(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】金属酸化物、その分散液、樹脂組成物、及び熱線遮蔽性フィルム
(51)【国際特許分類】
C01G 19/00 20060101AFI20221116BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221116BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20221116BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221116BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221116BHJP
C09D 201/00 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
C01G19/00 A
C09D7/61
C09D7/62
C09D7/63
C09D7/65
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2019055831
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】海老原 頌子
(72)【発明者】
【氏名】有福 達治
(72)【発明者】
【氏名】野原 彰浩
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/060807(WO,A1)
【文献】特開2003-327429(JP,A)
【文献】特開2008-230954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 19/00
C09D 7/61
C09D 7/62
C09D 7/63
C09D 7/65
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L
*a
*b
*表色系で示したL
*a
*b
*値が、下記式(1)~(3)、
比表面積Sが下記式(4)’、及び粒度分布測定におけるD50が下記式(6)を全て満たす、錫ドープ酸化インジウム。
39≦L
*≦60 (1)
-20≦a
*≦
-7 (2)
-30≦b
*≦
-10 (3)
24m
2
/g≦S≦39m
2
/g (4)’
30nm≦D50≦100nm (6)
【請求項2】
(A)請求項1に記載の
錫ドープ酸化インジウム、及び(B)溶剤を含有する分散液。
【請求項3】
粒度分布測定における(A)
錫ドープ酸化インジウムのD95が下記式(5)を満たす請求項
2に記載の分散液。
50nm≦D95≦200nm (5)
【請求項4】
更に(C)分散剤を含有する請求項
2又は3に記載の分散液。
【請求項5】
請求項
2乃至
4のいずれか一項に記載の分散液と、(D)バインダー樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項6】
更に(E)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有する請求項
5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の樹脂組成物を硬化して得られる熱線遮蔽性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線遮蔽性フィルムへの応用展開が可能な金属酸化物に関する。より詳細には、日射熱取得率に優れ、かつ可視光透過性、透明性にも優れる金属酸化物、その分散液、樹脂組成物、及び熱線遮蔽性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の窓、乗り物の窓、あるいは冷蔵、冷凍ショーケースの窓等において、暑さの軽減、省エネルギー化等を図るために、これらの窓に熱線(赤外線)を反射または吸収する性能を付与することが求められており、その一方法として透明な熱線遮蔽性透明シートを各窓に貼着する方法がある。
【0003】
従来の透明性の高い熱線遮蔽性透明シートを作製する方法としては、誘電体の多層薄膜または金属膜または透明導電膜の薄膜をスパッタリング、蒸着等の方法を用いて、透明シート上に熱線遮蔽層として成膜し、さらに粘着剤を塗布する方法が採用されている。
【0004】
また、特許文献1には、透明フィルム基体の一面上に、アンチモン含有酸化スズ微粒子または錫ドープ酸化インジウム微粒子を含有したハードコート層を形成し、他の一面上に粘着剤層、剥離層を順次積層した積層構造の膜を形成し、このハードコート層が熱線遮蔽層を兼ねた熱線遮蔽膜付き透明フィルムが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2において、粘着剤に光学的選択吸収特性を有する物質を添加して、安価に光学的選択吸収特性を有する粘着フィルムを製造するアイデアが開示されている。
【0006】
また、特許文献3においては、疎水性アンチモン含有酸化スズとバインダー樹脂を用い、可視光に対しては透明で熱線のみを遮蔽するコーティング剤が開示されており、特許文献4においては、ハードコート層または粘着剤層に熱線遮蔽性微粒子を含有させた、可視光に対しては透明で熱線のみを遮蔽する粘着シートが開示されている。
【0007】
更に、特許文献5において、粘着剤に熱線遮蔽性微粒子を分散させることにより、透明性および熱線遮蔽性の付与を簡素化させること、熱線遮蔽性粘着剤およびその製造方法、ならびに熱線遮蔽性透明シートが開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの熱線遮蔽性透明シートでも可視光領域における透過率やヘイズが十分ではなく、可視光領域における透過率、ヘイズ、および熱線遮蔽性のさらなる改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-281860号
【文献】特公昭57-10913号
【文献】特開平7-257922号
【文献】特開平8-281860号
【文献】特開平10-8010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、日射熱取得率に優れ、かつ可視光透過性、透明性をより改善することができる金属酸化物を提案するものであり、更にはその金属酸化物を用いた分散液、樹脂組成物、及び熱線遮蔽性フィルムを提供することを目的とする。なお、金属酸化物とは具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、及び/又は酸化亜鉛を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、L*a*b*表色系におけるL*a*b*が特定の範囲にある金属酸化物が上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下1)~9)に関するものである。
1)
L*a*b*表色系で示したL*a*b*値が、下記式(1)~(3)全てを満たす、酸化スズ、酸化インジウム及び酸化亜鉛の群から選択される少なくとも一種の金属酸化物。
39≦L*≦60 (1)
-20≦a*≦-5 (2)
-30≦b*≦-5 (3)
2)
比表面積Sが下記式(4)を満たす上記1)に記載の酸化スズ、酸化インジウム、及び酸化亜鉛の群から選択される少なくとも一種の金属酸化物。
24m2/g≦S≦40m2/g (4)
3)
(A)上記1)又は2)に記載の金属酸化物、及び(B)溶剤を含有する分散液。
4)
上記成分(A)が、錫ドープ酸化インジウムである上記3)に記載の分散液。
5)
粒度分布測定における(A)金属酸化物のD95が下記式(5)を満たす上記3)又は4)に記載の分散液。
50nm≦D95≦200nm (5)
6)
更に(C)分散剤を含有する上記3)乃至5)のいずれか一項に記載の分散液。
7)
上記3)乃至6)のいずれか一項に記載の分散液と、(D)バインダー樹脂を含有する樹脂組成物。
8)
更に(E)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有する上記7)に記載の樹脂組成物。
9)
