(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】廃熱回収システム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/46 20060101AFI20221116BHJP
F23G 5/48 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F23G5/46 A ZAB
F23G5/48
(21)【出願番号】P 2018237148
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】岩本 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150694(JP,A)
【文献】特開平10-002530(JP,A)
【文献】特開2006-250493(JP,A)
【文献】特開昭62-029801(JP,A)
【文献】特開2018-028415(JP,A)
【文献】特開2011-237137(JP,A)
【文献】特開2007-162987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/46
F23G 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が他端側よりも高い位置となるように配置される伝熱管と、
前記伝熱管を収容する伝熱管収容部を有するとともに、前記伝熱管収容部を挟むように前記伝熱管と交差する方向の一方側及び他方側にそれぞれ形成されるガス入口及びガス出口を有するケーシングとを備え、
排ガスを前記ケーシングにおける前記ガス入口から前記伝熱管収容部を経て前記ガス出口へと流すとともに、排ガスよりも低い温度の熱媒体を前記伝熱管の一端側から他端
側に向けて前記伝熱管の内部に流し、
前記伝熱管収容部に導入される排ガスの量及び/又は温度の変動域で排ガスの量が最も少ない、及び/又は排ガスの温度が最も低い、という条件において、前記ガス出口から排出される排ガスの温度
が露点よりも高く
なるように、前記伝熱管の内部を流れる熱媒体と排ガスとの熱交換量が設定されるとともに、
前記条件において、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度
が露点よりも高く
なるように、前記伝熱管が構成される廃熱回収システム。
【請求項2】
一端側が他端側よりも高い位置となるように配置される伝熱管と、
前記伝熱管を収容する伝熱管収容部を有するとともに、前記伝熱管の一端部近傍に対応して前記伝熱管収容部に連通するように形成されるガス入口又はガス出口、及び前記伝熱管の他端部近傍に対応して前記伝熱管収容部に連通するように形成されるガス出口又はガス入口を有するケーシングとを備え、
排ガスを前記ケーシングにおける前記ガス入口から前記伝熱管収容部を経て前記ガス出口へと流すとともに、排ガスよりも低い温度の熱媒体を前記伝熱管の一端側から他端
側に向けて前記伝熱管の内部に流し、
前記伝熱管収容部に導入される排ガスの量及び/又は温度の変動域で排ガスの量が最も少ない、及び/又は排ガスの温度が最も低い、という条件において、前記ガス出口から排出される排ガスの温度
が露点よりも高く
なるように、前記伝熱管の内部を流れる熱媒体と排ガスとの熱交換量が設定されるとともに、
前記条件において、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度
が露点よりも高く
なるように、前記伝熱管が構成される廃熱回収システム。
【請求項3】
前記条件において、前記伝熱管における一端側の管外側表面温度
が露点よりも低く
なるように、前記伝熱管が構成される請求項1又は2に記載の廃熱回収システム。
【請求項4】
前記伝熱管は、フッ素樹脂製チューブである請求項1~3の何れか一項に記載の廃熱回収システム。
【請求項5】
前記伝熱管は、金属製チューブの外側表面にフッ素樹脂被膜が被覆されてなるものである請求項1~3の何れか一項に記載の廃熱回収システム。
【請求項6】
前記伝熱管の他端側から送り出される熱媒体の一部を前記伝熱管の一端側に還流するための熱媒体還流路と、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度が露点よりも高くなるように前記熱媒体還流路を流れる熱媒体の還流量を制御する熱媒体還流量制御手段とを備える請求項1~5の何れか一項に記載の廃熱回収システム。
【請求項7】
前記伝熱管と、前記伝熱管の一端側開口へと熱媒体を導入するための熱媒体導入部と、前記伝熱管の他端側開口から熱媒体を導出するための熱媒体導出部とからなる複数の熱交換ユニットを備え、前記熱交換ユニットが排ガス流れの上流側から下流側へと並ぶように前記ケーシングに配設される請求項1に記載の廃熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、廃棄物焼却処理施設での廃棄物の焼却処理に伴い発生する腐食性成分を含有する排ガスと、排ガスよりも温度が低い例えば空気等の熱媒体との間で熱交換を行って廃熱を回収する廃熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ごみ等の廃棄物を焼却する焼却炉、及び焼却炉から排出されたSOxやHCl等の酸性ガス成分(腐食性成分)を含む排ガスの熱を回収するボイラ等を備えた廃棄物焼却処理施設においては、ボイラ等の下流側で更に排ガスの熱を回収するために熱交換器を用いた廃熱回収システムが採用されている。
【0003】
熱交換器は、例えば金属等の熱伝導に優れる材料からなる伝熱管の内部に空気等の熱媒体を流し、伝熱管の外側に排ガスを接触させることにより、排ガスの熱を伝熱管を介して熱媒体に間接的に伝えて熱交換を行う装置である。排ガスは、伝熱管に接触することで冷却されるため、排ガスが露点以下に冷却されると、低温腐食がしばしば起こる。低温腐食は、排ガスに含まれるSOxやHCl等の酸性ガスが、露点以下になっている伝熱管の管外側表面で凝縮して生じる液滴により伝熱管が腐食される現象を言い、特に、SO3(無水硫酸)による影響が大きい。
