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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20221116BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221116BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221116BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221116BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F01N3/20 A ZAB
F01N3/24 E
F01N3/035 E
F01N3/08 A
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 222
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018181952
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051346
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084734(JP,A)
【文献】特開2000-265823(JP,A)
【文献】特開2010-144575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/24
F01N 3/035
F01N 3/08
B01D 53/94
B01D 46/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気された排気ガスが通過する排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を補足するフィルタと、
前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、前記フィルタの下流側の前記排気通路に再接続され、前記フィルタの下流側の前記排気通路から前記触媒の上流側の前記排気通路へ前記排気ガスを循環させる循環路と、
前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、当該分岐される箇所の下流側であって前記触媒の上流側の前記排気通路に再接続される積極放熱通路と、
前記積極放熱通路に設けられ、前記積極放熱通路に流れる前記排気ガスから排熱を回収する排熱回収器と、
前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す放熱制御部と、
を備え、
前記放熱制御部は、前記フィルタの温度が、前記フィルタの再生が促進される温度以上である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタの下流側の前記排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒を備える、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記循環路は、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路に再接続される、請求項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記循環路は、前記フィルタの下流側であって前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の前記排気通路に再接続される、請求項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
エンジンから排気された排気ガスが通過する排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を補足するフィルタと、
前記排気通路における前記フィルタの下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒と、
前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路に再接続され、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路から前記触媒の上流側の前記排気通路へ前記排気ガスを循環させる循環路と、
前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、当該分岐される箇所の下流側であって前記触媒の上流側の前記排気通路に再接続される積極放熱通路と、
前記積極放熱通路に設けられ、前記積極放熱通路に流れる前記排気ガスから排熱を回収する排熱回収器と、
前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す放熱制御部と、
を備え、
前記放熱制御部は、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度が、前記窒素酸化物吸蔵触媒による前記排気ガスに含まれる窒素酸化物の浄化が促進される温度の範囲内である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記放熱制御部は、前記フィルタの温度が、前記フィルタの再生が促進される温度以上である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、請求項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記放熱制御部は、前記触媒の温度が、前記触媒による前記有害物質の浄化が促進される温度の範囲内である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、請求項から請求項のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記触媒は、前記排気ガスに含まれる炭化水素又は一酸化炭素を浄化する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
前記触媒は、三元触媒である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項10】
前記触媒の温度が所定の温度以上である場合に、前記排気ガスを前記フィルタの下流側の前記排気通路から前記循環路を通過させ、前記触媒の上流側の前記排気通路に流す排気ガス制御部と、を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記排熱回収器は、エンジンに設けられるシリンダーヘッドの内部に位置する、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両のエンジンから排出される排気ガスには有害物質が含まれている。例えば、排気ガスに含まれる有害物質には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、又は窒素酸化物(NOx)などの物質がある。従来、排気ガスに含まれるこれらの有害物質を無害な物質に浄化する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、内燃機関の排気ガス中の炭化水素を吸蔵する炭化水素吸蔵材と、炭化水素吸蔵材から脱離した炭化水素を浄化する触媒と、エンジン始動直後から触媒の温度を早期に活性化させる触媒早期暖機手段を備える内燃機関の排ガス浄化装置が開示されている。特許文献1に記載の技術は、触媒早期暖機手段により、エンジン始動直後から触媒の温度を上昇させて触媒を早期に活性化する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-164930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンから排気される排気ガスに含まれる有害物質には、HC、CO、又はNOxの他に、粒子状物質の煤(C)がある。排気ガスに含まれる煤を除去する方法には、排気ガスが流れる排気通路に煤を捕獲するためのフィルタを設け、当該フィルタにより排気ガスに含まれる煤を捕獲する方法がある。ここで、フィルタに所定量以上の煤が堆積し、フィルタが煤を捕獲する能力が低下したときには、煤をフィルタから除去する必要がある。煤をフィルタから除去する方法には、捕獲された煤を燃焼させて二酸化炭素としてフィルタから排気する方法がある。煤を燃焼させるためには、煤を高温にする必要がある。フィルタに捕獲された煤を高温にする方法には、煤が捕獲されたフィルタに高温の排気ガスを流す方法がある。
【0006】
煤を捕獲するためのフィルタが設けられた排気通路には、排気ガスに含まれる有害物質を浄化するための触媒が設けられている場合がある。この場合、排気通路に設けられたフィルタに高温の排気ガスを流すためには、当該排気通路に設けられた触媒にも高温の排気ガスを流す必要がある。触媒に高温の排気ガスが流れ、触媒の温度が高温になり過ぎると、触媒が有害物質を浄化する能力が低下する。すると、有害物質が触媒により十分に浄化されない場合がある。
【0007】
特許文献1に記載の排ガス浄化装置は、排気ガスを昇温する触媒早期暖機手段を備えるものの、有害物質を浄化する能力が低下するほど高温になった触媒を冷却するための機構を備えていない。このため、特許文献1に記載の技術では、触媒に高温の排気ガスが流れ続けることで触媒が高温になり過ぎたときに、排気ガスに含まれる有害物質を触媒が浄化する能力が低下する問題が解決されない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒に当該触媒よりも低温の排気ガスを流すことにより、当該触媒を冷却することが可能な、新規かつ改良された排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、エンジンから排気された排気ガスが通過する排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒と、前記排気通路における前記触媒の下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を補足するフィルタと、前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、前記フィルタの下流側の前記排気通路に再接続され、前記フィルタの下流側の前記排気通路から前記触媒の上流側の前記排気通路へ前記排気ガスを循環させる循環路と、前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、当該分岐される箇所の下流側であって前記触媒の上流側の前記排気通路に再接続される積極放熱通路と、前記積極放熱通路に設けられ、前記積極放熱通路に流れる前記排気ガスから排熱を回収する排熱回収器と、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す放熱制御部と、を備え、前記放熱制御部は、前記フィルタの温度が、前記フィルタの再生が促進される温度以上である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、排気ガス浄化装置が提供される。
排気ガス浄化装置は、前記フィルタの下流側の前記排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒を備えてもよい。
前記循環路は、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路に再接続されてもよい。
