(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-15
(45)【発行日】2022-11-24
(54)【発明の名称】車両用内装材及び車両用内装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20221116BHJP
B29C 39/12 20060101ALI20221116BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20221116BHJP
B60R 13/01 20060101ALI20221116BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
B60R13/08
B29C39/12
B29C43/34
B29C44/00 A
B29C44/06
B29C44/36
B60R13/01
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2019532432
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2018022959
(87)【国際公開番号】W WO2019021676
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017145459
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】矢田 靖博
(72)【発明者】
【氏名】川崎 順史
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525916(JP,A)
【文献】実開昭57-047483(JP,U)
【文献】実開昭62-194029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B29C 39/12
B29C 43/34
B29C 44/00
B29C 44/06
B29C 44/36
B60R 13/01
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に配置され、板状とされ、おもて面が車両室内側を向く面とされる基材と、
前記基材のうら面に塗布された発泡層と、
を備えた車両用内装材
の製造方法であって、
前記発泡層は、少なくとも一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、又は、厚く且つ気泡密度が高い構成とされ、
スプレー及び金型を用いて、前記一の部分と他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記金型により加圧して定められた層厚の前記発泡層を形成する工程、又は、
前記スプレー及び前記金型を用いて、前記一の部分と前記他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記一の部分と前記他の部分とで前記金型による加圧条件を異ならせることで前記一の部分と前記他の部分とに異なる層厚の前記発泡層を形成する工程、
を含む車両用内装材の製造方法。
【請求項2】
車両内に配置され、板状とされ、おもて面が意匠面とされる基材と、
前記基材のうら面に塗布された発泡層と、
を備えた車両用内装材
の製造方法であって、
前記発泡層は、少なくとも一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、又は、厚く且つ気泡密度が高い構成とされ、
スプレー及び金型を用いて、前記一の部分と前記他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記金型により加圧して定められた層厚の前記発泡層を形成する工程、又は、
前記スプレー及び前記金型を用いて、前記一の部分と前記他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記一の部分と前記他の部分とで前記金型による加圧条件を異ならせることで前記一の部分と前記他の部分とに異なる層厚の前記発泡層を形成する工程、
を含む車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
車両内に配置され、板状とされ、おもて面が車両室内側を向く意匠面とされる基材と、
前記基材のうら面に塗布された発泡層と、
を備えた車両用内装材
の製造方法であって、
前記発泡層は、少なくとも一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、又は、厚く且つ気泡密度が高い構成とされ、
スプレー及び金型を用いて、前記一の部分と前記他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記金型により加圧して定められた層厚の前記発泡層を形成する工程、又は、
前記スプレー及び前記金型を用いて、前記一の部分と前記他の部分とで前記スプレーによる塗布条件を異ならせることで前記うら面に発泡性樹脂を塗布し且つ前記一の部分と前記他の部分とで前記金型による加圧条件を異ならせることで前記一の部分と前記他の部分とに異なる層厚の前記発泡層を形成する工程、
を含む車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
前記発泡層は、前記うら面の全範囲のうちの一部に塗布されている、
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用内装材
の製造方法。
【請求項5】
前記発泡層は、前記一の部分が前記他の部分よりも車両を構成する騒音源の近くとなるように構成されている、
請求項
1~4の何れか1項に記載の車両用内装材
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各態様は、車両用内装材及び車両用内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その
