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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】燃料ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20221116BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018193608
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020060283
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 稔
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜平
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203721(WO,A1)
【文献】特開平06-144459(JP,A)
【文献】特開2004-019872(JP,A)
【文献】特開2004-224287(JP,A)
【文献】特開昭63-082301(JP,A)
【文献】特開2015-078914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B60S 3/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスペンサ筐体内に配設された圧縮ガスの充填機構と、
該充填機構に接続されている充填ホースの先端に設けられた充填ノズルと、
前記ディスペンサ筐体に設けられ、前記充填ノズルが取外し可能に掛止めされるノズル掛けと、
を備えた燃料ガス充填装置において、
前記ディスペンサ筐体に設けられ前記ノズル掛けに掛止めされた前記充填ノズルを前記充填ホースと一緒に収納する開口を有した収納室と、
前記充填ノズルにより被燃料供給体への燃料供給を行わない場合に前記収納室の開口を閉じ、前記被燃料供給体への燃料供給を行う場合に前記収納室の開口を開とすることにより前記充填ノズルが前記収納室から取り出されることを可能とする開閉部材と、
前記ディスペンサ筐体の上部に設けられ、前記充填ノズルを吊下する索具の巻取り、巻出しを行う巻取り手段と、
前記索具の端部に設けられ、前記被燃料供給体への燃料供給を行う場合に前記充填ノズルと前記索具とを着脱可能に接続する接続具と、
前記ディスペンサ筐体において前記開閉部材以外の外面に設けられ、前記充填ノズルにより前記被燃料供給体への燃料供給を行わない場合に前記充填ノズルから取り外された記接続具前記ディスペンサ筐体の外面に取外し可能取付けられる取付具と、
を備えたことを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項2】
前記索具の途中に設けられ、当該索具に所定以上の張力が加えられた場合に分離する中間連結部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の燃料タンクに燃料ガスを充填するのに好適に用いられる燃料ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素ガス等の高圧な燃料ガスを被燃料供給体(4輪自動車等の車両に搭載した燃料タンク)に充填・供給するようにした燃料ガス充填装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の従来技術による燃料ガスの充填装置は、ディスペンサ筐体内に配設された圧縮ガスの充填機構と、該充填機構に接続されている充填ホースの先端に設けられた充填ノズルと、前記ディスペンサ筐体に設けられ、前記充填ノズルが取外し可能に掛止めされるノズル掛けと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-66420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、車両の燃料タンクに圧縮ガスを充填するときに、ガス充填所の操作者は重量物である充填ノズルをノズル掛けから取外し、当該充填ノズルを持ったまま車両タンクの接続口付近まで移動した後に、充填ノズルを車両タンクの接続口に接続しなければならない。この間、充填ノズルは充填ホースの先端側に接続されているだけであるため、操作者が充填ノズルを誤って落下させてしまうと、充填ノズルの損傷、破損が懸念される。
【0005】
このため、充填ノズルの落下防止を図るべく、ワイヤに代表される索具の先端側に接続されたフックを充填ノズルに掛止めし、前記ワイヤをディスペンサ筐体に設けられたワイヤの巻取り装置で、巻取らせることが考えられている。また、前記ディスペンサ筐体には、開閉式の扉を有する収納室が設けられ、この収納室の内部には前記充填ノズルが掛止めされるノズル掛けが設けられている。開閉式の扉は、充填ノズルがノズル掛けに掛止めされた充填作業の休止時において、前記扉を閉めることで収納室外からの充填ノズルへの不正アクセス(侵入)を防ぐようにしている。
【0006】
しかし、充填ノズルがノズル掛けに掛止めされた充填作業の休止時に、前記ワイヤ先端側のフックを充填ノズルに掛けたままの状態では、ワイヤの巻取り装置から引き出されたワイヤの途中部分が邪魔になって、前記扉を閉扉することができなくなる。このため、外部からの不正侵入(イタズラ)に対して充填ノズルを保護することが難しくなり、燃料ガス充填装置としての操作性、信頼性および防犯性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、充填ノズルの操作性と装置の信頼性および防犯性を向上することができるようにした燃料ガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、ディスペンサ筐体内に配設された圧縮ガスの充填機構と、該充填機構に接続されている充填ホースの先端に設けられた充填ノズルと、前記ディスペンサ筐体に設けられ、前記充填ノズルが取外し可能に掛止めされるノズル掛けと、を備えた燃料ガス充填装置において、前記ディスペンサ筐体に設けられ前記ノズル掛けに掛止めされた前記充填ノズルを前記充填ホースと一緒に収納する開口を有した収納室と、前記充填ノズルにより被燃料供給体への燃料供給を行わない場合に前記収納室の開口を閉じ、前記被燃料供給体への燃料供給を行う場合に前記収納室の開口を開とすることにより前記充填ノズルが前記収納室から取り出されることを可能とする開閉部材と、前記ディスペンサ筐体の上部に設けられ、前記充填ノズルを吊下する索具の巻取り、巻出しを行う巻取り手段と、前記索具の端部に設けられ、前記被燃料供給体への燃料供給を行う場合に前記充填ノズルと前記索具とを着脱可能に接続する接続具と、前記ディスペンサ筐体において前記開閉部材以外の外面に設けられ、前記充填ノズルにより前記被燃料供給体への燃料供給を行わない場合に前記充填ノズルから取り外された記接続具前記ディスペンサ筐体の外面に取外し可能取付けられる取付具と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充填ノズルが収納室内に収納されノズル掛けに掛止めされている充填作業の休止時に、巻取り手段から巻出された索具先端側の接続具をディスペンサ筐体の外面(取付具)に取付けることができるので、開閉部材により収納室の開口を閉じるときに、前記索具の途中部分が邪魔になることはなく、前記開閉部材を安全に閉扉することができる。