(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】雪氷除去型交通信号制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/097 20060101AFI20221116BHJP
G08G 1/095 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G08G1/097 A
G08G1/095 D
(21)【出願番号】P 2019075052
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 慶樹
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 文夫
(72)【発明者】
【氏名】高島 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗島 佑典
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151989(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1787476(KR,B1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0437312(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯を備える信号灯器と、該信号灯器に設けられ、堆積する雪氷を除去する雪氷除去部と、前記信号灯及び前記雪氷除去部に灯器駆動盤を介して接続し、前記信号灯の点灯制御及び前記雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行う信号制御機とから成る融雪式信号制御システムであって、
前記灯器駆動盤の前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる出力端に前記雪氷除去部を接続し、
前記信号制御機は非稼動用現示テーブルと稼動用現示テーブルの現示テーブルを記憶し、該現示テーブルの切換え指令に基づいて、前記雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行うことを特徴とする雪氷除去型交通信号制御システム。
【請求項2】
前記灯器駆動盤は、第1方路の前記信号灯器と接続する第1の灯器駆動盤と、第2方路の前記信号灯器と接続する第2の灯器駆動盤とから成り、前記第1の灯器駆動盤の前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる前記出力端又は前記第2の灯器駆動盤の前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる前記出力端に、前記雪氷除去部を接続することを特徴とする請求項1に記載の雪氷除去型交通信号制御システム。
【請求項3】
既設の前記灯器駆動盤に対して、前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる前記出力端が存在しない場合には、前記信号制御機内に新たな灯器駆動盤を追加し、該新たな灯器駆動盤の前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる出力端に、前記雪氷除去部を接続することを特徴とする請求項1又は2に記載の雪氷除去型交通信号制御システム。
【請求項4】
前記信号制御機は、外部装置から前記切換え指令を受信する通信部を備えたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の雪氷除去型交通信号制御システム。
【請求項5】
前記信号制御機に降雪検知センサを接続し、該降雪検知センサによる降雪状況に応じて、前記雪氷除去部の稼動又は非稼動の自動制御を行うことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の雪氷除去型交通信号制御システム。
【請求項6】
前記信号灯は、車両用の赤信号灯、車両用の黄信号灯、車両用の青信号灯、歩行者用の赤信号灯、歩行者用の青信号灯及び車両用の右矢印信号灯から成ることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の雪氷除去型交通信号制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雪や着氷等によって、雪氷が信号灯器へ堆積することを防止し、信号灯の視認性を確保できる雪氷除去型交通信号制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交差点又は横断歩道等には、車両や歩行者等の安全な通行を確保するために、交通信号制御システムが設置されている。この交通信号制御システムを降雪量の多い寒冷地域に設置する場合には、信号灯器に雪氷が堆積し、信号灯の視認性が低下するという問題がある。