図1、
図6等に示されるように、外に凸の湾曲面23を含む配置面20を有する基材10と、配置面20に接した緩衝材30と、を備えた車両用内装材1が開示されている。そして、特許文献1の明細書段落「0029」、「0030」等によれば、緩衝材30は、繊維材料を平板状に成形した繊維集合体(例えばフェルト)とされ、接着剤の塗布、粘着テープの貼り付け、超音波溶着、熱溶着、面ファスナーの取り付け等といった種々の工法により基材裏面12に固定されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のとおり、特許文献1に開示されている車両用内装材1は、フェルトを含んで構成されているため、比較的重い。
また、特許文献1の場合、車両用内装材1を製造するためには、基材裏面12に接着剤の塗布等をしたうえで当該部分にフェルトを固定するため、製造時間が比較的長い。
【0005】
本発明の一態様は、基材と、基材のうら面に接着されたフェルトとを備えた車両用内装材に比べて、同等の吸音性を維持しつつ軽量化された車両用内装材の提供を目的とする。
また、本発明の他の態様は、基材にフェルトを接着する場合に比べて、製造時間が短い車両用内装材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の車両用内装材は、車両内に配置され、板状とされ、おもて面が車両室内側を向く面とされる基材と、前記基材のうら面に塗布された発泡層と、を備えている。
【0007】
第2態様の車両用内装材は、車両内に配置され、板状とされ、おもて面が意匠面とされる基材と、前記基材のうら面に塗布された発泡層と、を備えている。
【0008】
第3態様の車両用内装材は、車両内に配置され、板状とされ、おもて面が車両室内側を向く意匠面とされる基材と、前記基材のうら面に塗布された発泡層と、を備えている。
【0009】
第1態様、第2態様及び第3態様の車両用内装材の製造方法は、スプレーを用いて前記うら面に発泡性樹脂を塗布して前記発泡層を形成する工程、を含む。
【発明の効果】
【0010】
第1態様、第2態様及び第3態様の車両用内装材は、基材と、基材のうら面に接着されたフェルトとを備えた車両用内装材に比べて、同等の吸音性を維持しつつ軽量化される。
【0011】
第1態様、第2態様及び第3態様の車両用内装材の製造方法は、基材にフェルトを接着する場合に比べて、製造時間が短い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の車両用内装材が車両の荷室を構成している状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の車両用内装材の一部の断面図(第1構成)である。
【
図3】本実施形態の車両用内装材の一部の断面図(第2構成)である。
【
図4】本実施形態の車両用内装材の一部の断面図(第3構成)である。
【
図5】本実施形態の車両用内装材の一部の断面図(第4構成)である。
【
図6A】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、平板をプレス3次元形状の基材に成形する成形工程を説明するための図であって、プレス前の平板の図である。
【
図6B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、平板をプレス3次元形状の基材に成形する成形工程を説明するための図であって、平板のプレス時のプレス加工装置の概略図である。
【
図6C】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、平板をプレス3次元形状の基材に成形する成形工程を説明するための図であって、平板のプレス後のプレス加工装置の概略図である。
【
図7A】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第1パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図7B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第1パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図8A】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第2パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図8B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第2パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図9A】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第3パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図9B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第3パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化する前に、可動型と基材とで発泡性樹脂を挟んで加圧している状態の概略図である。
【
図9C】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第3パターン)を説明するための図であって、可動型と基材とで挟んで加圧された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図10A】本実施形態の車両用内装材の製造工程において、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第4パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図10B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第4パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化する前に、可動型と基材とで発泡性樹脂を挟んで加圧している状態の概略図である。