上記8)に記載の樹脂組成物を硬化して得られる熱線遮蔽性フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属酸化物、その分散液、樹脂組成物、及び熱線遮蔽性フィルムは、可視光透過性、日射取得率およびヘイズに関する性能が総合的に優れている。従って、本発明の熱線遮蔽性フィルムを用いれば、視認性、可視光透明性が高く、高性能な熱線遮蔽機能を有する構造体や、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、透明基材用中間膜、及び合せガラス等を低コストかつ容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[L*a*b*表色系で示したL*値、a*値、b*値]
本発明の金属酸化物は、L*a*b*表色系で示したL*値が、上記式(1)を満たす酸化スズ、酸化インジウム、及び酸化亜鉛の群から選択される少なくとも一種の金属酸化物である。
L*a*b*表色系は可視光透過性、透明性(ヘイズ)、熱線遮蔽性(日射熱取得率)等に影響を与えるファクターであり、L*が39以上60以下である場合には、その効果が非常に優れたものとなる。
L*a*b*表色系とは、JIS Z8781-4で規定される三次元の近似的な均等色空間における色相と彩度を示す色度a*、b*及び明度L*のことである。a*は、プラス側で値が大きいほど赤味が強くマイナス側で値が大きいほど緑色味が強いことを表し、b*はプラス側で値が大きいほど黄色味が強くマイナス側で値が大きいほど青味が強いことを表す。また、明度L*は、0に近づくほど黒色味が強く100に近づくほど白味が強いことを表す。
本発明におけるL*は、39以上60以下である。そして、好ましい上限は59であり、更に好ましくは、58であり、特に好ましくは57である。また、好ましい下限は40であり、更に好ましくは51であり、特に好ましくは52である。従って、L*値として最も好ましくは52以上57以下である。日射熱取得率の特に優れた効果を実現することが可能である。
【0014】
L*a*b*値の測定方法は、日本電色工業社製のSE6000分光色差計を用いて、L*値、a*値、b*値を測定した。具体的には、無作為に選んだ粉体を専用のセルに入れ、光源D65、視野10°、反射測定径φ30mmの条件で測定を3回実施し平均化し、L*値、a*値、b*値とする。
【0015】
本発明の金属酸化物において、a*値は、上記式(2)を満たす。すなわちa*値は、-20以上-5以下である。更に好ましい下限としては-15であり、特に好ましい下限は-11である。また、更に好ましい上限は-7であり、特に好ましい上限は-9である。従って、a*値として最も好ましくは-11以上-9以下である。
また、本発明において、b*値は、上記式(3)を満たす。すなわちb*値は、-30以上-5以下である。更に好ましい下限としては-20であり、特に好ましい下限は-16である。また、更に好ましい上限は-10であり、特に好ましい上限は-15である。従って、b*値として最も好ましくは-16以上-15以下である。
【0016】
[比表面積S]
本発明の金属酸化物の比表面積Sは上記式(4)を満たす場合が好ましい。すなわち24m2/g以上40m2/g以下である場合が好ましい。
比表面積は、BELSORP-miniII(日本ベル(株))を用いたBET法で測定することができる。
比表面積Sの更に好ましい上限は39m2/gであり、特に好ましい上限は38m2/gである。また、更に好ましい下限は25m2/gであり、特に好ましい下限は29m2/gである。
BET法により測定された比表面積から粒子径を求めることができ、比表面積が小さくなりすぎると粒子径が大きくなり、可視光透過性、透明性(ヘイズ)が悪くなる。一方比表面積が大きくなりすぎると粒子径が小さくなりすぎて遮熱性能が悪くなる。
【0017】
本発明の金属酸化物は、可視光の吸収が少なく、近赤外部から遠赤外部にかけて良好な吸収、又は散乱特性を有しているものが適している。そのようなものとして、近赤外域にプラズマ波長を持っている電気伝導性の金属酸化物が挙げられる。具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛である。これらのうち、可視光領域に光吸収性の少ない酸化インジウム、酸化亜鉛が好適である。更に好ましくは酸化インジウムである。
【0018】
また、これらの金属酸化物の電気導電性を向上させるために第三成分をドープすることが好ましい。このためのドーパントとしては、酸化スズに対してはSb、V、Nb、Ta等が選ばれ、酸化インジウムに対してはZn、Al、Sn、Sb、Ga、Ge等が選ばれ、酸化亜鉛に対しては、Al、Ga、In、Sn、Sb、Nb等が選ばれる。本発明においては、錫ドープ酸化インジウム(ITOともいう)又はアンチモン含有酸化錫(ATO)がより好ましく、錫ドープ酸化インジウム(ITO)が更に好ましい。ドーパントの含量は特に限定されないが、ドーパントされた金属の総量に対して、1~25重量%程度、好ましくは、5~20重量%程度である。ITOにおける錫含量も同じである。
なお、本明細書において「~」は以上以下を意味する。すなわち「~」を挟む前後の数値は含むものとする。
【0019】
さらに60MPaで圧縮した際の粉体抵抗(粉体抵抗測定システムMCP-PD51型、三菱化学アナリテック製)が100Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは1Ω・cm以下の金属酸化物が好ましい。粉体抵抗が100Ω・cmより高い微粒子を用いた場合、微粒子のプラズマ振動に由来する反射が2500nmより大きくなり熱線遮蔽効果が低減する。
【0020】
[溶剤(B)]
本発明の分散液は、上記金属酸化物(A)と溶剤(B)を含有するものである。
溶剤(B)としては、特に限定されるものではないが、本発明では水や有機溶媒、また、各々配合し混合物として使用しても良い。有機溶媒としては、例えば炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1、4-ジオキサン等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等)、グリコールエーテル系溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、アミド系溶媒(N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン)や、ピリジン、テトラヒドロフラン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドが挙げられる。好ましくは、水、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、炭化水素系溶媒であり、より好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンである。
【0021】
[D95、D50、D10]
D95とは、粒度分布を測定し、体積分布の累積が95%に相当するときの粒子径である。具体的には動的光散乱方式の粒径測定装置(日機装製;ナノトラックUPA-EX150)等により測定することができる。また、D50、D10も同様に粒度分布を測定し、体積分布の累積がそれぞれ50%、10%に相当するときの粒子径を意味する。
本発明の金属酸化物では、D95が上記式(5)である場合がより好ましい。すなわち、D95の上限は、200nmが好ましく、更に好ましくは180nmであり、特に好ましくは160nmである。また、更に好ましい下限は50nmが好ましく、特に好ましくは70nmであり、最も好ましくは140nmである。従って、D95の最も好ましい範囲は140nm以上160nm以下である。
上記式(5)では粒子径が比較的大きい領域であり、一般にはヘイズが悪化する領域である。しかし、上記式(1)乃至(4)の条件と組み合わせることで、ヘイズの悪化を抑制しながら、優れた熱線遮蔽性能を実現することが可能である。
また、D50が30nm以上100nm以下である場合がより好ましい。D50の上限は、更に好ましくは90nmであり、特に好ましくは80nmである。また、更に好ましい下限は40nmであり、特に好ましくは50nmである。従って、D10の最も好ましい範囲は50nm以上80nm以下である。
更に、D10が5nm以上80nm以下である場合がより好ましい。D10の上限は、更に好ましくは70nmであり、特に好ましくは60nmである。また、更に好ましい下限は10nmであり、特に好ましくは20nmである。従って、D10の最も好ましい範囲は20nm以上60nm以下である。