【0003】
近年では、信号灯器の光源が白熱電球からLEDへ置き換えられて低消費電力になると、発熱量が減少するため、雪氷が融解せずに堆積し易くなり、信号の視認性の低下は深刻な問題となっている。そこで、信号灯器に雪氷が堆積することを防止するために、信号灯器の外表面に撥水性を付与したり、信号灯器に加温手段や振動手段を設ける等の対策が行われている。
【0004】
例えば特許文献1には、LEDの光を透過する透光体層と、通電により抵抗発熱する電熱回路を有する発熱導体層とを積層して成る交通信号灯器用電熱回路付き透明カバーが開示されている。この透明カバーを正面から見たときに、LEDの配置位置と重ならない位置に電熱回路が配置され、この電熱回路をメッシュ状にして視認性を確保している。透明カバーは温度検出手段を備え、交通信号灯器に着脱自在に取り付けられる。温度検出手段の検出温度に基づいて電熱回路への通電を制御し発熱させることによって、透明カバーの外表面に堆積した雪氷を融解する。
【0005】
また、特許文献2にはLED灯器の照明光に、赤外線を混在させた融雪型の屋外用LED機器が開示されている。照明光への赤外線の混在は、プリント基板上に多数のLEDを配置したLEDモジュールと同一基板上に、赤外線LEDを配置するか、別に発熱用赤外線LED発光ユニットがLED灯器内に取り付けられている。LED灯器のレンズカバーに赤外線を照射して加熱し、レンズカバー上の雪氷を融解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-27235号公報
【文献】特開2018-49467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、信号灯器の外表面に堆積した雪氷を、上述のように加温や振動によって取り除く場合には、加温手段や振動手段に駆動電力を別途供給する必要がある。従って、雪氷が堆積する可能性のある季節に入る前に、信号灯器毎に交差点で加温手段に対して電源投入作業を行わなければならない。
【0008】
また、信号灯器が設置されている場所に応じて、降雪や着氷の発生する時期が大きく異なるため、信号灯器毎に異なる時期に加温手段に対して電源投入する必要があり、電源投入作業は非常に煩雑なものとなる。更に、加温手段に対する電源装置等の新たな機器を信号灯器や信号制御機に設置する必要があり、高コストとなる。
【0009】
本発明の目的は、遠隔制御又は自動制御により雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行う雪氷除去型交通信号制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る雪氷除去型交通信号制御システムは、信号灯を備える信号灯器と、該信号灯器に設けられ、堆積する雪氷を除去する雪氷除去部と、前記信号灯及び前記雪氷除去部に灯器駆動盤を介して接続し、前記信号灯の点灯制御及び前記雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行う信号制御機とから成る融雪式信号制御システムであって、前記灯器駆動盤の前記信号灯が接続されていない未使用信号とされる出力端に前記雪氷除去部を接続し、前記信号制御機は非稼動用現示テーブルと稼動用現示テーブルの現示テーブルを記憶し、該現示テーブルの切換え指令に基づいて、前記雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る雪氷除去型交通信号制御システムによれば、信号制御機は非稼動用現示テーブルと稼動用現示テーブルを切換えて動作制御を行うことによって、信号灯器に設けられている雪氷除去部の稼動又は非稼動の制御を行うことが可能である。また、灯器駆動盤の未使用信号に対して、雪氷除去部の設置及び配線を行うだけで、雪氷除去部の稼動又は非稼動を中央装置から容易に制御することが可能となる。
【0012】
信号制御機は交通管制センタ等の中央装置に接続可能なので、この中央装置から各信号制御機に天候状態に応じて雪氷除去部を動作させる切換え指令を送信すれば、切換え指令を受信した遠隔地にある信号制御機は、接続されている雪氷除去部を動作させることができる。即ち、遠隔にある信号灯器の雪氷除去部を、降雪や着氷が発生する可能性が高い時にのみ動作させることができるようになる。
【0013】
また、信号制御部に降雪検知センサを接続し、AIによる学習制御等を行うことで、設置個所の降雪状況に応じて雪氷除去部の稼動又は非稼動の自動制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】既存の交通信号制御システムの全体構成図である。