【
図10C】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第4パターン)を説明するための図であって、可動型と基材とで挟んで加圧された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図11A】本実施形態の車両用内装材の製造工程において、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第5パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図11B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第5パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化する前に、可動型と基材とで発泡性樹脂を挟んで加圧している状態の概略図である。
【
図11C】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第5パターン)を説明するための図であって、可動型と基材とで挟んで加圧された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図12A】本実施形態の車両用内装材の製造工程において、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第6パターン)を説明するための図であって、スプレーが基材に発泡性樹脂を噴射している状態の概略図である。
【
図12B】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第6パターン)を説明するための図であって、基材に塗布された発泡性樹脂が固化する前に、可動型と基材とで発泡性樹脂を挟んで加圧している状態の概略図である。
【
図12C】本実施形態の車両用内装材の製造工程における、基材に発泡性樹脂を塗布する工程(第6パターン)を説明するための図であって、可動型と基材とで挟んで加圧された発泡性樹脂が固化して完成した車両用内装材の概略図である。
【
図13】実施例の車両用内装材と、比較例の車両用内装材との吸音性評価試験の条件及び結果を示す表である。
【
図14】実施例の車両用内装材と、比較例の車両用内装材との曲げ試験(剛性評価試験)の結果を示すグラフである。
【
図15】実施例の車両用内装材と、比較例の車両用内装材との断熱性評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪概要≫
まず、本実施形態について説明する。次いで、実施例について説明する。
【0014】
≪本実施形態≫
以下、本実施形態について説明する。まず、本実施形態の内装材10の機能及び構成について、
図1~
図13を参照しつつ説明する。次いで、本実施形態の内装材10の製造方法について、
図6A~
図12Cを参照しつつ説明する。次いで、本実施形態の効果について説明する。
【0015】
<車両用内装材の機能及び構成>
本実施形態の内装材10は、一例として、車両CBの後部座席RSの後ろに設けられたトランクルームTR(車両室の一例)の車両CBの幅方向両側(トランクサイド)の内装壁とされている(
図1参照)。内装材10は、一例として、車両CBの幅方向両側に配置されている(
図1では左側の内装壁を省略)。内装材10は、内装壁としての美感を奏する機能(意匠的機能)と、トランクルームTR内の温度を保つ機能(断熱機能)と、トランクルームTR内にトランクルームTR外(内装材10を挟んでトランクルームTRの反対側という意味)からの音を吸収する機能(吸音機能)と、内装材10の剛性を維持する機能(剛性維持機構)とを有する。
【0016】
本実施形態の内装材10は、
図2~
図5に示されるように、基材20と、発泡層30とを備えている。本実施形態の基材20は一例として3次元形状の板状の部材とされ(
図1及び
図7A~
図12C参照)、その一方の面に発泡層30が塗布されている(
図2~
図5及び
図7A~
図12C参照)。そして、内装材10(基材20)は、その他方の面(発泡層30が塗布されている側の面と反対側の面)をトランクルームTR内に向けている(
図1参照)。以下の説明では、基材20における、トランクルームTR内側を向く面をおもて面20A(意匠面の一例)とし、おもて面20Aの反対側の面、すなわち、発泡層30が塗布されている側の面をうら面20Bとする。なお、おもて面20Aは、後述する意匠層22の一部とされている(
図2~
図5参照)。
【0017】
[基材]
本実施形態の基材20は、
図1に示されるように、一例として、3次元形状の板状の部材とされている。また、基材20は、
図2~
図5に示されるように、一例として、意匠層22と、染出防止層24と、接着層26とが、これらの記載順で重ねられた多層構造とされている。
【0018】
〔意匠層〕
本実施形態の意匠層22は、前述した内装材10の機能のうち主に意匠的機能を発揮するためのものとされ、一例としてポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維その他のシート材で構成される坪量100g/m2~500g/m2の部材とされている。
【0019】
〔染出防止層〕
本実施形態の染出防止層24は、意匠層22への発泡層30の染み出しを防止(又は抑制)するためのものとされ、一例としてポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドその他のフィルムで構成される坪量50g/m2~500g/m2の部材とされている。ここで、染出防止層24の坪量としては300g/m2程度が好適である。