【0022】
[(C)分散剤]
本発明の熱線遮蔽性樹脂組成物は、(C)分散剤を含有しても良い。(C)分散剤を含有させることで、均一な分散を可能とする。
(C)分散剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-17(共栄社化学株式会社製)、ソルプラスAX5、ソルプラスTX5、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250、(日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4060、EFKA4080、EFKA7462、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4310、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA5065、EFKA6220、EFKA6225、EFKA4330、EFKA6700、EFKA6780、EFKA6782、EFKA7701、EFKA8503(BASF社)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL-12(味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR-UV21、TEXAPHOR-UV61(コグニスジャパン株式会社製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182 、DisperBYK192、DisperBYK193 、DisperBYK2000、DisperBYK2001 、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYKP104、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430、ANTI TERRA U(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン1751N、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン1934、ディスパロンDA-400N 、ディスパロンDA-703-50、ディスパロンDA-725、ディスパロンDA-705、ディスパロンDA-7301、ディスパロンDN-900、ディスパロンNS-5210、ディスパロンNVI-8514L、ヒップラードED-152、ヒップラードED-216 、ヒップラードED-251、ヒップラードED-360(楠本化成株式会社)、FTX-207S、FTX-212P、FTX-220P、FTX-220S、FTX-228P、FTX-710LL、FTX-750LL、フタージェント212P、フタージェント220P、フタージェント222F、フタージェント228P、フタージェント245F、フタージェント245P、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント710FM、フタージェント730FM、フタージェント730LL、フタージェント730LS、フタージェント750DM、フタージェント750FM( 株式会社ネオス製)、AS-1100、AS-1800、AS-2000(東亞合成株式会社製)、カオーセラ2000、カオーセラ2100、KDH-154、MX-2045L、ホモゲノールL-18、ホモゲノールL-95、レオドールSP-010V、レオドールSP-030V、レオドールSP-L10、レオドールSP-P10(花王株式会社製)、エバンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA-167、ブライサーフA219B、ブライサーフAL(第一工業製薬株式会社製)、メガファックF-477、メガファック480SF、メガファックF-482、(DIC株式会社製)、シルフェイスSAG503A、ダイノール604(日信化学工業株式会社製)、SNスパーズ2180、SNスパーズ2190、SNレベラーS-906(サンノプコ株式会社製)、S-386、S-420(AGCセイミケミカル株式会社製)といったものが例示できる。
このうち、好ましくはEFKA-4300、EFKA-4310、EFKA-4320、EFKA-4330、EFKA-5065、EFKA-6230、EFKA-7701、DisperBYK102、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK163、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK180、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2155、ANTI TERRA Uであり、更に好ましくはEFKA-4300、EFKA-4310、EFKA-4320、EFKA-4330、EFKA-7701、DisperBYK102、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK140、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK180、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2155、ANTI TERRA U特に好ましくはEFKA-4320、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK140、DisperBYK180、DisperBYK2001、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2155である。
【0023】
[(D)バインダー樹脂]
本発明の金属酸化物や分散液にバインダー樹脂(D)を混合し、樹脂組成物とすることができる。なお、アクリルモノマーのような低分子化合物も、バインダーとして使用されうるものであれば、本明細書においてはバインダー樹脂と表現する。
(D)は成分の分散維持できる樹脂であれば、特に制限はない。通常、熱可塑性樹脂、及び/又は、熱又は光で硬化する硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂とも言う)(具体的には熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂)の硬化物等が挙げられる。
成分(D)の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物の総量100質量部中20質量部以上95質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、95質量部、更に好ましくは90質量部、特に好ましくは80質量部、最も好ましくは70質量部である。
また好ましい下限としては、20質量部、更に好ましくは30質量部、特に好ましくは40質量部、最も好ましくは50質量部である。
成分(D)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は50質量部以上70質量部以下である。
【0024】
成分(D)に用いられうる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を混合させたものであっても良い。これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~1,000,000程度であり、好ましくは2000乃至500,000程度、より好ましくは2000~200,000程度である。熱可塑性樹脂として好ましい樹脂は、透明性等の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましく、例えば(メタ)アクリレートポリマー、特に(メタ)アクリル共重合体等が好ましい。
【0025】
成分(D)に用いられうる熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性化合物が挙げられる。