【
図2】灯器駆動盤及び信号灯器のブロック構成図である。
【
図3】実施例1の雪氷対応型交通信号制御システムの全体構成図である。
【
図4】灯器駆動盤及び信号灯器のブロック構成図である。
【
図7】実施例2の灯器駆動盤及び信号灯器のブロック構成図である。
【
図10】制御部による動作モード制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は十字路交差点に設置されている既存の交通信号制御システムの全体構成図であり、交通信号制御システムにより、交差点又は横断歩道等には、車両や歩行者等の安全な通行を確保することができる。
【0016】
交通信号制御システムは主道路である第1方路に向かい合うように配置された一対の信号灯器1と、第1方路と交差する従道路である第2方路に向かい合うように配置した一対の信号灯器2と、信号灯器1及び信号灯器2と接続され、信号灯器1及び信号灯器2の信号灯の点灯制御を行う信号制御機3とから構成されている。なお、主道路とは交差点において交通量の多い方の道路をいい、従道路とは交通量が少ない方の道路をいう。
【0017】
信号灯器1は車両用信号灯器11と歩行者用信号灯器12とから構成され、信号灯器2は車両用信号灯器21と歩行者用信号灯器22とから構成されている。
【0018】
信号制御機3は交差点付近に設置され、筐体内に信号灯器1及び信号灯器2の点灯制御を行う制御部31と、この制御部31と接続され、交通管制センタ等に設置された中央装置Cと有線又は無線で通信を行う通信部32と、データの送受信を行うインタフェース部33と、信号灯器1及び信号灯器2への駆動電力の出力部である第1の灯器駆動盤34及び第2の灯器駆動盤35とが収納されている。
【0019】
制御部31には通信部32とインタフェース部33が接続され、インタフェース部33は第1の灯器駆動盤34及び第2の灯器駆動盤35とデータの送受信を行う。また、制御部31、第1の灯器駆動盤34及び第2の灯器駆動盤35には、信号制御機3の外部から電源Vがそれぞれに供給されている。
【0020】
そして、第1の灯器駆動盤34は主道路である第1方路の信号灯器1と接続され、第2の灯器駆動盤35は従道路である第2方路の信号灯器2と接続されている。
【0021】
図2は、
図1における制御部31の第1の灯器駆動盤34と、第1方路の信号灯器1との構成を示すブロック構成図である。第1方路の信号灯器1は2組の車両用信号灯器11及び歩行者用信号灯器12が存在するが、構成が同一であるため、1組の図示を省略している。第1の灯器駆動盤34は、駆動制御部341と、この駆動制御部341からのトリガにより、接点を構成する半導体リレー342a~342fと、各信号灯の通電、非通電を検知するための電圧検出部343とから構成されている。
【0022】
車両用信号灯器11は、車両用赤信号灯11aと、車両用黄信号灯11bと、車両用青信号灯11cと、右矢印信号灯11dとから構成され、歩行者用信号灯器12は、歩行者用赤信号灯12aと、歩行者用青信号灯12bとから構成されている。
【0023】
駆動制御部341は、信号制御機3のインタフェース部33とデータ送受信を行うと共に、外部から電源Vを供給されている半導体リレー342a~342fのオン/オフ制御を行う。半導体リレー342a~342fの各出力端は、電力線L1を介して、それぞれ車両用赤信号灯11a、車両用黄信号灯11b、車両用青信号灯11c、右矢印信号灯11d、歩行者用赤信号灯12a、歩行者用青信号灯12bに接続されている。
【0024】
また、半導体リレー342a~342fの出力端は、電圧検出部343と並列に接続されている。電圧検出部343は、半導体リレー342a~342fの出力端の電圧検出を行い、その検出結果を駆動制御部341に送信する。
【0025】
第1の灯器駆動盤34は、SSU(ソリッド・ステート・リレー・ユニット:SSRユニット)と称され、上述のように方路毎に1つの灯器駆動盤が信号制御機3に内蔵され、車両用信号灯器11及び歩行者用信号灯器12に対して、点灯、点滅、滅灯制御を行っている。なお、1つの灯器駆動盤で6個の信号灯を管理可能であり、通常では車両用の赤信号灯、黄信号灯、青信号灯、歩行者用の赤信号灯、青信号灯及び車両用の右矢印信号灯で構成されている。
【0026】
また、第2の灯器駆動盤35及び第2方路の信号灯器2の構成は、第2方路の信号灯器2に右矢印信号灯が設けられていない点を除いて、
図2の第1の灯器駆動盤34及び第1方路の信号灯器1と同一構成であるので、説明を省略する。
【実施例1】
【0027】
このように、
図1、
図2では右矢印信号灯11dが存在する交差点について説明したが、右矢印信号灯11dを設けていない交通信号制御システムもあり、本発明に係る実施例1の雪氷除去型交通信号制御システムは、使用しない右矢印信号灯11d用の半導体リレー等を利用して、信号灯器1、2に堆積した雪氷を取り除く動作を行うものである。
