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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】配管材
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/14 20060101AFI20221116BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20221116BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F16L9/14
C08L101/00
C08L27/06
C08K3/04
C08K3/32
C08K5/19
E04B1/94 Q
E04B1/94 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018243638
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020106060
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清田 和希
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陸生
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054045(JP,A)
【文献】特開平11-246722(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028057(WO,A1)
【文献】特開2006-348228(JP,A)
【文献】特開2008-180367(JP,A)
【文献】特開2019-215072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/14
C08L 101/00
C08L 27/06
C08K 3/04
C08K 3/32
C08K 5/19
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、
前記滑剤は、炭化水素系滑材、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤であり、
前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤を0.2重量部以上1.0重量部以下含むことを特徴とする、配管材。
【請求項2】
ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、
前記滑剤は、炭化水素系滑剤、内部滑剤および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤であり、前記内部滑剤は内部滑性のみを有する滑剤であり、前記外部滑剤は外部滑性のみを有する滑剤であり、
前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、内部滑剤を0.5重量部以上1.5重量部以下、および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤を0.25重量部以上0.75重量部以下含み、
炭化水素系滑剤と、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤との合計量が、0.25重量部以上0.75重量部以下であることを特徴とする、配管材。
【請求項3】
前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の配管材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の配管材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管材に関し、特に、建物等の防火区画貫通部に好適に用いることができる配管材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の防火区画貫通部など耐火性を要求される箇所に好適に用いることができる配管材として、合成樹脂をベース樹脂とし、膨張材料および難燃剤が配合された樹脂組成物からなる配管材が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを一定量含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する単層または複層の配管材が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して熱膨張性黒鉛を1~15重量部の割合で含む耐火性樹脂組成物によって形成された耐火膨張層と、この耐火膨張層を被覆する被覆層とを備える複層耐火配管材が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛が1~10重量部であることを特徴とする建築用配管材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-54045号公報
【文献】特開2008-180367号公報
【文献】特開2008-180068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような従来の配管材は、耐火性に優れているが、樹脂組成物中の材料成分がスクリュおよび/または金型に付着しやすいため、量産性の面で改善の余地があった。本発明の一態様は、耐火性および量産性に優れた配管材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂、膨張黒鉛、リン酸亜鉛および特定の滑剤を特定量含有する樹脂組成物を配管材に用いることにより、耐火性および量産性に優れた配管材を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成からなるものである。
〔1〕ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、
前記滑剤は、炭化水素系滑材、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤であり、
前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤を0.2重量部以上1.0重量部以下含むことを特徴とする、配管材。
〔2〕ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、
