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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】金属担持活性炭及びその製法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/52 20060101AFI20221116BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B01J23/52 A
A61L9/00 C
B01J20/20 D
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J23/42 A
B01J23/44 A
B01J23/50 A
B01J23/72 A
B01J35/10 301H
B01J35/10 301J
B01J37/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018215476
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020081918
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】稲田 直
(72)【発明者】
【氏名】柴野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊郎
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090855(JP,A)
【文献】特開2007-335338(JP,A)
【文献】特開2011-134477(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
A61L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面官能基量が0.14meq/g~1.5meq/gである活性炭に超音波照射による粒径1nm~800nmの金属ナノ粒子が担持されていることを特徴とする金属担持活性炭。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が金、白金、パラジウム、銅、銀のいずれか一である請求項1に記載の金属担持活性炭。
【請求項3】
前記活性炭の細孔容積が0.5cm/g~0.8cm/gである請求項1又は2に記載の金属担持活性炭。
【請求項4】
前記活性炭の比表面積が1200m/g~1700m/gである請求項1ないしのいずれか1項に記載の金属担持活性炭。
【請求項5】
前記活性炭が表面酸化処理がなされた活性炭である請求項1ないしのいずれか1項に記載の金属担持活性炭。
【請求項6】
基材活性炭と金属塩の水溶液とを混合した混合液に1回超音波を照射した後、金属塩の水溶液を1回目の超音波照射時の金属塩濃度と同一濃度に再調整して複数回繰り返し行って前記基材活性炭の表面に前記金属塩の金属を析出させることを特徴とする金属担持活性炭の製法。
【請求項7】
前記混合液に照射する超音波の周波数が200kHz以上、2.4MHz以下である請求項に記載の金属担持活性炭の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭表面に金属を担持(添着)してエチレン除去、脱臭、抗菌性等の性能を備えた金属担持活性炭及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性炭表面に金属粒子を担持(添着)させた金属担持活性炭が、触媒として様々な分野で活用されている。例えば、野菜や果物等の青果物の鮮度維持に際して、青果物から発生して腐敗を促進するエチレンガスは一般的な吸着剤での除去が困難であるが、金属担持活性炭を用いることにより効果的に分解除去することができる。
【0003】
従来、活性炭表面に金属を担持させる手段として、活性炭を金属塩水溶液に含浸させた後、高温焼成する含浸法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この含浸法では、金属塩水溶液に含浸した活性炭をろ過、乾燥させた後、空気中で高温焼成し、さらに水素気流中で還元が行われる。しかしながら、金属担持活性炭の製造に際して、高温焼成や水素還元の工程は、煩雑であるばかりでなく温度条件が過酷で、粒径制御や粒子の高分散が困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-340282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、製造工程を簡素化により効率的に製造可能であるとともに、金属粒子の粒径等を簡便に制御することができる金属担持活性炭及びその製法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、表面官能基量が0.14meq/g~1.5meq/gである活性炭に超音波照射による粒径1nm~800nmの金属ナノ粒子が担持されていることを特徴とする金属担持活性炭に係る。
【0007】
請求項2の発明は、前記金属ナノ粒子が金、白金、パラジウム、銅、銀のいずれか一である請求項1に記載の金属担持活性炭に係る。
【0008】
請求項の発明は、前記活性炭の細孔容積が0.5cm/g~0.8cm/gである請求項1又は2項に記載の金属担持活性炭に係る。
【0009】
請求項の発明は、前記活性炭の比表面積が1200m/g~1700m/gである請求項1ないしのいずれか1項に記載の金属担持活性炭に係る。
【0010】
請求項の発明は、前記活性炭が表面酸化処理がなされた活性炭である請求項1ないしのいずれか1項に記載の金属担持活性炭に係る。
【0011】
請求項の発明は、基材活性炭と金属塩の水溶液とを混合した混合液に1回超音波を照射した後、金属塩の水溶液を1回目の超音波照射時の金属塩濃度と同一濃度に再調整して複数回繰り返し行って前記基材活性炭の表面に前記金属塩の金属を析出させることを特徴とする金属担持活性炭の製法に係る。
【0012】
請求項の発明は、前記混合液に照射する超音波の周波数が200kHz以上、2.4MHz以下である請求項に記載の金属担持活性炭の製法に係る。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る金属担持活性炭によると、表面官能基量が0.14meq/g~1.5meq/gである活性炭に超音波照射による粒径1nm~800nmの金属ナノ粒子が担持されているため、金属ナノ粒子を効果的に形成し、効率的に製造できて、担持された金属ナノ粒子の粒径制御等も容易である。また、金属ナノ粒子の小径化、粒子サイズの均一化により反応活性の向上が期待される。
【0014】
