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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】打撃装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
E04G21/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018239559
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101007
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 純平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-031709(JP,A)
【文献】特開2017-190567(JP,A)
【文献】実開昭58-133407(JP,U)
【文献】特開平05-156811(JP,A)
【文献】特開昭62-264259(JP,A)
【文献】特開2005-256460(JP,A)
【文献】特開昭56-000649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-25/08
B28B 1/00- 1/54
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠を打撃可能な作動部を備えた複数の打撃部と、
前記打撃部を前記コンクリート型枠に取り付け及び取り外し可能に保持する保持部と、
コントローラとを有し、
前記打撃部は、前記作動部を駆動するソレノイドを支持するケースが設けられたハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記作動部により前記コンクリート型枠を打撃したときの前記ハウジングに加わる振動を検出する加速度センサと、を有し、
前記コントローラは、それぞれの前記加速度センサからの信号に基づいて、前記コンクリート型枠の外面を前記作動部が打撃している位置と、前記コンクリート型枠に打設されたコンクリートの上端との位置関係を検出し、
複数の前記打撃部のうちのいずれかの作動部による打撃位置が前記コンクリートの上端に最も近い位置にあると判断したときに、最も近い位置にあると判断した作動部により前記コンクリート型枠への打撃を一定時間継続する打撃制御を行う、打撃装置。
【請求項2】
請求項1記載の打撃装置において、
いずれか前記打撃部の作動部が作動しているときには、その他の前記打撃部の作動部を停止させる、打撃装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の打撃装置において、
前記ソレノイドは、前記ハウジングに固定された支持フレームに取り付けられるシリンダと、前記シリンダ内に設けられたコイルとを備え、
前記作動部は、中心軸に沿う方向に往復動自在に設けられたプランジャと、前記プランジャの先端に固定され、前記ソレノイドの磁気吸着力により前記コンクリート型枠を打撃するハンマとを備え、
前記ハンマが前記コンクリート型枠から離れる方向に前記プランジャに付勢する付勢部材を前記作動部に設けた、打撃装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の打撃装置において、
前記コントローラは、前記コンクリート型枠の外面を前記作動部が打撃している位置と前記ハウジングの振動数との関係を記憶する記憶部を有し、
前記コントローラは、前記加速度センサにより検出された前記ハウジングの振動数と、前記コンクリート型枠の外面位置に応じて前記記憶部に記憶された振動数と比較することにより、前記コンクリート型枠の外面を前記作動部が打撃している位置がコンクリートの上端に最も近い位置であると判定する、可搬型打撃装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の打撃装置において、
前記コントローラが検出した前記コンクリートの上端と前記打撃位置との位置関係を、作業者が認識可能に出力する出力部を有する、打撃装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の打撃装置において、
前記コンクリート型枠は、
前記コンクリートに接触する板材と、
前記板材を支持する複数の支柱と、
を有し、
前記複数の支柱に接触して配置され、かつ、前記板材を貫通して配置される棒部材を固定するサポート部材が、更に設けられ、
前記保持部は、前記板材と前記サポート部材との間に挟持される、打撃装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項記載の打撃装置において、