前記滑剤は、炭化水素系滑剤、内部滑剤および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤であり、
前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、内部滑剤を0.5重量部以上1.5重量部以下、および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤を0.25重量部以上0.75重量部以下含み、
炭化水素系滑剤と、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤との合計量が、0.25重量部以上0.75重量部以下であることを特徴とする、配管材。
〔3〕前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されていることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の配管材。
〔4〕前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の配管材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、耐火性および量産性に優れた配管材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る配管材を管継手により接続した状態を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る配管材を管継手により接続した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
(I)配管材
本発明の一実施形態に係る配管材は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、前記滑剤は、炭化水素系滑材、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤であり、前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤を0.2重量部以上1.0重量部以下含む。
【0013】
また、本発明の他の実施形態に係る配管材は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する、単層または複層の配管材であって、前記滑剤は、炭化水素系滑剤、内部滑剤および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤であり、前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を8重量部超20重量部以下、リン酸亜鉛を1重量部以上15重量部以下、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、内部滑剤を0.5重量部以上1.5重量部以下、および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤を0.25重量部以上0.75重量部以下含み、炭化水素系滑剤と、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤との合計量が、0.25重量部以上0.75重量部以下である。
【0014】
配管材が上述のような配合であることにより、耐熱性および量産性に優れた配管材を得ることができる。なお、本明細書中、配管材の「耐熱性」は、実施例に記載の耐火膨張性および耐火形状保持性の評価により判断される。また、本明細書中、配管材が「量産性に優れる」とは、材料成分がスクリュおよび/または金型に付着しにくいことを意図し、「量産性」は、実施例に記載の外観および付着性の評価により判断される。
【0015】
前記配管材は、管状の前記膨張耐火層を含有する単層または複層の配管材であればよい。すなわち、前記配管材は、一つの管状の前記膨張耐火層のみからなる単層の配管材であってもよいし、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方にさらに他の層を1または2以上有する複層の配管材であってもよい。ここで、前記配管材が前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方に有する他の層の数および材質は、その外側と内側とで同じであっても異なっていてもよい。本発明の一実施形態では、前記配管材は、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されている。図1および図2に、本発明の一実施形態に係る配管材1、1’、および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図を示す。図1に示される配管材1、1’、および1’’は、一つの管状の前記膨張耐火層2のみからなる単層の配管材である。また、図2に示される配管材1、1’、および1’’は、膨張耐火層2の外側および内側が、被覆層3で被覆されている3層の配管材である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る配管材は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有するため、火災等により加熱されると、加熱された部分の配管材の管壁が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞される。これにより、熱および煙の遮断、或いは、遮炎が可能となる。
【0017】
前記配管材の形状は、管状であれば特に限定されるものではないが、好ましい一実施形態では管の断面形状は環状である。前記配管材の管壁の厚みも、通常建物等に用いられる配管材の厚みであればよく、特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、6.6~7.6mmである。
【0018】
また、前記配管材の内径も、通常建物等に用いられる配管材の内径であればよく、特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、98.3~101.3mmである。前記配管材の長さも特に限定されるものではなく、用途、使用場所等に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
(I-1)膨張耐火層
本発明の一実施形態において、膨張耐火層は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の層である。この膨張耐火層は、火災等により加熱されると、加熱された部分が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞される。これにより、熱および煙の遮断、或いは、遮炎が可能となる。