前記循環路は、前記フィルタの下流側であって前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の前記排気通路に再接続されてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、エンジンから排気された排気ガスが通過する排気通路に設けられ、前記排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒と、前記排気通路における前記触媒の下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を補足するフィルタと、前記排気通路における前記フィルタの下流側に設けられ、前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒と、前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路に再接続され、前記窒素酸化物吸蔵触媒の下流側の前記排気通路から前記触媒の上流側の前記排気通路へ前記排気ガスを循環させる循環路と、前記触媒の上流側の前記排気通路で分岐されるとともに、当該分岐される箇所の下流側であって前記触媒の上流側の前記排気通路に再接続される積極放熱通路と、前記積極放熱通路に設けられ、前記積極放熱通路に流れる前記排気ガスから排熱を回収する排熱回収器と、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す放熱制御部と、を備え、前記放熱制御部は、前記窒素酸化物吸蔵触媒の温度が、前記窒素酸化物吸蔵触媒による前記排気ガスに含まれる窒素酸化物の浄化が促進される温度の範囲内である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流す、排気ガス浄化装置が提供される。
前記放熱制御部は、前記フィルタの温度が、前記フィルタの再生が促進される温度以上である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流してもよい。
前記放熱制御部は、前記触媒の温度が、前記触媒による前記有害物質の浄化が促進される温度の範囲内である場合に、前記排気ガスを前記積極放熱通路に流してもよい。
【0010】
前記触媒は、前記排気ガスに含まれる炭化水素又は一酸化炭素を浄化してもよい。
【0011】
前記触媒は、三元触媒であってもよい。
【0012】
排気ガス浄化装置は、前記触媒の温度が所定の温度以上である場合に、前記排気ガスを前記フィルタの下流側の前記排気通路から前記循環路を通過させ、前記触媒の上流側の前記排気通路に流す排気ガス制御部と、を備えてもよい。
【0021】
前記排熱回収器は、エンジンに設けられるシリンダーヘッドの内部に位置してもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒に当該触媒よりも低温の排気ガスを流すことにより、当該触媒を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジン及び吸排気経路の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る浄化機構の概略図である。
図3】三元触媒、GPF、及びLNTの状態と温度の関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の制御装置を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置が実施する温度制御処理の処理例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置が実施するGPF再生処理の処理例を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置が実施するLNT脱離処理の処理例を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置が実施するSパージ処理の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
なお、説明は次の順序で行う。
1.エンジン及び吸排気経路の構成
2.排気ガス浄化装置
2.1.全体構成
2.2.浄化機構
2.3.制御装置
2.4.処理例
2.5.効果
3.変形例
【0026】
1.エンジン及び吸排気経路の構成
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係るエンジン100及び吸排気経路の全体構成について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン100及び吸排気経路の概略構成を示す図である。
【0028】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両は、エンジン100と、エンジン100より吸気側に設けられた吸気経路102と、エンジン100より排気側に設けられた排気経路104を備える。以下、エンジン100、吸気経路102、及び排気経路104の順に説明する。
【0029】
まず、エンジン100について説明する。エンジン100は、例えば、火花点火式の内燃機関であるガソリンエンジンである。エンジン100には、1又は複数の気筒108が備えられる。図1では、理解を容易にするために、エンジン100に設けられる複数の気筒108のうちの1つの気筒108が一例として示されている。各気筒108の内部には燃焼室110が形成され、燃焼室110に向けて点火プラグ112が設けられている。また、各気筒108には、燃焼室110に向けて燃料を噴射する燃料噴射バルブ114が設けられている。燃料噴射バルブ114は、具体的には、燃料タンク116からフィードポンプ118により吸い上げられて送出された燃料を燃焼室110内に噴射する。
【0030】
燃焼室110には、空気及び燃料からなる混合気が形成され、当該混合気が点火プラグ112の点火により燃焼する。これにより、各気筒108内に設けられたピストン120が直線往復運動を行い、各気筒108のピストン120と接続されたクランクシャフトへ動力が伝達される。各燃焼室110は、吸気側及び排気側においてそれぞれ吸気経路102及び排気経路104と連通している。また、各気筒108には、吸気ポート121及び排気ポート123をそれぞれ開閉可能な吸気バルブ122及び排気バルブ124が設けられている。吸気バルブ122が開かれることにより、燃焼室110への吸気の吸入が行われる。一方、排気バルブ124が開かれることにより、燃焼室110から排気ガスの排気が行われる。以上、エンジン100について説明した。
【0031】
次に、吸気経路102について説明する。吸気経路102は、上流側の端部において、車両の外部から外気が取り込まれる吸気口(図示しない)と連通する。吸気経路102には、エアクリーナ128が設けられる。エアクリーナ128の下流側の吸気経路102には、吸気経路102へ吸入される吸気の量である吸気量を調整可能なスロットルバルブ130が設けられる。スロットルバルブ130のさらに下流側の吸気経路102には、インテークマニホールド126が設けられる。インテークマニホールド126は、各気筒108の吸気側に向けて分岐し、各燃焼室110と連通する。具体的には、インテークマニホールド126から各気筒108へ向けて分岐する通路は、各気筒108の吸気ポート121に接続される。また、インテークマニホールド126には、気筒108側へ流れる吸気を一時的に溜めるためのサージタンク132が設けられる。
【0032】
吸気口から取り込まれた外気は、エアクリーナ128を通過した後、スロットルバルブ130により絞られる。スロットルバルブ130により絞られた外気は、インテークマニホールド126を介してエンジン100の各気筒108に吸入される。以上、吸気経路102について説明した。
【0033】
次に、排気経路104について説明する。排気経路104には、排気ガス浄化装置200が設けられている。排気経路104の下流側の端部には排気口(図示しない)が設けられている。燃焼室110から排気された排気ガスは、排気ガス浄化装置200を通過して、排気口から車外へ排気される。
【0034】
本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200は、燃焼室110から排気された排気ガスを浄化する機能を有する。また、排気ガス浄化装置200は、排気ガスの排熱を回収し、エンジン100の暖機等を実施する機能を有する。つまり、排気ガス浄化装置200は、排気ガスを浄化する機能と、排気ガスからの排熱の回収を両立する機能を有する。排気ガス浄化装置200の構成及び機能の詳細については後述する。以上、排気経路104について説明した。
【0035】
以上、本発明の一実施形態のエンジン100、吸気経路102、及び排気経路104の概略構成について説明した。次に、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200の構成及び機能の詳細について説明する。
【0036】
2.排気ガス浄化装置
まず、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200の構成を排気経路104の上流側から順に説明する。次に、排気ガス浄化装置200が備える各種の制御を実施する制御装置400について説明する。さらに、排気ガス浄化装置200が実施する処理の一例と、その処理による効果について説明する。
【0037】
2.1.全体構成
排気ガス浄化装置200における上流側の排気経路104には、第1の排気通路204と、第1の排気通路204における上流側で分岐されて第1の排気通路204における下流側に再接続される積極放熱通路206が設けられている。積極放熱通路206には、排気ガスの排熱を回収するための排熱回収器208が設けられている。排気ガス浄化装置200における下流側の排気経路104には、排気ガスを浄化するための浄化機構210が設けられている。なお、本実施形態では、積極放熱通路206は、浄化機構210の上流側の排気経路104に再接続されているが、浄化機構210の下流側の排気経路104に再接続され得る。以下、排気ガス浄化装置200における上流側の構成を説明した後に、排気ガス浄化装置200における下流側の排気経路104に設けられる浄化機構210について説明する。
【0038】
排気ガス浄化装置200における上流側の排気経路104には、三方バルブ202設けられている。三方バルブ202では、第1の排気通路204及び積極放熱通路206が分岐している。三方バルブ202は、3方向にガスの出入り口を有するバルブである。三方バルブ202の3方向の出入り口のうちの2方向は開いており、残りの1方向は閉じている。三方バルブ202の燃焼室110方向の出入り口は常に開いている。また、三方バルブ202の第1の排気通路204又は積極放熱通路206のどちらかの方向の出入り口は開いている。つまり、三方バルブ202の第1の排気通路204又は積極放熱通路206のどちらかの方向の出入り口は閉じている。従って、燃焼室110から排気された排気ガスは、三方バルブ202の出入り口の開いている方向である開口方向に応じて、第1の排気通路204又は積極放熱通路206に流れる。
【0039】
三方バルブ202で第1の排気通路204から分岐した積極放熱通路206は、三方バルブ202の下流側の第1の排気通路204に再接続される。なお、必ずしも全ての気筒108の燃焼室110の下流側の排気経路104に三方バルブ202、第1の排気通路204、積極放熱通路206、又は排熱回収器208が設けられていなくてもよい。
【0040】