請求項2の発明に係る金属担持活性炭によると、請求項1の発明において、前記金属ナノ粒子が金、白金、パラジウム、銅、銀のいずれか一であるため、金属ナノ粒子を効率よく形成することができる。また、金、白金、パラジウム、銅、銀が有する触媒作用をさらに高めることができると期待される。
【0015】
請求項の発明に係る金属担持活性炭によると、請求項1又は2の発明において、前記活性炭の細孔容積が0.5cm/g~0.8cm/gであるため、金属粒子の分散効率及び強度をバランスよく確保することができる。
【0016】
請求項の発明に係る金属担持活性炭によると、請求項1ないしのいずれかの発明において、前記活性炭の比表面積が1200m/g~1700m/gであるため、金属粒子を局所的に凝集させることなく表面全体に分散させることができ、強度も確保することができる。
【0017】
請求項の発明に係る金属担持活性炭によると、請求項1ないしのいずれかの発明において、前記活性炭が表面酸化処理がなされた活性炭であるため、金属粒子の形成が促進される。
【0018】
請求項の発明に係る金属担持活性炭の製法によると、基材活性炭と金属塩の水溶液とを混合した混合液に1回超音波を照射した後、金属塩の水溶液を1回目の超音波照射時の金属塩濃度と同一濃度に再調整して複数回繰り返し行って前記基材活性炭の表面に前記金属塩の金属を析出させるため、製造工程が簡素化されて効率的に製造可能であるとともに、金属粒子の粒径等を簡便に制御し、金属粒子の粒径の増大化を抑制しながら被覆率を容易に制御することができる
【0019】
請求項の発明に係る金属担持活性炭の製法によると、請求項の発明において、前記混合液に照射する超音波の周波数が200kHz以上、2.4MHz以下であるため、超音波の物理的作用を抑制して効果的に化学的作用を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の金属担持活性炭の製法に係る概略工程図である。
図2】活性炭と0.1mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図3】活性炭と0.5mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図4】活性炭と1.0mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図5】活性炭と2.0mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図6】活性炭と0.5mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図7】活性炭と1.0mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図8】活性炭と0.1mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図9】活性炭と0.5mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図10】活性炭と1.0mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図11】活性炭と2.0mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図12】活性炭と1.0mMの銅の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図13】活性炭と2.0mMの銅の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図14】活性炭と0.5mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図15】活性炭と1.0mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図16】活性炭と2.0mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図17】表面酸化処理した活性炭と0.1mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図18】表面酸化処理した活性炭と0.5mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図19】表面酸化処理した活性炭と1.0mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図20】表面酸化処理した活性炭と2.0mMの金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図21】表面酸化処理した活性炭と0.1mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図22】表面酸化処理した活性炭と0.5mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図23】表面酸化処理した活性炭と1.0mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図24】表面酸化処理した活性炭と2.0mMの白金の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図25】表面酸化処理した活性炭と0.1mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図26】表面酸化処理した活性炭と0.5mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図27】表面酸化処理した活性炭と1.0mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図28】表面酸化処理した活性炭と2.0mMのパラジウムの金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図29】表面酸化処理した活性炭と0.5mMの銅の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図30】表面酸化処理した活性炭と1.0mMの銅の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図31】表面酸化処理した活性炭と2.0mMの銅の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図32】表面酸化処理した活性炭と0.1mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図33】表面酸化処理した活性炭と0.5mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