IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ピラー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-可動支承装置 図1
  • 特許-可動支承装置 図2
  • 特許-可動支承装置 図3
  • 特許-可動支承装置 図4
  • 特許-可動支承装置 図5
  • 特許-可動支承装置 図6
  • 特許-可動支承装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】可動支承装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221116BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20221116BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20221116BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/04 E
E01D19/04 E
E04H9/02 331E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019046312
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020148260
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田邊 智里
(72)【発明者】
【氏名】前村 直也
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275130(JP,A)
【文献】特開2010-185240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 15/04
E01D 19/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部建造物に配設された上沓と、下部建造物に配設された下沓と、前記上沓と前記下沓との間に配置された中間沓とを備え、前記上沓と前記中間沓との対向部分における摺動面同士、及び前記中間沓と前記下沓との対向部分における摺動面同士が摺動することで相対的に摺動可能な可動支承装置であって、
前記上沓の上部摺動面及び前記下沓の下部摺動面の一方が他方に対して凹状となる断面曲線状の凹球状摺動面であるとともに、他方は水平面で構成され、
前記中間沓において前記上部摺動面と摺動する中間上摺動面及び前記下部摺動面と摺動する中間下摺動面のうち、前記凹球状摺動面と対向して摺動する摺動面が前記凹球状摺動面に対応する凸球状摺動面であり、前記水平面で構成された他方の摺動面と対向して摺動する摺動面が水平面で構成され
前記上部摺動面、前記下部摺動面、前記中間上摺動面及び前記中間下摺動面は平面視円形に形成され、
前記凸球状摺動面と、前記中間沓を構成する沓本体との間に、弾性材が配置された
可動支承装置。
【請求項2】
前記中間上摺動面及び前記中間下摺動面がPTFE材で構成されている
請求項1に記載の可動支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、下部建造物で上部建造物を支承する建設分野における可動支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ビル、橋梁、あるいは固定建造物同士を接続する接続部分等の振動や相対変位が生じる建造物において、水平方向に移動可能に支承する支承装置があり、さらには、所定の可動範囲に対して摺動面を小型化するために、二面滑り支承、あるいは両面滑り支承と呼ばれる支承装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の支承装置は、上下方向に離間する上部建造物と下部建造物との対向部分において対向する滑り板の間に、滑り機能を上下に有する滑動子(中間沓)を挟み込んで構成することによって、上部建造物及び下部建造物が滑動子(中間沓)に対して可動方向における一方側と他方側とに相対移動する。このため、例えば、通常の下沓を備えた下部建造物に対して上沓を備えた上部建造物が摺動する支承装置に比べて、摺動面の大きさに対する可動範囲が大きくなる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の支承装置の場合、摺動面の大きさに対する可動範囲が大きくなるものの、上部建造物と下部建造物との間に配置した滑動子(中間沓)が上部建造物と下部建造物との両方に対して摺動するため、上部建造物と下部建造物との相対移動が解消した後、滑動子(中間沓)が元の中央位置(所定位置)に戻らないおそれがあった。
