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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】シート綴じ装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20221116BHJP
   B42B 5/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B42B5/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018236823
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097477
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和彦
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-91249(JP,A)
【文献】特開2014-144607(JP,A)
【文献】特開平2-23158(JP,A)
【文献】特開2007-261702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/04
B42B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置する載置手段と、
前記載置手段に載置されたシートの有無を検知するシート検知手段と、
前記載置手段に載置された複数のシートを挟んで対向して配置された一対の圧着部材を有し、前記シートを前記圧着部材で加圧変形させることにより、前記複数のシートを綴じる綴じ手段と、
前記載置手段にシートが載置されていない状態で前記綴じ手段を動作させる空打ちモードを指定可能な指定手段と、
前記指定手段により前記空打ちモードが指定され、少なくとも前記綴じ手段に前記圧着部材を加圧させる動作を行わせている際、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されたことを検知した場合、前記綴じ手段の動作を停止すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記指定手段により前記空打ちモードが指定された際、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されていることが検知された場合、前記シート検知手段によって前記載置手段にシートが載置されていないことが検知されるまで、前記綴じ手段の動作を禁止すべく前記綴じ手段を制御する
請求項1に記載のシート綴じ装置。
【請求項3】
前記綴じ手段は、対向して配置された前記一対の圧着部材の少なくとも一方の圧着部材の加圧面を、前記載置手段に載置された複数のシートから離れた非加圧位置から加圧位置へ移動させることにより前記複数のシートを加圧変形させることで、前記複数のシートを綴じるものである
請求項1又は2に記載のシート綴じ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記指定手段により前記空打ちモードが指定され、前記圧着部材が前記非加圧位置から前記加圧位置へ移動しているときに、前記シート検知手段により前記載置手段に前記シートが載置されたことを検知した場合、前記シート検知手段が前記シートを検知したときに前記綴じ手段の動作を停止すべく前記綴じ手段を制御する
請求項3に記載のシート綴じ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記指定手段により前記空打ちモードが指定され、前記圧着部材が前記加圧位置から前記非加圧位置へ移動しているときに、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されたことを検知した場合、前記圧着部材が前記非加圧位置に移動してから前記綴じ手段の動作を停止すべく前記綴じ手段を制御する
請求項3に記載のシート綴じ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記指定手段により前記空打ちモードが指定され、前記圧着部材が前記加圧位置から前記非加圧位置へ移動しているときに、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されたことを検知した場合、前記シート検知手段が前記シートを検知したときに前記綴じ手段の動作を停止すべく前記綴じ手段を制御する
請求項3に記載のシート綴じ装置。
【請求項7】
前記指定手段は、前記綴じ手段によりシートを綴じる回数が所定回数に到達した場合に、前記空打ちモードを指定する