図34】表面酸化処理した活性炭と1.0mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図35】表面酸化処理した活性炭と2.0mMの銀の金属塩水溶液から作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図36】活性炭と金の金属塩水溶液に超音波照射を3回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図37】活性炭と金の金属塩水溶液に超音波照射を5回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図38】活性炭と白金の金属塩水溶液に超音波照射を3回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図39】活性炭と白金の金属塩水溶液に超音波照射を5回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図40】活性炭とパラジウムの金属塩水溶液に超音波照射を3回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図41】活性炭とパラジウムの金属塩水溶液に超音波照射を5回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図42】活性炭と銅の金属塩水溶液に超音波照射を3回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図43】活性炭と銅の金属塩水溶液に超音波照射を5回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図44】活性炭と銀の金属塩水溶液に超音波照射を3回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
図45】活性炭と銀の金属塩水溶液に超音波照射を5回行って作製された金属担持活性炭のFE-SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の金属担持活性炭は、活性炭に超音波照射による粒径1nm~800nmの金属ナノ粒子が担持されてなる。金属担持活性炭は、エチレンガスの除去性能、脱臭性能、抗菌性能等を備えた吸着剤として好適に利用される。この金属担持活性炭は、図1に示すように、混合工程(S1)と、超音波照射工程(S2)とを含む製法により製造される。以下、本発明の金属担持活性炭の製法とともに、当該金属担持活性炭について詳述する。
【0022】
活性炭は、金属担持活性炭を構成する基材であって、木材の製材、加工時に生じるオガコ(大鋸屑)や鉋屑等、廃材や間伐材、廃竹、伐採竹、ヤシ殻等のセルロース分に富む木質の植物原料の粉砕物を炭化、焼成、適宜の賦活を経て得た炭化物である。植物原料の他に、古タイヤ、フェノール樹脂等の各種樹脂製品の炭化物等も活性炭に加えることができる。そのため、活性炭は比較的安価かつ量的に調達可能である。
【0023】
活性炭では、その細孔容積の大きさが金属ナノ粒子の形成に影響を与えると考えられる。小さければ金属が細孔内に分散しにくく、大きければ分散しやすいが、大きすぎると活性炭としての強度面の問題が発生する。そのため、金属粒子の分散効率及び強度をバランスよく確保する観点から、活性炭の細孔容積は0.5cm/g~0.8cm/gであることが好ましい。
【0024】
また、活性炭では、比表面積が粒子径に影響を与えると考えられる。比表面積が広い方が金属粒子を局所的に凝集させることなく表面全体に分散させることができるが、大きすぎると活性炭としての強度面の問題が発生する。そのため、金属粒子表面全体に分散させやすくして強度も確保する観点から、比表面積が1200m/g~1700m/gであることが好ましい。
【0025】
さらに、活性炭では、超音波照射した際に表面官能基がラジカル化して、後述の金属塩水溶液中の金属塩を還元しやすくして金属ナノ粒子の形成を促進する。そこで、金属ナノ粒子を効果的に形成する観点から、活性炭の表面官能基量は、0.14meq/g~1.5meq/gであることが好ましい。この活性炭は、表面酸化処理を施すことにより、容易に表面官能基量を増加させることができる。
【0026】
金属ナノ粒子は、基材となる活性炭の表面に析出される金属粒子であり、担持させた際の粒径が1nm~800nmである。金属ナノ粒子の種類は用途等に応じて適宜に選択されるが、例えば、金属塩での酸化・還元の対象となりやすい金属が、金属ナノ粒子を効率よく形成する上で好ましい。実施例の金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウム、銅、銀のいずれか一である。これらの金属ナノ粒子を活性炭に担持させることにより、金、白金、パラジウム、銅、銀が有する触媒作用をさらに高めることができると期待される。
【0027】
混合工程(S1)は、基材活性炭と金属塩の水溶液とを混合した混合液を得る工程である。金属塩水溶液は、前記の金属粒子の金属塩を含む水溶液である。金属塩の濃度は、活性炭に担持させる金属粒子の種類や、所望する金属粒子の粒径、担持量等に応じて適宜であるが、例えば、0.1mM以上である。金属塩の濃度が高くなるほど金属粒子の粒径や被覆率が増大する傾向があるが、混合液の酸性度が高くなりすぎた場合には、析出した金属が再溶解して粒径が減少することがある。金属塩水溶液としては、例えば、HAuCl、HPtCl、NaPdCl、CuSO、AgCOCH等が挙げられる。金属塩水溶液は、必要に応じてアルゴン、空気、窒素、酸素、水素のいずれか一のガスによって予めガス置換を行ってもよい。
【0028】
超音波照射工程(S2)は、超音波の化学的作用を利用した処理工程であって、混合工程によって得られた混合液に超音波を照射して基材活性炭の表面に金属塩の金属を析出させる。超音波照射工程では、混合液に超音波を照射することにより、水溶液中の水が超音波分解されてHラジカルが生じる。そのため、Hラジカルが還元剤として作用して基材活性炭表面に水溶液中の金属塩から金属粒子が析出される。従って、混合液に還元剤を別途添加することなく金属粒子を析出させることができる。この超音波照射工程では、混合液における金属塩水溶液の金属塩濃度に応じて金属ナノ粒子の粒径を容易に制御することができる。
【0029】
超音波照射工程において、照射する超音波の周波数は200kHz以上、2.4MHz以下であり、より好ましくは950kHz以上である。超音波の周波数を200kHz以上とすることにより、超音波の物理的作用を抑制して効果的に化学的作用を生じさせることができる。また、2.4MHzの高周波領域においても効果的な化学的作用を奏する。
【0030】