【0005】
このように、滑動子(中間沓)が元の中央位置(所定位置)に戻らない場合、上部建造物の荷重を所定位置から偏心した位置にある滑動子(中間沓)を介して下部建造物で支持することとなり、支持条件が異なり、十分な支持性能が得られないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-210826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、摺動面の大きさに対して大きな可動範囲が得られるとともに、上部建造物及び下部建造物の相対移動が解消した後、中間沓が所定位置に戻って所定の支持条件で支承できる可動支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この可動支承装置は、上部建造物に配設された上沓と、下部建造物に配設された下沓と、前記上沓と前記下沓との間に配置された中間沓とが備えられ、前記上沓と前記中間沓との対向部分における摺動面同士、及び前記中間沓と前記下沓との対向部分における摺動面同士が摺動することで相対的に摺動可能であって、前記上沓の上部摺動面及び前記下沓の下部摺動面の一方が他方に対して凹状となる断面曲線状の凹球状摺動面であるとともに、他方は水平面で構成され、前記中間沓において前記上部摺動面と摺動する中間上摺動面及び前記下部摺動面と摺動する中間下摺動面のうち、前記凹球状摺動面と対向して摺動する摺動面が前記凹球状摺動面に対応する凸球状摺動面であり、前記水平面で構成された他方の摺動面と対向して摺動する摺動面が水平面で構成されたことを特徴とする。
【0009】
この可動支承装置によれば、摺動面の大きさに対して大きな可動範囲が得られるとともに、上部建造物及び下部建造物の相対移動が解消した後、中間沓が所定位置に戻って所定の支持条件で支承することができる。
【0010】
詳述すると、可動支承装置は、上部建造物に配設された上沓と、下部建造物に配設された下沓と、前記上沓と前記下沓との間に配置された中間沓とが備えられ、前記上沓と前記中間沓との対向部分における摺動面同士、及び前記中間沓と前記下沓との対向部分における摺動面同士が摺動することで相対的に摺動可能であるため、各摺動面の大きさに対して大きな可動範囲を得ることができる。
【0011】
また、前記上沓における前記上部摺動面及び前記下沓における前記下部摺動面の一方の摺動面が他方に対して凹状となる断面曲線状の凹球状摺動面であるとともに、前記中間沓において前記上部摺動面と摺動する前記中間上摺動面及び前記下部摺動面と摺動する前記中間下摺動面のうち、前記凹球状摺動面と対向して摺動する摺動面が前記凹球状摺動面に対応する凸球状摺動面であるため、前記上部建造物及び前記下部建造物の相対移動が解消した後には、前記上部建造物の支持荷重によって前記凹球状摺動面と前記凸球状摺動面とが摺動して、前記中間沓は所定位置に復帰することができる。そのため、相対移動が解消した後であっても、中間沓が所定位置に戻って所定の支持条件で支承することができる。
【0012】
なお、前記上部摺動面及び前記下部摺動面における他方の摺動面が前記水平面で構成され、前記中間沓における前記中間上摺動面及び前記中間下摺動面のうち他方の摺動面が水平面で構成されているため、前記上部摺動面及び前記下部摺動面の他方の摺動面も凹球面で構成され、前記中間沓における前記中間上摺動面及び前記中間下摺動面のうち他方の摺動面も凸球状摺動面である場合に比べ、前記上部建造物及び前記下部建造物の相対移動時における可動支承装置の高さの変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、摺動面の大きさに対して大きな可動範囲が得られるとともに、上部建造物及び下部建造物の相対移動が解消した後、中間沓が所定位置に戻って所定の支持条件で支承できる可動支承装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】可動支承装置の斜視図。
図2】可動支承装置の分解斜視図。
図3】可動支承装置の断面図。
図4】可動支承装置の摺動状態の説明図。
図5】可動支承装置の摺動状態の説明図。