【0004】
従来の廃熱回収システムにおける低温腐食対策として、大きく三つの方法がある。第一の方法は、排ガス中に尿素又はアンモニアを噴霧してSO3を低減することにより、低温腐食を生じさせないようにするというものである(例えば、特許文献1を参照。)。第二の方法は、伝熱管の入口側の流体温度(熱媒体温度)を低温腐食が発生しない温度まで上昇させたり、伝熱管を二重管構造としたりすることにより、伝熱管の外側表面温度を露点以上に保持して、低温腐食を生じさせないようにするというものである(例えば、特許文献2,3を参照)。第三の方法は、耐腐食性を有する被覆材にて伝熱管を被覆したり、伝熱管を耐腐食性素材で構成したりして、伝熱管それ自体に耐腐食対策を施すことにより、低温腐食を生じさせないようにするというものである(例えば、特許文献4~7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-237137号公報
【文献】特開2011-237048号公報
【文献】特開平7-167585号公報
【文献】特開平8-210617号公報
【文献】特開2002-364801号公報
【文献】特開2018-28415号公報
【文献】特開2007-162987号公報
【0006】
上記の第三の方法の場合において、例えば、特許文献7に係る熱交換器は、伝熱管群とケーシングとを備えて構成されている。伝熱管群は、水平方向に延びるフッ素樹脂製の所要本数の伝熱管が、排ガスが流通可能に互いに所定間隔をあけて集まったものである。ケーシングは、伝熱管群を収容する伝熱管収容部を有するとともに、伝熱管収容部を挟むように鉛直方向の上側及び下側にそれぞれ形成されるガス入口及びガス出口を有してなるものである。
【0007】
上記の特許文献7に係る熱交換器においては、排ガスをケーシングにおけるガス入口から伝熱管収容部を経てガス出口へと流すとともに、排ガスよりも低い温度の空気を伝熱管の一端側から他端側に向けて伝熱管の内部に流し、排ガスの熱を伝熱管を介してその内部に流れる空気に間接的に伝えて熱交換を行うようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の特許文献7に係る熱交換器において、伝熱管における排ガスと接触する管外側表面の温度が露点以下に下がると、排ガス中の水分が腐食性成分(SO3等)を溶かし込んだ状態で結露し、伝熱管の管外側表面に腐食性成分を含有する液滴が付着する。この腐食性成分含有液滴は、運転時間の経過に伴い体積が増加する。伝熱管は、水平方向に配置されているため、重力の影響により、伝熱管の外周面の下部領域に腐食性成分含有液滴が集まって成長し、集まった腐食性含有液滴がある体積以上になると、腐食性成分含有液滴は重力作用により落下する。落下した腐食性成分含有液滴は、排ガス中へ飛散し、飛散した腐食性成分含有液滴は、熱交換器のケーシングやそのケーシングに接続されるダクト等に付着して、ケーシング等が腐食してしまうことになる。そのため、ケーシング等に対して、耐腐食塗料を塗布したり、例えばフッ素樹脂製のライニングを貼り付けたりする等の腐食対策を施す必要がある。これらの腐食対策は、高価であるとともに、現場施工が難しいことからメンテナンス性が悪いため、このような腐食対策を実施しなくて済むことが望まれている。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、伝熱管表面での結露により生じた腐食性成分を含有する液滴が飛散するのを防ぐことができ、これによって熱交換器のケーシング等への腐食対策を実施しなくて済む廃熱回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る廃熱回収システムの特徴構成は、
一端側が他端側よりも高い位置となるように配置される伝熱管と、
前記伝熱管を収容する伝熱管収容部を有するとともに、前記伝熱管収容部を挟むように前記伝熱管と交差する方向の一方側及び他方側にそれぞれ形成されるガス入口及びガス出口を有するケーシングとを備え、
排ガスを前記ケーシングにおける前記ガス入口から前記伝熱管収容部を経て前記ガス出口へと流すとともに、排ガスよりも低い温度の熱媒体を前記伝熱管の一端側から他端側、又は他端側から一端側に向けて前記伝熱管の内部に流し、
前記ガス出口から排出される排ガスの温度を露点よりも高くするとともに、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度を露点よりも高くすることにある。
【0011】
本構成の廃熱回収システムにおいては、伝熱管の管外側表面温度が露点以下になると、排ガスと接触する伝熱管の管外側表面での結露と、結露により生じる液滴(腐食性成分含有液滴)の排ガスとの接触による蒸発とが同時に起こる状態となる。この状態において、結露により生じる腐食性成分含有液滴が相対的に増加していく温度条件下では、腐食性成分含有液滴が一定の体積を超過すると、腐食性成分含有液滴の表面張力によって伝熱管の管外側表面に対して作用している付着力よりも、腐食性成分含有液滴に作用する重力の方が大きくなる。伝熱管は、一端側が他端側よりも高い位置となるように配置されているので、一定の体積を超過した腐食性成分含有液滴は、当該腐食性成分含有液滴に作用する重力により、伝熱管の一端側から他端側に向って伝熱管を伝って下降することになる。一方、伝熱管の一端側から他端側に向けて伝熱管の内部に流れる熱媒体は、伝熱管の他端側に向うに従って排ガスにより間接的に温められるため、伝熱管の他端側付近の管外側表面温度は露点を超えることになる。このように、伝熱管の管外側表面温度が露点を超えれば、新たに結露が起こらないため、伝熱管の他端側付近は、排ガスとの接触による腐食性成分の蒸発が支配的な雰囲気となり、この雰囲気の範囲に、伝熱管の一端側から他端側に向って伝熱管を伝って下降してきた腐食性成分含有液滴が入ると、腐食性成分含有液滴の蒸発が起こる。こうして、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器のケーシング等への腐食対策(例えば、耐腐食塗装やフッ素樹脂ライニング等)を実施しなくて済むという効果を奏する。なお、伝熱管の他端側から一端側に向けて伝熱管の内部に熱媒体を流した場合、伝熱管の他端側付近の管外側表面温度が露点以下になることによる結露によって生じる腐食性成分含有液滴が伝熱管を伝って下降し、伝熱管の下部の回りに腐食性成分含有液滴が集積することになる。このように、伝熱管の他端側から一端側に向けて伝熱管の内部に熱媒体を流した場合でも、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器のケーシング等への腐食対策を実施しなくて済むという効果を奏する。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明に係る廃熱回収システムの特徴構成は、