超音波の照射時間は、担持される金属粒子の種類や、所望する粒径、被覆率等に応じて適宜に選択される。また、超音波の照射時間が長くなるほど金属粒子の粒径が粗大化し、凝集や融合して被覆率が低下しやすくなる傾向がある。そのため、例えば粒径20nm以下の小さい金属粒子を被覆させる場合は、一度の超音波の照射時間は10分以内が好ましい。
【0031】
この超音波照射工程では、基材活性炭が多孔質体であるため、表面積が大きくなって金属粒子を多く担持させることができる。また特に、基材活性炭が表面酸化処理されていると、超音波照射により活性炭表面で窒素や酸素を含む官能基がラジカル化して、金属粒子の形成が促進される。
【0032】
超音波照射後の混合液は、ろ過や遠心分離等により固液分離されて処理後の活性炭が取り出される。そして、この処理後の活性炭を公知の乾燥工程(S3)により適宜乾燥することにより、金属担持活性炭が得られる。
【0033】
本発明の金属担持活性炭の製法では、混合液の超音波照射を1回実施した後、金属塩水溶液の濃度を再調整して超音波を照射する処理を複数回繰り返し行ってもよい。超音波照射処理が終了すると、金属塩は全量活性炭側へ移行する。そのため、複数回超音波照射処理を行う場合は、1回目の超音波処理が終了した混合液へ金属塩を添加し、混合液中の金属塩濃度の再調整が行われる。その際の金属塩濃度は、1回目の超音波照射時の金属塩濃度と同一濃度に再調整される。従って、超音波照射の繰り返しは、混合液に超音波を照射した後、処理後の混合液に金属塩を添加して1回目の超音波照射処理と同じ金属塩濃度に再調整し、再調整された混合液に対して超音波を照射する作業を必要回数行うものである。これにより、超音波照射を繰り返しても金属粒子の粗大化等が抑制され、かつ、超音波照射の回数に応じて被覆率が高まる。従って、超音波照射の回数を調整することにより、金属粒子の粒径の増大化を抑制しながら被覆率を容易に制御することができる。
【0034】
本発明の金属担持活性炭の製法にあっては、金属塩水溶液の金属塩濃度によって金属ナノ粒子の粒径の制御が容易となり、超音波照射工程の繰り返しによって金属ナノ粒子の被覆率の制御が容易となる。従って、金属塩濃度や超音波照射工程の回数を適宜調整することにより、金属ナノ粒子の粒径や被覆率を容易に制御することができる。
【0035】
このように、本発明の金属担持活性炭の製法は、活性炭に超音波照射して金属ナノ粒子を担持させることが可能である。そのため、従来の高温焼成や水素還元の工程が不要となって製造工程が簡素化され、金属担持活性炭を効率的に製造可能であり、しかも金属粒子の粒径等を簡便に制御することができる。また、金属ナノ粒子の小径化、粒子サイズの均一化により金属担持活性炭の反応活性を向上させることができると期待される。
【実施例
【0036】
[使用材料]
金属担持活性炭を作製するために、金属塩水溶液として下記の水溶液A~E、基材活性炭として下記の活性炭A,活性炭Bを使用した。金属塩水溶液の濃度は、後述の試作例ごとに0.1mM、0.3mM、0.5mM、1.0mM、2.0mMのいずれかから選択した。また、活性炭の細孔容積(cm/g)、比表面積(m/g)、表面官能基量(meq/g)は表1に示した。なお、比表面積はBET法によって求めた。
・水溶液A:HAuCl水溶液
・水溶液B:HPtCl水溶液
・水溶液C:NaPdCl水溶液
・水溶液D:CuSO水溶液
・水溶液E:AgCOCH水溶液
・活性炭A:市販の活性炭(フタムラ化学株式会社製;CW8150SZ)
・活性炭B:市販の活性炭(フタムラ化学株式会社製;CW8150SZ)を表面酸化処理した酸化処理活性炭
【0037】
【表1】
【0038】
[金属担持活性炭の作製(1)]
50ml三角フラスコに所定濃度の金属塩水溶液(水溶液A~水溶液E)50mlと基材活性炭(活性炭A)100mgを加えて含浸させた後、アルゴンバブリングし、混合液を得た。この混合液を水温20℃の超音波発生装置に設置し、950kHz、300Wで8~15分間超音波を照射し、ろ過後、乾燥させて試作例1~20の金属担持活性炭を得た。
【0039】
[試作例1]
試作例1は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0040】
[試作例2]
試作例2は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0041】
[試作例3]
試作例3は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0042】
[試作例4]
試作例4は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0043】
[試作例5]
試作例5は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0044】
[試作例6]
試作例6は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0045】
[試作例7]
試作例7は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0046】
[試作例8]
試作例8は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0047】
[試作例9]
試作例9は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0048】
[試作例10]
試作例10は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0049】
[試作例11]
試作例11は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0050】
[試作例12]
試作例12は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0051】
[試作例13]
試作例13は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0052】
[試作例14]
試作例14は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0053】
[試作例15]
試作例15は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0054】
[試作例16]
試作例16は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0055】
[試作例17]
試作例17は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0056】
[試作例18]
試作例18は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0057】
[試作例19]