前記保持部は、前記コンクリート型枠または前記コンクリート型枠に取り付けられている部材に着脱されるクランプである、打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠を打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、コンクリートと型枠との間に存在する気泡、または、コンクリート内部に存在する気泡を除去する作業に用いる打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
型枠内にコンクリート打設すると、コンクリート内部、または、型枠とコンクリートとの間に気泡が残留する。このため、コンクリートの打設後に、作業者が型枠の表面を打撃装置で打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、気泡を取り除く作業を行っている。この作業を行うと、型枠除去後において、コンクリート表面に“あばた”と呼ばれる気泡痕が残る割り合いが低下し、コンクリート表面の仕上がり、美観が向上する。このように、型枠の表面を打撃する打撃装置の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された打撃装置は、本体部、円筒シリンダ、ピストン、把持部、打撃部、ピストン、プラグ、操作レバー、バネを有する。把持部は本体部に接続されている。プラグは把持部に取り付けられている。円筒シリンダは、本体部に設けられ、ピストンは、円筒シリンダ内で作動可能である。円筒シリンダはプラグに接続されている。プラグはエアホースを介して圧縮空気供給装置に接続される。エアホースから円筒シリンダに至る経路にバルブが設けられている。操作レバーは把持部に設けられている。操作レバーはバルブを開閉する。バネは本体部に取り付けられている。
【0004】
作業者が操作レバーに操作力を付加していないと、バルブは閉じられており、円筒シリンダに圧搾空気は供給されない。また、打撃部はバネの力で初期位置に停止している。作業者が操作レバーを操作するとバルブが開き、圧縮空気供給装置から円筒シリンダに圧搾空気が供給され、ピストンが作動する。すると、打撃部は、ピストンの作動力でバネの力に抗して作動し、打撃部が型枠を打撃する。ピストンが作動すると排気孔が開き、円筒シリンダ内の圧搾空気は、排気孔から本体の外部に排出される。打撃部は、型枠を打撃した後にバネの力で作動し、打撃部は初期位置で停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-271877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
型枠を打撃して気泡を除去する場合、打設したコンクリートの深さ方向において、コンクリートの上端に対応する位置で型枠を打撃すると、気泡を有効に除去できることが、経験的に知られている。本願発明者は、特許文献1に記載された打撃装置を用いると、コンクリートの上端と、打撃部で型枠を打撃している位置との位置関係が分かりにくい、という課題を認識した。
【0007】
本発明の目的は、コンクリートの上端と、打撃部が型枠を打撃する打撃位置との位置関係を検出可能な打撃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の打撃装置は、コンクリート型枠を打撃可能な作動部を備えた複数の打撃部と、前記打撃部を前記コンクリート型枠に取り付け及び取り外し可能に保持する保持部と、コントローラとを有し、前記打撃部は、前記作動部を駆動するソレノイドを支持するケースが設けられたハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記作動部により前記コンクリート型枠を打撃したときの前記ハウジングに加わる振動を検出する加速度センサと、を有し、前記コントローラは、それぞれの前記加速度センサからの信号に基づいて、前記コンクリート型枠の外面を前記作動部が打撃している位置と、前記コンクリート型枠に打設されたコンクリートの上端との位置関係を検出し、複数の前記打撃部のうちのいずれかの作動部による打撃位置が前記コンクリートの上端に最も近い位置にあると判断したときに、最も近い位置にあると判断した作動部により前記コンクリート型枠への打撃を一定時間継続する打撃制御を行う
【発明の効果】
【0009】
本発明の打撃装置は、コンクリートの上端と、打撃部が型枠を打撃する打撃位置との位置関係を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の打撃装置を用いて、コンクリート型枠を打撃する模式的な断面図である。
図2】打撃装置の制御系統を示すブロック図である。
図3】打撃装置の構造例を示す断面図である。
図4】(A)、(B)及び(C)は、打撃装置におけるハンマの形状例を示す図である。
図5】打撃装置で行う制御例を示すフローチャートである。
図6】打撃装置の他の例を示すブロック図である。