第1の排気通路204の下流側の端部には、エキゾーストマニホールド138が接続されている。なお、エキゾーストマニホールド138は各気筒108に向けて分岐している。図1のように排気経路104に三方バルブ202、第1の排気通路204、積極放熱通路206、又は排熱回収器208を有しない気筒108については、排気ポート123が直接エキゾーストマニホールド138の分岐した通路に接続されてもよい。
【0041】
燃焼室110から排気される排気ガスは、第1の排気通路204又は積極放熱通路206のいずれかの通路を通過してエキゾーストマニホールド138へ排気される。三方バルブ202の開口方向が切り替わることで、燃焼室110から排気される排気ガスが流れる通路が、第1の排気通路204又は積極放熱通路206に切り替わる。
【0042】
積極放熱通路206に設けられる排熱回収器208は、燃焼室110から排気される排気ガスの排熱を回収する機器である。排熱回収器208の内部には、エンジン100を冷却するための冷却水が流れている。排熱回収器208に排気ガスが流れると、排熱回収器208に流れる排気ガスの熱が排熱回収器208の内部に流れる冷却水に伝わり、冷却水が暖められる。このように冷却水が暖められることにより、排熱回収器208は排気ガスから排熱を回収する。
【0043】
排熱回収器208で暖められた冷却水はエンジン100の周囲を流れる。暖められた冷却水の熱がエンジン100に伝わることにより、エンジン100の暖機が促進される。特に、外気温が低いときには、エンジン100の始動時にエンジン100が温まりにくい。排熱回収器208で暖められた冷却水の熱がエンジン100に伝わることで、外気温が低いときであっても、エンジン100の暖機が促進される。エンジン100の暖機が促進されることにより、例えば車両の燃費が向上する。また、排熱回収器208で暖められた冷却水の熱は、暖房の熱源として利用されてもよい。
【0044】
燃焼室110から排気された排気ガスは、排気経路104を下流側に流れることにより、排気経路104に放熱して冷やされていく。ここで、シリンダーヘッド134は、燃焼室110の直ぐ下流側に設けられる。このため、シリンダーヘッド134の内部の排気ガスは、燃焼室110から排気される排気ガスの中では、比較的高温である。排熱回収器208は、シリンダーヘッド134の内部に設けられている。このため、排熱回収器208に流れる排気ガスは、排気経路104を流れる排気ガスの中では、比較的高温である。
【0045】
また、排熱回収器208を流れる排気ガスの温度と排熱回収器208の内部に流れる冷却水の温度の差が大きいほど、冷却水が排気ガスから受け取る熱量が大きい。通常、排熱回収器208を流れる排気ガスの温度の方が冷却水の温度よりも高く、排気ガスの温度が高いほど排熱回収器208が排気ガスから回収できる熱量が大きい。上述のように、排熱回収器208に流れる排気ガスは、排気経路104を流れる排気ガスの中では、比較的高温である。このため、排熱回収器208がシリンダーヘッド134の内部に位置することにより、排熱回収器208が高い熱量を排気ガスから回収することができる。
【0046】
エキゾーストマニホールド138の下流側の排気経路104には、浄化機構210が設けられる。浄化機構210は、排気ガスに含まれる有害物質を浄化する機能を有する。浄化機構210の構成及び機能の詳細については後述する。
【0047】
燃焼室110から排気された排気ガスは、第1の排気通路204又は積極放熱通路206を通過し、エキゾーストマニホールド138を介して浄化機構210に流入する。浄化機構210に流入した排気ガスは、浄化機構210で浄化された後に浄化機構210の排気側の排気経路104へ排気され、排気口から車外へ排気される。
【0048】
2.2.浄化機構
図2は、本発明の一実施形態に係る浄化機構210の概略図である。浄化機構210は、排気ガスを浄化させるための通路である第2の排気通路300と、第2の排気通路300に流れる排気ガスを循環させるための通路である循環路312と、第2の排気通路300の途中から循環路312の途中へ排気ガスを流すための分岐通路316を備える。以下、第2の排気通路300、循環路312、及び分岐通路316の順で説明する。
【0049】
まず、第2の排気通路300について説明する。図2に示されるように、第2の排気通路300において、排気ガスは左側から右側へ矢印の向きに流れる。つまり、浄化機構210に流入した排気ガスは、第2の排気通路300の左端部から右端部へ流れることで、浄化機構210から排気される。
【0050】
第2の排気通路300には、第2の排気通路300の上流側から順に、排気ガスに含まれる有害物質を浄化する触媒、及び排気ガスに含まれる粒子状物質を補足するフィルタが設けられる。排気ガスを浄化する触媒は、炭化水素又は一酸化炭素を浄化する各種の酸化触媒であってよい。本発明の一実施形態では、有害物質を浄化する触媒として、三元触媒302が用いられる。また、粒子状物質を補足するフィルタには、GPF(Gasoline Particulate Filter)304が用いられる。さらに、GPF304の下流側の第2の排気通路300には、排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸蔵する窒素酸化物吸蔵触媒が設けられる。本発明の一実施形態では、窒素酸化物吸蔵触媒として、LNT(Lean NOx Trap:リーンNOx吸蔵還元触媒)306が設けられている。以下、三元触媒302、GPF304、及びLNT306が有する機能について説明する。
【0051】
まず、三元触媒302が有する機能について説明する。三元触媒302は、排気ガスに含まれる有害物質のHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、及びNOx(窒素酸化物)の三成分を酸化又は還元し、無害な物質にする触媒である。以下、HC、CO、及びNOxをまとめて「三成分」ともいう。具体的には、排気ガスが三元触媒302に流れると、排気ガスに含まれるHCは酸化されてCO(二酸化炭素)及び水になる。また、排気ガスに含まれるCOは酸化されてCOになる。さらに、排気ガスに含まれるNOxは還元されてN(窒素)になる。このように、三元触媒302は、排気ガスに含まれる上記の三成分を酸化又は還元することで無害な物質にする機能を有する。
【0052】
次に、GPF304が有する機能について説明する。排気ガスには、前述の有害物質であるHC、CO、及びNOx以外にも、粒子状物質の煤(C)が含まれている。GPF304は、排気ガスに含まれる煤を捕獲し、排気ガスから煤を除去する機能を有する。なお、GPF304に捕獲された煤は、後述する再生処理により、二酸化炭素(CO)となってGPF304から排気される。
【0053】
最後に、LNT306が有する機能について説明する。LNT306は、空燃比がストイキよりも高いリーンの状態の時にLNT306を流れる排気ガスに含まれるNOxを吸蔵する。吸蔵されたNOxは、空燃比がストイキよりも低いリッチの状態になると、還元されて無害なNになる。このように、LNT306は、リーンの状態でNOxを吸蔵し、リッチの状態でNOxを還元することで無害なNにする触媒である。なお、本明細書では、一時的又は定期的にリッチの状態にすることにより、LNT306に吸蔵されているNOxを還元して、LNT306から放出することをNOxパージという。
【0054】
これらの三元触媒302、GPF304、又はLNT306には、それぞれの温度を測定するための温度計である三元触媒温度計404、GPF温度計406、又はLNT温度計408が設けられている。三元触媒温度計404、GPF温度計406、又はLNT温度計408はそれぞれ三元触媒302、GPF304、又はLNT306の温度を検出し、制御装置400へ出力する。なお、三元触媒302、GPF304、又はLNT306に温度計が設けられていなくてもよい。例えば、第2の排気通路300に温度計が設けられ、当該温度計が検出した温度に基づいて、三元触媒302、GPF304、又はLNT306の温度が推定されてもよい。
【0055】
また、GPF304の上流側と下流側の第2の排気通路300にはそれぞれ差圧センサ410が設けられている。差圧センサ410はGPF304の上流側と下流側のとの差圧を検出し、検出結果を制御装置400へ出力する。一般的に、GPF304に煤が堆積すると、GPF304の上流側と下流側との差圧が大きくなる。再生処理判定部418は、当該差圧からGPF304に堆積した煤の量を推定することも可能である。再生処理判定部418は、当該差圧又は当該推定された煤の堆積量に基づいて、GPF304の再生処理が必要であるか否かを判定することができる。
【0056】
三元触媒302の下流側であってGPF304の上流側の第2の排気通路300には、第1排気バルブ308が設けられている。第1排気バルブ308の開きの度合いである開度が制御されることで、三元触媒302からGPF304へ第2の排気通路300を流れる排気ガスの流量が制御される。
【0057】
また、LNT306の下流側の第2の排気通路300には、第2排気バルブ310が設けられている。第2排気バルブ310の開度が制御されることで、LNT306から第2の排気通路300の下流端へ流れる排気ガスの流量が制御される。
【0058】
循環路312は、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300で分岐されるとともに、GPF304の下流側の第2の排気通路300に再接続される通路である。本発明の一実施形態の循環路312は、GPF304の下流側の第2の排気通路300に位置するLNT306の更に下流側の第2の排気通路300に再接続されている。循環路312の上流側(図2でいう右側)には、第2循環バルブ314が設けられている。第2循環バルブ314が開かれることにより、LNT306から排気される排気ガスが、循環路312へ流れることが可能となる。LNT306の下流側の第2の排気通路300から循環路312へ排気ガスが流れ込むと、循環路312の下流側(図2の左側)へ排気ガスが流れ、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300へ流れ込む。このようにして、第2の排気通路300を流れる排気ガスは、循環路312を通過して、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300へ循環することができる。
【0059】
分岐通路316は、三元触媒302の下流側であってGPF304の上流側の第2の排気通路300で分岐され、循環路312の途中に接続される通路である。分岐通路316と循環路312とが接続される箇所には循環用三方バルブ320が設けられている。循環用三方バルブ320の開口方向に応じて、循環用三方バルブ320の上流側の循環路312又は分岐通路316のいずれか一方の通路が循環用三方バルブ320の下流側の循環路312と連通する。これにより、循環用三方バルブ320の上流側の循環路312又は分岐通路316のいずれかの通路を流れる排気ガスが循環用三方バルブ320の下流側の循環路312に流れることが可能になる。また、循環用三方バルブ320の下流側の循環路312には、ポンプ322が設けられている。ポンプ322が駆動することにより、循環用三方バルブ320の上流側の循環路312又は分岐通路316を流れる排気ガスが循環用三方バルブ320を通過して、循環用三方バルブ320の下流側の循環路312に流れ、ポンプ322を通過して第2の排気通路300に流れる。分岐通路316の途中には、第1循環バルブ318が設けられている。第1循環バルブ318が開くと、三元触媒302から排気される排気ガスが、分岐通路316を通過して、循環路312へ流れることが可能になる。さらに、循環路312に流れ込んだ排気ガスは、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300へ流れる。このようにして、三元触媒302の下流側を流れる排気ガスは、分岐通路316及び循環路312を通過して、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300へ循環することができる。