【0020】
〔接着層〕
本実施形態の接着層26は、基材20に発泡層30を接着させる(固定させる)ためのものとされ、一例としてスパンボンド、スパンレース、ニードルパンチその他の不織布で構成される坪量15g/m2~200g/m2の部材とされている。接着層26は、その繊維間(繊維同士の隙間)に塗布された発泡層30の一部を入り込ませることで、基材20に発泡層30を接着(固定)するようになっている。すなわち、本実施形態では、基材20と、発泡層30とは、接着剤等により両者を固定するのではなく、基材20のうら面20Bを構成する接着層26に発泡層30の一部がいわゆるアンカー効果により固定されている。
【0021】
[発泡層]
本実施形態の発泡層30は、前述した内装材10の機能のうち断熱機能及び吸音機能を発揮するためのものとされ、一例として、発泡ウレタンFR製とされている。本明細書では、発泡ウレタンFRとは、発泡性樹脂の一例であり、気泡(セル)を含んで成形されているウレタンのことをいう(
図7A、
図8A、
図11A等参照)。
ここで、発泡層30の厚みは、一例として1mm~100mmとされている。発泡層30の密度は、一例として10kg/m
3~300kg/m
3とされている。発泡層30に形成される気泡(セル)のセル径は、一例として50μm~300μmとされている。発泡層30の熱伝導率は、一例として0.02W/mk~0.05W/mkとされている。
【0022】
前述のとおり、本実施形態の発泡層30は、基材20のうら面20Bに塗布された層とされている。すなわち、発泡層30は、基材20と車両CBを構成する車体(ボディ)との間に配置される。
また、発泡層30は、一例として、少なくとも基材20の面方向において、一の部分が他の部分よりも厚い構成(
図3参照)、一の部分が他の部分よりもセル密度(気泡密度)が高い構成(
図4参照)、又は、一の部分が他の部分よりも厚く且つセル密度が高い構成(
図5参照)とされている。そして、一例として、前記一の部分は、前記他の部分よりも車両CBを構成する騒音源(一例として後輪(図示省略))の近くとなるように構成されている。
【0023】
後述するように樹脂を発泡させながら基材20に塗布され断熱機能及び吸音機能を発揮するものであれば、発泡層30はウレタン製でなくてもよい。また、発泡層30の強度を補強するため及び寸法安定性を高めるために、例えば、発泡層30に繊維(一例としてガラス繊維)を含有させてもよい。すなわち、発泡層30は、発泡樹脂以外を含んで構成されていてもよい。この場合の繊維としては、一例として、繊度1200tex~4800tex、長さ5mm~100mm、坪量10g/m2~200g/m2、発泡層30中の含有率1%~20%が好ましい。ここで、発泡層30中の含有率としては5%程度が好適である。なお、前述の「寸法安定性を高める」とは、成形後の内装材10の反り変形、収縮等が起き難くすることを意味する。
【0024】
以上が、本実施形態の内装材10の機能及び構成についての説明である。
【0025】
<車両用内装材の製造方法>
次に、本実施形態の内装材10の製造方法(以下、本実施形態の製造方法という。)について、
図6A~
図12Cを参照しつつ説明する。本実施形態の製造方法は、一例として、平板FP(
図6A参照)を成形して基材20にする工程(以下、基材成形工程という。)と、基材成形工程の後に行われる工程であって、基材20のうら面20Bに発泡ウレタンFRを塗布して発泡層30を形成する工程(以下、発泡層形成工程という。)と、を含む。
【0026】
[基材成形工程]
基材成形工程は、
図6A~
図6Cに示されるように、固定型40Aと、可動型40Bとを含んで構成されるプレス加工装置40を用いて行われる。
まず、本工程では、意匠層22と、染出防止層24と、接着層26とがこれらの記載順で重ねられた多層構造の平板FPを用意する(
図6A参照)。
次いで、本工程では、
図6B及び
図6Cに示されるように、プレス加工装置40により平板FPをプレスして3次元形状の基材20を成形する。
以上で、本工程は終了する。
【0027】
[発泡層形成工程]
次に、発泡層形成工程について、
図7A~
図12Cを参照しつつ説明する。ここで、
図7A~
図12Cは、それぞれ発泡層形成工程のうちの第1~第6パターンとされ、それぞれ異なる特徴を有する。以下の説明では、便宜上、発泡層形成工程を各パターンに分けて行うが、本実施形態の製造方法は、第1~第6パターンの何れか1パターン又は何れか2パターン以上を組み合せて行われる。なお、発泡層形成工程は、何れのパターンの場合であっても、スプレー50(
図7A、
図8A、
図9A、
図10A、
図11A及び
図12A参照)を用いて行われる。ここで、スプレー50は、ロボット(図示省略)に取り付けられ、定められた移動経路に沿って移動しながら、発泡ウレタンFRを噴射するように構成されている。
【0028】
〔第1パターン〕
第1パターンでは、
図7Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して同等の厚みで塗布される。そして、
図7Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化すると(発泡層30が形成されると)、本工程は終了する。
以上より、第1パターンにより塗布された発泡層30は、全体のセル密度が同等のまま、基材20の面方向において全体の厚みが同等の構成となる。第1パターンにより塗布された発泡層30は、一例として第1構成(
図2参照)となる。
【0029】
〔第2パターン〕
第2パターンでは、
図8Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して異なる厚みで塗布される。そして、