一端側が他端側よりも高い位置となるように配置される伝熱管と、
前記伝熱管を収容する伝熱管収容部を有するとともに、前記伝熱管の一端部近傍に対応して前記伝熱管収容部に連通するように形成されるガス入口又はガス出口、及び前記伝熱管の他端部近傍に対応して前記伝熱管収容部に連通するように形成されるガス出口又はガス入口を有するケーシングとを備え、
排ガスを前記ケーシングにおける前記ガス入口から前記伝熱管収容部を経て前記ガス出口へと流すとともに、排ガスよりも低い温度の熱媒体を前記伝熱管の一端側から他端側、又は他端側から一端側に向けて前記伝熱管の内部に流し、
前記ガス出口から排出される排ガスの温度を露点よりも高くするとともに、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度を露点よりも高くすることにある。
【0013】
本構成の廃熱回収システムにおいても、一端側が他端側よりも高い位置となるように伝熱管が配置されているので、一定の体積を超過した腐食性成分含有液滴は、当該腐食性成分含有液滴に作用する重力により、伝熱管の一端側から他端側に向って伝熱管を伝って下降することになる。従って、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器のケーシング等への腐食対策(例えば、耐腐食塗装やフッ素樹脂ライニング等)を実施しなくて済むという効果を奏する。なお、伝熱管の他端側から一端側に向けて伝熱管の内部に熱媒体を流した場合、伝熱管の他端側付近の管外側表面温度が露点以下になることによる結露によって生じる腐食性成分含有液滴が伝熱管を伝って下降し、伝熱管の下部の回りに腐食性成分含有液滴が集積することになる。このように、伝熱管の他端側から一端側に向けて伝熱管の内部に熱媒体を流した場合でも、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器のケーシング等への腐食対策を実施しなくて済むという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る廃熱回収システムにおいて、
前記伝熱管における一端側の管外側表面温度を露点よりも低くすることが好ましい。
【0015】
本構成の廃熱回収システムによれば、伝熱管における一端側の管外側表面温度が露点よりも低くされているので、伝熱管の一端側から他端側に向けて伝熱管の内部に流れる熱媒体と伝熱管の外側を流れる排ガスとの温度差が大きくなり、熱交換の効率を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る廃熱回収システムにおいて、
前記伝熱管は、フッ素樹脂製チューブであることが好ましい。
【0017】
本構成の廃熱回収システムによれば、優れた耐腐食性を有するフッ素樹脂製チューブが伝熱管として採用されるので、伝熱管の交換頻度を大幅に低減することができる。また、フッ素樹脂製チューブを採用することにより、露点以下となる熱交換条件であっても腐食が起こらないため、排ガスと熱媒体との温度差を大きく設定することができ、伝熱面積の低減が可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0018】
本発明に係る廃熱回収システムにおいて、
前記伝熱管は、金属製チューブの外側表面にフッ素樹脂被膜が被覆されてなるものであるのが好ましい。
【0019】
本構成の廃熱回収システムによれば、優れた耐腐食性を有するフッ素樹脂被膜が金属製チューブの外側表面に被覆されてなるものが伝熱管として採用されるので、伝熱管の交換頻度を大幅に低減することができる。また、露点以下となる熱交換条件であっても腐食が起こらないため、排ガスと熱媒体との温度差を大きく設定することができ、伝熱面積の低減が可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る廃熱回収システムにおいて、
前記伝熱管の他端側から送り出される熱媒体の一部を前記伝熱管の一端側に還流するための熱媒体還流路と、前記伝熱管の他端側の管外側表面温度が露点よりも高くなるように前記熱媒体還流路を流れる熱媒体の還流量を制御する熱媒体還流量制御手段とを備えることが好ましい。
【0021】
本構成の廃熱回収システムによれば、排ガスとの熱交換により昇温されて伝熱管の他端側から送り出される熱媒体の一部が熱媒体還流路を介して伝熱管の一端側に還流され、伝熱管の他端側の管外側表面温度が露点よりも高くなるように熱媒体還流路を介して伝熱管の一端側に還流される熱媒体の還流量が熱媒体還流量制御手段によって制御されるので、例えば、廃棄物焼却処理施設の運転状況により排ガスの量や温度が変動して伝熱管の他端側の管外側表面温度が酸露点よりも低くなるような状況が生じたとしても、伝熱管の他端側の管外側表面温度を露点よりも高くなるように維持することができる。
【0022】
本発明に係る廃熱回収システムにおいて、
前記伝熱管と、前記伝熱管の一端側開口へと熱媒体を導入するための熱媒体導入部と、前記伝熱管の他端側開口から熱媒体を導出するための熱媒体導出部とからなる複数の熱交換ユニットを備え、前記熱交換ユニットが排ガス流れの上流側から下流側へと並ぶように前記ケーシングに配設されることが好ましい。
【0023】