請求項1乃至6の何れか1項に記載のシート綴じ装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記指定手段により前記空打ちモードが指定されている場合において、前記綴じ手段による動作を実施しておらず、且つ、前記シート検知手段によって前記載置手段にシートが載置されていないと検知した場合に、前記空打ちモードを開始する
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシート綴じ装置。
【請求項9】
シートを載置する載置手段と、
前記載置手段に載置されたシートの有無を検知するシート検知手段と、
前記載置手段に載置された複数のシートを挟んで対向して配置された一対の圧着部材を有し、前記シートを前記圧着部材で加圧変形させることにより、前記複数のシートを綴じる綴じ手段と、
前記綴じ手段を動作させて前記圧着部材から紙粉を除去する空打ちモードを指定可能な指定手段と、
前記指定手段により前記空打ちモードが指定された際、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されていることが検知された場合、前記シート検知手段によって前記載置手段にシートが載置されていないことが検知されるまで、前記綴じ手段の動作を禁止すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート綴じ装置に関し、特に綴じ針を使用することなくシートを綴じる綴じ手段を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には互いに噛合する凹凸面を有する一対の歯型を離間した待機位置から圧着する作動位置に位置移動し、両歯型の間に挿入したシート束を圧着綴じする機構が開示されている。また、特許文献2に開示されるように、金属針を用いないシート綴じ装置の締結力の低下を防ぐために、第1の歯型部及び第2の歯型部の間にシートが無い状態で第1の歯型部及び第2の歯型部を噛み合わせる空打ち動作を行って歯型部の歯に付着したシートの屑(紙粉)を除去するシート処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-208854号公報
【文献】特開2014-091249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、卓上などの手動による針なし綴じ装置において、装置が紙粉を除去するために行う空打ち動作と、使用者がシート束を綴じるためにシート束を装置へ載置する動作が重なることがある。この場合における、紙粉を除去するための空打ち動作によるシート束の誤綴じを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では紙粉などの異物を除去するための空打ち動作の際に、載置手段にシート束が載置されたことを検知した場合、空打ち動作を停止すべく綴じ手段を制御する。
即ち、本発明のシート綴じ装置は、シートを載置する載置手段と、前記載置手段に載置されたシートの有無を検知するシート検知手段と、前記載置手段に載置された複数のシートを挟んで対向して配置された一対の圧着部材を有し、前記シートを前記圧着部材で加圧変形させることにより、前記複数のシートを綴じる綴じ手段と、前記載置手段にシートが載置されていない状態で前記綴じ手段を動作させる空打ちモードを指定可能な指定手段と、前記指定手段により前記空打ちモードが指定され、少なくとも前記綴じ手段に前記圧着部材を加圧させる動作を行わせている際、前記シート検知手段により前記載置手段にシートが載置されたことを検知した場合、前記綴じ手段の動作を停止すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シート綴じ装置において、紙粉を除去するための空打ち動作による誤綴じを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電動圧着綴じユニットの説明図。
図2図1の圧着綴じ装置の構成説明図。
図3】(a)は第1綴じ歯と第2綴じ歯の噛合状態の説明図、(b)は凹凸面の形状を示す説明図。
図4図2の圧着綴じ装置における第1フレームと第1ブロック部材、第1綴じ歯の構成、及び第2フレームと第2ブロック部材と第2綴じ歯の構成の斜視図。
図5図2の圧着綴じ装置における内部構造の説明図。
図6】第1フレームと第1ブロック部材、第1綴じ歯の内部構造の説明図であり、(a)は平面構成を示し、(b)は第1ブロック部材の断面構造を示す。
図7】電動圧着綴じユニットの箱上を外した上面図。
図8】電動圧着綴じユニットの3面図で、(a)平面図、(b)(a)の右側面図、(c)(a)の下側面図。
