(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】乗物の電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20221116BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20221116BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20221116BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221116BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20221116BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20221116BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20221116BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221116BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221116BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20221116BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20221116BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20221116BHJP
B62M 6/90 20100101ALI20221116BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/213
H01M50/227
H01M50/249
H01M50/289
H01M50/296
H01M50/271 S
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6551
H01M10/6554
H01M10/653
B62M6/90
B62M7/12
(21)【出願番号】P 2019105264
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-241730(JP,A)
【文献】特開2017-37772(JP,A)
【文献】特表2010-527098(JP,A)
【文献】特開2007-200580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6551
H01M 10/6554
H01M 10/653
B62J 9/00
B62M 6/90
B62M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される電池パックであって、
端子を有する複数のバッテリセルと、
前記複数のバッテリセルを収容するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、
前記複数のバッテリセルを出し入れする開口と、前記端子を露出させる少なくとも1つの露出孔と、を有する樹脂製のケーシング本体と、
前記開口を閉鎖するカバーと、
前記ケーシング本体の前記露出孔を覆って前記端子に対向した状態で前記ケーシング本体に固定された金属製の少なくとも1つの放熱フィン体と、を有する、乗物の電池パック。
【請求項2】
前記ケーシング本体は、前記露出孔の周囲に形成された周状壁部を有し、
前記放熱フィン体は、前記ケーシング本体の前記露出孔に嵌合され且つ複数のフィンが設けられた嵌合部と、前記嵌合部から突出して前記周状壁部に重ねて固定されるフランジ部とを有する、請求項1に記載の乗物の電池パック。
【請求項3】
前記放熱フィン体の前記嵌合部は、絶縁性を有する伝熱部材を介して前記複数のバッテリセルの前記端子に押圧されている、請求項2に記載の乗物の電池パック。
【請求項4】
前記ケーシングは、略直方体形状を有し、
前記少なくとも1つの露出孔は、前記ケーシング本体の互いに対向する一対の側壁部にそれぞれ形成された一対の露出孔を含み、
前記一対の露出孔は、前記複数のバッテリセルの前記端子を露出させ、
前記少なくとも1つの放熱フィン体は、前記一対の露出孔を閉鎖するように前記一対の側壁部にそれぞれ固定された一対の放熱フィン体を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乗物の電池パック。
【請求項5】
前記複数のバッテリセルを保持するホルダと、
前記ホルダと前記ケーシングとの間に挟まれたダンパと、を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乗物の電池パック。
【請求項6】
前記複数のバッテリセルに電気的に接続された一対の電線と、
前記一対の電線の先端にそれぞれ設けられた一対のコネクタと、を更に備え、
