示すように、データの入力周期が繰り返し周期より長い場合にも、端末局にデータが入力された間隔と同じ間隔で基地局からデータを出力することが可能となる。
【0037】
ここで、上記の説明では、送信側のデータ入力時のフレームカウンタ値をフレーム情報として用いる構成となっていたが、フレームカウンタ値はデータサイズが比較的大きい。そこで、フレームカウンタ値に代えて、無線フレームの繰り返し周期の先頭からのオフセットをフレーム情報として用いることで、フレーム情報のデータサイズを縮小することが可能となる。
【0038】
この場合、フレーム情報付与部115は、送信データ処理部111から入力されたデータをMACデータに変換する際に、当該データが入力されたときのMAC部112で管理されるフレームカウンタ値と、現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームの無線フレーム番号とを取得し、データ入力時点のフレームカウンタ値から繰り返し周期の先頭の無線フレームの無線フレーム番号を差し引いたオフセット値を、フレーム情報としてMACデータに付与すればよい。
【0039】
また、タイミング復元部125では、現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号に、MACデータに付されたオフセット値を加算して得られたタイミングを、受信データ処理部123にデータを出力するタイミングとすればよい。すなわち、MACデータに付されたオフセット値と現在の繰り返し周期の先頭の無線フレームのフレーム番号とを加算した値と、MAC部123で管理されるフレームカウンタ値とを比較し、両者が一致したタイミングで、データの出力が行われるよう制御すればよい。
【0040】
ARIB STD-T103(IEEE 802.16-2009準拠)の規格では、フレーム番号(フレームカウンタ値)は24ビットとして規定されている。無線フレームの繰り返し周期が255フレーム以内であれば、オフセット値は8ビットで済み、無線フレームの繰り返し周期が16フレーム以内であれば、オフセット値は4ビットで済む。したがって、フレームカウンタ値に代えてオフセット値を用いることで、フレーム情報のデータサイズを大幅に縮小できることが分かる。
【0041】
以上説明したように、本例の無線伝送システムは、各々の無線区間で重複がないように一定のパターンで無線フレームを割り当てると共に、その割り当てパターンを周期的に繰り返すように設定されている。そして、送信側の無線装置110において、MAC部112に設けられたフレーム情報付与部115が、受信側の無線装置120に送信するデータに、当該データが入力されたタイミングを示すフレーム情報を付与する。また、受信側の無線装置120において、MAC部123に設けられたタイミング復元部125が、受信したデータに付与されたフレーム情報と、割り当てパターンの繰り返し周期の無線フレーム数とに基づいて、当該データが送信側の無線装置110に入力されたタイミングに対応するタイミングで、データ出力する。このような構成により、送信側の無線装置110にデータが入力された間隔と同じ間隔で、受信側の無線装置120からデータを出力することが可能となる。
【0042】
ここで、上記の説明では、送信側と受信側の間に2つの中継局を配置した無線伝送システムを例に挙げたが、中継局の数は任意であり、1つでもよいし、3以上でもよい。
また、上記の説明では、データの送信側を端末局とし、データの受信側を基地局とした上り方向の通信を例に挙げたが、本発明は下り方向の通信にも適用することもできる。また、本発明は、上り方向の通信と下り方向の通信の両方に適用してもよく、その場合には、無線装置110の機能及び無線装置120の機能を一体的に備えた装置を、データの送信側と受信側のそれぞれに配置すればよい。
また、各々の無線区間に対する無線フレームの割り当てパターンは、上述した例に限定されるものではなく、種々の割り当てパターンを使用することができる。
【0043】
以上、本発明について実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線伝送システムに限定されるものではなく、上記以外の無線伝送システムにも広く適用できることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、送信側の無線装置と受信側の無線装置の間が複数の無線区間で構成された種々の無線伝送システムに利用することができる。例えば、医療、防災、減災などの分野の無線伝送システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:送信処理部、 2:基地局、 3:端末局、 4:受信処理部、 5:第1中継局、 6:第2中継局、 10:無線装置(送信局)、 11:送信データ処理部、 12:MAC部、 13:PHY部、 14:RF部、 20:無線装置(受信局)、 21:RF部、 22:PHY部、 23:MAC部、 24:受信データ処理部、 110:無線装置(送信局)、 111:送信データ処理部、 112:MAC部、 113:PHY部、 114:RF部、 115:フレーム情報付与部、 120:無線装置(受信局)、 121:RF部、 122:PHY部、 123:MAC部、 124:受信データ処理部、 125:タイミング復元部、 130:無線装置(中継局)、 131:RF部、 132:PHY部、 133:MAC部、 134:PHY部、 135:RF部、 136:フレーム情報受け渡し部