本構成の廃熱回収システムによれば、排ガス流れの上流側から下流側へと並ぶように配設される複数の熱交換ユニットのそれぞれにおいて排ガスとの熱交換が行われ、排ガス流れの最上流側に配設される熱交換ユニットでの排ガスと熱媒体との熱交換量が最も大きく、排ガス流れの下流側に進むに従って熱交換ユニットでの排ガスと熱媒体との熱交換量が次第に小さくなり、排ガス流れの最下流側に配設される熱交換ユニットでの排ガスと熱媒体との熱交換量が最も小さくなる。従って、排ガスとの熱交換によって昇温された温度の異なる熱媒体が複数の熱交換ユニットの熱媒体導出部から送り出されることになり、異なる温度域の廃熱を利用する複数の廃熱利用施設に熱交換後の昇温された熱媒体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る廃熱回収システムを用いた廃棄物焼却処理施設の概略システムを示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器に装備される管外側表面温度調節手段の概略システム構成図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器における伝熱管の管外側表面での結露及び蒸発の現象を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第三実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第四実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却処理施設に本発明の廃熱回収システムが適用された例について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0026】
〔第一実施形態〕
図1には、本発明の第一実施形態に係る廃熱回収システムを用いた廃棄物焼却処理施設の概略システムを示すフロー図が示されている。
【0027】
<廃棄物焼却処理施設の全体構成>
図1に示される廃棄物焼却処理施設1は、焼却炉2、ボイラ3、節炭器4、集塵器5、熱交換器6、誘引通風機7、及び煙突8を備えている。焼却炉2では、可燃ごみを含む廃棄物が焼却される。焼却炉2での廃棄物の焼却に伴い発生した腐食性成分を含有する排ガスは、誘引送風機7の誘引作用により、ボイラ3、節炭器4、集塵器5、及び熱交換器6にそれぞれ順に送り込まれた後に、煙突8を介して大気中に放出される。
【0028】
廃棄物焼却処理施設1において、ボイラ3は、焼却炉2での廃棄物の焼却に伴い発生した高温の排ガスから熱を回収して高圧蒸気を発生する。節炭器4は、ボイラ3で熱回収された後の排ガスから更に熱を回収する。集塵器5は、節炭器4で熱回収された後の排ガスに含まれるダスト等を除去する。集塵器5でダスト等が除去された後の低温の排ガスの熱は、熱交換器6を含む廃熱回収システム20によって回収される。
【0029】
さらに、廃棄物焼却処理施設1は、主として蒸気タービン11及び発電機12よりなる発電設備10、並びに、復水器13、復水タンク14、給水加熱器15、及び脱気器16を備えている。蒸気タービン11には、ボイラ3で発生させた高圧蒸気が供給される。これにより、蒸気タービン11が高速で回転駆動され、蒸気タービン11の回転に伴い発電機12により発電される。復水器13は、蒸気タービン11を経て排出された蒸気を凝縮して復水を生成し、生成された復水は復水タンク14に貯留される。復水タンク14に貯留されている復水は、給水加熱器15に導入される。給水加熱器15は、熱交換器6で熱回収した熱媒体を用いて復水タンク14からの復水を加熱する。給水加熱器15で加熱された復水は、脱気器16に導入される。脱気器16は、給水加熱器15で加熱された復水中の溶存酸素を除去する。ここで、脱気器16で復水の脱気を行う際の熱源には、ボイラ3から蒸気タービン11に送られる高温蒸気の一部や、蒸気タービン11からの抽気蒸気が使用される。脱気器16で脱気された復水は、節炭器4に導入される。節炭器4は、脱気器16で脱気された復水をボイラ3に供給する途中でボイラ3から排出される排ガスの廃熱を利用してボイラ3に供給する復水の加熱を行う。
【0030】
<廃熱回収システム>
次に、熱交換器6を用いた廃熱回収システム20について説明する。なお、上記の熱交換器6は、以下に述べる熱交換器6A,6B,6C,6Dを総称するものである。以下においては、まず、熱交換器6Aについては第一実施形態として説明し、その後、熱交換器6B~6Dについては第二実施形態~第四実施形態として順次説明することとする。
【0031】
<熱交換器>
図2には、第一実施形態に係る廃熱回収システム20において用いられる熱交換器6Aの構造説明図が示されている。
図2に示される熱交換器6Aは、複数の伝熱管31と、熱交換器6Aの本体部分を構成するケーシング32とを備えている。
【0032】
<伝熱管>
伝熱管31は、一端側(上端側)が他端側(下端側)よりも高い位置となるように鉛直方向に配置されている。なお、伝熱管31においては、一端側を他端側よりも高い位置となるように配置し、管外側表面での結露により生じた腐食性成分含有液滴が重力作用により一端側から他端側に向って伝熱管を伝って下降するという条件を満足すれば、鉛直方向に対し傾斜した状態で配置してもよく、鉛直方向に配置することに限定されるものではない。
【0033】
伝熱管31の材料としては、例えばステンレスやハステロイ、インコネル等の耐腐食金属や、例えばフッ素樹脂等の非金属材料が挙げられる。通常の焼却排ガスやボイラ排ガスでの酸露点は、高くても130~150℃程度であり、そのような条件下においては、フッ素樹脂であれば問題なく使用することができる。フッ素樹脂は、熱伝導率が大きくないため、厚みを薄くして伝熱管31における伝熱抵抗を小さく抑えれば、金属管を用いた熱交換器に比べてもそれほど大きくない伝熱面積で済ませることができ、且つ、伝熱管31の材料費を節約することができる。第一実施形態では、伝熱管31として、優れた耐腐食性を有するフッ素樹脂製チューブが採用されている。これにより、熱交換器6Aの伝熱管交換頻度を大幅に低減することができる。ここで、酸露点とは、特に、硫酸ガスが硫酸となって結露する温度(120℃程度)のことである。
【0034】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。
【0035】