上記環状エーテルを有する熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂を含む脂肪族エポキシ樹脂または芳香族エポキシ樹脂)、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂( 脂肪族環、例えば炭素数3~12の脂肪族環を含んでいても良い)、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型; ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’- ジアリルビスフェノールA 型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)N-740、N-770、N-775(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、エピコート(登録商標)152、エピコート(登録商標)154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロン(登録商標)N-660、N-665、N-670、N-673、N-680、N-695、N-665-EXP、N-672-EXP(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD-1000-L(日本化薬株式会社製)、HP-7200(大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールA 型エポキシ化合物としては、例えば、エピコート(登録商標)828、エピコート(登録商標)834、エピコート1001、エピコート(登録商標)1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)850、エピクロン(登録商標)860、エピクロン(登録商標)4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート(登録商標)807(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)830(大日本インキ化学工業株式会社製);2,2’-ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE-810NM(日本化薬株式会社製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST-5080(東都化成株式会社製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP-4000、EP-4005(以上、いずれも旭電化工業株式会社製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物の市販品として、例えば、エタナコール(登録商標)EHO、エタナコール(登録商標)OXBP、エタナコール(登録商標)OXTP、エタナコール(登録商標)OXMA(以上、いずれも宇部興産株式会社製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、セロキサイド(登録商標)2021、セロキサイド(登録商標)2080、セロキサイド(登録商標)3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー株式会社製) 等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
成分(D)に用いられうる光硬化性樹脂としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば(メタ)アクリレート化合物、が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」等の用語は、「アクリロイル」又は「メタクリロイ」を意味し、例えば「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社製、KAYARAD(登録商標)HX-220、HX-620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA等)、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル-4,4’-ビフェノール、ジメチル-4,4’- ビフェニルフェノール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことが出来る。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80~110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
【0027】
成分(D)としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が好ましく、光硬化性樹脂である場合が更に好ましい。
また、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である場合が特に好ましい。
分子内に3以上の(メタ)クリロイル基と極性官能基を併せ持つバインダー樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトルトリアクリレート(KAYARAD PET-30 日本化薬製)、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物(KAYARAD DPHA 日本化薬製)、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート(701A 新中村化学製)、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A-9300 新中村化学製)、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(A-9300-1CL 新中村化学)等の(メタ)アクリレートモノマー化合物、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(R-115F、R-130、R-381等 日本化薬製)、ビスフェノールF型エポキシアクリレート(ZFA-266H 日本化薬製)、酸変性エポキシアクリレート(ZARシリーズ、ZCRシリーズ 日本化薬製)等のエポキシアクリレート樹脂、ポリエステル系ウレタンアクリレート(UX3204、UX-4101、UXT-6100 日本化薬製)、混合系ウレタンアクリレート(UX-6101、UX-8101 日本化薬製)、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UX-937、UXF-4001-M35 日本化薬製)、エステル系ウレタンアクリレート(DPHA-40H、UX-5000、UX-5102D-M20、UX-5103D、UX-5005 日本化薬製)等のウレタンアクリレート樹脂を挙げることができる。
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を持つバインダー樹脂としては、より好ましくは3以上10以下の(メタ)クリロイル基を持つ場合であり、更に好ましくは4以上8以下の(メタ)アクリロイル基をもつ場合である。。
【0028】
[(E)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤]
本発明の樹脂組成物は、(E)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有しても良い。
なお、成分(D)バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂が用いられる場合には、成分(E)熱硬化剤が用いられ、光硬化性樹脂が用いられる場合には、成分(E)光開始剤が用いられる。ただし、光硬化性樹脂は不飽和二重結合のラジカル重合反応によって硬化する為、熱ラジカル重合開始剤を用いても同様である。
【0029】