図7】打撃部を型枠に取り付ける保持部の他の例を示す模式図である。
図8】打撃部を電源に直接接続した使用例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の打撃装置のいくつかの実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
建築物の工事現場では、図1のようなコンクリート型枠10(以下、型枠10と記載する)を地面に固定した後、型枠10で取り囲まれた空間C1にコンクリート11を打設する。
【0013】
型枠10は、コンクリート11に接触するパネコート52と、パネコート52を支持する複数の支柱53と、を有する。パネコート52は板材であり、パネコート52は2枚を1組として、互いに平行に、かつ、立てた状態に地上に設置され、パネコート52同士の間にコンクリート11が打設される。なお、図1では、パネコート52を、便宜上、1枚のみ示している。パネコート52は、木材製または合成樹脂製の板材である。また、複数の支柱53は、上下方向に立てて配置され、かつ、互いに間隔をおいて地面に埋め込まれ、ている。複数の支柱53は、パネコート52の外面52Aに接触して、パネコート52を支持する。
【0014】
また、2枚のパネコート52を1組として貫通するセパレータ54が設けられている。セパレータ54は金属製である。セパレータ54は棒部材であり、セパレータ54の長手方向の端部に金具55が取り付けられている。さらに、パイプサポート57が、略水平に配置される。パイプサポート57は、2本1組で異なる高さに3組配置されている。セパレータ54の端部に雄ねじ部が設けられ、ナット56を雄ねじ部に取り付けて締め付けることで、金具55がパイプサポート57に押し付けられ、パイプサポート57は支柱53に押し付けられている。このようにして、型枠10が組み立て及び固定されている。
【0015】
図1に示す打撃装置12は、型枠10を打撃する、具体的には、パネコート52の外面52Aを打撃する設備である。打撃装置12は、打撃部13、電源14、制御盤45、保持部58、ケーブル46及び電力ケーブル15を有する。
【0016】
打撃部13は、型枠10を外面から打撃して、型枠10とコンクリート11との間に存在する気泡を除去するものである。本実施形態では、打撃部13を複数、一例として3組設けた例を説明する。
【0017】
保持部58は、打撃部13を取り付けたカバーまたはケーシングであり、保持部58は、一例として金属製または合成樹脂製である。保持部58の一部が開口され、打撃部13が保持部58の外に露出している。保持部58の一部は、パネコート52とパイプサポート57との間に配置されている。打撃部13を取り付けた保持部58は、パネコート52とパイプサポート57とにより挟持されて、型枠10に取り付けられている。打撃部13は、重力の作用方向で保持部58が接触しているパイプサポート57よりも上に位置する。作業者が保持部58を、パネコート52とパイプサポート57との間から抜き出すと、保持部58を型枠10から取り外すことができる。
【0018】
3組の打撃部13は、図2に示すように、ケーブル46を介して制御盤45にそれぞれ接続されている。ケーブル46は、電力ケーブル及び信号ケーブルを含む。電力ケーブル15は、電源14と制御盤45とを電気的に接続している。電源14は、交流電源または直流電源の何れでもよい。
【0019】
3組の打撃部13は、それぞれ構造が同じであるため、便宜上、1組の打撃部13の例を、図2及び図3を参照して説明する。打撃部13は、ハウジング36、作動部16、コントローラ17、スイッチ回路18、ソレノイド19、加速度センサ20、付勢部材21、入力部22、出力部23及びトリガ24を有する。
【0020】
ハウジング36は、一例として金属製または合成樹脂製である。ハウジング36は、筒形状のケース25と、ケース25に接続されたグリップ26と、を有する。金属製の支持フレーム27が、ケース25内に固定されている。ソレノイド19は、シリンダ28及びコイル29を有する。シリンダ28は支持フレーム27に取り付けられている。コイル29はシリンダ28内に設けられている。コイル29は、導電線を巻いたものである。
【0021】
作動部16は、ハンマ30及びプランジャ31を有する。ハンマ30の材質は、金属製、一例としてステンレス製である。プランジャ31は、磁性材料製、一例として、鉄製である。プランジャ31の端部にハンマ30が固定されている。図4は、ハンマ30の形状例である。ハンマ30は、図4(A)のように全体を円柱形状とし、ハンマ30の先端形状を半球形状にすることが可能である。なお、ハンマ30は、図4(B)のように全体が球形状、図4(C)のように円柱形状でもよい。
【0022】
図3に示す作動部16は、ケース25に対して中心線A1に沿って、第1方向B1及び第2方向B2に作動可能に設けられている。ケース25は、作動部16を支持している。第1方向B1と第2方向B2とは、互いに逆向きである。ケース25において中心線A1に沿った方向の端部36Aに、開口部32が設けられている。開口部32は、ケース25の内部と外部とを接続する。開口部32は、中心線A1を中心として設けられている。