図9】電動圧着綴じユニットの開口部にシートを挿入した断面図で、(a)シートが水平に規制される開口部に、(b)シートが傾いて規制される開口部に、それぞれシートを挿入した図。
図10】電動圧着綴じユニットの開口部にシートを挿入した断面図(別実施形態)で、(a)シートが傾いて規制される開口部に、(b)シートが水平に規制される開口部に、それぞれシートを挿入した図。
図11】押しボタン説明図。
図12】実施形態にかかわるシート検知の制御のフローチャート。
図13】実施形態にかかわる電動圧着綴じユニットの空打ち動作のフローチャート。
図14】実施形態における制御構成の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について詳述する。図1は電動圧着綴じユニットAの斜視図である。
【0009】
本実施形態にかかるシート綴じ装置としての電動圧着綴じユニットAは、ケース底101(箱底;以下同様)と、ケース上102(箱上;以下同様)と、圧着綴じ装置23、電源スイッチ103、基板104、ボタン105、ボタン基板106、シート検知センサー107からなる。
【0010】
[圧着綴じ装置]
図2ないし図6に従って本実施形態に係わる圧着綴じ装置23(綴じ手段C;以下同様)について説明する。圧着綴じ装置23は束状に集積された複数のシートを互いに噛み合うように加圧変形させて綴じ合わせる。このため圧着綴じ装置23は、複数のシートを対向する綴じ歯で挟んで圧着する機構で構成される。
【0011】
圧着綴じ装置23は、シート束Sを圧着する一対の圧着部材としての一対の第1綴じ歯31、第2綴じ歯41と、この第1綴じ歯31を支持する第1ブロック部材32と、第2綴じ歯41を支持する第2ブロック部材42と、第1ブロック部材32を支持する第1フレーム33(33a、33b、33c)と、第2ブロック部材42を支持する第2フレーム44(44a、44b、44c)とで構成されている。
【0012】
上記第1フレーム33と第2フレーム44は、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41とが離間した待機姿勢(非加圧姿勢;図4の状態)から圧接した作動姿勢(加圧姿勢;図2のAp状態)にシフトするよう位置移動可能に装置フレームに取り付けられている。即ち、圧着綴じ装置23は、シートを挟んで対向して配置された第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の少なくとも一方の綴じ歯の加圧面を、シートから離れた非加圧位置から加圧位置に移動させることによりシートを加圧変形させる。図示の第1フレーム33は装置フレーム50(ユニットフレーム)に固定され、この第1フレーム33に第2フレーム44が揺動回転軸51で回転可能に連結されている。
【0013】
上記揺動回転軸51で揺動可能に連結されている第1フレーム33の先端部には第1ブロック部材32が、第2フレーム44の先端部には第2ブロック部材42が取り付けられている。そして第1フレーム33と第2フレーム44の揺動運動で、第1ブロック部材32と第2ブロック部材42は互いに離間した待機位置Wp(非加圧位置、図4の状態)から互いに圧接した作動位置Ap(加圧位置、図2の状態)にシフトする。
【0014】
上記第1ブロック部材32には、第1綴じ歯31が、第2ブロック部材42には第2綴じ歯41がそれぞれ保持されており、圧入により固定されている。図3(a)は第1ブロック部材32と第2ブロック部材42の斜視形状を示し、同図(b)は断面形状を示している。
【0015】
上記第1ブロック部材32に保持される第1綴じ歯31と、第2ブロック部材42に保持される第2綴じ歯41には、複数の凹凸面(加圧面)が設けられている。第1綴じ歯31と第2綴じ歯41には互いに噛み合う凹凸形状の歯型が所定ピッチ(歯間隔)、所定長さ(L)で、列状に配列されている。
【0016】
上記第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の歯幅(w)と長さ(L)と噛合い深さ(d)は、綴じ処理するシート束の最大厚さ及びシート材質に応じて設定する。また第1綴じ歯31と第2綴じ歯41を同一形状にすると、歯型同士の噛み合い精度の向上が見込めるうえ、加工が容易となる。そのため以下の実施形態では、第1綴じ歯31の凹凸面形状と第2綴じ歯41の凹凸面形状は同一形状とする。
【0017】