成分(E)として用いられうる熱硬化剤としては、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えばアミン系硬化剤(以下アミン類とも言う)、ヒドラジド系硬化剤(以下ヒドラジド類とも言う)、イミダゾール系硬化剤(以下イミダゾール類とも言う)、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、イソシアネート、チオール系硬化剤(チオール類)、フェノール系硬化剤(フェノール類)等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。
アミン類としては、脂肪族鎖状アミン、脂肪族環状アミン、芳香族アミン、変性アミン(アミンアダクト、ケチミン等)等を挙げることができる。また1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミンのいずれであっても良いが、反応性の見地からは1級又は2級アミンが好ましい。
アミン類として具体的には、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、ビスアニリン、ジエチルトルエンジアミンを、ジエチルチオトルエンジアミン、N,N’-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン等の芳香族アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、ポリエーテルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、変性アミン等が挙げられる。特に好ましくは、ジエチルメチルベンゼンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンを挙げることができる。
ヒドラジド類としては、有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるサリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジンジヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4-シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’-ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
イミダゾール類としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル,4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
チオール類としては、カレンズMT PE1、BD1、NR1、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(いずれも昭和電工(株)製)等を挙げることができる。なお、チオール系硬化剤とは、分子内に少なくとも1つのチオール基(SH)を有する硬化剤である。
フェノール類としては、フェノール(各種置換基を有しても良い)にホルマリンを酸触媒下で縮合反応させて得られるフェノールノボラック類やビスフェノールA、ビスフェノールS等を例示することができる。
成分(E)として熱硬化剤が用いられる場合、その含有量は樹脂組成物の総量100質量部中0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、15質量部、更に好ましくは10質量部、特に好ましくは8質量部、最も好ましくは5質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(E)の樹脂組成物中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上5質量部以下である。
【0030】
成分(E)として熱硬化剤が用いられる場合には、熱硬化促進剤を併用しても良い。硬化促進剤としては、硬化促進剤としては、フェノール類、有機酸、ホスフィン類、イミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2-カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
ホスフィン類としてはトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等を挙げることができる。
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル-4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化促進剤を使用する場合に、その含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中、通常0.1~10質量部、好ましくは1~5質量部である。
【0031】
成分(E)として用いられうるラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を意味する。これらは、本発明の熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体の製造方法によって使い分けることができる。
(E)として用いられうる光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-エチルアンスラキノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9-フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、成分(E)は365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上10000(mL/g・cm)以下である場合が好ましく、100以上8000(mL/g・cm)以下である場合がさらに好ましく、1000以上7500(mL/g・cm)以下である場合が特にに好ましい。なお、モル吸光係数は、メタノール又はアセトニトリルを溶剤として測定したものである。
365nmにおけるモル吸光係数(ε)が100以上10000(mL/g・cm)以下である光重合開始剤とは、IRGACURERTM 651(メタノール中ε=360mL/g・cm)、IRGACURERTM 907(メタノール中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM 369(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 379(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 819(メタノール中ε=2300mL/g・cm)、IRGACURERTM TPO(アセトニトリル中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE-01(アセトニトリル中ε=7000mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE-02(アセトニトリル中ε=7700mL/g・cm)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
成分(E)として光ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量は樹脂組成物の総量100質量部中0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(E)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
【0032】