図8Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化すると(発泡層30が形成されると)、本工程は終了する。なお、第2パターンは、発泡層30のうちの一の部分と他の部分とで塗布条件を異ならせて発泡層30を形成する工程といえる。
以上より、第2パターンにより塗布された発泡層30は、全体のセル密度が同等のまま、基材20の面方向において一の部分が他の部分よりも厚い構成となる。第2パターンにより塗布された発泡層30は、一例として第2構成(
図3参照)となる。
【0030】
〔第3パターン〕
第3パターンでは、
図9Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して同等の厚みで塗布される。次いで、
図9Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化する前に、基材20の3次元形状に沿った形状の可動型60(金型の一例)と基材20とで発泡ウレタンFRを挟んで加圧し、定められた層厚の発泡層30を形成する。次いで、発泡ウレタンFRが固化して発泡層30が形成された後に可動型60を発泡層30から離すと、本工程は終了する。
以上より、第3パターンにより塗布された発泡層30は、全体のセル密度が同等のまま、基材20の面方向において全体の厚みが同等の構成となる。また、第3パターンで形成された発泡層30は、第1パターンにより形成された発泡層30に比べて、可動型60によりプレスされた分、セル密度が低くなる。第3パターンにより塗布された発泡層30は、一例として第1構成(
図2参照)となる。
【0031】
〔第4パターン〕
第4パターンでは、
図10Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して異なる厚みで塗布される。次いで、
図10Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化する前に、基材20の3次元形状に沿っていない凹凸形状の可動型60A(金型の他の一例)と基材20とで発泡ウレタンFRを挟んで部分的に異なる加圧条件で(加圧条件を異ならせることで)加圧し、部分的に異なる層厚の発泡層30を形成する。次いで、発泡ウレタンFRが固化して発泡層30が形成された後に可動型60Aを発泡層30から離すと、本工程は終了する。
以上より、第4パターンにより塗布された発泡層30は、基材20の面方向において一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも高く、且つ、基材20の面方向において一の部分が他の部分よりも厚い構成となる。別の見方をすると、第4パターンにより塗布された発泡層30は、基材20の面方向において一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも低く、且つ、基材20の面方向において一の部分が他の部分よりも薄い構成となる。第4パターンにより塗布された発泡層30は、一例として第3構成(
図4参照)及び第4構成(
図5参照)を含む層となる。
【0032】
〔第5パターン〕
第5パターンでは、
図11Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して異なる厚みで塗布される。次いで、
図11Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化する前に、基材20の3次元形状に沿った形状の可動型60と基材20とで発泡ウレタンFRを挟んでプレスする。次いで、発泡ウレタンFRが固化して発泡層30が形成された後に可動型60を発泡層30から離すと、本工程は終了する。なお、第5パターンは、発泡層30のうちの一の部分と他の部分とで塗布条件を異ならせて発泡層30を形成する工程といえる。
以上より、第5パターンにより塗布された発泡層30は、基材20の面方向において一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも低く、且つ、基材20の面方向において全体の厚みが同等の構成となる。第5パターンにより塗布された発泡層30は、第3構成(
図4参照)となる。
【0033】
〔第6パターン〕
第6パターンでは、
図12Aに示されるように、スプレー50により基材20のうら面20Bに向けて発泡ウレタンFRが噴射され、発泡ウレタンFRがうら面20Bの面方向に対して異なる厚みで塗布される。次いで、
図12Bに示されるように、基材20に塗布された発泡ウレタンFRが固化する前に、基材20に塗布された発泡ウレタンFRの3次元形状に沿った形状の可動型60Bと基材20とで発泡ウレタンFRを挟んでプレスする。次いで、発泡ウレタンFRが固化して発泡層30が形成された後に可動型60Bを発泡層30から離すと、本工程は終了する。なお、第6パターンは、発泡層30のうちの一の部分と他の部分とで塗布条件を異ならせて発泡層30を形成する工程といえる。
以上より、第6パターンにより塗布された発泡層30は、全体のセル密度が同等のまま、基材20の面方向において一の部分が他の部分よりも厚い構成となる。第6パターンにより塗布された発泡層30は、一例として第2構成(
図3参照)となる。
【0034】
以上が、本実施形態の製造方法についての説明である。
【0035】
<効果>
次に、本実施形態の効果(第1~第6の効果)について図面を参照しつつ説明する。
【0036】
[第1の効果]
第1の効果は、内装材10が基材20のうら面20Bに塗布された発泡層30を備えていることの効果である。
【0037】
例えば、前述の特許文献1に開示されている車両用内装材は、フェルトを含んで構成されている。
これに対して、本実施形態の内装材10は、基材に接着剤等により接着されたフェルトではなく、基材20のうら面20Bに塗布された発泡層30を備えている(
図2~
図5参照)。
したがって、本実施形態の内装材10は、基材と、基材のうら面に接着されたフェルトとを備えた車両用内装材に比べて、同等の吸音性を維持しつつ軽量化される。これに伴い、本実施形態の内装材10を備えた車両は、基材と、基材のうら面に接着されたフェルトとを備えた車両用内装材を備えた車両に比べて、低燃費になる。