図3(a)に示すように第1綴じ歯31、第2綴じ歯41は、第1ブロック部材32と第2ブロック部材42の揺動運動方向(同図矢印A方向)に対して直交する方向(同図矢印B方向;揺動回転軸51の軸方向)と所定鋭角度θ(0≦θ<90度)だけ傾斜させて(同図矢印C方向)配置してある。これは綴じ処理するシート束のコーナ部に、所定角度(例えば60度;θ=30度)傾斜した位置を綴じ処理するためである。このように第1ブロック部材32と第2ブロック部材42の運動方向(シフト方向)に対して、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の列方向は任意の鋭角度方向(0度≦θ<90度)に設定することが可能である。
【0018】
上記第2フレーム44には、第1綴じ歯31と、第2綴じ歯41が離間した待機位置Wpから圧接する作動位置Apに第2綴じ歯41を移動させる、移動手段としての駆動機構49(駆動手段;以下同様)が設けられている。この駆動機構49はカム部材52と駆動モータDCで構成されている。
【0019】
なお、本実施形態においては、移動手段として駆動機構49を用いているが、本発明はこれに限るものではない。つまり、移動手段を揺動回転軸51として、ユーザーが第1フレーム33と第2フレーム44との少なくとも一方を移動させて、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41が離間した待機位置Wpから圧接する作動位置Apに第2綴じ歯41を移動させるように構成してもよい。
【0020】
[駆動機構]
上述した第1フレーム33と第2フレーム44は、揺動回転軸51の回転軸線で揺動可能に軸支持され揺動運動する。図示の第1フレーム33は装置フレーム50に固定され、第2フレーム44は装置フレーム50に固定された第1フレーム33に、上述したように揺動回転軸51で揺動可能に取り付けられている。
【0021】
従って、第2フレーム44は第1フレーム33に対して揺動運動可能に支持されている。なお、本実施形態においては、第1フレーム33と第2フレーム44のうち、一方を装置フレーム50に固定し、他方を装置フレームに移動可能に支持する構造を採用しているが、第1フレーム33と第2フレーム44を共に装置フレーム50に移動可能に支持する構造を採用しても良い。
【0022】
第2フレーム44の駆動機構49について説明する。第2フレーム44には、揺動回転軸51を介して先端部に第2綴じ歯41が、基端部にカムフォロア53(フォロアコロ)が設けられている。先端部に設けられた第2綴じ歯41とフォロアコロ53とは、揺動回転軸51を介して梃子の作用(倍力機構)が働くレバー長さに形成してある。
【0023】
また、第1フレーム33の基端部にはカム部材52(図示のものは円筒カム)が配置されている。カム部材52はカム軸54に支持され、カム軸54は第1フレーム33に回転可能に軸支されていると共に、カム部材52とフォロアコロ53とは互いに係合する位置関係で配置されている。また、カム軸54には伝動手段55を介して駆動モータDCの回転が伝達され、駆動モータDCの正逆転でカム部材52が正逆転するように連結されている。
【0024】
図2に示すように駆動モータDCは、装置フレーム50(例えば後処理装置のフレーム)にマウントされ、その駆動軸56の回転は、伝動手段55を構成する伝動歯車G2、G3、G4、G5でカム軸54に回転を伝達する。カム軸54に連結された歯車G1でカム部材52は図2反時計方向に回転する。
【0025】
なお、上述の実施形態ではカムフォロア53を第2フレーム44に、カム部材52を第1フレーム33に配置する場合を示したが、カム部材52を第2フレーム44に、カムフォロア53を第1フレーム33に配置することも可能である。この場合には装置フレーム50に装備した駆動モータDCから駆動力をカム部材(回転カム)の回転軸に伝達すると良い。
【0026】
図2に示す装置は、第1フレーム33が、断面U字形状の板金で形成され、その対向する側壁33aと33bの間に第2フレーム44が揺動回転軸51で揺動可能に支持されている(図4乃至6)。このように第2フレーム44は第1フレーム33の側壁33a、33bにガイドされ揺動回転軸51を中心に揺動運動する。そして第2フレーム44には上記待機位置Wpに戻すための復帰スプリング43が配置されている。この復帰スプリング43は装置フレーム50(または第1フレーム33)との間に配置する。
【0027】
上述の第1綴じ歯31と第2綴じ歯41は互いに噛み合う凹凸面で列状に形成され、この噛合状態は、一方の綴じ歯を固定した状態で噛み合わせて他方の綴じ歯に倣うように位置調整し、その後に固定する。以下、図4乃至図7に従って、第2綴じ歯41を固定し、第1綴じ歯31の凹凸面が倣うように位置調整したのちに固定手段(ネジ部材)で固定する場合について説明する。なお、本実施形態とは逆に、第1綴じ歯31を固定した状態で第2綴じ歯41を位置調整して固定してよい。
【0028】