図6】可動支承装置の断面図。
図7】他の実施形態の可動支承装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図1乃至図6とともに説明する。
図1は可動支承装置1の斜視図を示し、図2は可動支承装置1の分解斜視図を示し、図3は可動支承装置1の断面図を示し、図4及び図5は可動支承装置1の摺動状態の説明図を示し、図6は可動支承装置1の断面図を示している。
【0016】
なお、図1及び図2では下部建造物101及び上部建造物102の図示を省略している。また、図1及び図2では可動支承装置1の各要素の構成を明確にするために、手前側の一部を透過状態で図示している。
【0017】
詳しくは、図4(a)は下部建造物101と上部建造物102の相対移動初期の可動支承装置1のA-A矢視断面図(図1)を示し、図4(b)は相対移動が進んだ状態の可動支承装置1のA-A矢視断面図を示し、図5(a)は相対移動がさらに進んだ状態の可動支承装置1のA-A矢視断面図を示し、図5(b)は相対移動終了状態の可動支承装置1のA-A矢視断面図を示している。図6は、下部建造物101と上部建造物102の相対移動が解消した復帰状態の可動支承装置1のA-A矢視断面図(図1)を示している。
【0018】
可動支承装置1は、下部建造物101(図3参照)で上部建造物102(図3参照)を全方向への相対移動可能に支承する全方向可動支承装置であり、下部建造物101の上部に配置するベースプレート10(下沓に対応)と、上部建造物102の底部に配置するソールプレート20(上沓に対応)と、ベースプレート10とソールプレート20との間に配置され、それぞれと摺動可能に構成された中間沓30とで構成されている。
【0019】
下部建造物101の上面に配置するベースプレート10は、例えば鋼材で構成された、所定の厚みを有する平面視正方形状である。ベースプレート10には、平面視中央に、上方が開放された円筒状の下部摺動空間11が設けられている。下部摺動空間11の底面は、研磨された平面状の下部摺動面12を構成している。なお、ベースプレート10は、下部摺動面12が水平となるように、下部建造物101の上面に配置される。
【0020】
上部建造物102の底面に配置するソールプレート20は、上述のベースプレート10と同様に、例えば鋼材で構成された、所定の厚みを有する平面視正方形状である。ソールプレート20には、底面視中央に、下方が開放された円筒状の上部摺動空間21が設けられている。上部摺動空間21の上面は、上方に向かって凹状となる凹球面状の凹球状摺動面22を構成している。なお、下部摺動空間11と上部摺動空間21とは同径の円筒状空間である。
【0021】
凹球状摺動面22は、ソールプレート20の平面視中央がもっとも高い位置である頂点となり、頂点から径外側に向かって徐々に下方に向かう、曲率半径が一定の球面である。
【0022】
中間沓30は、ベースプレート10及びソールプレート20のそれぞれと摺動可能に、ベースプレート10とソールプレート20との間に配置される。中間沓30は、下部摺動空間11及び上部摺動空間21より小径で、下部摺動空間11と上部摺動空間21の深さの合計より高い高さを有する略円筒状の部材である。
【0023】
詳しくは、中間沓30は、図2に示すように、中間上摺動面を構成する中上摺動部40と、中間沓30の本体となる円筒状のベースポット31と、中間下摺動面を構成する中下摺動部50とで、上からこの順で構成されている。
【0024】
ベースポット31は、例えば鋼材で構成された、下部摺動空間11及び上部摺動空間21より小径で、下部摺動空間11と上部摺動空間21の深さの合計より高い高さを有する円筒状であり、中上摺動部40を装着する上装着凹部32を上部に設けるとともに、中下摺動部50を装着する下装着凹部33を下部に設けている。
【0025】
ベースポット31の下装着凹部33に装着する中下摺動部50は、自己潤滑性を有するとともに、低摩擦係数の充填材入りふっ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリアミド、ポリアセタールなどの樹脂で構成されたスライドベアリングであり、下装着凹部33の深さより高い高さを有する平面視円形の板状体である。このように構成された中下摺動部50の底面が中間下摺動面51を構成している。
【0026】
ベースポット31の上装着凹部32に装着する中上摺動部40は、図2に示すように、上から順に、凸球状ベアリング41、ピストン42、シールリング43、シム44、及び弾性プレート45で構成されている。