試作例19は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0058】
[試作例20]
試作例20は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Aを使用して得た金属担持活性炭である。
【0059】
[結果]
各試作例1~20について、使用した金属塩水溶液の金属塩の種類(Au,Pt,Pd,Cu,Ag)と濃度(mM)と、基材活性炭(活性炭A)に担持された金属粒子の粒径(nm)と被覆率との関係を下記の表2に示した。また、各試作例1~20のFE-SEM画像を図2図16に示した。なお、被覆率は、基材活性炭表面に析出した金属粒子の割合を高低で評価した。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、試作例1~4は、金(Au)の金属塩を含む水溶液Aと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図2は0.1mMの水溶液Aから作製された試作例1のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は低かった。図3は0.5mMの水溶液Aから作製された試作例2のFE-SEM画像であって、粒径が250nmであり、被覆率は高かった。図4は1.0mMの水溶液Aから作製された試作例3のFE-SEM画像であって、粒径が350nmであり、被覆率は高かった。図5は2.0mMの水溶液Aから作製された試作例4のFE-SEM画像であって、金属ナノ粒子が形成されずに凝集体となり、被覆率は高かった。
【0062】
試作例5~8は、白金(Pt)の金属塩を含む水溶液Bと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図6は0.5mMの水溶液Bから作製された試作例6のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は高かった。図7は1.0mMの水溶液Bから作製された試作例7のFE-SEM画像であって、粒径が20nmであり、被覆率は高かった。なお、0.1mMの水溶液Bから作製された試作例5、2.0mMの水溶液Bから作製された試作例8では、ともに活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0063】
試作例9~12は、パラジウム(Pd)の金属塩を含む水溶液Cと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図8は0.1mMの水溶液Cから作製された試作例9のFE-SEM画像であって、粒径が60nmであり、被覆率は低かった。図9は0.5mMの水溶液Cから作製された試作例10のFE-SEM画像であって、粒径が150nmであり、被覆率は低かった。図10は1.0mMの水溶液Cから作製された試作例11のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は高かった。図11は2.0mMの水溶液Cから作製された試作例12のFE-SEM画像であって、粒径が60nmであり、被覆率は高かった。
【0064】
試作例13~16は、銅(Cu)の金属塩を含む水溶液Dと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図12は1.0mMの水溶液Dから作製された試作例15のFE-SEM画像であって、粒径が150nmであり、被覆率は低かった。図13は2.0mMの水溶液Dから作製された試作例16のFE-SEM画像であって、粒径が200nmであり、被覆率は低かった。なお、0.1mMの水溶液Dから作製された試作例13、0.5mMの水溶液Dから作製された試作例14では、ともに活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0065】
試作例17~20は、銀(Ag)の金属塩を含む水溶液Eと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図14は0.5mMの水溶液Eから作製された試作例18のFE-SEM画像であって、粒径が70nmであり、被覆率は低かった。図15は1.0mMの水溶液Eから作製された試作例19のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は低かった。図16は2.0mMの水溶液Eから作製された試作例20のFE-SEM画像であって、粒径が120nmであり、被覆率は高かった。なお、0.1mMの水溶液Eから作製された試作例17では、活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0066】
[考察]
析出した金属粒子の粒径について、試作例1~4(水溶液A)、試作例13~16(水溶液D)、試作例17~20(水溶液E)では、金属塩水溶液の濃度に応じて増大する傾向が見られた。特に、金属塩が金の試作例1~4では、粒径が増大しやすいことがわかった。また、試作例5~8(水溶液B)、試作例9~12(水溶液C)では、金属塩水溶液が低濃度の場合に粒径が増大し、高濃度の場合に粒径が減少する傾向が見られた。これは、混合液の酸性度が高くなって、一度析出した金属が再溶解したためと考えられる。
【0067】
析出した金属粒子の被覆率について、試作例1~20では、金属塩水溶液の濃度に応じて増加する傾向が見られた。特に、金属塩水溶液が高濃度で粒径が減少した試作例9~12(水溶液C)でも被覆率の増加が見られた。しかしながら、同じく金属塩水溶液が高濃度で粒径が減少した試作例5~8(水溶液B)では、2.0mMの高濃度で金属粒子が析出されなくなった。以上のことから、金属塩の種類によって金属粒子が析出し粒径が増大する水溶液の濃度が異なり、水溶液の濃度に応じて金属粒子の粒径及び被覆率が増大する傾向があるが、濃度が高くなりすぎた場合には、広範囲で金属粒子が析出するものの粒径は減少し、最終的に金属が再溶解して析出しなくなる傾向があると考えられる。
【0068】
[金属担持活性炭の作製(2)]
基材活性炭に酸化処理活性炭である活性炭Bを使用し、金属担持活性炭の作製(1)と同様の手順で作製して試作例21~40の金属担持活性炭を得た。
【0069】
[試作例21]
試作例21は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0070】
[試作例22]
試作例22は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0071】
[試作例23]
試作例23は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0072】
[試作例24]
試作例24は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0073】