前記カバーは、一対の挿通孔を有し、
前記一対のコネクタは、前記一対の電線が前記一対の挿通孔をそれぞれ挿通した状態で前記カバーに取り付けられている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乗物の電池パック。
【請求項7】
前記複数のバッテリセルに電気的に接続された電装品を更に備え、
前記電装品は、前記ケーシング本体の外部に配置されて前記カバーに収容されている、請求項6に記載の乗物の電池パック。
【請求項8】
前記コネクタは、前記開口の軸線方向に直交する方向における前記カバーの一端部に設けられており、
前記軸線方向における前記カバーの厚みに関し、前記カバーのうち前記一端部とは反対側の他端部の厚みは、前記カバーの前記一端部の厚みよりも小さい、請求項7に記載の乗物の電池パック。
【請求項9】
前記乗物は、鞍乗車両であり、
前記電池パックは、その側面が前記鞍乗車両の外部に露出した状態で前記鞍乗車両に搭載され、
前記開口は、前記ケーシング本体の前後方向の端面に設けられ、
前記カバーは、前記ケーシング本体に対して前後方向から取り付けられ、
前記露出孔は、前記ケーシング本体の左右方向の側面に設けられ、
前記放熱フィン体は、前記ケーシング本体に対して左右方向から取り付けられる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の乗物の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に搭載される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリが搭載されたハイブリッド車両である自動二輪車が開示されている。当該バッテリは、EV走行用モータに供給される電力を蓄電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリセルは充放電に伴って発熱し、高温な時間が多いと劣化が進みやすくなるため、バッテリセルの温度上昇を抑制する装置が望まれる。しかし、自動二輪車のような鞍乗車両への搭載にあたっては、操縦性や燃費等を考慮すると、バッテリ等の車載装置の重量が大きくなることは好ましくない。また、バッテリが車外に露出して配置された場合等を考慮すると、軽量化のために強度が低下することも好ましくない。
【0005】
そこで本発明は、乗物に搭載される電池パックにおいて、バッテリセルの放熱、ケーシングの軽量化、及びケーシングの強度維持を同時に実現できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る乗物の電池パックは、乗物に搭載される電池パックであって、端子を有する複数のバッテリセルと、前記複数のバッテリセルを収容するケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記複数のバッテリセルを出し入れする開口と、前記端子を露出させる少なくとも1つの露出孔と、を有する樹脂製のケーシング本体と、前記開口を閉鎖するカバーと、前記ケーシング本体の前記露出孔を覆って前記端子に対向した状態で前記ケーシング本体に固定された金属製の少なくとも1つの放熱フィン体と、を有する。
【0007】
前記構成によれば、ケーシングのケーシング本体を樹脂製として軽量化を図りながらも、ケーシング本体の露出孔を覆ってバッテリセルの端子に対向する放熱フィン体をケーシング本体に固定しているので、金属製の放熱フィン体でケーシング本体が補強される。よって、バッテリセルの放熱、ケーシングの軽量化、及びケーシングの強度維持を同時に実現できる。
【0008】
一例として、前記ケーシング本体は、前記露出孔の周囲に形成された周状壁部を有し、前記放熱フィン体は、前記ケーシング本体の前記露出孔に嵌合され且つ複数のフィンが設けられた嵌合部と、前記嵌合部から突出して前記周状壁部に重ねて固定されるフランジ部とを有する構成としてもよい。
【0009】
前記構成によれば、放熱フィン体の嵌合部がケーシング本体の露出孔に嵌合されると共に、放熱フィン体のフランジ部がケーシング本体の周状壁部に重ねて固定されるので、樹脂製のケーシング本体を金属製の放熱フィン体で良好に補強できる。
【0010】
一例として、前記放熱フィン体の前記嵌合部は、絶縁性を有する伝熱部材を介して前記複数のバッテリセルの前記端子に押圧されている構成としてもよい。
【0011】
前記構成によれば、バッテリセルの端子から放熱フィン体への熱伝達の効率を高めることができる。
【0012】
一例として、前記ケーシングは、略直方体形状を有し、前記少なくとも1つの露出孔は、前記ケーシング本体の互いに対向する一対の側壁部にそれぞれ形成された一対の露出孔を含み、前記一対の露出孔は、前記複数のバッテリセルの前記端子を露出させ、前記少なくとも1つの放熱フィン体は、前記一対の露出孔を閉鎖するように前記一対の側壁部にそれぞれ固定された一対の放熱フィン体を含む構成としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、樹脂製のケーシング本体の互いに対向する一対の側壁部に対し、金属製の放熱フィン体がそれぞれ固定されているので、放熱性を高めながらもケーシングの強度を良好に保つことができる。