伝熱管31として用いられるフッ素樹脂チューブの厚みは、0.5~2.0mmであることが好ましく、1.0~1.5mmであることがより好ましい。フッ素樹脂チューブの厚みが上記数値範囲内であれば、伝熱管31の高い伝熱性能を維持することができる。
【0036】
フッ素樹脂チューブの外径は、熱媒体が気体である場合はφ10~φ30mmであることが好ましく、φ18~φ30mmあることがより好ましい。また、熱媒体が液体である場合は、φ4~φ15mmであることが好ましく、φ8~φ13mmであることがより好ましい。外径が上記数値範囲内であれば、圧力損失の影響を受けにくく、伝熱管は良好な耐圧強度を有するものとなる。
【0037】
廃棄物焼却処理施設1の運転上、ケーシング32における後述する伝熱管収容部40に導入される排ガスの量や温度が変動することがある。熱交換器6Aにおいては、当該変動域で排ガスの量が最も少ない、及び/又は排ガスの温度が最も低い、という条件においても、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度が酸露点よりも高くなるように、伝熱管31の長さ、管径、厚さ、材質等が設定されている。さらに、第一実施形態では、伝熱管31における排ガスと接触する上部の管外側表面温度が酸露点よりも低くなるように、伝熱管31の長さ、管径、厚さ、材質等が設定されている。これにより、熱交換6Aでの熱交換時の温度差を大きく設定することができるため、熱交換の効率を向上させることができる。
【0038】
<ケーシング>
図2に示されるように、ケーシング32は、伝熱管31と直交する方向の一方側及び他方側にそれぞれ開口された箱形の伝熱管保持部35を有している。伝熱管保持部35は、複数の伝熱管31の各々の上部を保持する上側管板36と、複数の伝熱管31の各々の下部を保持する下側管板37と、上側管板36及び下側管板37の両側縁同士を連結する第一及び第二側板38(奥側の第一側板38aのみ示す。)とにより構成されている。伝熱管保持部35は、複数の伝熱管31を収容するための伝熱管収容部40を有している。伝熱管収容部40は、上側管板36、下側管板37、及び第一及び第二側板38によって区画形成されている。
【0039】
伝熱管保持部35の一方の開口側には、排ガスを導入するための漏斗状の排ガス導入部41が一体的に連設されている。排ガス導入部41は、排ガスの入口であるガス入口41aを有し、第一排ガスダクト51を介して集塵器5に接続されている。また、伝熱管保持部35の他方の開口側には、排ガスを導出するための漏斗状の排ガス導出部42が一体的に連設されている。排ガス導出部42は、排ガスの出口であるガス出口42aを有し、第二排ガスダクト52を介して誘引通風機7に接続されている。こうして、ケーシング32は、複数の伝熱管31を収容する伝熱管収容部40を有するとともに、伝熱管収容部40を挟むように伝熱管31と直角を成すように交差する方向の一方側及び他方側にそれぞれ形成されるガス入口41a及びガス出口42aを有する構成を備えるものとなる。そして、誘引通風機7の作動により、集塵器5で除塵された後の排ガスが第一排ガスダクト51及び排ガス導入部41を介して伝熱管収容部40に導入され、伝熱管収容部40に収容されている複数の伝熱管31を介して熱媒体と熱交換された後の排ガスが排ガス導出部42及び第二排ガスダクト52を介して煙突8へと送り出される。
【0040】
前述したように、熱交換器6Aにおいては、廃棄物焼却処理施設1の運転上、ケーシング32の伝熱管収容部40に導入される排ガスの量や温度が変動することがあり、当該変動域で排ガスの量が最も少ない、及び/又は排ガスの温度が最も低い、という条件においても、ガス出口42aから排出される排ガスの温度が酸露点(120℃程度)よりも高くなるように、複数の伝熱管31の内部を流れる熱媒体との熱交換量が設定されている。
【0041】
上側管板36の上面側には、複数の伝熱管31の各々の上端側開口に熱媒体を導入するための漏斗状の熱媒体導入部45が、複数の伝熱管31の上端側開口を覆うように一体的に連設されている。熱媒体導入部45は、熱媒体の入口である熱媒体入口45aを有し、第一熱媒体ダクト61を介して給水加熱器15の熱媒体出口部15b(
図1及び
図3参照)に接続されている。
【0042】
下側管板37の下面側には、複数の伝熱管31の各々の下端側開口から熱媒体を導出するための漏斗状の熱媒体導出部46が、複数の伝熱管31の下端側開口を覆うように一体的に連設されている。熱媒体導出部46は、熱媒体の出口である熱媒体出口46aを有し、第二熱媒体ダクト62を介して給水加熱器15の熱媒体入口部15a(
図1及び
図3参照)に接続されている。
【0043】
図1及び
図3に示されるように、第一熱媒体ダクト61の途中には、押込通風機50が介設されている。熱媒体導入部45(
図2参照)には、押込通風機50の作動により、給水加熱器15における熱交換部(図示省略)での復水との熱交換(加熱)に使用された後の低温の熱媒体が送り込まれ、熱媒体導入部45に送り込まれた熱媒体は、複数の伝熱管31の各々の上端側から下端側に向けて各伝熱管31の内部を流れる。なお、第一実施形態では、熱媒体として、空気を用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、空気以外に、水蒸気や、ボイラ給水、プロセス流体等を用いることができる。そして、複数の伝熱管31を介して排ガスとの熱交換により温められた後の高温の空気が熱媒体導出部46(
図2参照)、及び第二熱媒体ダクト62を介して給水加熱器15へと送り込まれ、給水加熱器15における熱交換部(図示省略)での復水との熱交換(加熱)に使用される。
【0044】
<管外側表面温度調節手段>
次に、熱交換器6Aに装備される管外側表面温度調節手段70について、
図3の概略システム構成図を用いて説明する。
図3に示されるように、管外側表面温度調節手段70は、熱媒体還流ダクト71と熱媒体還流量制御手段72とを備えている。
【0045】
<熱媒体還流路>
熱媒体還流ダクト71は、第一熱媒体ダクト61における押込通風機50の熱媒体流れ上流側と第二熱媒体ダクト62とを接続するダクトである。熱媒体還流ダクト71は、第二熱媒体ダクト62の内部に流れる熱媒体の一部を第一熱媒体ダクト61における押込通風機50の熱媒体流れ上流側に還流させるための熱媒体還流路を形成する。
