(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】鉄道車両の異常検知装置及びそれを備えたシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/10 20060101AFI20221116BHJP
B61F 5/30 20060101ALI20221116BHJP
B61F 5/22 20060101ALI20221116BHJP
G01M 17/08 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01M17/10
B61F5/30 Z
B61F5/22 C
G01M17/08
(21)【出願番号】P 2018245127
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉松 雄太
(72)【発明者】
【氏名】三津江 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋行
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-015484(JP,A)
【文献】特開2016-141234(JP,A)
【文献】特開2010-254181(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102768121(CN,A)
【文献】特開2002-205517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
B61F 5/30
B61F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において仮想四角形の4つの角にそれぞれ位置する第1~第4支持部を備えた鉄道車両であって、平面視において前記第1支持部及び前記第4支持部が前記仮想四角形の第1対角線上に配置され且つ前記第2支持部及び前記第3支持部が前記仮想四角形の第2対角線上に配置されてなる鉄道車両の異常検知装置であって、
前記第1対角線周りの第1角速度を取得する第1角速度取得部と、
前記第2対角線周りの第2角速度を取得する第2角速度取得部と、
前記第1角速度取得部で取得された第1角速度に基づいて、前記第2支持部又は第3支持部における異常を判定し、かつ、前記第2角速度取得部で取得された第2角速度に基づいて、前記第1支持部又は第4支持部における異常を判定する判定部と、を有する、鉄道車両の異常検知装置。
【請求項2】
前記鉄道車両は、台車における軸箱と台車枠との間に配置された一次サスペンションを備え、
前記第1~第4支持部は、前記一次サスペンションのうち前記軸箱に重なる部分である、請求項1に記載の鉄道車両の異常検知装置。
【請求項3】
前記鉄道車両は、車体と台車との間に配置された二次サスペンションを備え、
前記第1~第4支持部は、前記二次サスペンションのうち前記車体に重なる部分である、請求項1に記載の鉄道車両の異常検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検知装置と、
前記第1角速度を検出する第1角速度センサと、
前記第2角速度を検出する第2角速度センサと、を備え、
前記異常検知装置の前記第1角速度取得部は、前記第1角速度センサの検出値を受信し、
前記異常検知装置の前記第2角速度取得部は、前記第2角速度センサの検出値を受信する、鉄道車両の異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面視において仮想四角形の4つの角にそれぞれ配置された第1~第4支持部を備えた鉄道車両の異常検知装置及びそれを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両のバネ系の点検は、定期的な目視検査により実施される。定期検査では点検間隔が空いてしまうし、目視検査では作業員の判断に委ねられることになる。そこで、特許文献1では、台車枠に複数の上下方向加速度センサを設置し、それらセンサの検出値に基づいてバネ系の異常を判定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、加速度センサの各々は、全てのバネの影響を受けるため、1つのバネの故障が加速度センサの各々に影響してしまう。そのため、1つのバネの故障が1つの加速センサに及ぼす影響の度合いが希釈化され、バネの異常検知の感度が低下することになる。