図4は綴じ処理機構全体の構造を示す斜視図であり、図5はその要部の断面構造を示す説明図である。第1フレーム33は、断面U字形状(3辺)、断面矩形状(4辺)などの、対向する側壁を有する中空部材で構成されている。
【0029】
図示の第1フレーム33は、図4及び図5に示すように右側壁33a、左側壁33b、フロント側壁33cを有する断面略U字形状の鋼材で構成されており、複数の辺で囲まれた空間Ar1(第1ブロック部材取付部;以下「第1取付空間Ar1」という)に第1綴じ歯31を保持する第1ブロック部材32を取り付ける。なお、本実施形態では、第1綴じ歯31が第1ブロック部材32に圧入されて固定される。
【0030】
また、第2フレーム44は、断面U字形状(3辺)、断面矩形状(4辺)など互いに対向する側壁44aと44bを有する部材で構成している。図示の第2フレーム44は右側壁44a、左側壁44b,リア側壁44cを有する断面略U字状の鋼材で構成されており、複数の辺で囲まれた空間Ar2(第2ブロック部材取付部;以下「第2取付空間」という)に第2綴じ歯41を有する第2ブロック部材42が取り付けられる。
【0031】
第2ブロック部材42は前記空間Ar2(第2取付空間)に嵌合する形状に形成され、この空間に固定されている。この固定方法は、ネジ止め、圧入、溶接結合、リベット結合など種々も固定方法が選択可能である。図示のものは第2固定ネジ45によって第2ブロック部材42を第2取付空間Ar2に固定している。
【0032】
次に、図6に示す第1フレーム33と第1ブロック部材32との関係を説明する。第1ブロック部材32は、前述の第1取付空間Ar1に位置調節可能に装着される。これは、第2フレーム44に堅固に取付けられた第2ブロック部材42に保持された第2綴じ歯41に、第1綴じ歯31が倣って噛合するように第1ブロック部材32を位置調整させる。
【0033】
対向する側壁(右側壁33aと左側壁33b)との間には、第1ブロック部材32を摺動可能に支持する、案内部材35(以下「支持軸」と云う)が右側壁33aと左側壁33bを貫通させて設けられている。この支持軸35は対向側壁33a、33bに固定され、断面楕円形状、Dカット形状などに加工すると共に、第1ブロック部材32と当接する接触面35aは面取り加工などで平滑な面を形成しており、第1ブロック部材32との間で摩擦抵抗を生じにくい面が形成される。
【0034】
図6(b)には第1取付空間Ar1に嵌合された第1ブロック部材32が、左側壁33bとの間にクリアランスCL1を有すると共に、右側壁33aとの間にクリアランスCL2を有した状態で支持軸35に支持される状態を示している。第1ブロック部材32は支持軸35の軸方向(矢印X方向)左右のクリアランスCL1、CL2とフロント側壁33cに形成された調整長穴34xによる移動範囲内で、支持軸35の軸方向に移動可能に組み込まれている。
【0035】
そして調整長穴34xを介して第1ブロック部材32に形成されている螺合孔34yにネジ部材34が螺合されフロント側壁33cに第1ブロック部材32を固定する。
【0036】
つまり、位置固定された第2綴じ歯41に、第1フレーム33の第1取付空間Ar1に配置され、固定される前の第1ブロック部材32を第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の噛み合いに倣わせて移動させ、第1ブロック部材32を位置調整したうえで固定する。
【0037】
位置調整は、組み立て時あるいは再調整時に第2フレーム40を、例えば作業者(オペレータ)の操作で揺動させて、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41を図4の待機状態から図2の作動状態に圧着させ、固定されている第2綴じ歯41の凹凸面に、第1綴じ歯31の凹凸面が合致するように支持軸35の軸方向に移動させるため、円滑な位置調整が可能となる。
【0038】
また、本実施形態においては、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41は支持軸35の軸方向(図5左右方向)と角度θで交差している。これに対し第2フレーム44は揺動回転軸51を中心に揺動して、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41は待機位置Wpから作動位置Apに移動する。このため第1綴じ歯31と第2綴じ歯41は、揺動回転軸51に最も近い図5左端の凹凸面が最初に、同図右端の凹凸面が最後に噛み合うように図5矢印方向に噛み合わせられる。この噛み合わせ順(位相差)は図5に角度αとして表現されている。これと同時に第1綴じ歯31と第2綴じ歯41は支持軸35の軸方向とは鋭角度θで傾斜しているが、前述の調整長穴34xの長さ(調整代)はこの傾斜角度を考慮した長さに設定してある。
【0039】