【0060】
ここで、第2の排気通路300に設けられる三元触媒302、GPF304、及びLNT306の状態と温度の関係について説明する。
【0061】
図3は、三元触媒302、GPF304、及びLNT306の状態と温度の関係を示す図である。以下、三元触媒302、GPF304、及びLNT306の順で説明する。
【0062】
まず、三元触媒302の状態と温度の関係について説明する。三元触媒302の温度がT1に達すると、三元触媒302の触媒機能が活性化し、当該三元触媒302が排気ガスに含まれる有害物質の三成分を酸化又は還元する能力が向上する。温度T2は、三元触媒302の信頼性を確保できる上限温度であり、三元触媒302の温度を温度T1から温度T2の間に維持することで三元触媒302により排気ガスに含まれる三成分の浄化を効率的に行うことができる。
【0063】
次に、GPF304の状態と温度の関係について説明する。GPF304に排気ガスが流入し、GPF304が煤を捕獲すると、煤がGPF304に堆積する。GPF304に過剰の煤が堆積すると、GPF304が目詰まりを起こし、GPF304が煤を捕獲する能力が低下する。このため、GPF304に捕獲された煤を定期的に除去する必要がある。例えば高温の排気ガスをGPF304に流してGPF304をGPF再生温度である温度T3(温度T1からT2の間の温度帯にある温度)以上の高温にし、GPF304に捕獲された煤を燃焼することにより、GPF304から煤を除去することができる。燃焼されてCOとなった煤は、GPF304の下流側の第2の排気通路300へ排気される。煤がGPF304から除去されると、GPF304が排気ガスに含まれる煤を捕獲する能力が回復する。このように、高温の排気ガスをGPF304に流して、GPF304をT3以上にすることによりGPF304から煤を除去する処理を再生処理という。
【0064】
最後に、LNT306の状態と温度の関係について説明する。LNT306がNOxを還元する能力は、図3のLNT306の位置における両矢印で示される温度T1~T4(NOx還元温度領域)の温度領域で高くなる。この温度T4は、温度T1より高く、温度T2,T3よりも低い温度である。この温度領域でリッチの状態になると、他の温度領域でリッチの状態になった場合よりも、LNT306に吸蔵されたNOxは還元されやすい。
【0065】
また、燃料には、硫黄(S)成分が含まれている。このため、燃料が燃焼室110で燃焼されて生じた排気ガスには、硫黄成分と酸素が反応して生成される硫黄酸化物(SOx)が含まれる。LNT306は、排気ガスに含まれるNOxを吸蔵するとともに、排気ガスに含まれるSOxも吸蔵する。このため、排気ガスがLNT306に流入すると、NOxとともにSOxもLNT306に吸蔵される。SOxがLNT306に吸蔵されると、LNT306は被毒し、LNT306がNOxを吸蔵する能力が低下する。このため、LNT306が被毒している場合には、LNT306からSOxを脱離させ、LNT306を被毒の状態から回復させる必要がある。LNT306の被毒の状態からの回復は、LNT306が温度T5(Sパージ温度)以上の状態で、継続的にリッチの状態を維持するリッチ運転を実施することにより、SOxをLNT306から脱離することで実施される。以下、LNT306を被毒から回復させるために、リッチ運転を実施してLNT306からSOxを脱離することをSパージ(サルファパージ)という。温度T5は、温度T1,T3,T4よりも高く、温度T2よりも低い温度である。
【0066】
2.3.制御装置
次に、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が備える制御装置400について説明する。
【0067】
図4は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200の制御装置400を示すブロック図である。制御装置400は、具体的には、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0068】
制御装置400は、エンジン100又は排気ガス浄化装置200等における各装置と通信を行う。制御装置400と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。なお、本発明の一実施形態に係る制御装置400が有する機能は複数の制御装置400により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置400は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0069】
制御装置400には、水温センサ402、三元触媒温度計404、GPF温度計406、LNT温度計408、及び差圧センサ410等のエンジン100又は排気ガス浄化装置200等における各種検出器が検出した結果が入力される。制御装置400は、これらの検出器が検出した結果等を用いて各種の制御を実施する。
【0070】
また、制御装置400は、点火プラグ112、燃料噴射バルブ114、三方バルブ202、第1排気バルブ308、第2排気バルブ310、第1循環バルブ318、第2循環バルブ314、循環用三方バルブ320及びポンプ322等の各種のエンジン100及び排気ガス浄化装置200等が備える機器を制御する。
【0071】
制御装置400は、取得部412、判定部414、及び制御部422を備えている。以下、これらの各機能部が有する機能を説明する。
【0072】
(取得部)
取得部412は、エンジン100及び排気ガス浄化装置200に設けられた各種検出器が検出した結果を取得する。取得部412が取得した結果は、判定部414に伝達される。なお、各種検出器が検出した結果は、判定部414又は制御部422に直接伝達されてもよい。
【0073】
(判定部)
判定部414は、各種の判定を実施する機能を有する。例えば、判定部414は、エンジン100又は排気ガス浄化装置200等に設けられた各種の装置、冷却水、又は通路等の温度を判定する機能を有する。さらに、判定部414は、制御部422が実施する処理が必要であるか否かを判定する機能を有してもよい。これらの判定は、判定部414が備える温度判定部416、再生処理判定部418、又はパージ判定部420により実施される。これらの各機能部が判定した結果は、制御部422へ伝達される。判定部が備える各機能部が有する機能の詳細については後述する。
【0074】
(制御部)
制御部422は、判定部414による判定結果に基づいて、排気ガス浄化装置200が備えるエンジン100の点火時期、混合気の空燃比、又は各種のバルブの開閉等を制御する機能を有する。これらの制御は、制御部422が備える排気ガス制御部424、エンジン制御部426、又は放熱制御部428により実施される。これらの各機能部が有する機能の詳細については後述する。
【0075】
以上、制御装置400が備える取得部412、判定部414、及び制御部422の概略について説明した。次に、判定部414及び制御部422が備える各機能部について説明する。まず、判定部414が備える各機能部が有する機能について説明する。
【0076】
(温度判定部)
温度判定部416は、浄化機構210に設けられた三元触媒302、GPF304、及びLNT306の温度と所定の温度との大小関係を判定する機能を有する。さらに、温度判定部416は、エンジン100付近の冷却水の温度を検出する水温センサ402の検出結果に基づいて、三方バルブ202の開口方向を切り替えるか否かを判定してもよい。例えば、エンジン100付近の冷却水の温度が所定の温度よりも低い場合には、温度判定部416は、排熱回収器208を有する積極放熱通路206に排気ガスが流れるように、三方バルブ202の開口方向を切り替えることを判定し得る。
【0077】
(再生処理判定部)
再生処理判定部418は、GPF304の再生処理が必要であるか否かを判定する機能を有する。再生処理判定部418は、差圧センサ410により検出されたGPF304の上流側と下流側の第2の排気通路300の差圧に基づいて再生処理が必要であるか否かを判定してもよい。あるいは、再生処理判定部418は、当該差圧からGPF304に堆積した煤の量を推定し、推定された煤の量に基づいて、再生処理が必要であるか否かを判定してもよい。例えば、再生処理判定部418は、推定された煤の堆積量が所定の堆積量を超えている場合に、再生処理が必要であることを判定してもよい。また、再生処理判定部418は、前回の再生処理が実施されたときから、所定の時間が経過した場合に再生処理が必要であることを判定してもよい。さらに、再生処理判定部418は、前回の再生処理が実施されたときからの車両の走行距離が所定の距離に達した場合に再生処理が必要であることを判定してもよい。
【0078】
(パージ判定部)
パージ判定部420は、NOxパージ又はSパージ等のLNT306からのNOx又はSOx等の各種の物質の脱離が必要であるか否かを判定する機能を有する。例えば、パージ判定部420は、NOxパージ(又はSパージ)が必要であるか否かを、前回NOxパージ(又はSパージ)が実施されてからの経過時間に基づいて判定してもよい。また、パージ判定部420は、NOxパージ(又はSパージ)が必要であるか否かを、前回NOxパージ(又はSパージ)が実施されてからの走行距離と所定の距離を比較することにより判定してもよい。
【0079】
(排気ガス制御部)
排気ガス制御部424は、排気ガス浄化装置200が備える各種のバルブの開閉を制御し、浄化機構210を流れる排気ガスの流れを制御する機能を有する。より具体的には、排気ガス制御部424は、浄化機構210が備える各種のバルブの開閉を制御することにより、浄化機構210の第2の排気通路300を流れる排気ガスを循環路312又は分岐通路316に通して第2の排気通路300に循環させることができる。
【0080】
例えば、排気ガス制御部424が、第2循環バルブ314を開けることにより、LNT306の下流側の第2の排気通路を流れる排気ガスを循環路312に流入させる。循環路312に流入した排気ガスは、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300に流入し、さらに三元触媒302に流入する。三元触媒302よりもLNT306の下流側の第2の排気通路300に流れる排気ガスの方が低温であるため、当該排気ガスが三元触媒302に流入することにより、三元触媒302が冷却される。
【0081】
(エンジン制御部)
エンジン制御部426は、燃焼室110から排気される排気ガスの温度や混合気の燃料費を制御する機能を有する。より具体的には、エンジン制御部426は、点火プラグ112の点火時期を制御する。例えば、点火時期を遅角させる点火遅角が実施されると燃焼室110から排気される排気ガスの温度が上昇する。また、エンジン制御部426は、燃料噴射バルブ114から噴射される燃料の量を制御することにより、混合気をリーンの状態又はリッチの状態にすることができる。
【0082】
(放熱制御部)
放熱制御部428は、三方バルブ202の開口方向を制御することにより、排気ガスを
第1の排気通路204又は積極放熱通路206のどちらかに流れるようにすることができる。積極放熱通路206に排気ガスが流れる場合には、積極放熱通路206に設けられた排熱回収器208が、排気ガスから排熱を回収することができる。
【0083】
放熱制御部428は、三元触媒302の温度が所定の温度の範囲内である場合に、排気ガスが積極放熱通路206に流れるように三方バルブ202の開口方向を制御してもよい。例えば、三元触媒302の温度が排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が酸化還元する能力が高い温度である温度T1~T2である場合に、放熱制御部428は積極放熱通路206に排気ガスが流れるように三方バルブ202の開口方向を制御し得る。これにより、排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が酸化還元する能力が高い状態で、排熱回収器208が排気ガスから排熱を回収することができる。