このため、充填作業の休止時に、充填ノズルを保護することができ、燃料ガス充填装置としての操作性、信頼性および防犯性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による燃料ガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
図2図1中のディスペンサユニットを前側からみた正面図である。
図3】充填ノズルをディスペンサ筐体の収納室から取り出す状態を示す燃料ガス充填装置の斜視図である。
図4】ディスペンサ筐体の収納室を閉扉した状態を示す燃料ガス充填装置の斜視図である。
図5】ディスペンサ筐体の上部に設けられるワイヤの巻取り装置を示す分解斜視図である。
図6】ワイヤの巻取り装置をディスペンサ筐体の上部に取付けた状態でガス充填装置の要部を拡大して示す部分斜視図である。
図7】ディスペンサ筐体の上部に設けられたワイヤの巻取り装置等を上方から拡大して示す平面図である。
図8】カバーを取外した状態でワイヤの巻取り装置を上方からみた平面図である。
図9図8と同様にカバーを取外した状態の巻取り装置を示す正面図である。
図10図9の巻取り装置を左側方から拡大してみた左側面図である。
図11】充填ノズルに対してワイヤ側のフックを接続する前の状態を示す斜視図である。
図12】充填ノズルに対してワイヤを接続した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による燃料ガス充填装置を、水素ガス充填装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図12に従って詳細に説明する。
【0012】
図1において、燃料ガス充填装置1は、後述する車両100の燃料タンク101に加圧された圧縮状態の燃料ガス(即ち、水素ガスという)を供給し充填する装置であり、一般にガス供給ステーションまたは水素ステーションと呼ばれる設備(ガス充填所)等に設置されている。
【0013】
燃料ガス充填装置1は、後述するガス蓄圧器20からの水素ガスを車両100の燃料タンク101に充填する充填機構としてのディスペンサユニット2と、ガス蓄圧器20からディスペンサユニット2のディスペンサ筐体3内に亘って延びるガス供給管路4とを含んで構成されている。ディスペンサユニット2のディスペンサ筐体3には、後述のガス供給管路4、流量調整弁8、遮断弁9、熱交換器11、圧力センサ14、温度センサ15、制御装置18およびノズル掛け23等が内部に収容するように設けられている。換言すると、ディスペンサ筐体3内には、ディスペンサユニット2の充填機構を構成するガス供給管路4の一部、流量調整弁8、遮断弁9、熱交換器11、圧力センサ14、温度センサ15および制御装置18等が配設されている。
【0014】
ディスペンサ筐体3は、ディスペンサユニット2の外形をなす建屋を構成するもので、例えば上,下方向に長尺な直方体状に形成されている。図2に示すように、ディスペンサ筐体3は、前面板3A、左側面板3B、右側面板3C、上面板3Dおよび後面板3E(図7参照)等によってボックス状に形成されている。左側面板3Bの外側には、ディスペンサ筐体3の一部をなす後述の収納庫21が設けられている。ディスペンサ筐体3のうち前面板3Aには、水素ガスの充填作業を行う充填所の操作者または利用者が視認し易い位置に、後述の表示部19が設けられている。
【0015】
ガス供給管路4は、図1に示すように、ディスペンサ筐体3内に配設され、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器20から充填ホース5側に向けて供給する管路である。このガス供給管路4は、上流側がガス蓄圧器20に接続され、下流側は充填ホース5に接続されている。即ち、ガス供給管路4の下流側の端部には、ディスペンサ筐体3の外部へと延びる充填ホース5が接続されている。充填ホース5は、可撓性を有する耐圧ホースにより形成されている。充填ホース5は、基端側がガス供給管路4の下流端に接続され、先端には、燃料タンク101の接続口102に連結される充填ノズル6が設けられている。
【0016】
図1図2に示すように、充填ノズル6は、充填ホース5の先端側に気密状態で接続され、所謂充填カップリングを構成している。この充填ノズル6は、先端開口(即ち、充填口)を開閉する弁を内蔵している。充填ノズル6の先端側は、前記充填口から水素ガスを車両100の燃料タンク101に供給するため、接続口102に気密状態で着脱可能に嵌合(接続)される。
【0017】
充填ノズル6は、燃料タンク101の接続口102に対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、充填ノズル6は、水素ガスの充填時に接続口102から不用意に外れるのを防ぐことができる。充填ノズル6の先端側が燃料タンク101の接続口102に対して接続された状態では、ガス蓄圧器20内の高圧な水素ガスが、ガス供給管路4、充填ホース5および充填ノズル6を通じて車両100の燃料タンク101に充填される。
【0018】
ディスペンサユニット2には、それぞれガス供給管路4の途中に位置して、例えば手動操作により開,閉される入口弁7と、該入口弁7の下流側に接続され後述の制御装置18によって開,閉弁されることによりガス供給管路4を流れる燃料の流量を調整可能に制御する制御弁としての流量調整弁8と、該流量調整弁8よりも下流側に接続された電磁弁または空圧駆動弁等からなる遮断弁9とが設けられている。なお、ガス供給管路4の上流側から下流側に向けて設けられている流量計13、流量調整弁8、遮断弁9の配置(取付けの順番)は、図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0019】