【0038】
なお、本実施形態の発泡層30は、基材20のうら面20Bに接着剤等により接着されているのではなく、前述の発泡層形成工程により形成される。そのため、本実施形態の内装材10は、予め用意された板状の発泡層(図示省略)を3次元形状の基材20に変形させながら接着して固定する場合に比べて、発泡層30の内部応力(例えば屈曲している部分における引張り応力と圧縮応力)が低い状態とされる点で有効といえる。
【0039】
[第2の効果]
第2の効果は、発泡層30のうちの一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、又は、厚く且つ気泡密度が高い構成とされていることの効果である。
【0040】
例えば、第1構成(
図2参照)の場合、全体のセル密度が同等のまま、基材20の面方向において全体の厚みが同等の構成とされているため、剛性及び吸音性を部分ごとに調整されていない。
【0041】
これに対して、第2構成(
図3参照)、第3構成(
図4参照)及び第4構成(
図5参照)の場合、それぞれ、発泡層30のうちの一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、厚く且つ気泡密度が高い構成とされている。
【0042】
したがって、本実施形態では、発泡層30のうちの一の部分が他の部分よりも厚い構成、気泡密度が高い構成、又は、厚く且つ気泡密度が高い構成とすることで、剛性及び吸音性を部分ごとに調整することができる。特に、発泡層30における上記一の部分が上記他の部分に比べて後輪(図示省略、騒音源の一例)の近くとなるように構成されている場合には、吸音性の点で有利となる。また、例えば、内装材10において、高剛性を必要とする部分を上記一の部分とし、高剛性を必要としない部分を上記他の部分とすることで、発泡ウレタンFRの材料費を低減することができる。
【0043】
[第3の効果]
第3の効果は、本実施形態の製造方法において、基材20に発泡ウレタンFRを塗布して発泡層30を形成することの効果である。
【0044】
例えば、前述の特許文献1に開示されている車両用内装材の製造方法の場合、基材に接着剤の塗布等をしたうえで当該等部分にフェルトを固定する。
これに対して、本実施形態の製造方法は、フェルトを基材に接着剤等で接着するのではなく、基材20のうら面20Bに発泡層30を塗布することで行う(
図7A~
図12C参照)。そして、本実施形態の場合、基材20に形成されている接着層26の繊維間(繊維同士の隙間)に塗布された発泡層30の一部を入り込ませることで、基材20に発泡層30を固定する。そのため、本実施形態の場合、そもそも前述の特許文献1に開示されている車両用内装材の製造方法のように、基材に接着剤の塗布等をする必要がない。
【0045】
したがって、本実施形態の製造方法は、基材にフェルトを接着する場合に比べて、製造時間が短い。特に、発泡ウレタンFRは、スプレー50内で加熱しなくても発泡し、硬化するため、スプレー50に加圧機構及び加熱機構を備える必要がない点で有利である。
【0046】
[第4の効果]
第4の効果は、本実施形態の製造方法において、スプレー50及び可動型60、60Bを用いて、上記の一の部分と上記の他の部分とでスプレー50による塗布条件を異ならせることで基材20のうら面20Bに発泡ウレタンFRを塗布し、且つ、可動型60、60Bにより加圧して定められた層厚の発泡層30を形成することの効果である。具体的には、前述の第5パターン(
図11A~
図11C参照)の発泡層形成工程の効果である。
【0047】
例えば、前述の特許文献1に開示されている車両用内装材の製造方法の場合、フェルトを用いて第3構成(
図4参照)の車両用内装材を製造するには、密度の異なる複数のフェルトを用意し、前記一の部分に対して密度の異なる複数のフェルトのうちの一方を固定し、前記他の部分に対して密度の異なる複数のフェルトのうちの他方を固定する必要がある。
【0048】
しかしながら、本実施形態の第5パターンの場合、
図11Aに示される発泡層形成工程において、スプレー50による発泡ウレタンURの塗布厚が部分的に異なるように発泡ウレタンURを塗布する。
【0049】
したがって、本実施形態の第5パターンによれば、簡単な方法により、基材20の面方向において発泡層30の全体の厚みを同等としたうえで、基材20の面方向において一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも低くなるように製造することができる。これに伴い、本実施形態の第5パターンによれば、基材にフェルトを接着する場合に比べて、製造時間が短い。その結果、第5パターンによれば、簡単に又は短時間で、上記第2の効果を奏する内装材10を製造することができる。
【0050】
[第5の効果]
第5の効果は、本実施形態の製造方法において、スプレー50及び可動型60Aを用いて、前記一の部分と前記他の部分とでスプレー50による塗布条件を異ならせることで基材20のうら面20Bに発泡ウレタンFRを塗布し、且つ、可動型60Aによる加圧条件を異ならせることで異なる層厚の発泡層30を形成することの効果である。具体的には、前述の第4パターン(
図10A~
図10C参照)の発泡層形成工程の効果である。
【0051】
例えば、前述の特許文献1に開示されている車両用内装材の製造方法の場合、フェルトを用いて第3構成(
図4参照)及び第4構成(
図5参照)の車両用内装材を製造するには、密度の異なる複数のフェルト又は厚みの異なる複数のフェルトを用意し、前記一の部分と前記他の部分とに対して密度の異なるフェルトをそれぞれに貼り付ける又は厚みの異なるフェルトを貼り付ける必要がある。
【0052】
しかしながら、本実施形態の第4パターンの場合、
図10Aに示される発泡層形成工程の塗布工程においてスプレー50による発泡ウレタンURの塗布厚が部分的に異なるように塗布し、且つ、
図10Bに示される発泡層形成工程の加圧工程において加圧面が凹凸状の可動型60Aを用いることで部分的に異なる圧力で加圧する。
