(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】セラミックス体及び転動体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20221116BHJP
C04B 35/593 20060101ALI20221116BHJP
F16C 33/32 20060101ALI20221116BHJP
F16C 33/34 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B35/593 500
F16C33/32
F16C33/34
(21)【出願番号】P 2019010348
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 康武
(72)【発明者】
【氏名】大平 晃也
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-331857(JP,A)
【文献】特開2003-322154(JP,A)
【文献】特開2011-208676(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099148(WO,A1)
【文献】特開2000-256066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00
C04B 35/593
F16C 33/32
F16C 33/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔を有するセラミックス体であって、
前記セラミックス体の表面よりも内部側に空孔(A)を有し、
前記空孔(A)内に結晶粒が存在
し、
前記表面から厚み800μm以内の領域である表層部は、前記表層部以外の領域である内層部よりも緻密性が高く、
前記セラミックス体は、さらに、空孔サイズが20μm以上100μm以下である空孔(C)を含み、
前記空孔(C)は、前記内層部にのみ存在する、セラミックス体。
【請求項2】
前記結晶粒は、柱状である、請求項1に記載のセラミックス体。
【請求項3】
前記空孔(C)の空孔サイズは、20μm以上100μm以下である(ただし、20μmである場合を除く。)、請求項1又は2に記載のセラミックス体。
【請求項4】
前記空孔(A)は、前記内層部に存在する、請求項
1~3のいずれか1項に記載のセラミックス体。
【請求項5】
前記表層部に存在する空孔は、空孔(B)であり、
前記空孔(B)の空孔サイズは、10μm以下である、請求項
1~4のいずれか1項に記載のセラミックス体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のセラミックス体を用いた軸受用転動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス体及び転動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化や高効率化の観点から、各種部材において軽量化が要求されている。例えば、軸受やエンジン部品等では、軽量化のために、金属部材のセラミックス体への置き換えが進められているが、セラミックス体をさらに軽量化することも望まれている。特許文献1~3には、セラミックス体の軽量化方法として、セラミックス体を多孔質化する方法が記載されている。
【0003】
特許文献1には、セラミックス原料に発泡液を含有させて多孔質セラミック体を製造することが記載されている。特許文献2には、セラミックス原料に球状ポリマー粒子を含有させ、焼成工程で燃焼させることにより孔を形成することが記載されている。特許文献3には、セラミックス粒子をバインダ樹脂で被覆して焼成することで多孔質板を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4238976号公報
【文献】特許第6312169号公報
【文献】特公平6-33198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載のようにセラミックス原料に起泡剤や樹脂等の添加剤を添加する場合、焼結性が低下しやすく、得られるセラミックス体の強度の低下が懸念される。そのため、セラミックス原料に起泡剤や樹脂等の添加剤を添加することなく、セラミックス体の軽量化を実現する方法が求められている。
【0006】
本発明は、軽量化を実現することができる新規なセラミックス体及びセラミックス体を用いた軸受用転動体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のセラミックス体及び転動体を提供する。
