IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特許-可搬型打撃装置 図1
  • 特許-可搬型打撃装置 図2
  • 特許-可搬型打撃装置 図3
  • 特許-可搬型打撃装置 図4
  • 特許-可搬型打撃装置 図5
  • 特許-可搬型打撃装置 図6
  • 特許-可搬型打撃装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】可搬型打撃装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
E04G21/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018239558
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101006
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 純平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-031709(JP,A)
【文献】特開2017-190567(JP,A)
【文献】実開昭58-133407(JP,U)
【文献】特開平05-156811(JP,A)
【文献】特開昭62-264259(JP,A)
【文献】特開2005-256460(JP,A)
【文献】特開昭56-000649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-25/08
B28B 1/00- 1/54
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠を打撃するように作動可能な打撃部と、
前記打撃部を作動させる駆動部と、
前記打撃部及び前記駆動部を支持するケースを備え、作業者が携帯可能かつ前記コンクリート型枠の外面に押し付けられるハウジングと、
前記打撃部により前記コンクリート型枠を打撃したときの前記ハウジングに加わる振動を検出する加速度センサと、
前記加速度センサからの信号に基づいて、前記コンクリート型枠の外面を前記打撃部が打撃している位置がコンクリートの上端付近であるか否かを判定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記打撃部の打撃位置が前記コンクリートの上端付近であると判定したときに、前記打撃部による前記コンクリート型枠への打撃を一定時間継続する打撃制御を設定する、可搬型打撃装置。
【請求項2】
請求項1記載の可搬型打撃装置において、
前記駆動部は、前記ケース内に固定された支持フレームに取り付けられたシリンダと、前記シリンダ内に設けられたコイルとを備えたソレノイドにより構成され、
前記打撃部は、中心線に沿う方向に往復動自在に設けられたプランジャと、前記プランジャの先端に固定され、前記ソレノイドの磁気吸引力により前記コンクリート型枠を打撃するハンマとを、有し、
前記ハンマが前記コンクリート型枠から離れる方向に前記プランジャに付勢する付勢部材を前記駆動部に設けた、可搬型打撃装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の可搬型打撃装置において、
前記コントローラは、前記コンクリート型枠の外面を前記打撃部が打撃している位置がコンクリートの上端付近であるとき、前記上端付近よりも上の位置であるとき、および前記上端付近よりも下の位置であるときのそれぞれにおける前記ハウジングの振動数を記憶する記憶部を有し、
前記コントローラは、前記加速度センサにより検出された前記ハウジングの振動数と、前記コンクリート型枠の外面位置に応じて前記記憶部に記憶された振動数との関係により、前記コンクリート型枠の外面を前記打撃部が打撃している位置がコンクリートの上端付近であると判断する、可搬型打撃装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の可搬型打撃装置において、
前記駆動部に対して電気的に接続された電源が、更に設けられ、
前記駆動部は、前記電源から電流が印加されると前記打撃部を作動させ、前記電源からの電流が遮断されると前記打撃部を停止させる、可搬型打撃装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の可搬型打撃装置において、