入口弁7は、ディスペンサ筐体3内に位置してガス供給管路4の途中に設けられている。この入口弁7は、例えば手動操作により開,閉されるものである。なお、入口弁7は、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。流量調整弁8および遮断弁9は、ガス供給管路4を流れる水素ガスの流量及び圧力を制御する制御機器を構成している。流量計13、圧力センサ14および温度センサ15は、ガス供給管路4を流れる水素ガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
【0020】
ディスペンサユニット2内に設けられた流量調整弁8は、例えばエア作動式の弁装置であり、エアの供給で開弁し、制御信号で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される。流量調整弁8は、制御装置18の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路4内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する弁である。
【0021】
遮断弁9は、ガス供給管路4の途中部位(例えば、冷却器10と温度センサ15の間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁9は、後述する制御装置18からの制御信号で開,閉されることにより、ガス供給管路4内で水素ガス(燃料)の流通を許したり、または遮断したりする。即ち、制御装置18は、充填ノズル6を介して車両100の燃料タンク101に燃料ガスを充填したり、充填を停止(終了)したりするときに、流量調整弁8と遮断弁9との開,閉弁制御を行うものである。
【0022】
冷却器10は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器10は、水素ガスが充填される燃料タンク101の温度上昇を抑えるため、ガス供給管路4の途中位置で水素ガスを冷却する。冷却器10は、流量調整弁8と遮断弁9との間に位置してガス供給管路4の途中部位に設けられた熱交換器11と、該熱交換器11に冷媒管路10A,10Bを介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)を備えたチラーユニット12とを含んで構成されている。
【0023】
冷却器10には、チラーユニット12から熱交換器11側に向けて冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を供給する供給側の冷媒管路10Aと、熱交換器11からチラーユニット12側に向けて熱交換後の冷媒を戻す戻り側の冷媒管路10Bとが設けられている。チラーユニット12は、冷媒管路10A,10Bを介して熱交換器11との間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器10の熱交換器11は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスと前記冷媒との間で熱交換を行い、充填ホース5に向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0024】
ディスペンサ筐体3内には、ガス供給管路4の途中に位置して被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計13が設けられている。この流量計13は、例えば入口弁7と流量調整弁8との間でガス供給管路4内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果を制御装置18へと出力する。これにより、制御装置18は、車両100の燃料タンク101に対する水素ガスの充填量を演算により求め、水素ガス燃料の払出し量(給油量に相当)を後述の表示部19等で表示し、例えば顧客(セルフ充填の利用者等)に表示内容を報知する。
【0025】
圧力センサ14は、遮断弁9よりも下流側(即ち、充填ノズル6側)のガス供給管路4に設けられている。圧力センサ14は、ガス蓄圧器20から供給される水素ガスの圧力(即ち、燃料タンク101の圧力、または燃料タンク101内の圧力にほぼ相当する管路途中の圧力)を検知するものである。圧力センサ14は、充填ノズル6の近傍でガス供給管路4内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置18へと出力する。
【0026】
温度センサ15は、遮断弁9と圧力センサ14との間に位置してガス供給管路4の途中に設けられている。この温度センサ15は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果を制御装置18へと出力する。なお、温度センサ15と圧力センサ14との配置関係は、図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0027】
ガス供給管路4の遮断弁9よりも下流側には、例えば充填ホース5側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路16が分岐して設けられている。脱圧管路16の途中には、脱圧弁17が設けられている。この脱圧弁17は、充填ホース5(充填ノズル6)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁9が閉弁されたときに、制御装置18からの信号により開弁制御される。
【0028】
充填ノズル6の先端側を燃料タンク101の接続口102から取外す場合には、充填ホース5内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁17を一時的に開弁して脱圧管路16の先端側を大気に開放させる。これにより、充填ホース5側の水素ガスは、外部に放出されて充填ホース5内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、充填ノズル6の先端側は、燃料タンク101の接続口102から取外すことができるようになる。
【0029】
制御装置18は、流量調整弁8、遮断弁9、脱圧弁17等を制御する制御手段を構成している。制御装置18は、流量調整弁8および遮断弁9の制御を行うことにより充填対象となる燃料タンク101への燃料(水素ガス)供給を制御するものである。制御装置18は、マイクロコンピュータ等の制御ユニットとして構成されている。制御装置18は、その入力側が流量計13、圧力センサ14、温度センサ15、後述のノズル検出器24、接続検知器43、充填開始スイッチ44および充填停止スイッチ45等に接続されている。一方、制御装置18の出力側は、流量調整弁8、遮断弁9、脱圧弁17、表示部19等に接続されている。