【0028】
図3は実施例1の雪氷除去型交通信号制御システムの全体構成図であり、信号制御機3は信号灯器1及び信号灯器2の点灯制御及び雪氷除去部4の稼動/非稼動制御を行う制御部31を備える。それ以外の各機器の構成は、前述の交通信号制御システムと同一構成であるので説明を省略する。
【0029】
第1の灯器駆動盤34には第1方路の信号灯器1が接続され、第2の灯器駆動盤35には第2方路の信号灯器2が接続されている。信号灯器1には右矢印信号灯は設けられておらず、信号灯器1及び信号灯器2には例えば発熱手段や振動手段のような雪氷除去部4がそれぞれに設けられている。第1の灯器駆動盤34と各雪氷除去部4とは、並列に接続されている。
【0030】
図4は第1の灯器駆動盤34及び第2の灯器駆動盤35と、信号灯器1及び信号灯器2との構成及び接続を示すブロック構成図である。信号灯器1及び信号灯器2はそれぞれ2組の車両用信号灯器11及び歩行者用信号灯器12が存在するが、構成が同一であるため、それぞれ1組の図示を省略している。
【0031】
また、第1の灯器駆動盤34の内部構成は、
図2と同一であるので説明を省略する。半導体リレー342a~342c、342e、342fの各出力端は、電力線L1を介して、それぞれ車両用赤信号灯11a、車両用黄信号灯11b、車両用青信号灯11c、歩行者用赤信号灯12a、歩行者用青信号灯12bに接続されている。
【0032】
また、未使用信号とされる半導体リレー342dは、電力線L2を介して信号灯器1及び信号灯器2の各雪氷除去部4に接続されている。これらの雪氷除去部4は、加温手段や振動手段等の堆積した雪氷を除去する既存の何れの手段でも構成することができ、例えば駆動回路4aによって動作させる電熱線や赤外線LED等の加温手段やピエゾモータ等の振動手段を用いることができる。
【0033】
また、第2の灯器駆動盤35の内部構成は第1の灯器駆動盤34と同様に、駆動制御部351と、電圧検出部353とを有し、半導体リレー352a~352c、352e、352fの各出力端は、電力線L1を介して、それぞれ車両用赤信号灯21a、車両用黄信号灯21b、車両用青信号灯21c、歩行者用赤信号灯22a、歩行者用青信号灯22bに接続されている。未使用信号とされる半導体リレー352dには、何も接続されていない。
【0034】
このように構成された雪氷除去型交通信号制御システムを降雪量の多い寒冷地域に設置する場合には、雪氷除去部4を設けた信号灯器1及び信号灯器2に、半導体リレー342dの電力線L2を配線するだけで、設置は完了する。
【0035】
信号制御機3の制御部31は、図示しない記憶部を備え、信号灯器1及び信号灯器2の点灯条件を表す条件表である後述する複数の現示テーブルを記憶している。そして、制御部31は通信部32を介して交通管制センタの中央装置Cからの指令情報を受けて、交通状況により対応する現示テーブルを選択し、インタフェース部33に選択された現示テーブルに基づく信号灯器1及び信号灯器2の各灯器の点灯、点滅、滅灯制御及び雪氷除去部4の稼動/非稼動の動作制御を行う。
【0036】
なお、制御部31が記憶している複数の現示テーブルは、予め図示しない記憶部に記憶させておくか、又は通信部32を介して交通管制センタの中央装置Cから入手し、記憶部に記憶させてもよい。
【0037】
制御部31は現示テーブルに従って、インタフェース部33を介して駆動制御部341の半導体リレー342a~342fに対して、オン/オフの動作制御を行う。そして、現示テーブルに基づく半導体リレー342a~342c、342e、342fのオン/オフの動作制御により、接続されている信号灯器1の車両用信号灯器11及び歩行者用信号灯器12の各信号灯の点灯、消灯制御を行う。同時に、現示テーブルに基づく半導体リレー342dのオン/オフ制御により、接続されている雪氷除去部4の動作制御を行う。
【0038】
また、第2の灯器駆動盤35も同様に現示テーブルに基づく半導体リレー352a~352c、352e、352fのオン/オフの動作制御により、接続されている信号灯器2の車両用信号灯器21及び歩行者用信号灯器22の各信号灯の点灯、消灯を行う。
【0039】
このように、信号灯が接続されることのない未使用信号とされる半導体リレー342dに、信号灯器1及び信号灯器2に配置した雪氷除去部4を接続することによって、雪氷除去部4を現示テーブルによって動作制御することができる。そして、通信部32を介して中央装置Cから、後述する非稼動用現示テーブルT1及び稼動用現示テーブルT2の切換え指令により、雪氷除去部4の動作を遠隔制御することが可能となる。
【0040】
図5は雪氷が信号灯器1及び信号灯器2に堆積する可能性がない場合に使用される非稼動用現示テーブルT1の一例である。この非稼動用現示テーブルT1は複数の階梯である階梯K1~階梯K10から構成されている。