【0014】
一例として、前記複数のバッテリセルを保持するホルダと、前記ホルダと前記ケーシングとの間に挟まれたダンパと、を更に備える構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、電池パックに外力が作用する場合に、ホルダで保持されたバッテリセルに振動や衝撃が伝わるのを抑制できる。よって、乗物に対する電池パックのマウント構造を簡素化できるとともに、電池パック単体のハンドリングを容易にできる。
【0016】
一例として、前記複数のバッテリセルに電気的に接続された一対の電線と、前記一対の電線の先端にそれぞれ設けられた一対のコネクタと、を更に備え、前記カバーは、一対の挿通孔を有し、前記一対のコネクタは、前記一対の電線が前記一対の挿通孔をそれぞれ挿通した状態で前記カバーに取り付けられている構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、ケーシング本体にコネクタを取り付ける場合に比べ、組み立てを容易に行うことができる。
【0018】
一例として、前記複数のバッテリセルに電気的に接続された電装品を更に備え、前記電装品は、前記ケーシング本体の外部に配置されて前記カバーに収容されている構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、電装品がケーシング本体の外部に配置されているため、カバーを取り外した状態で容易に電装品にアクセスできる。
【0020】
一例として、前記コネクタは、前記開口の軸線方向に直交する方向における前記カバーの一端部に設けられており、前記軸線方向における前記カバーの厚みに関し、前記カバーのうち前記一端部とは反対側の他端部の厚みは、前記カバーの前記一端部の厚みよりも小さい構成としてもよい。
【0021】
前記構成によれば、カバーはバッテリセルを収容せずに電装品を収容するため、バッテリセルを小さくすることなく、カバーの厚みを部分的に小さくできる。
【0022】
一例として、前記乗物は、鞍乗車両であり、前記電池パックは、その側面が前記鞍乗車両の外部に露出した状態で前記鞍乗車両に搭載され、前記開口は、前記ケーシング本体の前後方向の端面に設けられ、前記カバーは、前記ケーシング本体に対して前後方向から取り付けられ、前記露出孔は、前記ケーシング本体の左右方向の側面に設けられ、前記放熱フィン体は、前記ケーシング本体に対して左右方向から取り付けられる構成としてもよい。
【0023】
前記構成によれば、ケーシング本体の上側/下側や左側/右側ではなくケーシング本体の前側又は後側にカバーが設けられるので、ケーシングの高さ寸法や幅寸法を抑制でき、高さ方向及び幅方向のスペースに制限の大きい鞍乗車両に電池パックを好適に搭載できる。また、放熱フィン体は、ケーシング本体の側面に設けられるので、走行風が放熱フィン体と良好に熱交換でき、電池パックを好適に冷却できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、乗物に搭載される電池パックにおいて、バッテリセルの放熱、ケーシングの軽量化、及びケーシングの強度維持を同時に実現できる構成を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動二輪車に搭載される電池パックの斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、
図2の電池パックが自動二輪車に搭載された状態を示す側面図である。
図3(B)は、
図3(A)のIIIb-IIIb線断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の電池パックのカバー及び放熱フィン体を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の電池パックのケーシングを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の電池パックのダンパを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6の電池パックの下方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2の電池パックの放熱フィン体及びその近傍の縦断面図である。
【
図9】
図9は、
図2の電池パックのカバーの取り付けを説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0027】