【0030】
制御装置18のメモリ18Aには、例えば充填ノズル6を用いた水素ガスの充填制御を行う制御処理用のプログラムと、後述の接続検知器43から出力される検知信号に基づいてワイヤ26の接続の有無を判定する手段等とが更新可能に格納されている。制御装置18は、検知手段(接続検知器43)により、充填ノズル6と索具(ワイヤ26)とが接続されていることを検知した場合に、充填ノズル6によるガス充填を許可させる制御手段を構成している。
【0031】
表示部19は、例えば図2図4に示すように、ディスペンサ筐体3の前面板3Aに設けられている。この場合、表示部19は、水素ガスの充填作業を行う操作者(係員、セルフ利用者)が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。なお、表示部19は、ディスペンサ筐体3の前面板3Aに限らず、例えば左側面板3B、右側面板3Cまたは後面板3Eに設ける構成としてもよく、ディスペンサ筐体3から離間した特定の位置に設ける構成としてもよい。
【0032】
図1に示すように、ガス蓄圧器20は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する水素ガスの供給源である。ガス蓄圧器20は、ディスペンサユニット2と共に燃料ガス充填装置1を構成している。ガス蓄圧器20は、ガス供給管路4の上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成している。
【0033】
図2図4に示すように、ディスペンサ筐体3には、例えば左側面板3Bの外側に収納室を構成する収納庫21が付設されている。この収納庫21は、ディスペンサ筐体3の上,下方向に離間して配設され、例えば左側面板3Bの位置から左方向へと円弧状(U字状)に張り出して形成された上,下の張出し部21A,21Bと、これらの張出し部21A,21B間を上,下方向で連結するように垂直(縦)方向に延び、ディスペンサ筐体3の前,後方向に離間して配設された前,後の縦板21C,21Dと、上,下の張出し部21A,21Bと前,後の縦板21C,21Dとの間に形成された略四角形の開口21Eとを含んで構成されている。この開口21Eは、後述の扉部材22A,22Bにより開,閉される。
【0034】
収納庫21は、図3に示す如く内部の奥所側に後述のノズル掛け23が設けられると共に、ノズル掛け23に掛止めされた充填ノズル6を充填ホース5と一緒に収納する収納室を構成している。収納庫21の下側に位置する張出し部21Bは、収納庫21の床板部分を構成している。上方側の張出し部21Aは、下側の張出し部21Bよりも大きな寸法に(上,下方向に厚みをもって)形成されている。上側の張出し部21A内には、ディスペンサ筐体3内を延びるガス供給管路4の下流端側が配設され、この下流端側には、収納庫21内を上,下方向に延びる充填ホース5の基端(上端)が後述の緊急離脱カップリング41を介して接続されている。
【0035】
開閉部材としての扉22は、互いに接近,離間可能な一対の扉部材22A,22Bにより開閉式の扉として構成されている。一対の扉部材22A,22Bは、例えば上,下の張出し部21A,21Bに設けたガイドレール(図示せず)に沿ってスライドするように開,閉される。扉部材22A,22Bは、図4中の矢示A方向に沿って互いに離間する方向(前,後の縦板21C,21Dの内側)へとスライドされたときに、図3に示す如く収納庫21の開口21Eを開扉する。一方、扉部材22A,22Bを互いに近付ける方向にスライドさせ、両者の端部を衝合したときには、図4に示す如く収納庫21の開口21Eが閉扉される。
【0036】
即ち、一対の扉部材22A,22Bは、上,下の張出し部21A,21Bの間で、前,後の縦板21C,21Dの内側へと出し入れされるように移動(スライド)される。扉部材22A,22Bからなる扉22は、充填ノズル6により車両100の燃料タンク101へのガス充填(燃料供給)を行わない場合に、収納庫21の開口21Eを閉じる。そして、燃料タンク101へのガス充填を行う場合には、扉部材22A,22Bが互いに離間する方向に移動され、収納庫21の開口21Eを図2図3に示すように開とする。
【0037】
一対の扉部材22A,22Bからなる開閉式の扉22は、図4に示す如く閉扉位置となったときに、ロック機構(図示せず)により閉扉状態にロックされる。この状態で、収納庫21内に収納した充填ノズル6は、外部からの不正侵入に対して保護される。このように、充填ノズル6を含んだ充填機器を収納庫21内に格納することにより、ガス充填装置としての操作性、信頼性および防犯性を高めることができる。
【0038】
なお、一対の扉部材22A,22Bは、手動操作で開,閉される構成でもよいが、これに限らず、例えば電気スイッチの操作により一対の扉部材22A,22Bが電動アクチュエータで自動的に開,閉動作すされる構成としてもよい。また、開閉部材(扉22)としては、上記一対の扉部材22A,22B(2枚の扉)に限らず、例えば1枚または3枚以上の扉を前,後方向、左,右方向または上,下方向にスライドさせて開閉する方式のものや、前,後方向に押したり、引いたりして回動することで開,閉する方式のものでもよい。
【0039】
ノズル掛け23は、収納庫21の内側(奥所側)に設けられ、例えばディスペンサ筐体3の左側面板3Bに対し外側(収納庫21の内側)からボルト等の締結具を用いて固定されている。収納庫21の奥所側(左側面板3Bの外側面)に位置するノズル掛け23には、収納庫21内に開口21E側から挿入された充填ノズル6が取付け,取外し可能に掛止めされる。そして、ノズル掛け23には、充填ノズル6を係合(掛止め)状態に保持する係合部(図示せず)が設けられている。
【0040】
また、ノズル掛け23には、充填ノズル6が掛止めされたか否かを検出するノズル検出器24(図1参照)が設けられている。このノズル検出器24は、例えば2位置切換型のスイッチ等からなり、充填ノズル6をノズル掛け23に掛止めするときに、充填ノズル6によって押動されるとオン(ON)状態に切換わる。そして、ノズル検出器24は、充填ノズル6がノズル掛け23から取出されるとオフ(OFF)状態に切り替わり、検出信号(ONまたはOFF信号)を制御装置18に出力する。なお、ノズル検出器24は、ディスペンサ筐体3(収納庫21)側のノズル掛け23に設けるものに限らず、例えば充填ノズル6側に設けてもよい。
【0041】
巻取り装置25は、充填ノズル6を吊下する索具(即ち、ワイヤ26)の巻取り手段である。この巻取り装置25は、ディスペンサ筐体3の上部(収納庫21の上側の張出し部21A上)に設けられ、索具としてのワイヤ26を後述のワイヤリール28Bに巻取ったり、巻出したりするリトラクタ等で構成される。巻取り装置25は、充填ノズル6等の収納庫21の上方位置で、垂直軸(例えば、図5に示す中心O)の周囲を回動可能となるように配置されている。