【0041】
階梯K1では、第1方路の歩行者用信号灯器12の歩行者用信号1P及び車両用信号灯器11の車両用信号1Vが青点灯、第2方路の歩行者用信号灯器22の歩行者用信号2P及び車両用信号灯器21の車両用信号2Vが赤点灯となる点灯条件が設定されている。なお、
図5の非稼動用現示テーブルT1で示す直線は青点灯、点線は青点滅、波線は黄点灯、二重線は赤点灯を示している。
【0042】
階梯K2では、第1方路の歩行者用信号灯器12の歩行者用信号1Pが青点滅、第1方路の車両用信号灯器11の車両用信号1Vが青点灯、2方路の歩行者用信号灯器22の歩行者用信号2P及び車両用信号灯器21の車両用信号2Vが赤点灯となる点灯条件が設定されている。雪氷除去部4と接続している未使用信号1Nについては、全階梯K1~K10でオフの状態を維持するよう設定されている。
【0043】
また、階梯5及び最終の階梯K10では、未使用信号1N以外の全ての信号が赤点灯となる点灯条件が設定されている。このようにして、階梯K1~K10まで保持秒数を維持するように信号灯器1及び信号灯器2の点灯条件が設定されている。
【0044】
記憶部は階梯K1~K10を保持する保持秒数を時限表定数として記憶しており、階梯K1~K10までの保持秒数の合計秒数を1サイクルの秒数として、階梯K1~K10から成るサイクルを繰り返して、各信号の動作制御を行っている。
【0045】
非稼動用現示テーブルT1の時限表定数は、時間帯や曜日等に応じて適宜に設定することが可能であり、日時に応じて切換え制御を行っている。また、交通管制センタの中央装置C等と通信網を介して接続した状態であるオンラインモードと、単独で運用するオフラインモードとで、それぞれ異なる時限表定数を用いて動作制御を行うこともできる。
【0046】
更に、信号制御機3は非稼動用現示テーブルT1に基づく動作制御と関係がなく、信号灯器に対して赤点滅又は黄点滅を開始する閃光制御モードも備えている。非稼動用現示テーブルT1の動作制御処理等に不具合が発生した場合に、フェールセーフ機能として閃光制御モードで運用することもある。
【0047】
図6は雪氷が信号灯器に堆積する可能性がある時に使用される稼動用現示テーブルT2の一例であり、
図5の非稼動用現示テーブルT1に対して、未使用信号1Nは全階梯K1~K10でオンの状態を維持するように設定されている。なお、
図6の未使用信号1Nのオンの状態を、青点灯を示す直線として表しているが、電力を供給するオン状態の場合も直線を使用している。
【0048】
未使用信号1Nとされる半導体リレー342dには、雪氷除去部4が接続されているので、雪氷除去部4は階梯K1からK10に渡って、電力が供給される稼動状態となり、信号灯器1及び信号灯器2に雪氷が堆積するのを防止することになる。
【0049】
第1方路の歩行者用信号1P及び車両用信号1V、第2方路の歩行者用信号2P及び車両用信号2Vの点灯条件は、
図5に示す非稼動用現示テーブルT1と同一であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0050】
図7は雪氷除去型交通信号制御システムの全体構成図であり、実施例1では、第1の灯器駆動盤34の未使用信号1Nである半導体リレー342dに雪氷除去部4を接続しているが、実施例2では、第1の灯器駆動盤34の半導体リレー342dに右矢印信号灯11dが接続された雪氷除去型交通信号制御システムである。
【0051】
図示するように半導体リレー342dに既に右矢印信号灯11dが接続されるため、半導体リレー342dは未使用信号とはならず、雪氷除去部4を接続することはできない。そこで、第2の灯器駆動盤35の未使用信号2Nとされる半導体リレー352dに雪氷除去部4を接続して、同様の動作を行うように構成されている。
【0052】
図8は第2の灯器駆動盤35の未使用信号2Nとされる半導体リレー352dに雪氷除去部4を接続した場合の非稼動用現示テーブルT1’の説明図であり、
図9は稼動用現示テーブルT2’の説明図である。
【0053】
非稼動用現示テーブルT1’の例えば階梯K5では、第1方路の歩行者用信号1P及び車両用信号1Vが赤点灯に、第1方路の右矢印灯器1Aが右矢印点灯に、第2方路の歩行者用信号2P及び車両用信号2Vが赤点灯に、それぞれ設定されている。また、雪氷除去部4が接続されている未使用信号2Nは、雪氷が信号灯器に堆積する可能性がない場合に、全階梯K1~K10でオフの状態を維持するよう設定されている。
【0054】
一方、雪氷が信号灯器に堆積する可能性がある場合に使用される稼動用現示テーブルT2’では、雪氷除去部4が接続されている未使用信号2Nは、全階梯K1~K10でオンの状態を維持するよう設定されている。即ち、雪氷除去部4は、全階梯K1~K10で稼動し、信号灯器1及び信号灯器2に雪氷が堆積するのを防止することになる。