前記コントローラにより制御される出力部を有し、
前記出力部は、前記打撃部が前記コンクリート型枠の外面を打撃している位置がコンクリートの上端付近であるときに、打撃位置が良好であることを示すランプを点灯する、可搬型打撃装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の可搬型打撃装置において、
前記打撃部が停止している状態で前記コンクリート型枠に接触して、前記打撃部と前記コンクリート型枠との距離を保持するスペーサが、更に設けられている、可搬型打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠を打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、コンクリートと型枠との間に存在する気泡、または、コンクリート内部に存在する気泡を除去する作業に用いる可搬型打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
型枠内にコンクリート打設すると、コンクリート内部、または、型枠とコンクリートとの間に気泡が残留する。このため、コンクリートの打設後に、作業者が型枠の表面を打撃装置で打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、気泡を取り除く作業を行っている。この作業を行うと、型枠除去後において、コンクリート表面に“あばた”と呼ばれる気泡痕が残る割り合いが低下し、コンクリート表面の仕上がり、美観が向上する。このように、型枠の表面を打撃する可搬型打撃装置の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された可搬型打撃装置は、本体部、円筒シリンダ、ピストン、把持部、打撃部、ピストン、プラグ、操作レバー、バネを有する。把持部は本体部に接続されている。プラグは把持部に取り付けられている。円筒シリンダは、本体部に設けられ、ピストンは、円筒シリンダ内で作動可能である。円筒シリンダはプラグに接続されている。プラグはエアホースを介して圧縮空気供給装置に接続される。エアホースから円筒シリンダに至る経路にバルブが設けられている。操作レバーは把持部に設けられている。操作レバーはバルブを開閉する。バネは本体部に取り付けられている。
【0004】
作業者が操作レバーに操作力を付加していないと、バルブは閉じられており円筒シリンダに圧搾空気は供給されない。また、打撃部はバネの力で初期位置に停止している。作業者が操作レバーを操作するとバルブが開き、圧縮空気供給装置から円筒シリンダに圧搾空気が供給され、ピストンが作動する。すると、打撃部は、ピストンの作動力でバネの力に抗して作動し、打撃部が型枠を打撃する。ピストンが作動すると排気孔が開き、円筒シリンダ内の圧搾空気は、排気孔から本体の外部に排出される。打撃部は、型枠を打撃した後にバネの力で作動し、打撃部は初期位置で停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-271877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
型枠を打撃して気泡を除去する場合、打設したコンクリートの深さ方向において、コンクリートの上端に対応する位置で型枠を打撃すると、気泡を有効に除去できることが、経験的に知られている。本願発明者は、特許文献1に記載された可搬型打撃装置を用いると、コンクリートの上端と、打撃部で型枠を打撃している位置との位置関係が分かりにくい、という課題を認識した。
【0007】
本発明の目的は、コンクリートの上端と、打撃部が型枠を打撃する打撃位置との位置関係を検出可能な可搬型打撃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の可搬型打撃装置は、コンクリート型枠を打撃するように作動可能な打撃部と、前記打撃部を作動させる駆動部と、前記打撃部及び前記駆動部を支持するケースを備え、作業者が携帯可能かつ前記コンクリート型枠の外面に押し付けられるハウジングと、前記打撃部により前記コンクリート型枠を打撃したときの前記ハウジングに加わる振動を検出する加速度センサと、前記加速度センサからの信号に基づいて、前記コンクリート型枠の外面を前記打撃部が打撃している位置がコンクリートの上端付近であるか否かを判定するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記打撃部の打撃位置が前記コンクリートの上端付近であると判定したときに、前記打撃部による前記コンクリート型枠への打撃を一定時間継続する打撃制御を設定する
