(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】パッケージトレイの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
B60R7/08 R
(21)【出願番号】P 2018184509
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】田中 純
(72)【発明者】
【氏名】中村 康伯
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-342795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室
内の
サイドトリムの立壁に取り付けられ、パッケージトレイを載置可能な受け部が該車室内に延出する延出端部に設けられた支持部材と、
通孔を通して外方へ突出する前記受け部を除いて、前記支持部材を覆うように配置されたカバー部材と、を備えている
ことを特徴とするパッケージトレイの支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記延出端部を構成する縦支持壁部より該支持部材における前記立壁側の根元に向けて凹むように形成された取付部を有し、
前記支持部材は、前記取付部がネジ締結により前記立壁に固定される請求項1記載のパッケージトレイの支持構造。
【請求項3】
前記支持部材は、前記立壁に形成された掛止孔に引っ掛かって、該支持部材を該立壁に仮止めする掛止爪を前記取付部に備えている請求項2記載のパッケージトレイの支持構造。
【請求項4】
前記カバー部材に設けられた前記通孔は、前記支持部材に設けられた前記受け部よりも大径に形成されている請求項1~3の何れか一項に記載のパッケージトレイの支持構造。
【請求項5】
前記支持部材における前記受け部の根元に連なる前記延出端部を構成する縦支持壁部と、前記カバー部材における前記通孔が形成されて前記縦支持壁部と重なるように延在する縦カバー壁部とが接合されている請求項1~4の何れか一項に記載のパッケージトレイの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車室内に設置されるパッケージトレイを支持する支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内には、例えば、パッケージトレイと呼ばれる棚状の部材が設置されて、パッケージトレイによって車室と荷室とを区切ったり、パッケージトレイの下側の空間と上側の空間とに物品を区分けして収納したりすることなどが行われることがある。パッケージトレイは、例えば
図11に示すように、サイドトリム10から車室内に出っ張るように設けられた支持部12に載置され、サイドトリム10と一体成形された支持部12からなる支持構造によって支持される。パッケージトレイは、車種において必ず設定されるのではなく、オプション品として取り扱われることが多いので、パッケージトレイを設定しない基本形態のサイドトリムと、パッケージトレイが設定されるオプション形態のサイドトリム10とを用意することになる。このため、複数種類のサイドトリムに対応して成形型が必要になるので、コストの上昇を招き、部品点数の増加により管理の手間が増えるなどの問題がある。そこで、パッケージトレイを設定する場合、
図12に示すようにカバー状の支持体14をサイドトリム10に開けた穴10aに爪14aを引っ掛けて取り付ける支持構造や、特許文献1に示すように支持体をサイドフレーム(ボデー部材)に室内側からボルトによって取り付ける支持構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッケージトレイには、物が載せられることが想定されるので、パッケージトレイを支持する支持構造には剛性が必要とされる。
図12の支持構造は、支持体14の先端部に載せたパッケージトレイから荷重が加わると、サイドトリム10に突き合わせて取り付けられた支持体14の根元部がサイドトリム10から離れてしまい、サイドトリム10と支持体14の根元部との間に隙間があくことがある。特許文献1に示す支持構造は、サイドトリムを通してボデー部材に支持体を組み付けているが、パッケージトレイから支持体に荷重が加わって、サイドトリムに突き合わせて取り付けられた支持体がサイドトリムから離れた場合、サイドトリムと支持体との間に隙間ができることがある。このように支持体とサイドトリムとの間に隙間ができると、車室内からその隙間が見えるため見栄えが悪化する。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、荷重がかかっても見栄えのよいパッケージトレイの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るパッケージトレイの支持構造は、