【0020】
前記膨張耐火層の形状および長さについては、配管材の形状および長さと同じであるのでここでは説明を省略する。
【0021】
前記膨張耐火層の厚みは、例えば呼び径100Aの場合、2.0~7.6mmである。前記膨張耐火層の厚みが前記配管材の管壁の厚み全体の40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上であれば、管壁が加熱により十分に膨張して内径を閉塞もしくは縮めることができるので耐火性が十分であり、また、強度が十分であるため好ましい。
【0022】
前記膨張耐火層は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を含有する耐火性樹脂組成物からなる。以下、前記耐火性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0023】
〔ベース樹脂〕
前記耐火性樹脂組成物はベース樹脂として熱可塑性樹脂を含む。この熱可塑性樹脂としてはこれに限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(1-)ブテン系樹脂;ポリペンテン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。ベース樹脂としては、これらの熱可塑性樹脂に含まれる化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形性に優れるという観点からは、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂等を好適に用いることができる。
【0024】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニルと他の単量体との共重合体、重合体に塩化ビニル単量体をグラフト共重合したグラフト共重合体、これらの重合体の塩化ビニル単位が塩素化された重合体(塩素化ポリ塩化ビニル等)等を挙げることができる。これらのポリ塩化ビニル系樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塩化ビニルと共重合させる前記他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等を挙げることができる。これらの単量体は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、塩化ビニル単量体をグラフト共重合させる前記重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等を挙げることができる。これらの重合体は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
〔膨張黒鉛〕
本発明の一実施形態で用いられる膨張黒鉛は、層間にイオン又は分子等が挿入されることにより、熱による膨張特性が与えられた黒鉛であれば特に限定されるものではない。前記膨張黒鉛としては、例えば、GREP-EG(鈴裕化学社製);MZ-260(エア・ウォーター社製)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の一実施形態において用いられる前記膨張黒鉛の発泡開始温度は260℃以上であることが好ましい。ここで、「発泡開始温度」とは、加熱炉内を一定温度にして、膨張黒鉛の試料を30分加熱した後の膨張黒鉛の膨張倍率が1.3以上になる温度である。なお、膨張倍率=(加熱後の試料の体積/加熱前の試料の体積)である。前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上かつベース樹脂の分解温度以下であれば、火災等により加熱されると、配管材が燃えて崩れ落ちる前に加熱された部分が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞され、管内温度の上昇が抑制されるので延焼防止効果が高まる。また、前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上であれば、前記耐火性樹脂組成物から管状の膨張耐火層を成形するときに、膨張黒鉛が発泡しないため、外観のより良い配管材を得ることができる。また、発泡開始温度が低い前記膨張黒鉛を使用するときは、膨張黒鉛が発泡しないように低温で成形する必要があるが、低温で成形すると膨張耐火層の性能が低下する場合があった。前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上であれば、得られる配管材の外観を損ねることなくより好適な成形温度を選択することができる。
【0027】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合は、配管材の耐火性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1~20重量部であることが好ましく、8重量部超20重量部以下であることがより好ましく、11~18重量部であることがさらに好ましい。
【0028】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合が、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、20重量部以下であれば、加熱により前記膨張耐火層が過度に膨張することがない。それゆえ、膨張耐火層が過度の膨張により配管材内でその形状を保持できないことにより起こる残渣の脱落という問題を回避することができる。前記膨張黒鉛の割合が1重量部以上であれば、火災等の加熱により、前記膨張耐火層が膨張して前記配管材の配管材の内径を狭めることができるか或いは配管材を閉塞させることができるため好ましい。
【0029】
前記熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、11重量部以上18重量部未満であることが特に好ましい。前記膨張黒鉛の割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、11重量部以上18重量部未満であることにより、前記膨張耐火層が大きく膨張し、前記配管材の閉塞性が増すため好ましい。
【0030】
〔リン酸亜鉛〕