〔1〕 空孔を有するセラミックス体であって、
前記セラミックス体の表面よりも内部側に空孔(A)を有し、
前記空孔(A)内に結晶粒が存在する、セラミックス体。
〔2〕 前記セラミックス体において、前記結晶粒は、柱状である。
〔3〕 前記セラミックス体において、前記表面から厚み800μm以内の領域である表層部は、前記表層部以外の領域である内層部よりも緻密性が高い。
〔4〕 前記セラミックス体において、前記空孔(A)は、前記内層部に存在する。
〔5〕 前記セラミックス体において、前記表層部に存在する空孔は、空孔(B)であり、
前記空孔(B)の空孔サイズは、10μm以下である。
〔6〕 前記セラミックス体において、さらに、空孔サイズが10μm超である空孔(C)を含み、
前記空孔(C)は、前記内層部にのみ存在する。
〔7〕 前記セラミックス体を用いた軸受用転動体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量化を実現することができるセラミックス体及びセラミックス体を用いた軸受用転動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)~(c)は、実施例で得られた造粒粉の形状を拡大鏡で観察した画像を示す図である。
【
図2】(a)~(c)は、実施例で得られたセラミックス体の断面観察を行った画像を示し、(b)及び(c)はそれぞれ、(a)中の(b)及び(c)部分を拡大した画像を示す図である。
【
図3】(a)~(c)は、実施例で得られたセラミックス体の内層部内の空孔の断面観察を行った画像の図であり、(b)は、(a)中の(b)部分を拡大した画像を示す図であり、(c)は、(b)中の(c)部分を拡大した画像を示す図である。
【
図4】(a)及び(b)は、実施例で得られたセラミックス体の断面観察を行った画像を示す図であり、(b)は、(a)中の(b)部分を拡大した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(セラミックス体)
本実施形態のセラミックス体は、後述するセラミックス粉末等の無機化合物を焼結した焼結体(物体)であり、空孔を有する。本明細書において、セラミックス体が有する空孔とは、セラミックス体表面で外部に連通していない空隙部分をいう。
【0012】
セラミックス体は、セラミックス体の表面よりも内部側に空孔(A)を有する。空孔(A)は、その内部に結晶粒が存在している。セラミックスが空孔(A)を有することにより、セラミックス体の軽量化を図ることができる。
【0013】
セラミックス体は、その表面から厚み800μm以内の領域である表層部と、表層部以外の領域である内層部とを有することが好ましい。表層部は、セラミックス体表面を含む領域である。内層部は、表層部よりもセラミックス体の中心側に存在する領域であり、セラミックス体の各表面から厚み800μm超の領域である。表層部は、内層部よりも緻密性が高いことが好ましい。表層部が内層部よりも緻密性が高いことにより、表層部の機械的強度を高めつつ、セラミックス体の軽量化を図ることが期待できる。本明細書において緻密性が高いとは、空孔率が小さいことをいう。空孔率は、KEYENCE製VHX-5000で撮影した100倍画像を用いて、三谷商事製WINROOFによって算出することができる。
【0014】
表層部の空孔率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。内層部の空孔率は、通常7%以上であり、10%以上であることがより好ましく、また、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。内層部の空孔率は、表層部の空孔率の5倍以上であることが好ましく、8倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。
【0015】
上記した空孔(A)は、内層部に存在することが好ましい。空孔(A)は、内層部のみに存在することがより好ましい。セラミックス体の内層部にのみ空孔(A)を有することにより、セラミックス体の機械的強度を高めながらも軽量化を図りやすい。
【0016】
空孔(A)の形状は特に限定されないが、セラミックス体の断面でみたときに、円形状、楕円形状等であることが好ましい。空孔(A)は、空孔サイズが10μm超であることが好ましく、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。空孔サイズが上記の範囲であることにより、セラミックス体の軽量化を図りやすい。