【0023】
プランジャ31の外周面に、ストッパ33及びフランジ34が設けられている。ストッパ33とフランジ34とは、中心線A1に沿った方向に間隔をおいて配置されている。付勢部材21は、ケース25内に設けられている。付勢部材21は、中心線A1に沿った方向で、フランジ34とシリンダ28との間に配置されている。付勢部材21は、一例として金属製のスプリングであり、中心線A1に沿った方向に伸縮可能である。付勢部材21は、作動部16を中心線A1に沿って第2方向B2に付勢する。
【0024】
このため、コイル29への電流が遮断されていると、作動部16は付勢部材21の力で第2方向B2で付勢され、ストッパ33がシリンダ28に接触し、作動部16が初期位置で停止する。作動部16が初期位置に停止していると、ハンマ30の全体は、中心線A1に沿った方向で、ケース25内に位置する。
【0025】
これに対して、ソレノイド19は、コイル29へ電流が供給されると起動して磁気吸引力を形成する。すると、初期位置に停止している作動部16は、中心線A1に沿って第1方向B1で付勢される。ケース25の端部36Aが型枠10から離間している状態で、作動部16が初期位置から第1方向B1で作動すると、ハンマ30の先端30Aは、開口部32を通過してケース25の外部へ露出する。
【0026】
さらに、作動部16が第1方向B1で作動した後、コイル29に電流が供給されなくなると、作動部16は付勢部材21の力で第2方向B2で作動し、ストッパ33がシリンダ28に接触して作動部16が初期位置で停止する。
【0027】
図3に示すトリガスイッチ35がグリップ26に設けられている。作業者がトリガ24に操作力を付加するとトリガスイッチ35がオンし、作業者がトリガ24に対する操作力を解除するとトリガスイッチ35がオフする。
【0028】
加速度センサ20は、図3のように、一例として、支持フレーム27に取り付けるか、または、ケース25の内面に取り付けられている。加速度センサ20は、ハウジング36の振動数、具体的には中心線A1に沿った方向におけるハウジング36の振動回数を検出して信号を出力する。加速度センサ20は、一例として、静電容量方式、ピエゾ抵抗方式、渦電流方式、圧電素子方式の何れかを用いることが可能である。
【0029】
入力部22は、一例としてケース25の外面に設けられている。入力部22は、液晶ディスプレイ、ボタン、スイッチ等で構成されている。保持部58は窓を有し、作業者は、入力部22を操作することにより、作動部16が作動する周波数、作動部16により型枠10を打撃させる実行時間を、任意に変更及び設定可能である。作動部16が作動する周波数、及び、作動部16により型枠10を打撃する打撃制御の実行時間は、後述する。出力部23は、一例として、ケース25の外面に設けられている。保持部58は窓を有し、作業者は出力部23を認識可能、具体的には目視可能である。なお、保持部58が透明であれば、窓を備えていなくても、作業者が出力部23を目視可能である。出力部23は、色が異なる複数の発光ダイオードランプまたは液晶ディスプレイ等で構成されている。複数の発光ダイオードランプは、電源14から電流が印加されて点灯する。出力部23として発光ダイオードランプを用いる場合、図3に示すケース25の中心線A1に沿った方向で、開口部32とは反対の位置に出力部23を設けることが可能である。
【0030】
スイッチ回路18は、一例としてケース25内に設けられている。スイッチ回路18は、電源14とソレノイド19とを電気的に接続及び遮断する。電源14は、交流電源または直流電源の何れでもよい。スイッチ回路18は、一例として、複数の半導体スイッチを有する。複数の半導体スイッチは、それぞれ単独でオン及びオフが可能である。
【0031】
コントローラ17は、一例としてケース25内に設けられている。コントローラ17は、入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理部、記憶部、タイマー等を備えたマイクロコンピュータである。
【0032】
コントローラ17は、トリガスイッチ35の信号、入力部22の信号及び加速度センサ20の信号を処理し、かつ、スイッチ回路18及び出力部23を制御する。記憶部には、作動部16が作動する周波数を変更及び設定するデータ、打撃制御の実行時間を変更及び設定するデータ、作動部16の位置を検出するためのデータ等が、予め記憶されている。作動部16の位置の意味は、後述する。
【0033】
制御盤45は、地上に固定して設けられるか、または、移動可能な台車等に設置さられる。制御盤45が台車に設置されていると、制御盤45を地上で移動可能である。制御盤45は、入力部49、コントローラ50及び出力部51を有する。入力部49は、入力部22と同様の構成及び機能を有する。コントローラ50は、コントローラ17と同様に構成され、コントローラ17と同様の機能を備えている。入力部49及び出力部51は、コントローラ50に対して信号の授受が可能に接続されている。