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、ライダーが跨って乗る鞍乗車両の一例であり、ハイブリッド車両である。自動二輪車1は、前輪2と、後輪3(駆動輪)と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続する前サスペンション5と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション(図示せず)とを備える。前サスペンション5は、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット6によって互いに連結される。ブラケット6に接続される操舵軸が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持される。
【0028】
車体フレーム4は、ヘッドパイプ4aから後方に延びるメインフレーム4bと、メインフレーム4bの上部から斜め上後方に延びるシート支持フレーム4cと、メインフレーム4bの下部からシート支持フレーム4cの中途部に向けて延びてシート支持フレーム4cを下方から支持する補助フレーム4dと、を有する。当該操舵軸には、運転者が手で握るハンドル7が設けられている。ハンドル7の後側には、燃料タンク8が設けられ、燃料タンク8の後側に運転者が着座するシート9が設けられている。シート9は、シート支持フレーム4cに支持されている。メインフレーム4bには、前輪2と後輪3と間において走行動力源となるエンジンEが搭載されている。エンジンEの近傍には、走行動力源となる電動モータMが配置されている。
【0029】
エンジンEの気筒Ebの下部から後方には、クランクケース10が延びている。エンジンEの気筒Ebの後方で且つクランクケース10の上方には、駆動輪に伝達される走行動力を発生する駆動用の電動モータMが配置されている。電動モータMは、クランクケース10を介してメインフレーム4bに支持されている。電動モータMには、一体的にインバータ12が設けられているが、電動モータMから離れた位置にインバータ12が配置されてもよい。
【0030】
クランクケース10の内部には、入力軸11a及び出力軸11bを備える変速機11が配置されている。入力軸11aには、エンジンEのクランク軸Eaからギヤ及びメインクラッチ(図示せず)を介して動力が伝達される。変速機11の入力軸11aには、電動モータMから図示しない動力伝達機構を介して動力が伝達される。即ち、エンジンE及び電動モータMの両方の動力が入力軸11aに伝達される。車体フレーム4には、後輪3を支持して前後方向に延びるスイングアーム13が角変位可能に支持されている。変速機11の出力軸11bの回転動力は、出力伝達部材14(例えば、チェーン、ベルト等)を介して後輪3に伝達される。
【0031】
電動モータMの後方には、シート支持フレーム4cに支持された電池パック15が配置されている。即ち、電池パック15は、シート9の下側に配置されている。電動モータMに供給される電力を蓄える駆動系の電池パック15がシート9の下側に配置されることで、重量物である電池パック15が自動二輪車1の重心近くに位置する。電池パック15は、電動モータMに供給される電力を蓄える。電池パック15の後方には、シート支持フレーム4cに支持されたDCDCコンバータ16が配置されている。DCDCコンバータ16は、電池パック15から出力された電力の電圧を下げる。
【0032】
DCDCコンバータ16の後方には、シート支持フレーム4cに支持された補助バッテリ17が配置されている。補助バッテリ17には、電池パック15からの電力がDCDCコンバータ16で降圧されて供給される。即ち、電池パック15が走行駆動源である電動モータMを駆動する高電圧の電力を出力する一方、補助バッテリ17が電装品(例えば、ECU等)に供給される低電圧の電力を出力する。
【0033】
電動モータM、電池パック15、DCDCコンバータ16及び補助バッテリ17は、側面視において、シート支持フレーム4cの延在方向に沿って並んでいる。これにより、電動モータM、電池パック15、DCDCコンバータ16及び補助バッテリ17を互いに接続するワイヤハーネス(図示せず)が側面視で略直線状に配策され、ワイヤハーネスの配策効率が向上する。
【0034】
電池パック15の下端は、後輪3の上端よりも下方かつ前方に位置する。電池パック15の一部は、シート支持フレーム4cの下側に位置する。電池パック15、DCDCコンバータ16及び補助バッテリ17は、後輪3に対向するリアフェンダ18で下方から覆われている。リアフェンダ18は、シート支持フレーム4cに支持されている。リアフェンダ18の前部は、電池パック15の後面及び底面を覆っている。これにより、後輪3の前方かつ上方に電池パック15を配置しながらも、電池パック15に後輪3からの泥水が付着することが防がれる。
【0035】
電池パック15は、シート支持フレーム4c及び補助フレーム4dの車幅方向内側に配置されている。電池パック15の互いに車幅方向に対向する一対の両側面(左面及び右面)は、自動二輪車1の外部に露出している。即ち、電池パック15の車幅方向の両側面は、自動二輪車1の側面視で露出しており、走行風が直接当たる。
【0036】
図2は、
図1の自動二輪車1に搭載される電池パック15の斜視図である。
図2に示すように、電池パック15は、略直方体の箱状のケーシング30を備える。ケーシング30は、ケーシング本体31と、カバー32及び放熱フィン体33を有する。ケーシング本体31及び放熱フィン体33は、電源収容空間を形成する。即ち、ケーシング本体31及び放熱フィン体33により形成される内部空間には、後述のバッテリセル34(