【発明の効果】
【0009】
本発明の可搬型打撃装置は、コンクリートの上端と、打撃部が型枠を打撃する打撃位置との位置関係を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の可搬型打撃装置を用いて、コンクリート型枠を打撃する模式的な断面図である。
図2】可搬型打撃装置の本体部と電源とを、電力ケーブルで接続した使用形態を示す模式図である。
図3】可搬型打撃装置の構造例を示す断面図である。
図4】可搬型打撃装置の制御系統を示すブロック図である。
図5】(A)、(B)及び(C)は、可搬型打撃装置におけるハンマの形状例を示す図である。
図6】可搬型打撃装置で行う制御例を示すフローチャートである。
図7】可搬型打撃装置の本体部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の可搬型打撃装置のいくつかの実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
建築物の工事現場では、図1のようなコンクリート型枠(以下、型枠と記載する)10を地面に固定した後、型枠10で取り囲まれた空間にコンクリート11を打設する。図2に示す可搬型打撃装置12は、型枠10を外面から打撃して、型枠10とコンクリート11との間に存在する気泡を除去するものである。
【0013】
可搬型打撃装置12は、本体部13、電源14及び電力ケーブル15を有する。電力ケーブル15は、本体部13と電源14とを電気的に接続している。本体部13の構造例を、図3及び図4を参照して説明する。本体部13は、ハウジング36、打撃部16、コントローラ17、スイッチ回路18、ソレノイド19、加速度センサ20、付勢部材21、入力部22、出力部23及びトリガ24を有する。
【0014】
ハウジング36は、一例として金属製または合成樹脂製であり、作業者はハウジング36を携帯可能である。ハウジング36は、筒形状のケース25と、ケース25に接続されたグリップ26と、を有する。金属製の支持フレーム27が、ケース25内に固定されている。ソレノイド19は、シリンダ28及びコイル29を有する。シリンダ28は支持フレーム27に取り付けられている。コイル29はシリンダ28内に設けられている。コイル29は、導電線を巻いたものである。
【0015】
打撃部16は、ハンマ30及びプランジャ31を有する。ハンマ30の材質は、金属製、一例としてステンレス製である。プランジャ31は、磁性材料製、一例として、鉄製である。プランジャ31の端部にハンマ30が固定されている。図5は、ハンマ30の形状例である。ハンマ30は、図5(A)のように全体を円柱形状とし、ハンマ30の先端形状を半球形状にすることが可能である。なお、ハンマ30は、図5(B)のように全体が球形状、図5(C)のように円柱形状でもよい。
【0016】
図3に示す打撃部16は、ケース25に対して中心線A1に沿って、第1方向B1及び第2方向B2に作動可能に設けられている。ケース25は、打撃部16を支持している。第1方向B1と第2方向B2とは、互いに逆向きである。ケース25において中心線A1に沿った方向の端部36Aに、開口部32が設けられている。開口部32は、ケース25の内部と外部とを接続する。開口部32は、中心線A1を中心として設けられている。
【0017】
プランジャ31の外周面に、ストッパ33及びフランジ34が設けられている。ストッパ33とフランジ34とは、中心線A1に沿った方向に間隔をおいて配置されている。付勢部材21は、ケース25内に設けられている。付勢部材21は、中心線A1に沿った方向で、フランジ34とシリンダ28との間に配置されている。付勢部材21は、一例として金属製のスプリングであり、中心線A1に沿った方向に伸縮可能である。付勢部材21は、打撃部16を中心線A1に沿って第2方向B2に付勢する。
【0018】