また図5は別の実施形態を示しており、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41を位置調整した後の、第1ブロック部材32と支持軸35との間にごく僅かな間隔が形成される場合を模式的に示している。そして、この状態では同図矢印方向にネジ部材34を中心に僅かに回転可能となる。このため支持軸35の接触面35aと第1ブロック部材32とは、歯型列に回転方向の力が付与されてもネジ部材(固定手段)34の螺合孔34yを中心に揺動するのみとなり支持軸35の軸方向には移動しないため噛み合い精度は維持される。
【0040】
次に、電動圧着綴じユニットAに挿入するシートSの挿入用の開口部109について説明する。
【0041】
[開口部]
図1に示すように、箱上102は前記箱底101に固定され、前記圧着綴じ装置23の前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41との間にシートSが挿入可能な開口部109(載置手段)が設けられている。
【0042】
図8に示すように、前記開口部109には前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41との間を仕切るように仕切り板112が設けられ、前記開口部109の一方側の開口部110と他方の開口部111に仕切られる。
【0043】
図9、10に示すように、前記開口部110及び、前記開口部111には、それぞれ挿入されたシートSを規制する規制部113と規制部114が設けられている。前記規制部113はシートSが電動圧着綴じユニットAに対して、水平に挿入されるように規制され、前記規制部114はシートSが電動圧着綴じユニットAに対して、所定角度傾いた状態で挿入されるように規制される。
【0044】
[圧着綴じ角度]
図9では、前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41が電動圧着綴じユニットAに対して水平に配置されている。別の実施形態として、図10では、前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41が電動圧着綴じユニットAに対して所定角度傾き配置されている。
【0045】
図9の実施形態では、シートSを開口部110に挿入すると前記電動圧着綴じユニットAに対して水平に規制され、前記圧着綴じ装置23によって圧着を行うと、圧着綴じ痕がシートS端部に対し水平に綴じられる(図9(a))。シートSを開口部111に挿入すると前記電動圧着綴じユニットAに対して所定角度傾き規制され、前記圧着綴じ装置23によって圧着を行うと、圧着綴じ痕がシートS端部に対し所定方向傾いた状態に綴じられる(図9(b))。
【0046】
図10の実施形態では、シートSを開口部110に挿入すると前記電動圧着綴じユニットAに対して水平に規制され、前記圧着綴じ装置23によって圧着を行うと、圧着綴じ痕がシートS端部に対し所定角度傾き綴じられる(図10(b))。シートSを開口部111に挿入すると前記電動圧着綴じユニットAに対して所定角度傾き規制され、前記圧着綴じ装置23によって圧着を行うと、圧着綴じ痕がシートS端部に対し水平に綴じられる(図10(a))。
【0047】
前記規制部113の通常位置及び規制部114の通常位置は、前記圧着綴じ装置23で圧着時、前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41から所定距離離れた位置で規制される。そのため、前記規制部113の通常位置及び規制部114の通常位置より前記第1綴じ歯31と前記第2綴じ歯41に近づくように、前記規制部113の位置及び規制部114の位置を通常位置からメカスト(メカニカルストッパー)位置まで移動させることでシートSを押し出す事が可能となり、結果、前記圧着綴じ装置23による圧着位置を調整することが可能となる。
【0048】
[シート検知]
箱上102には、反射型のシート検知センサー107(図14)がセンサーホルダに支持された状態で取り付けられ、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41によって圧着可能な位置にシートSが挿入された場合、前記シート検知センサー107の反射信号が変わる事で、シートSが圧着可能な位置に挿入された事を検知する。即ち、シート検知センサー107は、開口部110又は開口部111の圧着綴じ装置23により圧着可能な位置に、シートが挿入されたか否か(載置手段に載置されたシートの有無)を検知する。
【0049】
[ボタン機構]
綴じ開始ボタン105は、図11のように上下に移動可能に綴じ開始ボタンガイド115に取り付けられ、綴じ開始ボタン基板106は綴じ開始ボタンガイド115に固定されている。