【0084】
また、放熱制御部428は、GPF304の温度が所定の温度の範囲内である場合に、排気ガスが積極放熱通路206に流れるように三方バルブ202の開口方向を制御してもよい。放熱制御部428は、GPF304の温度が温度T3以上である場合に、放熱制御部428は積極放熱通路206に排気ガスが流れるように三方バルブ202を制御してもよい。これにより、GPF304の再生処理が実施された状態で、排熱回収器208が排気ガスから排熱を回収することができる。
【0085】
また、放熱制御部428は、LNT306の温度が所定の温度の範囲内である場合に、排気ガスが積極放熱通路206に流れるように三方バルブ202の開口方向を制御してもよい。例えば、放熱制御部428は、LNT306の温度が、排気ガスに含まれるNOxをLNT306が還元する能力が高い温度T1~温度T4の温度範囲である場合に、放熱制御部428が積極放熱通路206に排気ガスが流れるように三方バルブ202の開口方向を制御してもよい。これにより、NOxをLNT306が還元する能力が高い状態で、排熱回収器208が排気ガスから排熱を回収することができる。
【0086】
さらに、放熱制御部428は、LNT306の温度が、SパージによりLNT306からSOxが脱離される温度T5以上の温度である場合に、積極放熱通路206に排気ガスが流れるように三方バルブ202の開口方向を制御し得る。これにより、LNT306の被毒が回復される状態で、排熱回収器208が排気ガスから排熱を回収することができる。
【0087】
このように、放熱制御部428が三方バルブ202の開口方向を制御することにより、浄化機構210が備える各種の触媒及びフィルタが適切な温度に保たれるとともに、排熱回収器208が効率よく排気ガスの排熱を回収できる。
【0088】
2.4.処理例
以下、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200が実施する処理について説明する。以下、図5図9を参照して、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200の処理例について説明する。
【0089】
図5は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示される制御フローは、例えば、エンジン100の始動時に開始される。図5の制御フロー開始時において、図1の第1の排気通路204及び積極放熱通路206の分岐箇所に設けられた三方バルブ202は、燃焼室110から排気される排気ガスが第1の排気通路204に流れるように開いている。また、図5の制御フロー開始時において、図2における第1循環バルブ318及び第2循環バルブ314は閉まっており、第1排気バルブ308及び第2排気バルブ310は開いている。
【0090】
以下、図5における制御フローの処理について説明する。なお、図5に示すステップS502、S504、及びS506において実施される処理についての詳細は図6~9で説明する。
【0091】
図5に示す制御フローが開始されると、まず、ステップS502において、温度制御処理が実施される。より具体的には、制御部422が、三元触媒302の温度が温度T1以上になるまで、排気ガスを第2の排気通路300に循環させるように浄化機構210の各種のバルブの開閉を制御する。すると、三元触媒302が、排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が浄化する能力が高まる温度まで昇温される。これにより、三元触媒302による排気ガスに含まれる有害物質の浄化が促進されるようになる。ステップS502の処理が終了すると、ステップS504へ進む。
【0092】
ステップS504において、GPF再生処理が実施される。より具体的には、制御部422が、GPF304を再生するために排気ガスを昇温する。排気ガスの昇温により三元触媒302の温度が上がり過ぎた場合には、制御部422が、三元触媒302を冷却するために、LNT306から排気される排気ガスを三元触媒302に再度流入させる。これにより、GPF304が再生されるとともに、温度が上がり過ぎた三元触媒302が冷却される。ステップS504の処理が終了すると、ステップS506へ進む。
【0093】
ステップS506において、LNT脱離処理が実施される。より具体的には、制御部422が、判定部414の判定結果に応じて、LNT306がNOxを還元する能力が高くなる温度領域までLNT306を昇温する。さらに、制御部422は、混合気をリッチの状態にすることでLNT306からNOxを脱離する。また、制御部422が、判定部414の判定結果に応じて、LNT306を昇温し、リッチ運転を実施することでLNT306からSOxを脱離する。なお、LNT306が昇温されている間に三元触媒302の温度が上がり過ぎた場合には、制御部422が、LNT306から排気された排気ガスを三元触媒302に再度流入させることで、三元触媒302を冷却する。これにより、三元触媒302の温度は、排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が酸化還元する能力が高い温度領域内の温度になる。ステップS506が終了すると、ステップS508へ進む。
【0094】
ステップS508において、温度判定部416は、排熱回収器208による排気ガスからの排熱の回収が必要であるか否かを判定する。温度判定部416は、水温センサ402が検出した冷却水の温度に基づいて、排熱の回収が必要であるか否かを判定してもよい。例えば、温度判定部416は、冷却水の温度が所定の温度未満である場合に、排熱の回収が必要であることを判定してもよい。排熱の回収が必要でないことが判定された場合(ステップS508/NO)、図5の制御フローは終了する。一方、排熱の回収が必要であることが判定された場合(ステップS508/YES)、ステップS510へ進む。
【0095】
ステップS510において、放熱制御部428は、三方バルブ202の開口方向を積極放熱通路206側に切り替える。すると、燃焼室110から排気される排気ガスが積極放熱通路206に流れるようになる。燃焼室110から排気された排気ガスは、排熱回収器208に流れる。排熱回収器208に流れる排気ガスの排熱は、排熱回収器208に回収される。ステップS510の処理が終了すると、図5の制御フローは終了する。
【0096】
以上、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200が実施する処理の概略を説明した。以上のように、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200は、目的に応じて、三元触媒302、GPF304、又はLNT306の温度が適切な温度になるように、排気ガスの温度を昇温する。その一方で、三元触媒302の温度が上がり過ぎた場合には、浄化機構210に流れる排気ガスの流れを制御することにより、三元触媒302を冷却する。これにより、GPF304の再生、LNT306のNOxパージ又はSパージの実施と、三元触媒302による排気ガスに含まれる有害物質の浄化の促進が両立される。
【0097】
さらに、以上のように三元触媒302、GPF304、又はLNT306の温度が制御された後に、排気ガスが積極放熱通路206に流れるように三方バルブ202の開口方向が制御される。これにより、三元触媒302、GPF304、又はLNT306が適切な温度に制御されるとともに、排熱回収器208により排気ガスの排熱が回収される。
【0098】
以下、図5の制御フローにおける温度制御処理(ステップS502)、GPF再生処理(ステップS504)、及びLNT脱離処理(ステップS506)について詳細に説明する。なお、各処理における排気ガスの流れについては、図2を用いて説明する。
【0099】
[温度制御処理]
図6は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が実施する温度制御処理の処理例を示すフローチャートである。
【0100】
まず、ステップS602において、温度判定部416は、三元触媒302の温度が温度T1以上であるか否かを判定する。三元触媒302の温度が温度T1以上であることが判定された場合(ステップS602/YES)、ステップS612に進み、温度制御処理は終了する。一方、三元触媒302の温度が温度T1未満であることが判定された場合(ステップS602/NO)、ステップS604へ進む。
【0101】
ステップS602において、三元触媒302の温度が温度T1未満であることが判定された場合には、三元触媒302が有害物質を還元する能力が十分でない場合がある。そこで、以下のステップS604~S610の処理が実施されることにより、三元触媒302から排気された排気ガスが循環路312を通過して、再度三元触媒を通過することで、排気ガスに含まれる有害物質がより浄化される。
【0102】
ステップS604において、排気ガス制御部424は、図2における第1循環バルブ318を開ける。また、排気ガス制御部424は、分岐通路316と循環用三方バルブ320の下流側の循環路312とが連通するように、循環用三方バルブ320の開口方向を制御する。さらに、排気ガス制御部424は、ポンプ322を駆動させる。これにより、三元触媒302から排気される排気ガスは、分岐通路316を通過して循環路312へ流れ、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300に循環することが可能になる。つまり、三元触媒302から排気された排気ガスが、再び三元触媒302に流入することが可能になる。第1循環バルブ318が開くと、ステップS606へ進む。
【0103】
ステップS606において、排気ガス制御部424は、第1排気バルブ308を所定量閉める。第1排気バルブ308が所定量閉まることにより、第1排気バルブ308を流れる排気ガスの流量が減少する。一方、三元触媒302から排気されて分岐通路316に流れる排気ガスの流量が増加する。これにより、三元触媒302から排気されて分岐通路316及び循環路312を通過して第2の排気通路300に戻り、再び三元触媒302に流入する排気ガスの流量が増加する。第1排気バルブ308が所定量閉まった後所定時間が経過すると、ステップS608へ進む。
【0104】
ステップS608において、排気ガス制御部424は、第1排気バルブ308を開ける。これにより、三元触媒302から排気されて第1排気バルブ308を通過する排気ガスの流量が増加する。一方、三元触媒302から排気されて第1循環バルブ318を通過する排気ガスの流量が減少する。第1排気バルブ308を開くと、ステップS610に進む。
【0105】
ステップS610において、排気ガス制御部424は、第1循環バルブ318を閉める。これにより、三元触媒302から排気される排気ガスは、第1循環バルブ318を通過しなくなる。従って、三元触媒302から排気される全ての排気ガスは、第1排気バルブ308を通過するようになる。また、排気ガス制御部424は、ポンプ322を停止する。第1循環バルブ318が閉まると、ステップS602へ戻る。
【0106】
ステップS602において、三元触媒302の温度が温度T1未満であることが判定された場合(ステップS602/NO)、再びステップS604へ進む。このように、ステップS602からステップS610の処理は、三元触媒302の温度が温度T1以上になるまで繰り返される。ステップS602からステップS610の処理が繰り返されている間、燃焼室110から排気される高温の排気ガスが三元触媒302に流入し続ける。このため、三元触媒302の温度は、ステップS602からステップS610の処理が繰り返されている間に上昇し続ける。三元触媒302の温度が温度T1以上になり、ステップS602において、三元触媒302の温度が温度T1以上であることが判定された場合(ステップS602/YES)に、温度制御処理は終了する。