(E)として用いられうる熱ラジカル重合開始剤としては、当該熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメック(登録商標)A、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH-50L、BC-FF、カドックスB-40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22-70E、23-C70、121、121-50E、121-LS50E、21-LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP-70、TMPO-70、CND-C70、OO-50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボン(登録商標)BIC-75、AIC-75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメック(登録商標)N、H、S、F、D、G、パーヘキサ(登録商標)H、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアー(登録商標)AH、AL、HB、パーブチル(登録商標)H、C、ND、L、パークミル(登録商標)H、D、パーロイル(登録商標)IB、IPP、パーオクタ(登録商標)ND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA-044、V-070、VPE-0201、VSP-1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
成分(E)として熱ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量は樹脂組成物の総量100質量部中0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(E)の樹脂組成物中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
【0033】
[その他成分]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じ、例えば色素、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤架橋剤、可塑剤、無機微粒子、フィラー等を添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。
[色素]
上記色素は、無機系、有機系のいずれでも良く特に限定されないが、可視光透過率を損なわずに熱線遮蔽性能を向上するためには波長500nm~600nmに極大吸収を有さない色素が好ましい。例えば以下記述のものを用いることができる。
無機系顔料として、例えばコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素等を用いることができる。この内好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、鉛系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、更に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、特に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素である。
有機系顔料としては、例えばジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、ポルフィラジン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素等を用いることができる。このうち好ましくはポルフィラジン系色素であり、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【0034】
【化1】
式(1)中、Mは金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、若しくは金属ハロゲン化物、又は水素原子を表し、環A、B、C及びDの破線部は、それぞれ独立に、下記式(2)~(8)の何れか一つの構造であり、X は低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表し、Y は二価の架橋基を、Zはスルホン酸基、カルボキシ基、第1または2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、酸アミド基、又は窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1 つを除いた残基を表し、a及びbはそれぞれの基の数を表し、いずれも平均値であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上12以下であり、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。下記式(2)~(8)は開口部で、骨格構造へ結合して、環A、B、C及びDの芳香環を形成する。
【0035】
【0036】
環A、B、C又はDの破線部が、上記式(3)又は(4)であるとき、形成される芳香環はピリジン環であり、該破線部が上記式(5)~(7)のいずか一つであるとき形成される芳香環はピラジン環であり、該破線部が上記式(8)であるとき、形成される芳香環はナフタレン環である。Zにおける第1又は第2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としてはモノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基等を挙げることが出来る。また、酸アミド基としては、置換基を有してもよいフタル酸アミド基等を挙げることが出来る。窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としては、置換基を有してもよいピリジノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基、又は置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。
【0037】
前記式(1)中、環A乃至Dにおける芳香環としては、例えば、ベンゼン環またはナフタレン環をはじめ、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環等の窒素原子を1個又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではベンゼン環、ピリジン環及びナフタレン環からなる群から選択される何れか一つ又は2つの組み合わせが好ましく、全てが同じ芳香環であってもよい。環A乃至Dのうち、平均で、1~4個、好ましくは2~4個の、ピリジン環又はナフタレン環を含む方が好ましい。この場合、残りはベンゼン環である。より好ましくはベンゼン環が0~2個で、ピリジン環が0~3個、ナフタレン環が1~4個の範囲内で合計が4となる組合せである。更に好ましい組み合わせを挙げれば、ベンゼン環が0~2個で、ナフタレン環が2~4個の範囲で合計が4となる組み合わせ又はピリジン環が1~3個及びナフタレン環が1~3個の範囲で、両者の合計が4となる組み合わせである。なお、環A乃至Dがピリジン環とナフタレン環の組合せからなる態様はより好ましい態様の一つである。また、ピリジン環の中では、前記式(4)の構造から形成されるピリジン環が好ましい。
【0038】
前記式(1)において、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。Mが水素原子以外である場合、該Mは式(1)におけるポルフィリン環がいわゆる中心金属を有することを意味する。又、Mが水素原子である場合、該ポルフィリン環は中心金属を有しないことを意味する。
前記Mにおける金属原子の具体例としては例えば、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb又はBi等が挙げられる。
金属酸化物としてはVO又はGeO等が挙げられる。金属水酸化物としては例えば、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2又はAlOH等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl又はAlCl等が挙げられる。これらの中でも、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Al又はV等の金属原子、VO等の金属酸化物、又は、AlOH等の金属水酸化物等が好ましい。より好ましくはCu又はVOが挙げられ、VOが最も好ましい。