【0027】
凸球状ベアリング41は、後述するピストン42の上面に設けられ、上方に向かって凹状となる凹球面状の凹球状摺動面22と対応する、上方に凸状の球面状であり、自己潤滑性を有するとともに、低摩擦係数の充填材入りふっ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリアミド、ポリアセタールなどの樹脂で構成されている。なお、凹球面状の凹球状摺動面22と対応する、上方に凸状の球面状とは、凸球状ベアリング41の凸状球面と、凹球状摺動面22の凹状球面との半径が同じ径であることを指す。
【0028】
ピストン42は、ステンレス製の略円錐台状であり、シールリング43の嵌合を許容する円形凹部42aを下面の外周縁に沿って形成している。なお、ピストン42の下方は、上装着凹部32よりわずかに小径で形成している。
シールリング43は、径外側が垂直面となり、径内側が上方に向かって径外側に傾斜する傾斜面である片断面台形状の円形リングであり、外径が上装着凹部32の内径と略同じ径で形成している。
【0029】
シム44は、弾性プレート45と同じ径の平面視円形形状で形成したフッ素樹脂製の薄板で形成している。
弾性プレート45は、所定の厚みを有する、平面視円形のゴム製のプレートである。なお、シム44及び弾性プレート45は、シールリング43と同様に、外径が上装着凹部32の内径と略同じ径で形成している。
【0030】
このように各要素で構成された中間沓30は、ベースポット31の下装着凹部33に中下摺動部50を装着し、弾性プレート45、シム44、円形凹部42aにシールリング43を装着したピストン42及び凸球状ベアリング41をこの順で上装着凹部32に装着することで組み付けることができる。
【0031】
このとき、上装着凹部32に装着された中上摺動部40の上面である凸球状ベアリング41が少なくともベースポット31の上面より上方に突出する。また、上装着凹部32の内径とピストン42との間に径方向の隙間が形成される。
【0032】
さらに、下装着凹部33に装着された中下摺動部50の底面である中間下摺動面51が少なくともベースポット31の底面より下方に突出する。
【0033】
このようにして組み付けられた中間沓30を、上部建造物102の底面に設けたソールプレート20と、下部建造物101の上面に設けたベースプレート10との間に配置することで可動支承装置1を構成することができる。
【0034】
詳述すると、ベースプレート10の下部摺動空間11において、下部摺動面12と中間下摺動面51とが対向するとともに、ソールプレート20の上部摺動空間21において、凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41とが対向するように中間沓30を配置する。
【0035】
このように中間沓30を配置することで、可動支承装置1は、水平面となる下部摺動面12と中間下摺動面51とが面内方向に摺動できるとともに、対応する球面で構成した凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41とが摺動することができる。
【0036】
なお、このように、ベースプレート10とソールプレート20との間に配置される中間沓30は、ベースプレート10及びソールプレート20の平面視中心に配置される。換言すると、凹球面状の凹球状摺動面22においてもっとも高い位置である頂点と、凸球面状の凸球状ベアリング41の頂点とが一致する位置に配置される。なお、以下の説明においては、この平面視中央となる位置を所定位置という。
【0037】
続いて、可動支承装置1を装着した下部建造物101と上部建造物102との相対移動する際の可動支承装置1の動きについて説明する。なお、以下の説明では、下部建造物101に対して上部建造物102が右方向に相対移動する場合について説明するが、もちろんその方向は問わない。
【0038】
図4(a)に示すように、下部建造物101に対して上部建造物102が右側に相対移動すると、相対移動する上部建造物102及びソールプレート20に伴って、中間沓30が右側に相対移動する。これは、水平面である下部摺動面12と中間下摺動面51との間の摺動抵抗が、球面同士が対向する凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41との間の摺動抵抗より小さいことに起因し、中間沓30は上部建造物102及びソールプレート20の相対移動に伴ってベースプレート10に対して相対移動することとなる。
【0039】