本発明の一実施形態で用いられるリン酸亜鉛としては、特にこれに限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミンリン酸亜鉛が挙げられる。このエチレンジアミンリン酸亜鉛としては、例えば、特開2000-191674号公報等に記載のもの等を用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。前記リン酸亜鉛としては、例えば、ZPO-3(鈴裕化学社製)等を好適に用いることができる。
【0031】
ポリ塩化ビニル系樹脂に膨張黒鉛を含有させた樹脂組成物によって形成された耐火膨張層を配管材に用いる従来の技術では、膨張黒鉛の含有量が多くなると、加熱により組織が膨張しすぎてその形状を保持できないという問題があった。すなわち、加熱時の配管材の閉塞性を向上させるために膨張黒鉛の割合を大きくすることには限界があると考えられていた。かかる問題に対して、本発明者らは、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂に、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを添加したところ、驚くべきことに膨張黒鉛の含有量を、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部より多く含有させて、加熱により組織が大きく膨張しても、その形状を保持できることを見出した。
【0032】
前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合は、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができれば特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1~15重量部であることが好ましく、3~12重量部であることがより好ましく、5~10重量部であることがさらに好ましい。
【0033】
前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができるため好ましい。前記リン酸亜鉛の割合が15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるために好ましい。
【0034】
また、前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1~15重量部であることが好ましく、3~12重量部であることがさらに好ましく、5~10重量部であることが最も好ましい。前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができるため好ましい。前記リン酸亜鉛の割合が15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるために好ましい。
【0035】
〔滑剤〕
本発明の一実施形態の配管材は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、並びに、内部滑性および外部滑性を有する滑剤を0.2重量部以上1.0重量部以下含む。配管材が上記数値範囲内の滑剤を含んでいることにより、滑剤の内部滑性作用と外部滑性作用とのバランスが取れるため、量産性に優れた配管材を得ることができる。
【0036】
炭化水素系滑剤は、耐火性樹脂組成物とスクリュおよび/または金型との焼き付きを抑制する作用を有することが当該分野では知られていたため、炭化水素系滑剤の配合量を低減させることは当業者であれば、容易に想到できない事項であった。しかし、驚くべきことに、本願発明者らは、(i)炭化水素系ワックスの配合量を減らし、他の滑剤を加えること、または(ii)炭化水素系ワックスの配合をなくして、他の滑剤を加えること、によっても、耐火性樹脂組成物とスクリュおよび/または金型との焼き付きを抑制し、量産性に優れた配管材を得ることができることを見出した。
【0037】
前記炭化水素系滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。炭化水素系滑剤とは、主鎖が炭素および水素からなる化合物から構成される滑剤であり、炭化水素系滑剤は、微酸化または酸化されていてもよい。炭化水素系滑剤としては、より具体的には、HW-220MP(三井化学社製、ポリエチレンワックス)、AC-629A(三井化学社製、酸化ポリエチレンワックス)等が挙げられる。
【0038】
前記内部滑性および外部滑性を有する滑剤(以下、「内部外部滑剤」とも称する)としては、例えば、モンタン酸エステルワックス、ステアリルステアレート等が挙げられる。内部滑性とは、樹脂相互間の摩擦を低減する作用を意味し、外部滑性とは、金属面と樹脂との摩擦熱を調整したり、金属面との粘着を低減する作用を意味する。内部外部滑剤としては、より具体的には、リコワックスEシリーズ(クラリアント社製、モンタン酸エステルワックス)、リケマールSLシリーズ(理研ビタミン社製、ステアリルステアレート)等が挙げられる。
【0039】
本発明の他の一実施形態の配管材は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満、内部滑剤を0.5重量部以上1.5重量部以下、および炭化水素系滑剤以外の外部滑剤を0.25重量部以上0.75重量部以下含み、炭化水素系滑剤と、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤との合計量が、0.25重量部以上0.75重量部以下である。配管材が上記数値範囲内の滑剤を含んでいることにより、滑剤の内部滑性作用と外部滑性作用とのバランスが取れるため、量産性に優れた配管材を得ることができる。
【0040】
前記内部滑剤としては、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。内部滑剤とは、内部滑性のみを有する滑剤を意図する。内部滑剤としては、より具体的には、例えば、リケマールHC-100(理研ビタミン株式会社製、グリセリン特殊脂肪酸エステル)等が挙げられる。
【0041】
前記炭化水素系滑剤以外の外部滑剤としては、例えば、特殊脂肪酸エステル、モンタン酸ワックス等が挙げられる。外部滑剤とは、外部滑性のみを有する滑剤を意図する。外部滑剤としては、より具体的には、例えば、リケスターSL-02(理研ビタミン株式会社製、特殊脂肪酸エステルワックス)、リコワックスS(クラリアント社製、モンタン酸ワックス)等が挙げられる。
【0042】
〔その他の成分〕
前記耐火性樹脂組成物は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、を必須に含有していればよいが、耐火膨張層または配管材の性能を損なわない範囲でさらにその他の成分を含んでいてもよい。耐火膨張層または配管材の性能を損なわないという観点から、前記耐火性樹脂組成物100重量部に対する、その他の成分の合計含有量は、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは15重量部以下である。