【0005】
そこで本発明は、鉄道車両の異常検知の感度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鉄道車両の異常検知装置は、平面視において仮想四角形の4つの角にそれぞれ配置された第1~第4支持部を備えた鉄道車両であって、平面視において前記第1支持部及び前記第4支持部が前記仮想四角形の第1対角線上に配置され且つ前記第2支持部及び前記第3支持部が前記仮想四角形の第2対角線上に配置されてなる鉄道車両の異常検知装置であって、前記第1対角線周りの第1角速度を取得する第1角速度取得部と、前記第2対角線周りの第2角速度を取得する第2角速度取得部と、前記第1角速度取得部で取得された第1角速度に基づいて、前記第2支持部又は第3支持部における異常を判定し、かつ、前記第2角速度取得部で取得された第2角速度に基づいて、前記第1支持部又は第4支持部における異常を判定する判定部と、を有する。
【0007】
前記構成によれば、第1角速度取得部で算出される第1対角線周りの第1角速度は、第1対角線の外側に配置された第2支持部及び第3支持部の影響を受け、第1対角線上に配置された第1支持部及び第4支持部の影響を受けない。同様に、第2角速度取得部で算出される第2対角線周りの第2角速度は、第2対角線の外側に配置された第1支持部及び第4支持部の影響を受け、第2対角線上に配置された第2支持部及び第3支持部の影響を受けない。即ち、1つの対角線周りの1つの角速度は、第1~第4支持部のうち2つの支持部のみの影響を受ける。よって、第1~第4支持部のうち1つの支持部における異常が監視対象の物理量(角速度)に及ぼす影響の度合いが高まり、支持部における異常の検知感度を高めることができる。
【0008】
本開示の一態様に係る鉄道車両の異常検知システムは、前述した異常検知装置と、前記第1角速度を検出する第1角速度センサと、前記第2角速度を検出する第2角速度センサと、を備え、前記異常検知装置の前記第1角速度取得部は、前記第1角速度センサの検出値を受信し、前記異常検知装置の前記第2角速度取得部は、前記第2角速度センサの検出値を受信する。
【0009】
前記構成によれば、第1~第4支持部の異常を検知するために2つのセンサで足りるため、センサ数を低減してコスト削減を図ることができる。また、各センサは、加速度ではなく角速度を検出するので、各対角線周りの角速度を検出できる位置であれば各センサを互いに近接配置することもできる。よって、鉄道車両におけるセンサ配置の自由度を高めることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、鉄道車両に搭載された支持部における異常の検知感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は鉄道車両の一次サスペンション(コイルバネ)に適用された第1実施形態に係る異常検知システムを示す概略平面図、(B)はその概略側面図である。
【
図2】
図1に示す異常検知装置のブロック図である。
【
図3】(A)は比較例の正常状態及び異常状態におけるロール角速度を示すグラフ、(B)は比較例の正常状態及び異常状態におけるピッチ角速度を示すグラフである。
【
図4】(A)は実施例の正常状態及び異常状態における第1角速度を示すグラフ、(B)は実施例の正常状態及び異常状態における第2角速度を示すグラフである。
【
図5】鉄道車両の一次サスペンション(板バネ)に適用された第2実施形態に係る異常検知システムを示す概略平面図である。
【
図6】鉄道車両の二次サスペンション(空気バネ)に適用された第3実施形態に係る異常検知システムを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1(A)は、鉄道車両の一次サスペンション(軸バネ)に適用された第1実施形態に係る異常検知システム1を示す概略平面図であり、
図1(B)は、その概略側面図である。
図1(A)(B)に示すように、異常検知システム1は、鉄道車両の一般的な台車51に対して適用される。
【0014】