【0017】
空孔(A)内に存在している結晶粒は、空孔(A)の内壁面に存在していることが好ましい。また、結晶粒は、空孔(A)の内壁面から成長しているものであってもよい。空孔(A)内に存在している結晶粒の形状は、特に限定されず、例えば柱状、球状、針状等であってもよく、柱状であることが好ましい。
【0018】
結晶粒のサイズは特に限定されないが、柱状や針状の結晶粒の場合、例えば長さが0.5μm以上3μm以下であってもよく、1μm以上2.5μm以上であってもよく、幅が0.05μm以上1μm以下であってもよく、0.1μm以上0.8μm以下であってもよい。粒状の結晶粒の場合、例えば直径又は長径が0.3μm以上2μm以下であってもよく、0.5μm以上1.5μm以下であってもよい。結晶粒のサイズは、セラミックス体の断面のSEM画像に含まれる結晶粒のうち10個の結晶粒について実測し、その平均値を算出することによって決定することができる。
【0019】
セラミックス体は、上記した表層部及び内層部のいずれにも空孔を有していてもよい。表層部に存在する空孔(以下、空孔(B)という。)は、空孔サイズが10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であってもよい。セラミックス体の表層部に存在する空孔(B)の空孔サイズが小さいことにより、表層部が緻密化されやすくなるため、セラミックス体の表層部の機械的強度を向上することができる。
【0020】
内層部に存在する空孔の空孔サイズは特に限定されないが、内層部は、例えば空孔サイズが0.1μm以上100μm以下である空孔を含むことができる。内層部は、空孔サイズが10μm超である空孔(C)を含むことができ、この空孔(C)は、内層部のみに存在し、表層部には存在しないことが好ましい。空孔(C)は、空孔サイズが15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。空孔(C)は、空孔(A)を含んでいてもよい。セラミックス体の内層部にのみ空孔サイズの大きい空孔(C)を有することにより、セラミックス体の軽量化を図ることができる。
【0021】
セラミックス体における空孔(空孔(A),(B),(C))の空孔サイズは、セラミックス体の断面のSEM画像に含まれる空孔のうち10個の空孔について実測し、その平均値を算出することによって決定することができる。
【0022】
本実施形態のセラミックス体をなす材料の成分は、特に限定されない。例えば、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、サイアロン、これらのうちの2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0023】
本実施形態のセラミックス体の形状は特に限定されず、球形状、円柱形状、円錐形状、円錐台形状、直方体形状等、用途によって適宜選択すればよい。また、セラミックス体のサイズも特に限定されず、例えば、球形状であれば直径を0.5cm~10cmとすることができ、円柱形状であれば底面の直径を0.5cm~15cmとし、高さを3cm~20cmとすることができる。
【0024】
上記のセラミックス体は、例えば、セラミックス粉末を用いて得られた造粒粉を成形して焼結することによって製造することができる。セラミックス粉末を用いて得られた造粒粉は、中空の粒状物及び凹部を有する粒状物のうちの少なくとも一方を含むことが好ましく、中空の粒状物は、凹部を有していてもよい。造粒粉は、中実の粒状物を含んでいてもよい。ここで、中空とは、粒状物表面で外部に連通していない空隙部分をいい、凹部とは、粒状物表面に形成された窪みであって窪み内の空間が外部と連通しているものをいう。
【0025】
造粒粉は、公知の方法で製造することができるが、例えば、セラミックス粉末と有機溶媒とを混合して得られたスラリーをスプレードライして製造することができる。スラリーを形成する際には、セラミックス粉末の成形性を高めるための成形用バインダー、潤滑剤、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。セラミックス粉末、有機溶媒、及び添加剤の混合は、例えばボールミル、ビーズミル、アトライター等の公知の撹拌装置を用いて行うことができる。スプレードライは、ノズル方式や、ディスク(ロータリーアトマイザー)方式等により行うことができる。スプレードライに供するスラリー中のセラミックス粉末[g](重量)と有機溶媒[cc](体積)との比や、スプレードライ時の乾燥温度を調整することにより、中空の粒状物や凹部を有する粒状物を含む造粒粉を得ることができる。