このため、コイル29への電流が遮断されていると、打撃部16は付勢部材21の力で第2方向B2で付勢され、ストッパ33がシリンダ28に接触し、打撃部16が初期位置で停止する。打撃部16が初期位置に停止していると、ハンマ30の全体は、中心線A1に沿った方向で、ケース25内に位置する。
【0019】
これに対して、ソレノイド19は、コイル29へ電流が供給されると起動して磁気吸引力を形成する。すると、初期位置に停止している打撃部16は、中心線A1に沿って第1方向B1で付勢される。ケース25の端部36Aが型枠10から離間している状態で、打撃部16が初期位置から第1方向B1で作動すると、ハンマ30の先端30Aは、開口部32を通過してケース25の外部へ露出する。
【0020】
さらに、打撃部16が第1方向B1で作動した後、コイル29に電流が供給されなくなると、打撃部16は付勢部材21の力で第2方向B2で作動し、ストッパ33がシリンダ28に接触して打撃部16が初期位置で停止する。
【0021】
図4に示すトリガスイッチ35がグリップ26に設けられている。作業者がトリガ24に操作力を付加するとトリガスイッチ35がオンし、作業者がトリガ24に対する操作力を解除するとトリガスイッチ35がオフする。
【0022】
加速度センサ20は、図3のように、一例として、支持フレーム27に取り付けるか、または、ケース25の内面に取り付けられている。加速度センサ20は、ハウジング36の振動数、具体的には中心線A1に沿った方向におけるハウジング36の振動回数を検出して信号を出力する。加速度センサ20は、一例として、静電容量方式、ピエゾ抵抗方式、渦電流方式、圧電素子方式の何れかを用いることが可能である。
【0023】
入力部22は、一例としてケース25の外面に設けられている。作業者は、入力部22を操作することにより、打撃部16が作動する周波数、打撃部16により型枠10を打撃させる実行時間を、任意に変更及び設定可能である。打撃部16が作動する周波数、及び、打撃部16により型枠10を打撃する打撃制御の実行時間は、後述する。出力部23は、一例として、ケース25の外面に設けられている。作業者は出力部23を認識可能、具体的には目視可能である。出力部23は、色が異なる複数の発光ダイオードランプを含む。複数の発光ダイオードランプは、電源14から電流が印加されて点灯する。出力部23として発光ダイオードランプを用いる場合、図3に示すケース25の中心線A1に沿った方向で、開口部32とは反対の位置に出力部23を設けることが可能である。
【0024】
スイッチ回路18は、一例としてケース25内に設けられている。スイッチ回路18は、電源14とソレノイド19とを電気的に接続及び遮断する。スイッチ回路18は、一例として、複数の半導体スイッチを有する。複数の半導体スイッチは、それぞれ単独でオン及びオフが可能である。
【0025】
コントローラ17は、一例としてケース25内に設けられている。コントローラ17は、入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理部、記憶部、タイマー等を備えたマイクロコンピュータである。
【0026】
コントローラ17は、トリガスイッチ35の信号、入力部22の信号及び加速度センサ20の信号を処理し、かつ、スイッチ回路18及び出力部23を制御する。記憶部には、打撃部16が作動する周波数を変更及び設定するデータ、打撃制御の実行時間を変更及び設定するデータ、打撃部16の位置を検出するためのデータ等が、予め記憶されている。打撃部16の位置の意味は、後述する。
【0027】
次に、可搬型打撃装置12の使用例、及びコントローラ17が行う制御例を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
まず、作業者は、ステップS10において入力部22を操作し、打撃部16が作動する周波数、打撃制御の実行時間を設定する。打撃部16が作動する周波数は、例えば、前回、ソレノイド19に対する電流の供給を停止した時点から、今回、ソレノイド19に対する電流の供給を停止する時点までを1周期とした場合において、所定時間内における周期の回数である。
【0029】
打撃制御の実行時間は、ソレノイド19に対する電流の供給と停止とを交互に繰り返し、打撃部16を第1方向B1及び第2方向B2で交互に作動させる制御の継続時間である。作業者がステップS10において設定する“打撃部16が作動する周波数”及び“打撃制御の実行時間”は、コントローラ17が、型枠10に対する打撃部16の打撃位置を検出した後に、コントローラ17がスイッチ回路18を制御する場合に用いる。