図4(b)に示すように、下部建造物101に対する上部建造物102の相対移動がさらに進み、下部摺動空間11の右側端部まで中間沓30が相対移動すると、ベースプレート10に対する中間沓30の右側への相対移動は規制される。
【0040】
そのため、図5(a),(b)に示すように、下部建造物101に対する上部建造物102の相対移動がさらに進むと、ベースプレート10によって右側への移動が規制された中間沓30に対してソールプレート20が右側に相対移動することとなる。このとき、図5(b)におけるa部拡大図に示すように、球面状である凹球状摺動面22に対応する球面状である凸球状ベアリング41は、弾性プレート45によって傾斜する。
【0041】
これは、凸球状ベアリング41は、凹球状の凹球状摺動面22と同径の球面で構成されているものの、下部摺動面12と中間下摺動面51とが水平方向に摺動することで、凹球状摺動面22に対して凸球状ベアリング41は水平方向に相対移動しているため、当接箇所において凹球状摺動面22の法線方向と凸球状ベアリング41の法線方向とが略一致するように、弾性変形できる弾性プレート45によって凸球状ベアリング41が傾斜して、凸球状ベアリング41と凹球状摺動面22とが面接触することとなる。
【0042】
このように、可動支承装置1は、ベースプレート10及びソールプレート20のそれぞれに対して中間沓30を摺動可能に設けているため、単にベースプレート10とソールプレート20とを摺動させる場合に比べて、広い可動範囲で摺動することができる。したがって、下部建造物101と上部建造物102との広い相対移動に対応することができる。
【0043】
なお、上述のように下部建造物101と上部建造物102の相対移動に対して、可動支承装置1は、対向する下部摺動面12と中間下摺動面51及び凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41とが摺動して支承したが、図5に示すように、下部建造物101と上部建造物102の相対移動が解消すると、下部建造物101と上部建造物102に伴ってベースプレート10及びソールプレート20の相対移動も解消する。
【0044】
このとき、対向する下部摺動面12と中間下摺動面51及び凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41とが摺動して、中間沓30は所定位置である当初の中央位置に復帰する。しかし、図6に示すように、中心位置に復帰できなかった場合であっても、図6のa部拡大図に図示するように、中心位置まで復帰できなかった中間沓30の凸球面状の凸球状ベアリング41には、凹球面状の凹球状摺動面22を介して上部建造物102の自重が作用しており、凸球状ベアリング41に作用した自重は、軸方向(上下方向)に対して傾斜する球面によって、当初の中央位置に向かう方向の力として中間沓30に作用するため、中間沓30は当初の中央位置に復帰することができる。
【0045】
上述したように、可動支承装置1は、上部建造物102に配設されたソールプレート20と、下部建造物101に配設されたベースプレート10と、ソールプレート20とベースプレート10との間に配置された中間沓30とが備えられ、ソールプレート20と中間沓30との対向部分における摺動面同士、及び中間沓30とベースプレート10との対向部分における摺動面同士が摺動することで相対的に摺動可能であり、凹球状摺動面22が下部摺動面12に対して凹状の断面曲線状の凹球面であるとともに、下部摺動面12は水平面で構成され、凹球状摺動面22と対向して摺動する凸球状ベアリング41が、凹球面に対応する凸球面であり、下部摺動面12と対向して摺動する中間下摺動面51が水平面で構成されているため、摺動面(12,22)の大きさに対して大きな可動範囲が得られるとともに、上部建造物102及び下部建造物101の相対移動が解消した後、中間沓30が所定位置に戻って所定の支持条件で支承することができる。
【0046】
詳述すると、上部建造物102に配設されたソールプレート20と、下部建造物101に配設されたベースプレート10と、ソールプレート20とベースプレート10との間に配置された中間沓30とが備えられ、ソールプレート20と中間沓30との対向部分における摺動面同士、及び中間沓30とベースプレート10との対向部分における摺動面同士が摺動することで相対的に摺動可能であるため、各摺動面の大きさに対して大きな可動範囲を得ることができる。
【0047】