【0026】
セラミックス粉末としては、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、サイアロン、これらのうちの2種以上の混合物等を用いることができる。
【0027】
有機溶媒としては、スプレードライの乾燥時に揮発することができる成分であれば特に限定されない。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール;アセトン;メチルエチルケトン;テトラヒドロフラン、これらのうちの2種以上の混合物等を挙げることができる。有機溶媒としては、上記のうちアルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0028】
造粒粉を成形して焼結する工程では、金型プレス成形(一軸成形)やCIP成形により、造粒粉を所望の形状に成形すればよい。造粒粉は成形時に印加される成形圧力によって解砕され、解砕によって生じた粒子が圧密化されて成形体が得られる。このとき、成形型内の空間の外周部分に存在する造粒粉は、印加される成形圧力の影響を受けやすいため解砕されやすいが、成形型内の空間の内部部分に存在する造粒粉は、印加される成形圧力の影響を受けにくいため解砕されにくくなっている推測される。そのため、上記したように、中空の造粒物や凹部を有する造粒物を含む造粒粉を用いて成形を行うと、成形体の内部部分には、成形圧力によって解砕されていない造粒粉が存在することとなり、このような解砕されていない造粒粉中に含まれる造粒物が有する中空部分や凹部によって形成される空孔が成形体にも残存すると考えられる。また、このような成形体を焼結して得られるセラミックス体の内部にも、上記した造粒物が有する中空部分や凹部によって形成される空孔が残存すると考えられる。
【0029】
(セラミックス体の用途)
本実施形態のセラミックス体は、例えば、転がり軸受、直動案内軸受、ボールねじ、直動ベアリング等の転動装置の転動体に用いることができ、特に軸受用転動体として好適に用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0031】
[セラミックス体の密度の測定]
各実施例及び比較例で得たセラミックス体の密度は、JIS R1634:1998にしたがい、アルキメデス法によって測定した。
【0032】
〔セラミックス体の断面観察〕
各実施例及び比較例で得たセラミックス体をダイヤモンドカッターで切断し、切断面に鏡面研磨を行って、SEM(日立ハイテク社製「Type-N(S-3000N)」)を用いて断面画像を得、セラミックス体の表層部及び内層部に存在する空孔を確認した。
【0033】
SEMを用いて得られた断面画像において、セラミックス体の表面から厚み800μm以内を表層部とし、厚み800μm超の範囲を内層部とし、それぞれの層に存在する空孔の空孔サイズについて、上記断面画像中に含まれる空孔のうち10個の空孔について実測し、その平均値を算出して決定した。表層部に存在する空孔の空孔サイズを確認し、内層部に10μm超の空孔サイズの空孔(C)の存在の有無を確認した。
【0034】
また、SEMを用いて得られた断面画像において、内部に結晶粒を有する空孔(A)を確認した場合には、結晶粒のサイズについて、上記断面画像を用いて10個の結晶粒について実測し、その平均値を算出して決定した。
【0035】
〔セラミックス体の緻密性の評価〕
得られたセラミックス体の表層部及び内層部における緻密性を評価するために、上記セラミックス体の断面観察で得た断面画像中の表層部及び内層部の空孔率を測定した。空孔率は、KEYENCE製VHX-5000で撮影した100倍画像を用いて、三谷商事製WINROOFによって算出した。
【0036】
〔実施例1〕
セラミックス粉末(原料粉)として、窒化珪素(Si3N4、デンカ製「SN9-FWS」)90重量%、酸化アルミニウム(Al2O3、住友化学(株)製「AKP-30」)5重量%、酸化イットリウム(Y2O3)、H.C.Stark「GradeC」)5重量%を配合したものを準備した。このセラミックス粉末に、成形用バインダー(積水化学株式会社製「エスレックBL-1」)、有機溶媒としてのエタノールを添加し、ボールミルで60時間混合してスラリーを得た。セラミックス粉末とエタノールとの混合比(エタノール[cc]/セラミックス粉末[g])は、表1に示すとおりである。また、成形用バインダーの添加量は、セラミックス粉末100重量部に対して5重量部とした。
【0037】