【0030】
また、コントローラ17は、ステップS10において、トリガスイッチ35のオフを検出しており、打撃部16を停止させている。具体的に説明すると、コントローラ17はスイッチ回路18をオフさせ、電源14からソレノイド19への電流を遮断している。このため、打撃部16は付勢部材21の力で第2方向B2で付勢され、打撃部16は、図3に示すように、ストッパ33がシリンダ28に接触して初期位置で停止している。
【0031】
ステップS11で作業者が、ケース25の端部36Aを図3のように型枠10の表面10Aに押し付け、かつ、コントローラ17がトリガスイッチ35のオンを検出すると、コントローラ17は、ステップS12において、打撃制御を開始し、打撃部16を往復作動、つまり、第1方向B1及び第2方向B2で作動させる。打撃部16が第1方向B1で作動すると、ハンマ30が型枠10の表面10Aを打撃する。図3の例では、ハンマ30が型枠10の表面10Aを打撃する中心線A1は、表面10Aに対して90度である。
【0032】
打撃部16が第2方向B2で作動すると、ハンマ30が型枠10の表面10Aから離間する。打撃制御は、“スイッチ回路18のオンとオフとを交互に切り替えて、ソレノイド19に対する電流の供給と、ソレノイド19に対する電流の遮断とを交互に繰り返すこと”である。コントローラ17がステップS12の制御を行う基準となる“打撃部16が作動する周波数”は、予め記憶部に記憶されている。
【0033】
上記のように、打撃部16が作動してハンマ30が型枠10の表面10Aを打撃すると、型枠10の振動はハウジング36に伝達される。また、ハンマ30が型枠10を打撃した際の反力は、付勢部材21及び支持フレーム27を介してハウジング36に伝達される。このように、ハンマ30が型枠10を打撃すると、ハウジング36が振動する。
【0034】
コントローラ17は、ステップS13において、ハンマ30が型枠10を打撃している位置が、図1に示すコンクリート11の上端11A付近であるか否かを判断する。ハンマ30が型枠10を打撃している位置は、打設したコンクリート11の深さ方向における位置であり、図1では上下方向における位置である。
【0035】
コントローラ17は、ステップS13の判断を行うために、次の処理を行う。コントローラ17は、加速度センサ20の信号を処理することにより、所定時間内におけるハウジング36の振動数を検出する。例えば、ハウジング36が所定位置から第2方向B2で振動し、次いで、第1方向B1で振動して所定位置に戻る1周期の振動を、ハウジング36の振動数“1”として処理する。
【0036】
また、コントローラ17は、所定時間内におけるハウジング36の振動数に基づいて、ハンマ30が型枠10を打撃している位置を判断する。コントローラ17の記憶部は、所定時間内に検出されるハウジング36の振動数と、型枠10をハンマ30が打撃している位置との関係を示すデータを記憶している。このデータは、予め、実験またはシミュレーションを行って求めたものである。
【0037】
このデータは、所定時間内におけるハウジング36の振動数が所定範囲内であると、ハンマ30が打撃している位置が、図1に示すコンクリート11の上端11Aに対応する位置P1であることを定めている。また、データは、ハウジング36の振動数が所定範囲より低くなると、ハンマ30が打撃している位置が、位置P1よりも上の位置P2であることを定めている。さらに、データは、ハウジング36の振動数が所定範囲より高くなると、ハンマ30が打撃している位置が、位置P1よりも下の位置P3であることを定めている。
【0038】
ここで、所定時間は、例えば、1分~2分であり、振動数の所定範囲は、例えば、20~30Hzである。コントローラ17は、検出したハウジング36の振動数及びデータに基づいて、図1に示すコンクリート11の上端11Aの位置と、ハンマ30が型枠10を打撃している位置と位置関係を検出する。
【0039】
コントローラ17は、ステップS13でNoと判断すると、ステップS14において、ハンマ30が型枠10を打撃する位置の変更を推奨することを出力部23で表示させ、ステップS11に進む。出力部23が発光ダイオードランプを有すると、コントローラ17は、打撃位置を上方に変更させるランプを点灯させるか、または、打撃位置を下方に変更させるランプを点灯させる。