[試作例25]
試作例25は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0074】
[試作例26]
試作例26は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0075】
[試作例27]
試作例27は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0076】
[試作例28]
試作例28は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液B(HPtCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0077】
[試作例29]
試作例29は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0078】
[試作例30]
試作例30は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0079】
[試作例31]
試作例31は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0080】
[試作例32]
試作例32は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液C(NaPdCl)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0081】
[試作例33]
試作例33は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0082】
[試作例34]
試作例34は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0083】
[試作例35]
試作例35は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0084】
[試作例36]
試作例36は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液D(CuSO)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0085】
[試作例37]
試作例37は、金属塩水溶液として0.1mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0086】
[試作例38]
試作例38は、金属塩水溶液として0.5mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0087】
[試作例39]
試作例39は、金属塩水溶液として1.0mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0088】
[試作例40]
試作例40は、金属塩水溶液として2.0mMの水溶液E(AgCOCH)、基材活性炭として活性炭Bを使用して得た金属担持活性炭である。
【0089】
[結果]
各試作例21~40について、使用した金属塩水溶液の金属塩の種類(Au,Pt,Pd,Cu,Ag)と濃度(mM)と、基材活性炭(活性炭B)に担持された金属粒子の粒径(nm)と被覆率との関係を下記の表3に示した。また、各試作例21~40のFE-SEM画像を図17図35に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示すように、試作例21~24は、金(Au)の金属塩を含む水溶液Aと表面酸化処理した活性炭Bからなる金属担持活性炭である。図17は0.1mMの水溶液Aから作製された試作例21のFE-SEM画像であって、粒径が120nmであり、被覆率は高かった。図18は0.5mMの水溶液Aから作製された試作例22のFE-SEM画像であって、粒径が600nmであり、被覆率は高かった。図19は1.0mMの水溶液Aから作製された試作例23のFE-SEM画像であって、金属ナノ粒子が形成されずに凝集体となり、被覆率は高かった。図20は2.0mMの水溶液Aから作製された試作例24のFE-SEM画像であって、金属ナノ粒子が形成されずに凝集体となり、被覆率は高かった。
【0092】
試作例25~28は、白金(Pt)の金属塩を含む水溶液Bと表面酸化処理した活性炭Bからなる金属担持活性炭である。図21は0.1mMの水溶液Bから作製された試作例25のFE-SEM画像であって、粒径が30nmであり、被覆率は低かった。図22は0.5mMの水溶液Bから作製された試作例26のFE-SEM画像であって、粒径が60nmであり、被覆率は低かった。図23は1.0mMの水溶液Bから作製された試作例27のFE-SEM画像であって、粒径が30nmであり、被覆率は高かった。図24は2.0mMの水溶液Bから作製された試作例28のFE-SEM画像であって、粒径が30nmであり、被覆率は低かった。
【0093】
試作例29~32は、パラジウム(Pd)の金属塩を含む水溶液Cと表面酸化処理した活性炭Bからなる金属担持活性炭である。図25は0.1mMの水溶液Cから作製された試作例29のFE-SEM画像であって、粒径が300nmであり、被覆率は低かった。図26は0.5mMの水溶液Cから作製された試作例30のFE-SEM画像であって、粒径が200nmであり、被覆率は低かった。図27は1.0mMの水溶液Cから作製された試作例31のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は高かった。図28は2.0mMの水溶液Cから作製された試作例32のFE-SEM画像であって、粒径が30nmであり、被覆率は高かった。
【0094】
試作例33~36は、銅(Cu)の金属塩を含む水溶液Dと表面酸化処理した活性炭Bからなる金属担持活性炭である。図29は0.5mMの水溶液Dから作製された試作例34のFE-SEM画像であって、粒径が150nmであり、被覆率は低かった。図30は1.0mMの水溶液Dから作製された試作例35のFE-SEM画像であって、粒径が150nmであり、被覆率は低かった。図31は2.0mMの水溶液Dから作製された試作例36のFE-SEM画像であって、粒径が250nmであり、被覆率は高かった。なお、0.1mMの水溶液Dから作製された試作例33では、活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0095】