【0042】
巻取り装置25は、図5図10に示すように、索具としてのワイヤ26をアーム27の長手方向に案内するように、ワイヤ26の巻取り、巻出しを行うワイヤ巻取り器28と、該ワイヤ巻取り器28を上側から着脱可能に覆う第1カバー29と、アーム27を上側から着脱可能に覆う第2カバー30とを含んで構成されている。巻取り装置25のアーム27は、張出し部21Aの上面側で回動軸31を介して(中心Oの周囲で)水平方向に回動可能となっている。
【0043】
ワイヤ巻取り器28は、例えば円形の容器として形成された巻取りケース28Aと、図8中に点線で示す如く巻取りケース28A内に回転自在に設けられ、ワイヤ26の巻取り、巻出しを行うワイヤリール28Bと、ワイヤ26をワイヤリール28Bの周囲に所定の巻上げ力で巻取るようにワイヤリール28Bを正,逆方向に回転させる付勢機構(図示せず)とを備えている。ワイヤリール28Bには、ワイヤ26の基端側が抜止め状態で固定され、ワイヤ26はリール回転に従ってワイヤリール28Bに巻回される。
【0044】
ワイヤ巻取り器28の付勢機構は、例えば渦巻きばね、および/または小型の電動モータ等を用いて構成され、ワイヤ26の巻取り、巻出しを行うワイヤリール28Bが正,逆方向に回転(回動)するときに、このワイヤリール28Bに対してほぼ一定の回転力を付与する。このときの回転力(付勢力)は、例えば充填ノズル6の重量に匹敵する力であり、例えば図3に二点鎖線で示す充填ノズル6(即ち、収納庫21から矢印の方向に引き出されたノズル)は、前記付勢機構の付勢力により当該位置に釣合った状態で配置される。即ち、充填ノズル6は、ワイヤ巻取り器28の付勢機構によりワイヤ26を介して下方に落下しない程度の張力で吊下される。
【0045】
また、ワイヤ巻取り器28には、ワイヤ26の巻取り、巻出しを任意の位置で停止させるように、ワイヤ26の動きを一時的に止めた状態に保持するワイヤ保持機構(図示せず)が設けられている。このワイヤ保持機構は、例えば充填ノズル6等がワイヤ26の先端に取付けられていない無負荷状態下で、ワイヤ26が巻取り装置25により上方へと吊り上げられ、後述のフック38が高い位置まで過度に上昇するのを防ぐ機構である。
【0046】
即ち、操作者がワイヤ26の動きを止めるようにワイヤ26を一旦引き止めれば、前記ワイヤ保持機構によりワイヤ26の上昇移動は停止される。しかし、この状態下で、操作者がワイヤ26を下向きに強く引っ張れば、前記ワイヤ保持機構によるワイヤ26の保持が解除される。このため、ワイヤ26は巻取り装置25により上,下方向に昇降可能となり、このときに、操作者は巻取り装置25の付勢力に抗してワイヤ26を引っ張るように下向きに移動することができる。勿論、この状態でも、操作者はワイヤ26の動きを止めるようにワイヤ26を一旦引き止めれば、前記ワイヤ保持機構によりワイヤ26の移動は停止される。そして、操作者が再びワイヤ26を下向きに強く引っ張れば、前記ワイヤ保持機構によるワイヤ26の保持が解除される。
【0047】
また、ワイヤ26に接続された状態の充填ノズル6を、操作者が仮に落としたとしても、この充填ノズル6は、巻取り装置25によるワイヤ26の引っ張り力でそのままの位置に保持されるか、充填ノズル6の自重によりゆっくりと下向きに移動する。そのまま保持される場合は、充填ノズル6の落下による破損防止ができる。また、充填ノズル6がゆっくり落下する場合にも、充填ノズル6が地面にゆっくりと当たるだけで、強く衝突することはない。
【0048】
このため、充填ノズル6の操作者は、僅かな外力を加えるだけで充填ノズル6を所望方向に移動することができ、充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102に接続する作業を容易に行うことができる。このように、巻取り装置25のワイヤ巻取り器28は、所要の張力をもってワイヤ26の巻取り、巻出しを行うことにより充填ノズル6の重量軽減と、落下防止を図るものである。
【0049】
巻取り装置25のアーム27は、図10に示すように、横断面がU字状またはコ字形状をなす細長なアームとして形成され、その基端側にはワイヤ巻取り器28が設けられている。アーム27の先端側には図8図10に示すように、案内ローラ27Aが設けられている。ワイヤ巻取り器28から引き出されたワイヤ26は、案内ローラ27Aを介してアーム27の下方へと移動(昇降)可能に垂下または吊下される。
【0050】
アーム27の下面側には、例えば図8図9に示す中心Oの位置に回動軸31が設けられ、この回動軸31は、図5に示すベアリング32を介して収納庫21の上面(即ち、張出し部21Aの上面)側に装着されている。これにより、巻取り装置25のアーム27は、張出し部21Aの上面側で回動軸31を介して(中心Oの周囲で)水平方向に回動される。図7に示す平面図では、上側の張出し部21A上で巻取り装置25のアーム27が回動する3つの状態を、実線と二点鎖線とで示している。
【0051】
図7中に実線で示す巻取り装置25は、ディスペンサ筐体3の左,右方向(X軸方向)に配向されている。図7中に二点鎖線で示す巻取り装置25は、中心Oの周囲で約90度だけ矢示B1方向と矢示B2方向とに回動(即ち、Y軸方向に回動)された場合である。矢示B1方向に回動された巻取り装置25は、第2カバー30(即ち、アーム27)の先端側がディスペンサ筐体3の前面板3A側に配向される。一方、矢示B2方向に回動された巻取り装置25は、第2カバー30(即ち、アーム27)の先端側がディスペンサ筐体3の後面板3E側に配向される。
【0052】
図5に示すように、張出し部21Aの上面側には、巻取り装置25のアーム27が中心Oの周囲で過度に大きく回動するのを規制するストッパ33が設けられている。このストッパ33には、一対の当接片33A,33Bがディスペンサ筐体3の前,後方向に離間して形成されている。このうち、前側に位置する一方の当接片33Aは、巻取り装置25が図7中の矢示B1方向に回動されたときに、第2カバー30(即ち、アーム27)の側面に当接し、巻取り装置25が90度越えて矢示B1方向に回動するのを規制する。
【0053】
また、後側に位置する他方の当接片33Bは、巻取り装置25が図7中の矢示B2方向に回動されたときに、第2カバー30(即ち、アーム27)の側面に当接し、巻取り装置25が90度越えて矢示B2方向に回動するのを規制する。即ち、充填ノズル6の操作者が速い速度で充填ノズル6を移動させた場合、ワイヤ26が繋がれた巻取り装置25のアーム27は、速い移動速度による慣性力で中心Oの周囲を回動するように振られてしまうことが想定される。しかし、ストッパ33の当接片33A,33Bは、巻取り装置25のアーム27が矢示B1,B2方向へと大きく回動されるのを規制し、アーム27の過度な回転を抑える機能を有している。また、ストッパ33の表面側に樹脂製の緩衝材を貼り付けることにより、アーム27の回転が遅くなるように緩衝することができる。