【0043】
前記その他の成分としては、例えば、難燃剤、形状保持剤、加工助剤、安定剤、顔料等を挙げることができる。
【0044】
前記難燃剤としては、耐熱性水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェイト、アンモニウムポリフォスフェイト、メラミンピロホスフェイト等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等を挙げることができる。本発明の好ましい一実施形態では、前記耐火性樹脂組成物は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤とに加えて、難燃剤として、耐熱性水酸化アルミニウムを使用する。本発明者らは、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤とに加えて、難燃剤として耐熱性水酸化アルミニウムを使用したところ、難燃性のみではなく、耐火膨張層の膨張時の形状安定性が顕著に向上することを見出した。耐熱性水酸化アルミニウムとしては、より具体的には、ALH-3L(河合石灰工業社製)を挙げることができる。
【0045】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合は、特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1~15重量部であることが好ましく、3~12重量部であることがさらに好ましく、5~10重量部であることが最も好ましい。
【0046】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合が、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、難燃性のみではなく耐火膨張層の膨張時の形状安定性が向上するため好ましく、15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるため好ましい。
【0047】
また、前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1~15重量部であることが好ましく、2~12重量部であることがさらに好ましく、4~10重量部であることが最も好ましい。
【0048】
さらに、添加剤として炭酸カルシウムやアルミナを添加すると形状保持性が向上するので、より好ましい。
【0049】
前記安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛等の鉛系安定剤;有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫系安定剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸系安定剤等が挙げられる。
【0050】
〔膨張耐火層の製造方法〕
前記膨張性耐火層の製造方法は特に限定されるものではなく、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、滑剤と、必要に応じて前記他の成分とを混合する工程と、混合した耐火性樹脂組成物を管状に成形する工程を含んでいればよい。
【0051】
また、混合した耐火性樹脂組成物を管状に成形する方法も特に限定されるものではなく、押出成形、射出成形等を挙げることができる。
【0052】
(I-2)被覆層
本発明の一実施形態に係る配管材では、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されている。被覆層は、例えば、機械的強度、耐候性および耐薬品性等の観点から設けられる。
【0053】
前記被覆層は、熱可塑性の樹脂を含む層であることが好ましい。かかる樹脂としては特にこれに限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性の樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。耐候性、耐薬品性という観点からは、前記被覆層は、より好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む層である。
【0054】
被覆層に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂としては、前記(I-1)の〔ベース樹脂〕の項で説明したポリ塩化ビニル系樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0055】
前記被覆層の厚みも特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、好ましくは0.1mm~3mmであり、より好ましくは0.2mm~2.8mmであり、さらに好ましくは0.5mm~2mmである。前記被覆層の厚みが0.5mm以上であれば配管材の機械的強度を向上させることができるためより好ましい。また、前記被覆層の厚みが2mm以下であれば膨張耐火層の厚みが確保でき耐火性が良好であるためより好ましい。なお、前記被覆層の厚みとは、前記被覆層が前記膨張耐火層の外側および内側に設けられているときは、各被覆層の厚みを意味する。
【0056】
前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方を、被覆層で被覆する方法も特に限定されるものではなく、例えば、多層押出成形、塗装等を挙げることができる。
【0057】
(II)配管材の接続
本発明の一実施形態に係る配管材は、通常2個または3個以上を管継手によって接続して用いる。前記管継手の形状および大きさは、前記配管材を接続できる形状および大きさであれば特に限定されるものではない。以下に、前記管継手により本発明の一実施形態に係る配管材を接続する方法の一例について、図1および2に基づいて説明する。
【0058】
図1は、本発明の一実施形態に係る単層の配管材1、1’および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る3層の配管材1、1’および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図である。図1および2に示すように、管継手4は、立管用配管材1および1’がそれぞれ結合する立管接続部4aおよび4bを備えた本管部と、横枝管用配管材1’’が結合する横枝管接続部4cを備えた横枝管部と、を備えている。本管部は立管用配管材1および1’と略同じ内径を有する筒状の形状を有し、横枝管部は横枝管用配管材1’’と略同じ内径を有する筒状の形状を有している。そして、図1および2に示す例では、立管接続部4aおよび4bは、それぞれ、立管用配管材1および1’が挿入されて結合される受口であり、横枝管接続部4cは、横枝管用配管材1’’が挿入されて結合される受口である。