【0034】
作業者は、入力部49を操作して、入力部22と同様の設定を行うことが可能である。作業者は出力部51を認識可能、具体的には目視可能である。出力部51は、色が異なる複数の発光ダイオードランプを含む。複数の発光ダイオードランプは、電源14から電流が印加されて点灯する。さらに、コントローラ17とコントローラ50との間で信号の授受が可能である。
【0035】
作業者は、図1のように、打撃部13を取り付けた3組の保持部58を、それぞれ型枠10に取り付ける。すると、3組の保持部58にそれぞれ取り付けられた打撃部13は、図3のように、ケース25の端部36Aが、パネコート52の外面52Aに接触した状態に保持される。
【0036】
次に、打撃装置12の使用例を、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、主としてコントローラ50が処理及び制御を行うものとする。
【0037】
まず、作業者は、ステップS10において入力部49を操作し、3組の打撃部13について、作動部16が作動する周波数、打撃制御の実行時間を設定する。作動部16が作動する周波数は、例えば、前回、ソレノイド19に対する電流の供給を停止した時点から、今回、ソレノイド19に対する電流の供給を停止する時点までを1周期とした場合において、所定時間内における周期の回数である。
【0038】
打撃制御の実行時間は、ソレノイド19に対する電流の供給と停止とを交互に繰り返し、作動部16を第1方向B1及び第2方向B2で交互に作動させる制御の継続時間である。作業者がステップS10において設定する“作動部16が作動する周波数”及び“打撃制御の実行時間”は、コントローラ50が、パネコート52に対する3組の打撃部13の打撃位置をそれぞれ検出した後に、コントローラ50が、3組の打撃部13のスイッチ回路18をそれぞれ制御する場合に用いる。
【0039】
また、コントローラ50は、ステップS10において、3組の打撃部13を全て停止させている。1組の打撃部13を例として具体的に説明すると、スイッチ回路18がオフし、電源14からソレノイド19への電流を遮断している。このため、作動部16は付勢部材21の力で第2方向B2で付勢され、作動部16は、図3に示すように、ストッパ33がシリンダ28に接触して初期位置で停止している。
【0040】
ステップS11で作業者が、入力部49により打撃制御の操作をおこなう。すると、3組の打撃部13において打撃制御が開始され、作動部16が往復作動、つまり、第1方向B1及び第2方向B2で作動する。作動部16が第1方向B1で作動すると、ハンマ30がパネコート52の外面52Aを打撃する。図3の例では、ハンマ30がパネコート52の外面52Aを打撃する中心線A1は、外面52Aに対して90度である。
【0041】
作動部16が第2方向B2で作動すると、ハンマ30がパネコート52の外面52Aから離間する。打撃制御は、“スイッチ回路18のオンとオフとを交互に切り替えて、ソレノイド19に対する電流の供給と、ソレノイド19に対する電流の遮断とを交互に繰り返すこと”である。コントローラ50がステップS12の制御を行う基準となる“作動部16が作動する周波数”は、予め記憶部に記憶されている。
【0042】
上記のように、作動部16が作動してハンマ30がパネコート52の外面52Aを打撃すると、パネコート52の振動はハウジング36に伝達される。また、ハンマ30がパネコート52を打撃した際の反力は、付勢部材21及び支持フレーム27を介してハウジング36に伝達される。このように、ハンマ30がパネコート52を打撃すると、ハウジング36が振動する。
【0043】
コントローラ50は、ステップS13において、3組の打撃部13について、ハンマ30がパネコート52を打撃している位置が、図1に示すコンクリート11の上端11Aに最も近い位置にあるか否かをそれぞれ判断する。一例として、ハンマ30の打撃位置が、上端11Aと同じであるか否かを判断する。ハンマ30が型枠10を打撃している位置は、打設したコンクリート11の深さ方向における位置であり、図1では上下方向における位置である。
【0044】
コントローラ50は、ステップS13の判断を行うために、次の処理を行う。コントローラ50は、加速度センサ20の信号を処理することにより、所定時間内におけるハウジング36の振動数を検出する。例えば、ハウジング36が所定位置から第2方向B2で振動し、次いで、第1方向B1で振動して所定位置に戻る1周期の振動を、ハウジング36の振動数“1”として処理する。
【0045】
また、コントローラ50は、所定時間内におけるハウジング36の振動数に基づいて、ハンマ30がパネコート52を打撃している位置を判断する。コントローラ50の記憶部は、所定時間内に検出されるハウジング36の振動数と、パネコート52をハンマ30が打撃している位置との関係を示すデータを記憶している。このデータは、予め、実験またはシミュレーションを行って求めたものである。