試作例37~40は、銀(Ag)の金属塩を含む水溶液Eと表面酸化処理した活性炭Bからなる金属担持活性炭である。図32は0.1mMの水溶液Eから作製された試作例37のFE-SEM画像であって、粒径が30nmであり、被覆率は低かった。図33は0.5mMの水溶液Eから作製された試作例38のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は高かった。図34は1.0mMの水溶液Eから作製された試作例39のFE-SEM画像であって、粒径が70nmであり、被覆率は低かった。図35は2.0mMの水溶液Eから作製された試作例40のFE-SEM画像であって、粒径が150nmであり、被覆率は低かった。
【0096】
[考察]
試作例21~40の析出した金属粒子の粒径及び被覆率について、表面酸化処理した活性炭Bを用いた場合でも、前述の市販の(表面酸化処理していない)活性炭Aを用いて作製した金属担持活性炭と同様に、金属塩の種類によって金属粒子が析出し粒径が増大する水溶液の濃度が異なり、水溶液の濃度に応じて金属粒子の粒径及び被覆率が増大する傾向があるが、濃度が高くなりすぎた場合には、広範囲で金属粒子が析出するものの粒径は減少する傾向が見られた。なお、試作例25~28、試作例37~40において、高濃度の水溶液で被覆率の減少が見られたので、試作例1~20と同様に最終的に金属が再溶解して析出しなくなる傾向があると考えられる。
【0097】
また、試作例1~20(表面酸化処理していない活性炭A)と、試作例21~40(表面酸化処理した活性炭B)とを対比すると、試作例21~40では、同濃度で金属粒子が析出しやすくなったり(試作例25~28、試作例33~36、試作例37~40)、粒径が増大しやすくなる(試作例21~24、試作例29~32、試作例33~36)傾向が見られた。従って、表面酸化処理した活性炭を基材として用いることにより、表面酸化処理していない活性炭と比較して金属粒子の形成が促進されると考えられる。
【0098】
[金属担持活性炭の作製(3)]
金属担持活性炭の作製(1)の手順において、超音波照射を所定回数繰り返し行って試作例41~55の金属担持活性炭を得た。超音波照射の繰り返しでは、0.1mMの金属塩水溶液に活性炭を含浸させ、超音波を照射する手順を1回とし、2回目以降は同一濃度に再調整した金属塩水溶液を用いて処理後の活性炭を含浸させて行うものとした。
【0099】
[試作例41]
試作例41は、金属塩水溶液として水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を1回行って得た金属担持活性炭である。
【0100】
[試作例42]
試作例42は、金属塩水溶液として水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を3回行って得た金属担持活性炭である。
【0101】
[試作例43]
試作例43は、金属塩水溶液として水溶液A(HAuCl)、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を5回行って得た金属担持活性炭である。
【0102】
[試作例44]
試作例44は、金属塩水溶液として水溶液B(HPtCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を1回行って得た金属担持活性炭である。
【0103】
[試作例45]
試作例45は、金属塩水溶液として水溶液B(HPtCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を3回行って得た金属担持活性炭である。
【0104】
[試作例46]
試作例46は、金属塩水溶液として水溶液B(HPtCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を5回行って得た金属担持活性炭である。
【0105】
[試作例47]
試作例47は、金属塩水溶液として水溶液C(NaPdCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を1回行って得た金属担持活性炭である。
【0106】
[試作例48]
試作例48は、金属塩水溶液として水溶液C(NaPdCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を3回行って得た金属担持活性炭である。
【0107】
[試作例49]
試作例49は、金属塩水溶液として水溶液C(NaPdCl)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を5回行って得た金属担持活性炭である。
【0108】
[試作例50]
試作例50は、金属塩水溶液として水溶液D(CuSO)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を1回行って得た金属担持活性炭である。
【0109】
[試作例51]
試作例51は、金属塩水溶液として水溶液D(CuSO)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を3回行って得た金属担持活性炭である。
【0110】
[試作例52]
試作例52は、金属塩水溶液として水溶液D(CuSO)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を5回行って得た金属担持活性炭である。
【0111】
[試作例53]
試作例53は、金属塩水溶液として水溶液E(AgCOCH)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を1回行って得た金属担持活性炭である。
【0112】
[試作例54]
試作例54は、金属塩水溶液として水溶液E(AgCOCH)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を3回行って得た金属担持活性炭である。
【0113】
[試作例55]
試作例55は、金属塩水溶液として水溶液E(AgCOCH)を用い、基材活性炭として活性炭Aを使用し、超音波照射を5回行って得た金属担持活性炭である。
【0114】
[結果]
各試作例41~55について、使用した金属塩水溶液の金属塩の種類(Au,Pt,Pd,Cu,Ag)と超音波照射の回数(回)と、基材活性炭(活性炭A)に担持された金属粒子の粒径(nm)と被覆率との関係を下記の表4に示した。また、各試作例41~55のFE-SEM画像を図36図45に示した。
【0115】
【表4】
【0116】
表4に示すように、試作例41~43は、金(Au)の金属塩を含む水溶液Aと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図36は超音波照射を3回行って作製された試作例42のFE-SEM画像であって、粒径が70nmであり、被覆率は高かった。図37は超音波照射を5回行って作製された試作例43のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は高かった。なお、超音波照射を1回行って作製された試作例41は、図2のFE-SEM画像に示す試作例2と同一であって、粒径が50nmであり、被覆率は低かった。
【0117】