【0054】
図5に示すように、張出し部21Aの上面側には、ベアリング32とストッパ33との間に位置して環状のパッキン34とパッキン押え35とが設けられている。パッキン34は、上側からパッキン押え35でベアリング32上に挟持されることにより、ベアリング32内への異物(雨水、ダスト等)侵入を防止する。ストッパ33とパッキン押え35とは、ねじ止め手段等により張出し部21Aの上面側に固定されている。巻取り装置25のアーム27は、ストッパ33とパッキン押え35の上側で、図7中の矢示B1,B2方向へと中心O周りで回動される。
【0055】
収納庫21の上側に位置する張出し部21Aには、その前面側(および/または後面側)にストッパ機構36が設けられている。ストッパ機構36は、スライド式のロッド36Aを上,下方向にスライドさせることにより、巻取り装置25のアーム27を前記矢示B1,B2方向のフル回転(例えば、90度の回転)位置で回転規制(位置決め)することができる。このフル回転位置では、ストッパ機構36のロッド36Aを上向きにスライドさせ、その上端を巻取り装置25の第2カバー30(即ち、アーム27)の先端側に下側から係合させる。
【0056】
なお、巻取り装置25のアーム27には、ストッパ機構36のロッド36Aを上向きにスライドさせたときに、ロッド36Aの上端側が着脱可能に係合される係合穴(図示せず)が形成されている。この係合穴にロッド36Aの上端側が下方から挿入(係合)されることにより、巻取り装置25の第2カバー30(アーム27)は、このフル回転位置で着脱可能に固定され、中心Oの周囲での回転は規制される。
【0057】
図5中に点線で示す補強板37は、ストッパ機構36の取付強度を高めるために張出し部21Aの裏面側に固定して設けられている。ストッパ機構36は、補強板37との間で張出し部21Aの周壁部を挟むように配置され、この状態で張出し部21Aの周壁部にビス等の締結部材を用いて着脱可能に固定されている。このとき、締結部材の先端側は、前記周壁部を貫通して補強板37に螺合することにより取付強度が確保される。
【0058】
接続具としてのフック38は、例えば図11および図12に示すように、ワイヤ26(索具)の端部に設けられ、充填ノズル6とワイヤ26(索具)とを着脱可能に接続する連結部材である。フック38は可動片38Aを有し、この可動片38Aを作業者が指先等で回動させることにより、フック38を充填ノズル6の被係合部39Aに係合することができる。フック38の可動片38Aは、付勢ばね(図示せず)により図11図12に示す位置に常時付勢されている。
【0059】
充填ノズル6には、その外周面にリング39が抜止め状態で取付けられ、このリング39は、充填ノズル6の周方向に回動可能となっている。また、リング39の外周側には、フック38が係合される被係合部39Aが一体に形成されている。フック38を充填ノズル6の被係合部39Aに係合させた状態では、リング39が充填ノズル6の周方向に回動することにより、ワイヤ26に余分な捩れ等が発生するのを抑えることができる。
【0060】
ワイヤ26の途中位置には、例えば図12に示すように、中間連結具40が設けられている。この中間連結具40は、例えば合成樹脂材料からなる脆弱部材として形成され、ワイヤ26の途中位置に介在するように配置されている。ワイヤ26は、中間連結具40を介して充填ノズル6に接続されており、充填ノズル6が所定以上の力で引っ張られた場合にワイヤ26と充填ノズル6のとの接続は解除される。換言すると、ワイヤ26に対して過剰な張力が付加された場合に、中間連結具40は、このときの外力で自身が破断されてワイヤ26の損傷防止を図る機能を有している。
【0061】
即ち、充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102に接続した状態で車両100が仮に誤発進した場合、充填ノズル6(リング39)に連結されたワイヤ26は、巻取り装置25から急激に引出されるように車両100側に引っ張られる。しかし、中間連結具40は樹脂製の脆弱部材であるため、車両誤発進時にワイヤ26は途中部位(中間連結具40)で切断される。これにより、中間連結具40は、ワイヤ26への過度な張力付加を防ぐことができ、例えば中間連結具40を取換えるだけで、ワイヤ26の損傷防止を図り、ディスペンサユニット2への悪影響を軽減させることができる。
【0062】
なお、ディスペンサ筐体3の収納庫21内には、例えば図3に示すように、緊急離脱カップリング41が設けられている。この緊急離脱カップリング41は安全装置であり、前述の如き車両100の誤発進時に、充填ノズル6が充填ホース5と一緒に強い力で引っ張られると、緊急離脱カップリング41が分離して充填ノズル6、充填ホース5等の損傷防止を図ることができる。このときに、緊急離脱カップリング41は、ガス供給管路4内のガスが外部に漏出するのを防ぐことができ、充填ホース5(充填ノズル6)側のガスも外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0063】
一方、ディスペンサ筐体3の外面には、ワイヤ26(索具)の下端部に取付けられたフック38が着脱可能に連結される取付具42が設けられている。この取付具42は、前記ワイヤ26(索具)と充填ノズル6との接続が解除された場合に、ワイヤ26のフック38(接続具)をディスペンサ筐体3の外面に取外し可能となるよう取付けるための取付金具である。この場合、取付具42は、図2図4に示すように、ディスペンサ筐体3の一部をなす収納庫21の縦板21C(縦板21D)に固定して設けられている。しかし、取付具42の設置箇所は、収納庫の縦板21C(縦板21D)に限らず、例えば扉部材22A,22Bの外側面であってもよく、ディスペンサ筐体3の前面板3A、後面板3E等であってもよい。
【0064】
接続検知器43は、充填ノズル6とワイヤ26とが接続されているか否かを検知する検知手段である。接続検知器43は、例えばワイヤ巻取り器28に設けられたワイヤ26の巻取り量を検知する手段等で構成されている。この場合、接続検知器43は、ワイヤ26の巻取り量から充填ノズル6とワイヤ26との接続検知を行うことができる。また、接続検知器43は、例えばワイヤ26側のフック38が取付具42に連結(接続)されているか否かを検知するセンサであってもよい。例えば、取付具42に荷重センサを設けることにより、取付具42に働く荷重変化から、フック38が取付具42に連結されているか否かを検知し、充填ノズル6とワイヤ26との接続の有無を検出することができる。