【0055】
図10は非稼動用現示テーブルT1及び稼動用現示テーブルT2、又は非稼動用現示テーブルT1’及び稼動用現示テーブルT2’を用いた制御部31による信号灯器1及び信号灯器2の動作モード制御のフローチャート図である。信号制御機3が動作を開始すると、ステップST1において、制御部31は通信部32を介して交通管制センタ等の中央装置Cと通信を行い、雪氷除去部4に対する切換え指令を受信する。
【0056】
次にステップST2において、切換え指令が雪氷除去部4を稼動させる稼動指令であるか否かを判断する。切換え指令が稼動指令の場合には、ステップST3に移行して稼動用現示テーブルT2又は稼動用現示テーブルT2’に従って、信号灯器1及び信号灯器2の各信号灯に対して点灯制御を行うと共に、常時雪氷除去部4をオン状態にして、信号灯器1及び信号灯器2に堆積する雪氷を除去する。
【0057】
ステップST2において切換え指令が稼働指令でない、つまり非稼動指令の場合には、ステップST4に移行して非稼動用現示テーブルT1又は非稼動用現示テーブルT1’に従って、信号灯器1及び信号灯器2の点灯制御を行うと共に、雪氷除去部4を停止状態とする。
【0058】
このようにして、信号灯器1及び信号灯器2に設けた雪氷除去部4を、従来の信号制御機3の点灯指令を利用して、稼動/非稼動制御することができ、中央装置C等の外部から遠隔制御により、天候の状態に応じて適宜に、稼動又は非稼動状態にすることが可能となる。
【0059】
なお、第2の灯器駆動盤35にも未使用信号2Nとされる半導体リレーが存在しない場合には、信号制御機3内に第3の灯器駆動盤を設けて、第3の灯器駆動盤の未使用信号とされる半導体リレーに雪氷除去部4を接続する。併せて、稼動用/非稼動用現示テーブルに追加した未使用信号に応じた稼動/非稼動点灯指令を追加する。
【0060】
このように、既設の灯器駆動盤に対して、未使用信号とされる半導体リレーが存在する場合は、この未使用の半導体リレーに雪氷除去部4を接続し、未使用信号とされる半導体リレーが存在しない場合には、信号制御機3内に新たな灯器駆動盤を追加して、この新たな灯器駆動盤の未使用信号とされる半導体リレーに雪氷除去部4を接続する。
【0061】
このように、未使用信号とされる半導体リレーが存在しない場合には、信号制御機3に更に灯器駆動盤を増設していけば、未使用信号とされる半導体リレーに雪氷除去部4を接続することができる。
【0062】
また、上述の実施例1、実施例2では十字路交差点に雪氷除去型交通信号制御システムを適用した場合について説明したが、車両用信号灯器及びこの車両用信号灯器用の押ボタン式の歩行者用信号灯器のみから成る横断歩道用交差点に雪氷除去型交通信号制御システムを適用した場合では、灯器駆動盤は1個で済み、この場合の未使用信号1Nに雪氷除去部4を接続することもできる。このように横断歩道や交差点等に交通信号機が設置されている場所であれば、特に限定されることなく実施することが可能である。
【0063】
本発明に係る雪氷除去型交通信号制御システムによれば、信号制御機3は非稼動用現示テーブルT1と稼動用現示テーブルT2を切換えて動作制御を行うことによって、信号灯器1、2に設けられている雪氷除去部4の稼動又は非稼動の制御を行うことが可能である。
【0064】
また、第1の灯器駆動盤34又は第2の灯器駆動盤35の信号灯が接続されていない未使用信号1N又は未使用信号2Nに対して、信号灯器1、2に雪氷除去部4の設置及び電力線L2の配線を行うだけで、雪氷除去部4の稼動又は非稼動を外部装置である中央装置Cから容易に制御することが可能となる。
【0065】
信号制御機3は交通管制センタ等の中央装置Cに接続可能なので、中央装置Cから各信号制御機3に対して天候状態に応じて雪氷除去部4を動作させる切換え指令を送信すれば、切換え指令を受信した遠隔地にある信号制御機3は、接続されている雪氷除去部4を動作させることができる。即ち、遠隔にある信号灯器1、2の雪氷除去部4を、降雪や着氷が発生する可能性が高い時にのみ動作させることができるようになる。
【0066】
また、信号制御機3に画像センサ等の降雪検知センサを接続し、AIによる学習制御等を行うことで、設置個所の降雪状況に応じて雪氷除去部4の稼動又は非稼動の自動制御を行うことも可能である。このような構成にする際は、信号制御機3において中央装置Cから切り換え指令を受信する通信部32を省略することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1、2 信号灯器
1A 右矢印灯器
1N、2N 未使用信号
1P、2P 歩行者用信号
1V、2V 車両用信号
3 信号制御機
4 雪氷除去部
11、21 車両用信号灯器
12、22 歩行者用信号灯器
34 第1の灯器駆動盤
35 第2の灯器駆動盤
T1、T1’ 非稼動用現示テーブル
T2、T2’ 稼動用現示テーブル