前記式(1)中のXは低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基又はスルホンアミド基を示す。なお、本明細書における「低級」とは炭素数1~4を示す。
Yにおける二価の連結基としては例えば炭素数1~3のアルキレン基、-CO2-、-SO2-又は-SO2NH(CH2)c-(ここで、cは0~4を表す)が挙げられる。好ましいYは、炭素数1~3のアルキレン基又は-SO2NH-であり、炭素数1~3のアルキレン基がより好ましい。好ましいZとしては例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。より好ましいZはカルボキシ基、スルホン酸基、又は、置換基を有してもよいフタルイミド基であり、置換基を有してもよいフタルイミド基が更に好ましい。なお、Zが置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基又は置換基を有してもよいピペリジノ基であるときの置換基としては低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はスルホン酸基等を挙げることができる。Zが、上記の置換基を有してもよい基であるとき、無置換又はハロゲノ置換された基が好ましい。より好ましいZは、無置換又はハロゲノ置換フタルイミド基であり、無置換フタルイミドが最も好ましい。
式(1)の近赤外線吸収色素において置換アミノ基は特に限定されないが、例えば低級アルキル基又は低級アルコキシ基が置換したアミノ基が含まれる。なおハロゲン原子としてはCl、Br又はIが好ましい。
前記式(1)中のa、bはそれぞれ0以上12以下、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。好ましくはa、bはそれぞれ独立に0以上4以下で、且つ、aとbとの和は0以上4以下である。本発明においては、式(1)においてaとbが共に0であるポルフィラジン色素が好ましい。
【0039】
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素の具体例を下記表2-1に化合物No.と共に示す。下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、本発明は下記の例に限定されるものではない。また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環が前記式(3)、(4)及び(6)である場合、窒素原子の位置異性体が存在し、色素合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体の単離は困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため、通常は混合物のまま使用する。本発明の色素は、このような混合物も含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示される場合は、便宜的に代表的な1つの構造式を記載する。表1において、A乃至Dの欄の数字は、前記式(2)~(8)の式番号を示し、a及びbの欄には、それぞれ、a及びbの値を示し、X、Y及びZの欄には基名を示した。X、Y及びZの欄における横線-は置換基が無いことを示す。
【表1】
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は一般に公知の化合物であるか、若しくは公知の化合物に準じて容易に合成することができる。前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は、例えば、国際公開第2010/143619号パンフレット及び国際公開第2010/013455号パンフレットに開示された公知の方法に準じて合成することができる。なお、上記方法によって得られる前記式(1)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、上記公知文献に記載の通りである。また、前記表1におけるNo.3やNo.18で示される化合物は、上記国際公開パンフレットの他、例えば、特許第2507786号パンフレット及び特許第3813750号パンフレットに開示された公知の方法に準じても合成することが出来る。
【0040】
[レベリング剤]
レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0041】
[光安定剤]
光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。
【0042】
[重合禁止剤]
重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられる。
【0043】
[架橋剤]
ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。
【0044】
[可塑剤]
可塑剤としてはジメチルフタレートやジエチルフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリト酸エステル、ジメチルアジペートやジブチルアジペートのような脂肪族二塩基酸エステル、トリブチルホスフェートやトリフェニルホスフェートのような正燐酸エステル、グリセルトリアセテートや2-エチルヘキシルアセテートのような酢酸エステルが挙げられる。
【0045】
本発明の金属酸化物の分散液中での含有量は、総量100質量部中0.1質量部以上50質量部以下が好ましい。
成分(A)の好ましい上限は、50質量部であり、更に好ましくは40質量部であり、特に好ましくは35質量部であり、最も好ましくは30質量部である。また、成分(A)の好ましい下限は、0.1質量部であり、更に好ましくは1質量部であり、特に好ましくは5質量部であり、最も好ましくは10質量部である。
【0046】
本発明の金属酸化物の熱線遮蔽性フィルムでの含有量は、総量100質量部中5質量部以上60質量部以下が好ましい。
成分(A)の好ましい上限は、60質量部であり、更に好ましくは50質量部であり、特に好ましくは40質量部であり、最も好ましくは30質量部である。また、成分(A)の好ましい下限は、5質量部であり、更に好ましくは10質量部であり、特に好ましくは15質量部であり、最も好ましくは20質量部である。
【0047】
<金属酸化物の製造方法>
本発明の金属酸化物は、例えば以下方法で製造することができる。 該微粒子の製法は、特に制限はなく、気相合成法、液層合成法等の公知の方法により得ることができる。例えば酸化インジウム微粒子については、特開平6-227815号公報に開示されている方法で良い。すなわち、特定の微粒子元素を含んだ塩の水溶液をアルカリにより中和し、得られた沈殿物をろ過、洗浄し、高温で加熱処理することにより微粒子を得る方法である。また、酸化錫微粒子、酸化亜鉛微粒子の製法については、それぞれ特開平2-105875号公報、特開平6-234522号公報に開示されている。また、上記性能を満たす微粒子であれば、市販されているものでも構わない。市販品としては、ITOまたは超微粒ITO等として、三菱マテリアル株式会社、マクセル株式会社、株式会社巴製作所、大日本塗料株式会社、Sigma-Aldrich社、アズワン社、一丸貿易株式会社、CIKナノテック株式会社等から販売されており、上記のL*a*b*表色系と比表面積Sを満たすものは何れも使用可能である。
本発明の金属酸化物は窒素、アルゴンまたは水素雰囲気下で加熱焼成することにより表面改質処理を行ってもよい。
【0048】
<分散液>
本発明の分散液は、以下方法で製造することができる。
【0049】
本発明の分散液は、本発明の金属酸化物の一次粒子を有機溶媒中に分散エネルギーを加えて分散して得られる。
【0050】
一次粒子を有機溶媒へ分散する方法としては従来の方法を用いることができる。すなわち、一次粒子と有機溶剤を所定比率に混合し、必要に応じて分散剤、界面活性剤等を添加し、サンドミル、アトライター、ボールミル、ホモジナイザー、ロールミル、ビーズミル等の分散装置を用いて分散することができる。分散エネルギーが該特定な範囲を外れて低すぎる場合は、粒子同士が凝集した状態となり、導電パスが形成され、表面抵抗が下がるだけでなく、シート平滑性が悪化し、遮熱性能の低下、高ヘイズが問題となる。また、分散エネルギーを高くし過ぎると、遮熱性能が低下する。粗粒子が残る場合は更にろ過、遠心分離などの処理で粗粒子を除くことが好ましい。