車室の立壁に取り付けられ、パッケージトレイを載置可能な受け部が該車室内に延出する延出端部に設けられた支持部材と、
通孔を通して外方へ突出する前記受け部を除いて、前記支持部材を覆うように配置されたカバー部材と、を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るパッケージトレイの支持構造によれば、荷重がかかっても見栄えがよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、本発明の実施例に係るパッケージトレイの支持構造について、該支持構造の支持体が取り付けられたサイドトリムを示す概略斜視図であり、(b)は実施例の支持体を示す概略斜視図である。
【
図7】実施例の支持体を、受け部に対応する位置で上下に切断して示す端面図である。
【
図8】実施例の支持体を、取付部に対応する位置で上下に切断して示す端面図である。
【
図9】実施例の支持体を、溶着用ボスに対応する位置で上下に切断して示す端面図である。
【
図10】実施例の支持体をサイドトリムに取り付ける過程を示す説明図である。
【
図11】サイドトリムに一体形成された従来の支持体を示す端面図である。
【
図12】ボデー部材に取り付ける従来の支持体を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るパッケージトレイの支持構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、支持体のサイドトリム(立壁)の取り付け状態を基準として方向を指称し、車室に向く側を表側とし、車体に向く側を裏側とする(
図1(a)参照)。
【実施例】
【0010】
図1(a)に示すように、実施例に係る支持構造は、車室16の内壁をなすサイドトリム(立壁)10に取り付けられた支持体20から構成されている。パッケージトレイTは、車室16において対向するサイドトリム10のそれぞれに取り付けられた対をなす支持構造の支持体20に載せられて、車室16に水平に架け渡した状態で設置される。支持体20は、パッケージトレイTを支持して該パッケージトレイTから加わる荷重を受ける支持部材22と、支持部材22の一部を除いて支持部材22を覆うように設けられ、支持体20の外観(意匠面)の大部分を構成するカバー部材24とを備えている。なお、支持部材22とカバー部材24とが後述するように溶着等で一体化されていなくて、支持部材22とカバー部材24が互いに独立してサイドトリム10に取り付いていても、その組み合わせを支持体20と呼ぶ。
図1(b)、
図2および
図3に示すように、支持体20は、支持部材22においてパッケージトレイTを受け止める受け部26がカバー部材24に形成された通孔42を通って外側に露出するだけで、その他がサイドトリム10に面する根元部までかけて、カバー部材24で覆われている。そして、支持体20は、受け部26から加わるパッケージトレイTの荷重を支持部材22で受けるようにして、カバー部材24に荷重がかからないように構成される。なお、支持部材22およびカバー部材24は、ポリプロピレンなどのプラスチックの成形品を用いることができる。
【0011】
図1(a)に示すように、支持部材22は、サイドトリム10に取り付けられる。
図4~6に示すように、支持部材22には、パッケージトレイTを載置可能な受け部26が、車室16内に延出する延出端部に設けられている。支持部材22は、表側および上下左右に壁を有する裏側へ開口する箱状に基本的に形成され、開口側をサイドトリム10に向き合わせて該サイドトリム10に取り付けられる。より具体的には、支持部材22は、サイドトリム10から間をあけて配置され、サイドトリム10と重なるように並行に延在する縦支持壁部(壁部)28と、縦支持壁部28の上下左右の縁からサイドトリム10にかけて延在する横支持壁部30とを備えている。実施例において、縦支持壁部28が、支持部材22における車室16内に延出する延出端部となっている。支持部材22には、受け部26が縦支持壁部28の表面から表側へ向けて突出するように形成されている。受け部26は、軸が表裏方向へ延在する円筒状に形成されている。
【0012】
図4および