【0107】
以上、ステップS502において実施される温度制御処理について説明した。上記のように、三元触媒302の温度が当該三元触媒302の温度が排気ガスに含まれる有害物質を還元する能力が高まる温度である温度T1以上になるまで、排気ガス制御部424が三元触媒302から排気された排気ガスを第2の排気通路300に循環させた。この循環により、第2の排気通路300を流れる排気ガスに含まれる有害物質の三元触媒302による浄化が促進される。
【0108】
次に、ステップS504において実施されるGPF再生処理について説明する。
【0109】
[GPF再生処理]
図7は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が実施するGPF再生処理の処理例を示すフローチャートである。
【0110】
まず、ステップS702において、再生処理判定部418が、GPF304の再生処理が必要であるか否かを判定する。再生処理判定部418は、例えば、GPF304の上流側と下流側の第2の排気通路300に設けられた差圧センサ410が検出した差圧に基づいて、再生処理が必要であるか否かを判定してもよい。GPF304の再生処理が必要でないことが判定された場合(ステップS702/NO)、ステップはS724へ進み、GPF再生処理は終了する。一方、GPF304の再生処理が必要であることが判定された場合(ステップS702/YES)、ステップS704へ進む。
【0111】
ステップS704において、温度判定部416が、GPF304の温度が温度T3以上であるか否かを判定する。GPF304の温度が温度T3以上であることが判定された場合(ステップS704/YES)、ステップS708へ進む。GPF304の温度が温度T3未満であることが判定された場合(ステップS704/NO)、ステップS706へ進む。
【0112】
以下では、ステップS704でNOと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS704でYESと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0113】
ステップS704でNOと判定された場合(つまり、GPF304の温度が温度T3未満であることを判定された場合)、ステップS706において、エンジン制御部426が、点火遅角を実施する。点火遅角が実施されることで、燃焼室110から排気される排気ガスが昇温される。燃焼室110から排気された排気ガスは、浄化機構210へ流入する。浄化機構210へ流入した排気ガスは、第2の排気通路300を通って、GPF304へ流入する。つまり、点火遅角の実施により昇温された排気ガスはGPF304へ流入する。GPF304へ流入する排気ガスの熱がGPF304へ伝わることで、GPF304が昇温される。点火遅角が実施されると、ステップS702へ戻る。
【0114】
ステップS702において、GPF304の再生処理が必要であることが再び判定された場合(ステップS702/YES)、再びステップS704へ進む。さらに、ステップS704において、GPF304の温度が温度T3未満である再び判定された場合(ステップS704/NO)、ステップS706へ進む。このようにして、GPF304の温度が温度T3以上になるまで、ステップS702、S704、及びS706の各ステップの処理が繰り返し行われる。
【0115】
GPF304の温度が温度T3以上になると、GPF304に堆積した煤は燃焼される。燃焼した煤(C)は、COとなってGPF304から排気される。このように、GPF304に堆積した煤が燃焼され、煤がGPF304から除去されることにより、GPF304が再生される。
【0116】
GPF304の温度が温度T3以上になり、GPF304の温度が温度T3以上であることが判定された場合(ステップS704/YES)、ステップS708へ進む。
【0117】
ステップS708において、温度判定部416が、三元触媒302の温度が温度T2以上であるか否かを判定する。三元触媒302の温度が温度T2未満であることが判定された場合(ステップS708/NO)、ステップS722へ進む。ステップS722で実施される処理については後述する。一方、三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合(ステップS708/YES)、ステップS710へ進む。なお、本実施形態では、ステップS708でNOと判定された場合、後で説明する「所定時間でGPF304再生終了」(ステップS722)の処理が実施される。これに限らず、ステップS708でNOと判定された場合、ステップS702に戻り、再度GPF304の再生処理が必要であるか否かを判定されてもよい。
【0118】
ここで、三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された後に実施されるステップS710~S716の処理の目的を説明する。図3を用いて説明したように、三元触媒302の温度が温度T2以上の高温になると、三元触媒302が排気ガスに含まれる有害物質の三成分を酸化還元する能力が低下する。上述のように、GPF304の温度が温度T3未満である場合(ステップS704/NO)、ステップS706において、点火遅角が実施される。これにより、燃焼室110から排気される排気ガスが昇温され、昇温された排気ガスは三元触媒302にも流れる。このため、三元触媒302が昇温されて、三元触媒302の温度が温度T2以上である場合がある。
【0119】
また、第2の排気通路300の下流側へ向かうほど、排気ガスの熱が第2の排気通路300に放熱されることにより、第2の排気通路300を流れる排気ガスの温度は低くなる。LNT306は、第2の排気通路300における下流側に位置している。従って、第2の排気通路300を流れる排気ガスの中では、LNT306から排気される排気ガスの温度は比較的低い。このため、LNT306から排気された排気ガスが循環路312を通過して、三元触媒302に流れることにより、速やかに三元触媒302が冷却される。このように、三元触媒302を冷却することを目的として、以下のステップS710からステップS716の処理が行われる。
【0120】
まず、ステップS710において、排気ガス制御部424は、第2循環バルブ314を開ける。また、排気ガス制御部424は、循環用三方バルブ320の上流側の循環路312と下流側の循環路312とが連通するように、循環用三方バルブ320の開口方向を制御する。さらに、排気ガス制御部424は、ポンプ322を駆動させる。これにより、LNT306から排気された排気ガスが、循環路312に流れて再び三元触媒302に流入することが可能になる。第2循環バルブ314が開くと、ステップS712へ進む。
【0121】
ステップS712において、排気ガス制御部424は、第2排気バルブ310を所定量閉める。これにより、LNT306から排気されて第2排気バルブ310を通過する排気ガスの流量が減少する。一方、LNT306から排気され、循環路312を通過して、三元触媒302に再び流入する排気ガスの流量が増大する。これにより、三元触媒302は、LNT306から排気された排気ガスにより冷却される。第2排気バルブ310が所定量閉じてから所定期間が経過すると、ステップS714へ進む。
【0122】
ステップS714において、排気ガス制御部424は、第2排気バルブ310を開ける。第2排気バルブ310が開くことにより、LNT306から排気されて第2排気バルブ310を通過する排気ガスの流量が増大する。一方、LNT306から排気されて循環路312を通過して再び三元触媒302に流入する排気ガスの流量が減少する。第2排気バルブ310が開くと、ステップS716へ進む。
【0123】
ステップS716において、排気ガス制御部424は、第2循環バルブ314を閉じる。これにより、LNT306から排気された排気ガスは、第2循環バルブ314を通過しなくなる。従って、LNT306から排気された排気ガスは、三元触媒302に流入しなくなる。また、排気ガス制御部424は、ポンプ322を停止させる。第2循環バルブ314が閉じると、ステップS718へ進む。
【0124】
ここで、ステップS710からステップS716で実施される処理の効果を説明する。排気ガスは第2の排気通路300を下流に流れる間に放熱する。このため、第2の排気通路300の下流に向かうにつれて排気ガスの温度が下がる傾向がある。特に、LNT306から排気される排気ガスは、第2の排気通路300における下流側を流れるため、第2の排気通路300を流れる排気ガスの中では比較的低温である。一方、三元触媒302は、第2の排気通路300における上流側に位置する。このため、三元触媒302を流れる排気ガスは、第2の排気通路300を流れる排気ガスの温度の中では、比較的高温になる。このため、三元触媒302も第2の排気通路300の中では比較的高温になる。
【0125】
ステップS710からステップS716において、第2循環バルブ314及び第2排気バルブ310が開閉されることにより、LNT306から排気される排気ガスが再び三元触媒302に流入する。上述のように、LNT306から排気される排気ガスは、第2の排気通路300を流れる排気ガスの中では、比較的低温である。このため、LNT306から排気される排気ガスが、循環路312を通過して、再び三元触媒302に流入することで、三元触媒302が冷却される。これにより、排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が酸化還元する能力が高められ、三元触媒302を流れる排気ガスの浄化が促進される。
【0126】
ステップS716の処理が終わると、ステップS718へ進む。
【0127】
ステップS718において、温度判定部416は、三元触媒302の温度が温度T2以上であるか否かを判定する。三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合(ステップS718/YES)、ステップS720へ進む。三元触媒302の温度が温度T2未満であることが判定された場合(ステップS718/NO)、ステップS722へ進む。
【0128】
以下では、ステップS718でYESと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS718でNOと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0129】
次に、ステップS718でYESと判定された場合(つまり、三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合)について説明する。制御フローがステップS720に到達する前に、ステップS706において、点火遅角が実施されている場合がある。この場合、ステップS720において、エンジン制御部426が点火遅角を終了する。これにより、GPF304の再生処理が強制終了される。点火遅角が終了すると、ステップS724へ進み、GPF再生処理の制御フローが終了する。また、制御フローがステップS720に到達する前に、点火遅角が実施されていない場合には、ステップS724へ進み、GPF再生処理の制御フローが終了する。
【0130】
次に、ステップS718でNOと判定された場合(つまり、三元触媒302の温度が温度T2未満であることが判定された場合)について説明する。制御フローがステップS722に到達する前に、ステップS706において、点火遅角が実施されている場合がある。この場合、ステップS722において、例えばGPF304の温度が温度T3以上になってから所定時間が経過したときに、エンジン制御部426が点火遅角を終了する。また、制御フローがステップS722に到達する前に、点火遅角が実施されていない場合がある。この場合は、例えばGPF304の温度が温度T3以上になってから所定時間が経過すると、ステップS724に進み、GPF再生処理の制御フローが終了する。