【0046】
<熱媒体還流量制御手段>
熱媒体還流量制御手段72は、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度を検出する管外側表面温度検出手段73と、熱媒体還流ダクト71の途中に設けられてその回動角度に応じて熱媒体の流量を調節するバイパスダンパ74と、バイパスダンパ74を回動駆動するモータ75と、管外側表面温度検出手段73からの検出信号に基づいてモータ75を制御する制御装置76とを備えている。熱媒体還流量制御手段72においては、管外側表面温度検出手段73によって検出される伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度が酸露点よりも高くなるように、制御装置76からモータ75への駆動制御信号にてバイパスダンパ74の回動角度を調節して熱媒体還流ダクト71を流れる熱媒体の還流量を制御するようにされている。
【0047】
<管外側表面温度検出手段>
上記の管外側表面温度検出手段73としては、例えば、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度を直接検出する温度センサ77や、伝熱管31の出口(下端側開口)の熱媒体の温度を温度センサ78によって検出しその検出温度に基づいて伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度を、例えば伝熱管31の出口の熱媒体の温度と伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度との関係について予め取得されて制御装置76の記憶部に記憶されている情報を参照して、演算により求めるというものが挙げられる。ここで、温度センサ77としては、伝熱管31の管外側表面に貼着可能なものが好ましく、例えば、絶縁シート上に熱電対を形成してなるシート型熱電対が好適である。一方、温度センサ78としては、例えば、金属の被覆と一対の熱電対素線との間に無機絶縁物を充填してなるシース型熱電対が好適である。
【0048】
<作動説明>
以上に述べたように構成される熱交換器6Aを用いた廃熱回収システム20の作動について説明する。なお、以下の作動説明は、
図2に示されるように、集塵器5で除塵された後の160℃程度の排ガスが第一排ガスダクト51及び排ガス導入部41を介して伝熱管収容部40に導入され、伝熱管収容部40に収容されている複数の伝熱管31に接触する直前の排ガスの温度が150℃程度で排ガスと熱媒体との熱交換が伝熱管31を介して行われ、熱交換後の130℃程度の排ガスが排ガス導出部42及び第二排ガスダクト52を介して煙突8へと送り出されるという運転条件を前提とするものである。
【0049】
例えば、排ガスの酸露点を約120℃とし、押込通風機50から約30℃の熱媒体が第一熱媒体ダクト61を介して熱媒体導入部45に導入される場合、熱媒体導入部45に導入された熱媒体が複数の伝熱管31の各々の上端側から下端側に向けて各伝熱管31の内部を流れると、複数の伝熱管31における排ガスと接触する上部での管外側表面温度は、複数の伝熱管31を介して熱媒体と熱交換が行われる際の排ガスの温度(約110℃)と、熱媒体の温度(約30℃)との平均温度よりやや排ガス温度に近い温度となるため、80~90℃程度となる。
【0050】
図4に示されるように、酸露点(120℃)以下である管外側表面温度の範囲(
図4中記号Mで示される一点鎖線で囲まれる範囲)では、排ガスと接触する伝熱管31の管外側表面での結露と、結露により生じる液滴(腐食性成分含有液滴)の排ガスとの接触による蒸発とが同時に起こり、結露で生じる腐食性成分含有液滴と、一旦結露により生じても蒸発してしまう腐食性成分含有液滴とが共存する状態となっている。この状態において、結露により生じて残存する腐食性成分含有液滴の方が、蒸発してしまう腐食性成分含有液滴よりも増えていく温度条件下では、腐食性成分含有液滴が成長して一定の体積を超過すると、腐食性成分含有液滴の表面張力によって伝熱管31の管外側表面に対して作用している付着力よりも、腐食性成分含有液滴に作用する重力の方が大きくなる。
【0051】
伝熱管31は、鉛直方向に配置されているので、一定の体積を超過した腐食性成分含有液滴(
図4中記号Qで示す液滴)は、当該腐食性成分含有液滴に作用する重力により、鉛直下向きに伝熱管31を伝って下降することになる。このように、腐食性成分含有液滴が伝熱管31を伝って下降するため、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器6Aのケーシング32や、第二排ガスダクト52等への腐食対策を実施しなくて済むことになる。
【0052】
一方、伝熱管31の上端側から下端側に向けて伝熱管31の内部に流れる熱媒体は、伝熱管31の下端側に向うに従って排ガスとの熱交換により間接的に温められるため、伝熱管31の出口(下端側開口)の熱媒体の温度が例えば110℃程度となるように伝熱管31の長さ、管径、厚さ、材質等を設定すると、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度は露点(120℃)を超えることになる。このように、伝熱管31の管外側表面温度が露点を超えれば、新たに結露が起こらないため、伝熱管31における排ガスと接触する下部は、排ガスとの接触による腐食性成分の蒸発が支配的な雰囲気となり、この雰囲気の範囲に、伝熱管31の上端側から下端側に向って伝熱管31を伝って下降してきた腐食性成分含有液滴が入ると、腐食性成分含有液滴が蒸発することになる。従来、腐食性成分含有液滴の発生量によっては、熱交換器下流側に接続されるダクトの底部に腐食性成分含有液滴が滞留するため、滞留している腐食性成分含有液滴を回収する必要があるが、回収した腐食性成分含有液滴は強腐食性(強酸性)であるため、耐腐食性(耐酸性)を有した配管が必要になるのに加えて、中和処理等の排水処理設備が必要となり、設備費やランニングコストが嵩むという問題があった。このように従来は必要であった耐腐食性の配管や排水処理設備が不要となる。
【0053】