台車51は、台車枠64を備える。台車枠64は、車両進行方向(車両長手方向)に直交する横方向(幅方向)に延びる横梁64aと、横梁64aの両端部からそれぞれ車両進行方向に延びる一対の側梁64bとを有する。台車51は、台車枠64の車両進行方向の両側に配置され、互いに平行に配置された第1輪軸61A及び第2輪軸61Bを備える。台車51は、第1輪軸61Aの両端を支持する軸受をそれぞれ収容する第1軸箱62A及び第2軸箱62Bを備える。
【0015】
台車51は、一方の側梁64bの一端部と第1軸箱62Aとの間に介設された第1軸バネ63Aと、他方の側梁64bの一端部と第2軸箱62Bとの間に介設された第2軸バネ63Bと、一方の側梁64bの他端部と第3軸箱62Cとの間に介設された第3軸バネ63Cと、他方の側梁64bの他端部と第4軸箱62Dとの間に介設された第4軸バネ63Dとを備える。第1~第4軸バネ63A~63Dは、第1~第4軸箱62A~62Dと台車枠64との間にそれぞれ配置された一次サスペンションの役目を果たす。第1~第4軸バネ63A~63Dは、例えばコイルバネである。
【0016】
台車51は、第1軸箱62Aから一方の側梁64bに向けて突出した第1軸梁65Aと、第3軸箱62Cから一方の側梁64bに向けて突出した第3軸梁65Cとを備える。なお、図示しないが、台車51は、第2軸バネ63B及び第4軸バネ63Dの側において、同様にして第2軸梁及び第4軸梁を備える。第1軸梁65Aの先端部には、一方の側梁64bに接続されて第1軸梁65Aを回転可能に支持する第1心棒66Aが設けられる。第3軸梁65Cの先端部には、一方の側梁64bに接続されて第3軸梁65Cを回転可能に支持する第3心棒66Cが設けられる。なお、図示しないが、台車51は、第2軸バネ63B及び第4軸バネ63Dの側において、同様にして第2心棒及び第4心棒を備える。
【0017】
平面視において第1軸バネ63Aのうち第1軸箱62Aに重なる部分(の中心部)が、台車枠64を支持するための第1支持部P1である。平面視において第2軸バネ63Bのうち第2軸箱62Bに重なる部分(の中心部)が、台車枠64を支持するための第2支持部P2である。平面視において第3軸バネ63Cのうち第3軸箱62Cに重なる部分(の中心部)が、台車枠64を支持するための第3支持部P3である。平面視において第4軸バネ63Dのうち第4軸箱62Dに重なる部分(の中心部)が、台車枠64を支持するための第4支持部P4である。
【0018】
第1~第4支持部P1~P4は、平面視において仮想四角形VSの4つの角にそれぞれ位置する。第1支持部P1及び第4支持部P4が、仮想四角形VSの第1対角線L1上に配置される。第2支持部P2及び第3支持部P3が、仮想四角形VSの第2対角線L2上に配置される。よって、第1軸バネ63A又は第4軸バネ63D(第1支持部P1及び第4支持部P4)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、台車枠64が第2対角線L2周りに回転して姿勢変化する。また、第2軸バネ63B又は第3軸バネ63C(第2支持部P2及び第3支持部P3)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、台車枠64が第1対角線L1周りに回転して姿勢変化する。
【0019】
異常検知システム1は、異常検知装置10と、台車51に搭載された第1角速度センサ11及び第2角速度センサ12とを備える。第1角速度センサ11は、台車枠64の第1対角線L1周りの回転の角速度である第1角速度を検出するレートセンサである。第2角速度センサ12は、台車枠64の第2対角線L2周りの回転の角速度である第2角速度を検出するレートセンサである。第1角速度センサ11及び第2角速度センサ12は、台車枠64(例えば、横梁64a)に設置されている。第1角速度センサ11及び第2角速度センサ12は、それぞれ第1角速度及び第2角速度を検出可能であれば互いに近接配置されてもよく、互いに一体にユニット化されてもよい。
【0020】
図2は、
図1に示す異常検知装置10のブロック図である。
図2に示すように、異常検知装置10は、ハードウェア面において、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。異常検知装置10は、機能面において、第1角速度取得部21、第2角速度取得部22、判定部23及び出力部24を有する。第1角速度取得部21、第2角速度取得部22及び判定部23は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。出力部24は、I/Oインターフェースにより実現される。