【0046】
このデータは、所定時間内におけるハウジング36の振動数が所定範囲内であると、ハンマ30が打撃している位置が、図1に示すコンクリート11の上端11Aに対応する位置P1であることを定めている。また、データは、ハウジング36の振動数が所定範囲より低くなると、ハンマ30が打撃している位置が、位置P1よりも上の位置P2であることを定めている。さらに、データは、ハウジング36の振動数が所定範囲より高くなると、ハンマ30が打撃している位置が、位置P1よりも下の位置P3であることを定めている。
【0047】
ここで、所定時間は、例えば、1分~2分であり、振動数の所定範囲は、例えば、20~30Hzである。コントローラ50は、検出したハウジング36の振動数及びデータに基づいて、図1に示すコンクリート11の上端11Aの位置と、ハンマ30がパネコート52を打撃している位置と位置関係を検出する。
【0048】
コントローラ50は、3組の打撃部13のうちステップS13でNoと判断した打撃部13について、ステップS14の制御を行い、図6の制御を終了する。コントローラ50は、ステップS14において、打撃位置が上端11Aとは異なることを出力部51で表示させ、かつ、スイッチ回路18を遮断して作動部16を停止させ、図6の制御を終了する。なお、コントローラ50は、打撃位置が上端11Aとは異なることを出力部23で表示させることも可能である。
【0049】
コントローラ50は、3組の打撃部13のうちステップS13でYesと判断した打撃部13について、ステップS15の制御を行う。コントローラ50は、ステップS15において、ハンマ30が図1に示す位置P1を打撃している打撃部13を、出力部51で表示させる。また、打撃位置が上端11Aと同じであることを出力部23で表示させることも可能である。さらに、コントローラ50は、ステップS15において、打撃位置が上端11Aと同じ位置にある打撃部13の打撃制御を継続させる。
【0050】
コントローラ50は、ステップS10で入力部49の操作により設定された周波数及び実行時間に基づいて、ステップS15で行う打撃制御を継続する。コントローラ50は、例えば、ソレノイド19へ電流を供給する時間を60msecとし、ソレノイド19への電流を遮断する時間を210msecとする打撃制御を実行する。ソレノイド19に対して、前回、電流の供給が遮断された時点から、ソレノイド19に今回、電流の供給が遮断されるまでの1周期の時間は、270msecである。
【0051】
さらに、コントローラ50は、ステップS15で打撃時間のタイマーをスタートさせ、かつ、コンクリート11の締固めが未完であることを示す発光ダイオードランプ、例えば、赤色のランプを点灯させる。なお、コントローラ50がステップS15で行う打撃制御は、作業者がステップS10で設定した作動部16の周波数に応じたものである。
【0052】
コントローラ50は、ステップS16において、タイマーがスタートした時点から、打撃時間が経過したか否かを判断する。コントローラ50がステップS16の判断に用いる打撃時間は、作業者がステップS10で設定したものである。なお、打撃時間は、例えば、作動部16の作動が10周期繰り返される時間に設定される。コントローラ50は、ステップS16においてNoと判断すると、ステップS16の判断を繰り返す。
【0053】
コントローラ50は、ステップS16においてYesと判断すると、出力部51においてコンクリート11の締固めが完了したことを表すランプ、例えば、緑色のランプを点灯させる。また、コントローラ50は、設定されている打撃時間をステップS17でリセットし、かつ、打撃制御を終了させる。つまり、ソレノイド19に対する電力の供給を停止させる。
【0054】
このように、作業者は3組の打撃部13を作動させてパネコート52を打撃し、コントローラ50は、コンクリート11の上端11Aに対応する位置P1と、3組の打撃部13の打撃位置との位置関係をそれぞれ検出する。そして、コントローラ50は、位置P1と打撃位置とが一致する打撃部13の打撃制御を継続させ、位置P1と打撃位置とが異なる打撃部13の打撃制御を終了させる。
【0055】
このため、コンクリート11とパネコート52との間に存在する気泡を有効に除去できることができる。したがって、型枠除去後におけるコンクリート11の表面の気泡痕、つまり、あばたを抑制でき、コンクリート11の表面の仕上がり、美観が向上する。
【0056】
また、コントローラ50は、位置P1と打撃位置とが異なる打撃部13の打撃制御を終了させる。したがって、電源14の電力消費量が増加することを抑制可能である。
【0057】
さらに、図4(A)及び図4(B)に示す形状のハンマ30は、先端30Aが半球状であるため、型枠10に打撃痕が残りにくい。
【0058】