ところで、廃棄物焼却処理施設1の運転状況によっては、集塵器5から第一排ガスダクト51及び排ガス導入部41を介して伝熱管収容部40に導入される排ガスの量や温度が変動し、想定した変動域を超えて排ガスの量が少なくなる、及び/又は排ガスの温度が低くなることに起因して、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度が酸露点よりも低くなることがある。
【0054】
伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度が酸露点よりも低くなったことを管外側表面温度検出手段73が検出すると、制御装置76は、管外側表面温度検出手段73により検出される実際の管外側表面温度と酸露点との差分に応じて、酸露点よりも高くなるようにするために必要な熱媒体の還流量を演算し、算出した還流量に基づいてバイパスダンパ74の最適な開度を求め、求めた最適な開度となるようにバイパスダンパ74の回動角度を調整するための駆動信号をモータ75へと送信する。これにより、管外側表面温度検出手段73によって検出される実際の温度が酸露点よりも高くなるように、熱媒体還流ダクト71を流れる熱媒体の還流量が制御される。こうして、廃棄物焼却処理施設1の運転状況により排ガスの量や温度が変動して伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度が酸露点よりも低くなるような状況が生じたとしても、伝熱管31における排ガスと接触する下部の管外側表面温度を酸露点よりも高くなるように維持することができる。
【0055】
第一実施形態の廃熱回収システム20では、集塵器5の下流側に設置した熱交換器6Aによって排ガスから熱を回収し、煙突8から排出される排ガスの温度を低減することができるとともに、回収した熱を復水タンク14から給水加熱器15に導入される復水の加熱に用いることで、脱気器16での蒸気使用量を削減でき、発電設備10での発電量を増加させることができる。また、熱交換器6Aを構成する伝熱管31として、耐腐食性を有するフッ素樹脂製のチューブが用いられているので、酸露点以下となる熱交換条件であっても伝熱管31に低温腐食が起こらないため、排ガスと熱媒体との温度差を大きく設定することができ、伝熱面積を低減することができて装置のコンパクト化を図ることができる。
【0056】
なお、第一実施形態の廃熱回収システム20で用いられる熱交換器6Aにおいては、伝熱管31の上端側から下端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例を示したが、伝熱管31の下端側から上端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例もあり得る(後述する第二実施形態においても同様)。この場合、伝熱管31の下部における排ガスと接触する管外側表面の温度が露点以下になることによる結露によって生じる腐食性成分含有液滴が伝熱管31を伝って下降し、伝熱管31の下部の回りに腐食性成分含有液滴が集積するため、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器6Aのケーシング32や、第二排ガスダクト52等への腐食対策を実施しなくて済むことになる。
【0057】
また、第一実施形態の廃熱回収システム20で用いられる熱交換器6Aにおいては、伝熱管31としてフッ素樹脂製チューブが用いられる態様例を示したが、これに限定されるものではなく、伝熱管31として例えば軟鋼やステンレス等の金属製チューブの外側表面にフッ素樹脂被膜が被覆されてなるものを用いてもよい(後述する第二実施形態、第三実施形態、及び第四実施形態においても同様)。
【0058】
〔第二実施形態〕
図5には、本発明の第二実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図が示されている。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする(以下の第三実施形態及び第四実施形態においても同様)。
【0059】
第一実施形態の廃熱回収システム20では、複数の伝熱管31と、複数の伝熱管31の上端側開口に熱媒体を導入するための熱媒体導入部45と、複数の伝熱管31の下端側開口から熱媒体を導出するため熱媒体導出部46とからなる熱交換ユニット80を一つだけ備えた熱交換器6Aを用いた例を示した。第二実施形態の廃熱回収システム20では、
図5に示されるように、複数(本例では3基)の熱交換ユニット80を、排ガス流れの上流側から下流側へと並ぶようにケーシング32に配設してなる熱交換器6Bを用いている。この熱交換器6Bを用いた廃熱回収システム20においては、排ガス流れの上流側から下流側へと並ぶように配設される複数の熱交換ユニット80のそれぞれにおいて排ガスとの熱交換が行われる。この場合、排ガス流れの最上流側に配設される熱交換ユニット80での排ガスと熱媒体との熱交換量が最も大きく、排ガス流れの下流側に進むに従って熱交換ユニット80での排ガスと熱媒体との熱交換量が次第に小さくなり、排ガス流れの最下流側に配設される熱交換ユニット80での排ガスと熱媒体との熱交換量が最も小さくなる。従って、排ガスとの熱交換によって昇温された温度の異なる熱媒体が複数の熱交換ユニット80の熱媒体導出部から送り出されることになり、異なる温度域の廃熱を利用する複数の廃熱利用施設に熱交換後の昇温された熱媒体を供給することができる。
【0060】
〔第三実施形態〕
図6には、本発明の第三実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図が示されている。上述した第一実施形態及び第二実施形態の廃熱回収システム20では、排ガスの流れと熱媒体の流れとが直交する直交流式の熱交換器6A,6Bを用いた例を示したが、第三実施形態の廃熱回収システム20では、排ガスの流れと熱媒体の流れとが互いに平行で同じ向きに流れる並流式の熱交換器6Cが用いられている。
【0061】