図4参照)が配置される。カバー32は、電装品収容空間を形成する。カバー32は、凹形状を有し、その内部空間には、後述の電装品集合体60(例えば、BMS51(バッテリ・マネジメント・システム)、リレー52、ヒューズ53、電流センサ54等)が配置される。
【0037】
ケーシング本体31及びカバー32は樹脂製である一方、放熱フィン体33は金属製(例えば、アルミニウム合金等)である。放熱フィン体33は、ケーシング30の両側壁を構成する。放熱フィン体33がケーシング30の側面に設けられるので、シート9に着座した運転者の脚を通過した走行風の後流によって放熱フィン体33が走行風と良好に熱交換され、電池パック15が好適に冷却される。
【0038】
カバー32は、ケーシング30の後壁を構成する。なお、カバー32は、代わりにケーシング30の前壁を構成するものとしてもよい。カバー32には、後述のバッテリセル34及び電装品集合体60に電気的に接続されたコネクタ35,36が設けられている。即ち、コネクタ35は、ケーシング30の後端部に設けられている。コネクタ35,36がケーシング30の後端部に配置されるので、電池パック15とは別の場所で車載された電装品(例えば、ECU等)に電池パック15を接続する電線の配策が容易に行われる。
【0039】
電池パック15の後方かつ下方の角部は、面取りされている。即ち、ケーシング30の後下端部には、面取部30aが設けられている。これにより、電池パック15の後方かつ下方に配置された後輪3に電池パック15を極力近づけて配置でき、比較的大きい電池パック15の配置自由度が向上する。また、電池パック15の前方かつ上方の角部も、面取りされている。即ち、ケーシング30の前上端部には、面取部30bが設けられている。これにより、電池パック15の前方かつ上方に配置された部品(例えば、燃料タンク8)に電池パック15を極力近づけて配置でき、比較的大きい電池パック15の配置自由度が向上する。
【0040】
図3(A)は、
図2の電池パック15が自動二輪車1に搭載された状態を示す側面図である。
図3(B)は、
図3(A)のIIIb-IIIb線断面図である。
図3(A)(B)に示すように、車体フレーム4には、電池パック15を支持する受け座19を有する。受け座19は、金属製である。受け座19は、上方に開放された凹形状を有する収容部19aと、収容部19aから上方に突出した取付部19bとを有する。取付部19bが補助フレーム4dに固定されることで、受け座19が車体フレーム4に支持されている。
【0041】
受け座19の収容部19aには、上方から電池パック15が収容される。電池パック15と収容部19aとの間には、弾性を有する防振シート21が挟まれている。収容部19aは、電池パック15のうち収容部19aに収容される部分と実質的に相似形状を有する。具体的には、収容部19aは、電池パック15の前面、後面、左面、右面及び底面をそれぞれ支持する5つの面を有する。これにより、自動二輪車1の加減速時及びロール運動時にも電池パック15が安定して車体フレーム4に一体的に保持される。よって、比較的大きい駆動系の電池パック15を自動二輪車1に搭載しながらも、自動二輪車1の操縦性が高められる。
【0042】
車体フレーム4は、電池パック15の上面を押圧する押さえ金20を有する。押さえ金20は、金属製である。押さえ金20は、下方に突出した凹部20aと、凹部20aの前側の上部から前方に突出した取付部20b上方に突出した取付部19bと、凹部20aの後側の上部から後方に突出した取付部20cとを有する。押さえ金20は、取付部20b,20cが車体フレーム4又はそれに固定された部材に固定されることで、押さえ金20が車体フレーム4に支持されている。
【0043】
例えば、取付部20bは、燃料タンク8のブラケット8aに固定され、取付部20cは、シート支持フレーム4cのクロスメンバ4eに固定される。これにより、自動二輪車1の上下振動時にも電池パック15が安定して車体フレーム4に一体的に保持される。そのため、電動モータMに供給される電力を蓄える比較的大きい電池パック15を自動二輪車1に搭載しながらも、自動二輪車1の操縦性が高められる。
【0044】
図4は、
図2の電池パック15のカバー32及び放熱フィン体33を取り外した状態を示す斜視図である。
図5は、
図4の電池パック15のケーシング30を取り外した状態を示す斜視図である。
図6は、
図5の電池パック15のダンパ39を取り外した状態を示す斜視図である。
図7は、
図6の電池パック15の下方から見た斜視図である。
図8は、
図2の電池パック15の放熱フィン体33及びその近傍の縦断面図である。
図2,4乃至8に示すように、電池パック15のケーシング本体31には、複数のバッテリセル34が収容されている。各バッテリセル34は、略円柱形状を有し、略直方体状の群を形成するように並べられている。バッテリセル34の端子34aは、左右方向外方を向いている。並設された各バッテリセル34の端子34aは、導電板37を介して互いに導通している。導電板37の法線は、左右方向外方を向いている。