【0053】
したがって、第4パターンによれば、簡単な方法により、基材20の面方向において発泡層30を部分的に異なる厚みとしたうえで、基材20の面方向において一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも低くなるように製造することができる。これに伴い、本実施形態の第4パターンによれば、基材にフェルトを接着する場合に比べて、製造時間が短い。その結果、第4パターンによれば、簡単に又は短時間で、上記第2の効果を奏する内装材10を製造することができる。
【0054】
[第6の効果]
第6の効果は、本実施形態の製造方法において、基材成形工程の後に発泡層形成工程を行うことの効果である。
【0055】
例えば、発泡層形成工程後に基材成形工程を行う場合、別言すれば、平板FPに対して発泡層30を形成した後に平板FPを3次元形状の基材20に成形する場合、基材成形工程時のプレス加工により発泡層30の剥がれ、変形等が発生する虞がある。
これに対して、本実施形態の製造方法の場合、基材成形工程(
図6A~
図6C参照)の後に発泡層形成工程を行う(
図7A~
図12C参照)。
そのため、本実施形態の場合、そもそも基材成形工程時のプレス加工により発泡層30の剥がれ、変形等が発生することがない。
また、発泡層形成工程後に基材成形工程を行う場合、最初に平板FPが基材20に成形されることに伴い、発泡層30に内部応力が発生する。しかしながら、本実施形態の場合、そもそも平板FPの基材20への変形に伴う発泡層30の内部応力の発生はない。
また、本実施形態の場合、基材成形工程後にスプレー50を用いた発泡層形成工程を行うことから、基材20のうら面20Bにおいて発泡層30が塗布されている部分と塗布されていない部分とを簡単に分けて形成することができる。
【0056】
以上が、本実施形態の効果についての説明である。
【0057】
≪実施例≫
以下、実施例について説明する。まず、吸音性評価試験について
図13を参照しつつ説明する。次いで、曲げ試験(剛性評価試験)について
図14を参照しつつ説明する。次いで、断熱性評価試験について
図15を参照しつつ説明する。
【0058】
<吸音性評価試験>
本吸音性評価試験では、
図13の表に示される条件の比較例1と、実施例1とについて、垂直入射吸音率%を測定した。
【0059】
比較例1の内装材は、特許文献1のように、基材20のうら面20Bにフェルト(吸音材、図示省略)を接着したものとした。比較例1の場合、全うら面20Bのうちフェルトが接着された部分の面積の割合を20%とした。
これに対して、実施例1の内装材10は、全うら面20Bのうちプレス10tなる発泡層30が塗布された部分の面積の割合を20%、プレス30tなる発泡層30が塗布された部分の面積の割合を30%、フリー50tなる発泡層30が塗布された部分の面積の割合を50%とした。ここで、プレス10t(30t)とは、発泡層30の厚み(mm)、すなわち、スプレー50により基材20のうら面20Bに発泡ウレタンFRを塗布してから可動型60により発泡ウレタンFRをプレスして厚み10mm(厚み30mm)の発泡層30とした場合を意味する。また、フリー50tとは、スプレー50により基材20のうら面20Bに発泡ウレタンFRを塗布してから可動型60によりプレスすることなく発泡ウレタンFRを自然に固化させて厚み50mmの発泡層30とした場合を意味する。
【0060】
図13の表に示されるように、吸音性評価試験の結果、実施例1の方が比較例1よりも吸音性に優れていたことが分かった。
以上より、実施例1を含む本実施形態は、従来技術に比べて、少なくとも同等以上の吸音性能を有することが分かった。
【0061】
以上が、実施例が比較例に比べて吸音性の点で優れていることについての説明である。
【0062】
<曲げ試験>
次に、曲げ試験について説明する。本曲げ試験(本剛性評価試験)では、後述する比較例2と、実施例2とについて、それぞれ、弾性勾配N/50mm/cmを測定した。
【0063】
比較例2は、基材20のみとした。
これに対して、実施例2の内装材10は、基材20の厚みを2.8mm、発泡層30厚み30mm、目付け量を1739g/m2、最大荷重112.6gfとした。
なお、比較例2及び実施例2は、プレスする金型の温度を25℃、製造時の雰囲気温度を10℃、プレス時間を30秒間とした。
【0064】
図14のグラフに示されるように、曲げ試験の結果、実施例2は、比較例2よりも軽いにも関わらず、比較例2と同等の弾性勾配を有する(曲げ剛性を有する)ことが分かった。すなわち、比較例2と同等の質量の実施例は、比較例2に比べて、高い剛性を有することが類推される。
以上より、実施例2を含む本実施形態は、従来技術に比べて、剛性が高い。また、別の見方をすると、本実施形態は、従来技術の場合と同等の剛性を有する場合に、軽量化することができるといえる。
【0065】
以上が、実施例が比較例に比べて剛性の点で優れている(剛性が高い)ことについての説明である。
【0066】
<断熱性評価試験>
次に、断熱性評価試験について説明する。前述した比較例2と、実施例2とについて、熱貫流率W/(m2K)を測定した。
【0067】
図15のグラフに示されるように、断熱性評価試験の結果、厚みに関わらず、実施例2は、比較例2よりも熱貫流率が低いことが分かった。
以上より、実施例2を含む本実施形態は、従来技術に比べて、断熱性が高い。
【0068】
以上が、実施例が比較例に比べて断熱性の点で優れていることについての説明である。
【0069】
以上、実施例について説明したが、実施例1及び2についてそれぞれ比較例1及び2と比較した各試験の結果から以下のことがいえる。すなわち、実施例1及び2を含む本実施形態は、前述の第1~第6の効果以外に、前述した実施例の説明で記載した効果を奏するといえる。具体的には、本実施形態は、比較例1及び2に比べて、(1)同等以上の吸音性を有し、(2)高い剛性を有し且つ(3)高い断熱性を有するといえる。そして、本願の発明者らは、実施例の各試験の結果から、上記(1)~(3)を見出した。