試作例44~46は、白金(Pt)の金属塩を含む水溶液Bと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図38は超音波照射を3回行って作製された試作例45のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は低かった。図39は超音波照射を5回行って作製された試作例46のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は高かった。なお、超音波照射を1回行って作製された試作例44では、活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0118】
試作例47~49は、パラジウム(Pd)の金属塩を含む水溶液Cと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図40は超音波照射を3回行って作製された試作例48のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は高かった。図41は超音波照射を5回行って作製された試作例49のFE-SEM画像であって、粒径が50nmであり、被覆率は高かった。なお、超音波照射を1回行って作製された試作例47は、図8のFE-SEM画像に示す試作例9と同一であって、粒径が60nmであり、被覆率は低かった。
【0119】
試作例50~52は、銅(Cu)の金属塩を含む水溶液Dと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図42は超音波照射を3回行って作製された試作例51のFE-SEM画像であって、粒径が200nmであり、被覆率は低かった。図43は超音波照射を5回行って作製された試作例52のFE-SEM画像であって、粒径が200nmであり、被覆率は低かった。なお、超音波照射を1回行って作製された試作例50では、活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0120】
試作例53~55は、銀(Ag)の金属塩を含む水溶液Eと市販の活性炭Aからなる金属担持活性炭である。図44は超音波照射を3回行って作製された試作例54のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は低かった。図45は超音波照射を5回行って作製された試作例55のFE-SEM画像であって、粒径が100nmであり、被覆率は高かった。なお、超音波照射を1回行って作製された試作例53では、活性炭表面に金属粒子が析出しなかった。
【0121】
[考察]
試作例44~46(Pt)、試作例47~49(Pd)、試作例50~52(Cu)、試作例53~55(Ag)では、超音波照射の回数にかかわらず、金属粒子の粒径がほぼ一定となった。試作例41~43(Au)では、超音波照射の回数に応じて金属粒子の粒径が増大したが、前述の試作例1~4の傾向と対比すると、粒径の増大傾向が抑制されていることがわかった。また、被覆率については、全体的に超音波照射の回数に応じて増加する傾向が見られた。以上のことから、超音波照射を繰り返し行った場合には、金属粒子の粒径の増大化を抑制しながら、繰り返し回数に応じて被覆率を高めることができることがわかった。
【0122】
[エチレン除去能確認試験(1)]
次に、試作例27(Pt:1.0mM)、試作例32(Pd:2.0mM)、試作例38(Ag:0.5mM)の金属担持活性炭をそれぞれ用いて、エチレンガスの除去率(%)と除去に要する処理時間(分)を測定した。この試験では、室温、大気圧下で1リットル三角フラスコ中に濃度400ppmに調整されたエチレンガスを充填し、このガスを内径2mm、長さ7.5mm(容積23.6μl)の樹脂製容器に充填された金属担持活性炭へ流量1ml/sにて連続的に循環通気し、15分、60分、120分の各時間ごとのエチレンガス濃度の変化を検知管により測定してエチレンガス除去率を算出した。その結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
表5に示すように、Pdを担持した活性炭では、エチレンガス導入後15分でエチレンガス濃度が20%以下(エチレンガス除去率80%以上)となった。また、Ptを担持した活性炭ではエチレンガス導入後120分でエチレンガス濃度が20%以下(エチレンガス除去率80%以上)、Agを担持した活性炭ではエチレンガス導入後120分でエチレンガス濃度が25%(エチレンガス除去率75%)となった。従って、Pt,Pd,Agを担持した活性炭がいずれも優れたエチレン除去能を有しており、特にPdを担持した活性炭のエチレン除去能が優れていることがわかった。
【0125】
[エチレン除去能確認試験(2)]
試作例25~28(Pt)、試作例29~32(Pd)の金属担持活性炭をそれぞれ用いて、基材活性炭に含浸させた金属塩の濃度(mM)に応じたエチレンガスの除去率(%)を測定した。この試験では、室温、大気圧下で1リットル三角フラスコ中に濃度400ppmに調整されたエチレンガスを充填し、このガスを内径2mm、長さ7.5mm(容積23.6μl)の樹脂製容器に充填された金属担持活性炭へ流量1ml/sにて連続的に循環通気し、試作例25~28(Pt)は15分後、試作例29~32(Pd)は120分後のエチレンガス濃度を検知管により測定してエチレンガス除去率を算出した。その結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
表6に示すように、試作例29~32(Pt)では、試作例30の粒径が最大で他の試作例29,31,32の粒径が同一であったが、エチレンガス除去率は試作例31が最大で他の試作例29,30,32は異なる値となった。また、試作例33~36(Pd)では、金属塩濃度が低濃度(試作例33)であるほど金属粒子の粒径が大きく、高濃度(試作例36)になるほど粒径が小さくなるが、エチレンガス除去率は金属塩濃度に応じて高い値となった。一方、試作例29~32(Pt)、試作例33~36(Pd)のいずれにおいても、被覆率が高い場合にエチレンガス除去率が高く、被覆率が低い場合にエチレンガス除去率が低い値となっていた。以上のことから、金属粒子の粒径とエチレンガス除去能との間に相関関係はなく、被覆率に応じてエチレンガス除去能が向上すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の金属担持活性炭及びその製法は、超音波照射によって活性炭に金属ナノ粒子を担持させるため、金属粒子の粒径等の制御が容易で効率的に製造可能である。従って、従来の金属担持活性炭及びその製法の代替として有望である。
【符号の説明】
【0129】
S1 混合工程
S2 超音波照射工程
S3 乾燥工程
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