打撃装置12の他の例を、図6を参照して説明する。図6に示す打撃装置12は、携帯型端末器60及び3組の打撃部13を有する。3組の打撃部13は、それぞれ図2に示す打撃部13と同様の構成を備えていることに加え、打撃部13は、電源59、送信部66及び受信部67を有する。送信部66及び受信部67は、図2に示すコントローラ17に接続されている。また、図2に示すコントローラ17は、図6に示す電源59の電圧を検出する機能を有する。
【0059】
電源59は、打撃部13に固定されているもの、または、打撃部13に対して取り付け及び取り外しが可能なもの、の何れでもよい。電源59は、ハウジング36、または保持部58に設けることが可能である。電源59は、直流電源であり、電源59は、充電及び放電を繰り返し行える二次電池、または、放電のみを行う一次電池の何れでもよい。
【0060】
携帯型端末器60は、スマートフォンまたはタブレットを含む。携帯型端末器60は、入力部61、出力部62、コントローラ63、送信部64及び受信部65を有する。入力部61は、図2の入力部22と同様の構成及び機能を有する。出力部62は、図2の出力部23と同様の構成及び機能を有する。コントローラ63は、図2のコントローラ50と同様の構成及び機能を有する。コントローラ63は、入力部61、出力部62、送信部64及び受信部65に接続されている。なお、電源14及び制御盤45は備えていないものとして説明する。
【0061】
作業者は携帯型端末器60を操作し、携帯型端末器60と、3組の打撃部13のそれぞれとの間で、相互に電波を飛ばして無線による通信が可能である。作業者は携帯型端末器60を操作し、3組の打撃部13をそれぞれ別々に遠隔操作できる。例えば、作業者は携帯型端末器60を操作し、図5のステップS11及びステップS11の処理を行うことが可能である。また、図5のステップS14及びステップS15で行う打撃位置及び打撃部13の表示を、携帯型端末器60の出力部62が表示可能である。
【0062】
さらに、図2に示す出力部23は、図6に示す電源59の電圧を表示する。電源59の電圧は、打撃部13から携帯型端末器60に送信され、出力部62は、電源59の電圧を表示する。作業者は、電源59の電圧が所定値以下であると、電源59に充電するか、または使用済みの電源59と、新規の電源59と交換する。
【0063】
さらにまた、作業者は、図5のステップS16でYesと判断される前、または判断された後に、携帯型端末器60の入力部61を操作して、ステップS17をキャンセルすることも可能である。つまり、打撃時間が経過した後も、打撃部13による打撃制御を継続させることができる。なお、3組の打撃部13の少なくとも1つで故障または異常が発生した場合、携帯型端末器60の出力部62で表示する。
【0064】
さらに、図6に示すように、制御盤45が3組の打撃部13にケーブル46を介して接続され、かつ、制御盤45が送信部68及び受信部69を備えており、携帯型端末器60と制御盤45との間で信号の授受を行うようにしてもよい。
【0065】
打撃部13を型枠10に対して取り付け及び取り外し可能に支持する保持部の他の例を、図7を参照して説明する。図7に示す保持部47は、3組の打撃部13に対してそれぞれ設けられている。保持部47は、打撃部13を、パイプサポート57に対して取り付け及び取り外し可能とする機構である。
【0066】
保持部47は、一例として、2つのパッド70を有するクランプである。パッド70同士の間隔を調整可能である。2つのパッド70で打撃部13及びパイプサポート57を挟むことにより、打撃部13を型枠10に固定可能である。2つのパッド70の間隔を広げると、打撃部13を型枠10から取り外し可能である。保持部47は、3組の打撃部13とは別体で設けられていてもよいし、保持部47が、3組の打撃部13にそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0067】
図7に示す打撃装置12は、3組の打撃部13を、ケーブル46を介して制御盤45に接続し、制御盤45を電力ケーブル15を介して電源14に接続した例である。図7に示す打撃装置12においても、図5の使用例及び制御を実行可能である。図7に示す3組の打撃部13を、図6に示す3組の打撃部13の構成とし、かつ、携帯型端末器60により、図7に示す3組の打撃部13をそれぞれ遠隔操作で制御してもよい。
【0068】
実施形態で開示した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。打撃装置12は、打撃装置の一例である。打撃部13は、打撃部の一例である。加速度センサ20及びコントローラ17,50は、検出部の一例である。保持部47,58は、保持部の一例である。上端11Aは、“コンクリートの上端”の一例である。位置P1,P2,P3は、“打撃部の打撃位置”の一例である。コントローラ17,50,63及び制御盤45は、制御部の一例である。パネコート52は、板材の一例である。支柱53は、支柱の一例である。セパレータ54は、棒部材の一例である。パイプサポート57は、サポート部材の一例である。