【0070】
以上が、実施例についての説明である。
【0071】
以上のとおり、本発明について前述の実施形態及び各実施例を例として説明したが、本発明の技術的範囲に含まれる形態は前述の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の技術的範囲には、下記のような形態も含まれる。
【0072】
例えば、本実施形態では、発泡膜形成工程における塗布条件を、スプレー50により噴射する発泡性樹脂の量(厚み)であるとして説明した。すなわち、本実施形態では、塗布条件を発泡性樹脂の塗布厚の差異であるとした。しかしながら、塗布条件は発泡性樹脂の塗布厚以外の条件であってもよい。例えば、スプレー50の機械的条件(ノズル径等)、発泡性樹脂の物性的条件(粘度等)その他の条件としてもよい。これらの変形例により、部分的に発泡倍率(セル密度)等が異なる発泡層30を塗布することができる。
【0073】
また、本実施形態では、発泡層30の厚み、密度、セル径及び熱伝導率を例示して説明した。しかしながら、これらの値は例示に過ぎず、これらの値でなくてもよい。例えば、内装材10が発泡層30を備えた内装材10を搭載する車両により要求される断熱機能、吸音機能又は剛性維持機能を発揮すれば、発泡層30の厚み、密度、セル径及び熱伝導率は例示した値と異なっていてもよい。
なお、基材20を構成する、意匠層22、染出防止層24及び接着層26について例示した物性値についても各層の機能を発揮すれば、この限りでない。
【0074】
また、本実施形態では、内装材10は、一例として車両CBのトランクルームTRのトランクサイドの壁であるとして説明した(
図1参照)。しかしながら、内装材10が車両CBに搭載されて使用されるものであれば、内装材10は本実施形態と異なる部材として車両CBに搭載されてもよい。例えば、内装材10は、パッケージトレイ(パーセルシェルフともいう。図示省略)、サイドドア(図示省略)、バックドア(図示省略)、ピラー(図示省略)その他の車両用部材として車両CBに搭載されてもよい。なお、これらの場合、各部材を構成する基材20の形状が本実施形態の場合と異なる形状であることはいうまでもない。
【0075】
また、本実施形態では、発泡層30の強度を補強するために、例えば、発泡層30に繊維(一例としてガラス繊維)を含有させてもよいことを説明した。この場合、発泡ウレタンFRを噴射するスプレー50以外に、ガラス繊維を噴射するスプレー(図示省略)を用意し、発泡層形成工程では、スプレー50と、ガラス繊維を噴射するスプレーとから基材20のうら面20Bに向けて同時に噴射動作を行うことで、うら面20B上で各噴射物を混合させればよい。
【0076】
また、
図2~
図5(第1~第4構成)では、各内装材10において基材20のうら面20Bの全範囲に発泡層30が塗布されているかの如く図示した。しかしながら、
図2~
図5は本実施形態の各構成(第1~第4構成)の例示に過ぎず、各構成において基材20のうら面20Bの一部に発泡層30が塗布されている形態、すなわち、基材20のうら面20Bの一部に発泡層30が塗布されつつ残りの部分に発泡層30が塗布されていない形態も、本発明の技術的範囲に含まれるといえる。この変形例の場合であっても、前述の第1~第6の効果のうちの少なくとも1つ以上を奏するためである。
また、基材20のうら面20Bの一部に発泡層30が塗布されつつ残りの部分の全部又は一部に発泡層30以外の層が固定されている形態も、本発明の技術的範囲に含まれるといえる。この変形例の場合であっても、前述の第1~第6の効果のうちの少なくとも1つ以上を奏するためである。
以上より、発泡層30がうら面20Bの全範囲のうちの一部に塗布されている内装材10は、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、この場合(発泡層30がうら面20Bの全範囲のうちの一部に塗布されている場合)、例えば、剛性や吸音性が必要な(基材20の)部位に発泡層30を塗布し、不要な部位に塗布しないようにすることで、内装材10を全体として軽量化できるという効果を奏する。
【0077】
また、
図3(第2構成)では、基材20のうら面20Bの一の部分と他の部分とにおいて、発泡層30の厚みが異なりセル密度が同じであると説明した。また、
図4(第3構成)では、基材20のうら面20Bの一の部分と他の部分とにおいて、発泡層30の厚みが同じでセル密度が異なると説明した。また、
図5(第4構成)では、基材20のうら面20Bの一の部分と他の部分とにおいて、発泡層30のセル密度と厚みとが異なる(一の部分の厚みが他の部分の厚みよりも厚く、且つ、一の部分のセル密度が他の部分のセル密度よりも密度が高い)と説明した。そして、
図3~
図5(第2~第4構成)及び各構成の内装材10の製造の一例を説明する
図10A~
図12Cでは、それぞれ、一の部分と他の部分とが繋がっているかの如く図示した。しかしながら、一の部分と他の部分とは、繋がっていなくてもよい(離れていてもよい)。この変形例の場合であっても、前述の第1~第6の効果のうちの少なくとも1つ以上を奏する。
【0078】
以上のとおり、本発明のいくつかの好ましい形態を詳細に示し、説明したが、添付された請求項の趣旨又は範囲から逸脱せずに様々な変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【0079】
本出願は、2017年7月27日を出願日とする日本国出願特願2017-145459号に基づき、かつ、同出願に基づく優先権を主張する。この出願は、その全体が参照によって本出願に取り込まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 車両用内装材
20 基材
20A おもて面(意匠面の一例)
20B うら面
30 発泡層
50 スプレー
60 可動型(金型の一例)
60A 可動型(金型の一例)
60B 可動型(金型の一例)
CB 車両
FR 発泡ウレタン(発泡性樹脂の一例)
TR トランクルーム(車両室の一例)