【0040】
コントローラ17は、ステップS13でYesと判断すると、ステップS15において、ハンマ30が図1に示す位置P1を打撃していることを、出力部23で表示させる。出力部23が発光ダイオードランプを有する場合、ハンマ30が打撃している位置が良好であることを示すランプを点灯する。さらに、コントローラ17は、ステップS15において、ソレノイド19に対して電流を供給及び停止する打撃制御を継続させる。
【0041】
コントローラ17は、ステップS10で入力部22の操作により設定された周波数及び実行時間に基づいて、ステップS15で行う打撃制御を継続する。コントローラ17は、例えば、ソレノイド19へ電流を供給する時間を60msecとし、ソレノイド19への電流を遮断する時間を210msecとする打撃制御を実行する。ソレノイド19に対して、前回、電流の供給が遮断された時点から、ソレノイド19に今回、電流の供給が遮断されるまでの1周期の時間は、270msecである。
【0042】
さらに、コントローラ17は、打撃時間のタイマーをスタートさせ、かつ、コンクリート11の締固めが未完であることを示す発光ダイオードランプ、例えば、赤色のランプを点灯させる。なお、コントローラ17がステップS15で行う打撃制御は、作業者がステップS10で設定した打撃部16の周波数に応じたものである。
【0043】
コントローラ17は、ステップS16において、タイマーがスタートした時点から、打撃時間が経過したか否かを判断する。コントローラ17がステップS16の判断に用いる打撃時間は、作業者がステップS10で設定したものである。なお、打撃時間は、例えば、打撃部16の作動が10周期繰り返される時間に設定される。コントローラ17は、ステップS16においてNoと判断すると、ステップS16の判断を繰り返す。
【0044】
コントローラ17は、ステップS16においてYesと判断すると、出力部23においてコンクリート11の締固めが完了したことを表すランプ、例えば、緑色のランプを点灯させる。また、コントローラ17は、設定されている打撃時間をステップS17でリセットし、かつ、打撃制御を終了させる。つまり、ソレノイド19に対する電力の供給を停止させる。作業者は、出力部23を目視してコンクリート11の締固めが完了したことを認識すると、ステップS18でケース25を型枠10から離間させ、かつ、トリガ24に対する操作力を解除し、図6の制御例を終了する。
【0045】
このように、作業者が可搬型打撃装置12を用いて、ハンマ30で型枠10を打撃して気泡を取り除く作業を行う。また、コントローラ17は、コンクリート11の上端11Aに対応する位置P1と、ハンマ30が型枠10を打撃する位置との位置関係を検出し、かつ、出力部23で表示する。作業者は、型枠10のうち、コンクリート11の上端11Aに対応する位置P1をハンマ30で打撃させることが可能である。このため、コンクリート11と型枠10との間に存在する気泡を有効に除去できることができる。したがって、型枠除去後におけるコンクリート11の表面の気泡痕、つまり、あばたを抑制でき、コンクリート11の表面の仕上がり、美観が向上する。
【0046】
さらに、打撃部16が初期位置で停止し、かつ、ケース25の端部36Aを型枠10に押し付けると、図3のように、ハンマ30の先端30Aと、型枠10の表面10Aとの間に、一定の距離を保持できる。先端30Aと表面10Aとの距離は、中心線A1に沿った方向の距離である。
【0047】
さらに、図5(A)及び図5(B)に示す形状のハンマ30は、先端30Aが半球状であるため、型枠10に打撃痕が残りにくい。
【0048】
図7は、本体部13の他の例である。打撃部16が初期位置に停止している状態で、ハンマ30の全部及びプランジャ31の一部が、ケース25の外部に位置する。ケース25の外部にスペーサ37が取り付けられている。スペーサ37は、一例として金属製である。スペーサ37は、中心線A1に沿った方向に配置された棒部材である。打撃部16が初期位置に停止している状態において、ハンマ30は、中心線A1に沿った方向で、スペーサ37の先端37Aとケース25との間に位置する。ハウジング36の内部構造は、図3に示すハウジング36の内部構造と同じである。
【0049】
作業者がスペーサ37の先端37Aを押し付け、かつ、打撃部16が第1方向B1及び第2方向B2で作動し、ハンマ30が型枠10の表面10Aを打撃する。