【0065】
また、ディスペンサユニット2の操作部には、例えば充填開始スイッチ44と充填停止スイッチ45とが設けられている。充填開始スイッチ44は、例えばガス充填所の作業者(操作者)等が手動で操作可能な操作スイッチで、ガスの充填を開始する場合に操作される。また、充填停止スイッチ45は、ガス充填中にガスの充填を停止する場合に操作される。そして、充填開始スイッチ44と充填停止スイッチ45とは、操作状態に応じた信号を制御装置18にそれぞれ出力し、制御装置18は、これらの信号に応じて電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる遮断弁9を開弁または閉弁させる。
【0066】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両100は、例えば図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両100には、例えば燃料電池と電動モータ等の駆動装置(いずれも図示せず)と、図1図3中に点線で示す燃料タンク101等とが設けられている。この燃料タンク101は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両100の後部側に搭載されている。なお、燃料タンク101は、車両100の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
【0067】
燃料タンク101には、充填ノズル6の先端側が着脱可能に嵌合される接続口102(レセプタクル)が設けられている。そして、車両100の燃料タンク101内には、充填ノズル6が接続口102に気密に連結(嵌合)された状態で水素ガスの充填が行われる。この間、充填ノズル6は前述したロック機構により接続口102に対して不用意に外れることがないようにロックされている。
【0068】
本実施の形態による燃料ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、燃料ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0069】
車両100の燃料タンク101に燃料(水素ガス)を充填するときには、充填所の係員またはセルフ充填の利用者(即ち、操作者)が充填ノズル6をノズル掛け23から取外す。そして、この操作者は図1中に二点鎖線で示すように、充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102に接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、車両100の燃料タンク101に対する燃料(水素ガス)の充填作業が行われる。また、充填作業が終了したときには、操作者が充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102から抜取るように取外す。この状態で、操作者は、充填ノズル6を持ち運ぶようにディスペンサ筐体3の収納庫21側に移動し、収納庫21内のノズル掛け23に対して充填ノズル6を掛止めする。
【0070】
ところで、充填ノズル6は重量物であり、これを持ち運ぶ操作者は誤ってノズルを落下させる可能性がある。このため、充填ノズル6の落下防止を図るべく、ディスペンサ筐体3(収納庫21)の上方位置には、アーム27およびワイヤ巻取り器28からなる巻取り装置25を設けている。この巻取り装置25は、ワイヤ26(索具)の先端側に接続されたフック38を充填ノズル6の被係合部39Aに係合した状態で、当該ワイヤ26をワイヤ巻取り器28で巻取るように張力を付与することにより充填ノズル6の重量軽減と、落下防止を図るようにしている。
【0071】
また、ディスペンサ筐体3には、開閉式の扉22を有する収納庫21が設けられ、この収納庫21の内部には充填ノズル6が掛止めされるノズル掛け23が設けられている。開閉式の扉部材22A,22Bからなる扉22は、充填ノズル6がノズル掛け23に掛止めされている充填作業の休止時に、扉22を閉めることで収納庫21外からの充填ノズル6を含めた充填機器への不正アクセス(侵入)を防ぐようにしている。しかし、充填ノズル6がノズル掛け23に掛止めされた充填作業の休止時に、ワイヤ26の先端側に設けたフック38を充填ノズル6の被係合部39Aに掛けたままの状態では、巻取り装置25から引き出されたワイヤ26の途中部分が邪魔になって、扉22を完全に閉扉できなくなる。
【0072】
そこで、本実施の形態では、ディスペンサ筐体3の外面に、ワイヤ26(索具)の下端部に取付けられたフック38が着脱可能に連結される取付具42を設ける構成としている。この取付具42には、例えば充填ノズル6がノズル掛け23に掛止めされる充填作業の休止時に、ワイヤ26と充填ノズル6との接続が解除された状態で、ワイヤ26側のフック38がディスペンサ筐体3の外面に取外し可能に取付けられる。
【0073】
即ち、充填作業の終了時には、充填ノズル6をノズル掛け23を介して収納庫21内に収納した後に、ワイヤ26側のフック38と充填ノズル6(リング39)の被係合部39Aとを分離する。この状態で、フック38はディスペンサ筐体3(即ち、収納庫21の縦板21C)に設けられた取付具42に係脱可能に取付けられる。また、このときには、ストッパ機構36により巻取り装置25の第2カバー30(アーム27)が回転規制(固定)される。
【0074】
このように、充填ノズル6が収納庫21内に収納されノズル掛け23に掛止めされている充填作業の休止時には、巻取り装置25から巻出されたワイヤ26先端側のフック38をディスペンサ筐体3(収納庫21の縦板21C)の外面に取付具42を介して取付けることができる。このため、開閉部材としての扉22により収納庫21の開口21Eを閉じるときに、ワイヤ26の途中部分が邪魔になることはなく、収納庫21の扉22を安全に閉扉することができる。
【0075】
この結果、充填ノズル6が収納庫21内に収納されている充填作業の休止時には、収納庫21の扉22を閉扉状態に保持することにより、充填ノズル6を外部からの不正侵入(イタズラ)に対して保護することができる。従って、充填ノズル6の操作性を高め、燃料ガス充填装置1の信頼性および防犯性を向上することができる。
【0076】
また、本実施の形態による燃料ガス充填装置1は、充填ノズル6とワイヤ26とが接続されているか否かを検知する接続検知器43(検知手段)を備え、制御装置18は、充填ノズル6とワイヤ26とが接続されていることを検知した場合に、充填を許可させる構成としている。このため、制御装置18は、充填作業を行う前に充填ノズル6とワイヤ26との接続を確認した上で,充填作業が行われるのを許可できる。一方、接続検知器43(検知手段)で両者の接続を検知できない場合には、充填作業が行われるのを禁止できる。これにより、巻取り装置25から吊下されたワイヤ26で充填ノズル6の落下防止を図り、ノズルの損傷、破損を未然に防止することができる。