得られたスラリーを、スプレードライヤー(大川原加工機製「CL-12」)を用い、表1に示す乾燥温度で造粒を行い、造粒粉を得た。得られた造粒粉中の造粒物の形状について拡大鏡(400倍)を用いて観察したところ、凹みを有する造粒物が含まれていた。
図1(a)に、本実施例で得られた造粒粉の形状を拡大鏡で観察した画像の図を示す。
【0038】
上記で得られた造粒粉を用い、直径φ10mmの球形の金型を用い、200kgff/cm2の条件で一軸プレス成形を行い、さらに2000kgf/cm2の条件でCIP(冷間等方加圧)処理を行って成形体を得た。得られた成形体を、温度500~600℃で熱処理して成形用バインダーを除去した後、0.8MPa窒素雰囲気中、温度1700℃~1800℃、4時間~6時間の条件下で常圧焼結を行い、続いて、200MPa窒素雰囲気中、温度1700℃~1800℃、1時間~2時間の条件下で加圧焼結を行い、セラミックス体を得た。
【0039】
得られたセラミックス体の密度の測定、断面観察を行った。その結果を表1に示す。また、
図2(a)~(c)に、本実施例で得られたセラミックス体の断面観察を行った画像の図であり、
図2(b)及び(c)は、
図2(a)中の(b)及び(c)部分を拡大した画像を示す図である。得られたセラミックス体の断面観察から、表層部が内層部よりも緻密性が高く、内層部には、10μm超の空孔サイズの空孔が存在し、表層部には、10μm以下の空孔サイズが空孔のみが存在していることがわかった。
【0040】
さらに、本実施例で得られたセラミックス体の内層部内の空孔の断面観察を行った画像の図を
図3(a)~(c)に示す。
図3(b)は、
図3(a)中の(b)部分を拡大して示したものであり、
図3(c)は、
図3(b)中の(c)部分を拡大して示したものである。
図3(c)から、本実施例で得られたセラミックス体の空孔内には、セラミックス粉末の造粒時に形成された結晶粒(サイズ:3~10μm)が存在していることがわかった。また、結晶粒は空孔の内壁面に存在し、内壁面から成長しているものであった。
【0041】
〔実施例2~5、比較例1〕
セラミックス粉末とエタノールとの添加量の割合、スプレードライヤーによる造粒時の乾燥温度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の手順で造粒粉を得た。得られた造粒粉を用いて、実施例1と同様の手順で成形体、セラミックス体を得た。
【0042】
各実施例及び比較例で得られた造粒粉の形状について拡大鏡(400倍)を用いて観察したところ、実施例2では、凹みを有する造粒粉が得られ、実施例3及び4では、中空の造粒粉が得られ、実施例5では、凹みを有する造粒粉及び中空の造粒粉が混在しており、比較例1では、中実の造粒粉が得られた。
図1(b)及び(c)にそれぞれ実施例5及び比較例1で得られた造粒粉の形状を拡大鏡で観察した結果を示す。
【0043】
また、各実施例及び比較例で得られたセラミックス体の密度の測定、断面観察を行った。得られたセラミックス体の断面観察から、実施例2~5では、表層部が内層部よりも緻密性が高く、内層部には、10μm超の空孔サイズの空孔が存在し、表層部には、10μm以下の空孔サイズが空孔のみが存在していることがわかった。一方、比較例1では、全体が同程度の緻密性であり、表層部及び内層部に存在する空孔の空孔サイズは、いずれも10μm以下の空孔サイズの空孔のみが存在していた。
図4(a)及び(b)は、比較例1で得られたセラミックス体の断面観察を行った画像を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)中の(b)部分を拡大して示したものである。
【0044】
さらに、実施例2~5で得られたセラミックス体の内層部内の空孔を観察した結果から、セラミックス体の空孔内には、焼結時に成長した結晶粒が存在していることがわかった。セラミックス体の空孔中の結晶粒のサイズは、実施例2では7μmであり、実施例3では5μmであり、実施例4では4μmであり、実施例5では8μmであった。比較例1で得られたセラミックス体の空孔には、結晶粒は確認できなかった。
【0045】
〔比較例2及び3〕
セラミックス粉末とエタノールとの添加量の割合、スプレードライヤーによる造粒時の乾燥温度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の手順でスプレードライヤによる造粒を試みたが、造粒粉を得ることができなかった。
【0046】
【0047】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のセラミックス体は、転がり軸受、直動案内軸受、ボールねじ、直動ベアリング等の転動装置の転動体に用いることができる。