【0131】
以上、ステップS504において実施されるGPF再生処理について説明した。上記のように、GPF304の温度が当該GPF304の再生が促進される温度である温度T3以上になるように、エンジン制御部426が排気ガスを昇温した。その一方、排気ガス制御部424が、LNT306の下流側の第2の排気通路300を流れる排気ガスを循環路312に通し、三元触媒302に流すことにより、三元触媒302を冷却した。これにより、GPF304の再生処理が実施と三元触媒302による排気ガスに含まれる有害物質の浄化の促進が両立された。
【0132】
[LNT脱離処理]
次に、ステップS506において実施されるLNT脱離処理について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が実施するLNT脱離処理の処理例を示すフローチャートである。
【0133】
まず、ステップS802において、パージ判定部420が、NOxパージが必要であるか否かを判定する。パージ判定部420は、所定の時間が経過したときに、NOxパージが必要であることを判定してもよい。例えば、パージ判定部420は、前回NOxパージが実施されてから数十秒が経過したときに、NOxパージが必要であることを判定してもよい。NOxパージが必要であることが判定された場合(ステップS802/YES)、ステップS804へ進む。NOxパージが必要でないことが判定された場合(ステップS802/NO)、ステップS818へ進み、LNT脱離処理の制御フローは終了する。
【0134】
ステップS804において、温度判定部416が、LNT306の温度が温度T1以上であるか否かを判定する。LNT306の温度が温度T1以上である場合(ステップS804/YES)、ステップS808へ進む。LNT306の温度が温度T1未満であることが判定された場合(ステップS804/NO)、ステップS806へ進む。
【0135】
以下では、ステップS804でNOと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS804でYESと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0136】
まず、ステップS804でNOと判定された場合(つまり、LNT306の温度が温度T1未満であることが判定された場合)について説明する。この場合、ステップS806へ進む。ここで、ステップS806の処理の目的について説明する。図3で示されたように、LNT306の温度が温度T1~温度T4の温度領域のときに、LNT306がNOxを還元する能力が高い。そこで、ステップS806の処理は、LNT306がNOxを還元する能力を高めるために、LNT306を昇温することを目的として実施される。
【0137】
ステップS806において、エンジン制御部426が、点火遅角を実施する。点火遅角が実施されることで、燃焼室110から排気される排気ガスが昇温する。燃焼室110から排気された排気ガスは、浄化機構210へ流入する。浄化機構210へ流入した排気ガスは、第2の排気通路300を通ってLNT306に流れ込む。このように、点火遅角により昇温された排気ガスがLNT306に流れ込むことにより、LNT306が昇温される。点火遅角が実施されると、ステップS804へ戻る。
【0138】
ステップS804において、再び温度判定部416が、LNT306の温度が温度T1以上であるか否かを判定する。LNT306の温度が温度T1未満であることが再び判定された場合(ステップS804/NO)、ステップS806へ再び進む。
【0139】
このようにして、LNT306の温度が温度T1以上になるまで、ステップS804及びステップS806の処理が繰り返される。LNT306の温度が温度T1以上であることが判定された場合(ステップS804/YES)、ステップS808へ進む。
【0140】
ステップS808において、温度判定部416が、LNT306の温度が温度T4以上であるか否かを判定する。LNT306の温度が温度T4以上であることが判定された場合(ステップS808/YES)、ステップS810へ進む。LNT306の温度が温度T4未満であることが判定された場合(ステップS808/NO)、ステップS814へ進む。ステップS314の処理については後述する。まず、ステップS810の処理について説明する。
【0141】
ステップS810において、パージ判定部420は、Sパージが必要であるか否かを判定する。例えば、パージ判定部420は、前回Sパージが実施されてから車両が走行した距離が所定の距離以上である場合に、Sパージが必要であることを判定してもよい。Sパージが必要であることが判定された場合(ステップS810/YES)、ステップS812に進む。Sパージが必要でないことが判定された場合(ステップS810/NO)、ステップS814に進む。
【0142】
以下では、ステップS810でYESと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS810でNOと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0143】
ステップS810でYESと判定された場合(つまり、Sパージが必要であることが判定された場合)、ステップS812において、Sパージ処理が行われる。Sパージ処理が行われることにより、LNT306の被毒が回復する。Sパージ処理の詳細については後述する。Sパージ処理の制御フローが終了すると、ステップS814へ進む。
【0144】
ステップS814において、パージ判定部420が、NOxパージ処理が必要であるか否かを判定する。NOxパージ処理が必要であることが判定された場合(ステップS814/YES)、ステップS816へ進む。NOxパージ処理が必要でないことが判定された場合(ステップS814/NO)、ステップS818へ進み、LNT脱離処理の制御フローは終了する。
【0145】
ステップS816において、排気ガス制御部424が、LNT306からNOxを脱離するためにNOxパージを行う。具体的には、排気ガス制御部424は、一時的に空燃比がリッチの状態になるように、燃料噴射バルブ114から噴射される燃料の量を増量する。NOxパージが実施されることにより、NOxに吸蔵されたNOxが還元されてNとなり、LNT306から排気される。ここで、ステップS808においてNOと判定された場合(つまり、LNT306の温度が温度T4未満であることが判定された場合)には、LNT306の温度は温度T1~T4の温度領域内である。図3を用いて説明したように、LNT306の温度が温度T1~T4の温度領域内であるときに、LNT306に吸蔵されたNOxは還元され易い。従って、ステップS808においてNOと判定された後にNOxパージが実施された場合、LNT306に吸蔵されたNOxが還元され易い。なお、ステップS808においてYESと判定された後に、ステップS816の処理が実施される場合には、LNT306の温度が温度T4以上であり得る。LNT306の温度が温度T4以上であっても、LNT306に吸蔵されたNOxが還元されて、NとしてLNTから排気され得る。
【0146】
NOxパージが実施されると、ステップS818に進み、LNT脱離処理の制御フローは終了する。なお、点火遅角が実施されている場合には、LNT脱離処理の制御フローが終了するとともに、エンジン制御部426が点火遅角を終了してもよい。
【0147】
以上、LNT脱離処理について説明した。上記のように、エンジン制御部426が、LNT306の温度が、LNT306によるNOxの還元が促進される温度領域になるように、排気ガスを昇温した。これにより、NOxパージによるLNT306に吸蔵されたNOxの脱離が促進された。
【0148】
[Sパージ処理]
次に、LNT脱離処理のステップS812において実施されるSパージ処理の詳細について説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置200が実施するSパージ処理の処理例を示すフローチャートである。
【0149】
まず、ステップS902において、温度判定部416が、LNT306の温度が温度T5以上であるか否かを判定する。LNT306の温度が温度T5以上であることが判定された場合(ステップS902/YES)、ステップS906へ進む。LNT306の温度が温度T5未満であることが判定された場合(ステップS902/NO)、ステップS904へ進む。
【0150】
以下では、ステップS902でNOと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS902でYESと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0151】
ステップS902でNOと判定された場合(つまり、LNT306の温度が温度T5未満であることが判定された場合)、ステップS904において、エンジン制御部426は、点火遅角を実施する。点火遅角が実施されることで、燃焼室110から排気される排気ガスの温度が昇温され、LNT306に流入する排気ガスの温度が昇温される。点火遅角が実施されると、ステップS902へ戻る。
【0152】
ステップS902において、LNT306の温度が温度T5未満であることが判定された場合(ステップS902/NO)、再びステップS904へ進む。
【0153】
このようにして、ステップS902とステップS904の処理が繰り返される。ステップS902とステップS904が繰り返されている間には、点火遅角により昇温された排気ガスがLNT306に流入することで、LNT306が昇温される。LNT306の温度が温度T5以上になると、ステップS902において、LNT306の温度が温度T5以上であることが判定される。なお、本実施形態では、LNT306が温度T5以上であることが判定されるまで、ステップS902とS904の処理が繰り返される。これに限らず、Sパージ処理が開始(ステップS900)されるとともに、排気ガス昇温制御(ステップS904)が実施され、LNT306の温度判定(ステップS902)が省略されて、リッチ運転が開始(次のステップS906)されてもよい。あるいは、リッチ運転が開始と排気ガス昇温制御の処理は同時に実施されてもよいし、リッチ運転の開始が先に実施されてもよい。
【0154】
LNT306の温度が温度T5以上であることが判定された場合(ステップS902/YES)、ステップS906において、エンジン制御部426は、リッチ運転を開始する。より具体的には、エンジン制御部426は、空燃比が継続的にリッチの状態になるように、燃料噴射バルブ114から噴射される燃料を増量する。上記のように、ステップS902において、LNT306の温度が温度T5以上であることが判定されている。図3を用いて説明したように、LNT306の温度が温度T5以上であるときにリッチ運転が実施されると、LNT306に吸蔵されたSOxがLNT306から脱離されるSパージが実施される。Sパージが実施されることにより、LNT306の被毒が回復する。リッチ運転が開始されると、ステップS908に進む。
【0155】
ステップS908において、温度判定部416は、三元触媒302の温度が温度T2以上であるか否かを判定する。三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合(ステップS908/YES)、ステップS910へ進む。三元触媒302の温度が温度T2未満であることが判定された場合(ステップS908/NO)、ステップS918へ進む。
【0156】
以下では、ステップS908でYESと判定された場合における処理の流れについて説明した後、ステップS908でNOと判定された場合における処理の流れについて説明する。
【0157】