【0050】
綴じ開始ボタン105を押下することで、電動圧着綴じユニットAは前記圧着綴じ装置23によって圧着を行い、シートSを綴じる。
【0051】
[空打ち動作]
ここで、圧着綴じの回数が増加すると、締結の際に発生する紙粉などの異物が歯型部の歯の間に溜まることがある。そして、このように異物が歯型部の歯に付着したり、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41との間に溜まったりすると、次の圧着綴じを行う場合、異物が下歯型部と上歯型部の噛み合わせに影響を及ぼし、シート束の締結力を低下させてしまう。
【0052】
第1綴じ歯31と第2綴じ歯41との間にシートが存在しない状態で第1綴じ歯31から第2綴じ歯41の方向に荷重を加える空打ちを行うようにしている。つまり、開口部110又は開口部111の圧着綴じ装置23により圧着可能な位置に、シートが挿入されていない(シートSが無い)状態で、第1綴じ歯31を移動させて第1綴じ歯31と第2綴じ歯41を噛み合わせる空打ち動作、いわゆる空打ちを行うようにしている。そして、このような空打ち動作は、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の噛み合わせを1回もしくは複数回行うことで、第1綴じ歯31もしくは第2綴じ歯41の噛み合い面に付着した紙屑を、噛みあい面(歯の斜面)外へと除去する。
【0053】
前記空打ち動作は、前記圧着綴じ装置23による圧着綴じの回数に応じて、綴じ処理制御部(制御CPU)301(図14)から指示され、実施される。即ち、指定手段として制御CPU301は、圧着綴じ装置23によりシートを綴じる回数が所定回数に到達した場合に、圧着綴じ装置23に空打ち動作を行わせる空打ちモードを指定可能である。制御手段としての制御CPU301は、空打ちモードが指定されている場合において、圧着綴じ装置23による動作を実施しておらず、且つ、シート検知センサー107によってシートが載置されていないと検知した場合に、空打ちモードを開始する。
【0054】
ところで、既述したように、紙粉などの異物を除去するために行う空打ち動作と、使用者がシート束を綴じるためにシート束を装置へ載置する動作が重なることがある。この場合において、異物を除去するための空打ち動作によるシート束の誤綴じをしてしまう。
【0055】
[シート誤綴じ防止]
そこで、本実施の形態においては、このようなシート束の誤綴じを防止するため、図12および図13のように、空打ち動作の停止及び禁止を行うようにしている。まず、図12に示すように、制御CPU301により空打ちモードが指定されている場合の空打ち動作中に、前記シート検知センサー107にて開口部109へシートSが載置されたことを検知した場合、空打ち動作を停止する(S102、S103)。
【0056】
また、図13に示すように、前記シート検知センサー107によって開口部109にシートSが挿入されていることを検知した場合は、空打ち動作を禁止する(S203、S206)。
【0057】
なお、本実施形態においては、シートSが挿入されたことを検知した際、空打ち動作を禁止しているが、空打ち動作を最後まで実施するために、シートSが開口部109から取り除かれるまで空打ち動作を保留しても良い。即ち、制御CPU301は、空打ちモードが指定された際、シート検知センサー107によりシートが載置されていることが検知された場合、シート検知センサー107によってシートが載置されていないことが検知されるまで、圧着綴じ装置23の動作を禁止すべく圧着綴じ装置23を制御するようにしても良い。
【0058】
[空打ち動作の停止]
前記圧着綴じ装置23は、第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を互いに離間した待機位置Wp(非加圧位置、図4の状態)から互いに圧接した作動位置Ap(加圧位置、図2の状態)にシフトさせることにより、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の噛み合わせを行う。
【0059】
図13に示すように、空打ち動作の第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の噛み合わせは、第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を待機位置Wpから作動位置Apへシフトしている際に(S204)、前記シート検知センサー107にて開口部109へシートSが載置されたことを検知した場合は即停止する(S206、S207)。即ち、制御CPU301は、空打ちモードが指定され、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41が非加圧位置から加圧位置へ移動しているときに、シート検知センサー107によりシートが載置されたことを検知した場合、シート検知センサー107がシートを検知したときに圧着綴じ装置23の動作を停止すべく圧着綴じ装置23を制御する。