【0021】
第1角速度取得部21は、第1角速度センサ11の検出値を受信して第1角速度を取得する。第2角速度取得部22は、第2角速度センサ12の検出値を受信して第2角速度を取得する。なお、第1角速度及び第2角速度を直接的に検出するセンサが設けられない場合には、他の方向の角速度から計算により第1角速度及び第2角速度を求めてもよい。例えば、ロールレート(ロール角速度)及びピッチレート(ピッチ角速度)から計算により第1角速度及び第2角速度を求めてもよい。
【0022】
判定部23は、第1角速度取得部21で取得された第1角速度に基づいて、第2支持部P2又は第3支持部P3における異常を判定する。判定部23は、第2角速度取得部22で取得された第2角速度に基づいて、第1支持部P1又は第4支持部P4における異常を判定する。第1~第4支持部P1~P4における異常は、例えば、第1~第4軸バネ63A~63Dの異常(例えば、剛性(バネ定数)の変化)である。
【0023】
判定部23は、第1角速度が所定の許容範囲を超えたと判定されると、第2支持部P2又は第3支持部P3における異常が発生したと判定する。例えば、判定部23は、第1角速度取得部21で取得された第1角速度が予め記憶された正常時の第1角速度の値から所定の割合を超えて乖離したときに、第2支持部P2又は第3支持部P3における異常が発生したと判定してもよい。或いは、判定部23は、第1角速度取得部21で取得された第1角速度が所定の閾値を超えたときに、第2支持部P2又は第3支持部P3における異常が発生したと判定してもよい。
【0024】
同様に、判定部23は、第2角速度が所定の許容範囲を超えたと判定されると、第1支持部P1又は第4支持部P4における異常が発生したと判定する。例えば、判定部23は、第2角速度取得部22で取得された第2角速度が予め記憶された正常時の第2角速度の値から所定の割合を超えて乖離したときに、第1支持部P1又は第4支持部P4における異常が発生したと判定してもよい。或いは、判定部23は、第2角速度取得部22で取得された第2角速度が所定の閾値を超えたときに、第1支持部P1又は第4支持部P4における異常が発生したと判定してもよい。
【0025】
出力部24は、判定部23で異常発生が判定されると、その異常を外部の装置(例えば、鉄道車両の運転台の表示装置、基地局のサーバ等)に送信する。
【0026】
図3(A)は比較例の正常状態及び異常状態におけるロール角速度を示すグラフ、
図3(B)は比較例の正常状態及び異常状態におけるピッチ角速度を示すグラフである。
図4(A)は実施例の正常状態及び異常状態における第1角速度を示すグラフ、
図4(B)は実施例の正常状態及び異常状態における第2角速度を示すグラフである。比較例及び実施例では、コンピュータシミュレーションを用い、第1~第4軸バネ63A~63Dの剛性(バネ定数)を全て100%とした正常状態と、第2~第4軸バネ63B~63Dの剛性(バネ定数)を100%として且つ第1軸バネ63Aの剛性(バネ定数)を90%とした異常状態とでそれぞれ運動解析を行った。即ち、異常状態は、第1軸バネ63Aにのみ剛性が低下する異常が発生した状態を想定したものである。
【0027】
比較例では、前記正常状態と前記異常状態との夫々において台車枠のロール角速度及びピッチ角速度を評価した。実施例では、前記正常状態と前記異常状態との夫々において台車枠の第1対角線L1周りの第1角速度及び第2対角線L2周りの第2角速度を評価した。即ち、評価対象の物理量は、比較例ではロール角速度及びピッチ角速度であり、実施例では、第1角速度及び第2角速度である。
図3(A)(B)及び
図4(A)(B)のグラフは、時系列的に得られた評価対象の物理量の実際値(
図3(A)であればロール角速度の実際値(生データ)より算出した1秒間隔の二乗平均平方根(RMS)値)を、予め取得した正常時のRMS値の平均値で無次元化し、時系列データの中心値を「1」として表示したものである。
【0028】