【0050】
更に、中心線A1と直線D1との間に打撃角度θ1が形成される。直線D1は、表面10Aに対して垂直である。打撃角度θ1は、中心線A1と直線D1との間に形成される鋭角側の角度である。作業者が、打撃角度θ1を、例えば、20度に設定すると、打撃部16が第1方向B1に作動するときの加速度が増加し易く、かつ、プランジャ31の負荷を軽減可能である。
【0051】
実施形態で開示した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。可搬型打撃装置12は、可搬型打撃装置の一例である。打撃部16は、打撃部の一例である。コントローラ17、ソレノイド19及び付勢部材21は、駆動部の一例である。本体部13は、本体部の一例である。上端11Aは、“コンクリートの上端”の一例である。位置P1,P2,P3は、“打撃部の打撃位置”の一例である。コントローラ17及び加速度センサ20は、検出部の一例である。
【0052】
所定時間内におけるハウジング36の振動数は、“本体部の振動状態”の一例である。出力部23は、出力部の一例である。電源14は、電源の一例である。電力ケーブル15は、電力ケーブルの一例である。図3に示すハウジング36、図7に示すスペーサ37は、それぞれ接触部の一例である。
【0053】
可搬型打撃装置は、開示した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、打撃部16を作動させる駆動部の一部であるアクチュエータは、ソレノイド19に代えて、空気モータ、油圧モータ、電動モータの何れかを用いることも可能である。
【0054】
また、出力部23は、発光ダイオードランプに代えて、液晶ディスプレイまたはスピーカを有していてもよい。液晶ディスプレイは、電源14から電流が印加されて動作する。出力部23が液晶ディスプレイを有する場合、コントローラ17は、ステップS14において、液晶ディスプレイで、“打撃位置を上方に変更してください”または“打撃位置を下方に変更してください”と文字で表示させる。コントローラ17は、ステップS15において、液晶ディスプレイで“ハンマが打撃している位置が適切”と、文字で表示させる。また、コントローラ17は、ステップS15において、液晶ディスプレイに“コンクリートの締固めは未完です”と、文字で表示させる。
【0055】
スピーカは、電源14から電流が印加されて動作する。出力部23がスピーカを有する場合、コントローラ17は、ステップS14において、スピーカから“打撃位置を上方に変更してください”または“打撃位置を下方に変更してください”と音声で出力させる。コントローラ17は、ステップS15において、スピーカで“ハンマが打撃している位置が適切”と、音声で出力させる。また、コントローラ17は、ステップS15において、スピーカで“コンクリートの締固めは未完です”と、音声で出力させる。
【0056】
なお、コントローラ17は、打撃制御の実行時間、または打撃動作の周波数の何れか一方を、固定値として記憶部に記憶していてもよい。この場合、コントローラ17は、図6のステップS10をスキップする。そして、コントローラ17は、予め記憶部に記憶している周波数の固定値に基づいてステップS15の制御を行い、打撃時間の固定値に基づいて、ステップS16の判断を行う。さらに、コントローラ17がステップS17で打撃制御を停止させず、ステップS18でトリガスイッチ35がオフした時点で、コントローラ17が打撃制御を停止させることも可能である。
【0057】
また、トリガスイッチ35は、オン・オフのみならず、トリガ24の操作量を検出して信号を出力する構成でもよい。そして、コントローラ17は、ステップS12またはステップS15の少なくとも一方で、打撃制御を行う場合に、トリガスイッチ35で検出されるトリガ24の操作量に応じて、打撃部16が作動する周波数を設定可能である。具体的には、トリガ24の操作量が増加することに伴い、周波数を増加させる。
【0058】
さらに、コントローラ17は、電源14に設けることも可能である。また、電源14は、直流電源または交流電源の何れでもよい。電源14が直流電源である場合、電力ケーブル15を設けることなく、ハウジング36に直接、取り付け及び取り外しが可能であってもよい。直流電源は、充電及び放電を複数回し行うことの可能な二次電池、充電及び放電を1回行うことの可能な一次電池の何れでもよい。