【0060】
第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を作動位置Apから待機位置Wpへシフトしている際に(S201)、前記シート検知センサー107にて開口部109へシートSが載置されたことを検知した場合は待機位置Wpへシフトをしたのちに停止する(S202、S203)。即ち、制御CPU301は、空打ちモードが指定され、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41が加圧位置から非加圧位置へ移動しているときに、シート検知センサー107によりシートが載置されたことを検知した場合、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41が非加圧位置に移動してから圧着綴じ装置23の動作を停止すべく圧着綴じ装置23を制御する。なお、制御CPU301は、空打ちモードが指定され、第1綴じ歯31と第2綴じ歯41が加圧位置から非加圧位置へ移動しているときに、シート検知センサー107によりシートが載置されたことを検知した場合、シート検知センサー107がシートを検知したときに圧着綴じ装置23の動作を停止すべく圧着綴じ装置23を制御するようにしても良い。即ち、この場合も、シートを検知した場合に即停止しても良い。
【0061】
第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を待機位置Wpから作動位置Apへシフトしている際に即停止したあと、すぐに待機位置Wpへシフトしても良いし、シート検知センサー107にてシートSが検知されなくなったあと待機位置Wpへシフトしても良い。また、制御CPU301は、空打ちモードが指定され、少なくとも圧着綴じ装置23に第1綴じ歯31と第2綴じ歯41を加圧させる動作を行わせている際、シート検知センサー107によりシートが載置されたことを検知した場合、圧着綴じ装置23の動作を停止すべく圧着綴じ装置23を制御するようにしても良い。例えば、第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を待機位置Wpから作動位置Apへシフトしている際にのみ、圧着綴じ装置23の動作を停止するようにしても良い。
【0062】
既定回数の第1綴じ歯31と第2綴じ歯41の噛み合わせを実施することで空打ち動作の終了とする(S208)。この既定回数は、固定の回数でも良いし、前記圧着綴じ装置23で圧着綴じを実施した回数、またはシートの枚数などの情報で変えても良い。
【0063】
[綴じ装置の待機]
使用者が装置を使用していない場合の前記圧着綴じ装置23は第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を作動位置Apとしておく。
【0064】
これにより、空打ち動作が第1ブロック部材32と第2ブロック部材42を作動位置Apから待機位置Wpへシフトする動作から開始されるため、空打ち動作を開始した際に、使用者がシートSを開口部109に載置した場合でも動作が即停止することがなく、圧着綴じ動作への移行が容易となる。
【0065】
本発明は前述した実施の形態に限定されず、本発明を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。これまでの実施の形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
A 電動圧着綴じユニット
23 圧着綴じ装置
31 第1綴じ歯
32 第1ブロック部材
33 第1フレーム
33a 右側壁
33b 左側壁
33c フロント側壁
34 ネジ部材(固定手段)
34x 調整長穴
34y 螺合孔
35 案内部材(支持軸)
35a 接触面
41 第2綴じ歯
42 第2ブロック部材
44 第2フレーム
44a 右側壁
44b 左側壁
44c リア側壁
DC 駆動モータ
Ar1 第1取付空間(第1ブロック部材取付部)
Ar2 第2取付空間(第2ブロック部材取付部)
101 箱底
102 箱上
103 電源スイッチ
104 基板
105 ボタン
106 ボタン基板
107 シート検知センサー
109 開口部
110 開口部
111 開口部
112 仕切り板
115 綴じ開始ボタンガイド
301 制御CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14