図3(A)(B)から分かるように、比較例では、ロール角速度及びピッチ角速度の両方において異常状態のデータが正常状態のデータから乖離するものの、その乖離度が小さくて互いに区別しにくく、異常検知の感度が低くなる。これは、第1軸バネ63Aの剛性低下の影響がロール角速度とピッチ角速度との両方に影響するために、当該影響が希釈されたからであると考えられる。
【0029】
他方、
図4(A)(B)から分かるように、実施例では、第1角速度において異常状態のデータが正常状態のデータと殆ど一致しているが、第2角速度において異常状態のデータが正常状態のデータから大きく乖離しており、異常検知の感度が高くなる。このように、第2角速度を監視することで第1軸バネ63Aの異常を容易に検出できる。
【0030】
以上に説明した構成によれば、第1角速度取得部21で算出される第1対角線L1周りの第1角速度は、第1対角線L1の外側に配置された第2支持部P2及び第3支持部P3の影響を受け、第1対角線L1上に配置された第1支持部P1及び第4支持部P4の影響を受けない。同様に、第2角速度取得部22で算出される第2対角線L2周りの第2角速度は、第2対角線L2の外側に配置された第1支持部P1及び第4支持部P4の影響を受け、第2対角線L2上に配置された第2支持部P2及び第3支持部P3の影響を受けない。即ち、1つの対角線周りの1つの角速度は、第1~第4支持部P1~P4のうち2つの支持部のみの影響を受ける。よって、第1~第4支持部P1~P4のうち1つの支持部の異常が監視対象の物理量(角速度)に及ぼす影響の度合いが高まり、支持部P1~P4における異常の検知感度を高めることができる。
【0031】
また、第1~第4支持部P1~P4の異常を検知するために2つのセンサ(第1及び第2角速度センサ11,12)で足りるため、センサ数を低減してコスト削減を図ることができる。また、各センサ11,12は、加速度ではなく角速度を検出するので、各対角線L1、L2周りの角速度を検出できる位置であれば各センサ11,12を互いに近接配置することもできる。よって、鉄道車両におけるセンサ配置の自由度を高めることもできる。
【0032】
(第2実施形態)
図5は、鉄道車両の一次サスペンション(板バネ)に適用された第2実施形態に係る異常検知システム101を示す概略平面図である。
図5に示すように、異常検知システム101は、鉄道車両の板バネ式の台車151に対して適用される。
【0033】
台車151は、横梁を有し且つ側梁が省略された台車枠164を備える。台車151は、第1軸箱62Aに一端部が支持され且つ第3軸箱62Cに他端部が支持された第1板バネ163Aと、第2軸箱62Bに一端部が支持され且つ第4軸箱62Dに他端部が支持された第2板バネ163Bとを備える。第1板バネ163Aの中央部は、台車枠164の横方向の一端部を支持し、第2板バネ163Bの中央部は、台車枠164の横方向の他端部を支持する。なお、板バネ163A,163Bと台車枠164との間、及び、板バネ163A,163Bと軸箱63A~63Dとの間には、介在部材(例えば、支持具、防振ゴム等)が介在し得る。
【0034】
平面視において第1板バネ163Aのうち第1軸箱62Aに重なる一端部が、台車枠164を支持するための第1支持部P1である。平面視において第2板バネ163Bのうち第2軸箱62Bに重なる一端部が、台車枠164を支持するための第2支持部P2である。平面視において第1板バネ163Aのうち第3軸箱62Cに重なる他端部が、台車枠164を支持するための第3支持部P3である。平面視において第2板バネ163Bのうち第4軸箱62Dに重なる他端部が、台車枠164を支持するための第4支持部P4である。
【0035】
第1~第4支持部P1~P4は、平面視において仮想四角形VSの4つの角にそれぞれ位置する。第1支持部P1及び第4支持部P4が、仮想四角形VSの第1対角線L1上に配置される。第2支持部P2及び第3支持部P3が、仮想四角形VSの第2対角線L2上に配置される。よって、第1板バネ163Aの一端部(第1支持部P1)又は第2板バネ163Bの他端部(第4支持部P4)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、台車枠164が第2対角線L2周りに回転して姿勢変化する。また、第2板バネ163Bの一端部(第2支持部P2)又は第1板バネ163Aの他端部(第3支持部P3)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、台車枠164が第1対角線L1周りに回転して姿勢変化する。