【0059】
図1および2に示す例では、管継手は3個の配管材を接続する構成であるが、2個または4個以上の配管材を接続する構成であってもよい。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0061】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、配管材の評価は次の方法により行った。
【0062】
(I)配管材の評価方法
〔外観(成形時発泡)〕
得られた配管材を観察し、発泡なしの場合を「◎」、小さい気泡が少量発生している場合を「○」、小さい気泡が多量に発生している場合、または大きい気泡が発生している場合を「×」と評価した。
【0063】
〔外観(筋)〕
得られた配管材を観察し、管の外内面の筋の有無を評価した。筋の発生が無いものを「◎」、焼け筋ではない筋が少量発生した場合は「〇」、焼け筋ではない筋が1/4周以上に発生した場合は「△」、焼け筋が発生した場合を「×」と評価した。
【0064】
〔外観(凹み)〕
得られた配管材を観察し、凹みの有無を評価した。凹みの発生が無いものを「◎」、異物を伴わない凹みが発生した場合は「〇」、異物が伴う凹みが発生した場合を「×」と評価した。
【0065】
〔外観(筋、凹み、成形時発泡)〕
上記〔外観(成形時発泡)〕、〔外観(筋)〕および〔外観(凹み)〕の3つの評価の内、最低のランクの評価を記載した。
【0066】
〔耐火膨張性〕
得られた配管材から、軸方向に50mmの大きさに試験体を切り出した。るつぼの中に試験体を入れて、加熱炉で1000℃まで加熱し、るつぼの中に残った残渣の体積を測定した。加熱炉に入れる前の試験体の体積に対する、残渣の体積の比率が5倍以上である場合を「◎」、4倍以上5倍未満である場合を「○」、4倍未満である場合を「×」と評価した。
【0067】
〔耐火形状保持性〕
前記るつぼに残った残渣に所定の圧縮力を加えて、残渣が崩れないかどうか確認した。残渣が崩れない場合を「◎」、残渣のごく一部が崩れる場合を「○」、残渣の一部が崩れる場合を「△」、残渣の大半が崩れる場合を「×」と評価した。
【0068】
〔付着性〕
後述の配合量の各成分をヒーティングミキサ-で均一に混合した樹脂組成物を、東洋精機社製ラボプラストミルに取り付けた、Φ30/20mm径の2D20C型異方向2軸コニカル型押出機(L/D=25、フルフライト式スクリュ-、バレル設定温度=B1:180℃、B2:180℃、B3:160℃)に供給し、CAPF2型スリットダイ(設定温度=180℃)にて、厚さ1.5mmのシート状押出成形体を2時間成形した。
【0069】
付着性の評価は、2時間成形後、スクリュとスリットダイを取り外し、容易に布で拭き取れる付着物を拭き取ったのち、スクリュ、および金型流路内に残った固着物の状態を、観察することで評価した。スクリュ、金型への付着が無い場合を「◎」、スクリュ、金型の一部に付着するが、固着はしない(布で拭き取れば、すぐに取れる)場合を「○」、スクリュ、金型の一部に付着するが、固着している面積は、半分以下である場合を「△」、スクリュ、金型の主要部に付着し、その大半が固着している場合を「×」と評価した。
【0070】
(II)配管材の作製方法
〔実施例1〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ社製、TH-1000、重合度1050)100重量部に、三塩基性硫酸鉛(BS-T、N1ケミテック株式会社)0.60重量部、ステアリン酸鉛(NS-PG、N1ケミテック株式会社)3.40重量部、ステアリン酸カルシウム(NS-A、N1ケミテック株式会社)0.10重量部、加工助剤(カネカ社製、PA-60)5.00重量部、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO-3)5.00重量部、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ-260)16.0重量部、および水酸化アルミニウム(河合石灰工業社製、ALH-3L)5.00重量部、ポリエチレンワックス(三井化学社製、HW-220MP)0.35重量部、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)1.00重量部を配合した後、ミキサーで撹拌混合して得た。
【0071】
得られた耐火性樹脂組成物を押出成形機によって管状に成形し、膨張耐火層からなる単層の配管材を作製した。得られた配管材の厚みは6.0mm、外径は89mmであった。
【0072】
〔実施例2〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を0.20重量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0073】
〔実施例3〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、ポリエチレンワックス(三井化学社製、HW-220MP)およびモンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を用いなかったこと、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を1.00重量部および外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を0.50重量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0074】
〔実施例4〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を0.50重量部および外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を0.25重量部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0075】
〔実施例5〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を1.50重量部および外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を0.75重量部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0076】