【0045】
複数のバッテリセル34は、樹脂製のホルダ38,43で保持されている。具体的には、バッテリセル34は、左右方向に二列に配置され、中央ホルダ43と一対の端ホルダ38とで保持されている。二列のバッテリセル34の各列は、中央ホルダ43で仕切られているが、その一部で中央ホルダ43を迂回して互いに導通している。二列のバッテリセル34は、その中央ホルダ43側の端部が中央ホルダ43に保持され、その端ホルダ38の端部が端ホルダ38に保持されている。
【0046】
中央ホルダ43は、端ホルダ38は、導電板37及び端子34aを左右方向外方に露出させる開口38aを有する。ホルダ38には、弾性材料からなるダンパ39,40が外嵌されている。ダンパ39,40は、ホルダ38,43とケーシング30との間に挟まれる。即ち、電池パック15に外力が作用する場合に、ホルダ38,43で保持されたバッテリセル34に振動や衝撃が伝わるのをダンパ39,40が抑制する。バッテリセル34、導電板37、ホルダ38,43、ダンパ39,40が、略直方体状の電源集合体50を構成する。
【0047】
ケーシング本体31の後面には、電源集合体50を出し入れする開口31aが形成されている。ケーシング本体31の両側面(左面及び右面)には、導電板37(及び/又は端子34a)を露出させる露出孔31bが形成されている。露出孔31bは、電源集合体50の側面の大部分を露出させる。ケーシング本体31の両側壁は、露出孔31bの周囲に形成された周状壁部31cを有する。ケーシング本体31の開口31aは、カバー32で閉鎖される。
【0048】
ケーシング本体31の露出孔31bは、ケーシング本体31に固定された放熱フィン体33で閉鎖される。放熱フィン体33は、導電板37及び端子34aに対向する。これにより、ケーシング本体31を樹脂製として軽量化を図りながらも、金属製の放熱フィン体33でケーシング本体31が補強される。それゆえ、バッテリセル34の放熱、ケーシング30の軽量化、及びケーシング30の強度維持が同時に実現される。
【0049】
電源集合体50の後側には、電装品集合体60が配置されている。電装品集合体60は、BMS51、リレー52、ヒューズ53、電流センサ54等で構成されている。電源集合体50の後側には電装品設置台61が配置され、電装品設置台61はホルダ38,43に固定されている。電装品設置台61は、第1基板部61a、第2基板部61b及び支柱部61cを含む二階建て構造を有する。第1基板部61a及び第2基板部61bは、電源集合体50の後面に対して平行である。第1基板部61a及び第2基板部61bは前後方向に互いに離間し、支柱部61cにより互いに連結されている。
【0050】
第1基板部61aと第2基板部61bとの間の隙間には、BMS51及び電流センサ54が第1基板部61aに搭載された状態で配置されている。第2基板部61bの後面には、リレー52及びヒューズ53が搭載されている。一方の端ホルダ38の下面には、第1バスバー62が配置され、バッテリセル34の群の一側の極の導電板37に電気的に接続されている。他方の端ホルダ38の下面には、第2バスバー63が配置され、バッテリセル34の群の他側の極の導電板37に電気的に接続されている。
【0051】
第1バスバー62は、リレー52に電気的に接続され、リレー52は、ヒューズ53に電気的に接続されている。ヒューズ53は、第2基板部61bの後面から突出した第1導電タブ64に電気的に接続されている。第1導電タブ64には、コネクタ35に接続された電線(図示せず)の端子(図示せず)が締結される。第2バスバー63は、電流センサ54に電気的に接続され、電流センサ54は、第2基板部61bの後面から突出した第2導電タブ65に導電ボルト66を介して電気的に接続されている。
【0052】
第2導電タブ65には、コネクタ36に接続された電線68の端子69(
図9参照)が導電ボルト66により締結される。即ち、コネクタ35とコネクタ36との間の電気回路において、第1導電タブ64、ヒューズ53、リレー52、第1バスバー62、バッテリセル34、第2バスバー63、電流センサ54、導電ボルト66、及び、第2導電タブ65が、この順に直列に並んでいる。
【0053】
電源集合体50がケーシング本体31に収容された状態において、電装品集合体60は、ケーシング本体31の外部に配置されている。ケーシング本体31にカバー32が取り付けられることで、電装品集合体60はカバー32に収容される。このように、電装品集合体60がケーシング本体31の外部に配置されるため、カバー32を取り外した状態で容易に電装品集合体60にアクセス可能となる。
【0054】
コネクタ35,36がケーシング30の後端部(即ち、カバー32)に設けられ、電装品集合体60が電源集合体50に対して後側に隣接配置されている。それにより、電装品集合体60が電源集合体50に対して上下方向に隣接配置される場合に比べ、電池パック15の高さ寸法が抑制される。そのため、電池パック15をシート9下に配置しながらも電源集合体50を極力大きくして電池パック15の大容量化が可能となる。また、電装品集合体60が電源集合体50に対して左右方向に隣接して配置される場合に比べ、電池パック15の幅寸法が抑制される。それゆえ、車体フレーム4のうち電池パック15の側方に位置する部分を車幅方向外方に拡げる必要がなくなり、車幅の増加による運転者の足付き性の悪化が防止される。