【0069】
所定時間内におけるハウジング36の振動数は、“本体部の振動状態”の一例である。出力部23は、出力部の一例である。
【0070】
打撃装置は、開示した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、作動部16を作動させる駆動部の一部であるアクチュエータは、ソレノイド19に代えて、空気モータ、油圧モータ、電動モータの何れかを用いることも可能である。
【0071】
なお、コントローラ50,63は、打撃制御の実行時間、または打撃動作の周波数の何れか一方を、固定値として記憶部に記憶していてもよい。この場合、コントローラ50,63は、図6のステップS10をスキップする。そして、コントローラ50,63は、予め記憶部に記憶している周波数の固定値に基づいてステップS15の制御を行い、打撃時間の固定値に基づいて、ステップS16の判断を行う。
【0072】
さらに、打撃装置12が図2に示す構成であると、打撃部13は、図4に示すコントローラ17を備えていなくてもよい。この場合、加速度センサ20の信号はコントローラ50に入力され、入力部22及び出力部23は、コントローラ50に接続される。また、コントローラ50が、スイッチ回路18を制御する。
【0073】
また、電源14は、直流電源または交流電源の何れでもよい。直流電源は、充電及び放電を複数回し行うことの可能な二次電池、充電及び放電を1回行うことの可能な一次電池の何れでもよい。さらに、打撃部の数は、3組に限らず、2組でもよいし、4組以上でもよい。
【0074】
なお、図1図6及び図13に示す打撃部13は、グリップ26、トリガ24及びトリガスイッチ35を備えていなくてもよい。
【0075】
さらに、図5の制御は行えないが、打撃部13を制御盤45から取り外し、図8のように、打撃部13のケーブル46を電源14に接続することも可能である。電源14は、作業者が肩に掛けたり、背中に背負ったり、腰に装着したりするベルト用の可搬型の電源14である。そして、作業者は入力部22を操作して、図5のステップS10と同じ設定を行う。
【0076】
さらに、作業者がグリップ26を手で掴み、端部36Aをパネコート52の外面52Aに押し付け、かつ、トリガ24を操作すると、コントローラ17がスイッチ回路18を接続及び遮断し、作動部16が作動する。すなわち、ハンマ30がパネコート52を打撃する。コントローラ17は、位置P1と打撃位置との位置関係を検出し、検出結果を出力部23から出力する。作業者は、位置P1と打撃位置とが異なると、図3に示す端部36Aをパネコート52から離間させ、端部36Aを型枠10に対して上下方向に移動させる。トリガ24に操作力を解除すると、コントローラ17は、スイッチ回路18を遮断する。したがって、位置P1と打撃部13の打撃位置とを一致させることが可能であり、コンクリート11と型枠10との間の気泡を、効率よく除去できる。
【0077】
さらに、図4(A)に示す重心移動機構38を、ハンマ30及びプランジャ31に亘って設けることも可能である。重心移動機構38は、収容室39、ガイドシャフト40及びウェイト41を有する。ガイドシャフト40及びウェイト41は、収容室39に設けられている。ガイドシャフト40の中心線は、中心線A1と共通であり、ガイドシャフト40は、金属製または合成樹脂製である。ガイドシャフト40は、ハンマ及びプランジャ31に固定されている。ウェイト41は金属製であり、ガイドシャフト40に対して中心線A1に沿った方向に移動可能、具体的には往復移動が可能に取り付けられている。
【0078】
ハンマ30が中心線A1に沿って第1方向B1で作動すると、ハンマ30の作動タイミングよりも遅れてウェイト41が第1方向B1で移動する。言い換えると、作動部16の重心が移動し、ハンマ30は、パネコート52の外面52Aを2回打撃することになる。このため、ハンマ30からパネコート52に加わる打撃力が増加する。なお、ウェイト41をボールまたは円柱形状とし、収容室39の内面を円柱形状にすれば、ガイドシャフト40を設けることなく、ウェイト41がハンマ30に対して中心線A1に沿った方向に移動可能になる。さらに、重心移動機構38は、図4(B)に示すハンマ30及びプランジャ31、または、図4(C)に示すハンマ30及びプランジャ31に亘って設けることも可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…型枠(コンクリート型枠)、12…打撃装置、13…打撃部、14…電源、17,50,63…コントローラ(制御部、検出部)、20…加速度センサ(検出部)、23,51,62…出力部、45…制御盤(制御部、検出部)、52…パネコート、53…支柱、58…保持部、P1,P2,P3…位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8