【0059】
さらに、電源14に電力ケーブル15を着脱できるソケットを複数設け、複数の本体部13を、それぞれ異なる電力ケーブル15を介して電源14に接続可能である。この場合、複数の本体部13のそれぞれにコントローラが設けられていると、それぞれの本体部13の入力部で入力する打撃時間及び打撃部16の周波数は、全ての本体部13で同じでもよいし、少なくとも何れか1つの本体部13が異なっていてもよい。
【0060】
また、コントローラ17を電源14に設け、このコントローラ17で複数の本体部13のアクチュエータを全て制御することも可能である。この場合、それぞれの本体部13の入力部で入力する打撃時間及び打撃部16の周波数を、全ての本体部13で同時にすることが可能である。
【0061】
さらに、電源14は、作業者が肩に掛けたり、背中に背負ったり、腰に装着したりするベルト用の可搬型の電源14の他、据え置き型の電源であってもよい。据え置き型の電源に、単数の本体部または複数の本体部を接続可能である。
【0062】
さらに、スペーサ37が型枠10に押し付けられたか否かを検出する押し付けスイッチを設け、トリガ24及びトリガスイッチ35を設けないことも可能である。スペーサ37が型枠10に押し付けられると、押し付けスイッチがオンし、スペーサ37が型枠10から離間すると、押し付けスイッチがオフする。そして、コントローラ17は、図6のステップS11で押し付けスイッチがオンすると、ステップS12の制御を行う。また、コントローラ17は、ステップS18で押し付けスイッチがオフすると、図6の制御例を終了する。
【0063】
さらに、加速度センサ20でハウジング36の振幅を検出し、コントローラ17は、振幅に基づいて、ハンマ30が打撃している位置を判断することも可能である。コントローラ17は、振幅とハンマ30が打撃している位置との関係を定めたデータを記憶している。このデータは、振幅が所定範囲であると、ハンマ30が打撃している位置が、コンクリート11の上端11Aに対応する位置P1であることを定めている。また、データは、振幅が所定範囲を超えていると、ハンマ30が打撃している位置が、コンクリート11の上端に対応する位置P1よりも上の位置P2であることを定めている。さらに、データは、振幅が所定範囲未満であると、ハンマ30が打撃している位置が、位置P1よりも下の位置P3であることを定めている。
【0064】
さらに、図5(A)に示す重心移動機構38を、ハンマ30及びプランジャ31に亘って設けることも可能である。重心移動機構38は、収容室39、ガイドシャフト40及びウェイト41を有する。ガイドシャフト40及びウェイト41は、収容室39に設けられている。ガイドシャフト40の中心線は、中心線A1と共通であり、ガイドシャフト40は、金属製または合成樹脂製である。ガイドシャフト40は、ハンマ及びプランジャ31に固定されている。ウェイト41は金属製であり、ガイドシャフト40に対して中心線A1に沿った方向に移動可能、具体的には往復移動が可能に取り付けられている。
【0065】
ハンマ30が中心線A1に沿って第1方向B1で作動すると、ハンマ30の作動タイミングよりも遅れてウェイト41が第1方向B1で移動する。言い換えると、打撃部16の重心が移動し、ハンマ30は、型枠10の表面10Aを2回打撃することになる。このため、ハンマ30から型枠10に加わる打撃力が増加する。なお、ウェイト41をボールまたは円柱形状とし、収容室39の内面を円柱形状にすれば、ガイドシャフト40を設けることなく、ウェイト41がハンマ30に対して中心線A1に沿った方向に移動可能になる。さらに、重心移動機構38は、図5(B)に示すハンマ30及びプランジャ31、または、図5(C)に示すハンマ30及びプランジャ31に亘って設けることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…型枠(コンクリート型枠)、12…可搬型打撃装置、13…本体部、14…電源、15…電力ケーブル、16…打撃部、17…コントローラ(駆動部、検出部)、19…ソレノイド(駆動部)、20…加速度センサ(検出部)、21…付勢部材(駆動部)、23…出力部、36…ハウジング(本体部)、37…スペーサ、P1,P2,P3…位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7