〔実施例6〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ-260)を11.0重量部用いたこと以外は、実施例5と同様にして、配管材を作製した。
【0077】
〔比較例1〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を用いなかったこと、ポリエチレンワックス(三井化学社製、HW-220MP)を0.70重量部、酸化ポリエチレンワックス(三井化学社製、AC-629A)を0.20重量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0078】
〔比較例2〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、酸化ポリエチレンワックス(三井化学社製、AC-629A)を用いなかったこと、グリセリン系ワックス(理研ビタミン社製、リケマールS-100)を0.20重量部用いたこと以外は、比較例1と同様にして、配管材を作製した。
【0079】
〔比較例3〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、酸化ポリエチレンワックス(三井化学社製、AC-629A)を用いなかったこと、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を0.20重量部用いたこと以外は、比較例1と同様にして、配管材を作製した。
【0080】
〔比較例4〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を0.50重量部用いたこと以外は、比較例3と同様にして、配管材を作製した。
【0081】
〔比較例5〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を1.00重量部用いたこと以外は、比較例3と同様にして、配管材を作製した。
【0082】
〔比較例6〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0083】
〔比較例7〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を1.50重量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0084】
〔比較例8〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を用いなかったこと、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を1.00重量部用いたこと以外は、比較例7と同様にして、配管材を作製した。
【0085】
〔比較例9〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、リコワックスE)を用いなかったこと、外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を0.50重量部用いたこと以外は、比較例9と同様にして、配管材を作製した。
【0086】
〔比較例10〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を1.00重量部用いたこと以外は、比較例9と同様にして、配管材を作製した。
【0087】
〔比較例11〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を2.00重量部および外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を1.00重量部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0088】
〔比較例12〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、内部滑剤(グリセリン脂肪酸エステル、リケマールHC-100、理研ビタミン株式会社製)を0.30重量部および外部滑剤(特殊樹脂酸エステルワックス、リケスターSL-02、理研ビタミン株式会社製)を0.15重量部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0089】
〔比較例13〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ-260)を8.00重量部用いたこと以外は、実施例5と同様にして、配管材を作製した。
【0090】
(III)配管材の評価結果
実施例1~6および比較例1~13で得られた配管材について、耐火性および量産性の評価を実施した。その結果を表1および2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
実施例1~6より、本発明の一実施形態に係る配管材は、耐熱性および量産性に優れることがわかる。比較例1~5より、炭化水素系滑剤を0.5重量部以上含む配管材は、量産性に劣ることがわかる。また、比較例3~5より、炭化水素系滑剤を0.5重量部以上含む配管材は、内部外部滑剤を含んでいる場合でも、量産性に劣ることがわかる。比較例6より、内部外部滑剤を含まない配管材は、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満含んでいる場合でも、外観が製品として劣ることがわかる。比較例7より、炭化水素系滑剤を1.0重量部超含む配管材は、炭化水素系滑剤を0.5重量部未満含んでいる場合でも、付着性に劣ることがわかる。比較例8より、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤を含まない配管材は、外観の評価が悪いことから、外観が製品として劣ることがわかる。比較例9より、内部滑剤を含まない配管材は、量産性に劣ることがわかる。比較例10より、炭化水素系滑剤以外の外部滑剤との合計量が、一定範囲以上である配管材は、量産性に劣ることがわかる。
比較例11より、内部滑剤および炭化水素系以外の外部滑剤を一定範囲を超えて含む配管材は、量産性に劣ることがわかる。比較例12より、内部滑剤および炭化水素系以外の外部滑剤を一定範囲以下だけ含んでいる配管材は、外観の評価が悪いことから、外観が製品として劣ることがわかる。比較例13より、膨張黒鉛を8重量部以下含む配管材は、耐熱性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、建物等の防火区画など管路中耐火性を要求される箇所に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1、1’、1” 配管材
2 膨張耐火層
3 被覆層
4 管継手
4a、4b 立管接続部
4c 横枝管接続部
図1
図2