【0051】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、以下方法で製造することができる。
本発明の樹脂組成物は公知の方法で作製することができる。例えば、金属酸化物の分散液に、バインダー樹脂、必要に応じて色素の分散液、熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤、有機溶剤を混合し、最適な分散方法を用いて分散し、目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
<熱線遮蔽性フィルム>
本発明の熱線遮蔽性フィルムは、以下方法で製造することができる。
金属酸化物の分散液、バインダー樹脂、必要に応じて熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤、有機溶剤を混合し、最適な分散方法を用いて分散し得られた樹脂組成物を、例えば熱線反射膜、熱可塑性樹脂膜、ガラス等、また剥離性を有する基材(PET)の上に塗布し硬化させることで得られる。なお、剥離性を有する基材(例えばPET)を用いる場合には、熱線反射膜、熱可塑性樹脂膜、ガラス等に転写することで熱線吸収膜の層を形成する。
(塗布方法)
塗布方法に関しては、表面を平滑に塗布できれば、特に限定はない。例えば、場合により、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等も使用出来るが、シート平滑性の為に好ましくはバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター等の薄膜作製に適したコーティング装置の使用が好ましい。
熱線遮蔽性材料を塗工したシートの光学性能としては、可視光透過率が高く、日射熱取得率が低いものが理想的であるが、一般には両者は比例関係にあり、どちらの性能を重視するかにより光学性能を決定することになる。本発明においては、熱線遮蔽層の可視光透過率は、少なくとも70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上となる厚さに調整するのが好ましく、一般的には、乾燥後の厚さで、0.1μm~50μm程度の間で調整すれば良い。より好ましくは0.1μm~40μm程度である。樹脂バインダーとして硬化性樹脂を用いる場合、通常0.1μm~30μm、好ましくは0.1μm~20μm程度、更に好ましくは0.1μm~10μmの間で調整することができる。上記のようにして得られた熱線遮蔽層における可視光透過率は通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。また、該熱線遮蔽層におけるヘイズ値は通常8%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。ヘイズ値は低い方が好ましく、本発明の好ましい態様では、0.8%以下であり、より好ましい態様では0.5%以下までにすることができる。ヘイズ値の下限は特にないが、0.1%程度までと思われる。
熱線遮蔽フィルム通過後の日射熱取得率は70%以下、好ましくは、68%以下、より好ましくは60%以下を達成することが出来る。
また構造は以下の通りである。
【0053】
本発明における熱線遮蔽フィルムは、支持体を用いない状態でも良く、支持体を用いたシート状であっても良い。支持体を用いない場合は、例えば塗布時に剥離性を有する基材(例えば剥離PET)上に、該熱線遮蔽構造体を形成した後に、接着用の熱可塑性樹脂膜に転写して用いる方法が例示できる。
支持体を用いた場合は、透明性を担保できる支持体上に形成されていれば支障はなく、無機材料又は有機材料の何れであってもよい。例えば、PETフィルムやTACフィルム等の、光学用途に用いられる有機フィルムを用いても良いし、熱可塑性樹脂膜に直接塗工もしくは転写しても良い。また、近赤外線を吸収する機能や反射する機能等を有する機能性のシートであってもよい。通常、樹脂シート、無機ガラス板など光の透過性を阻害しない薄い板状体が使用される。厚さは特に限定されないが、通常、50μm~3mm程度である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。尚、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
塩化第2スズ(SnCl4・5H2O)5.9g及び塩化インジウム(InCl3)75.9gを水4000mlに溶解し、これに2%アンモニア水を58分かけて添加し、pHを最終的に7.85とすることにより酸化スズおよび酸化インジウムの水和物を共沈させた。この間、液温は5℃を維持するようにした。次いで、該共沈物を洗浄後乾燥、更に900℃にて2時間焼成し、スズ含有酸化インジウム(ITO)微粉末(金属酸化物)を得た。
【0056】
得られたITO粒子20部、分散剤DisperBYK140を12部、MEK溶液68部、充填率54.3%相当の平均粒径が30μmのジルコニアビーズを入れたペイントシェーカーで2時間分散処理した。また、得られた分散体(金属微粒子分散液)を遠心分離機(日立工機株式会社 CR21GIII)を用いて回転数3000rpmで10分間遠心処理を行った。
【0057】
KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)34部、イルガキュア TPO 2部を溶解させた溶液中にITOのMEK分散液64部を分散させ熱線遮蔽性樹脂組成物を得た。また、基材としてポリエステル製フィルム(商品名「A4100」 東洋クロス株式会社製)を用い、バーコーターを用いて塗布し、80℃、2分間乾燥させたあと紫外線照射することで熱線遮蔽性フィルムを作製した。
【0058】
[実施例2]
ITO微粉末をCIKナノテック社製(製品名ITO‐R)の粒子を用いた以外は実施例1と同様に作製した。
【0059】
[実施例3]
CIKナノテック社製のITO粒子を更に水素雰囲気下で処理温度300℃、3時間還元処理した以外は実施例1と同様に作製した。
【0060】
[実施例4]
【0061】
CIKナノテック社製のITO粒子を更に水素雰囲気下で処理温度300℃、時間還元処理した以外は実施例1と同様にして作製した。
【0062】
[比較例1]
ITO微粉末を三菱マテリアル電子化成社製(製品名E-ITO)の粒子を用いた以外は実施例1と同様に作製した。
【0063】
[比較例2]
ITO微粉末を西北稀有金属材料研究院製(製品名ITO粉)の粒子を用いた以外は実施例1と同様に作製した。
【0064】
[比較例3]
CIKナノテック社製のITO粒子を更に水素雰囲気下で処理温度350℃、3時間還元処理した以外は実施例1と同様に作製した。
【0065】
実施例1~3および比較例1~3について、金属酸化物の比表面積、L*a*b*表色系、分散液の粒度分布、熱線遮蔽フィルムの可視光透過率、日射熱取得率、全光線透過率、ヘイズ値を測定した結果を表2、3、4に示す。
【0066】
(比表面積の測定)
BELSORP-miniII(日本ベル(株))を用いたBET法で測定した。
【0067】
(L*a*b*表色系の測定)
日本電色工業社製のSE6000分光色差計を用いて、L*値、a*値、b*値を測定した。
【0068】
(可視光透過率、全日射エネルギー透過率の測定)
分光光度計(島津製作所社製 UV-3100)を用いて、JIS R3106に準拠して、得られた熱線遮蔽シートの波長300nm~2500nmにおける上記可視光透過率を測定した。
【0069】
(全光線透過率、ヘイズ値の測定)
ヘーズメーター(東京電色社製 TC-HIIIDPK)を用いて、JIS K6714に準拠して、得られた熱線遮蔽シートのヘイズ値を測定した。
【0070】
【0071】
【0072】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の金属酸化物、その分散液、樹脂組成物、及び熱線遮蔽性フィルムは、可視光透過性、日射取得率およびヘイズに関する性能が総合的に優れている。従って、本発明の熱線遮蔽性フィルムを用いれば、視認性、可視光透明性が高く、高性能な熱線遮蔽機能を有する構造体や、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、透明基材用中間膜、及び合せガラス等を低コストかつ容易に製造することができる。