【0055】
図8に示すように、放熱フィン体33は、ケーシング本体31の露出孔31bに嵌合される嵌合部33aと、嵌合部33aから周状壁部31cの外面に沿って突出したフランジ部33cを有する。嵌合部33aには、複数のフィン33bが設けられている。フランジ部33cと周状壁部31cとの間にはシール部材41が挟まれた状態で、フランジ部33cは周状壁部31cに重ねて固定されている。このように、放熱フィン体33の嵌合部33aがケーシング本体31の露出孔31bに嵌合され、かつ、放熱フィン体33のフランジ部33cがケーシング本体31の周状壁部31cに重ねて固定されるので、樹脂製のケーシング本体31が金属製の放熱フィン体33により好適に補強される。
【0056】
放熱フィン体33の嵌合部33aは、絶縁性及び弾性を有する伝熱部材42(例えば、シリコーン)を介して導電板37及び/又は各バッテリセル34の端子34aに押圧されている。導電板37及び端子34aは、端ホルダ38の車幅方向外側の端面よりも放熱フィン体33から離れる側にずれて配置されている。そのため、端ホルダ38の開口38aと導電板37の車幅方向外側の端面とにより凹部が形成され、当該凹部に伝熱部材42が嵌められている。伝熱部材42は、端ホルダ38の車幅方向外側の端面よりも車幅方向外方に突出しており、放熱フィン体33に密着している。これにより、バッテリセル34の端子34aから放熱フィン体33への熱伝達の効率が高められる。
【0057】
図2に示すように、コネクタ35,36は、カバー32の上端部(一端部)に設けられている。カバー32には面取部30aが設けられているため、カバー32の下端部(他端部)の厚みは、カバー32の上端部(一端部)の厚みよりも小さい。即ち、カバー32は、電装品集合体60を収容せずに電源集合体50を収容するため、バッテリセル34を小さくすることなく、カバー32の厚みを部分的に小さくすることが可能になっている。
【0058】
図9は、
図2の電池パック15のカバー32の取り付けを説明する側面図である。
図9に示すように、カバー32の上壁部には、一対の挿通孔32aが形成されている。コネクタ35,36は、挿通孔32aに挿通された状態でカバー32に取り付けられている。これにより、ケーシング本体31にコネクタ35,36を取り付ける場合に比べ、組み立てを容易に行われる。以下、コネクタ36の電装品集合体60への接続を説明するが、コネクタ35についても同様である。
【0059】
コネクタ36には、電線68の一端部が接続されている。電線68の他端部には、端子65が接続されている。端子69が第2導電タブ65に接続されることで、電線68がバッテリセル34に電気的に接続される。端子69は、電装品集合体60の第2導電タブ65に対して、ケーシング本体31とカバー32との合わせ面に沿った方向である側方から締結具(図示せず)により締結される。そのため、端子69を第2導電タブ65に締結する作業は、カバー32がケーシング本体31に取り付けられる前に、側面視においてカバー32から端子69が食み出した状態(側面視で端子69がカバー32に隠れていない状態)で行われる。
【0060】
ここで、第2導電タブ65(第1導電タブ64)は、電装品集合体60の上下方向中心よりも下側に配置されている。即ち、第2導電タブ65(第1導電タブ64)は、電装品集合体60においてコネクタ36(コネクタ35)から遠位側に配置されている。そのため、カバー32をケーシング本体31に対して傾斜させることで、電線68の余長が少なくても端子69を第2導電タブ65に締結する作業を行うことが可能となる。
【0061】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、鞍乗車両の一例として、自動二輪車を例示したが、運転者が跨って乗る車両であれば、他の形態の車両(例えば、三輪車)でもよい。電装品集合体60は電源集合体50の前側でもよく、その場合はカバー32及びコネクタ35,36をケーシング本体31の前側に設けるとよい。コネクタ35,36は、カバー32の上側ではなく下側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 自動二輪車(鞍乗車両)
4 車体フレーム
4c シート支持フレーム
4b メインフレーム
9 シート
15 電池パック
16 DCDCコンバータ
17 補助バッテリ
18 リアフェンダ
19 受け座
20 押さえ金
30a,30b 面取部
30 ケーシング
31a 開口
31b 露出孔
31c 周状壁部
31 ケーシング本体
32 カバー
32a 挿通孔
33 放熱フィン体
33a 嵌合部
33c フランジ部
34 バッテリセル
34a 端子
35,36 コネクタ
37 導電板
38 ホルダ
39,40 ダンパ
42 伝熱部材
BMS51(電装品)
52 リレー(電装品)
53 ヒューズ(電装品)
54 電流センサ(電装品)
68 電線
69 端子
E エンジン
M 電動モータ