【0036】
異常検知システム101は、第1実施形態と同様に、異常検知装置10と、台車51に搭載された第1角速度センサ11及び第2角速度センサ12とを備える。第1角速度センサ11は、台車枠164の第1対角線L1周りの回転の角速度である第1角速度を検出する。第2角速度センサ12は、台車枠164の第2対角線L2周りの回転の角速度である第2角速度を検出する。異常検知装置10の処理内容は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。このように、側梁を備えない台車であっても、第1実施形態と同様に、台車の支持部における異常の検知感度を高めることができる。
【0037】
(第3実施形態)
図6は、鉄道車両の二次サスペンション(空気バネ)に適用された第3実施形態に係る異常検知システム201を示す概略平面図である。
図6に示すように、異常検知システム201は、鉄道車両の車体52に対して適用される。
【0038】
鉄道車両は、車体52と、車体52の一端部を支持する第1台車51Aと、車体52の他端部を支持する第2台車51Bとを備える。車体52と第1台車51Aとの間には、互いに横方向に離れて配置された第1空気バネ53A及び第2空気バネ53Bが介在している。車体52と第2台車51Bとの間には、互いに横方向に離れて配置された第3空気バネ53C及び第4空気バネ53Dが介在している。第1及び第2空気バネ53A,53Bは、第1台車51Aと車体52との間に配置された二次サスペンションの役目を果たし、第3及び第4空気バネ53C,53Dは、第2台車51Bと車体52との間に配置された二次サスペンションの役目を果たす。
【0039】
平面視において第1空気バネ53Aのうち車体52に重なる部分が、車体52を支持するための第1支持部P1である。平面視において第2空気バネ53Bのうち車体52に重なる部分が、車体52を支持するための第2支持部P2である。平面視において第3空気バネ53Cのうち車体52に重なる部分が、車体52を支持するための第3支持部P3である。平面視において第4空気バネ53Dのうち車体52に重なる部分が、車体52を支持するための第4支持部P4である。
【0040】
第1~第4支持部P1~P4は、平面視において仮想四角形VSの4つの角にそれぞれ位置する。第1支持部P1及び第4支持部P4が、仮想四角形VSの第1対角線L1上に配置される。第2支持部P2及び第3支持部P3が、仮想四角形VSの第2対角線L2上に配置される。よって、第1空気バネ53A(第1支持部P1)又は第4空気バネ53D(第4支持部P4)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、車体52が第2対角線L2周りに回転して姿勢変化する。また、第2空気バネ53B(第2支持部P2)又は第3空気バネ53C(第3支持部P3)の剛性に意図されない変化(異常)が生じた場合には、車体52が第1対角線L1周りに回転して姿勢変化する。
【0041】
異常検知システム201は、異常検知装置10と、車体52に搭載された第1角速度センサ11及び第2角速度センサ12とを備える。第1角速度センサ11は、車体52の第1対角線L1周りの回転の角速度である第1角速度を検出する。第2角速度センサ12は、車体52の第2対角線L2周りの回転の角速度である第2角速度を検出する。異常検知装置10の処理内容は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。このように、適用対象が二次サスペンションであっても、第1実施形態と同様に、車体52の支持部における異常の検知感度を高めることができる。
【符号の説明】
【0042】
1,101,201 異常検知システム
10 異常検知装置
11 第1角速度センサ
12 第2角速度センサ
21 第1角速度取得部
22 第2角速度取得部
23 判定部
51,51A,51B,151 台車
52 車体
53A~53D 第1~第4空気バネ(二次サスペンション)
62A~62D 第1~第4軸箱
63A~64D 第1~第4軸バネ(一次サスペンション)
64,164 台車枠
163A,163B 第1及び第2板バネ(一次サスペンション)
L1 第1対角線
L2 第2対角線
P1~P4 第1~第4支持部