図5に示すように、支持部材22は、縦支持壁部28より該支持部材22におけるサイドトリム10側の根元に向けて凹むように形成された取付部32を有している。取付部32は、支持部材22の裏側に寄せて設けられて、サイドトリム10に相対するように延在している。実施例では、縦支持壁部28より裏側へ凹むように形成された取付部32が、支持部材22において前後方向中間部と後上角部とに設けられている。取付部32には、ネジ孔を表裏方向へ向けた姿勢でナットNを保持可能な座部34が設けられている。支持部材22には、座部34で保持されたナットNが、表裏方向へ移動規制された状態で設置される。支持部材22における前後方向中間部の取付部32には、上下に離して2箇所の座部34が設けられ、支持部材22における後上角部の取付部32には、1箇所の座部34が設けられている。実施例のナットNは、板材を互いに対向するように折り曲げて形成されたスプリング部Naと、対向する板材を貫通する孔に整合するようにスプリング部Naに固定されたナット部Nbとを有するスプリングナットが用いられている(
図8参照)。ナットNは、板状の座部34をスプリング部Naで挟んで支持部材22に取り付けられている。
図8に示すように、支持部材22は、サイドトリム10の裏側から、該サイドトリム10に形成された取付孔11aに挿入したボルトBがナットNのねじ孔にねじ込まれて、サイドトリム10に取り付けられる。このように、支持部材22は、ネジ締結によりサイドトリム10に固定される。
【0013】
図4~5に示すように、支持部材22は、サイドトリム10に形成された掛止孔11b(
図8参照)に引っ掛かって、該支持部材22を該サイドトリム10に仮止めする掛止爪36を備えている。掛止爪36は、支持部材22における前後方向中間部の取付部32に、上下の座部34,34の間に設けられ、取付部32の裏面から裏側へ向けて延出するように形成されている。実施例では、上下に離して2つの掛止爪36,36が、上下対称な関係で設けられている。
【0014】
図1(b)~
図3に示すように、カバー部材24は、表側および上下左右に壁を有する裏側へ開口する箱状に基本的に形成され、開口側をサイドトリム10に向き合わせて設置される。より具体的には、カバー部材24は、サイドトリム10から間をあけて配置され、サイドトリム10と重なるように並行に延在する縦カバー壁部38と、縦カバー壁部38の上下左右の縁からサイドトリム10にかけて延在する横カバー壁部40とを備えている。カバー部材24には、受け部26の挿通を許容する通孔42が、縦カバー壁部38を表裏方向へ貫通するように形成されている。
図7に示すように、カバー部材24は、通孔42を通して外方へ突出する受け部26を除いて支持部材22の縦支持壁部28および横支持壁部30を覆うように配置され、このとき、縦カバー壁部38が縦支持壁部28に重なるように延在する。
【0015】
図2および
図3に示すように、カバー部材24は、サイドトリム10に形成された係合孔11cに引っ掛かる係合爪44を有し、係合爪44が係合孔11cに引っ掛かって、サイドトリム10に位置決めされる。係合爪44は、上下の横カバー壁部40の裏端から裏側へ向けて延出するように形成され、実施例では、上の横カバー壁部40の前後方向中間部に、係合爪44が1箇所設けられ、下の横カバー壁部40に、前後方向に離して係合爪44が2箇所設けられている。
【0016】
支持体20は、支持部材22における受け部26の根元に連なってサイドトリム10と重なるように延在する縦支持壁部28と、カバー部材24における通孔42が形成されてサイドトリム10と重なるように延在する縦カバー壁部38とを、溶着により接合してもよい。溶着によって接合する場合、例えば、
図9に示すように、カバー部材24における縦カバー壁部38の裏面から立ち上がる溶着用ボス39を形成して、支持部材22の縦支持壁部28に形成された溶着孔28aに該溶着用ボス39の頭部を通す。そして、溶着孔28aから突出する溶着用ボス39の頭部を支持部材22の裏側から溶融して、縦支持壁部28と縦カバー壁部38を溶着すればよい。
【0017】
次に、前述した支持体20のサイドトリム10への取り付けについて説明する。サイドトリム10は、取付孔11a、掛止孔11bおよび係合孔11cが開口していない形状で、インジェクション成形等により成形される(
図10(a)参照)。パッケージトレイTを設定するオプションが選択された場合、サイドトリム10に、取付孔11a、掛止孔11bおよび係合孔11cを表裏に貫通するように形成する(
図10(b)参照)。カバー部材24の内側に支持部材22を入れて、通孔42に受け部26を通して、支持部材22とカバー部材24とを組み合わせる。なお、支持部材22とカバー部材24を溶着する場合は、支持部材22の縦支持壁部28とカバー部材24の縦カバー壁部38とを溶着し、支持部材22とカバー部材24とを固定した支持体20とする。
【0018】
支持部材22の掛止爪36を掛止孔11bに挿入し、カバー部材24の係合爪44を係合孔11cに挿入し、支持体20をサイドトリム10に仮固定して、位置決めする。サイドトリム10の裏側からボルトBを取付孔11aに差し込み、支持部材22の座部34に保持されたナットNにねじ込むことで、支持体20がサイドトリム10に固定される(