図6に示される熱交換器6Cにおいて、ケーシング32における伝熱管保持部35は、上側管板36と、下側管板37と、上側管板36及び下側管板37の両側縁同士を連結する第一及び第二側板38(奥側の第一側板38aのみ示す。)と、上側管板36及び下側管板37の両端縁同士を連結する第三及び第四側板39により構成されている。伝熱管収容部40は、上側管板36、下側管板37、第一及び第二側板38、並びに、第三及び第四側板39によって区画形成されている。第三及び第四側板39のうち、伝熱管保持部35の一方側に配される第三側板39aには、伝熱管31の上端部近傍に対応するように開口された第一開口部48が形成され、第一開口部48には、排ガスを導入するための排ガス導入部41が一体的に連設されている。排ガス導入部41は、排ガスの入口であるガス入口41aを有し、第一排ガスダクト51を介して集塵器5に接続されている。また、伝熱管保持部35の他方側に配される第四側板39bには、伝熱管31の下端部近傍に対応するように開口された第二開口部49が形成され、第二開口部49には、排ガスを導出するための排ガス導出部42が一体的に連設されている。排ガス導出部42は、排ガスの出口であるガス出口42aを有し、第二排ガスダクト52を介して誘引通風機7に接続されている。こうして、ケーシング32は、複数の伝熱管31を収容する伝熱管収容部40を有するとともに、伝熱管31の上端部近傍に対応して伝熱管収容部40に連通するように形成されるガス入口41a、及び伝熱管31の下端部近傍に対応して伝熱管収容部40に連通するように形成されるガス出口42aを有する構成を備えるものとなる。
【0062】
以上に述べたように構成される並流式の熱交換器6Cにおいても、一定の体積を超過した腐食性成分含有液滴が重力作用により、鉛直下向きに伝熱管31を伝って下降することになるため、上述した熱交換器6Aと同様に、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器6Cのケーシング32や、第二排ガスダクト52等への腐食対策を実施しなくて済むことになる。
【0063】
なお、上記の熱交換器6Cにおいては、伝熱管31の上端側から下端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例を示したが、伝熱管31の下端側から上端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例もあり得る。この場合、伝熱管31の下部における排ガスと接触する管外側表面の温度が露点以下になることによる結露によって生じる腐食性成分含有液滴が伝熱管31を伝って下降し、伝熱管31の下部の回りに腐食性成分含有液滴が集積するため、腐食性成分含有液滴が飛散するのを防ぐことができ、熱交換器6Aのケーシング32や、第二排ガスダクト52等への腐食対策を実施しなくて済むことになる。
【0064】
〔第四実施形態〕
図7には、本発明の第四実施形態に係る廃熱回収システムにおいて用いられる熱交換器の縦断面図が示されている。上述した第三実施形態の廃熱回収システム20では、排ガスの流れと熱媒体の流れとが互いに平行で同じ向き流れる並流式の熱交換器6Cを用いた例を示したが、第四実施形態の廃熱回収システム20では、排ガスの流れと熱媒体の流れとが互いに平行で対向するように流れる対向流式の熱交換器6Dが用いられている。なお、熱交換器6Dにおいて、上記の熱交換器6Cと同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略する。
【0065】
図7に示される熱交換器6Dにおいて、第三及び第四側板39のうち、伝熱管保持部35の一方側に配される第三側板39aには、伝熱管31の下端部近傍に対応するように開口された第一開口部48が形成され、第一開口部48には、排ガスを導入するための排ガス導入部41が一体的に連設されている。排ガス導入部41は、排ガスの入口であるガス入口41aを有し、第一排ガスダクト51を介して集塵器5に接続されている。また、伝熱管保持部35の他方側に配される第四側板39bには、伝熱管31の上端部近傍に対応するように開口された第二開口部49が形成され、第二開口部49には、排ガスを導出するための排ガス導出部42が一体的に連設されている。排ガス導出部42は、排ガスの出口であるガス出口42aを有し、第二排ガスダクト52を介して誘引通風機7に接続されている。こうして、ケーシング32は、複数の伝熱管31を収容する伝熱管収容部40を有するとともに、伝熱管31の下端部近傍に対応して伝熱管収容部40に連通するように形成されるガス入口41a、及び伝熱管31の上端部近傍に対応して伝熱管収容部40に連通するように形成されるガス出口42aを有する構成を備えるものとなる。
【0066】
以上に述べたように構成される対向流式の熱交換器6Dを用いた廃熱回収システム20によっても、上記の熱交換器6Cを用いた廃熱回収システム20と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
なお、上記の熱交換器6Dにおいては、伝熱管31の上端側から下端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例を示したが、伝熱管31の下端側から上端側に向けて伝熱管31の内部に熱媒体を流す態様例もあり得るのは、前述した熱交換器6Cの場合と同様である。
【0068】
以上、本発明の廃熱回収システムについて、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の廃熱回収システムは、例えば、都市ごみ焼却施設や、下水やし尿の汚泥焼却施設、木質チップ等のバイオマス燃料の焼却施設、その他の焼却施設等での廃棄物等の焼却処理に伴い発生する腐食性成分を含有する排ガスから廃熱を回収する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 廃棄物焼却処理施設
6A~6D 熱交換器
20 廃熱回収システム
31 伝熱管
32 ケーシング
40 伝熱管収容部
41 排ガス導入部
41a ガス入口
42 排ガス導出部
42a ガス出口
45 熱媒体導入部
45a 熱媒体入口
46 熱媒体導出部
46a 熱媒体出口
70 管外側表面温度調節手段
71 熱媒体還流路
72 熱媒体還流量制御手段
73 管外側表面温度検出手段
80 熱交換ユニット