【0077】
また、巻取り装置25のワイヤ巻取り器28には、ワイヤ26の巻取り、巻出しを任意の位置で停止させるように、ワイヤ26の動きを一時的に止めた状態に保持する前記ワイヤ保持機構が設けられている。このワイヤ保持機構は、ワイヤ26が所要の長さを保持するよう構成され、操作者がワイヤ26の動きを止めるようにワイヤ26を一旦引き止めれば、ワイヤ26の上昇移動は停止される。しかし、この状態下で、操作者がワイヤ26を下向きに強く引っ張れば、前記ワイヤ保持機構によるワイヤ26の保持が解除される。
【0078】
このため、ワイヤ26は巻取り装置25により上,下方向に昇降可能となり、このときに、操作者は巻取り装置25の付勢力に抗してワイヤ26を引っ張るように下向きに移動することができる。勿論、この状態でも、操作者はワイヤ26の動きを止めるようにワイヤ26を一旦引き止めれば、前記ワイヤ保持機構によりワイヤ26の移動は停止される。そして、操作者が再びワイヤ26を下向きに強く引っ張れば、前記ワイヤ保持機構によるワイヤ26の保持が解除される。
【0079】
例えば、巻取り装置25から吊下されたワイヤ26が、例えば上方に腕を伸ばした操作者にとって届かないように短い状態で、かつワイヤ26に張力が働いている場合には、操作者が充填ノズル6(被係合部39A)にフック38を掛けようとしても、張力が作用しているワイヤ26を下方に引っ張るのに余分な手間がかかる。
【0080】
しかし、本実施の形態では、巻取り装置25のワイヤ巻取り器28に前記ワイヤ保持機構が設けられている。このため、充填ノズル6にフック38を掛けようとした場合、操作者は一旦ワイヤ26を下向きに引っ張れば、ワイヤ26を伸ばした状態で弛ませ、その状態が保持されるので、フック38を充填ノズル6(リング39の被係合部39A)に掛け易くなり、充填ノズル6とワイヤ26との接続作業、または両者の接続を解除するときの作業性を向上することができる。
【0081】
また、ワイヤ26に接続された状態の充填ノズル6を、操作者が仮に落としたとしても、この充填ノズル6は、巻取り装置25によるワイヤ26の引っ張り力でそのままの位置に保持されるか、充填ノズル6の自重によりゆっくりと下向きに移動する。そのまま保持される場合は、充填ノズル6の落下による破損防止ができる。また、充填ノズル6がゆっくり落下する場合にも、充填ノズル6が地面にゆっくりと当たるだけで、強く衝突することはない。
【0082】
このため、充填ノズル6の操作者は、僅かな外力を加えるだけで充填ノズル6を所望方向に移動することができ、充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102に接続する作業を容易に行うことができる。このように、巻取り装置25のワイヤ巻取り器28は、所要の張力をもってワイヤ26の巻取り、巻出しを行うことにより充填ノズル6の重量軽減と、落下防止を図ることができる。従って、充填ノズル6を燃料タンク101の接続口102に接続したり、接続を解除したりするときの作業性を大幅に高めることができる。
【0083】
さらに、ワイヤ26の途中位置には、例えば図12に示す如く、例えば合成樹脂材料からなる脆弱部材として形成された中間連結具40が設けられている。この中間連結具40は、例えば車両誤発進等によりワイヤ26に対して過剰な張力が付加された場合に、このときの外力で中間連結具40自身が破断されてワイヤ26の損傷防止を図ることができる。これにより、中間連結具40は、ワイヤ26への過度な張力付加を防ぐことができ、例えばワイヤ26や巻取り装置25の損傷防止を図りつつ、ディスペンサユニット2への悪影響を軽減させることができる。
【0084】
なお、前記実施の形態では、図2図4に示すように、取付具42はディスペンサ筐体3の一部をなす収納庫21の縦板21Cに固定して設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば扉部材22A,22Bの外側面に取付具42を設置してもよい。また、収納庫21に限らず、例えばディスペンサ筐体3の前面板3A、後面板3Eに取付具42を設ける構成としてもよい。
【0085】
また、前記実施の形態では、巻取り装置25によりワイヤ26を吊り下げる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明で採用する索具は、これに限るものではなく、例えばケーブル、長尺な紐、糸等を用いて索具を構成し、これを巻取り手段により巻取ったり、巻出したりして充填ノズルを吊下することもできる。
【0086】
一方、前記実施の形態では、ガス供給ステーションまたは水素ステーションと呼ばれる設備(ガス充填所)に設置されるセルフ充填方式の燃料ガス充填装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明はセルフ充填方式に限るものではなく、例えば充填所の係員が専用でガス充填を行うフル充填方式の燃料ガス充填装置に適用してもよい。
【0087】
また、前記実施の形態では、車両100の燃料タンク101に高圧の水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両以外のタンクや容器等に高圧の水素ガスを充填する際にも適用することができる。また、燃料ガス充填装置1のディスペンサユニット2を、他の場所に水素ガスを給送するための管路の途中に設置してもよい。
【0088】
さらに、前記実施の形態では、燃料ガス充填装置1を圧縮された水素ガスの充填に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ブタン,プロパン等の高圧燃料ガス、または圧縮天然ガス(CNG)等の燃料ガスを被燃料供給体に充填する場合にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
1 燃料ガス充填装置
2 ディスペンサユニット(充填機構)
3 ディスペンサ筐体
4 ガス供給管路
5 充填ホース
6 充填ノズル
18 制御装置(制御手段)
21 収納庫(収納室)
21E 開口
22 扉(開閉部材)
23 ノズル掛け
25 巻取り装置(巻取り手段)
26 ワイヤ(索具)
27 アーム
28 ワイヤ巻取り器
38 フック(接続具)
42 取付具
43 接続検知器(検知手段)
100 車両
101 燃料タンク(被燃料供給体)
102 接続口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12