図8参照)。なお、符号Wは、ワッシャーである。
【0019】
パッケージトレイTの支持構造は、支持部材22の受け部26でパッケージトレイTを支持する構成である。受け部26に荷重が加わると、縦支持壁部28から横支持壁部30を介してサイドトリム10側に向けて力が作用するものの、カバー部材24でパッケージトレイTを支えていないので、カバー部材24が全荷重を担わない。これにより、支持体20に荷重が加わっても、カバー部材24の横カバー壁部40がサイドトリム10から離れるように変位することを回避でき、カバー部材24とサイドトリム10との間に隙間はできない。従って、支持構造によれば、受け部26に荷重が加わっても、サイドトリム10に連なるように配置された外観が変化することが防止されているから、見栄えがよい。
【0020】
支持部材22は、サイドトリム10と座部34でボルトBによってしっかりと結合され、受け部26にかかる荷重を支持部材22で支えるため、カバー部材24とサイドトリム10とが向き合う部分において隙間等の発生が防止される。取付部32は、縦支持壁部28をサイドトリム10の表面まで凹ませて形成されると共に横支持壁部30と繋がっているので、剛性が担保されている。支持体20に加わる荷重を受ける支持部材22に大きな荷重がかかったとしても、支持部材22に設けられた剛性のある取付部32によってサイドトリム10と結合されているので、カバー部材24に影響を与えない。また、支持部材22は、カバー部材24で覆われているので、仮に、支持部材22の根元部がサイドトリム10から離れるように変位しても、当該変位は車室16側から見えない。しかも、支持部材22の取付部32および該支持部材22に設置されるナットNや、当該ナットNにねじ込まれるボルトBは、カバー部材24で覆われているので、車室16側から見えず、ボルトBやナットNなどの取付手段が露出することによる見栄えの悪化を招かない。
【0021】
前述した支持構造では、支持部材22に設けられた掛止爪36を掛止孔11bに引っ掛けることで、サイドトリム10に仮止めする。この際に、カバー部材24の係合爪44を係合孔11cに係合させる。支持部材22の掛止爪36と掛止孔11bとの嵌め合わせにより、支持部材22をサイドトリム10に位置決めすることができる。これにより、支持部材22のナットNとサイドトリム10の取付孔11aとを合わせることができ、ボルトBによる支持部材22の固定作業を容易にすることができる。サイドトリム10は、比較的大きな板材であり、支持部材22を表側に配置して、ボルトBを裏側からねじ込むので、支持部材22を仮固定しておくと、作業が楽になる。
【0022】
支持部材22とカバー部材24とを溶着により接合して一体化した支持体20とすることで、サイドトリム10に組み付け時における部品数を少なくしておくことができる。一体化してあっても、サイドトリム10への取り付けはサイドトリム10の裏側から行うので、組み付け作業に問題はない。また、受け部26の根元と通孔42との間の擦れもなくなるので、異音の発生を防止できる。
【0023】
カバー部材24に設けられた通孔42を、支持部材22に設けられた受け部26よりも大径に形成することで、受け部26の根元と通孔42との間にクリアランスを設けることができる。このようにクリアランスを設けておけば、受け部26に荷重が加わっても、カバー部材24が、前述のようにパッケージトレイTの荷重を受けることがなくなるので、カバー部材24とサイドトリム10との連なり部分に荷重の影響を受けることがない。カバー部材24は、係合爪44が設けられて、係合爪44をサイドトリム10の係合孔11cに引っ掛けるので、カバー部材24をサイドトリム10に対して位置決めすることができる。これにより、外観を構成するカバー部材24とサイドトリム10との連なり部分を見栄えよくすることができる。
【0024】
前述した構成を、例えば以下のように変更してもよい。
(1)支持部材とカバー部材を溶着等により組み付ける場合は、カバー部材に設けた係合爪は、省略してもよい。
(2)実施例では、支持部材22とカバー部材24とを組み合わせてからサイドトリム10に取り付けたが、支持部材22をサイドトリム10に取り付けてから(
図10(c)参照)、カバー部材24を取り付けてもよい。
(3)パッケージトレイは、パーセルシェルフボードや、トノボードなどとも呼ばれる場合がある。
【符号の説明】
【0025】
T パッケージトレイ,10 サイドトリム(立壁),11b 掛止孔,16 車室,
20 支持体,22 支持部材,24 カバー部材,26 受け部,
28 縦支持壁部(壁部),36 掛止爪,38 縦カバー壁部(壁部),42 通孔