ステップS908でYESと判定された場合(つまり、三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合)、ステップS910~ステップS916の処理が行われる。以下、ステップS910~S916の各ステップにおいて行われる処理について説明する。
【0158】
まず、ステップS910において、排気ガス制御部424が、第2循環バルブ314を開ける。また、排気ガス制御部424は、循環用三方バルブ320の上流側の循環路312と循環用三方バルブ320の下流側の循環路312とが連通するように、循環用三方バルブ320の開口方向を制御する。さらに、排気ガス制御部424は、ポンプ322を駆動させる。これにより、LNT306から排気された排気ガスが、循環路312を通過して再び三元触媒302に流入することが可能になる。第2循環バルブ314が開くと、ステップS912へ進む。
【0159】
ステップS912において、排気ガス制御部424が、第2排気バルブ310を所定量閉める。これにより、LNT306から排気されて第2排気バルブ310を通過する排気ガスの流量が減少する。一方、LNT306から排気され、循環路312を通過して、三元触媒302に再び流入する排気ガスの流量が増大する。これにより、三元触媒302は、LNT306から排気された排気ガスにより冷却される。第2排気バルブ310が閉じてから所定期間が経過すると、ステップS914へ進む。
【0160】
ステップS914において、排気ガス制御部424が、第2排気バルブ310を開ける。第2排気バルブ310が開くことにより、LNT306から排気されて第2排気バルブ310を通過する排気ガスの流量が増大する。一方、LNT306から排気されて循環路312を通過して再び三元触媒302に流入する排気ガスの流量が減少する。第2排気バルブ310が開くと、ステップS916へ進む。
【0161】
ステップS916において、排気ガス制御部424が、第2循環バルブ314を閉じる。これにより、LNT306から排気された排気ガスは、第2循環バルブ314を通過しなくなる。従って、LNT306から排気された排気ガスは、三元触媒302に流入しなくなる。また、排気ガス制御部424は、ポンプ322を停止させる。第2循環バルブ314が閉じると、ステップS908へ戻る。
【0162】
ステップS908において、三元触媒302の温度が温度T2以上であることが判定された場合(ステップS908/YES)、ステップS910からステップS916の処理が再度実施される。
【0163】
このように、ステップS908からステップS916の処理が繰り返し行われることにより、LNT306から排気された排気ガスが三元触媒302に再度流入することで、三元触媒302は冷却される。前述のように、LNT306の下流側の排気ガスは、第2の排気通路300を流れる排気ガスの中では、比較的低温である。このため、LNT306の下流側を流れる排気ガスが三元触媒302に再度流入することにより、三元触媒302が速やかに冷却される。
【0164】
ステップS908において、三元触媒302の温度が温度T2未満であることが判定された場合(ステップS908/NO)、ステップS918において、エンジン制御部426は、リッチ運転を終了する。より具体的には、エンジン制御部426は、空燃比を継続的にリーンの状態にするために、燃料噴射バルブ114から噴射される燃料を減量する。リーン運転が開始されると、ステップS920に進み、Sパージ処理は終了する。
【0165】
以上、LNT脱離処理のステップS812で実施されるSパージ処理について説明した。上記のように、LNT脱離処理では、エンジン制御部426が、LNT306の被毒を回復するために、LNT306の温度が温度T5以上になるように排気ガスを昇温した。その一方で、排気ガス制御部424は、高温になり過ぎた三元触媒302を冷却するために、LNT306の下流側の第2の排気通路300を流れる排気ガスを循環路312に通して、三元触媒302に流した。このようにして、LNT306の被毒の回復と、排気ガスに含まれる有害物質の三元触媒302による浄化の促進が両立された。
【0166】
以上、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200が実施する処理例について説明した。
【0167】
2.5.効果
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、排気ガス制御部424が、LNT306の下流側の第2の排気通路300に流れる排気ガスを、循環路312に通して、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300に循環させ、三元触媒302に流した。第2の排気通路300の下流側ほど、排気ガスの温度は低い。また、LNT306は、第2の排気通路300における下流側に位置する。従って、LNT306の下流側の第2の排気通路300に流れる排気ガスは、第2の排気通路300を流れる排気ガスの中では、比較的低温である。一方、三元触媒302は、第2の排気通路300において上流側に位置するため、第2の排気通路300の中では、比較的高温である。このため、LNT306の下流側の第2の排気通路300を流れる排気ガスが、循環路312を通過して、三元触媒302に流れることで三元触媒302が速やかに冷却される。例えば、GPF再生処理において、点火遅角が実施されることで排気ガスが昇温され、第2の排気通路300に高温の排気ガスが流れることで三元触媒302の温度が例えば温度T2以上の高温になる場合がある。このような場合であっても、LNT306の下流側の第2の排気通路300に流れる排気ガスが三元触媒302に流れることで、三元触媒302が冷却される。これにより、三元触媒302の温度が温度T2未満となり、排気ガスに含まれる有害物質を三元触媒302が酸化還元する能力が高められ、当該有害物質の浄化が促進される。
【0168】
また、本発明の一実施形態では、排熱回収器208が、浄化機構210の上流側の排気経路104に設けられている。排気ガスは、排気経路104の下流側に向かうにつれて、段々と冷えていく。従って、排気経路104の上流側ほど、排気ガスは高温である。このため、浄化機構210の下流側の排気経路104に排熱回収器208が設けられた場合と比べると、本発明の一実施形態のように浄化機構210の上流側の排気経路104に排熱回収器208が設けられた場合の方が、より高い温度の排気ガスが排熱回収器208に流れる。さらに、本発明の一実施形態では、排熱回収器208は、燃焼室110の排気ポート123の付近に設けられたシリンダーヘッド134の内部に位置するため、排熱回収器208を流れる排気ガスは、排気経路104の中では、最も高温となる。通常、排熱回収器208に流れる排気ガスの温度が高いほど、排熱回収器208が排気ガスから回収する熱量が大きい。従って、本発明の一実施形態のように、シリンダーヘッド134の内部に排熱回収器208が設けられることにより、排熱回収器208は大きな熱量を排気ガスから回収することができる。
【0169】
さらに、本発明の一実施形態では、エンジン制御部426が、三方バルブ202の開口方向を制御することにより、燃焼室110から排気される排気ガスが流れる経路を第1の排気通路204又は積極放熱通路206に切り替えることができる。本発明の一実施形態では、図5に示した処理が開始されるとき、第1の排気通路204に排気ガスが流れる。図5に示した制御フローが実施されることにより、浄化機構210の第2の排気通路300に設けられた三元触媒302、DPF304、又はLNT306が適切な温度になるように、排気ガスの流れる経路、点火時期、又は空燃比等が制御される。これらの制御が実施された後に、三方バルブ202の開口方向が制御されることにより、冷却水の温度に応じて、燃焼室110から排気される排気ガスが積極放熱通路206に流れるようになる。このようにして、本発明の一実施形態の排気ガス浄化装置200は、浄化機構210が備える三元触媒302、DPF304、又はLNT306を適切な温度に保ちながら、排熱回収器208による排気ガスからの効率のよい排熱の回収を実現することができる。
【0170】
3.変形例
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0171】
本発明の一実施形態では、循環路312はLNT306の下流側の第2の排気通路300で接続されている。これに限らず、循環路312は、GPF304の下流側であってLNT306の上流側の第2の排気通路300で接続されていてもよい。このように、循環路312がGPF304の下流側であってLNT306の上流側の第2の排気通路300で接続されている場合も、当該循環路312は、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300で分岐されてもよい。前述のように、第2の排気通路300における下流側を流れる排気ガスの方が、第2の排気通路300における上流側を流れる排気ガスよりも低温である。GPF304は三元触媒302の下流側の第2の排気通路300に位置するため、三元触媒302を流れる排気ガスよりも、GPF304の下流側の第2の排気通路300を流れる排気ガスの方が低温である。従って、GPF304から排気された排気ガスが、GPF304の下流側であってLNT306の上流側の第2の排気通路300と循環路312の分岐箇所から循環路312へ流入し、第2の排気通路300へ循環し、再び三元触媒302へ流れ込むことにより、三元触媒302が冷却される。
【0172】
本発明の一実施形態では、循環路312は、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300で分岐されるとともに、LNT306の下流側の第2の排気通路300で接続される通路の一本のみである。これに限らず、循環路312は複数本であってもよい。例えば、浄化機構210には、本発明の一実施形態の循環路312の他に、三元触媒302の上流側の第2の排気通路300で分岐されるとともに、GPF304の下流側であってLNT306の上流側の第2の排気通路300で再接続される第2の循環路が設けられてもよい。
【0173】
本発明の一実施形態では、排気ガス制御部424は、第1排気バルブ308の開度を調整して、第2の排気通路から分岐通路316に流れる排気ガスの流量を制御した。これに限らず、第1排気バルブ308が第2の排気通路300に設けられず、排気ガス制御部424が第1循環バルブの開閉の制御のみで、第2の排気通路から分岐通路316に流れる排気ガスの流量を制御してもよい。また、本発明の一実施形態では、排気ガス制御部424は、第2排気バルブ310の開度を調整して、第2の排気通路から循環路312に流れる排気ガスの流量を制御した。これに限らず、第2排気バルブ310が第2の排気通路300に設けられず、排気ガス制御部424が第2循環バルブの開閉の制御のみで、第2の排気通路から循環路312に流れる排気ガスの流量を制御してもよい。また、本発明の一実施形態では排熱回収器208をシリンダーヘッド134の内部に設けるようにしたが、排熱回収器208はシリンダーヘッド134の外部に設けてもよい。
【0174】
また、循環路312には、第2循環バルブ314以外にも各種のバルブが設けられてもよい。例えば、循環路312と分岐通路316の接続箇所の下流側の循環路312にバルブが設けられ、当該バルブの開閉により循環路312を流れる排気ガスの流量が制御されてもよい。
【符号の説明】
【0175】
100 エンジン
200 排気ガス浄化装置
204 第1の排気通路
206 積極放熱通路
208 排熱回収器
210 浄化機構
300 第2の排気通路
302 三元触媒
304 GPF
306 LNT
312 循環路
416 温度判定部
424 排気ガス制御部
426 エンジン制御部
428 放熱制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9