また、ソールプレート20における凹球状摺動面22が下部摺動面12に対して凹状の断面曲線状の凹球面であるとともに、凹球状摺動面22と対向して摺動する凸球状ベアリング41が凹球面に対応する凸球面であるため、上部建造物102及び下部建造物101の相対移動が解消した後には、上部建造物102の支持荷重によって凹球状摺動面22と凸球状ベアリング41とが摺動して、中間沓30は所定位置に復帰することができる。そのため、相対移動が解消した後であっても、中間沓30が所定位置に戻って所定の支持条件で支承することができる。
【0048】
なお、下部摺動面12及び中間下摺動面51が水平面で構成されているため、下部摺動面12も凹球面で構成され、中間沓30における中間下摺動面51も凸球面である可動支承装置に比べ、上部建造物102及び下部建造物101の相対移動時における可動支承装置1の高さの変化を抑制することができる。
【0049】
また、凸球面である凸球状ベアリング41を備えたピストン42と、中間沓30を構成するベースポット31との間に、弾性プレート45が配置されているため、凹球状摺動面22を有するソールプレート20に対して相対移動した中間沓30の凸球面である凸球状ベアリング41を備えたピストン42が、断面曲線状の凹球状摺動面22の向きに応じてベースポット31に対して傾斜できるため、凹球状摺動面22に凸球状ベアリング41が角あたりすることなく、スムーズに摺動することができる。
さらにまた、凸球状ベアリング41及び中間下摺動面51がPTFE材で構成されているため、摺動抵抗の増大を抑制し、スムーズに摺動させることができる。
【0050】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、上部建造物は上部建造物102に対応し、
以下同様に、
上沓はソールプレート20に対応し、
下部建造物は下部建造物101に対応し、
下沓はベースプレート10に対応し、
中間沓は中間沓30に対応し、
可動支承装置は可動支承装置1に対応し、
上部摺動面は凹球状摺動面22に対応し、
下部摺動面は下部摺動面12に対応し、
中間上摺動面は凸球状ベアリング41に対応し、
中間下摺動面は中間下摺動面51に対応し、
沓本体はベースポット31に対応し、
弾性材は弾性プレート45に対応するも、
上記実施形態に限定するものではない。
【0051】
例えば、上述の可動支承装置1では、ベースプレート10の下部摺動面12が水平面であり、ソールプレート20の凹球状摺動面22が上方に凹状となる凹球面で構成したが、ソールプレート20において凹球状摺動面22を構成していた上部摺動空間21の上面を水平面で構成し、ベースプレート10において下部摺動面12を構成していた下部摺動空間11の下部摺動面12を下方に凹状となる凹球面で構成してもよい。
【0052】
この場合、中間沓30において凸球状ベアリング41を構成していた中間上摺動面を水平面で構成するとともに、中下摺動部50において中間下摺動面51を構成していた底面を下方に向かって凸状となる凸球面で構成することで、上述した可動支承装置1と同様の効果を奏することができる。
【0053】
また、上述の可動支承装置1では、ベースプレート10及びソールプレート20は平面視正方形状であったが、下部建造物101及び上部建造物102の取付け箇所の形状によっては、図7に示すように、平面視円形状のベースプレート10及びソールプレート20で構成する可動支承装置1aであってもよい。なお、ベースプレート10とソールプレート20との一方が平面視正方形状であり、他方が平面視円形であってもよい。これらの場合であっても上述した可動支承装置1と同様の効果を奏することができる。
【0054】
また、上述の可動支承装置1では、凸球状ベアリング41と中間下摺動面51を、自己潤滑性を有するとともに、低摩擦係数の充填材入りPTFEで構成したが、凸球状ベアリング41及び中間下摺動面51が対向して摺動する下部摺動面12及び凹球状摺動面22に低摩擦係数の充填材入りPTFEで構成されたスライドプレートやPTFEコーティングまたは研磨仕上げを施したステンレス鋼板を設けてもよい。これにより、摺動性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…可動支承装置
10…ベースプレート
12…下部摺動面
20…ソールプレート
22…凹球状摺動面
30…中間沓
31…ベースポット
41…凸球状ベアリング
45…弾性プレート
51…中間下摺動面
101…下部建造物
102…上部建造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7